ゆっくりれみりゃ系いじめ13 「プリン」が好きな二匹

 紅魔館からかなり辺境の地に存在するゆっくりれみりゃの巣。
 紅魔館と言うある種本能を刺激される場所が無いためか、ここのれみりゃは持ち前のぷっでぃん脳は持ち合わせていない。
「うっう~♪ あうあう♪」
 目を覚ましたれみりゃは餌を探しに巣穴を飛び立つ。
 向かう場所は様々。
 ゆっくりたちの住処であったり、ゆっくりたちが集まる場所であったり、人里であったり。
「うっう~♪」
 今日向かうのは人里のようだ、人の家に入り込んだゆっくり饅頭がよく庭や縁の下に晒されている。
 多くは人間が餡子を柔らかくするために苦痛を味わわせているのだが、それは同時にゆっくりれみりゃの格好の餌にもなる。
「ゆっ!! ゆっくりしたいよ!! れいむたちのおおきなおうちでゆっくりしたいよ!!!」
 そしてここも苦痛を受けているゆっくり一家がいた。
 体に縄を通されて仲良く吊るされて居る一家。
 健気にも、未だに自分たちの家だと主張しし続けるその姿は、ゆっくりの無知を通り越してわざと言っているのではを思わせるほどだ。
「!! おねえさん!! ゆっくりたすけてね!!!」
 その一家の前に降り立つれみりゃ。
 何処をどう見たらお姉さんに見えるのか甚だ疑問だが、必死に助けを求める一家に歩み寄るれみりゃ。
「うっう~♪ あうあう~♪」
 沢山の餌を見つけられたことがよほど嬉しいらしく、両手を顔の脇へ腰を振った後に手の甲を上にして腰の脇に手を持って上半身を突き出す、と言うへんちくりんな踊りを舞いながら近づいていく。
「!! おねーさん!! ゆっくりはやくれいむたちをたすけてね!! そうしたら、とくべつにおねーさんはれいむたちのおうちにいれてあげるよ!!!」
「そうだよ!! はやくたすけてね!!!」
「さっさとたちけてね!!!」
 助けてもらおうと思っているのに、一々気に障るような口を利く一家。
 しかし、ゆっくりれみりゃはお構いなしに踊りを続ける。
 どうにか一家の前に到着し、吊るされていた縄を外し地面に落とす。
「ゆゆ!! ゆっくりできるよ!! でもこれかられいむたちがゆっくりするから、おねーさんはかえってね!!」
「にんげんがいるとゆっくりできないから、おねーさんはかえってね!!!!」
「れいみゅたちがゆっくりするから、おnんびゃっぷぃー!!!!」
 落ちないように、下を大きな板で止めていた縄から無理去り一家を引き出す。
 勿論、体の小さい赤ちゃんは既に絶命している。
「うっう~♪ うまうま~♪」
 潰れた饅頭をドンドン口に運んでゆく、口や手が餡子まみれになっても、かなり甘くなっているその饅頭たちを食べるのはやめない。
「ゆっゆゆ!! おかーさんたすけてね!! おかーさnぎゃけるほぉ!!!!」
「れーぶのごどもがじがーーー!! どーじでごんなごどするのーー!!!」
「う~、おっきなおまんじゅう♪」
「しょっきんにゃう~!!!!」
 とうとう一匹だけになったお母さん霊夢を引き出して食べ始める。
「ゆ!! やめでね!! れいむはゆっぐりたべものじゃないよ!!!」
 体の大きさからか、引き抜かれただけで絶命はしなかったが、それが仇となり、食べられる苦痛を味わう事になってしまった。
「ゆ!! れいむだじのおうじなのにーーー!! おじさんががってにはいっできだからだよ!!」
 それだけ言い残して、やっと意識を無くす事が出来たお母さん霊夢。
 そして同時にれみりゃの食事も終わったようだ。
「う~♪ おなかいっぱい♪」
 それだけ言い残し、悠々と庭を後にする。
 まだまだ食べ足らず、巣に戻らずに周りの家を周回するれみりゃ。
「う~~~~~~~~……」
 なかなか他のゆっくりは見つからないが、少し集落から離れた家の庭で漸く一匹見つけることが出来た。
「う~~♪」
 一気に狙いを定め、もう突進していく。
「むっきゅ~~~!!!」
 こちらに背を向けているそのゆっくり目掛けてズンズンスピードを上げてゆくれみりゃ。
「う~~、…………」
 あと少し、あと少しで捕まえられる。
「!! むっきゅ~~~~~~~!!!!」
 漸く気付いたようだが、この距離ではどうしようもない。
 れみりゃは、ゆっくりを捕まえるために手を伸ばした。
「!! うあーーーーーー!!!!!」
 突如、自分の前にあわられたのは竹槍。
 その先端に勢いよく突っ込んでゆくれみりゃ。
「うっぎゃーーーー!!!」
 頭から突っ込んでいった体勢が仇となった、竹やりは脳天から股にかけて見事に貫通した。
 幾ら再生力の優れたゆっくりれみりゃと言えども、ここまで綺麗に入ったモノはどうする事も出来ない。
「いだい!!! いだいよーー!!! うっぎゃーーーー!!!!」
 言葉に出来ない痛みがれみりゃを襲う。
 必死に竹やりを抜こうとするが、れみりゃの力ではどうすることも出来ない。
「うあーーー!!! だれがー!! だずげでーー!!!」
 どうしようも無いので助けを呼ぶ。
 その必死な声に気が付いたのか、近くから一人の男が出てきた。
 草陰で、れみりゃに竹やりを放った男である。
「!! うーーー!!! だずげでーー!!! だずげでーーー!!!!」
 視界にその男を認めると、直ぐに助けを求めるれみりゃ。
 しかし、男は助けるどころか竹やりを地面に突き刺した。
 地面に腰を下ろすように固定されたれみりゃ。
 何がなんだか分からず、頭の中は直ぐにパニックになる。
「うーー!! たずけで!! だずけで!!! うーーー!!!」
 男は、その様子にある程度満足したのかれみりゃに向かって優しく話し始める。
「いいかい、これから一晩このまま置いておいたら、その後は助けてあげるよ」
「う~~~~? れみりゃたすけてくれるの?」
 男の言っていることが理解できたらしく、クリクリした瞳で覗き込むれみりゃ。
「もちろん! でも、この近くには庭においてある人間のゆっくりを勝手に食べるゆっくりがいてね、もしかしたら明日の朝までにゆっくりフランに食べられてしまうかもしれないんだよ……」
「!!!」
 れみりゃは何とか理解できた、人間のモノを勝手に食べていたのは自分も同じだったから。
「うーー!! いやだぁーーー!!! れみりゃだべられだくないーー!!!」
 動かせる手足をバタバタ振って必死に今晩するれみりゃ。
 しかし男はしれっと言葉を続ける。
「でもねぇ。勝手に食べていなくなっちゃうからねぇ……。せめて一言言ってくれればねぇ……」
 日が傾いてきた、もう直ぐあたりは薄暗くなる。
「うーー!! れみりゃももうかっでにたべまぜんがら!! だがらたずけでください!!!」
「んー? お前も人の家のもの勝手に食べてたのかい?」
「はいぃ!! でももうじまぜん!! だがらゆくじでぇーー!!」
「そうか、だったらなおさらお仕置きしないとなぁ」
 にたぁーっと男が笑みを溢す。
 その真意を理解したれみりゃは必死の形相で男に助けを求める。
「もうじまぜん!! だがられみりゃをだずげてくだざい!!!」
 日は山に隠れて急激に周りの視界を狭めていく。
 それに余計恐怖心を煽り立てられ、傷口から中身がこぼれるのも気にしないで、必死に許しを請うれみりゃ。
 男は一旦考えるふりをした後に、れみりゃにある質問をした。
「それじゃぁ、これからは人ものは勝手に食べない、そしてゆっくりたちも勝てに食べない。そしておにーさんの仕事を手伝う、それを約束してくれたら助けてあげるよ。それに家で飼ってあげるし、甘いお菓子も食べさせてあげる」
 暗闇の中でうかがい知れない男の顔は、しっかりと笑っていた。
 勿論、れみりゃにその申し出を断る文句が見つからない。
 比較的、他のゆっくりより身体能力が高いれみりゃだが、それでも毎日餌にありつけるとは限らない。
 しかし、この男の仕事を手伝えば今までの狭い洞窟の住まいから、人間の広い家へ、更に食べ物までもらえるのだ。
 こんな美味しい話は無い。
「うーー!! れみりゃやぐそくする!!! だがらゆるじでぐださい!!!」
「よーしわかった。じゃあ明日から仕事のためにちょっと練習してもらうことがあるから。それとこのゆっくりパチェリーと一緒のお部屋を貸してあげるよ」
 男から大きなペロペロキャンディーを受け取って、れみりゃはその男の家の中へ消えていった。

……数週間後。
ここは紅魔館の庭、この日も沢山のれみりゃがここで我が物顔をして遊んでいた。
「うっう~あうあう~♪」
「れみ☆りゃ☆う~☆ にぱー♪」
「ぷっでぃ~~ん!! ざぐや~れみりゃぷっでぃ~んどご~?」
 その様子はまさにゆっくりれみりゃの託児所と言った所か。
 その中を一人かけ巡る人間が居た。
 この屋敷の主の従者、十六夜咲夜だ。
「はいはい。プディングの時間ですよ。……はいどーぞ♪」
 そういって一匹ずつにプリンを渡していく。
 渡された方は気持ちの悪い笑みを浮かべて貪り食う。
「う~さぐやのぷっでぃ~んあまいどぉ~♪」
「ぷっでぃ~んおいしいどぉ~♪」
 そして、何時ものように小悪魔に呼び出される咲夜。
 今日はパチュリーが鍋焼きうどんを食べたいと言っているらしい。
 ……八月に。
 無論、咲夜ににとって、れみりゃ以上に大事な数少ない人物なので直ぐに厨房に出向いて鍋焼きうどんを作り始める。
 早くれみりゃ達を見れるように……。
 庭では、相変わらずれみりゃの大群が腰を下ろしてプリンを食べている。
 足を伸ばして、お得意のれみりゃスマイルでぷっでぃ~んと呼ばれるのもをバクバク食べてゆく。
 これを毎日見せられている紅魔館の方々は本当に忍耐強い。
「う~♪ れみりゃのおやしぎだどぉ~♪」
 プリンを食べ終えたれみりゃはカップを舐め終えると地面に捨ててまた、遊び始める。
 今度は全員で踊りを踊るようだ。
「う~~~……う~~?」
 いざ、踊り始めようと思った矢先、突然一匹のれみりゃがその場に降り立った。
 手には一つのプリンを持っている。
「「「う~~ぷっでぃ~ん!!!!」」」
 一同が注目する中、そのれみりゃは三流グルメリポーターもびっくりするほどの手つきでそのプリンを食していく。
 れみりゃでなくても十分そのプリンの美味しさが伝わってくる。
「う~♪ このぶっでぃ~~~はさくやのぷっでぃ~~~~んよりもずっとおいしいどぉ~~~~♪」
 多少オーバーリアクションでそう言い放つ、れみりゃ。
 他のれみりゃも大興奮だ。
「う~~れみりゃもそのぷっでぃ~んだべたいどぉ~♪」
「れみりゃもたべだいどぉ~♪」
 沸き起こるぷっでぃんコール、それを満足げに見ていたれみりゃは最後にこう告げ飛び立つ。
「うっう~♪ みんなでこのぷっでぃ~んがあるところにいくどぉ~♪」
「「「「いくどぉ~~~~♪」」」」
 飛び立った一匹の後を追うように、次々と重い体を浮かべていく。
 先頭のれみりゃは、同属とは思えないほどトロくさいその速度に合わせながら、目的の場所まで移動した。
「うっう~♪ ここだど~♪」
 そう言って、大きな施設の前に降り立ったれみりゃ。
 ドアの向こうでは、複数の人間がこっちに向かって手を振っている。
「「「「う~~~~ぷいっでぃ~~~~ん!!!!!!」」」」
 ドテドテと施設内に入り込んでゆくれみりゃ一行。
 入り口の広いホールまで入り込んだ一行は直ぐに、奥の部屋でお盆を持っている男達を発見した。
「う~れみりゃのぷっでぃ~んだど~♪」
 一番のりでそこへ入っていったれみりゃ、早速飛び上がってお盆の中を見るが、そこには何も載ってない。
 そう、男が持っていたのはただのお盆だった。
「う~~!! ぷっでぃn!! あんぎぇらぱっぱーーー!!!!」
 ぷっでぃんと言おうとしたれみりゃが激痛を訴える。
 男が突然羽をもぎ取ったからだ。
 見ると、後から来たれみりゃもどんどんと同じような状態になっている。
「うっぎゃーーー!!! ざぐやーーー!!! だずげでーー!!!」
「ざぐやーーー!!! こわいひどたじがいるよーーーー!!!!」
「「「「うっぎゃーー!!!! ぷっでぃ~んは!! ざぐやーー!! ぷっでぃ~んはどごー!!!」」」」
「ぷっでぃんならないよ。これからお前たちが餌になるんだから」
 淡々とれみりゃ達に真実を告げる男。
 それを聞いたれみりゃもプリンは無く、自分たちが食べられることを悟ったようだ。
「いやだーーー!!! れみりゃはおいじくないよーー!!!!」
「がえるーー!!! れみりゃがえるーーー!!!!」
「うーーー!!! ざぐやはどぉごぉーー!!!!」
 その喧騒の中で、男達は黙々と作業を続ける。
「この二匹は新しく作るケージの餌だな」
「こっちの六匹は出荷用だ、調理部に回してくれ」
「この親子は⑨⑨街へ届けてくれ、ゆっくり肉まん店の二号店を作るらしい」
「へぇー、でもれみりゃを調教するのは大変でしょうね」
「いや、どうやら一回目同様アリスさんが調教するらしいぞ」
 これからこのれみりゃ達の多くは、加工場の餌係として過ごすことになったようだ。


 ……。
 同じ頃、森の中。
「むっきゅ~むしゃむしゃ♪」
 沢山食料が貯蔵されている巣の中でゆっくりパチェリーが楽しく食事を楽しんでいた。
「ゆ!! 「「ゆっくりしていってね!!!」」」 
 突然舞い込んで来たゆっくり魔理沙一家。
 そのままどかどかと家へ上がり込む。
「むっきゅ!!」
 突然の行動に呆然とするパチュリー、それを見ていたお母さん魔理沙はとどめの一言を言い放つ。
「ここはまりさたちのおうちになったよ!!! ゆっくりできないぱちゅりーはでていってね!!」
 どう考えてもゆっくりしていないのはそっちだろうと言いたくなるが、珍しく素直に家を出て行くパチュリー。
「ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりでていってね!!!」
「ゆっくりしんでね!!!!」
 巣からとぼとぼと出て行くパチュリーを見送った後、一家は改めて沢山の食料に向き直る。
 林檎、スイカ、メロン、ケーキ、オムライス、スパゲッティー。
 ゆっくりには到底発音できない料理も、そこには多種多様な食べ物が並んでいた。
「「「「ゆっくりいただきまーーーす!!!」」」」
 家族一斉に飛びつく魔理沙一家、それが食べ物ではないと言うことに気が付くまでそんなに時間は掛からなかった。
「!! ゆゆこれかたいよ!!!」
「たべられないよ!!!!」
「ゆっくりできないよ!!!」
「あのぱちゅりーがだましたんだね!!!」
「ゆっくりしてもらわないとね!!!!」
 一家がかぶりついたのは食品サンプル。
 元々この巣の中に有った食べ物は最初にパチュリーが食べていたものだけだ。
 それでも、自分たちの事は棚に上げて、沸々とした怒りに震える魔理沙一家。
 そこにさっきのパチュリーが戻ってきた。
「むっきゅ~♪ ほんもののたべものがわからないまりさはゆっくりしていってね!!!!」
 巣の入り口で、中に居る一家に聞こえるように言い放つ。
 中で聞いていた魔理沙一家は怒り心頭、勢いよく巣から飛び出す。
「!!! ゆゆゆ!!!」
 入り口から出て、飛び掛ろうとしたが身動きが取れない。
「ゆ! これはあみだよ!! ゆっくりもどってね!!!」 
 しかし、子供たちは大きな網の中へ次々と飛び込んでゆく。
 全員がすっぽり入った所で、唐突に入り口は塞がれた。
 紛れも無く、ゆっくりパチュリーの隣に居る男が締めたのだ。
「ゆゆ!! おにーさん、まりさたちをこのなわからだしてね!!!」
「そのぱちゅりーはわるいこだよ!! まりさたちをだましたんだよ!!!」
「おいおい、お前達が勝手にコイツの家に入っていったんだろ?」
「そんなことしないよ!!! まりさたちはいいゆっくりだもの!!!」
「おじさんもゆっくりできないんだね!! まりさたちをだしたらゆっくりどこかへいってね!!!」
「そうかい、じゃあ出してあげるよ」
 よいしょ、と一声かけて網を持ち上げる。
 そのままスタスタ歩いてゆく男、勿論ゆっくり達を出す事もしない。
「ゆゆ!! おにーさん!! ゆっくりはやくだしてね!! いいかげんにしないとまりさおこるよ!!!」
「おこるよ!!! ゆっくりだしてね!!!」
「そんなに心配しなくても、加工場に着いたら直ぐに卸すよ。他の巣に居るのが良いみたいだからゆっくりアリスの巣に入れてあげるよ」
 加工場、ゆっくりアリス、その二つの単語が聞こえた瞬間、ゆっくり達の態度は一変した。
「かこうじょーはいやだーーー!!! おにーざんまりざたちをはなじでーーー!!!」
「おにーーざん!! まりざたちがおながへっでやっだんですーー!!!」
「もーじないがらゆるじでくだざいーーーー!!!」
「よかったじゃないか、加工場ではゆっくりできるまで食べられるぞ。……ほら見えてきた」
 あっさりと答える男、見れば加工場も直ぐそこだ。
「いやだーーーだずげでーーー!!!!」
「そんなこといってもなぁ、……。もともと君達を捕まえるためにわざとやってたんだし。まぁ、ゆっくりしてた事が悪いって言うことで」
「「「!!! ゆっぐりしたけっかがこでだよーーー!!!!」」」

……。
「……がこれ位で。お待たせしました、これが今回の見積もりです」
「ほー。結構多いですね。幾られみりゃ種が高級といっても、これはいささか高すぎませんか?」
 明細を受け取った男が驚きの声を漏らす。
 それほど今回の取引は大きな金額となった。
 それはもう、博麗の巫女なら十年間は暮らせる位。
「いえいえ、お得意さまですし。それに紅魔館周辺のれみりゃはあそこのメイド長が可愛がっている所為か、身体能力は随分落ちてますが、その代わり肉が柔らかくて美味しいんですよ」
 職員が、笑顔で男に理由を説明する。
 男もその答えを聞くと笑みを浮かべた。
「そうですか。それではれみりゃの方は股一ヵ月後に、他のゆっくりはまた二週間後に卸に来ますので」
「分かりました。われわれだと、同じ方法を使っても、メイド長が怖くてなかなか近づけないんですよ。貴方に卸していただいて感謝しています。なにか秘訣はあるんですか?」
 加工場から出ようとしていった男は、振り向きざまに一言だけ呟いた。
「本をよく読んでいたから。ですかね?」
 それだけを言い残してその場を後にする。
 職員は首を捻っていたが、おそらく知識が豊富なのだろう、そう考えて男を見送った。
「むっきゅ~!! おかえりなさい!!!」
「う~♪ ゆっくりしてきたね!!!」
 入り口で待っていた二匹のゆっくりが男の下へ駆け寄ってきた。
 勿論、あのゆっくりれみりゃとパチュリーである。
「むっきゅ~~!! あのまりさたちぱちゅりーのおうちにかってにはいってきたの!!! あそこでしばらくはんせいするといいの!!!」
 暫くではなく一生反省できるだろう、彼らは一生自分の子供を育てて出荷させられるのだから。
 ちなみに、謳い文句は『ゆっくり一家が育てました!!! 家族の愛情がゆっくり詰まった濃密餡子』、である。
「う~♪ おにーさんれみりゃはおなかがすいた、すこしでいいからなにかたべたい!!」
 このれみりゃに手伝ってもらう仕事。
 簡単に言えば鮎の友釣りである。
 紅魔館周辺のれみりゃの口調を覚えさせ、加工場に案内させる。
 他のれみりゃが中へ入ると、このれみりゃは外で待って待機する。
 一応、ある魔法使いに、識別のための魔法をかけて貰ったので、間違えて中に入っても大丈夫にはなっている。
 だが、今まで野生を一人で生きていたれみりゃが、幼く、運動音痴のメタボゆっくりにほいほいついて行くかは疑問ではあるが。
 このパチュリーだってそうである。
 以前、本当に家を魔理沙にのっとられた時にたまたま通りがかった俺が助けた。
 そして加工場に連れて行ったのだが、どうやらこの施設を知っていたパチュリーは上記のような台詞を吐いてゆっくり一家を見送っていた。
 そして、渡されたのは予想より大きな金額、その時にこのビジネスを思いついたのだ。
「いいぞ! 今日はお金がいっぱい入ったから、二人の好きなもの何でも買ってあげるぞ!」
 れみりゃのお願いに快く応じる男。
 自慢の教育で並みのゆっくりれみりゃより思慮深くなったれみりゃ、今だってわざわざ遠慮がちに言っているのだ。
 媚を売るれみりゃスマイルもしない。
 なにより、自分の仕事をきちんとやっているれみりゃ達に、男がご褒美を与えてるのは当然だ。
「「!!」」
 これを聞いて笑顔になる二匹。
 普段は我侭言わずに、きちんと出されたものを食べていた二匹だが、たまにこうして我侭を言えるのが何よりも嬉しかった。
 そして、買ってもらう食べ物は決まっている。
「うー!! ぱちぇはきまったの?」
「ゆ! れみぃもきまったの?」
「う~♪」
 それは二人の大好物。
「「おにーさん!! ぷりんがたべたい!!!」」
 その日夕食に並んだのはバケツ一杯もある大きなプリンだった。

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最終更新:2022年01月31日 01:23
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