ゆっくりれみりゃ系いじめ54 かりしゅま対決

かりしゅま対決!

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≪はじめに≫
  • 「でびりゃまん」の続き(その2)になります。
  • 本家東方のキャラが出ますが、口調・性格ともに結構いい加減です
 (※fuku2706.txtから一部修正しました)

以上、ご容赦ご了承ください。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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空を、一匹のれみりゃが行く。
このれみりゃ、見た目は一般的な胴体付きのれみりゃに近いが、少しばかり勝手が違った。

体は、他のれみりゃより一回り大きく、120~130cm程もある。
お飾り程度にしかついていないはずの羽も、それなりに大きく、飛行速度はうーぱっく並。

また、普通のれみりゃの服がピンク色なのに対して、
このれみりゃの服は紫がかったスミレ色をしていた。

……というのも、このれみりゃ、
諸々の事情によって、れみりゃ種とフラン種の間に生まれた変異種なのだ。

「う~♪ とうちゃーく」

紅魔館を囲うように繁る木々、
その中でも一際大きな木の枝の上に降り立つ、れみりゃ。

「うー! おっきぃーどぉー!」

れみりゃは紅魔館を見て、ただでさえ大きな目を丸くする。

「えれがんとなおやしきだどぉー♪ わるいやつぽぉーいしたら、ここをべっそうにするどぉー♪」

"わるいやつ"
このれみりゃは、森で偶然助けたれみりゃ達から頼まれ事をしていた。
れみりゃ達をいじめる悪い奴がいるから助けて欲しい、と。

このれみりゃは、その話を聞いて、わるいやつをやっつけるべく、
こうして紅魔館にやって来たのだった。

「う?」

れみりゃは、館の庭先にとある一団を発見する。

「う~~♪ れみりゃがいっぱぁ~~い♪ か~わいいどぉ~♪」

館の庭先には、紅魔館で飼われているゆっくりれみりゃ達が勢揃いしていた。
みな歌を歌ったり、うぁうぁ踊ったりして楽しそうだ。

「うー……? みんな楽しそうにゆっくりしてるどぉ?」

見たところ、いじめられている様子は無い。
話に聞いていたのは、何やら様子が違う。

「れみりゃもゆっくりしたいどぉー♪ なかまにい~れてぇ~♪」

パタパタ木から下りていくれみりゃ。
が、れみりゃが屋敷に下りるよりも一歩早く、
庭先のれみりゃ達はメイド達に連れられて屋敷の中に入っていってしまう。

「みんなどこぉ~♪ れみりゃおいてけぼりにしちゃイヤイヤ~~ん♪」

誰もいなくなった庭に下りた、れみりゃ。
周囲には、ゆっくり一匹おらず、広大な庭の中央に一人取り残された形となる。

「うー♪うー♪ ゆっくりゆっくり~♪」

しばらく、ニコニコしながら仲間の登場を待ったが、何も起こりはしなかった。

「うー……」

せっかくたくさんの仲間と"ゆっくり"できると思ったのに……。
れみりゃは、がっかりしてしょぼーんとする

「うっ! わかったどぉ!」

やがて、れみりゃは顔を上げ、プンスカ憤慨しだした。

「みんなわるいやつにつかまっちゃったんだどぉー!」

そう、やはりここは悪い奴のヒミツ基地なんだ!
れみりゃはそう解釈し、仲間を助けるべく燃え上がる。

「みんなぁ~いまたすけるからまっててねぇ~ん♪」

だが、相手はあれだけたくさんいたれみりゃ達を捕まえてしまうほどの強敵!
うかつに入るのは危険と感じたれみりゃは、なにか良い手は無いかと屋敷の周りをパタパタ回る。

「うっ! これだどぉー! やっぱりれみりゃはおりこうさんだどぉ~♪」

れみりゃは、屋敷から出されたゴミを集める集積所で"あるもの"を見つけ、目を輝かせた。

「うーしょ♪ うーしょ♪」

その"あるもの"をえっちらおっちら引っ張り出すれみりゃ。
それは、大きなダンボールの空箱だった……。


   *   *   *


「……はぁ」

紅魔館の廊下を、一人の少女が溜息をついて歩いていた。
彼女の悩みの種、それは少女への巷の評価に因るものだった。

「納得いかないわ……。この私のどこがカリスマブレイクなのよ……」

そう、この少女こそ齢500年、幻想郷でも屈指の力を誇る吸血鬼、
紅魔館当主レミリア・スカーレットであった。

しかし、その立場や実力に反して、昨今の彼女の評判は決してかんばしくない。
恐怖と畏怖の的であるべき彼女のイメージは、今や地に落ちていた。

人々は影でごう囁いていた"カリスマ(笑)"と。

「もう! それもこれも咲夜があの変な奴らを飼い始めたせいよ!」

そう言って、勢いよく自室の扉を開けるレミリア。
部屋の中からは心地良い風が流れてきて、彼女の髪を揺らした。

「あら? 窓を開けていたかし…ら……」

レミリアは、部屋の中の様子を見て、ピクっと体を硬直させる。
部屋の窓ガラスが割られ、部屋の中に石ころが転がっている。

そして、もっとも大きな違和感。
部屋の中央に、巨大なダンボールが置かれていた。
しかも、そのダンボールの下からは、短い足と隠し切れていない大きなお尻が伸びていた。

「…………」

絶句するレミリア。
たった今、彼女が口にした自分の評判を貶めているもの。
すなわち、にっくき"ゆっくりれみりゃ"なる存在が、あろうことが部屋に入り込んでいた。

「う~~♪ せんにゅうせいこうだどぉ~♪」

そのれみりゃは、レミリアの存在など気にも留めず、
嬉しそうに口を開いた。

「……あなた、ここがどこだかわかっているの?」
「うっ!?」

れみりゃは、レミリアの声を聞くと、慌てて身を屈めてダンボールを目深に被る。
しかし、ダンボールはれみりゃより小さく、体を完全に隠し切れてはいない。

「うー、あぶなかったどぉー♪」

……と、安堵の声をあげるれみりゃ。
どうやら、れみりゃ本人は完璧に隠れられていると思っているらしい。

「……それで隠れてるつもり?」
「うっ!?」
「……バレバレじゃない」
「うー! そんなことないのぉー! れみりゃのへんそうはかんぺきなのぉー!」

返事までしておいて何を言っているのか…。
レミリアは、仮にも自分の姿と似ている(と周りが言う)このゆっくりが、
あまりにもバカで情けないことに対し、怒りを通り越して悲しくなってきていた。

運命を操作する能力を持つ吸血鬼にしても、
この神のイタズラとでも言うべき運命には、ただ悲嘆するしかなかった。

「なんて……情けない……」
「うー♪ ここにはだれもいましぇ~ん♪ おねぇーさんはゆっくりしないでどっかへいくどぉー♪」
「どこへも行かないわよ」
「うー! だめぇーなのぉー! それじゃれみりゃがゆっくりできないのぉー!」
「だって……」
「ぎゃおー♪」
「ここは私の部屋だもの!」

レミリアは、我慢がならず、れみりゃのダンボールをがばっとはぎ取る。

「うっ!」

一瞬、ダンボールを取られたのに気付かなかったれみりゃは、
レミリアと視線が交わっていることに首を傾げた後、ポンポンと両手で自分の頭を撫でて、
ダンボールが無いことを認識した。

「う~~~♪ みつかっちゃたどぉー♪」

れみりゃは、慌てず騒がず、ただ笑顔でそう言った。
目の前に立つレミリアの恐ろしさも、その機嫌の悪さも、
全く理解していないからこそできる言動だった。

もし、この場に並の人間や妖怪がいたならなら、そんなことは出来はしない。
何故なら、レミリアは怒りでプルプルと体を震わせ、今にも爆発寸前だったのだから。

「れみりゃを見つけるなんてなかなかのもんだどぉー♪ ごほうびになでなでしてあげるぅ~♪」

とてとてレミリアに近づき、
精一杯、背と手を伸ばして頭を撫でようとする、れみりゃ。
が、あともう少しのところで手が届かず、上手く撫でることができない。

「うー! あたま下げてくれないと、なでられないどぉー!」

レミリアに頭を下げるように催促する、れみりゃ。

「私が、お前に、頭を……?」
「そうだどぉ! じゃないとなでなでしてあげないどぉー?」
「いらないわ、そんなもの……」
「う~? もしかしてなでなで以外のごほうびがほしぃのぉー?」

れみりゃは、しばし考え込んでから、合点する。

「ゆっくりりかいしたどぉー! もぉ~~おねぇーさんはよくばりやさんだどぉ~~♪」

れみりゃは苦笑してから、

「でびりゃうぃーーーんぐ♪」

と叫んで、レミリアのベッドの方へパタパタ飛んでいく。
そして、靴も脱がずに土足のまま、ベッドの上に着地する。

「れみりゃの~とっておきのしぇくしぃ~だんすぅ~~♪ とくべつにみせてあげるぅ~~ん♪」
「………………」

レミリアは無言だった。
しかし、その怒りは確実に溢れだしていき、部屋の中の小物をカタカタと揺らす。

「れっつ☆しゅびどぅばぁ~~~♪」

れみりゃは、そんなレミリアを無視して、勝手にベッドの上で踊り出す。
他のれみりゃでは踊れない……と本人が勝手に思っている、自慢の創作ダンスだ。

うぁうぁリズムを刻み、手足をヨタヨタ動かし、お尻をふりふり。
やがて、のってきたれみりゃは、さらに自慢のテーマソングを歌い出す。

「あれは~だれどぉ♪ だれどぉ♪ だれどぉ♪」

それは、森のれみりゃ達と一緒に何日もかけて考えた歌。

「あれは~でびりゃ♪ でびりゃま~ん♪」

正義の味方である自分を鼓舞する、お気に入りの歌。

「でっび~りゃまぁ~~~~~ん♪」

ばぁーん!
両手両足を大の字にして、決めポーズを取る、れみりゃ。

「……でびりゃ、まん?」
「うっうー♪ れみりゃは~せいぎのみかた、でびりゃまんなんだどぉ~~~♪」

正義の味方・でびりゃまん。
れみりゃは、それが自分の名前であり、役目であり、使命だと思っていた。
そして今日も、正義の味方でびりゃまんは、こうして悪い奴がいる屋敷に潜入したのだと。


故に、れみりゃは何も悪びれず、レミリアからも理解と協力が得られて当然だと考えた。

「でびりゃまんのかつやく、ききたい~♪」
「……聞きたくない」
「えんりょしないでいいどぉー♪ とくべつさぁーびすだどぉ♪ う~、れみりゃやっさしぃどぉー♪」

まずはどこから説明しようかな?
れみりゃは、「う~~~」と考えた後、
まずは格好良いテーマソングの続きを聴かせてあげようと結論づけた。

「うぁうぁもの~なを~う~けてぇ~♪
 ぷっでぃんをたべてぇ~たた~かう~れみりゃ~♪」
「……うるさいっ!!」

とうとう我慢の限界。
レミリアは、れみりゃを怒鳴りつけた。

「う?」
「おまえなんかの、おまえなんかのために、私のカリスマが……」

下唇を噛み、握り拳を振るわせるレミリア。

「う~? おねぇーさん、かりしゅまでおなやみなのぉ~♪」

一方、この状況になってまだ、れみりゃは危険を感じていなかった。

このれみりゃ、れみりゃ種としてはなまじ強く、
また、でびりゃまんとしてチヤホヤされてきたため、
いまだに危機的な状況や死ぬような目に陥ったことがなかった。

それどころか、自分はヒーローなのだ、カリスマなのだという自負心ばかりが強くなっていた。

「しょーがないどぉー♪ このでびりゃまんがぁ~、かりしゅま☆のなんたるかをおしえてあげるどぉ~♪」

全くの善意から、レミリアに"かりしゅま道"を教えてあげようとする、れみりゃ。

だが、次の瞬間。

れみりゃはおかしなことに気付いた。
目の前にいたはずのレミリアがいつの間にか消えているではないか。

「うー?」

代わりに見えるのは、天井とシャンデリア。
いつの間にか寝てしまったのだろうか? れみりゃは不思議に思って体を起こそうとする。

「う~~? おきれないどぉ?」
「そりゃそうでしょうね……」
「う?……うわぁぁぁぁぁぁぁ---っ!!」

レミリアの声に振り向く、れみりゃ。
すると、そこには首の無い体があった。
その体は、紫がかったスミレいろのおべべに身をつけていた。
森のみんなから賞賛された自慢のスミレ色が。

「うあぁぁぁぁっ! それ、れみりゃのだいじだいじだどぉーーー!!!」

顔だけになり床に転がるれみりゃが、泣き叫ぶ。
レミリアは、一瞬の間にれみりゃをなぎ払い、体を奪い取っていたのだ。

「ふん、これが無ければ、あなたも無礼を働けないでしょう?」
「うあ~~っ! かえせぇぇ~~っ! かえすんだどぉぉぉ~~~っ!!」
「ふふ、イヤよ♪」

吸血らしく、邪悪な笑みを浮かべるレミリア。

「れみりゃのおからだぁぁーーーっ!! かえさないとぉたべちゃうぞぉぉぉぉーーーっ!!」
「おおー、こわいこわい♪」

ぶ~んぶ~んと、レミリアは雑にれみりゃの体を振り回す。
振り回されるたび、切断面からは肉餡が飛び散っていく。

「うっぎゃぁぁぁ! れみりゃのぷりぃてぃーぼでぃがぁーーー! ないすばでぇがぁぁーーーーっ!」

大事な体を粗雑に扱われ、気が気でないれみりゃ。

「やだ、手がベトベトだわ……汚らしい」
「ぎゃぉぉぉっ! れみりゃのおからだ、きちゃなくなんてないのぉぉぉーーっ!!」
「なに言ってるのよ。もう、手がベトベトになっちゃたじゃない!」
「う~~~! べとべとちがうのー! れみりゃのかりしゅま☆おじるなのぉー!」

かりしゅま汁って……。
つくづく、目の前のゆっくりに対して呆れ果てるレミリア。

「そんなに言うなら取り返してみなさいよ……ねぇ、カリスマさん?」
「うーーー! かりすまじゃなくて、かりしゅま☆なのぉー!! おねぇーしゃんのぶーーかぁっ!!」

悪態をつく、れみりゃに対して、レミリアの額に新たな青筋が浮かぶ。

「口の利き方に気をつけなさい? つい手が滑って、この体ポイしちゃうかもよ?」
「うううーーーっ! おねーしゃんわるいやつだどぉーー! れみりゃがやっつけてやるどぉーー!」

床の上のゴロゴロ転がる、れみりゃの頭部。
レミリア、最小限に力を絞った弾幕を、そのれみりゃの額に当てる。

「ひどぉいどぉぉーーーーっ!!」
「あら、だから忠告したでしょ? 口の利き方」

れみりゃの額が赤く染まる。
だぁーだぁー涙を流す、れみりゃ。

「ざくやーあーーーー! なにしてるんだどぉーーー! はやぐおぜうざまをだずげるんだどぉーーーっ!!」
「……もう、一発くらいたいみたいね♪」
「ひ、ひぃっ! い、いやぁ~~~!」

れみりゃは、がくがく震えながら、か細い声をあげる。

「いやぁー、いたいたいの、こあいどぉー……」

れみりゃは、ぎゅーと目を瞑り、小刻みに頭を振り出す。

「う~~~、いたいいたいの、もうやめてぇ……」
「あらあら、この程度で降参だなんて、とんだカリスマさんね」

追い打ちをかけるレミリア。
彼女は、ここぞとばかり普段の鬱憤を晴らしにかかっていた。

「う~~~、れみりゃはかりしゅまなんだどぉ~~~~! こんなことしちゃ"めぇ~"なのぉ~~~!」
「あら、まだそんな生意気言うの?それなら」

レミリアが再び弾幕を撃とうとする。
と、れみりゃは何かに納得が言ったらしく、顔を上げた。

「うーー! わかったどぉ! おねぇーさんのねらい!」
「え?」
「おねーさん、れみりゃにしっとしてるんだどぉーー!」

思いもよらぬ反応に、レミリアは弾幕を撃つのを止め、唖然としてしまう。

(嫉妬? この私が? この品性の欠片もない肉まんに?)

レミリアは、怒りや呆れを通り越して、頭が白けていくのを感じた。
彼女は、まさか目の前の肉まんから、そんな無礼を言われるとは思っていなかった。
そして、すっかりその肉まんと同じ目線で自分が話していることにも気づき、なんだか無性にばからしくなっていった。

「……ふん、興が冷めたわ」

レミリアは、れみりゃの体を、れみりゃが隠れていたダンボールの中へ放り投げる。
どさっと無造作にダンボールの中に格納される、れみりゃの体。

「な、なにするんだどぉぉぉーー! れみりゃのかりしゅまぼでぃだどぉぉーーー!!」
「もういい、飽きたわ……」

レミリアの発言を、れみりゃは都合良く解釈して、元気を取り戻す。

「う~~♪ しっとはみにくいどぉー♪」
「……なんですって?」
「れみりゃのおからだをとっても、かりしゅま☆は手にに入らないのわかったのねぇ~~ん♪」
「…………」

レミリアは無言のまま、弾幕をれみりゃの体に放つ。
部屋を汚してはいけないと威力を絞った一発は、れみりゃの体だけに的確に穴を開けた。

「も、もうやめてぇぇぇぇ!! れみりゃのかりしゅま☆わけてあげるからぁぁーー!!」
「いらないわよ、そんなもの」
「なんでそんなごどいうどぉぉーーー!!?」
「……それより急がないと、お前の体が無くなっちゃうわよ」

レミリアは、もう一度弾幕を当てようと指先をれみりゃの体に向ける。
それを見たれみりゃは、必死に自分の体へ向かっていく。

「うあぁぁぁん! れみりゃのおからだぁ! そこでまっててねぇ~~~!」

れみりゃは、ゆっくりらしく、ぴょんぴょん頭を跳ねさせて、ダンボールへ近づいていく。
れみりゃ種の本能として、すぐに体を取り戻せば、まだ接合して再生することができると感じていた。

「うーー!」

力を込めて跳躍する、れみりゃ。
ダンボールの中の、自分の体の上に無事着地する。

「うっう~~~♪ れみりゃのおからだだどぉ~~~♪ すぅ~りすぅ~り♪」

れみりゃは、愛おしそうにスミレ色のおべべに頬ずりを繰り返す。
それを軽蔑の眼差しで見つめる、レミリア。

彼女は、元々れみりゃの体をここで破壊することは考えていなかった。
そんなことは造作も無いことだったが、それでは忌むべき肉まんの匂いが、
一時的にでもこの部屋に染みついてしまうだろう。

だから、"いつも通り"の処分の仕方を、冷静に行おうと考えていた。

「……咲夜、来なさい」
「はい、お嬢様」

レミリアが呼んだ刹那、その傍らに忠実な従者が姿を現した。
時と空間を操作する力を持った、レミリア自慢の従者。
わずかな欠点を除きパーフェクトな、メイド長の咲夜だ。

「あら?」

咲夜は、ダンボールの中のれみりゃを見ると、早速その欠点の一つを露わにした。

「どうしたの、れみりゃ?」
「うーー♪ さくやだどぉー♪」

れみりゃに駆け寄る咲夜。
れみりゃは、本能でそれが"さくや"であることを察して、顔をほころばせる。

「ほら、しっかり」

れみりゃの扱いには、慣れている咲夜。
分断された体の上半身を抱え起こすと、れみりゃの頭をその上にのせる。
そして、エプロンのポケットから常備している小瓶を取り出すと、
その中身を手にのばして、れみりゃに塗っていく。

瓶の中身は、小麦粉と蜂蜜と油を混ぜたものだ。
それは、遊んでいてケガをしたゆっくりれみりゃに塗るために、
咲夜が日夜研究して作り上げた、お手製のゆっくりゃ用傷薬だった。

「うーー! さくやーーー! あのおねぇーさんがひどいことするのぉーー!」
「はいはい、いま治してあげるから静かにしてるの」
「う~~♪ れみりゃいい子だからぁ~ゆっくりしずかにするどぉ~♪」
「はい、ぬ~りぬ~り」
「う~♪ う~りう~り♪」

流石に手慣れた様子の咲夜。
ゆっくりゃ用の傷薬を、手早くれみりゃの首周りに塗り込んでいく。
すると、ゆっくりれみりゃ特有の再生能力とあいまって、れみりゃの胴と頭が見る間につながっていった。

「う~♪ いたいのぽぉ~い♪」

さっきまでの泣き様がウソのように、れみりゃは笑顔を取り戻していた。

「うわ……きもちわる……」

ゆっくりの不思議生態を目の当たりにして、
自分よりもれみりゃを優先した咲夜への怒りも忘れ、引き気味になるレミリア。

「それでお嬢様、何か御用でしょうか?」

完璧で瀟洒なメイドは、れみりゃを膝の上に乗せてあやしながら、
本来の主人であるレミリアに話しかける。

「そ、そうよ!そのことで呼んだの! いい、そいつが勝手に私の部屋に入っていたのよ!」

咲夜は、それを聞いて顔を曇らせる。

「……本当なの?」
「うっうー! れみりゃはかれいにせんにゅうしたんだどぉー♪ いいこいいこしてぇ~♪」

れみりゃは、ダンボールを指差して笑う。

「わかってるわよね、咲夜。 こいつらを飼う時にした、私とした約束?」
「はい、お嬢様には決して御迷惑をおかけない。もしかけたら……」
「……今夜はダンボール肉まんね」

ニィと口の端を上げるレミリア。
れみりゃは、俯く咲夜の顔見上げ、楽しそうにはしゃぐ。

「うーとね、うーとねぇ、れみりゃは今夜はぷっでぃんがいいのぉー♪」

"わるいやつ"を退治する……そんな目的はすっかり忘れ、
館のれみりゃのように咲夜に甘える、でびりゃまんれみりゃ。

咲夜は、悲しそうに微笑んで一度だけれみりゃの頭を撫でると、
れみりゃをダンボールにいれて、それごと持ち上げる。

「う~~?」
「行くわよ、れみりゃ」

レミリアはその様子を見て、楽しげに目を細める。

「ふふ、今晩の食事が楽しみだわ♪」
「それでは、失礼します……」

咲夜は一礼すると、ダンボールごとれみりゃを持って部屋を退室する。
ダンボールの上で揺られるれみりゃは、これから起こることを考えもせず楽しそう。

「ゆ~らゆ~ら♪ たぁーのしぃどぉー♪」

咲夜は、何も言わずツカツカ廊下を歩いていく。

「ねぇーさくやぁー♪ れみりゃちょっとつかれたからー、ゆっくりしたいどぉー♪」
「そうね、たっぷりゆっくりできるわよ……」

と、口にしかけて、咲夜はふと気付いた。
このれみりゃが、自分が飼っていたれみりゃでは無いことに。

「あなた、ウチのれみりゃじゃないの?」
「うー♪ れみりゃはもりからきたのぉー♪ 
 ここはえれがんとなおやしきだからぁー、れみりゃのべっそーにしてあげるどぉー♪」

咲夜は、興味深そうにれみりゃを見つめる。
自他ともに認めるれみりゃマニアの咲夜ではあったが、
このスミレ色の服を着たれみりゃは見たことが無かった。

咲夜の中で葛藤が起こる。
主レミリアの命令は絶対だ。
そして、彼女への忠義もまた絶対。
それは強制ではなく、自らの願いであり矜持だ。

けれど。
同時に。

この珍しいれみりゃを調べてみたい、飼ってみたい。
咲夜は、その自らの欲望を否定できなかった。

「……ねぇ、あなた名前はあるの?」
「うー! よくぞきいてくれたどぉー!」

れみりゃは、例のテーマソングを歌いだす。

「あれは~だれどぉ♪ だれどぉ♪ だれどぉ♪」

それは、森のれみりゃ達と一緒に何日もかけて考えた歌。

「あれは~でびりゃ♪ でびりゃま~ん♪」

正義の味方である自分を鼓舞する、お気に入りの歌。

「でっび~りゃまぁ~~~~~ん♪」

バンザーイ!
ダンボールの中で、両手を上げて決めポーズをとる、れみりゃ。

「ふふふ、そう……でびりゃまんね……」
「そうだどぉー! れみりゃは~~、もりのかりしゅま☆なんだどぉ~~~♪」

咲夜は、ダンボールを床に置き、れみりゃだけを抱き上げる。

「うー♪ うー♪ だっこしゅきしゅきぃ~~~♪」

無邪気に微笑むれみりゃに対し、
咲夜は邪な笑みを浮かべて口元を歪める。

実は最近、咲夜はお気に入りのれみりゃの一家を失い、落ち込んでいたところだった。

その一家とは、母親が"ザウルス化"してしまった一家だった。
ザウルス化したれみりゃは、その能力の低下とともに、大概が短命に終わる。

故に咲夜は、その一家を大事に屋敷の中に匿っていた。
だが、それを不満に思ったのか、気が付いた時には、その一家は屋敷から逃げ出していた。

厳しい自然環境に放り出されては、あの一家が生き延びられる可能性は皆無だろう。
咲夜は、無念で胸をいっぱいにした。

そして同時に、こんなことがもうないよう、
より一層"ゆっくりれみりゃ"に対して愛情を注ぐようになったのだった。

その矢先に現れた、特別なゆっくりれみりゃ。
咲夜は、でびりゃまんれみりゃに対し、(勝手に)何か特別なものを感じだしていた。

「ふ、ふふふふ♪ 一緒にゆっくりしましょうね♪」
「うー! れみりゃ、さくやといっしょならあんしんして、ゆっくりできるどぉー♪」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃない……」

咲夜は、れみりゃの顔を撫で撫でムニムニ繰り返し始める。

「そーれ、む~にむ~に♪ す~りす~り♪」
「う、うぅーーー? さ、さくやぁーーー?」

怪しく微笑み、鼻血を垂らす咲夜。
れみりゃは、なんだか背中が寒くなった気がした……。




おしまい?




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≪あとがき≫
gy_uljp00198に見て元気になったので
ティガ5を終わらせようと思ったんですが……。
気付いたら、こっちが先に出来ていました(汗)

by ティガれみりゃの人
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最終更新:2022年01月31日 02:03
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