~ゆっくりえーきの生涯(前編)~
前書き
このSSには東方キャラが登場します。また、東方キャラと加工場職員との関わりもあります。
登場するゆっくりえーきの性格などは殆ど私が勝手に考えたものです。(一部他から取り入れました)
以上のものを受け入れられる方のみ本編へお進みください。
四季映姫を模したゆっくり。語尾に「--ぞ~。」とよくつけて話すのが特徴。
教養のある人物の名前がついているゆっくりではあるがその知能はゆっくり魔理沙や霊夢と大して変わらない。
性格はとても温厚で滅多なことでは怒らずいつもニコニコしている。
三途の川周辺に最近になって現れだした。
中身は鶯餡で幻想郷ではまだ発見されていない新種のゆっくり。
~本編~
「ふぁぁ~よく寝た。今日も良い天気だね~。」
三途の川のほとりで一人の少女が目を覚ました。
彼女の名前は小野塚小町、三途の川の船頭をしている。かなりのマイペースなため上官である四季映姫の目を盗んで
はこうして仕事をサボっている。
しかし、小町がサボりたいと思うのも仕方ないのかもしれない。
最近幻想郷でゆっくりという奇妙な生き物が大量発生し、その魂が毎日のように押し寄せてくるのだ。
「しっかしこう毎日ゆっくりの魂ばかりじゃねぇ、やる気が出ないよまったく。」
小町は以前、幻想郷の人間の魂を船に乗せた際、ゆっくりがなぜこうもたくさん死ぬのか聞いていた。
ゆっくりの中身は食材であるため幻想郷では毎日大量のゆっくりが中身を抜かれ殺されており、また知能も低く生意
気な性格のため人間や妖怪、はたまた同族にさえ殺されてしまうのだと。
「はぁ、いったいあんな妙な生き物誰が作ったんだか。」
小町がぼやいているとなにやら背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「よいぞ~よいぞ~。」
小町の眠気は一瞬にして吹っ飛び即座に後ろを振り向いた。
「え、映姫様違うんです!これは決してサボっているわけでは・・・ん?」
目の前には想像していた人物はいなかったが、代わりに妙な生き物が2匹飛び跳ねていた。
「「ゆっくりしてよいぞ~!」」
ニコニコ笑った顔に豪勢な帽子をかぶった緑色の髪のゆっくり、上官である四季映姫にそっくりなゆっくりであった。
「えーと、なんだおまえたちは?」
小町は多少困惑しながら目の前で跳ねている2匹のゆっくりに話しかける。
「「ゆ?わたしたちはゆっくりえーきだぞ~!」」
2匹同時に返事が返ってきた。予想通り目の前にいるのは紛れも無く上官である四季映姫のゆっくりであった。
しかもよく見ると2匹は死んではいなかった。生きて三途の川を訪れることができるのは特別な力を持った人間や妖
怪くらいであり、生きたゆっくりなど今まで見たことはなかった。
「お前達はどうやってここまで来たんだ?」
「ゆっくりしてたらここにいたぞ~!」
「ゆっくりいたぞ~。」
期待はしていなかったが、予想通りの答えが返ってきた。上官に似ているとはいえ所詮ゆっくりであった。
「はぁ、お前達に聞いたあたいが⑨だったよ。」
小町は顔に片手を当ててため息をついた。
生きたゆっくりが三途の川に現れるのは初の事なのでとりあえず2匹を映姫に見せる事にした。
「よし、お前達ちょっとあたいについてこい、ゆっくりさせてやるぞ。」
ゆっくりという単語を使えばゆっくり種は基本的にその相手を信用する。これも船に乗せた魂から聞いていた。
「ゆ!おねえさんについていくぞ~!」
「ゆっくりついていくぞ~。」
小町は船着場へ向けて歩き出し、その後ろを2匹が飛び跳ねながらついていく。
途中2匹の進む速さが遅かったのでしかたなく小町は2匹を抱えて歩くことにした。
歩き出すと2匹の後頭部にゆっくりの肌よりも柔らかいけしからんものが押し付けられる。
「やわらかいぞ~♪」
「きもちいいぞ~♪」
セクハラめいた言葉を発する2匹であったが小町は無視して船着場を目指した。
船着場に着くとゆっくりの大家族らしき魂がふよふよと浮いていた。
「はぁ、なんで毎日こんなにくるんだよ・・・」
既に今日小町はゆっくりの魂を100匹は対岸へ渡していたの。
小町は2匹をその場へ置きでゆっくりしているように言うと、うんざりしながらもしかたなくゆっくり達の魂のもと
へ歩いていく。
親と思われるゆっくり霊夢と魔理沙が1匹ずつ、子供と思われるゆっくり霊夢と魔理沙が8匹ずつの少し多いがよく
見かけるゆっくり一家であった。
「ゆ?おねえさんだぁゆ゛!」
小町を見つけたゆっくり一家は代表してお母さん霊夢がお決まりのセリフを言おうとした。
しかし、小町はどこからともなく取り出した鎌の柄でお母さん霊夢を殴り気絶させた。
ゆっくりが現れた当初はきちんと話して対応していたのだが、あまりにも数が多いのとうるさいと言う理由で今では
見つけ次第気絶させて運ぶことにしている。
死んでいるのでいくら殴っても死ぬことは無いのだ。
「れいむうぅぅぅ!おねえさんなにゆ゛!」
お母さん霊夢が殴られるのを見てすぐさま抗議をしようとするお父さん魔理沙であったが同じく即気絶させられる。
親が目の前で殴られるのを見たプチゆっくり達は一斉に逃げ出す。
しかし次の瞬間逃げようとするプチ達の目の前に小町が一瞬で姿を現す。
小野塚小町の能力は距離を操る程度の能力。この力を使えば一瞬で距離をつめることができるのだ。
何が起こったかわからないプチ達はガクガクと震え泣き出した。
「「「いや゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」」」
「「「おがあざぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん!」」」
泣き叫ぶプチ達を無視して次々と気絶させていく。
「ふぅ、これで全部か。」
気絶させたゆっくり一家を船に投げ入れる。
小町は待機させておいた2匹のもとへ戻ると、小町の乱暴さを見ていた2匹はガクガクと震えていた。
「「ゆっくりできないぞ!ゆっくりできないぞ!」」
ぞ~と語尾を伸ばしたいようであったが恐怖のあまり早口になってしまっていた。
「怖がらなくても大丈夫だ、さっきあたいが殴っていたのはゆっくりの魂だ。生きているお前達は殴らないよ。」
小町の言葉を聞いて2匹の震えは止まり笑顔に戻った。
「おねえさんこわかったぞ~」
「ゆっくりできなかったぞ~」
「はいはい悪かった悪かったさっさと川を渡るよ。」
小町は2匹を再び抱えると先ほど気絶させたゆっくり一家が乗っている船に乗り込み三途の川を渡っていった。
「おい着いたぞ、さっさと起きろ!」
未だに気絶しているゆっくり一家を鎌の柄で軽く殴って目覚めさせる。
「・・・ゆっ・・・。」
軽い衝撃が体に走るとゆっくり一家は目を覚ました。
「おいお前達、あそこに見える建物に行けばゆっくりできるかもしれないぞ。」
目を覚ましたゆっくり一家が喚き散らす前に小町は裁判所へ行くように指示する。
もちろんゆっくり一家は向かう場所が裁判所だと言うことなどわかっている筈もなかった。
一家の柱であるお母さん霊夢が小町の言葉を聞いて目をキラキラさせていた。
「ゆ!みんなさっさとおきてね!ゆっくりポイントをみつけたよ!」
お母さん霊夢の言葉を聞いたお父さん魔理沙やプチ達は皆船を下りて裁判所へ向かっていった。
「まったく、さっき殴った相手の言葉を鵜呑みにするなんてどこまで頭が⑨なんだか・・・。」
小町は2匹のゆっくりえーきを抱えると船から降りた。
ちなみになぜ2匹がゆっくり一家と一緒に裁判所へ行かなかったかというと、ゆっくり一家が気絶している間に2
匹には船を勝手に降りるとゆっくりできなくなると言っておいたからだ。
「ゆっくりいくぞ~。」
「ゆっくりすすむぞ~」
ご機嫌な2匹を抱えて小町は裁判所へ向かっていった。
「「「「「いや゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」」」」」
裁判所へ入ると先ほどのゆっくり一家の悲鳴が聞こえてきた。
法廷の中心に円形の黒い沼が出現しており、ゆっくり一家が飲み込まれている最中であった。
「案の定地獄行きか。」
最後まで粘っていたお父さん魔理沙が絶望の表情を浮かべ飲み込まれると黒い沼は消え元の床に戻った。
「今日の法廷はこれにて閉廷とします。」
裁判長の席から降りて歩いてきたのは小町よりも小柄な少女であった。
彼女は四季映姫・ヤマザナドゥ、四季・映姫が名前でヤマザナドゥは役職名だ。
ヤマは閻魔、ザナドゥは楽園(幻想郷)を意味している。
「ご苦労様です小町、ところであなたの抱えているのは何ですか?」
「お疲れ様です映姫様、実は生きたゆっくりが三途の川のほとりに現れたもので対処について伺いに参りました。」
映姫は小町の抱えているゆっくりえーきの1匹を両手で持つとまじまじと見つめた。
「・・・ひょっとして私を模したゆっくりですか?」
認めたくなかったのか答えを出すので少々時間がかかった。
「大変申し上げにくいのですがその通りです。」
「おねえさんはだれ?わたしはゆっくりえーきだぞ~!」
えーきと言う単語が発せられたとき映姫の顔が一瞬ひきつったように見えた。
「私は四季映姫・ヤマザナドゥ、この裁判所の裁判官です。」
映姫は律儀にも2匹に自己紹介をした。
「「やまだなどぅ~♪やまだなどぅ~♪」」
2匹にはヤマザナドゥがどういった意味かはわかるはずもなかったが、語呂が気に入ったのか連呼していた。
正しく言えてはいないが本人達はヤマザナドゥと発音しているつもりらしかった。
「山田ではありません、ヤマザナドゥです。」
引きつった顔ですぐに映姫は修正したが2匹の山田コールは収まらなかった。
映姫は無言のまま手に持っている1匹を近くの傍聴席に置くと尺で殴った。
「ゆ゛!」
手加減をしているので潰れることはなかったが、殴られたゆっくりえーきは泣き出した。
「いたいぞ~いだいぞ~なにずるんだぞ~。」
「なぐるなんてひどいぞ~!」
「黙りなさい!ヤマザナドゥとは崇高な役職です。それを山田などとバカにした様に呼ぶのは許しません!それ以上我
が職を侮辱すると死後二度とゆっくりすることができなくなりますよ。」
それは死後は地獄行きだと言う映姫からの警告だった。
2匹には映姫の言っている意味がわからなかったが、ゆっくりできなくなると言う言葉だけは頭の中に深く刻み込ま
れた。そして泣き止み、やまだなどぅ~と言うの止めた。
「わかれば良いのです。ゆっくりと言えど善行を積めば死後天国へ行くことは可能なのですから。」
映姫は先ほど殴ったゆっくりえーきの頭を軽くなでて抱えるように持ち上げた。
「小町、2匹は元の場所へ放してあげなさい。ゆっくりと言えどその生涯を全うする権利はあ・・・。」
「やわらかくないぞ~。」
映姫に抱えられていたゆっくりえーきは事も有ろうに映姫の胸の辺りに頬ずりをしていた。
空気が凍った。
(な、ななななななんてことするんだぁぁぁぁぁ!)
小町は心の中で叫んだが、声に出すことはできなかった。
「あっちのおねえさんのほうがやわらかいぞ~。」
「そっちのおねえさんはぺったんこだぞ~。」
映姫は下を向いて体をプルプル震わせていた。
そして震えを止めると笑顔を浮かべて小町に微笑みかけた。
その笑顔は見たものを震え上がらせるほどの恐ろしい笑顔であった。
「ねぇ小町、この2匹の饅頭と一緒に生きたまま地獄に落ちるのと私の目の届かないところへ今すぐに捨ててくるので
はどちらがいいですか?」
「い、いいいい今すぐ捨ててきます!」
小町は2匹を掴むと己の能力をフルに使って顕界を目指した。
そして映姫は無言のまま裁判所を後にした。
しかし映姫は後にこの判断が大きな誤りであったと深く後悔することになるのであった。
End(前編)
作成者:ロウ
最終更新:2022年01月31日 00:48