※ぬるいじめです。
「むきゅ~、ここはぱちゅりーたちのはたけよ!」
俺が畑にやってくると、珍しくゆっくりぱちゅりーが居て、いきなりそんなことを抜かしやがる。
どうしたものかと考えながらも、付け上がらせないように軽く蹴り飛ばしてから反論した。
「いいや、ここは俺の畑だ」
「むきゅ~、ちがうわよ!ぱちゅりーたちのはたけよ!」
「お前ら農業しないだろうが!」
言っても聞かないなら容赦する理由はない。害獣としてさっさと潰してしまおう。
そう心に決めたとき、ぱちゅりーが面白いことを言い出した。
「むぎゅー!ずっどむがしはばちゅりーだぢのもりだったの・・・ゲフッゲフッ!」
つまり、こいつの主張はこういう事だ。
人間の畑だというがここには元々ゆっくりの住む森があった。
そして、人間が後から入ってゆっくりを追いやったのだ。
だからお前らに偉そうに所有権を主張する資格はない。
「なるほど、一理あるな」
「むきゅ!そうでしょ!だからぱちゅりーにおやさいを・・・」
「ん、待てよ。元々って言うけどそれってどのくらい昔の話なんだよ?」
よくよく考えてみれば人間が始めてゆっくりを見つけたのは10年ほど昔だったはず。
そして俺は現在21歳。つまり、ゆっくりの存在が知られるようになったのは俺が11歳のときのこと。
付け加えるともう死んでしまった爺さんの話を聞いた限り、俺の一家は60年以上昔からこの地で生活している。
「そんなのわからないわ!でも、おかーさんがむかしはここはぱちゅりーたちのもりだったらしいっていってたからまちがいないわ!」
平仮名ばかりで読みにくいが、母親がここら辺は昔はぱちゅりー達の森だったらしい、と言っていたからそれで間違いないそうだ。
つまり、母親の時点で既に伝聞になっているのだ。そしてこのぱちゅりーは伝聞の話を事実だと思っている。
なんだ、やっぱりただのゆっくりか。
「なあ、お前の母さんはその森を見たのかよ?」
「みてないわよ。だから“らしい”っていったのよ~!」
「じゃ、お前の母親が言っていたことが間違ってるんだな」
「むきゅー!ぱちゅりーのおかーさんうそなんていわないわ!」
「じゃあ、どっかの見栄っ張りなまりさの言葉を鵜呑みにしたんだろ」
「むぎゅううう・・・おかーさんをばかにしないでー!」
母を侮辱されたと思い激怒したぱちゅりーは貧弱な体を引きずって体当たりを仕掛けてくる。
勿論、痛くもかゆくもないので適当に喰らいながらも俺は淡々と話し続けた。
「大体さ、お前らの寿命ってせいぜい5,6年じゃん?」
「むきゅ!むきゅ!・・・むきゅ!」
「それにさ、お前らがここいらに出没するようになったのって10年前じゃん?」
「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」
もう息切れしてるよ、このぱちゅりー。
しかし、相手の様子なんてお構いなしに俺は話を続けた。
「でもさ、俺10年以上前からここに住んでるんだよ」
「むきゅう・・・それが、なんなの、よ~・・・」
「だからさ、どう計算してもお前らの森がここいらにあった時期なんて存在しないんだよ」
「・・・・・・・・・!?む、むきゅうううううううう・・・!?」
流石ぱちゅりー、ちゃんと3以上の数字の計算が出来るらしい。
俺の示した数字と母の言葉が矛盾すると言う事実を前にしてぱちゅりーは思いっきり青ざめている。
かと思えば、突然顔を真っ赤にしてこんなことをわめき散らしやがった。
「お、おにーざんがうぞをづいでるのよ!?・・・ゲホッゴホッ!」
「うんにゃ、ついてないよ」
「だっだらしょうごをみぜでね!」
一応、子どものころに物好きな天狗に撮ってもらった写真が証拠になりそうではある。
しかし、ゆっくりに写真がどういうものか理解できるとも思えないし、揺るぎようのない証拠なんて早々用意できるものじゃない。
勿論、人間相手ならいろんな書類や近所の人の証言で何とかなるかもしれないが、相手はゆっくりだ。
わけのわからないことをわめき散らして、証拠の正当性を認めようとしないのがオチだろう。
そう判断した俺は適当に切り返してやった。
「じゃあ、お前のお母さんが嘘をついてないって証拠を見せてくれ」
「むきゅ!?・・・おにーさん、しょうこがないからってうそをごまかすなんてきたないわよ!」
「お前が証拠を出せなければそれが証拠ってことで」
人間相手なら無茶振りもいいところだが、相手は変にプライドの高いゆっくり、それもインテリ気取りのくせに根本的にはお馬鹿なぱちゅりーだ。
まりさ種なんかならまだしもぱちゅりー種は自分が提示した条件に反する言動や行動はしないはず。
つまり、さっきのやり取りによって「ぱちゅりーが証拠を出せなければぱちゅりーが嘘つき」になる状況を自ら招いてしまったのだ。
「ぱ、ぱちゅりーたちはかよわいのよ。やさしくしてね!」
「つまり証拠を示せないんだな。ところで、お前らが来てから森から消えた動物が居るんだけどどう思う?」
「むきゅ?ぱちゅりーたちにはかんけいないわ」
「そうでもないぞ。お前らが食べるものを食べていた連中は競争に敗れてどこかに消えていったんだからな」
「そんなのじゃくにくきょうしょくよ~!ぱちゅり・・・むきゅ!?」
流石ぱちゅりー。だが、所詮はゆっくり。
「じゃあ、か弱いぱちゅりーを俺が食べてもいいんだな?」
「む、むきゅ~!ぢがだながっだのよ!もぢのゆっぐりがふえずぎてだべるものがないのおおおおお!」
「それは、お前らが、考え無しに、すっきり、するから、だな」
ついに泣き脅しまではじめたぱちゅりーをニヤニヤ笑いながら見下ろし、踏みたい衝動を堪えて話を続ける。
「そうか、ゆっくりが増えすぎたのか・・・それじゃあ、餌集めも大変だろう?」
「むきゅ~・・・ぱちゅりーいつもおなかぺこぺこよ~・・・」
「じゃあ、加工所の人にでも駆除してもらおうか?」
「むぎゅ!?」
その言葉を聞いたぱちゅりーはさっきの泣き脅しの表情のまま青ざめていく。
恐らく、食料集めに苦労しているのは事実だろうが、だからと言って仲間が駆除されることを是とするほど薄情ではないのだろう。
恐怖ゆえか、プルプルと体を振るわせながら俺の足元にすがり付いてきた。
「やべでえええ!ぎっどにんげんとぎょうぞんでぎるはずよ・・・グホッゲハッ!」
「共存?どうやって?」
「むきゅ!にんげんはぱちゅりーたちにおやさいをさしだすの!」
「うん、それで?」
「ぱちゅりーたちはこのおうちでゆっくりしてあげるわ!」
「ほうほう?」
「そうすればぱちゅりーたちもにんげんもゆっくりできるのよ!」
「なるほどなるほど・・・・・・却下」
正直に言おう。最後のせりふを聞いた瞬間に「こいつらある意味すごい生き物だな」と思った。
「どほぢでええええ!?」
「農作業と収穫量の減少で余計ゆっくりできなくなる」
「むきゅ?」
「まさか、野菜が勝手に生えてくるなんて思ってないよな?」
「むぎゅ!?ちがうの?」
「あれは人間が手間隙かけて作ってるんだよ。雑草と一緒にするな」
野菜は人間が作っている、ぱちゅりーはその事実に驚愕しながらも口を開いた。
「むきゅ~、だったらみんなでおやさいづくりをてつだってあげるわ!」
「お前らにくれてやる野菜の量、お前らに仕事を教える時間、お前らが盗み食いするリスク・・・それらを総合的に考えて却下」
「むぎゅ!?どほぢ「お前らじゃ非力すぎて役に立たないからだ。寧ろ邪魔?」
俺とぱちゅりーはしばし黙りこくって見つめ合う。
「「・・・・・・・・・・・・」」
が、間が持たなくなったぱちゅりーが半端に長い沈黙を破った。
「じゃ、じゃあ・・・ぱちゅりーたちのたべものをわけてあげるわ・・・」
「何で虫や雑草と野菜を交換せにゃならんのだ」
というか、当初の目的を見失っとるぞ、ぱちゅりーさん?
などと俺が心の中で突っ込んだところで、ぱちゅりーがそれに気づくことはなく、今度はこんな提案をしてきた。
「は、はたけをあらしたなかまとむれのおきてをやぶったこをゆっくりたべてもいいよ・・・!」
ついに仲間を売るか。とは言えゲスだけって条件を出しているあたりに意地を感じるが。
しかし、この条件はなかなか悪くないのではないだろうか?
ゆっくりでも邪魔なのは畑を荒らす奴だけだし、規律を破るものはゆっくりにとっても邪魔だ。
しかも、ゆっくりがゆっくりを制裁したところでそれを食べることは出来ない。
ならば俺にそいつらを引き渡して、野菜と交換してもらうというのはWinWinの関係と言えなくもないような気がする。
「ふむ・・・それくらいなら考えてもいいかな?」
「むきゅ!だったらぱちゅりーをゆっくりたすけてね!」
「ああ、わかった。でも、こんな大事なことをお前だけじゃ決められ無いだろう?」
「むきゅ、とうぜんよ!おさにそうだんしないとだめよ!」
「じゃ、俺が長と直接相談するから、集落に案内してくれないか?」
「ゆっくりりかいしたわ!」
そう言って嬉しそうに跳ねるぱちゅりーを抱きかかえるた俺は彼女の指示に従って森の奥へと進んでいった。
「むきゅ!ここがぱちゅりーたちのむらよ!」
「ゆゆっ!みんなぱちゅりーがかえってきたよ!」
「ゆゆっ!にんげんもいっしょだよ!」
「ん、あー・・・ゆっくりしていってね!」
「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」
1時間ほど歩くとあっけなくたどり着いたゆっくりの集落では想像以上の数のゆっくりがゆっくりしていた。
なるほど、確かにこれだけの大集落になれば餌集めも大変だろう。
もっとも、森の様子やぱちゅりーが単体で人里までやってきていた事を考えると餌集めが大変なのは他の要因もありそうだが。
そしてその他の要因が俺の予想通りなら俺はぱちゅりーにしてやられたことになるのだろうか?
「「「「「ゆっへっへ・・・おにーさん、まりささまにたべものをよこすんだぜ」」」」」
予想通りだ♪ この群れは勤労意欲の無い怠け者やゲスが多いらしく、さっそく5匹ものゲスまりさに絡まれてしまった。
しかし、こうもゲスの多い群れ相手にゲスと野菜を交換すると相当の量の野菜を持っていかれてしまいそうだ。
よし、この交渉はなかったことにしよう。
即座にそう結論付けた俺はゲスどもの中にぱちゅりーを放り込み・・・
「やっぱり加工所の人連れて来るわ」
と、言い残してゲスの多いゆっくりの集落を後にした。
加工所の人を連れてきたときには群れはほんの300mばかり北に移動していたが、特に問題なく捕まえることが出来た。
その後、ぱちゅりーの姿を探してみたが、やっぱり見つからなかった。
‐‐‐あとがき‐‐‐
ぱちゅりーと真正面から話し合ったお兄さんの優しさは異常
byゆっくりボールマン
最終更新:2008年09月28日 20:46