※このSSには若干きちゃない表現があります
また、一応前作
「水虫」の後日談的な内容になっていますが、別に読んでなくても平気です。
水虫(治療編)
「次の方どうぞー。」
「失礼します。」
ここは村の診療所、そこで1人の男が水虫の診察にかかっていた。
「どうですか、この前処方しました緑茶軟膏は。少しは良くなりましたか?」
「いやぁ、残念ですが特に変わった感じはしませんねぇ・・・」
そうですか、そういって医者は彼の足を手に取る。
彼は「緒丹 伊三」(おに いぞう)さん、今年で38歳を迎え仕事は農業を営んでいる。
そんな彼は水虫暦30年というツワモノである。
農家という職業がら、膝下まで覆ってしまうような通気性の悪い長靴を年中はいていることが生活習慣。
そして、生まれ持っての油足は1000人に1人もかくやというある種の完璧超人ぶり、子供の頃は「黄金の足」と呼ばれたほどだ。
しかし緒丹さん、持ち前の明るい性格と、家族や周囲の人々の理解もあり、特に足について意識したことは無かったと言う。
だが先日、彼はある事件をきっかけに水虫と言う病気と向き合い、そして戦うことを決意したのだ。
「実録、ゆっくりにみる! ~最先端医療の現場~」
事の発端は半年前にさかのぼる。
緒丹さんがいつものように仕事から帰ると、そこには迷い込んだゆっくりの一家がいた。
彼は軽い悪戯心から自慢の足でゆっくりをからかったところ、予想以上の凄い悲鳴をあげ逃げ出してしまったそうだ。
その時は笑って済ましたのだが、優しい彼はその晩申し訳ない気持ちで中々眠りに付けなかった。
「ゆっくり達を傷つけてしまったこともそうですが、私自身が現実に向き合ったことが衝撃だったんでしょう。」
そう緒丹さんは語る。
「本当のところ、子供の頃から自覚はしていたんです。ただ周りが優しかったこともあり甘えていたんですね。
妻も子供達も嫌な顔しませんし、自分に都合のいいよう目をそむけていたんですよ。」
ゆっくり達の反応を見て、家族に気を遣わせていたのではないだろうか・・・そういう思いが彼の中に渦巻いた。
そして緒丹さんは思い切って家族に打ち明けた、迷惑に思ってないか? 気持ち悪くないか?
すると妻と子供達は笑いながら、何を言ってるんですか、そう言いながら優しい顔をした。
妻も子供も彼のソレを嫌悪したことは無かった。
彼の足が臭いのはもちろん体質もある、だが日々畑に出向き汗をながす生活の代償でもあった。
彼女達は夫が自分達のために頑張って働き、そのために水虫が悪化していることを理解していた。
感謝こそすれ、嫌悪するなんてあり得ない、そう述べたそうだ。
私達は彼の子供達に、父の足について尋ねてみた
「とーちゃんの足?スッゲー臭いよ!! きっと村一番だね!!」
そういって屈託のない顔で笑う、そしてその言葉は
「でも俺嫌いじゃないよ、なんつーか優しい臭い?てゆーのかな。あれ嗅ぐととーちゃんが帰って来たって思うんだ!」
そう締めくくられた。
「私は家族の理解を得られました。ですが、いえ、だからこそこの病気を治そうと思ったんです。」
そう緒丹さんは語る。
水虫という病気はカビと同じく菌類が原因で発症する。そしてこの菌は他人に感染するだけの強さをもっている。
彼は、愛する家族に水虫がうつるのを防ぐため原因を元から断つ決心をしたのだ。
彼の闘病がはじまった。
村の診療所に通い、診察を受け投薬を行う日々、使用した薬品の種類は二桁に登った。
だがそれでも彼の症状が改善されることは無かった。
診療所通いもすっかり日課になったある日、彼は医者からあることを告げられる。
かの迷いの竹林に佇む『永遠亭』、そこでは人智を超えた医療技術が日々研究されている。
そこで全く新しい水虫の治療法が立案されたと言うのだ。
そして、緒丹さんはそれに賭けた。
「緊張しますね。」
そう語る尾丹さんの顔は強張っている。無理もない。
取材陣にこれがダメでも次があるからと彼は語った。だが永遠亭で不可能なら恐らく治療の施しようはない、それを理解しているのだ。
そうしてはじまった永遠亭での治療とは
「ゆっくりですか?」
部屋に用意されていたのは10数匹のゆっくりが入れられた水槽である。
「はい、こちらの中に足を入れてください。」
そう述べるのは八意永琳女医、ここの院長である。
彼が言われた通りに水槽に足を入れる、次の瞬間
「「「しつれいします!! ゆっくりなめさせていただきます!!」」」
突如ゆっくり達が叫ぶと、何と緒丹さんの足を舐めはじたではないか!
一体どういうことかと混乱する我々に八意先生は説明をはじめた。
「この子達は普通のゆっくりと違って薬事処理が施されているんです。
数種の薬草を毎日食べさせることにより体液に薬効を持たせてあるんです。
そんな彼女達に患部を舐めさせることにより治療を行うんですよ。」
そう述べる彼女の顔は実に生き生きとしている。
ふと、ゆっくりに視線を戻すと皆が皆必死に足を舐めている。だがその顔は涙を浮かべ、心無し苦しそうに見える。
「新しい治療ですからまだ馴れてないだけですよ。おそらく取材と言う事もあり緊張しているんでしょう。
治療を生きがいにしていますから、涙を流すほど嬉しいんでしょう。ね?あなた達。」
「「「はいぃぃぃぃ、ゆっくりこうえいですううぅぅぅ!!!」」」
力一杯叫ぶゆっくり達、それを見て先生も満足げだ。
この治療の経緯について尋ねたところ、別の部屋に資料があるらしくそちらへ案内するとのこと。
緒丹さんは暫らく動けないらしいので、助手である兎の看護婦さん達にまかせて私達はここを後にした。
目的の部屋へ向かう最中、先生は不意にこんなことを尋ねてきた。
「数ヶ月前に起こった山の森のゆっくり達の消失事件はご存知ですか?」
一時期、森からあらゆるゆっくりが姿を消したあの事件である。
当時は異変の前触れとも噂されたが、今ではゆっくり達も戻り以前と変わらぬ喧騒をしている。
「実はあの事件、ゆっくり達にとある病気が流行したことが原因だったんです。私達は現場から発見されたサンプルを調査した結果、
ある事実にたどりつきました。実はその病気の原因が水虫菌だったのです。」
私達は驚いた。たしかに水虫はカビの原因だ。だが、いくらゆっくりが饅頭とはいえ感染するとは思えなかったのである。
ましてや森から1匹残らず消え去らせるほどの影響力など、とてもではないがにわかには信じがたい。
「無理もありません、私達も最初は困惑しましたから。そこでこの部屋にお招きしたんです。
こちらにその時のサンプルが残っていますので・・・これです。」
そう言って彼女は1つのビンを取り出した。ビンの中はよくわからないネバネバした何かが入っていた。
「実はこれ・・・・・ゆっくりなんです。」
その言葉に我々は再度驚愕した、目前のそれはゆっくりとはとても思えぬ外観をしていた。
例えるなら、乳白色に暗く濁った冷えて少し硬くなった水飴とでも言えばよいだろうか?
「正確にはゆっくりの一部ですね。発見当時は複数のゆっくりが癒着していましたから。
これはそれを恐らく1匹分だろうと予想される量を切り取ったものです。ゆっくりの体が水虫菌に感染し
それが増殖を続けた慣れの果てがこれです。森から消えたように思われたのは 恐らく雨で脆くなっていた死体が溶けたからでしょう
これは幸いにも雨を免れて残っていたものなんです。」
手にしたビンを振るたびに、中でグチョグチョと粘っこい音を立てそれが変形する。
「加工場から販売されているゆっくりを溶かして殺す粘殺剤はご存知でしょうか?あれも実はこの水虫菌のメカニズムの応用なんですよ。
では長くなってしまいましたが治療についてお話しますね。ゆっくりの中には愛玩や労働力として人間と共存をするものがいますね。
彼女たちを水虫の脅威から守るための防除法を研究する過程で、体内に抗生物質を生み出させることに成功しました。
そして、これを人間用に流用したのがゆっくりの体液療法です。もっとも、まだまだ不安定な点も改良の余地も多いんですが。」
先生はふふっと苦笑を漏らす、だがそれは実に画期的なことである。
何でも一度ゆっくりを通すことによって、複数の薬効成分が均一に混ざるのだそうだ。
これにより調合の労力が減らせるだけでなく、副作用の心配もなくなるの。
またゆっくりに舐めさせることにより、比較的弱いゆっくりが無事なのだから安全な薬であるという証明にもなる。
そのほかにも、適度な刺激が患部の血行を良くする、余分な角質や老廃物の排除など利点は多い。
また今後の研究次第では水虫以外のあらゆる外傷への応用も期待されているという。
そこまで話を聞いたところで、そろそろ戻りましょうかとの言葉を頂き、一同緒丹さんの元へ戻ることになった。
治療室にもどると何ともスッキリした緒丹さんとグッタリしたゆっくり達が出迎えてくれた。
グッタリするほど舐め続けるとは、何とも立派な献身精神である。
「これは素晴らしいですね!! 今日舐めてもらっただけでかなり足がすっきりしましたよ。
痒みが取れるだけでなく、何だかスースーして何とも言えない清涼感も感じますね。
その他にも足がポカポカしてムクミまでとれましたよ!!」
水虫はもちろん、疲労回復にも大きな効果があるらしい。興奮気味に語る緒丹さんの顔は眩しいくらいに輝いていた。
帰り道、緒丹さんは語る
「今回の取材なんですが、最初は匿名で行って貰おうとも考えていました。
ですが、私が全てをさらけ出すことにより、少しでも希望を持てる方が居ればと全てを公表させて頂きました。
水虫は恥ずかしい病気でも治らない病気でもありません。
この記事を読む悩んでいる皆さんも勇気を出して是非一歩踏み出してみてください。」
緒丹さんは今後、週2日のペースで通院を行うそうだ。早ければ一月ほどで感知する見込みである。
日々進歩する医療技術、そんなところでもゆっくり達の活躍が見られる。
今後とも我々は緒丹さん、ひいてはゆっくり治療の取材を続け、読者の皆様に真実を伝え続けていく。
終われ
※こっから、おまけーね
「残さず全部食べるのよ。」
水虫治療に従事させられたゆっくり達の目の前に積まれたのは大量の薬草。
どれもこれも苦い、辛い、酸っぱい、スースーするなどとてもではないが食べられたものではない。
だが、ゆっくり達はそれらを餌付きながら必死に飲み込んでいる。何故ならこれを食べないと彼女達の命はない。
実はこのゆっくり達も水虫菌に感染している。そこを薬草を食べることによりどうにか抑え込んでいるのだ。
以前このゆっくり達は恐ろしい物を見せられた。それはドロドロにとけた水虫ゆっくりの記憶であった。
電極を差し込むことにより、つないだモニターにはあの一家の記憶が映像として写し出された。
そこには溶けて崩れてくっついて・・・まさにこの世の地獄が広がっていた。
そしてそれが見終わる頃、なんとあの粘菌ゆっくりを飲み込まされたのだ。
いくら餌付いても吐き出せず、ゆっくり達が泣き叫びはじめた時に彼女はこう言った。
「あなた達にはこれから薬草だけを食べてもらいます。これを食べなかったり他の物を食べても構いませんが、
先程の映像のようになるから忠告しておくわね。また私の命令に逆らった場合も薬草を与えないから、しっかり覚えておいてね。」
それからゆっくり達の医療ゆっくりとしての日々がはじまった。
毎日餡子が飛び出そうな程マズイ薬草を腹が裂けんばかりに食べ、鼻がもげんばかりに臭う足を舐め続けるのだ。
一度薬草を食べることを拒否したことがあったが、その時には全身が気の狂わんばかりの痒みに襲われ半日と持たなかった。
そうして彼女達は今日も足を舐め続ける、それは死ぬまで終わらない。
本当に終われ
作者・ムクドリ( ゚д゚ )の人
今までに書いちゃったの
- ゆっくりディグダグ
- ゆっくりディグダグⅡ
- みかん
- キャベツ
- 和三盆
- みかん修正版(温州蜜柑)
- 水虫
最終更新:2008年09月27日 15:27