レミリア×ゆっくり系1 レミリアと森のゆっくり 中編_1

※レミリアによる、ゆっくりふらん虐待。やや温め。軽い性的虐待含む。
※18禁には、たぶんならない程度の性的描写が含まれています。
※また、虐待していない場面も、いつものようにやたらございます。
fuku1514.txtの続きです。前中後編の中編になります。
※ある意味ではレミリア虐めかも知れません。キャラ性格の俺解釈ひどすぎるので。
※「美鈴と森のゆっくり」の後日談的な感じとなっておりますが、これ単独でも普通に読
めるようにしたつもりです……一応。

※ゆっくりがゆっくりでは無い生き物に変化させられ、その後も虐められます。性的に。

※当然のように俺設定満載な感じです。
※原作キャラもゆっくりも俺設定要素多大ですので、イメージと大きく違う場合もござい
ます。ご注意ください。






「レミリアと森のゆっくり 中編」



 今宵の散歩は、お嬢様のトラウマとなりそうであった。

「ぐすっ……すんっ、ぐしゅっ……ひっく……」
 受け入れたくない現実に直面し泣きながら逃げたレミリアは、倒木の上で膝を抱え泣い
ている。

 戦いに於いていかなる敵も恐れない夜の王といえども、レミリアはまだまだ幼い500歳
児。
 あまりに特殊かつ変態的な性癖を目の当たりとしまっては、怯え拒絶し泣くのもやむを
得ないであろう。

「……ぐすん、ぐしゅっ…………!」
 ひっくひっくとしゃくり上げる声と、肩の震えが唐突に止まる。
 乱暴に手の甲で涙を拭き、レミリアは顔を上げた。

「……誰だ?」
 変わり身早く、ピンと神経を張り詰めさせ、彼女は周囲の様子をうかがった。
 自分へと向けられた、強い殺気に気付いたのである。

 おそらくは"敵"はレミリアの泣き声で、その存在と状況を知り、襲撃を決めたのであろ
う。
 どのような相手かは知らないが、短慮な事だとレミリアは思った。
 心に強い衝撃を受け、童女の如くに泣いていたとしても、彼女は吸血鬼。
 夜の闇に生き、人妖問わず恐れ畏怖する強大な魔であるのだから、このような敵意を向
けられては、即座に意識を入れ替えられる。

「……ふんっ、私はもう貴様に気付いている。隠れてもムダだと言っているんだぞ」
 先ほどまでの醜態を全く感じさせない、威厳にあふれた調子でレミリアは姿を見せない
敵に語りかけた。
 異変を解決しに向かって来た巫女に対してや、弾幕ごっこのルール内での争いの時とは
全く違う、真剣な命のやりとりを行うときの口調であった。

 そこに居るのは、もうカリスマ底値な500歳児ではなく、その首を狙い挑んできた愚か
者を悉く打ち倒してきた魔王である。
 外に比べると平穏な幻想郷に入ってからは珍しい、いわゆるカリスマ超全開モードであ
った。

「どうした? 来ないのなら、私から行くぞ」
 レミリアは倒木の上に立ち上がった。
 すでに相手の位置をわかっているように言っているが、それはブラフである。

 非常に強い殺気で、疑いようもない敵性の存在は察知していても、その位置はまだ把握
しかねていた。
 月が雲に覆われ、出ていないため、あらゆる力が本調子ではないのである。

 ふと、レミリアは思った。
 月が出ていない夜に襲撃を企てるとは、相手は妖怪では無いのか?
 しかし、人間が果たしてレミリアの命を狙うであろうか……自分に挑んできそうな人間
の心当たりはいくつかあるが、彼女たちなら普通に弾幕ごっこを挑んでくるであろう。

 それ以前に、誰が何のためにレミリアの命を狙うのか?

 心にわき上がった疑問が、レミリアを鈍らせ、焦らせる。
 正体がわからない相手に狙われているというのは、普通に気分が悪い。

「ふんっ、今さら怖けづいたか? さぁ、どうした、私が怖いのか?」
 レミリアは相手を挑発した。闇雲に動くよりも、敵に先に行動を起こさせ、後の先を取
る肚積りである。
 己の回避能力に、彼女は絶大な自信を持っている。

 しかし、敵は挑発に乗ってこない。
 強い殺気を維持したまま、こちらの出方をうかがっているのか、何もリアクションが無
い。

「……ちっ……!?」
 次に何を喋るか考えながら、焦れったさにレミリアは舌打ちした。
 それとほぼ同時に、やっと敵が動き出す──

 上空から弾が飛んできた。
 上を見て軌道を読み、レミリアは敵弾をかわす。

 敵はレミリアの上空で左右に飛びながら、自身を中心とした全方位に弾を放っているよ
うだ。
 弾の速度はそれほど速くもなく、威力も高くは無さそうである。

「ふんっ、無粋なやつだな。弾幕ごっこを挑みたいのなら、こそこそせず堂々と来ればい
いものを!」
 敵弾をかわしながら、レミリアは馬鹿にしたように言った。

 弾の速度と威力から、彼女は敵の力量をだいたい推し量っていた。
 推測通りならば、どう考えても相手は弱い。弱すぎる。

 見なくても余裕で避けられる速度。
 仮に当たったとしても、石礫をぶつけられた、いやテニスボールを当てられた程度に
しか感じなさそうな威力。

 殺し合いでも弾幕ごっこでも、どちらにしろ負ける事は有り得ない程度のレベルだ。
 無論それが油断を誘うための擬態である可能性も、レミリアは一応考慮しているが。

「……ん……気の所為……いや、これは……」
 飛んでくる弾を適当にかわし続けるうちに、レミリアは既視感を覚えた。
 パターンに見覚えがあったのである。

 今現在かわしているのに比べれば、それはもっと速く弾の間隔も狭いのだが、全方位発
射の二連弾をばんばん撃つ人物が身近にいる。
 気になったのでじっくり敵の姿を確認しようと思ったが、飛んでくる弾が視界を遮り、
よく見えない。

 一度、掃除しよう──なかなか敵が別の攻撃パターンに移らない上に、そろそろどんな
姿かも見てみたくなったので、レミリアは自ら行動を起こす事に決めた。

 別に当たっても全く問題無さそうな弾を避けながら、これから行う攻撃が、ぎりぎり敵
に届かない位置へと移動する。
 そして──周囲に紅い十字架状のオーラを巻き上げる大技、紅符「不夜城レッド」の威
力を抑えた簡易版を繰り出し、敵の放つ弾幕を消し飛ばした。

 視界を遮る弾幕を掃除した事で、漸く相手の姿が見えてくる。
 さらにタイミングが良い事に、分厚く空を覆う雲に切れ目が出来、月が顔を覗かせてき
た。

「えっ……うっ、うそ……」
 月を背に上空に浮かぶは、歪な形をした七色に光る翼を持った、まぶしい金髪に帽子、
紅い服に黄色のネクタイスカーフをした少女の姿。

「ふ……フ、フラン!?」
 そう、自らの妹である──フランドール・スカーレットの姿がそこにはあった。

 ──ように見えたが、顔と体型が微妙に違う。

 身長は同じぐらいだが頭身が1つか2つほど下がったように見え、頭がやけに大きく、
顔全体がなんか丸い。

「……ゆ、ゆっくり……フラン、の……ゆっくり?」
 いくらここ数日会っておらず、同じ館にずっと住んでいながら顔をあわせない日もある
とは言え、自分の妹の顔ぐらいは覚えている。
 と言うか、むしろ本人だったら、あまりに変わりすぎで嫌だ。

 思わぬ事態に硬直するレミリアに向かって、彼女は口を開いた。
「……ゆっくりしね!」
 言うと同時に、上空から真っ直ぐレミリア目がけて、急降下突撃を仕掛けてくる。
 手を前方に突き出し回転しながら──そう、ソビエト連邦出身の残虐ロボ超人が得意と
する、あの技に似た攻撃を試みようとしていた。

「ちょっ、え……なに、これ? ど、どどどういうことなのよっ!」
 レミリアは混乱している。
 物凄い殺気を放つ敵が、やけに弱い攻撃を仕掛けてきたと思ったら、そいつは妹を漫画
的にデフォルメしたような姿をしていて、死ねとか言いながら突っ込んできたのだから、
あまりにも事態が想定外過ぎた。

 少し前まであったカリスマを、またも完全に雲散霧消させ、あたふたするレミリア目が
けて、ゆっくりふらんは自身が放った弾より速く飛んで来て──

「わっ! ちょっ、い、いやっ! う、うそぉぉぉっ……きぁっ!」
「ゆっくりしね! ゆっくりしね! ゆっくりしね! ゆっぐべっ!」
 レミリアの額に自らのおでこをぶつけた。
 ともに目に仲良く星を散らしながら、もつれ合うように二人は倒れた。



「うっ……うぅっ……痛ぁ……な、なんてこと……」
 目尻に涙を浮かばせて、レミリアはぼやいた。
 気分が戦闘モードな時は、腕を吹き飛ばされたり首を刎ねられたとしても、痛みはほと
んど感じず眉根を寄せる程度な彼女だが、そうでない普通の時は痛みにあまり強くない。

「んっ……ってか、こ、この体勢って……」
 おでこを激しくぶつけた痛みで半べそをかきながら、身を起こそうとして、自分が相手
にのし掛かられているのに気付いた。

「……うぎ……うぐぅぅぅぅ……」
 手を前に伸ばしていたくせに、額からぶつかってきた相手は、レミリアを抱きしめるよ
うな体勢で目を回している。

「ちょ、ちょっとぉ! はっ、離れなさいよぉっ!」
 言いながら覆い被さるふらんの肩に手を当て、はね除ける。
「う……うが……うぎゅぅっ!」
 そんなに力を入れたわけではないのだが、ふらんはそのまま仰向けに倒れ、今度は後頭
部を地面にぶつけ、悲鳴を上げた。

「……もうっ! なんなのよぉ、こいつ……」
 上半身を起こし、ずきずきと痛む額を摩りながら、レミリアは忌々しげに呟いた。

「ほんとに、さっきと言い、今日は散々ね……こんなんだったら、散歩なんかするんじゃ
なかった……」
 ぶつぶつと文句を言いつつ立ち上がった。
 お気に入りの普段着も、ところどころ土で汚れてしまっている。

「あー、もうっ! こんな汚しちゃったら、また咲夜に怒られるじゃないの!」
 別に咲夜は怒らない、ただ何故汚したのかを問い詰めるだけなのだが、レミリアからす
ると叱責されているような気分になるのである。

 無駄と知りつつ、手で服の汚れを叩く。
 繊維になすり付けられた汚れは、その程度では落ちない。
 付着した土ぼこりが多少薄くなったとしても、完全にきれいにするには洗濯が必要だ。

「いやだわ、服だけじゃなくて……髪や身体まで……あーっ! もうっ!」
 森の土は湿り気がやや多い。
 そんな上に転んでしまったら、色々と汚れてしまうのもやむを得ないとは言え、そもそ
も地面の上に倒れるなどと言う事態を経験してしまったのが、非常に不愉快である。

「あぁ~っ、腹立つっ! ぶち殺しちゃおうかしら、こいつ……」
 自分をこんな目に遭わせた犯人へと視線を動かす。

「……うぎゅぅぅぅぅ……うぐぅぅぅぅ……」
 そいつはまだ目を回して、地面の上に大の字になってのびていた。
 だらしなく開かれた口元からは、噛まれたら痛そうな牙が覗いている。

 じっくりとレミリアは、ふらんの姿を見てみた。
 頭身は違うが身長はほぼ同じぐらい、手足は本物よりも短く、頭は大きいが、それほど
異常な体型でもない。
 顔については、全体的に丸い。口が大きく目も大きい、どことなくユーモラスな雰囲気
のある顔だ。

「…………な、なによ、こいつ……よ、良く見ると……」
 かわいい、とレミリアは思った。
 綺麗でも美人でも無いが、この顔は可愛い。そう、言うなればブサ可愛い。
 犬で言うならパグとかのように、美しくはないが愛嬌があって可愛い、そう言う系統の
可愛さである。

「……い、いやだわ……わ、私ったらなに考えてんのよ……」
 可愛いと思ってしまったことを、必死で否定しようとする。
 だが、いきなり攻撃してきた上に、捨て身に近い特攻を行ってきた凶暴性がありながら、
このように無防備に倒れている様を見ると、なんとなく本物を連想してしまう。

 レミリアの妹──フランドールは、情緒不安定というか、少し気が触れている。
 総合的な戦闘能力は姉に劣るものの、純粋なパワー・破壊力は姉を凌ぎ、全てを破壊す
る能力まで持っているが、気が触れているのである。

 だから館の地下に幽閉しているのだが、本人は別に不満をほとんどこぼさない。
 時々、外へ出たがったり、暴れ出したりすることもあるが、だいたいは温和しくしてい
る。

「……違う……そう、こいつはフランじゃないのよ、フランじゃ……」
 一度、似ている、可愛い、と思ってしまうと、必要以上に強く意識してしまう。

 そもそも本物の妹に対する彼女の感情も、非常に複雑なのである。
 自分では大事にしているつもりだし、姉として愛しているつもりでいる。
 しかし、フランが姉をどう思っているのか、レミリアにはあまり良くわからない。

 おそらく嫌われてはいない、むしろ好意は持たれている、とは思う。
 会話をしたり、たまに遊んだり、時々ケンカをしたり、希に同衾したり、ごく希に大人
の遊びをしたりする際の、反応などから考えれば、愛されているかはわからないが、一定
以上の好意を持たれているのは間違いない。

「そ、そうよ! ふっ、フランじゃないから……」
 なにやっても良い──そう、レミリアは思った。

 普段は妹には絶対出来ないことも、こいつには出来る。
 妹にしたいと思っていたことも、こいつにはしてもいいんだ。
 やりすぎて殺しちゃっても、こいつなら何の問題にもならない。

 美鈴だって、ゆっくりをゴミのように殺して、奴隷のように扱っていたんだから、きっ
とみんなゆっくりに対しては、そうしているんだ。
 みんながやっているのなら、私がやってはいけない事もないだろう。

 むしろ、みんなの気持ちを知るためにも、私もした方がいい。
 いや、しなければならない! これは、私の義務だ! 支配者としての義務!

 ──レミリアは、自分に言い聞かせ、思いついた考えを強引に肯定した。



「……い、いつまで寝てるのよ、お……起きなさい!」
 決断した以上は行動あるのみとばかり、未だ倒れているふらんの脇腹を爪先でこづき、
起こしにかかる。
 別にそんな事をしなくとも、腕の一本も引き千切れば痛みで目覚めるだろうが、それで
は興が無さ過ぎると判断したのであった。

「……う……!? うがぁっ! うーっ!」
 目を覚ますと、ふらんは素早く立ち上がり、後方に飛び退って戦闘態勢を整えた。
 レミリアの目からすると遅い動作だが、普通の人間並みには素早い速度である。

「あら、思ったよりやれそうね……ふふっ、この私に刃向かったのを、後悔させてあげる
わ」
 無造作に彼女は一歩前に進んだ。

 弾幕が全てかわされ、上空からの急降下突撃も失敗したのならば、接近戦で勝負を決め
るしかないと判断し、
「うがっ! ゆっくりしね!」
 レミリアの胸元目がけて、ふらんは手刀を繰り出す。

 拳で打撃を与えるのではなく、伸ばした手で刺し貫く気である。
 今まで数多のゆっくりを仕留めてきた必殺の攻撃だ。

 だが、レミリアの身体に攻撃は届かなかった。
「遅い」
 小さく短く呟くと、彼女はふらんの手首を掴んだ。

「うっ!? うがぁぁぁぁっ! ゆっくりしね!」
 右手での攻撃が失敗したので、頭に血が上ったふらんは、左手を同じように繰り出した。
 掴まれた手を振り解こうともせず、攻撃に重点を置く闘争心は、さすがと言うより無謀
であるが。

「だめね」
 しかし、またも相手の身体に届くことなく、手首を掴まれた。
「うーっ! うがっ! はっ、はなせぇっ!」
 焦りながら、ふらんは叫ぶ。
 腕を引こうとしたが、全く動かない。

「あら、離しちゃったら逃げるでしょ? フランの攻撃はいつも単調なのよ」
 そう言ってレミリアは悪戯っぽく微笑んだ。
「ぐっ! うーっ! ば、ばかにするなぁーっ!」
 ふらんは怒りに顔を真っ赤に染め、右足で足払いを試みる。

「甘いわね」
 ふわりと空中へ浮揚し、かわす。
「ほらほら、こうされちゃったら、あんたの短い足じゃ届かないでしょ? どうすんのよ?」
 くすくすと楽しそうにレミリアは笑う。

「うがっ! うぅーっ! ゆっくりしね! ゆっくりしね!」
 激高したふらんは届きもしない蹴りを放ち続ける。
「ふふふっ、本当にフランそっくり……わけわかんない理由で暴れ出して、私にかなうは
ずもないのに刃向かってきて……」
 言いながらレミリアは、ふらんの手首を掴む手に少しずつ力を込める。

「がぁっ! はなせっ! ゆっくりしね! うがーっ!」
 馬鹿にされている怒りと、じわじわと手首を締め付けられる痛みで、ふらんは目を見開
き叫ぶ。

「そして、こうやって……痛めつけられる」
 ぐちゃりと言う音ともに、ふらんの手首はレミリアに握りつぶされた。
 手首を失った手は、腕から強制的にお別れとなり、ぽとりと地面に落ちる。

「ぐがっ! う゛ぁぁぁぁぁぁっ! て、てがぁぃぃぃぃぃっ!」
「ふふふっ、離せって、両腕を自由にして欲しいって事でしょ? ご希望通りじゃない」
 確かにレミリアの言う通り、ふらんの両腕は自由になっている──手首から先を失った
が。

「ぐがぁぁぁっ! てぇぇぇっ! ふらんのてぇぇぇぇっ! うぎゃぁぁぁっ!」
 ぼたぼたと手首の先から中身を溢しつつ、ふらんは激痛に喘ぎ、両腕をめったやたらに
振り回し、地団駄を踏む。

「倒れなかったのは褒めてあげるわ。えらいわね、フラン」
 そう言ってレミリアはにっこりと笑った。

「ぐぅぅっ! ごっころすっ! じねっ! ゆ゛っぐりしねっ!」
 見事な闘争心と言うべきであろうか、痛みと怒りに目を血走らせ、ふらんはレミリアの
顔目がけて飛びかかる。
 蹴りはかわされ、手を失ったのだから、頭突きと言う事である。

 しかし、そんな単調な攻撃が当たるはずもなく、
「あらあら」
 レミリアは軽く避けると、ふらんの後ろに回り込んだ。

 背中から生えている双翼の根本を、両手で掴む。
「同じ攻撃を食らってあげるほど、私は優しくないわよ」
 先ほど手首に対してしたのと同じように、じわじわと握る力を強めながら囁いた。

「ごぁっ! ぐぅぅぅぅっ! しねっ! ゆ゛っぐり゛じね゛ぇっ!」
 ふらんは翼の根本を拘束され、じたばたともがく。
 もがいたところで翼を拘束する力が弱まるわけもなく、逆にどんどん力は強められ、
新たな痛みを与えられてゆく。

「フランもねぇ、すぐ私に後ろを取られるのよ……ふふっ、ほんとそっくり」
 翼は手首と比べると硬く頑丈なようだが、それでもレミリアにとっては充分に脆い。

「私ねぇ、フランの翼……この歪な七色の翼って好きなの、ちょうだい」
 手首と同じように、レミリアはふらんの翼の根元を握りつぶした。

「あ゛ぎっ! ごがぁぁぁぁっ! う゛ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 さすがに今度は立っている事が出来ず、俯せに倒れ、ふらんは激痛にのたうち回る。

「あら、無様ね。この程度で地面に這いつくばるなんて……ああ、やっぱこんな翼いらな
いわ」
 軽蔑したように言うと、握り千切った翼を無造作に投げ捨てた。

「ぐぎゅぅぅぅっ! はっはねっ! ふらんのはねぇぇぇぇっ!」
 痛みよりも怒りが強いのか、ふらんは立ち上がり、レミリアを物凄い形相で睨む。

「へぇ、頑張るじゃないの。あんた本物のフランより根性ありそうね」
 レミリアは素直に感心した。
 ここまでこっぴどく痛めつけた事はないが、戦闘も弾幕ごっこも経験が少ない本物の妹
は、痛みに対しての耐性があまり強くない。

「ごっ、ころすっ! ころすころすころす! ごろじでやるぅぅぅっ!」
「殺すですって? おお、怖い怖い」
 血の涙──中身の餡を溶け出させた涙を流し、激怒の叫びを上げるふらんに向かって、
レミリアは馬鹿にしたように言った。

 実際、馬鹿にしている。
 闘争心だけ旺盛で、あらゆる力が足りていないこの生き物を、レミリアは馬鹿にしてい
る。

「うぎゅぅぅぅっ! うがぁぁぁっ! ば、ばかにするなぁぁぁぁっ!」
 ふらん種は、ゆっくりの中でもプライドが高く、知能も高い。
 語彙が少なく攻撃的で、感情表現も怒ばかりが目立つため、頭の悪い蛮族のように思わ
れがちだが、非常に高い知能を持っている。

 自分が馬鹿にされている事ぐらいは、ちゃんとわかる。
 身体を痛めつけられるよりも、ふらんにとってはプライドを傷つけられるのが何よりも
耐え難い。

 基本的にこの種は闘争本能と高いプライドからか、ゆっくりが本来備えている生への執
着がとても薄い。瓦全よりも玉砕を好むのである。

 高い知能で相手との力量差、敵が複数ならば戦力差も理解する。だが、ふらん種は敵か
らは絶対に退かない。
 撃滅するかされるか、または敵に逃げられるまで戦う。
 逃げた敵をどうするかは気分次第である。追撃するときもあれば、諦めて新しい獲物を
探すときもある。

 ふらん種が戦いを避けるのは、敵と認識しない個体と種に対してである。
 敵と認識しない個体に関しては、ふらん種各個体の個性で基準は一概に定まっていない
が、種については、めーりん種さくや種が敵と認識しない種だ。

 逆に敵と認識している対象は、全ての生物である。ゆっくりや普通の動物、昆虫にとど
まらず、妖精や人間、妖怪であっても例外は無い。
 もちろん、強いと言ってもゆっくりと言う枠の中での話であるから、野生動物や人間な
どに挑んだ場合は、ほぼ確実に相手を倒せず終わる。

 だからこそ、まだ強くない幼体の頃から無謀な狩りに挑み、返り討ちに遭う個体も多い
ため、希少種となっているのであった。
 そして、生き延び続けた個体は、どんどん強くなる──今レミリアに圧倒されている個
体のように、弾幕を放てるほど強くなり、さらにそれ以上の戦闘能力も備え得る。

「フランったら怒りっぱなしね……敵わないってわかってるんでしょ?」
 怒らせているのは自分自身なのだが、ここまで痛めつけて馬鹿にしても、闘争心を全く
衰えさせないのが、少し面倒くさく思えてきた。
 普通の生き物なら、圧倒的な力の差を目の当たりにしたら、戦意を喪失するのだから。

「うるさいっ! うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい! ころすころすころす!」
 そんな事は襲いかかる前から、ふらんにはわかっていた。
 わかっていても見つけた獲物から、敵からは逃げられないのである。

 生への執着が薄いとは言え、死への恐怖はもちろんあるし、痛いのは嫌いだ。
 だが、会敵必戦し最後まで戦うのが種の本能なのである。

「あーっ、もうっ! なんなのよ、あんたは! 勝ち目なんて無いのよ? 怯えなさいよ!
恐れなさいよ! 媚びなさいよ! 命乞いぐらいしなさいよ!」
 思い通りにならないため、彼女は癇癪を起こす。
 痛めつければ、この妹に似た生き物は、怯え恐れ媚び屈服すると思っていた。

 そう、本物の妹は、レミリアの強さに怯えることはあっても決して恐れず、姉に甘える
ことはあっても絶対に媚びはしない。
 恐れない媚びない妹の代わりに、この生き物を恐れさせ、媚びさせ屈服させたかった。

 殺すのは容易いが、それはあまり気分が晴れない。
 屈服させて可愛がるのが目的なのだから。
 妹の代わりに、妹には出来ない、あらゆる方法で可愛がりたいのである。

 逃げもせず、恐れもせず、怯えもせず、媚びもせず、ひたすらに敵意を剥き出しにして
くる相手を前にして、レミリアは余裕を失い不満を募らせる。

「うるさいうるさいうるさい! ゆっくりしね! ゆっくりしね! ころすころす!」
 目の前の敵──レミリアが、有利なのにもかかわらず精神的余裕を失いつつある事に、
ふらんは気付いている。

 密かに再生能力を総動員して傷は塞いだ。
 塞いでしまうと後で再生するときに時間がかかるが、これで痛みはある程度まで治まっ
た。
 敵の余裕を失わせてから、乾坤一擲の反撃に出ようと考えている。

 しかし、そんな目論見は、脆くも打ち砕かれる。
「黙れっ!」
 短く一喝すると、レミリアは両手を上にあげ、前に振り下ろす。
 手刀ではなく衝撃波で、ふらんの両腕は肩から斬り落とされた。

「ごっ!? がぁぁぁぁっ! う、うでぇぇぇぇぇぇぇっ?」
 痛みよりも驚きと焦りで、ふらんは絶叫した。

 一瞬の出来事で、ふらんには何が起きたのか良くわからない。
 だが、相手の攻撃で自分の腕が切り落とされた、と言う事だけはわかった。

 ふらんは読みを大きく誤った。
 目の前の敵は、ふらんの予想より遙かに早く余裕を失い、不満を爆発させたのである。
 こんなにキレやすい、わがままな敵だとは、全く予想していなかった。

「腕がどうしたってのよ? うるさいわよっ!」
 今度は片手を横に薙ぎ、ふらんの両脚を太腿のあたりで斬り捨てた。

「あ゛っ? な゛、な゛ん゛でっ? ぐぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」
 翼を失い、両腕に続き今また両脚も失ったダルマと化し、ふらんは地面に転がった。
 ──なんなの、こいつ……きちがい……。
 ふらんからすれば、いきなり不満を爆発させたレミリアはそのように思える。

「あははははははっ! 無様っ! ぶざまねっ! フランったらまるでダルマさんね……
あはっ、翼も腕も脚も無い方が可愛いわよ! あはははははははっ!」
 ふらんの思いを裏付けるように、レミリアは狂気じみた哄笑を上げる。

 本当は、こんな事をしたくはなかった。
 恐れて媚びてくれれば、もう少し優雅に可愛がってあげようと考えていた。
 その結果、やりすぎて殺してしまうかも知れないが、目的は愛玩であったのだ。
 だから、悪いのはこいつだと思うことにした。

「う゛がぁぁぁぁっ! ころすころすころすころすころすぅぅぅぅっ! ゆっくりしね!
ゆっくりしね! ゆっくりしねぇぇぇぇっ!」
 はっきりと己が恐怖していることに、ふらんは気付いた。
 殺されるのは間違いない、それもこんな狂った相手なのだから、物凄く残忍に嬲り殺さ
れるだろう──さすがに、それは怖い。

 だからと言って、ふらんは恐怖を表現する術を知らない。
 そんな感情表現は備わっていないのである。
 知っている、出来る感情表現は、怒りか笑いだけなのだから。

「なによっ、そんな姿になって、どうやって私を──このレミリア・スカーレットを殺す
のよ? 馬鹿じゃないの? いや、馬鹿だお前は。身の程知らずめ!」
 腹が立ったので脇腹を蹴り飛ばした。

「ごぶっ! がはっ……ゆ、ゆ……ゆっぐり、じね……ゆ、っぐり……し、ね……!」
 黒っぽい何かを吐き出しながら、ふらんは敵意と憎悪が籠もった視線をレミリアに向け
る。

「うるさい! 私を殺す? 死ね? やれるもんなら、やってみなさいよっ!」
 再び脇腹を蹴るが、気が晴れない。

「……ああ、嫌な目ね。潰すわ」
 ずぶり、と左目に指を入れ、眼球を抉り出す。

「ぎゅぶっ……ぐぐぐっ、ゆ、ゆっぐり、しね……ゆっぐ、り……し……ね!」
 眼球を失った眼窩より、涙なのか中身なのか判然としない黒い粘液を滴らせながらも、
未だふらんの闘志は衰えていないように、レミリアには見えた。

「……くそっ!」
 ──なんだ、これ? こんなにしても、まだ刃向かう気か? ふざけてる!
 右目も抉り出そうかと思ったが、見えていた方が恐怖を与えられると思い直し、彼女は
ふらんの襟首を左手で掴んだ。

 自分の目の高さに、ふらんの顔を持って来て、
「命乞いぐらいしたら? そうしたら楽にしてやるわよ……どう?」
 このまま顔を殴り潰したくなる衝動を堪えつつ、提案してみた。

「ぺっ!」
 ふらんはレミリアの顔にツバを吐きかけた。
 もう死にたいが、敵の慈悲にすがって殺して貰うよりは、怒りを買って殺されたいと思
ったのである。

「……! こ……こ、ここまで……私を虚仮にするか……ふざけんなっ!」
 怒りに身を震わせながらも、レミリアは冷静に考えた。
 ──殺したら、負けだ。恐れず死を望む相手を、怒りに任せ殺したら、私の負け。

 生死の勝負ではなく、最早意地の張り合いである。
 殺すか殺されるかであるならば、圧倒的にレミリアの優位は動かない。動かしようがな
い。

 だが、彼女は屈服を望んでいる。
 最終的に殺すにしても、望む結果が得られずに殺してしまったら、それは敗北に他なら
ない。

「ぶへっ、へ……へへっ……ゆ゛、ゆ……っぐり、じ……ね……」
 ──おこってる、おこってる……いたいのに、まけてるのに、たのしい……あはっ……。
 ふらんは笑った。
 さらに相手を怒らせるためではなく、純粋におかしかったから、笑った。

 目の前の敵は、自分と同じぐらいの大きさなのに、とても強い。
 なのに、自分が負けを認めないと言うだけで、余裕を失い狂ったみたいに暴れている。
 ──それが楽しくて仕方がない。

「……!……」
 レミリアは空いている右手でふらんの右頬を叩き、次に左頬を叩き、また右頬を、と繰
り返す。
 潰してしまわない程度に加減して、無言で彼女は往復ビンタを続ける。

「ぶべっ! ぼぶっ! がぼっ! う゛ばっ!」
 休み無く両頬を叩かれ続けていては、ふらんと言えども喋ることが出来ない。
 口から唾液などを飛ばしつつ、濁音だらけの短い叫びを上げるのみである。

 ぱしん、ぴしん、ぱたん、ぴたん、と言う打擲音が夜の森に響く。
 音が響くごとに、ふらんの顔は赤く腫れ、皮肌もところどころ傷つき、ぶさ可愛いから
醜いに変化してゆく。

「……はぁ、ふぅ……どう? 少しは立場わかった?」
 さすがに手首が疲れてきたので、ビンタを中断して聞いた。
 どうせ、答えは同じであろうと思いつつも。

「……ごふっ……かはぁ……ぺっ!」
 ビンタで抜けた歯とともに、ふらんは再びレミリアの顔面にツバを吐き飛ばす。
 狙ったわけでもないのに、中身の餡が混ざり黒く濁った唾液のつぶては、見事レミリア
の口の中に入った。

「……え!? ……あ、甘い……あはっ……」
 この場に似つかわしくない間抜けな声を出し、レミリアは顔を綻ばせた。
 甘い──そう、ふらんの中身は、とても上品な甘さのこしあんである。
 それも、ただのこしあんではなく、ラードや胡麻油で風味の付いた、あんまんの餡子だ。

 粒あんが嫌いな人間は居たとしても、こしあんが嫌いという人間は少ない。
 熱烈な支持者は粒あんに多いが、こしあんは嫌う者が少ないと言う強みがあった。

 レミリアは──こしあんが好きである。ジャムもプレザーブよりジェリーを好む。
 粒あんやプレザーブスタイルジャムの異物感を、あまり好まないのであった。
 プレザーブだと、紅茶に入れた際に溶け残るのが許せない。

 好物の味は気持ちを落ち着かせる。
 そして、美味いものは──楽しい、笑いたい気分にさせる効果がある。

「あははははっ! あんた……気に入ったわ……んっ」
 声を上げて笑ってから、おもむろにレミリアはふらんにキスをした。
 甘い、とても甘い味が口内に広がる。

「うう゛っ!? むっ? んーっ……?」
 何が起きてるのか、ふらんにはわからない。
 今さっきまで怒り狂っていた相手が、突然接吻をしてきたのだから、もう何がなにやら。

 レミリアは混乱するふらんに構うことなく、その口腔内を自らの舌で蹂躙する。
 傷つき漏れ出した餡だけではなく、ふらんの唾液も甘く美味しい。

 まるで何かに取り憑かれたかのように、レミリアはふらんの唾液を啜り飲み、餡が漏れ
ている口内の傷を舌で舐めほじる。

「う゛っ! む゛う゛っ……!」
 舌で傷を刺激され、新たな痛みを覚えたが、その痛みにより混乱から引き戻された。
 一矢報いる好機であることに、気付いたのである。

 敵の意図は全くわからない。
 ふらんの理解の範疇を超える行動ばかりで、絶対に気が触れてるとしか思えない。
 だが、これは紛れもなく、こちらから攻撃できる最後の機会だ。

 ふらんは、口内に侵入し蠢く、レミリアの舌に噛みついた──

「んっ!? ……んーっ……」
 痛みに、ちょっとだけ彼女は眉をしかめた。
 相手が何をしたのかはわかっている。
 だが、どうせ噛み切ることは出来ないだろうし、噛み切られたとしてもすぐ回復する程
度の軽傷であるから、放置することにした。

 顎に力を入れ、ふらんはレミリアの舌を噛みちぎろうと試みている。
 舌というものは、表面は柔らかい粘膜に覆われているが、その中は筋肉の塊である。
 元気なときならばともかく、ボロボロにされたふらんの力では、粘膜を噛んで出血させ
るのが精一杯であった。

 ふらんの口内に鉄錆の味──レミリアの血の味がひろがる。
 噛みちぎれないならば、せめて生き血を啜ってやれとばかりに、ふらんはレミリアの血
を飲んだ。

 飲み込んだ瞬間、ふらんはびくんと身体を硬直させ、仰け反った。
 合わさっていた唇が離れる。

「う゛っ! ……がっ、あ゛がぁっ……あ゛ぁっ!?」
 かっと目を見開き、ふらんは苦悶の形相を浮かべる。
 何が自分の身体に起きたのか、起きようとしているのか、ふらんにはわからない。
 わからないが、身体の奥が熱く、苦しい。

「あちゃー……うっかりしてたわ、飲んじゃったのね、こいつ……私の血を」
 苦しみのたうつふらんを地面に置き、レミリアは己の失策に頭を抱える。
 吸血鬼の血は劇薬である。決して毒薬ではないが、恐ろしい劇薬だ。

「んー……でも、ゆっくりが飲んじゃった場合は、どうなるのかしら?」
 彼女は首をかしげて考えた。
 そんな事例は聞いたことがないため、考えたところで答えが出てくるはずがない。

「ま、いいか。どうなるのかは、見てればわかるしね……ふふっ、こんなの予想外だけど
楽しみだわ」
 わくわくと期待に目を輝かせ、レミリアは事態の推移を見守ることにした。


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最終更新:2008年09月14日 11:22
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