ゆっくりれみりゃ系いじめ44 にくまんだどぉ♪

にくまんだどぉ♪


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≪はじめに≫

虐めぶん薄めです。殆どありません。
そもそも、これは虐めなのか愛でなのか……
強いて言えば、倒錯系の精神的な虐めでしょうか?

また、他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。

以上、ご理解・ご容赦お願い致します。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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ゆっくりのブリーダーといってもピンキリだ。
街から街へ渡って活躍する人もいれば、俺のように小さな街でくすぶりつづける奴もいる。

ま、だからって今の生活に文句があるわけじゃない。
ゆっくりの出没件数は増えるなら、それに関する仕事もまた然り。
忙しすぎるのも困りものだが、いまのところ適度に儲けさせてもらってる。
ゆっくりを相手にするのは嫌いじゃないし、ちょっとしたコツさえつかめばボロイ仕事だ。

だから、今回の依頼も、いつも通り気軽に受けた。

話を持ってきたのは、この街にある加工場の支店長。
なんでも、さる大口クライアントから厄介な仕事をもちかけられ、困っていたそうだ。

ハッキリとは口にしなかったが、どうやらそのクライアントとは、あの紅魔館らしい。

紅魔館といえば、ゆっくりれみりゃの最大生息地。
言わば、やつらの故郷にしてメッカだ。

となると、やはりその依頼というのも…

「ゆっくりれみりゃ絡みの仕事ですか?」

「ああ、まぁそうなんだが……。とあるゆっくりれみりゃを教育してくれと預けられてな」

「はぁ……始末ではなく?」

「教育、だそうだ。なんでもクライアントのお気に入りらしくてな…」

溜息をついて眉根をしかめる支店長。
噂によれば、紅魔館のメイド長は、大層ゆっくりれみりゃを溺愛しているらしい。

始末ではなく教育……。
わがままなれみりゃを躾けてくれといった類か。

俺がそう言うと、支店長は頷き、苦々しく口を開く。

「……なんでも"周りのれみりゃに悪影響を与える"れみりゃがいるらしくてな、そいつの更正を頼まれた」

悪影響。
他のれみりゃ種を扇動して人間に迷惑をかけるようなタイプか?
まぁ、加工場の人達は、躾のプロではないし、万が一やりすぎて殺してしまいでもしたら、
俺達人間が、逆に紅魔館の連中のエサにされかねない。

加工場には加工場本来の仕事もあるし、
たしかに外注の専門家に委託するのが、かしこいやり方だろう。

「わかりました。それじゃやってみます」

俺の言葉に申し訳なさそうに苦笑する支店長。

「すまないな……。我々も協力はおしまない。なんとかやってみてほしい」

たかが、ゆっくりれみりゃ1匹の躾など、ゆっくりブリーダーからすれば楽なもんだ。
俺は「任せておいてください」と胸を張り、その問題のゆっくりれみりゃを受け取りに向かう。

支店長と一緒に、加工場の奥へと進んでいく。
すると、そこに一つのケージがあり、中に一匹のゆっくりれみりゃが横になって寝ていた。

「……こいつだ」

「見たところ……普通ですね」

そのゆっくりれみりゃは、れみりゃ種としては比較的一般的な胴体付きだった。
身長は70~80cmほど。大きな下ぶくれ顔と、ややババ臭いとも感じられるピンク色のフリフリおべべ。
背中には、退化してろくに飛ぶこともできなくなった黒い羽が、申し訳程度についている。

「……それじゃ、頼んだぞ」

支店長に言われた俺は頷き、ケージの真正面に立つ。
中腰になってケージの隙間から腕を入れ、れみりゃの頬をむにむにとこねくりまわす。

なにも遊んでいるわけではない。これは、言わば触診だ。
躾る前に、ゆっくりの健康状態は知っておかなければならない。

「ふーん、血色も肌の張りも実に良い。弾力もあるし、至って健康だ。むしろ少し栄養をとりすぎてるくらいですね」

「まーな。売りに出せば高値がつくだろうぜ」

支店長は、苦笑して肩をすくめる。

俺は支店長に適当に愛想笑いを返してから、
れみりゃのほっぺたを軽くつねって引っ張る。

「……う~?」

れみりゃの口からもれる吐息。
それを確認して、俺は頬から手を離す。

「う~、なんだどぉ? れみりゃのほっぺが、じんじんするどぉ」

つねられていた頬に手を当て、むくりと起きあがるれみりゃ。
ごしごしと手で目をこすってから、ゆっくり当たりを見回し始める。

「う~、ここどこだどぉー?」

首を傾げるれみりゃ。
俺は"倒れていたれみりゃを助けてあげた"とウソをついて、手短に用件をれみりゃに伝える。

今日からしばらく俺のウチで暮らすこと。
そこには美味しいプリンや楽しいオモチャもたくさんあること。

たいがいのれみりゃ種は、これで何の警戒心も無くホイホイついてくる。
まったくチョロイもんだ。

「うー、わかったどぉ♪ おにぃさんのおうちでゆっくりするどぉー♪」

このれみりゃも、例外ではなかった。
俺のウソをあっさり信じ込み、よたよた立ち上がる。

「ん?」

その時、俺はケージの中に、大きな緑色のリュックサックが落ちているのに気付いた。
れみりゃは、そのリュックサックを、うんしょうんしょと難儀そうに背負う。
それはそうだろう。そのリュックはれみりゃの体からすれば随分と大きく、
何が入ってるのかパンパンに膨らんでいた。

「うーーー、おもたいどぉ……」

額に肉汁の汗を浮かべる、れみりゃ。

「大丈夫か? 俺が持ってやろうか?」

優しく提案する俺。
信頼関係を築くと同時に、重たいリュックを軽々扱うことで、力の上下関係をわからせるつもりだった。

一方、そのれみりゃは、俺の提案を丁重にことわった。

「ありがとうだどぉ~♪ でもでもぉ~、これはれみりゃのだいじなしょーばいどうぐだからぁ、れみりゃがもつどぉ♪」

商売道具?
俺の脳裏に疑問符が浮かぶ。

だが、いずれにせよそんなに大事な物なら、
まずはあのリュックの中身をおさえるのが効果的か……俺は脳名でれみりゃを躾けるプランを組み立てる。

「じゃ、行こうか?」

「うっうー! おでかけだどぉ♪」

俺は、ケージの扉を開け、れみりゃを外へ出す。

ここから俺の家までは結構距離がある。
道中ダダをこねられても困るから、今のうちに御機嫌をとっておく。

俺は、棒つきのペロペロキャンディーを取り出し、れみりゃに渡す。

「あまあまで、おいしぃどぉ♪」

喜ぶれみりゃ。
キャンディを持つ手とは逆の手を優しく握り、俺は優しくゆっくりスコートしてやろうとする。

「それじゃ行きますよ、お嬢様」

ぎゅ。

「ん?」

れみりゃが、俺の手を握る力を強めたようだった(ゆっくりの握力なので、その差は微々たるものだが)
見ると、れみりゃはただでさえ大きい下ぶくれ顔を、さらにぷくぅーと膨らませていた。

「うー! れみりゃはおぜうさまなんかじゃないどぉ!」

「……え?」

「れみりゃはぁ~~♪ とぉ~~~ってもおいちぃ、にぐまんだどぉ~~~~♪」

満面の笑みで誇らしげに胸を張るれみりゃ。
そのれみりゃの様子を見て、支店長が溜息をつく。

この時、俺はようやく貧乏くじを引かされたことに気付いたのだった。


   *   *   *


正直なところ、俺は驚いた。
その、れみりゃは、実に優秀なゆっくりだった。

俺の家についた後、
れみりゃはちゃんと靴を脱ぎ、「おじゃましますどぉ~♪」とわざわざ断ってから家に上がった。
その後も、興味津々に家の中を見て回っていたが、特別何かを壊したり汚したりするでもなく、
台所でれみりゃ種が嫌う野菜を見つけても「ぽ~い♪」することもなかった。

「う~っ、ぷっでぃ~んたべたいどぉ~♪」

と催促することはあったが、それ以上のワガママを言うわけでもなく、
リュックサックを床に置いてから、椅子に座っておとなしく待っている。

「おいおい……問題児どころか、このままでもシルバーバッヂが手に入るレベルだぞ」

甘やかされているぶんだけ、
紅魔館のれみりゃは野生のそれよりさらに増長している場合が多い。

だが、このれみりゃに限って言えば、
既に一流ブリーダーの手にかかった後のように、躾が行き届いていた。

「ほら、プリンだ」

「うぁ~~い! やったどぉ~~♪」

笑顔を弾けさせ、素手ではなくスプーンを使ってプリンを食べるれみりゃ。

食卓を挟んでれみりゃの真向かいに座った俺は、
正直なところ、少し肩透かしをくらった思いだった。



……だが、こいつが問題児と言われる所以を、俺はその直後に思い知ることになる。

れみりゃはプリンを食べ終わると、その皿を台所の流しまで持って行く。
ここまでは上出来だ。人間の子供と比較しても劣らない。

が、何を思ったか、れみりゃはそのままガサゴソと台所の食器棚をあさりはじめた。

(とうとう本性をあらわすか?)

俺は身構えて、れみりゃを観察する。

「うー♪ ちょうどいいのがあったどぉ♪」

れみりゃは、食器棚の一番下から、直径1メートル弱もある大皿を取り出した。

以前、報酬として陶芸家からもらったもので、
幻の大皿として、好事家の間ではずいぶんと高値で取引されるよな代物らしい。

とはいえ、俺は一人身。
芸術もよくはわからなし、かといって貰い物をすぐ売るわけにもいかない。
仕方なく、食器棚の一番下にしまうだけしまっていたものだ。

そんな大皿を取り出したれみりゃは、
重たそうにその皿を持ち、こちらにやってくる。

「う~んしょ、お~いしょ♪」

れみりゃは、俺のすぐ横まで歩いてきて、食卓の上に大皿を置く。
そして次に、大事そうに背負ってきた緑色のリュックサックの下へ、小走りで向かう。

(こいつ、なにしようっていうんだ?)

「う~~♪」

じゃぁーん!
と言わんばかりに、れみりゃはリュックサックの中からキャベツを一玉丸々取りだし、頭上に掲げた。

「う~、ちょっとまっででねぇ~~ん♪」

れみりゃは俺にそう告げると、
キャベツの葉を1枚1枚むき出し、それを大皿に載せていく。

続いて、同じくリュックサックから、
おそらく紅魔館から持ち出したと思われる高価そうな銀食器を取り出し、よたよた俺の方に歩いてくる。

「はぁ~い、おにぃーさんはこれもってぇ♪」

ナイフとフォークを俺に差し出すれみりゃ。
しかも、ちゃんと柄の方を人に向けている。

「あ、ああ」

特に断る理由を見つけられず、俺はれみりゃからナイフとフォークを受け取る。

(もしかして、こいつ……)

俺は、頭の中で一つの仮説をたてる。

「もうちょっとまっててねぇ~♪ ぷっでぃ~んのおれいに、れみりゃがごちそうしてあげるどぉ♪」

そう言うと、れみりゃは両手を頭の左右に掲げ、れみりゃ種特有の"のうさつ"ダンスを踊り出す。

「おいしくなぁ~れのじゅも~~~ん♪ うっう~うぁうぁ~~♪」

……このダンスを踊ることで、なにかが変わるのだろうか?
……というか、そもそもこのダンス、ふつうの"のうさつ"ダンスと何が違うんだ?

そんな疑問が浮かびはしたが、やはり大枠で俺の仮説通りのようだ。
このれみりゃは、プリンを食べさせてもらった御礼に、俺に料理を作る気らしい。

ゆっくりれみりゃの作った料理など、とても美味そうとは思えない。
が、ブリーダーとして、前例の無いれみりゃの手料理を食べてみたいと思ったのも事実だった。

けれど、そんな俺の期待は、どうやら少しばかり的を外していたらしい。

れみりゃは、踊り終わると、今度は自らの服を脱ぎだしたのだ。

「……は?」

俺は、呆気にとられる。

対してれみりゃは、「おにぃ~さんのえっちぃ~~♪ みちゃだめだどぉ♪」などと口にして、
頬を紅潮させ、もじもじ体をくねらせながら服を脱いでいく。

……何が悲しくて、ゆっくりれみりゃのストリップなど見なければならないのか。
俺は虚しくなり、はぁ~と大きな溜息を吐く。

そうこうしている間に、れみりゃはドロワーズ一枚残して、すっぽんぽんになっていた。

「う~♪ おまたせぇ~♪」

よじよじと椅子に登り、さらに机の上に登るれみりゃ。
とてとて机の上を歩いてきて、先ほど置いた大皿の上に寝っ転がる。
そして、短い手足を揃えて、仰向けになり、満面の下ぶくれスマイルで語りかけてきた。

「おぃちぃ~にぐまん、ゆっぐりたべでくだしゃいだどぉ~~♪」



   *   *   *



自分は肉まん!
美味しく食べてもらいたい!

……それが、このれみりゃが問題児と呼ばれる所以だった。

確かに、れみりゃの中身はにくまんだ。
それも安月給の俺などでは中々食べられない最高級品だ。

しかし、従来のれみりゃは、決して己が肉まんであることを認めようとしない。
それはそうだ。自分達は可愛くて偉い紅魔館のお嬢様である、その思い込みこそがれみりゃ種の本能なのだから。

だが、このれみりゃは逆だった。
自分はお嬢様などではない、おいしぃ肉まんなんだ!
そう主張しているのだ。

人間の立場からすれば、他ならぬれみりゃ自身が、
自分が肉まんであることを認めるのは、決して悪いことではない。

しかし、何匹ものゆっくりれみりゃを飼う、紅魔館のメイド長のような存在から見れば、
このれみりゃを放っておくわけにはいかないだろう。

なにしろ、このれみりゃが"自分達が肉まんである"という主張を周囲のれみりゃに広め浸透させでもすれば、
下手をすれば生物本能が乱され、多くのれみりゃ達が変調をきたしかねない。

かといって、処分してしまうには、確かにこのれみりゃは惜しい。
ここまで躾けられ、頭の良いれみりゃ種は、そうお目にかけられるものではない。

(なるほど、確かにこれは加工場向きの仕事じゃないな)

俺は納得して苦笑する。

普通、加工場はれみりゃに絶望を与えて肉餡の味をあげるべく、
「おまえたちはお嬢様なんかじゃなく、ただの豚まんなんだよ!」ということを教え込む。

だが、今回のケースはその全くの逆。
このれみりゃに、「お前は紅魔館のお嬢様なんだ」という誤った思い込みをさせなければならないのだ。

しかも、このれみりゃの「自分は肉まん」という思いは、想像以上に頑なだった。

俺は、居間の中央でドロワーズ1枚で丸くなって眠っているれみりゃに目を向ける。

結局、俺は何度勧められても、れみりゃを食べることはしなかった。
すると、れみりゃは「どぉぉじてたべてくれないんだどぉぉ!!」と泣き出してしまった。

そして、その後もことあるごとに自分を食べて貰おうと、
れみりゃはしつこく俺にアプローチをかけてきた。
しかし、そこはこちらも仕事。
食べるわけにはいかない。

そんなことを何度か繰り返すうち、さすがに泣き疲れたのか、
れみりゃは「ぅ~~っ、う~~~っ」と泣いたまま、いつの間にか寝てしまっていた。

(……こいつは、思ったより骨が折れるかもしれないな)

俺は覚悟を決め、れみりゃにゆっくり用の毛布をかけてやると、
そのままソファで横になり眠りについた。



   *   *   *



「うっわぁぁぁぁぁ~~! しゅっごいどぉ~~~っ♪」

翌日、加工場から我が家に搬入されたソレを見て、
れみりゃは瞳を輝かせていた。

横幅2メートル、奥行き1メートル、高さ1メートル。
頑丈かつ透明な不思議な素材で出来た容器の中には、なみなみとプリンが入っていた。

(あの支店長……協力は惜しまないって、なんてもの送ってくるんだ!)

狭い我が家が、なおさら狭くなってしまったことに腹を立てる俺。
……とはいえ、仕事を成功させる上では、たしかに有効なアイテムだ。

「うっうー♪ ぷっでぃ~~ん、たぁ~べちゃうぞぉ~~♪」

起きたばかりのれみりゃは、昨日同様のドロワーズいちょうの姿のまま、
巨大プリンに突進する。

「ぷぎゃ!」

が、当然プリンの直前で透明の壁にぶつかり、れみりゃはペタンと尻餅をつく。

「う~~、ぷっでぃん食べられないどぉ……」

目尻に涙の粒を浮かべるれみりゃ。

「プリンを食べたいのか、れみりゃ?」

「うー! れみりゃ、ぷっでぃんたべたいどぉー!」

「そうか。それじゃ……」

「う?」

俺は、れみりゃを抱えあげると、そのまま容器の中へいれてやる。
れみりりゃの体が、ずぶずぶとプリンの中に沈んでいく。

「う~~♪ ぷっでぃんのおふろだどぉ~~♪」

御機嫌になる、れみりゃ。

「すごいだろぉー! これは全部、"こうまかんのおぜうさま"のために用意させたんだぞ!」

「うっ?」

ピクと体を硬直させる、れみりゃ。

「う~~~……」

(悩んでる悩んでる♪)

俺は、心の中でシメシメと笑みをこぼす。
このプリンは"こうまかんのおぜうさまのもの"。
すなわち、もしれみりゃがこのプリンに手をつければ、
そこから"お前はやっぱりおぜうさまなんだよ!"という教育的指導へもっていける。
れみりゃ種が、プリンへの誘惑に勝てないのは、様々な報告や実験でも実証済みだ。

「う~~~っ! ぷっでぃんたべたいどぉ~~!」

「"おぜうさま"がプリンを食べるのに何の問題かあるんだ?」

「うーっ! ちがうのぉ! れみりゃはおぜうさまじゃないのぉー! だからぷっでぃんたべられないのぉーっ!」

「そうなのか? ……ま、どっちでもいいけど。俺はこれから仕事に行ってくるから。良い子にしてるんだぞ!」

「う~~、れみりゃはいい子にゆっくりおるすばんするどぉ…」

れみりゃとの会話を打ち切り、俺は家を出る。
これでいい。俺という証人がいなくなれば、れみりゃはますますプリンの誘惑に勝てなくなる。

加えて"良い子に留守番している"という約束をした以上、
あのれみりゃの知能ならばその約束を守ろうとするだろう。

だが、れみりゃが食べれそうな物は全て隠しておいた。
留守番をしている以上、外に狩りに出るわけにもいかない。

……となれば、空腹に迫られたれみりゃが出る行動はただ一つ!


   *   *   *


……そう、ただ一つのはずだった。

だが、誤算だったのは、
れみりゃが「プリンを食べない」という行動を選らんだことだった。

「うっう~~♪ おかえりなさぁ~い♪ 
 ごはんにするぅ? おふろにするぅ? そ・れ・と・も~、にぐまぁんたべりゅ~~?」

俺が出発した時と寸分変わらず、ドロワーズいっちょで、
プリンの風呂につかったままのれみりゃが、俺に猫撫で声をあげてくる。

プリンのかさは少しも減っていない。
れみりゃの「肉まん」としての自負が、プリンへの誘惑に勝ったのだ。

(くそっ! そんなバカな!)

思わぬ誤算に、俺は心の中で毒づく。

「れみりゃ、プリン食べなかったのか?」

「だっでだっでぇ~~、れみりゃはおぜうさまじゃなくて、にぐまんだもぉ~~ん♪」

「……そうか」

「う~~、おにぃーさぁん♪ れみりゃいいこでゆっくりしてからぁ~ごほうびほしぃどぉ♪」

「ごほうび?」

「うーうー♪ れみりゃ~おにぃさんにぃ、たべられちゃいたいんだどぉ~~♪」

「……だめだ」

「うぅ~~~~~っ」

俺の態度に、れみりゃは少なからずショックを受けているようだった。
しかし、ほうびに食べて欲しいとは……。

俺は、いままでゆっくりに対しては、中立を保ってきた。
特別愛でることも、虐めることもなく、仕事に徹してきた。

だが、何かにつけては、自分が"おいしく食べられる"ことを望む、
そんなこのれみりゃに対しては、少なからず嫌悪感を覚え始めていた。

「……しょうがないな。代わりといっちゃなんだが、プリンを食べていいぞ」

「う? おぜうさまじゃなくてもいいの?」

「ああ、このまま残っても勿体ないからな」

それに、これは躾けるという仕事だ。
このままれみりゃに餓えられては俺が困る。

「うー♪ おにぃさんだいしゅきだどぉー♪」

やはり相当の空腹と戦っていたのか、
言うや否や、れみりゃはプリンの風呂に頭から突っ込み、がぶがぶプリンを貪り食い始めた。

「おにぃさんまっででねぇ~♪ いっぱいぷっでぃんたべてぇ、れみりゃはもっとおいちぃにぐまんになるんだどぉ~♪」

裸の体をプリンまみれにして、下ぶくれの笑顔を向けるれみりゃ。
醜い……俺は、率直にそう感じていた。

そして、仕事とは別に、俺は一つの決意を固めるのだった。



……ぜってぇーこんなヤツ食わねぇ、と。







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(あとがき)

ティガれみりゃの5を書こうと思っていたのに!
制作中のゆっくり飼育ゲームの続きをやろうと思っていたのに!

……気付いたらキーボードを叩いていて、こんなSSが出来ていました(汗

ドロワ1枚で大皿の上にのって「たべてぇ~♪」ってやってるれみりゃを想像したら、
ウザいやら可愛いやら、たまらない気持にかられてしまいまして……。

そこが全てっちゃ全てです;;

by ティガれみりゃの人

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最終更新:2022年01月31日 01:53
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