ゆっくりれみりゃ系いじめ51 ゆっくりゃへのおしおき

ゆっくりれみりゃ。
それは最近になって突然幻想郷に現れた下膨れ顔饅頭生命体“ゆっくり”の亜種である。
このれみりゃ種の特徴は胴体や手足があり、二足歩行をする事、羽が生えていて短距離なら低空飛行できる事と他のゆっくりを襲って食べる捕食種である事。
身長は人間の2,3歳児程度しかなく大きめの個体でも1mに達するかどうかで、50cmに満たない個体はたいてい歩けない。
体重に関しては食事の摂取量による変動が激しい生き物ゆえ確かなことはいえないが、体型は大体ぽっちゃりしている。
たとえ空腹でも飢えに苦しんでいても人間の目にはぽっちゃりしているように見える。



「う~っ!おにーさん、ここはれみりゃのべっそうだど~!」
「「「「しょ~だど~!」」」」
「・・・・・・は?」

れみりゃ達がさっき見つけた別荘で楽しく踊っていると突然よそ者が入ってきた。
ぽかんと口を開けた間抜け面の男の視線の先にはれみりゃとれみりゃの可愛い4匹の赤ちゃん達。
きっと彼は最近立てるようになった赤ちゃんのあまりの可愛さと、ダンスを教えてあげているれみりゃの美しさにメロメロになっているに違いない。
そう判断した親れみりゃはぺたぺたという音が聞こえてきそうな足取りでその男の前まで歩いていくと、偉そうに胸を張る。

「おに~さん、れみりゃたちのだんすがみたいならぷっでぃ~んをもってくるんだど~♪」
「「「「ぷっでぃ~んたべたいど~!」」」」
「・・・なあ、お前らに一つ訊いてもいいか?」

結論から言えば親れみりゃの妄想は完全に的外れで、れみりゃ達は全く気づいていないが男性の声には殺気を通り越して殺意に近い感情が宿っていた。
正確に言うなら男性はれみりゃが自分の別荘だと思い込んでいるこの家の主で、彼の殺意の正体は憎しみだ。
さらに正確に言うならば自分のペットのゆっくりれいむを室内に散乱する無残な餡子片にしてしまったれみりゃへの憎しみである。
男性はおぞましいほど強烈で、傍にいるだけで怖気を催しそうなまでに憎悪のこもった低い声を絞り出して、何とか言葉を続ける。

「ここにいたれいむが何処行ったか知らないか?」

勿論、このれみりゃ達に食われてしまったのだろうと目星はついている。
しかし、彼は虐待お兄さんでもないし、その他特殊な性癖を持ち合わせているわけでもないので、万が一の場合後味の悪い思いをするのを嫌っているのだ。
そして、れみりゃには「怒られるかもしれない」なんて危機意識が無いことや、それゆえに嘘をつく必要を感じていないことを理解していた。
だからこそ親れみりゃに率直に真実を問いただしたのだ。

「れいむなられみりゃたちがたべたど~♪」
「「「おいちかったど~!」」」
「うーっ!れみりゃはたべれなかったど~!」
「「「どんくさいからわるいんだど~♪」」」

結果は彼の予想通り。この家で、彼が飼っていたゆっくりれいむはこのれみりゃ一家に食べられてしまったようだ。
一匹だけれいむを食べ損ねて膨れっ面をしている赤ちゃんれみりゃを除いて、皆その味を思い返しながらうっとりとした表情を浮かべてよだれを垂らしている。
こうして、彼は心中で「こいつらを酷い目に合わせてやろう」という結論に達した。

「そうかそうか・・・やっぱりお前らが食べたのか・・・」
「うぅ?あのれいむはおにーさんがよういしたんだど~?」
「ああ、そうだよ。あいつは俺が飼っていたれいむだよ」
「うーっ!だったらもっとれいむをもってくるんだど~!そしたられみりゃのべっそうのめいどにさせてあげるど~!」

男性は親れみりゃの言葉を笑顔で「それはどうも」と聞き流す。
殺す気満々なのだから、表情通り喜んでいるわけでもないし、光栄に思っているなんてことはありえない。
ただ、どうやって制裁してやろうか考えているだけだ。
潰して殺すだけでも十分だが、後始末が面倒だし、れいむを食べていない赤ちゃんにまで危害を加えるのは筋が通らない。
そんなことを考えていた男性だったが、れみりゃの「おにーさんはめいどだど~♪」という言葉を聞いた瞬間に制裁方法が決定した。



「さあ、れみりゃ達。ここがお前らの部屋だ!」

男性がれみりゃ達を案内した先の部屋にあったのはかつてのれいむの飼育ケージだった。
このケージは男性がれみりゃに食われたれいむを溺愛していた証拠と言っても過言ではなく、それが置かれているわりと広い日当たりも決して悪くない部屋の半分以上を占めている。
高さも2m近くあり、ケージの中は透明のしきり板によって二分されていた。
板で隔てられた一方は全体の面積の1割程度のスペースしかなく、そこには足ツボマッサージ用の突起を大きくしたようなものがずらりと並んだカーペットが敷かれていた。
もう一方は全面積の9割を占め、乳児用ブランコに滑り台、積み木、お絵かき用の小さなホワイトボード、タンバリン、小さな子供用ピアノ、ボールにゆっくりのぬいぐるみなどが綺麗に四隅に置かれている。
更に床には暖かそうなのカーペット、窓際の日当たりの良い場所には小さなソファとテーブルが置かれていて、部屋の真ん中にはふかふかのベッドが置かれていた。
ここまで来れば人間なら男性の目論見を難なく看破できるだろうが、れみりゃにはそんな高度なことは出来ない。

「うーっ!ごーまかんのおぜうさまにふさわしいなかなかいいへやなんだど~♪」
「「「おじぇうさまのおへやにふしゃわちいんだど~♪」」」
「みゃ~みゃ、まちゅんだど~!」

親れみりゃとさっきれいむを食べたことを認めた3匹の赤れみりゃはそのケージを見て目を輝かせる。
そして、4匹から遅れて部屋に到着したれいむを食べなかったやや小柄な赤れみりゃも同様の反応を示した。
この部屋は男性が可愛がっていたれいむの欲しがるものを片っ端から買い与えた結果であり、れいむ存命時には飼い主馬鹿もいいところであった彼が時間とお金をかけて作り上げた最高のゆっくりプレイス。
部屋の中は野生のれみりゃ達にとっては見たことは無いが興味を引く鮮やかな色彩の遊具ばかりなのだからこの反応は当然のものだろう。

「う~っ!ここがれみりゃたちのあたらしいべっそうなんだど~♪」
「「「しゅごくえでがんどのべっそーなんだど~!」」」
「べっしょ~だど~!」

5匹揃ったところで一家はよたよたと幼稚園のお遊戯会でも見かけないような足元のおぼつかない踊りを始めた。
通称「れみりゃののうさつだんす」。勿論、悩殺なんてされるはずもなく、せいぜい脳が殺される的な意味で“脳殺”がいいところだろう。
しかし、本人らはその踊りが上品で、優雅で、魅力的で、色っぽくて、鮮やかで、高貴で、高度で、芸術的で、斬新で、活力に満ちたものだと思っているらしい。
信じられないだろうが、彼女らの顔に張り付いた笑みと「れみりゃのだんすをみられてめいどはらっきーなんだど~」というあほらしい言葉がその証拠だ。

「めいど~、れみりゃをはやくおへやにいれるんだど~!それからぷっでぃ~んをもってくるんだど~!」
「「「「もってくるんだど~!」」」」
「はいはい、わかりましたよ・・・っと」

一般的な虐待お兄さん、いやペットを食い殺された一般人でも怒り心頭でこのれみりゃ達を潰してしまいかねないような厚かましい言葉を男性は軽く聞き流してケージの出入り口を開ける。
あくまで怒りが限界を超えて逆に冷静になってしまったのと、何もしていない赤れみりゃにまで制裁する流儀に反するという彼の美学ゆえであり、別にれみりゃに忠誠を誓っているわけではない。
開かれた扉の先にあるのはしきりによって隔てられた1割のほうなのだが、親れみりゃと3匹はそこを玄関か何かと勘違いしたらしく、何故か産まれた時から履いている布?製の靴を脱いで意気揚々とそこに突入した。
そもそも紅魔館は西洋風の建造物であり、そこのおぜう様を自称する彼女らが靴を脱ぐことも、男性の家に上がる前に脱がなかったのも大いなる疑問だが、気にしても仕方がない。

「れみりゃがいちば、んぎゃあああああああああ!?」
「おにぇーしゃま、じゅる、いぎゃああああああああ!?」
「れみりゃがいちびゃ、んぎゃあああああああああ!?」
「えれがんとなおぜうさまはいそいじゃだめだ、どおおおおおおおおお!?」

先ほどからずっとワンテンポ遅れている1匹以外の3匹の赤れみりゃと親れみりゃは我先にと競うようにケージの中に駆け込んで悲鳴を上げる。

「うーっ!どうしたんだど~?」
「いだいいいいい!?いだいどおおおおお!?」
「ばやぐごごがらだぢゅんだどおおおおお!?」
「断る!」

男性はにっこりと微笑みながら、ケージの出入り口の扉を南京錠でがっちりロックする。
全体の1割しかない狭い空間で4匹ものれみりゃがカーペットの突起の痛みのせいでのた打ち回る。
ろくに動くスペースも無い狭い空間でのた打ち回った拍子に壁や家族の腕にぶつかり、更なる痛みにもがき苦しむ。
とは言え、じっとしているとゆっくりの脆い皮に容赦なく突起が食い込み、中身が出そうになるので動かざる得ない。
こうして、れいむを食べた4匹には男性の気が済むまでこの狭い空間で閉塞感と不自由と苦痛の三重苦を味わうことになった。



「みゃ~みゃ~!!」
「でびりゃあああ!だしゅげでえええええ!?」
「「いだいーーーー!いだいーーーーーーー!!」」
「ぎゃおーーーーーーーん!」

唯一外に取り残されたワンテンポ遅い赤れみりゃは必死に南京錠をこじ開けようと頑張っている。
とてもじゃないがこの赤れみりゃの膂力でどうにかなるような代物ではないし、鍵は親れみりゃよりもずっと強い男性の手の中だ。
しかし、それでも「だめりゃ!はやぐだしゅんだどー!」などと罵声を浴びせる家族を助けるために手から中身をもらしながらも南京錠と格闘を続ける。
その姿にちょっとした感動を覚えた男性は、赤れみりゃの手を押さえ、その無意味な行為をやめさせると肩とふくらはぎを抱えて持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこと呼ばれるものだ。

「さて、れいむを食べなかった君はこっちだよ」
「うぅ~?」

男性は他のれみりゃ達に見せ付けるように悠然とした足取りで残り9割の空間に赤れみりゃを抱えて入っっていった。
そして中央のベッドに赤れみりゃを優しく寝かせると、部屋から出て行き、こちらにも鍵をかけた。
どうして自分だけが?とでも言いたげな表情できょろきょろ室内を見回す赤れみりゃ。
一方、他のれみりゃ達は痛みと必死に戦いながらも不満の声を上げている。

「ぞれはでぼりゃのべっどだどーーーーー!?」
「「「だべりゃのぐぜにーーーーーー!?」」」

見たところ、あの赤れみりゃは他の赤れみりゃよりどんくさいらしい。
さっきから家族のために行動しているにもかかわらず「だめりゃ」などと呼ばれている。
恐らく、この赤れみりゃがれいむを食べなかったのはそのどんくささのせいだろう。
だが、男性にとって重要なのはこの赤れみりゃだけがれいむを食べなかったという事実であり、それゆえに罰する理由が無いということ。
もし、たら、れば・・・そんな言葉を並べ立てて無理やり他の連中と同じようにお仕置きするつもりは毛頭無かった。

「さて、さっきも言ったけど・・・君はれいむを食べなかった良い子だからこっちでゆっくり過ごして良いよ」
「うぅ、どういうことなんだど~?」
「つまり、君は僕の飼っていたれいむを食べたりしない良い子だったからあんな風にお仕置きしないってことだよ」

そう言って男性が指差した先では、苦悶の表情を浮かべたまま透明のしきりにべちゃりとへばり付いた4匹のれみりゃが恨めしそうにこちらを睨んでいた。
彼女らは乱暴にしきりを叩きながら「ぞごはでびりゃのおやぢぎだどー!」などと口々に文句を言っている。
しかし、その様子や言動、雰囲気からは反省の意思を微塵も感じ取れない。
もっとも、れみりゃ達にとってれいむが食べ物以外の何者でもないのも、野生動物に所有権なんてものが理解できないのも当然であり、彼女らにいきなり反省を要求するのも酷な話。
客観的な視点に立てば戸締りを怠った男性の側にも責任はあるのだが、れみりゃがれみりゃのルールで動くのと同様に男性が男性のルールで動くことを非難する理由も無い。
まあ、弱肉強食ということで強者のテリトリーに踏み込んでいまだに生かしてもらっているのだから感謝すべきだろうか。
何にせよ、4匹のれみりゃのゆっくり出来ない生活と、1匹の赤れみりゃのとてもゆっくりした生活が始まった。



「よし・・・取りあえず何か食べ物を作ってくるからちょっと待っててくれよ?」
「うぅ?でぃな~だど~♪」
「「「はやくでぃな~もってくるんだど~♪」」」
「うっう~・・・れみりゃ、みゃ~みゃといっしょにたべちゃいど~」

男性が料理を作るために立ち上がると、可愛がれている赤れみりゃ以外のれみりゃも嬉しそうな声を上げる。
彼がどうしたことかと様子を見てみると、狭い空間を器用に使って何とか全員が空を飛んでいた。
なるほど、これならカーペットの突起でいたい思いをすることは無い。体力の続く限りは。
狭い場所で、滞空という繊細な操作の不可欠な高等技術を果たしてゆっくりれみりゃがどれだけの時間続けていられるのだろうか?
そんなことを考えながら、男性が台所で献立を考えはじめた時、れみりゃのいる部屋から「うぎゃー!?」という悲鳴が4つほど聞こえてきた。

「よし、今日はシューマイにしよう!」

その頃、可愛がられているれみりゃは家族を助けることを諦めて、目の前のおもちゃで遊んでいた。
まずはブランコ。台の上に飛び乗り、腰を下ろしてみたものの遊び方がわからない。
取りあえずその状態でじっとしていたが、これではソファに座っているのと何も変わらない。

「うー?こりぇなんなんだどー?」
「ぞれはでびりゃのだぞー!」
「「ざぐやーーー!?だしゅげでーーーー!!」」
「う゛・・・うぅぅうぅぅぅう゛・・・にぱぁ~・・・」

赤れみりゃは相変わらずしきりを叩く親れみりゃの何の根拠も無い所有権主張を無視しながらブランコの遊び方を試行錯誤している。
その傍らでは2匹の赤れみりゃが痛みにもがき、片足を上げてはすぐさまもう片足を上げてとエリマキトカゲの走行時のような挙動を繰り返しながら泣き叫ぶ。
更にその傍らでは力尽きて落下した直後に親がその上に落下してきて全身に突起をめりこませた赤れみりゃがぴくぴくと痙攣しながらラリっている。
しかし、れみりゃ種は恐ろしいほどの回復力を誇る種族。このくらいの傷ならば明日の朝には完治しているだろう。

「う~・・・これおもちろくないんだど~!」
「「うっぐ・・・いだいーーー・・・いだいーー・・・」」
「おもぢろぐないなられみりゃによこすんだどーっ!」

ようやく疲労が回復して再び羽ばたいた姉妹2匹が飛びながら泣いているのを尻目に、文句を言いながら赤れみりゃが足をばたつかせていると、急にブランコが揺れ始めた。
れみりゃはまだ気にしていないが、足の動きに応じて徐々に揺れの幅が大きくなって行く。
流石にある程度揺れが大きくなると赤れみりゃもその異変に気づき、足を止めてきょろきょろと辺りを見回す。

「う~?なんだど~?」
「「うー、ゆらゆらしてるんだど~?」」
「ぎゃおーー!ゆらゆらはれみりゃのだどーっ!」

何故揺れているのか理解できず、赤れみりゃは首をかしげた。
その光景を目の当たりにした親れみりゃはさっきから何の進歩もなくただひたすらしきりを叩きながらわめき、まだ無事な他の姉妹はさっきまで痛みでないていたのも忘れてゆらゆら揺れるブランコに見とれていた。
しかし、赤れみりゃは親れみりゃが気が狂わんばかりに憤っていることにも気づかず、彼女に向かって満面の笑みを浮かべた。
さっき使い方を覚えたブランコの上で足をばたつかせて、ゆらゆらと揺れながら。

「みゃ~みゃ!これしゅっごくおもちろいんだど~♪」
「ぎゃおーーーーー!!ゆらゆらはでびりゃのだどーーーーー!?」
「「ゆらゆらだど~、うっう~♪」」

見せ付けるようにブランコで遊ぶ赤れみりゃ。しかし、実は見せ付けているつもりなど微塵もない。
彼女は2つの部屋の間にしきりがあることを既に忘れており、親と姉妹はあの突起の上で何かして遊んでいるんだと認識している。
だから彼女にとっては「すごくごーじゃすなべっそーでみんなであそんでいるどー」くらいの認識でしかない。
勿論、見せ付けられる他のれみりゃにしてみればたまったものじゃない。
だが、しきりの向こうから抗議したところで暖簾に腕押し、「みんなもこっちにくりゅんだど~?」という言葉が返ってくるだけだった。

「しゅるしゅる~♪」
「う゛ーーーーーー!!ぢゅるぢゅるもでびりゃのだどーーーー!!」
「「いだいーーーー!ざぐやーーーーー!だしゅげでーーーー!?」」
「うー・・・いたいどぉーーー・・・ま~まぁ・・・おりでほぢいんだどー・・・」

たっぷり遊んでブランコにも飽きてきたところで、今度は滑り台で遊び始める赤れみりゃ。
こちらは動物的な勘でなんとなく用途を理解できたらしく、最初から絶好調な遊びっぷりを披露していた。
一方、たっぷり飛び続けて飛行にも疲れてきたところで、今度は突起だらけのカーペットで苦しみ始める親と姉妹。
親れみりゃは赤ちゃんたちより足の皮が厚いせいか、幾分余裕を感じられる・・・と思ったら我が子を踏み台にしているだけだった。
それに引き換え、下敷きにされていない子ども達は相変わらずエリマキトカゲのように足を上下させながらもがき苦しんでいる。

「しゅるしゅる~♪」
「ぎゃおー!」
「「いだいーーーー!?」」
「いだいどー・・・」

「しゅるしゅる~♪」
「ぎゃおぅー!」
「「しゅるしゅるたのしそーだどー!」」
「いだい・・・どー・・・」

ただとにかく夢中で滑り続ける赤れみりゃと、彼女が滑り降りるたびに地団駄を踏む親れみりゃ。
そして親れみりゃが地団駄を踏むたびに突起にめり込む誰にも助けてもらえないどころか既に存在すら忘れられぎみの赤れみりゃ。
他の二匹は宙に浮いて痛む足を休めつつしきりの向こうに憧れ、床に下りてカーペットの傷みと戦いながら羽を休めつつ助けを求める。
「だめりゃ」と呼ばれていた1匹を除く全員が、目の前の問題から目を背けて何の解決にもならない不毛な反復を続けていた。



「お~い、ご飯持ってきたぞ~」
「うーっ!」
「でぃなーだど~♪」
「「おいちいでぃな~だど~♪」」
「でぃ・・・なぁ・・・だ、どヴぁ」

おにぎりとシューマイをお盆の上に乗せた男性がやってくるとれみりゃ達はいっせいに顔をほころばせた。
1匹だけ地べたに這いつくばっているせいでほころばせたかどうか良くわからないものも居るが、男性はあまり気にしていない。

「はやくれみりゃにでぃな~をよこすんだど~♪」

我が子の上で満面の笑みを浮かべながら、狭いなりにも工夫してちょっとした踊りを踊ってみせるのは親れみりゃ。
彼女が少しでも動くたびに下敷きになっている赤れみりゃがびくんびくんと痙攣しているのだが、やはり誰も気にしない。
他の赤ちゃんは飛びつかれ、そろそろ足を上下させるのも体力的に限界に達したためにぺたんと座り込んで「いだいーーーー!」などと泣き喚いていた。
実はこの接地面積を増やすという選択は圧力が分散されるため、あながち悪いものではない。
ただし、あくまでそれなりの広さがあればの話である。残念ながら、今れみりゃ達の居る場所は非常に狭く2匹の赤れみりゃはきっと次に立ち上がるときに地獄の苦しみを味わうことになる。
飛べば良いと思うかもしれないが、しきられたケージは細長い長方形で広いほうの部屋を見るか、背を向けるかしないと飛べないし、座るときには横向きにならなければならない。
つまり、座ったままの姿勢では羽を動かすためのスペースが確保できないし、寝転がって更に圧力を分散させる手もケージの中が狭すぎてれみりゃ4匹が寝そべることの出来るスペースないので不可能。
仮に寝そべるだけのスペースがあったとしても下手に寝そべるといつ親れみりゃの足場にされるかわからないので怖くてそれを実行することが出来ないだろう。

「さあ、れみりゃ。これは君のご飯だ」
「う~?こりぇ、れみりゃの?」
「ああ、そうだよ。これは俺のペットを食べなかったお利口な君のためのご飯だ」

しかし、男性は親れみりゃを無視してケージの大きい方に入ると、中に設置されたテーブルの上にご飯を置いた。
それから人間の乳幼児が使用するキャップとストローのついた蓋を取り付けたプラスチックのコップにオレンジジュースを注ぐ。
食事の準備が整ったところで男性は馴れ馴れしく話しかけてくる赤れみりゃに適当に相槌を打ちながら外へ出て行った。

「なにしてるんだど~?れみりゃにでぃな~をよこすんだど~!」
「「う~・・・いだいどーー!おなかすいだどーーー!」」
「うぅ~・・・・・・」

男性が持ってきたご飯を自分に差し出さなかったことに憤り、ケージをまたしてもどんどんと叩く親れみりゃ。
その両隣では赤ちゃん達が痛みと空腹で泣きべそをかき、足元の1匹は何だかもう危険な状況に達している。
だが男性は4匹のことを気に留める様子もなく、また台所に消えて行った。

「うっう~!おいちいど~♪」

何ももらえなかった家族を尻目に赤れみりゃはゆっくりが普段食べるそれとは比較にならないほど美味な人間の食事を食べ始めていた。
おにぎりもシューマイも赤れみりゃでも手を汚さず食べられるように、一口サイズの大きさに揃えられているのでとても食べやすい。
それに人間ならご飯には合わないと感じるオレンジジュースも、とても甘酸っぱくて赤れみりゃにとっては最高の飲み物。

「ぎゃおー!でびりゃにもだべざぜるんだどーーっ!!」
「うっう~!みゃ~みゃもおね~しゃまもどうじょなんだど~!」

赤れみりゃはしきりの方へ歩いて行き、シューマイやおにぎりを差し出す。
が、しきりがある以上、彼女らがそれを食べることは不可能。
(人間にはわからないが)鬼の形相で壊せもしないしきりを叩き続ける親れみりゃ。
その手からはうっすらと肉汁が滲んでいる。

「う~・・・ごめんだど~!なんかちゃべさせてあげられないど~!」
「ぎゃおーーーーーーーーー!?」

赤れみりゃは食べさせられないものは仕方ないと飢えている家族の目の前でシューマイとおにぎりを食べつくした。
食べ終えた赤れみりゃは「おいしかったど~!にぱ~♪」などと言って喜びをアピールしている。
信じられないことに、これでも一切悪気がなく、本当に大好きな家族と自分の喜びを分かち合いたいと思っているだけらしい。

「おい、お前らにも餌を持ってきてやったぞ」

ずっと親れみりゃがしきりを叩き続けていると、台所に消えた男性が何かを持ってこっちに戻ってきた。
その言葉を聞いた一家は「にぱぁ~☆」と顔をほころばせると、痛みを堪えながらも両手を差し出してくる。
だらしなく開いた口からはぼたぼたとヨダレが零れていた。

「ほらよ、お前らの餌だ」
「「うっう~・・・うぅ?」」
「う゛~!?こんなまじゅいのいらないど~!」

男性が差し出したのは生ごみ同然の、いや、もはや生ごみですらない何か。
一瞬だけ開けられた出入り口から放り込まれたそれはケージの中で圧倒的な異臭を放っている。

「それ以外に何もやるつもりはないからな。エレガントなお嬢様の食うものじゃないけど、死にたくなかったら食べるんだ」

そう言い残した男性はさっさと部屋を出て行ってしまい、後には快適な環境を満喫する赤れみりゃの歓声と、生ごみの異臭に餌付く一家の叫び声だけが残された。


‐‐‐あとがき‐‐‐
もう何番煎じかもわからないくらいのネタですが。

byゆっくりボールマン

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最終更新:2022年01月31日 02:00
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