ゆっくりいじめ系890 技巧派まりさの誕生_1

赤まりさは困惑していた。
目を覚ますと優しい家族のいる見慣れた森のおうちではなく見知らぬ場所にいたのだから当然だろう。
「ゆぅ、ここどこぉ?」
やっぱり、何処をどう見ても辺り一面見たことの無い場所だった。
それに家族の姿もなかった。
「おきゃーしゃん!おねーしゃん!れいみゅー!どこー!?」

仕方がないので家族を探しならが見たことも無い場所を歩くまりさは美味しそうな、それも適度に弱った虫と適度に千切られた野菜くずと見たことの無い黒っぽいものを見つけた。
「ゆゆっ!むしさんとはっぱしゃんがあるよ!」
家族探しで体力を消耗しお腹が空いていた赤まりさは美味しそうな虫に飛びつこうとする。
しかし、その瞬間、体の内側から今までに感じたことの無い猛烈な痛みを感じた。
「ゆぎぃぃぃいいいいいい!?いだい!いだいよおおおおおおお!!」
「ゆあああああああああああああああん!!ゆっぐ!・・・ゆっぐ!」

しばらくそこで泣きじゃくっていたが、誰も助けに来てくれないので諦めてまた虫に飛びついた。
すると、またしても先ほどの痛みが赤まりさに襲い掛かる。
「ゆぎょおおおおおおおおおおおおお!?」
先ほどと同じように苦しみ、のた打ち回るが誰も助けに来ない。

また助けを求めるのを諦めたまりさは、今度は野菜くずのほうに飛びついた。
が、その瞬間、さっきと同じように激痛が赤まりさを襲う。
「ゆげえええええええ!!?」
そして、3度目になるのた打ち回ってから、泣きじゃくり、諦めるという一連の行動を繰り返すと、しぶしぶ君の悪い黒い塊に口をつけた。
「ぺ~ろぺ~ろ・・・ゆゆっ!?にゃにこれ、しゅごくあまいよ!!」
思いのほかその黒いものが美味しく、ほかの2つを食べたときのように痛みに邪魔されなかった赤まりさはその黒いものをたらふく食べ、お腹がいっぱいになったところで眠りについた。


翌朝、赤まりさが目を覚ますと、そこには野菜くずと昨日の黒い物体が置かれていた。
「ゆゆっ!あまあまがいっぱいあるよ!」
当然、赤まりさは甘くて痛みを伴わない黒いものを真っ先に食べた。
その後で野菜くずに舌を伸ばすと、やはり苦痛が襲ってきたので、今後虫と野菜くずには近づかないことにした。
「きょうもおきゃーしゃんたちをゆっくちさがすよ!」

そう言って元気良く見たことも無い場所の探索を再開する赤まりさ。周囲を壁に囲まれている上に障害物がないのだから見渡していないものはいるはずもないのだが。
「ゆ~ゆ~ゆゆゆ~♪」
赤まりさは歌いながら見たことも無い場所をのんびりと歩いている。
どうやら、家族探しというのは建前で、ここには自分以外誰もいないことを理解しているようだ。
逆に言えば、外敵もいないため、大声で歌いながら散歩しても大丈夫だと判断したらしい。
そんな調子で家族探しと言う名の散歩をしているとお腹の空いてきた赤まりさの目の前に例の甘い黒い塊と白い皮のお饅頭が降って来た。
「ゆゆっ!またあまあまだよ!」

大喜びで黒い甘い物に飛びつく赤まりさ。その時、野菜くずを食べようとした時のあの痛みが襲いかかって来た。
「ゆっぐえええええええええええ!?!」
またしてものた打ち回りながら涙を零す赤まりさ。しかし、助けを求めることは諦めているので痛みが引いたら、すぐに泣き止んだ。
「ゆぅ・・・あまあまさんもいぢわるするんだね!」
「ならいいよ!まりしゃはこっちのしろいのをちゃべりゅもんっ!」
黒い塊に文句を言ってから、白いお饅頭に噛り付く赤まりさ。

「ゆゆっ!?・・・うっめ、これめっちゃうめぇ!」
あの若干しょっぱい皮の中から溢れ出す黒い塊。
その味こそ今までの黒い塊と変わりがなかったものの、皮のしょっぱさが黒いものの甘さを引き立てていて、黒い塊単体とは比較にならないほどに美味。
まりさは、夢中になってお饅頭を食べ、食べ終わったところでお昼寝をした。

夜中に赤まりさが目を覚ますと、そこには先ほどの白いお饅頭と自分より小さなリボンを失った赤れいむの死体が転がっていた。
「ゆぎゃ!?なにごでええええええ!!ごんなにょゆっくちできにゃいよおおおお!!」
同族の亡骸を見たことで酷く取り乱した赤まりさはその赤れいむだったものを体当たりで視界の外に追いやると、ホッと一息ついて白いお饅頭に飛びついた。
しかしその瞬間、先ほどの黒い塊のときと同じように体内を強烈な痛みが駆け巡り、赤まりさは激痛のあまりに動くことが出来なくなる。
「ゆぎぃぃいいい・・・またなのおおおおお・・・!?」
苦しみながらも、もう白い饅頭も食べられないことを悟った赤まりさは、酷く落ち込んだまま辺りにほかの食べ物がないことを確認し、再び眠りにつきました。

そして翌朝。目を覚ました時、目の前にはいつものように食べ物が置かれておらず、ただ昨日の赤れいむの死体が転がっているだけだった。
どれだけ散歩を続けても、どれだけ歌を歌っても全く食べられるものが見つからなかった。
「ゆぅ・・・おにゃかしゅいたよお・・・」
「しろいのさんどきょお?」
「かきゅれてないででてきちぇね!」
しかし、何を言ったところで出てこないものは出てこない。
そうして、気がつけば赤まりさは2日近く何も食べなかった。

「ゆぅ・・・」
空腹で目を覚ました赤まりさの目の前に転がっているのは昨日の赤れいむの亡骸。目を凝らしてみると、その少し潰れた体からあの黒い塊が漏れ出していることに気がついた。
「ゆゆっ!くろいのしゃんだよ!」
寝ぼけていたのかも知れないが、空腹に負けた赤まりさは赤れいむから漏れ出していたその黒い塊を舐めた。
「うっめ、これめっちゃうめぇ!」
そう口走りながら、赤れいむから漏れる黒い塊を一心不乱に舐め続ける赤まりさ。
「黒いのもっとたべちゃいよ!」

その欲求に従う赤まりさは今度は赤れいむの死体の傷口に口をつけて、そこから中身を吸い始めた。
「ゆっへ、えっはゆえぇ!」
それでも飽き足りなかった赤まりさはついに赤れいむの死体に噛り付いた。
「うっめ、これめっちゃうめぇ!!」
久しぶりに空腹を満たした赤まりさは心地よい眠りについた。


翌朝、目を覚ますと今度は自分より若干小さい、ちゃんと帽子を被った赤まりさの死体が転がっていた。
お腹が膨れたことで正常な思考を取り戻していた赤まりさはさっさとそれを視界の外へ追いやる。
それから、いつものように歌を歌いながら見慣れた場所になってしまった見知らぬ場所の散歩を開始した。
「ゆぅ・・・今日も何もなかったよ・・・」

そう言って赤まりさはお昼寝を始めた。が・・・
「ゆぅぅううう・・・おにゃかがしゅいてねみゅれないよおおおお・・・」
空腹のせいで眠れないらしく、落ち着き無く、先ほど押しのけた赤まりさの死体のうろうろしている。
「ゆぅぅうう・・・でも・・・ゆっくちできにゃいよおおお・・・」
やはり意識がはっきりしているときに同族を食べる意思は無いらしい。
しかし、この前と違って「同族は美味しい」と理解してしまっているため、いざとなったら食べることを選択肢に入れている。

そうやってしばらく右往左往していると、空から突然野菜くずや餡子、虫などが降って来た。
「ゆゆっ!?おいしそうなものがいっぱいだよ!」
同族食いへの嫌悪感や、空腹による思考能力の低下、長期間の経験の欠如による忘却。
それらの要因が重なっていた赤まりさは満面の笑みを浮かべてそのご馳走の山にかぶりつこうとした。

が、瞬間・・・
「ゆぎゃあああああああああああああ!?」
しばらく味わっていなかった痛みが久しぶりに体中を駆け巡った。
「ゆぎぃぃいいいい!ゆぐぅう・・・!ゆっぐ・・・」
そして、自分がそれらを食べることが出来ないのを思い出した赤まりさは、死人のような表情で小さな赤まりさの死体を食べ始めた。

「うっめ、めっちゃうめぇ!」
そうは言うものの、正気を失っていた昨日と違って双眸からは涙が溢れ出している。
微笑んでいるように見えるその表情はどこか引きつっているようにも見える。歓喜の声はどこか不自然に裏返っている。
やがて、小さな赤まりさを食べ終えた赤まりさは目を閉じた。
眠りにつくまで赤まりさの口からはずっと「ごめんにぇ・・・」という言葉が漏れていた。


そして翌朝。
今度はまりさの目の前に赤れいむの死体と、瀕死の赤れいむが転がっていた。
「ゆぅ・・・ゆぎゅぅ・・・いぢゃい、いぢゃいよおおお・・・」
「ゆっ!?だいじょうぶ?ゆっくちしっかりしてね!」
急いで駆け寄った赤まりさ。しかし、その赤れいむの有様には驚愕するしかなかった。

「ゆぎぇ!?な、なにごれえええええ!?」
酷く小柄で、同じ赤ちゃんの自分と比べても半分近い大きさしかなく、その上両目を失っている。
そして、底面をこんがり焼かれてしまっていて、二度と歩くことのかなわない体にされてしまっていた。
赤まりさは必死に手当てをしようとするが、傷を舐めるぐらいしか出来ない。

「ゆっ!?しょうだ!おいちいものをあげるから、ゆっくりまっててね!」
そう言って赤れいむをあやすと、まりさはおもむろに赤れいむの死体に近づいていった。
小さな赤ちゃんでも食べられるようにそれを噛み千切ろうとした時、またしてもあの痛みが赤まりさを襲った。
「ゆぎぃいいいいいいいいいい!?」
そして、その瞬間に赤まりさは理解した。
自分は、あの子を、食べるしかないのだ、と。

「ごべんね!おいしいのみつからにゃかったよ!」
瀕死の赤れいむに泣きながら詫びる赤まりさ。
けれど、赤れいむはその声に応じる余裕などなく、ただひたすら「いちゃいよおおお!くりゃいよおお!」と泣き喚くだけ。
赤まりさはそんな赤れいむが息を引き取るまで、ずっと寄り添っていた。
「おねーぢゃん・・・ありがちょー・・・もっちょいっちょにゆっきゅちちたかったよ・・・」
そんな言葉を残して旅立ってしまった赤れいむ。

「ごべんねぇ、れいむぅ・・・」
自分が何もしてあげられなかったことを悔やみながら、赤まりさは苦しそうな、しかし少しだけ幸せそうな表情の赤れいむの亡骸に口をつける。
が、無常にもあの痛みがそれを阻む。しかも、その痛みは長く続き、赤まりさは痛みに負けて意識を手放した。
赤まりさが目を覚ますと、そこに赤れいむの死体はなく、代わりに別の赤れいむがさっきの赤れいむと同じ有様で横たわっていた。

「ゆぅううう・・・いだいよぉ・・・」
小さな体をよじって苦しんでいる。しかし、自分は死んだゆっくりを食べられないことを学習した赤まりさにとって、それはもはや餌でしかなかった。
「ゆ、ゆっくりしんでね!」
そう言うと赤れいむが何か返事をする前に噛み付いて柔らかい皮を食いちぎる。
「―――っゆぎゃああああああ!」
その蛮行に赤れいむは悲鳴を上げるが、逃げることも抵抗することも出来ない。
その叫びを聞きながら、苦悶の表情を眺めながらも赤まりさは「これがれいむのためなんだよ!」と赤れいむに、そして何より自分自身に言い聞かせながら美味しい餌を食い漁った。
「うっめ、これめっちゃうめぇ!」


赤れいむを美味しくいただいた後、眠りについた赤まりさが目を覚ますと、元気な愛らしい赤れいむが自分の頬ずりをしていた。
「おねーしゃん、れいみゅといっちょにゆっくちちようね!」
舌足らずな言葉、純真無垢な笑顔。そして自分よりずっと小さい体躯。
どうやら赤まりさは何時の間にか子まりさと呼ぶにふさわしい大きさにまで成長していたらしい。

自分が大きくなっていた喜びと、自分を慕ってくれる家族が出来た喜びに子まりさは満面の笑みを浮かべる。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」
赤れいむの返事を聞き終えると、2匹はぴったりとくっついて頬をすり寄せ合った。
それから、2匹は時間を忘れて遊び続けた。

「ゆぅ~、おねーしゃん!おなきゃしゅいたよ!」
「ゆっ!ゆっくりがまんしてね!まりしゃもおなかしゅいたよ!」
しばらく遊んでいると突然空腹を訴え始めた赤れいむにそう言い聞かせる子まりさ。
しかし、赤ちゃんにとって我慢は非常につらいものであり、また、なぜ我慢しなければいけないのかわからない赤れいむはすぐに泣き出してしまった。
「ゆえええええええええん!おにゃがしゅいだよおおおおおおおお!ゆっきゅぢできにゃいよおおおおお!」
「ゆぅ・・・わかったよ!まりしゃがなにかさがしてくるよ!」
そう言って少しの間だけ赤れいむを泣き止ませることに成功した子まりさは何も無いだろうとうすうす感じながらもいつもの場所を行ったり来たりした。

が、予想通りいくら探しても食べれそうなものは何も見当たらない。
「おめんにぇ、おちびちゃん!なにもみつからなかったよ!」
「ゆわあああああん!おねーしゃんのばきゃあああああ!」
「どほぢでそんなごどいうのおおおおおおお!」
「れいみゅゆっきゅちちちゃいよおおおおおおおお!」
「まりしゃだってゆっくちちちゃいよおおおおおお!」

そうやってしばらく喧嘩しながら泣きじゃくっていると、赤れいむは泣き疲れて舟をこぎ始めた。
「ゆうううう・・・おにゃか・・・しゅいた・・・よぉ・・・」
そのことに気づいたまりさは泣くのを止め、赤れいむが寝冷えしないように頬を摺り寄せ、自分も眠りについた。

翌朝になると、昨日のことをすっかり忘れていた赤れいむは無邪気に自分に甘えてきた。しかし、食糧難だけは一向に解決する気配がなく、2匹とも徐々に痩せ衰えて行った。
「おねーしゃん、れいみゅおなきゃしゅいたよ・・・」
赤れいむは弱々しく呟くが、子まりさのその欲求を満たす術は無い。
「ゆっくりがまんしてね!」
だから、そう返すのが精一杯だった。

それから1日経ち、2日経っても何処にも食料は見当たらなかった。
そして、そうやって食事抜きの生活が5日目に突入した日、赤れいむが子まりさに猛然と飛び掛ってきた。
「ゆゆっ!おちびちゃんなにするの!?」
「でいびゅおなきゃしゅいだよおおおおお!」
「やめでね!まりさをたべないでね!」
「れいみゅをゆっきゅちしゃせてきれにゃいおねーしゃんなんかゆっくちちね!」
昨日まで一緒にゆっくりしていた妹分から浴びせられる罵声。そしてじわじわと皮を食い破っていく幼い歯。

その痛みを感じたとき、子まりさは思った。
死にたくない、と。
「いぢゃいよおおおおお!どほぢぢぇこんにゃことぢゅるにょおおおお!?」
気がついたら赤れいむを壁に叩きつけていた。

自分から仕掛けたことも忘れて泣きじゃくる赤れいむ。
しかし、子まりさはその姿を見ても昨日までのように可哀そうとは思わず、ただ憎たらしいだけだった。
「まりさをたべようとするわるいこはゆっくりしんでね!」
はき捨てた子まりさは泣きじゃくる妹分の頭上へと飛翔し、全力で赤れいむを踏み潰した。


久しぶりに空腹を満たした子まりさが目を覚ますと、美味しそうに野菜くずを食べる赤まりさの姿があった。
「ゆゆっ!おねーしゃん、まりしゃといっちょにゆっくちちてね!」
どこかで見たような舌足らずな言葉と無邪気な笑み。その既視感の正体も忘れて、子まりさは可愛らしい妹分の愛嬌のとりこになった。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅちちちぇっちぇね!」

元気良く言葉を交わした2匹は頬ずりをして友愛を確認すると、2匹だけの世界を駆け回って遊び始めた。
「おねーしゃん!まりしゃおなきゃがしゅいたからやさいしゃんたべりゅよ!」
「だめだよ!やさいさんはあぶないよ!」
「しょんにゃことにゃいよ!しゃっきもちゃべれたもん!」
「・・・それもそうだね!じゃあ、まりさといっしょにたべようね!」

2匹そろって美味しそうな野菜くずに向かって行くが、いざ食べようとした瞬間、子まりさの体内から激痛が襲ってくる。
「ゆぎいいいいいいい!?」
「ゆぅっ!?おねーしゃん、どーちたにょ!?」
「な、なんでぼないよ・・・ゆがああああ、ゆげぇ・・・」

痛みを必死に堪えながら赤まりさに微笑みかけようとするが痛みのせいでそれすらも上手くできない。
「ま、まりさだけでもおやさいをたべてね・・・」
「ゆぅ・・・わきゃったよ!ゆっきゅりたべりゅよ!」
そう言って赤まりさは野菜くず食べはじめた。
「うっみぇ、きょれれめっちゃうめぇ!」
子まりさはその赤まりさの幸せそうな姿をただただ眺めるばかりだった。

翌日も、その翌日も子まりさと赤まりさは一緒に遊んだ。
赤まりさは良く遊び、良く食べ、良く眠り、非常にゆっくりとした生活を送っている。
一方の子まりさは空きっ腹を抱えならがも赤まりさに付き合い、野菜くずを食べようにも痛みが怖くて食べられず、酷い空腹で眠ることもままならない。
それでも仲良くしていた2匹の関係に終わりをもたらしたのは、4日目の夜中の出来事だった。

突然の激痛で目を覚ますと同時に絶叫する羽目になった子まりさ。
赤まりさはその傍に寄り添い心配そうに子まりさに声をかけ続けていた。
「おねーしゃん、だいじょーびゅ?」
「ゆぅ・・・ゆぅ・・・らいじょうぶだよ・・・ゆ?」

そんな赤まりさに心配をかけまいと必死に笑顔を取り繕う子まりさだったが、不意に口の中の異物感に気づき、それを吐き出す。
「ゆゆっ!?どほぢでおやざいがぐぢのながにいいいいいいい!?」
無意識の内に食べてしまったのだろうか?
とにかく、子まりさはこれを口にしたせいで痛い目にあってしまったのだと判断した。

「おねーしゃん、おいちかっちゃでちょ!」
「ゆ?どういうこと?」
「おねーしゃんがしゅききりゃいしゅるからまりしゃがたべさちてあげちゃんだよ!」
「・・・まりさがこれをたべさせたの?!」
その事実を知った途端、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
悪気は無いのかもしれない。けれど、自分が食べたくても食べられないものを貪り、眠れない自分の隣で安眠し、疲労困憊の自分を好き勝手に連れまわす赤まりさの振る舞いの全てが、自分を苦しめるためのもののように思えてきた。

被害妄想以外の何者でもないだろう。しかし、本人にとってはその妄想こそ真実。
「しょーだよ!おいちかったでちょ!まりしゃのことほめちぇね!」
そんなことを口にすると同時にえへんとふんぞり返って胸を張る赤まりさ。
しかし、それが命取りになった。
「ゆっくり・・・しねええええ!」

響き渡る絶叫とともに跳躍した子まりさは思いっきり赤まりさの上に圧し掛かり、何度も何度も踏みつけた。
「どほぢ・・・ゆげっ!?」
「まりさをっ!!」
「やべでっ!?」
「いぢめるっ!!」
「おねーぢゃん!?」
「ごみくずはっ!!」
「ゅぅ・・・ゅ・・・」
「ゆっくり!!」
「・・・・・・ゅぅ・・・」
「しねっ!!」

鬼のような形相で赤まりさを踏み潰した子まりさは、漏れ出したものを丹念に舐めとる。
「うっめ、これめっちゃうめぇ!」
そうして、自分の周りがきれいになったところで4日ぶりの安眠へといざなわれていった。


「うっみぇ、きょれめっちゃうみぇ!」
目を覚ますとまたしても赤まりさが美味しそうに野菜くずを食べていた。
今までに食べた2匹にも負けない純朴な笑みと無垢な瞳。
それを見た子まりさは思った。
なんて美味しそうな餌なんだろう、と。
「ゆゆっ!おねーしゃん、めをしゃまちたの?」
「まりしゃといっちょにゆっくちちよーね!」

その一片の邪心も感じさせないお願いを聞いた瞬間、子まりさは赤まりさの頭上へと飛び上がった。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅちちちぇっちぇ、ぐぇ!!?」
それは一緒にゆっくりしようという意味ではなく、ただおとなしく食べられてくれということに他ならない。
それは相手に自分の好意や厚意を示すものではなく、ただその言葉を聞くと動きを止めて返事する習性を利用するための戦術に他ならない。
ゆっくりにとってもっとも基本的なその言葉を最後まで言い切ることさえかなわなかった赤まりさはその一撃で一切身動きが取れないほどの痛手を負ってしまった。

「・・・ゅっぅぃ・・・ぃぁぁっぁょ」
赤まりさにはまだ息があった。しかし、動かないならば生きていようが死んでいようが同じこと。
子まりさは口の中に広がるであろう甘みに胸を躍らせながら、何かわけのわからないことを呟く餌にかじりつく。
その死にかけの餌の甘みは今までに食べたどの餌よりも甘かった。
その味をしめた子まりさは今度もきっと死ぬ前にゆっくり食べよう、と思った。

それからの子まりさの生活は非常にゆっくりしたものだった。
朝起きれば美味しいご飯が転がっている。
お腹が空いていなければちょっと行儀が悪いがそのご飯と遊んだってかまわない。
とにかく、自分の好きなように遊ぶだけ遊んで、食べたいときに食べて、目を覚ませばすぐに美味しい食べ物が補充されている。
きっと自分ほどゆっくりしたゆっくりはいないだろう。
そう思えるほどに子まりさの生活は充実していた。

そんなある日、まりさが目を覚ますと目の前には自分と同じくらいの大きさのゆっくりれいむがいた。
子まりさは自分と同じ大きさであったからなのか、その個体を餌と判断することなく、元気良く声をかけた。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「まりさはまりさだよ!」
「れいむはれいむだよ!」

わけのわからない自己紹介の後、子まりさはれいむの傍へ寄って行き、頬ずりで親愛の意を示した。
それから、「いっしょにおさんぽしよう!」と誘う子まりさ。しかし、れいむは断った。
「どほぢでええええええ!?」
まりさのことがきらいなの!?と問い詰めるまりさに首を振ってそうゆゆってではないことを伝えたれいむは「あしがうごかないの」と呟く。
「ゆゆっ!それならまりさがずっとそぱにいてあげるよ!」
そうして子まりさがれいむに頬を摺り寄せると、れいむも動かない体で頑張って頬ずりを返してくれた。

淡い淡い初恋。
この子とずっと一緒にゆっくりしていたい。
ゆっくり特有の、そして発情期間近特有の惚れっぽさでそう思った子まりさ。
すると、突然地面が揺れ始める。
今までの自分達の行動との因果関係も、何の前触れも無い振動に戸惑う2匹。
「ま、まりさ、こわいよおおおお!」
「ゆゆっ!だいじょうぶだよ!まりさがまもってあげるよ!」
そう言って、いっそう力強くれいむに頬を摺り寄せる子まりさ。

しかし、その振る舞いがまずかった。
「ゆぅ~?なんか変な気分だよ!」
「ゆぅう・・・れいむもなにかへんだよ!」
揺れの最中に突然自分達を包み込んだ不思議な快感。

それに酔いしれ、その正体を究明しようと試みる2匹は揺れの最中の自分達の行動を真似る。
そして、自分達の頬をすり合わせる行為をもっと激しくすればその快感を得られることに気づいた2匹はひたすらそれを繰り返した。
足の不自由なれいむには大変な行為なので、ずっと子まりさが主導権を握って、時が経つのも忘れ、揺れが止まったことにも気づかずにその行為に溺れた。



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最終更新:2008年09月20日 01:19
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