美鈴×ゆっくり系9 美鈴と森のゆっくり_前編_1

※美鈴によるゆっくり虐待。
※今回は18禁に相当するほどの性的描写は、たぶんありません。
※例の如く、ある意味では美鈴虐めかも。キャラ性格の俺改変ひどいし。
※また、メタな表現がところどころございますので、苦手な方はご注意下さい。
※虐待開始までの前置きが長いです。虐待開始の少し前あたりから、以後の話の内容変え
たら、「まったりゆるゆる美鈴の日常」ってタイトルつけて、しかるべき所に投下しても
違和感ないぐらいに。
※そんなわけで……とりあえず前編のみのため、今回の虐待内容は微温いです。
※当然のように俺設定満載な感じです。
※特に、ゆっくりの設定は思い切り俺設定です。イメージと違う場合もございますので、
ご注意ください。









「美鈴と森のゆっくり ~前編~」


 沈みつつある太陽が紅い光を投げかけ始めた、ある初夏の日の夕刻──
「美鈴さぁん、交代の時間ですぅ」
 紅魔館の門前に、甲高い妖精の声がこだまする。

「あ? もうそんな時間。ご苦労様」
 この悪魔の館の門番を務める紅美鈴は、勤務の交代にやって来た妖精メイド達に微笑ん
だ。
「はぁい、美鈴さぁんお疲れ様ですぅ!」
 赤髪の妖精は美鈴に微笑み返した。
「ミズ紅、オツカレーね!」
 金髪の妖精は美鈴と握手を交わした。
「お疲れッス! 紅の姉貴!」
 緑髪の妖精は美鈴に深々とお辞儀をした。
「紅殿、お疲れ様であります!」
 黒髪の妖精は美鈴へ挙手の礼を捧げた。
「美鈴娘々お疲れアルよ!」
 青髪の妖精は美鈴に拱手した。

「みんなもお疲れ様。じゃ、後はお願いね」
 建威付けのため枯れ木も山の賑わいで無駄に多く雇われている妖精メイド軍団の中で、
優秀というか勤労精神があるというか、比較的戦闘能力が高く仕事もこなせるメイドたち
に勤務を引き継ぎ、美鈴はその場を後にし家路につく。

「ふぅ~、今日も疲れたわー……っと」
 大きく伸びをして、首をこきこき左右に傾けながら、美鈴は通用門から門内へと入る。
 そのまま奥へ真っ直ぐ進めば紅魔館の本館だが、彼女は本館へは向かわず中庭をずんず
ん歩んで行く。
 自分が日頃から丹精している木々や花々を横目に見つつ、美鈴は中庭の一隅に設けられ
た建造物を目指す。
「狭いながらも、楽しい我が家♪」
 中庭の景観に配慮しているのか、外観は瀟洒な佇まいの木造家屋へ美鈴は入って行った。

「ただいまー!」
 大声で帰宅の挨拶をする。
 外観は瀟洒だが、内装は物置小屋よりは快適に見える程度の、羊頭狗肉と言う表現がふ
さわしい自宅──通称・美鈴ハウスに彼女は帰宅した。
 この家屋は二階建てプラス地下一階の三層構造で、一階部分は十二畳ほどの空間を衝立
で仕切って部屋としており、床は打ちっ放しの粗製コンクリートであった──要するに、
物置小屋をお義理程度に住居らしくしているだけの小屋である。

「お帰りなさい、美鈴!」
 大声で返事を自演する。
 傍から見ると非常に悲しく可哀想な光景だが、不遇さでは幻想郷でもトップクラスの美鈴
にとって、この虚しい行為は疎かに出来ない日課であった。
「さぁて、ディナーディナー♪ お夕飯♪ 晩ご飯♪」
 こんな劣悪な住環境でも、美鈴はそれなりに楽しい日々をこれまで過ごしてきた。

「雨風しのげるんですよ! お布団で寝られるんですよ! ご飯支給して貰えてるんです
よ! 充分じゃないですか!」
 七輪と中華鍋、食器や調味料などを外へ運びながら、美鈴は地の文に対して抗議した。
 メタな事をする──ちなみに、彼女の言うお布団とは、年季の入った木製簡易寝台と藁
布団である。

「藁布団だっていいじゃないですか! 中身が綿じゃなく藁でも外側は布なんですから!」
 美鈴ハウスが陰になって中庭からも本館からも見えない場所に七輪を置き、火をおこし
ながら彼女はまたも地の文に食って掛かる。
 本当にメタな事をする──これだから中国は……。

「中国じゃありません! 美鈴です! 紅美鈴です! 我的名字紅美鈴! ちゃんと覚え
てください!」
「知ってるわよ」
 目の前にメイド長が立っていた。

「わわわっ! さ、咲夜さんっ!」
「はい、これ今夜と明朝の食材……ねぇ、美鈴。一人暮らしで独り言が多くなっちゃうの
はわかるけど、ほどほどにしてね」
 食材の入った籠を手渡しながら、瀟洒なメイドは言った。
 不気味だから、キモいからといた理由は、美鈴の妙なところで繊細なハートに配慮して
言わず。

「は、はい! わ、わかりました! あ、ご飯ありがとうございます」
「私はただ運んでるだけよ。感謝はお嬢様にしなさい。それじゃ、またね」
 消えるように素早く、咲夜は立ち去った。
 別に美鈴と長々立ち話をしたくないからではなく、そろそろ主が起床する時間だから急
いでいるだけであって、他意はない。

「さぁて、今夜のご飯は~♪ お肉とお野菜の炒め物♪ みんな大好き♪ 私も大好きホ
イコーロー♪」
 楽しそうに歌いながら、中華鍋を火にかけ充分に熱してから油を引き、すでにカット済
みの肉をぶち込んで豪快に炒める。

 ──肉がどのような動物の肉であるかは、あえて記さないでおく。

「両脚羊♪ 両脚羊♪ ヤンシャオロウのーホイコーロ♪ 肉ニク肉にくヒトの肉♪」
 記さなかったのが台無しである。
「私も大好き♪ 妖怪みんな大好き♪ 両脚羊♪ でも巫女肉はハイリスク♪」
 手際良く美鈴は調理を進行する。
 肉を炒め終えたら、一旦それを鍋から取り出して、次に生姜や長ネギなど香味野菜を炒
め、各種の醤など調味料を入れる。
「油通しは♪ 面倒だから省略~♪ 中が半生でも♪ お野菜美味しい♪」
 肉と同じくカットされている野菜をぶち込み、先ほど鍋から取り出した肉を再び入れ、
炒め合わせる。

「もうすぐ完成♪ みんな大好き♪ ルーミアも大好き♪ 私も大好き♪ ヤンシャオロ
ーの~、ホーイーコーロー♪」
「呼んだのかー?」
 上空から黒い塊が降下してきた。
 黄昏よりも昏く、闇よりもなお昏い、夜よりもなお深き漆黒の塊が。

「私のご飯♪ 今日は分けてあげない♪ ごめんねルーミアちゃーん♪ えいっ!」
 食器に料理を盛りつけながら、美鈴は弾幕を展開した。
「くれないのかー」
 美鈴の放った弾幕に追い立てられ、黒い塊──すなわち暗闇をまとったルーミアは、そ
の場から強制的に退場させられた。

「さぁ、出来た! いただきます!」
 籠の中から銀絲巻──具無しの中華パンを取り出し、その場に座って食事を始めた。
 大陽はその姿をほぼ地平線の下に隠し、宵の明星が西天に輝いていた。

 美鈴が食事を終える頃には、もう周辺はすっかり暗くなっていた。
 空には金星に遅れて輝き始めた星々が瞬いている。
「さて、ご飯の後には、お風呂♪ お風呂♪」
 食休みを終え、食事の後片付けも終えた美鈴は、周辺を軽く箒で掃いて掃除すると、今
度は入浴の準備に取りかかった。

 屋外からハウス内に戻った彼女は、入り口から奥への視界を遮る衝立の向こうへと回る。
 そこが美鈴専用の浴室であった。
 壁際には木製のバスタブが床の上に直置きされていて、洗い場用のスペースには簀の子
が敷かれている。
 また、石鹸箱やシャンプーの瓶、手鏡とカミソリなどが置かれている棚や、全身を映せ
る大きな姿見なども、そこには配置されていた。
 簀の子の上には、輪切りにした丸木そのままなバスチェアーと、これまた木製の手桶が
乗せてある。
 壁から突き出し、バスタブの上に延びた水道の蛇口を捻り、水を溜めながら美鈴は着替
えの準備をするため二階へ上がった。

 家が木造、バスタブも木製なら、もちろん階段も木で作られている。軍艦のラッタル並
に急角度の階段を、危なげない足取りで美鈴は昇る。
 二階は一階よりもやや狭い場所を、衝立や壁などの仕切りを用いず一部屋とすることで、
大きく広い空間を確保していた。
 床板が敷かれているため、二階は一階よりも幾ばくかは文化的な室内に見える。
 しかし、壁に掛かった青竜刀や丸盾などの武具類が、どちらかと言うと前近代的な蛮風
を感じさせる室内装飾となっているため、やはり非文化的なカテゴリーからは脱しきれて
いない。
 箪笥から着替え──古びた稽古着と、バスタオルと手ぬぐいを取り出し、美鈴は一階に
戻る。

 バスタブには四分の一強ほどの水が溜まっていた。
 美鈴は二階から持って来た着替えなどを衝立の上に掛けると、バスタブの傍らにしゃが
み込んだ。
 彼女はおもむろに片手を水の中に入れる。
「……はーっ、ほーっ、へーっ……むんっ……ホァチャーッ!!」
 裂帛の気合いを込めて、充分に練った気を手から水へと解き放つ。
 すると、たちまち水は沸騰する湯となった。

「あぁぁぁぁぁッ! アッチャーッ!」
 あまりの熱さに、美鈴は叫んだ。
 うっかりと文字通り気を緩めたため、沸騰する湯の熱さをダイレクトに感じてしまった
のである。
 盟神探湯を行わされた武内宿禰は潔白であったため無事だったが、門番の職務によって
国津罪の一つである生膚断を何度も犯している美鈴は、どう考えても潔白ではないと言う
か、そもそもこれは盟神探湯ではなく単なる不注意の事故であるため、手に火傷を負った。
 出しっぱなしにしている蛇口から迸る流水で、美鈴は赤く腫れた手を冷やした。

「うぅっ……い、痛い……」
 美鈴は殴られる、蹴られる、弾にあたる、レーザーで吹き飛ばされる、ナイフで刺され
る、魔法の火で焼かれる、などの痛みには慣れているが、熱湯に浸かると言う痛みには慣
れていないため、涙声で呻いた。
 気を使いこなせる能力と、元から備わった身体能力のおかげで、妖怪の中でも再生・回
復能力がかなり高い美鈴だが、やっぱり痛いものは痛い。

「気を付けないとなぁ……ふーっ、はーっ……」
 冷やして痛みをある程度鎮めてから、美鈴は再び気を練り始めた。
 ──火傷治療のために。
 気を使う程度の能力というものは、非常に便利である。攻撃、守備、回復、探索、掃除、
洗濯、炊事、移動、修繕、農作業、釣り、色事、賭博、宴会芸など様々な局面で使えるの
だから。

 そうこうしているうちに、バスタブの水位は8分目ぐらいまで上がっていた。
 少量の沸騰水に大量の水が加わったことで、湯温は入浴に適する程度となっている。
「大量の水を温めるより、少量の湯を沸騰させた方が楽なのよ……美鈴ってば、天才ね!」
 どこぞの氷精を彷彿とさせる頭の悪そうなセリフを吐き、彼女は自画自賛した。

「さぁて、お風呂♪ お風呂♪ ご入浴♪」
 18禁ならば脱衣描写に行を割くべきであろうが、今回は18禁ではないため、美鈴は素早
く衣服を脱ぎ捨て全裸となった。
「んー、ちょっとお肉ついちゃったかな……」
 一糸まとわぬ裸体を姿見に映し、腹部を摩りながら、悩める乙女の顔で美鈴は呟いた。
 彼女の名誉のために記すが、食後30分も経過していないのだから、微妙に腹部が膨れる
のは当たり前である。

「あぁ、またお尻大きくなっちゃったかな……緋想天に追加で登場する時は、萃夢想の時
に穿いていたズボンじゃ、ちょっと入りそうにないわ……」
 上体を前に傾け、ぷりんっと突きだしたお尻を姿見に映し、その豊かな臀丘の美しい曲
線を撫で摩り、弾力のある盛り上がった尻肉を揉みながら、美鈴はため息をついた。
 強く揉むと、健康的な肌の下にみっしりと肉が詰まったお尻のほっぺたが歪み、臀裂が
大きく開き、その奥にひっそりと息づく部位がちらりと顔を覗かせる。

「……ちょっと、18禁じゃないんでしょ?」
 またしても美鈴は地の文に向かって言葉を放った……と言うか、尻描写優先のため流し
たが、緋想天とか萃夢想などと極めつけなメタ発言を数行前で行っている。
「そんなこと言われても、萃夢想は過去だから"三日置きの百鬼夜行"って言えるけど、こ
れから追加パッチで私が登場する緋想天は未来の出来事になるんだから、他に言いよう無
いじゃない!」
 この地の文を書いている者も含めて、おそらく全世界で五〇〇人ぐらいは、美鈴の緋想
天追加出場を望んでいると思うが、メタ表現が多すぎるのは微妙である。

「はっ、ふぁっ……くしゅんっ!」
 夏とは言え今は夜である。
 なかなか入浴せず、全裸でぐだぐだしていたため、仕事と食事でたっぷりかいた汗が乾
く際に、身体から奪う気化熱で、美鈴は寒気を感じてくしゃみをした。
「うぁ、夏風邪ひいたらバカみたいね……早く入らなきゃ」
 ぶるっと身体を震わせて美鈴は呟くと、
「だいたい旗袍の下にズボン穿くなんてナンセンスなんだから、入らないならいつも通り
穿かなくていいわよね!」
 と言って、ぺちんと両手で自らのお尻を叩いてから、かけ湯もせずにバスタブへ入った。

「ふーっ……今日もいい湯だった……」
 一日の疲れを癒すバスタイムを済ませた美鈴は、全裸のまま屋外に出て、気の力でよく
冷やした牛乳を飲んでいた。
 こんな夜中に中庭をうろつく者は居ない、本館からここは遠すぎるから細部までは見え
ない、敷地外からの万一の覗きは生け垣や木立が防いでくれる。
 誰にも見られないのならば、屋外であっても個室内と同じこと。
 全裸で満天の星空を仰ぎ見ると言う、とても心地良い開放感を味わえるこの一時は、美
鈴が好む事柄のベスト10に入っている。

 戦闘時には邪魔に感じる時もある巨大なバスト、きゅっとくびれたウエスト、女性のエ
ロスを充分に誇示するような大きいのに垂れていない盛り上がったヒップ、健康的な美し
さを感じさせる太ももなど、美鈴が持つ外見的魅力の全てが惜しげもなく晒されている。
 だが、それを観賞できるのは、空に瞬く星たちだけであった。
「んーっ……あぁー、夜風が気持ちいいわ」
 強すぎず弱すぎない風に向かって、美鈴は大きく両手を広げた。
 まだ水気を含む長い髪が風になびき、星の光を受けて魅惑的に輝いている。

「んっ……っと、そろそろ準備しないと」
 あまり長時間この観る者の存在しない露出を行っていると、何故か下腹部の奥が疼いて
きて、ついつい自らの手指を用いて、股間を玩弄したり、乳房や臀部を揉みしだいたり、
乳首を摘んだり、本来は排泄のために存在する消化器官の末端を、入り口から奥まで丹念
に指で擦ったりなどの行為を行い、再び入浴しなければならないような結果となる事がし
ばしばあるので、早々に切り上げて美鈴は屋内へ戻った。

 美鈴は入浴前に用意しておいた稽古着を身にまとう。
 通気性の良い丈夫な麻布で作られたこの服は、手首まである長袖の中華風シャツと、足
首まである長ズボンで構成されている。
 普段着ている旗袍の時と同様、この服を着る時も美鈴はパンツを穿かない。その代わり
に、激しい動きをする際に邪魔になる巨乳には、しっかりときつくサラシを巻く。
 そして同じく邪魔にならないように、頭髪は後頭部でひとまとめにくくり──いわゆる、
お団子ヘアーにした。

 汗が目に入るのを防ぐため額にハチマキを締め、これでほぼ出発準備は整った。
 ちなみにハチマキは全体を赤く染めた木綿製で、額に当たる部分には、中心に白抜きの
日輪を描いた青地の長方形がプリントされている。
 早い話が、日の丸ハチマキならぬ、青天白日満地紅旗ハチマキである。
「やっぱり、これを締めると身が引き締まるわね……昔の気分に戻ったみたいに」
 仕事中と比べると、どことなくワイルドと言うか、剣呑な眼光を美鈴は放ち始めた。

「……今日は、道具も使おうかしら」
 二階に上がり、壁に掛けた青竜刀を手にして、二丈ほどの長さの荒縄をたすきがけに身
に付け、いくつかの小道具をポケットに入れてから、美鈴は自宅を後にした。
 正門や正門脇の通用門は使わず、庭の外れのとある地点に隠された、一般の妖精メイド
は知らない抜け穴を通り、美鈴は紅魔館の外へと出かけて行った。
「さぁ! 狩りの時間よ!」
 近郊に広がる森へと向かって、美鈴は飛んだ。

「んっと……このあたりは、どうかな……?」
 魔法の森のように異常な環境ではない、ごく普通の森の中を美鈴は歩いていた。
「この時間じゃ寝てるだろうから、偶然出会う可能性は低いし……面倒だから気を使って
探しちゃおうかしら」
 そう決めると立ち止まり、念のため周辺を見渡してみた。
「……朽ち倒れた大木かぁ、あれが巣作りしそうな手頃なポイントだし……ちょっと、見
てみよう……」
 朽木に近寄ると、その幹に横向きの大穴が空いているのがわかった。
「これは、大当たりみたいね……ふふふっ、いたいた!」
 彼女は中を覗き込み、目当てのものを見つけた。

 その目当てのものとは、無論ゆっくりのことである。
 最早、長々と詳しい説明を要さないであろう、この珍妙な生命体を美鈴は探し求めてい
たのであった。
「全部で八匹か……んっと、大きなまりさが一匹と小さなまりさが二匹に、大きなれいむ
が一匹と小さいのが二匹……って、あら残りの二匹は大きなありすとゆっちゅりーだわ!」
 穴の中を覗き込み、獲物の内容と数を確認した。
 大きなまりさ、れいむ、ありす、ゆっちゅりーは全て直径40センチクラスの大物である。
 小さなれいむとまりさは、それぞれ大きいのの子供であろう、こちらは直径10センチぐ
らいで、やや手のひらに余る程度のサイズであった。

 ぐっすりと無防備に眠っているゆっくりたちを起こさないように注意深く、巣の内部と、
この周辺の地勢を美鈴は確認する。
 朽ちた倒木を掘り削って作ったと思われる巣は、かなりの広さであった。
 仮に美鈴が潜り込んで横たわったとしても、まだまだ充分なスペースがあるぐらいに広
い。
 大物のゆっくり四匹と子ゆっくり四匹の計八匹が、ゆっくり生活するのには、全く不自
由のない空間であろう。
「見たところ巣に他の出入り口は無しか……さて、どんな修行メニューにしようかしらね
……ふふふ」
 しばらくその場で腕を組んで考えて、作戦を頭の中でまとめた美鈴は、ゆっくりせず迅
速に準備を開始する。
「ゆっくりした結果が、時間切れだったら無駄骨だからね」
 その場を離れ、森の奥へと再び歩き出した。

 自分たちが、どうやっても勝てないほど強大な存在に目を付けられたとも知らず、ゆっ
くりたちはのんびりと夢の世界を旅していた。

「ゆ~、まりさぁ……れいむのこども、まりさのこどもがいじめてるよ! ゆっくりしな
いで、はやくやめさせてね!」
 この大きなれいむ──母れいむは、これから自分に降りかかる悲惨な運命を知らない。

「ゆゅゅ~っ……ゆーっ、おかぁさぁん、ちょうちょさんだよ~! おいしそーう!」
「ゆぐっ、ぐじゅっ……やめて、まりさぁ、それれいむのたからものだよ~……ぶじゅっ」
 この双子のれいむは、もう蝶を見ることも、宝物を眺める事も出来なくなる運命を知ら
ない。

「ゆごぉ~っ! ゆがぁ~っ! んーっ……まりさはわるくないぜ! わるいのはれいむ
だぜ! だから、ゆっくりみのがしてほしいんだぜ!」
 この母まりさは、好き放題自分勝手に生きてきたツケを払わされる事になるとは、夢に
も思っていなかった。

「ゆへっへっへっ! どんくされいむー! ここまでおーいでー! ぶぴゅるるぅっ……」
「ゆ~っ……おかぁさん! ありすがまりさのことへんなめでみてるよ……こわいよー、
あのありすはやくおいだしてよ~」
 母に良く似た肥溜めみたいな性格の、この双子のまりさには、その腐った性根に相応し
い末路が待っている。

「ゆっぐ……ひぐっ……ごべんばざい゛! もう゛、やべでよ゛お゛ぉぉぉぉ~!」
「むきゅー、むきゅっ……やめてよぉ、まりさ……い゛や゛! お、お゛がざなびでぇぇ
ぇ……むきゅ……」 
 夢の中でもあまり恵まれてない、このありすとゆっちゅりーがどうなるのかは、美鈴の
胸三寸である。

 ──ここに居る八匹のゆっくりたちには、全員もう今後はお日様の光が見れなくなる運
命が待っている。

「殺しましょう♪ 殺しましょう♪ 老若男女の区別無く♪ 許容もなく慈悲もなく♪」
 スキップして歌いながら、美鈴が戻ってきた。
 これから行う行為への期待で非常に楽しげな面持ちだが、歌っている歌は物凄く物騒で
ある。
「う゛~! うー、うー! かわいいれみぃをどごへづれでぐのぉ~?」
 その美鈴の後ろを、ゆっくりれみりゃがぷよぷよと不器用に飛びながら尾いて来る。
 周知の通りれみりゃは夜行性の捕食種で、非常に希少な種だと言われているが、様々な
事象が偶然この種にとってプラスに作用し、紅魔館近郊には野生の個体が多く生息してお
り、夜の森の中でのエンカウント率は意外と高い。

 このれみりゃは、森の中の開けたところで「うっうーうあうあ♪」と踊っていたのを、
たまたま見かけた美鈴が言葉巧みに連れてきたのである。
「もうすぐですよ。がんばってくれたら、ゆっくりできる快適なおうちで、楽しく遊ぶ退
屈しない毎日と、おいしいご飯を約束しますからね」
「う~♪ おうちー! れみぃのおうちー! ごはんー! う゛~、がんばるどぉ~!」
 快適な住居、退屈しない日々、美味な食事──決して、詳しく具体的に「何がどうだか
ら」とは言わず、良い印象を感じさせる修飾語だけで釣るのは、かなり初歩的で低次元な
騙しのテクニックなのだが、せいぜい人間で言うなら四歳児程度の知能しかないれみりゃ
に対しては、抜群の効果である。

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最終更新:2008年09月14日 11:17
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