ゆっくりいじめ系264 幻想郷のみにくい生き物

 幻想郷のみにくい生き物

 やあみんな。
 俺は虐待お兄さん。幻想郷にいる妖怪の一種で、仲間は数多い。
 陰険だったりそうじゃなかったりするが、たいてい暴力的でいつも戸締りが甘い
んだ。
 今日も自分の、アパートの一室のようだけれど庭があったり複数の部屋があった
りする不思議な部屋で、平日だというのにどこにも行かず、ごはんを食べていた。
 窓から表が見えている。人里のはずなのに木々の茂った森のような景色だ。
 そこでゆっくりたちが日向ぼっこしていた。
 母れいむが一匹と、子れいむ・子まりさが数匹ずつ。
 きゃっきゃっと駆け回る可愛らしいちびたちを、母れいむが幸せそうに見守り、
姉さんたちは餌をとったりしている。
 ここまでは聞こえないが、みんなゆーゆーと鳴いているだろう。
 俺の血がざわざわと騒いだ。
 俺は無力で少しばかり騒々しい生き物を見ると、とたんに凶暴になる性格なんだ。
 食事を終えると表へ出て話しかけた。
「やあみんな、ゆっくりしているかい?」
「「「ゆっくりしていってね!!」」」
 お決まりの返事に、背筋を震わせる。
 俺はこのどうということもない返事が大嫌いなんだ。
 皆の前にしゃがみこんで、猫なで声で言った。
「ねえ君たち、ゆっくりできるポイントがあるんだけど、来てみないかい?」
 他の口実を考え出さず、つねにこうやって話しかけるのも俺たちの特徴だ。
 また、手で捕まえればいいのにやたら凝った罠を仕掛けたり、箱一つで済むとこ
ろで、もってまわった隔離装置を使ったりもする。
「ゆっ? ゆっくりできるポイント?」
「ほんとう? 最近はそうやってさそうわるいひとがおおいって聞いたよ!」
「いやいや本当さ。おいしいものもあるんだ。さあまずはこれをお食べ」
 ポケットから畑で取れたての生野菜を差し出す。
 俺たちは飴玉で十分なシーンで、野菜などのよくわからない食材を差し出すこと
も多い。
 農民らしくもないのにそんなものを栽培しているところもポイントだ。
「ゆーっ、おやさいだ!」
「おいしーい!」
「ばーりばーり♪ しあわせー!」
 ああ、いじめたい気持ちが高まって、背中がぞくぞくする。
 俺たちはこの他愛ない笑顔や甲高い声に、嗜虐心をそそられる習性を持っている
のだ。
「それじゃあ、中においで」
「はーい!」
「ゆっくりついていくね!!」
 ゆっくりたちはゆくゆくと歩きながら姉妹でささやき合っている。
「どんなところなんだろうね!」
「きっとおいしいものがいっぱいあるね!」
「みんな、ゆっくりしないで歩こうね! きっと素敵なところだよ!」
 そういう期待に満ちた台詞も大嫌いだ。期待というのは裏切られるものだという
ことを、俺たちはよく知っているんだ。
 部屋の中にゆっくりをあげると、俺は玄関につっかい棒をした。
 俺たちの住居は、こういうものがないとゆっくりに逃げられる作りになっている
のだ。
「お兄さん、ここでゆっくりするの?」
「おいしいものがほしいな!」
 俺は笑顔の下で、心を苛立たせる。そういうものがあると伝えたんだから、ゆっ
くりが期待するのは当然だ。でも俺たちは人を疑わない無邪気さが嫌いなのだ。
 俺はちょっとしたゲームを提案する。
「よーし、じゃあおいしいものをあげよう。でもその前に一つ約束だ。子供たちは
いいというまで目を閉じてね。おかあさんはいいと言うまで声を出さないこと。こ
の約束を守れる?」
「そんなの簡単だよ!」
「れいむたちにもわかったよ!」
「それじゃ行くぞ。よーい、ドン!」 
 子ゆっくりたちはいっせいに目をつぶった。
 きっといいことがある、と信じているようなわくわくした顔だ。
 ああムカムカする。俺たちはこんな連中を可愛いとは決して思わないのだ。
 俺はチョコボールを取り出して、母親の前に一粒差し出した。
「ゆ……」
 ゆっくりとか、ゆゆっ、とかそんなことを言おうとしたんだろう。
 だが約束を思い出したのか、そこで声を飲み込む。 
 子供たちのほうをチラチラと見て、目顔でしきりに、わけてやっていいか、と聞
いている。
 俺は首を横に振り、母の口にチョコボールを押し込んだ。
 母ゆっくりはチョコボールに舌を伸ばして飲み込み、ぱあっと顔を輝かせた。
「ぺ……し……」
 例の「ぺーろぺーろ♪ しあわせー!」を必死に我慢しているんだろう。チョコ
なんてうまいもの、食べたことないだろうからな。
 目をキラキラ輝かせて、もっともっとと訴えている。俺は箱からざらざらとチョ
コボールを出した。すると母ゆっくりはそれをくわえて、子供たちの前に並べよう
とした。
 俺は手を伸ばしてそれを遮り、ボールを集めて全部母の口の中に流し込んでしま
った。母は驚いたようだが、毒を入れられたわけでもないので、もぐもぐと食べて
しまう。
 母ゆっくりが食べ終わると、俺は合図した。
「いいよ、みんな目を開けてね!」
「ゆゆっ」「もういいの?」
 子供たちが目を開けたところで、俺は空っぽの箱を振って、わざとらしい声で言
ってやった。
「ああー、せっかくのおいしいお菓子が、みんななくなっちゃったー」
「ゆーっ!?」
「お兄さん、どういうこと! おかしをかえしてね!」
「俺が悪いんじゃないよ、君たちのお母さんが全部食べてしまったんだ」
 子ゆっくりたちがいっせいに母をにらみつける。
 母親は驚愕の顔になってブルブル震えて、必死に弁明する。
「お、おかあさんは悪くないよ! お兄さんが口の中に入れてきたんだよ!」
「それでもお母さんが食べちゃったことは事実だよね? 子供たちを差し置いて、
甘くておいしいお菓子を一人でたべちゃったんだ!」
 ゆっくりの脳ではその理屈に反論できない。悔しそうにうつむいて、ぶるぶる震
えるだけだ。そんな母親を、子供たちが罵倒する。
「おかあさんだけゆっくりしたんだね!」
「そんなずるいおかあさんは嫌いだよ!」
「ゆっくちちなけければいーよ!」
「どお゛じでぞんな゛ごどいうのお゛お゛お゛お゛!?」
 母ゆっくりは子供の言葉に心を切り裂かれ、泣き出してしまった。
 俺はそれを眺めて、心の中で大笑いする。
 さっき俺が口にしたようなことは、小学生にも劣る逃げ口上に過ぎない。
 家族がそんなふうに引き裂かれたのは、もちろん俺に全面的な責任がある。
 しかし俺は、そういったことを念頭にもおかないだけの、すぐれた責任転嫁能力
があるのだ!
 そして、口下手なゆっくりが屁理屈に負けて黙ってしまうのを見て楽しむ、卑劣
で陰険な快楽主義をもあわせもっている。
 やけになった母ゆっくりの悲痛な叫びを聞くと、自分が大きな力を持ったような
錯覚が得られ、とても心地よかった。

 それからの毎日、俺はあの手この手を尽くしてゆっくりを罠にはめ、悲しんだり
傷つけあったりするのを見て、大いに楽しんだ。
 友人を呼んで一緒に楽しむようなことはしなかった。俺たちには友人なんてもの
はないのだ。
 異性や両親を介在させることもなかった。俺たちの住む幻想郷にそんなものはい
ないのだ。
 ひたすら一人で、小さく無力でたいして害もないようなゆっくりたちをいたぶる
ことに集中した。
 俺は工夫を凝らしたが、たまにゆっくりにさえトリックを見破られてしまうこと
があった。俺たちは恐ろしく狡猾な罠を考案することがあるが、たいていの場合は
たいして賢くないのだ。
「ゆゆっ!? ごはんがないよ?」
「お兄さんのせいだよ、さっきお兄さんが隠したんだよ!」
「ゆっくりかえちてね! ゆっくりごはんをかえちて!」
「おかあさんをいじめないでね!」
 そういった健気な訴えを聞くと、すぐ頭に血を上らせた。
 俺たちはとても短気にできているのだ。
 そしてゆっくりを蹴りつけ、殴りつけ、引きちぎった。
「うるせぇ、ガタガタ文句を言うんじゃねえ! ただの饅頭のくせに!」
「ゆ゛ーっ!?」
「ゆぐうううぅう」
「ゆっぶゆっ許じでねぇぇぇえ!!」
 部屋の中で一人、こぶしを振るい、足を振る。野蛮な暴力性を隠しもせず叩きつ
けた。
 俺たちは無抵抗のか弱い存在に対して、思い切り暴力を振るうのが好きなのだ。
 悲鳴を聞き、命乞いを聞くと、自分の神のような全能性が強められ、胸がスーッ
として、とても心地よくなった。
「あぁー? 許してだと? 許してくださいだろこのゴミクズども」
「許してください! ゆるちてくだざいぃ!」
 小さな饅頭たちが部屋の隅に集まり、ガタガタと震えている。俺は高笑いしてやっ
た。
 誤解を招くといけないから言っておくと、外ではもちろん善良な普通の人間なん
だ!
 他人を罵倒したり、殴りかかったりなんてもちろんしない。
 だましたり、そそのかしたりなんていう悪いことは、絶対にしない。
 そういうことは悪いことだとちゃんとわかっているし、人間相手にはそういうこ
とができないんだ。
 でもゆっくりが相手ならいくらでもできる!
 俺たちは、そういう性格なんだ。

 半月ほど経つと、ゆっくりにも飽きてきた。俺たちは飽きっぽさにも秀でている。
 悲鳴を聞き、命乞いさせるのも、ワンパターンに感じてきた。
 もっと変わった命乞いをすればいいのに!
 捕まえてからずっと狭い部屋の中で飼っているから、ゆっくりたちが進歩なんて
するわけがない。それでもそんな風に期待してしまうのが俺の特徴だ。
 飽きたから、食うことにした。
 俺たちは一緒に暮らしてきた連中に情が湧くことは決してない。
 何しろ饅頭だからな! 人語をしゃべり、親子で助け合うような生き物でも、中
身が餡子だから、何をしてもいい。それが俺たちの理屈、いや、理屈と言うより感
性なんだ。
 俺たちは理解や共感、意思の疎通ということではなく、餡子かどうかで敵味方を
識別するんだ! それが俺たち虐待お兄さんの信念だ。
 俺は大鍋にゆっくりたちをひとまとめに入れ、薄く水を張って火にかけた。ぐつ
ぐつと湯が沸き立つにつれ、ゆっくりたちが騒ぎ始めた。
「おにっ、おにーざんっ、熱い、熱いよ!」
「ゆっくり火をとめて、ゆっくりだしてね!」
「ごめんなさいごめんなさいもうわるいことしません、だからゆっくり助けてくだ
さい!」
「もうちまちぇん、たちゅけてねぇぇぇ!」
 涙顔になって必死に訴える。ゴボゴボと沸き返る熱湯に身体の下半分を苛まれ、
猛烈な苦痛、死の恐怖に襲われているのだ。
 俺自身がそんなことをされたらどう思うかなんてことは考えない。風呂で中で50
度、60度と温度を上げられて、手足の皮膚が真っ赤になり、全身に針が刺さるよう
な痛みを受け、必死で命乞いをする気分がどんなものかなどということは、もちろ
ん考えないのだ!
 そんな想像をしないだけの、現実主義的な頭脳を備えているのだ。
「それじゃあ、一人だけここに乗せてやろうかな~?」
 俺はお玉を差し入れる。ゆっくりたちが先を争ってよじ登ってきた。
「れ、れいむが昇るからね!」
「どいてよ、れいむが昇るんだよ!」
「ゆっくりちね、ゆっくりちねぇぇ!」
 俺は哄笑する。
「ハーッハッハッハ、浅ましいことだ、この畜生どもめ! おまえたちはしょせん
そんなものだ! 高貴な人間たちの足元にも及ばんのだ!」
 快感だ! 我が身に目をつぶって人を罵倒するのは。人間だって同じような状況
なら争いあうだろうし、他ならぬ俺自身だって、命が危なければ他人を足蹴にする
だろう。醜い我欲をむき出しにするだろう。
 しかしそんなことはどうでもいいのだ! 今この一瞬、哀れなゆっくりたちを前
にしているときだけは、俺たちはそんな自分たちのことを忘れて、無責任に他人の
欠点だけを思うさまあげつらうことができるのだ!
 自分だけは非難されない立ち位置に居座り、反論できない連中を罵倒する! こ
れほど心地よいことがあるだろうか!
「そぉんなあさましい連中は……こうだっ☆」
 くるっとお玉を返して、俺はゆっくりたちを落とした。
「にぎゃああああぁぁぁ!」
「あぢゅいよぉぉぉぉぉぉ!」 
「死゛にだぐないいぃいぃぃぃ!」
「溶けぢゃう、どけぢゃうぅぅぅ!」
 死に瀕したゆっくりたちが、断末魔の悲鳴を上げる。
 日向ぼっこをしていただけの、何の罪もない生き物たちが、監禁され拷問され虐
殺されていく……。
 俺たち虐待お兄さんは、それを見て勝ち誇り、楽しむことができるのだ! 助け
ようなどという軟弱な考えは微塵も持たないのだ! 
 慈悲など無用!
 人間性など不要!
 苦界奥底にひしめく餓鬼畜生のごとき浅ましさ、愚かしさ、野蛮さこそが俺たち
の本質なのだ!
「ヒャーッハッハッハッハッハ!」
 俺は鍋に蓋をし、火をトロ火にして、ゆっくりたちの苦難を最大限にまで引き伸
ばしてやるのだった。

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最終更新:2022年01月31日 01:05
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