ゆっくりいじめ系970 冬の味覚

※地名とか色々適当に俺設定、そういうの嫌な人は注意



冬の味覚



数年前、ここ幻想郷にゆっくりが現れて以来、私達の生活は様々な変化を見せた。
中でもその変化が如実に現れたのが『食』である。体が饅頭で出来ている彼らは、食料として非常に優秀であった。
本誌では、そんな彼女らを用いた幻想郷各地の至高のゆっくり料理を紹介するものである。

「ぶらりゆっくり食べ歩紀行  ~冬の伝統、干しゆっくり~」

ぎゅっぎゅっ・・・「いぎゃああああぁぁぁぁ!!!」

人々の足踏みに合わせ、ゆっくり達の悲鳴がリズミカルに響く。
今回紹介するのは『干しゆっくり』である。この干しゆっくりは北の村で作られたのがはじまりと言われている。
ここ北の村は左右を痩せた土地に囲まれており、また川からも遠く離れ農耕を行うには難しい土地であった。
だが、そんな場所でも強く立派に成長する作物があった。それがこれ、サツマイモである。このサツマイモは生育に肥沃な養分を
必要とせず、北の村の土でも充分に育つことが出来た。また水気が少なく、一年を通して乾燥している気候もサツマイモの甘さを
高める要因となった。そういったことから、ここ北の村ではサツマイモが貴重な栄養源として、あるいは外貨を得るための商品と
して、大変重宝されていた。
話をゆっくりに戻そう。そんなこの村で考案されたゆっくり料理こそが「干しゆっくり」である。これはゆっくりの出現以前より
厳しい冬を越えるためにと作られていた「干しいも」を基に考案された加工法である。
作り方は、秋に作物を狙って畑に現れるゆっくりを罠を用いて一網打尽にするところから始まる。
当時人間の間でも貴重であった甘味の一つであるサツマイモは、ゆっくり達にとっても危険を冒すだけの価値を持っていた。
後を絶たぬゆっくり達の襲撃、それらに対して用いられたのがトラバサミである。もっとも、従来の野生動物を捕獲するために用
いられるそれと違い、直径一寸程しかない小型のものである。この大きさなら芋の蔓に結び付けるだけで使用が可能で、カモフラ
ージュも簡単である。実際にその効力を検証してみよう。

「ゆゆ!!にんげんがいない いまがちゃんすだよ!!」

そうして藪を掻き分けて現れたのはまりさ種率いる数匹のゆっくり達。どうやら人の居ぬ間にこの畑のサツマイモを失敬しようと
のことらしい。

「にんげんは ごはんをひとりじめしてずるいよ!!ゆっくりできてないね!!」
「おいもさん!!れいむたちが すぐにたべてあげるから ゆっくりまっててね!!」

プンプン怒ったり、あるいはだらしなく涎を垂らしたり。ゆっくり達は次々と勝手な主張を口にする。どうやらこうして自身を鼓
舞し、士気を高めているらしい。

「「「そろーり・・・そろーり・・・」」」

そう口で言いながら列をなすひしゃげた饅頭。当人達は見事に隠れているつもりらしいが、蔓の上に飛び出した頭と、辺りに響く
『そろーり』の合唱によりバレバレである。だがそれを我々は止めはしない、そうする必要が無いからである。

「ここらでいいよ、それじゃゆっくりひっぱってね!!ゆーえす!ゆーえす!」
「「「ゆーえす!ゆーえす!」」」

皆で蔓を咥えると声を合わせてそれを引き始める。これを引き抜けば甘~いサツマイモが鈴なりに姿を現す、その姿を想像するだ
けで、おのずと涎も流れ出す。そんな折である。

バチンッ!!
「ゆぎぃ!!?いだいいいぃ!!!!」

1匹のれいむにトラバサミが食いつく。突然の痛みに、れいむは思わず蔓を咥えたまま転がり始める。
だがそれがいけなかった。

「ゆおっ!?れいむ!!ゆっくりとまってね!!」
「あばれないでね!!ゆっくりおちついてね!!」

そんな仲間の言葉もれいむの耳には届かない。そして暴れるれいむに引かれるように、蔓は大きくうねりをあげる。
それはまるで獲物を絞め殺さんとする毒蛇のようである。そんな毒牙にかかったか、ゆっくり達はあっという間に1匹残らずガンジ
絡めになってしまった。

「ゆー!!ぬけないよ!!ゆんっふー!!!」
「ゆわぁ!!あばれないでー!!ゆっくりじまるぅ!!」
「ぐるじいぃぃぃぃ!!!」

なんともあっけないものであった。トラバサミがれいむに噛み付いてものの数秒でこの有様、芋蔓式とは正にこのことだ。
そうしてゆっくりと体を締め付けられ、すっかりぐったりしきったところで回収に向かう。

「ゆ!!みんな、にんげんがきたよ!!」
「おじさん!!ゆっくりしてないで はやくれいむたちをたすけてね!!」
「さっさとこれをほどくんだぜ!!それから、まりさたちはつかれたから たべものもよこすんだぜ!!」
「そしたらとくべつに おじさんをまりさたちの こぶんにしてやらなくもないんだぜ?」

これで助かったとばかりに、次から次へと好き勝手に喋りだすゆっくり達。この状況でここまで言えるとは稀代の豪胆か、もしく
は底抜けの馬鹿かのどちらかくらいだろう。もちろん、こいつらは後者だが。

「ゆ~♪かわいいれいむを いちばんにたすけるなんて、おじさんはみどころがあるね!!」
「なんでまりさじゃないのおぉぉぉぉ!?」
「ゆぎぎぎぎぎ!!なっどぐいがないいぃぃぃぃ!!!」

そうして男が1匹のれいむに手を伸ばす。とうのれいむはご満悦、周囲のゆっくりは何で自分じゃないのと不満をもらす。
仲間に向かって得意げにふん反り返るれいむ。ざまぁとでも言わんばかりの姿である。だがその顔も長くは続かない。

メコォッ!!
「ぶっべえええええぇぇぇぇぇ!!?」

男の腕は蔓に向かわず、そのままれいむの顔面に突き刺さった。これを見ていたゆっくり達は大爆笑、今度はこちらがざまぁ顔である。

「ゆっへっへっへ!!ばかなれいむにはへこんだかおがおにあいなんだぜ!!おお、きれいきれい!!」
「さっすがれいむはぜっせいのびじょだね!!こんなかわいいゆっくりみたことがないよ~♪」

口汚く罵りあう饅頭一同。いつになれば自分の立場に気付くのだろうか。
だが男はそれを意に介さない。別に饅頭が馬鹿であろうが食すぶんには問題はないのだ。

「おっさん、きにいったんだぜ!!まりさのこぶんにしてやるから ゆっくりほどくぶううぅぅぅぅぅっっ!!!??」

今度はそう口にするまりさに拳を叩き込む。流石にこれには周囲の饅頭も、餡子脳ながら危険を感じたらしい。

「いやああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
「なんでぞんなごどずるのおおおおぉぉぉぉ!!?!?」

態度を一変させ絶叫をはじめる。中には命乞いのため機嫌取りに走る者も現れるが、そんなことは関係ない。
次々に顔から腕を生やすゆっくり達。その全てが大人しくなったのを確認すると、男はそれらを持ち帰った。



「ゆぎいいいぃぃぃぃ!!!ゆっくりはなぜぇぇぇぇぇぇ!!!」

捕まったゆっくり達は、藁や芋の蔓でグルグルに巻かれて身動きを封じられていた。
そうして自由を奪ったゆっくりを、巨大な蒸篭に並べいれる。

「ゆがあああああぁぁぁぁぁ!!!あづいいいいいいいぃぃぃぃ!!!」

蒸篭からはもうもうと湯気が絶え間なく立ち上がる。だがこれでゆっくり達が死ぬようなことはない。
もとが饅頭であるゆっくりは蒸されたところで死にはしないのだ。なお、ここで饅頭を蒸かし直すには2つの理由がある。
1つ目は殺菌消毒である。いくら饅頭とはいえ、人間に管理されていない野生のゆっくりの体には汚れや汚物がたまっている事も多い。
高温の蒸気で表面を殺菌し、またサウナのように発汗を促すことで体内からも不純物を排泄させるのだ。
2つ目は味覚である。ゆっくりを長い時間をかけてたっぷり苦しめることで、その餡子の風味や甘みは格段に向上する。
こういったところに、人々の生活の知恵と食に対する工夫が見受けられる。
そうしてたっぷり3時間は蒸かした後に、これを大きな蚊帳のような施設にあけて天日干しを行う。
心地よい秋風により、じっくりと時間をかけてゆるやかに冷まされる餡子。そうすることにより舌触りがより滑らかになり、繊細な口当
たりを餡子に演出するのだ。

「ゆふぅー・・・・・」

とうのゆっくり達も地獄のサウナからの脱出にすっかりご満悦で、だらしなく伸びきっている。この緩急を用いることが、ただ甘ったる
いだけに仕上げずメリハリを利かせるコツなのだ。こうしてゆっくりをたっぷり涼ませると、いつのまにやら辺りは暗くなり始めていた。

「ゆ!!おじさん、もうくらくなってきたから れいむたちゆっくりおうちにかえるよ!!」
「それになんだかさむくなってきたんだぜ!おっさんはゆっくりしないで さっさとここからまりさをだすんだぜ!!」

そう口々に騒ぎ立てるゆっくり。今日のことを少し涼んだ程度で忘れるとは、何とも悩みのない頭である。少し羨ましいくらいだ。

「お前らみたいな畑を荒らすようなやつを帰すわけないだろうが。ただま、無駄に殺したりしないでちゃんとおいしく食ってやるからさ。
 いつか食べられるその時まで、せいぜいゆっくりしていけよ。」
「「「なにいっでるのおおおおぉぉぉぉ!!!??」」」

騒ぐ饅頭を一瞥すると、男は満足げにそこを後にした。
何でもあそこで実質上の死刑宣告を行い、油断してたるみきったゆっくりを再度引き締めるのだそうだ。
一度ならず二度三度ともんでやることが美味しさの秘訣らしい。旨い物のためには手間を惜しんではいけないのだ。
そうしてとっぷりと日が暮れる。だが未だゆっくり達は野外に野ざらしにされている。

「さむっ!!さむむむむむむむむ・・・・・!!!!!」
「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!じんじゃううううううううう!!!!!」

冬も目前に迫った秋の夜はしんと冷え込む。体を縛られ動けないゆっくり達は寄り添うことも敵わず、ただ歯をガチガチとならしひたすら
夜風に耐える。こうして一睡も出来ないまま、長い長い秋の夜を明けるのである。
こうした昼夜を跨いだ天日干しを三日ばかり行った頃、ゆっくり達は軽く水分が飛んで一回りばかり小さくなっていた。
こうして縮んだゆっくりを蚊帳から運び出すと、その戒めを解きゴザの上に並べてやる。
ゆっくり達はついに自分達の罰が終わり許されたものと思っていた。もっとも反省するなどと殊勝な心掛けは持たず、如何様に復讐をして
やろうかその算段で餡子の中は一杯であった。もっともそれを活かす事は永遠にないのだが。

「「「はぁ、やぁ!!」」」
「「「ゆべぶっ!!?」」」

突如としてゆっくり達に無数の杵が振り下ろされる。農家達による『中揉み』が始まったのである。
中揉みとは、ある程度乾燥させたゆっくりを揉みほぐす事により、体の中央と外側部分の餡子を均一に混ぜてやることである。
こうすることで、水分のバランスが一定に保たれて、今後の乾燥がより効率的に進むのだ。

「「「はぁ~、秋の恵みは母なる大地の~♪」」」
「「「ゆべっ!!?ゆぶっ!!?」」」
ドスッ!!ドスッ!!
「「「芋の恵みは、穣子様の~♪」」」
「「「あぐっ!!!いぎゃああぁぁぁ!!!」」」
ドスッ!!ザリィッ!!


音頭に合わせてリズムよく杵で突き突き、あるいは転がし。その度にゆっくりは悲鳴をあげる。
元来この歌は稲の豊作を大地と稲荷に感謝し、捧げられたものであった。だが穀物の育たぬこの地では、サツマイモを育てる人々により
信仰の対象が稲荷様より穣子様へと移っていった。そうした紆余曲折をへて、穣子様への感謝を歌にこめ、またゆっくりの悲鳴を捧げる
という今日のスタイルが出来上がったのだ。こういった何気ない作業の一瞬に、その土地で暮らす人々の歴史や文化を垣間見ることが出
来るのは、実におもしろいことである。こういった風景も、今では見られる所は随分と減ってしまった。こういった風習を途絶す事無く
未来へと残していきたいものである。
そうこうする間に歌も佳境である。盛り上がりも最高点に達すると、人々は杵を手放す。そして次々にゆっくりへと圧しかかった。

「「「ゆべええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!???」」」
「「「それそれや~、よいこっせぇ~のそいやっさぁ!!!」」」
グリグリグリ・・・

足の裏全体を使って満遍なく体重をかけていく。潰れたり餡子が漏れない辺りは流石としか言いようが無い。
そうして、たっぷり踏みほぐされたゆっくりは再度蚊帳に入れられて乾燥を行う。
このような事をもう3度も繰り返すと、ようやく最後の仕上げを迎える。
この頃には丸々としていたゆっくり達も子ゆっくり程までに縮んでいた。もっともその顔は深い皺と疲労が刻み込まれており、瑞々しく
張りのある子ゆっくりとは比べ物にもならないのだが。このくたびれたゆっくり達を再度蒸篭に並べていく。ただ今回は以前と違って蒸
気により蒸しあげず、鍋底に敷き詰めた藁を燃やしてやりその煙で燻しあげるのだ。

「ゆがっへ!!ゆげっへ!!いぎがでぎな”い”ぃ・・・!!」
「めが!!めがじぱじぱずるぅぅぅ・・・!!!」

もくもくと立ち込める煙に混ざって、搾り出すようなゆっくりの声が聞こえる。心も体も限界に達したここに来ての燻蒸、それは正に生
き地獄であった。高温の煙が肌だけでは飽きたらず、目玉や口の中にまで容赦なく入り込み焼き尽くしていく。煙に巻かれて呼吸すら満
足に出来ず、ゆっくりの体は藁の香りをその身に染み込ませていった。

「ぼ・・・・・は・・・・・・!!」

そうして燻し上がったゆっくりは茶褐色に染まり、口の端から紫煙のごとく一筋の煙をたゆたわせている。
その土気色の顔の所々には糖が結晶化した白い斑点がデキモノのように噴出しており、まるで死人のような形相である。
眼球から口内までも満遍なく煤で薄汚れており、触れた感触も石のように硬い。お世辞にも美味しそうな見てくれではなかった。

訝しげな表情を浮かべる我々に、それならばとこの出来上がったばかりの干しゆっくりを用いた料理が振舞われることとなった。
干しゆっくりはそのままでも食べられなくはないが、炙ったり煮込むことによってその旨味が増すのだと言う。
そうして今回用意されたのは『干し汁子』であった。

まずは、ひたひたに水を張った鍋に数匹の干しゆっくりを入れて鍋にかける。なんでも干しゆっくりはまだ生きているらしく、水から煮
出すことにより苦しむ時間が長引き旨味もますのだそうだ。その一方、今度は囲炉裏の端で串を通した干しゆっくり、干し芋、餅を炙っ
ていく。今回の主役である干しゆっくりは、火が通るにつれその表情が色鮮やかになっていく。10分もする頃にはすっかり以前の血色
を取り戻し、また結晶化していた砂糖も溶け出し、まるで水飴のように艶を演出した。

「あ”・・・あぢゅい”い”ぃぃぃぃ・・・」

餡子が熱で緩んで少しは元気になったのか、目と口をカッと開いて声を絞り出す。その目と口内は依然くすんでいるものの、こちらも火
に当てる前より鮮やかさを取り戻している。そうしてもう10分もする頃には、鍋にもすっかり火が通り椀に盛り付けを始めた。
餡子の溶け出したほんのり暗い汁の中央に水を吸ってやや膨らんだ干しゆっくりを。そしてその上に炙った干しゆっくりと干し芋、餅を
乗せてやる。一見質素ながら、その実手間のかかったなんとも豪勢な一品である。
こうして完成した『干し汁子』、熱いうちにとさっそく頂く。
まず汁をすすってやる。その味は甘いながらも癖が無く、少し控えめな味付けが返って次の一口を催促させる不思議さを持っていた。
そして煮込まれた干しゆっくりに箸を伸ばす。その食感は生のゆっくりに比べややかたく、まるで白玉のようなプリプリの歯ごたえと、
つるつるとした舌触りをしていた。中の餡子もしっとりとしており、舌に乗せるとすぅっと味と香りだけを残して消えていく。まるで
餡子とは思えない舌触りであった。次に炙った干しゆっくりを齧る。こちらは煮込んだものとは対照的にパリパリとした食感で、燻さ
れているためか、ほんのりと心地よい苦味と香ばしさを持っており、全体の甘さに対して程よいアクセントとなっている。中の餡子も
煮込んだものと違って、ホクホクとした食感をしていた。それは今まで口にした餡子達とは違った全く新しい歯ざわりであった。中で
も秀逸だったのが、少し汁が染みた部分が程よい汁気を持ち殊更滑らかであった。付け合せの干し芋の素朴な甘みと、時折口に運ぶ餅
が口の中を綺麗にし、常に新鮮な気持ちで食べられる。まさに完成された一品であった。

この『ゆっくり汁子』はもともと正月料理の一品であった。無事に1年を終え、新しい年を始めることが出来たことへの感謝とささやか
ながらの贅沢。それがこの料理の生い立ちであった。

幻想郷の各地にはまだまだゆっくりを用いた伝統料理が存在している。それらは、その手間のかかることや加工場の発展などにより、
今にもその姿を消そうとしている。だがそういったもの達には料理としてもそうだが、そこに暮らす人々の生活や文化を伝える重要
な役割ももっているのだ。ぶらりと訪ねてみては、おいしい料理を食べながらその歴史に思いを馳せるのもいいかもしれない。
今後も我々は幻想郷各地の、伝統のゆっくりの味を伝え続けていく。


終われ

作者・ムクドリ( ゚д゚ )の人



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最終更新:2008年09月28日 20:34
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