ゆっくりいじめ系11 ゆっくりの王

人里から遠く離れた小さな山に、多くのゆっくりが暮らす森がある。
日当たりの良い広場があり、きれいな川が流れ、木の実を付ける広葉樹で構成されており、
小鳥は囀り、げっ歯類以上の大きさの哺乳類はおらず、妖怪も人間も足を踏み入れないというそこは、ゆっくり達の理想郷であった。
そんな美しい森に、とても生存本能の強いゆっくりぱちゅりーが居た。
他のゆっくりぱちゅりーは自らの運命…先天的に病弱で、長生きする事は叶わない自らの体質を受け入れている。
だが流石にこのゆっちゅりーは格が違った。自らの運命を自らの手で(ゆっくりなので手は無いが)変えようと強く思っていた。

ある日ゆちゅりーが短時間の散歩を楽しんでいると、木の洞に詰まって身動きが取れなくなっているゆっくりまりさがいた。
ふと、ゆちゅりーの拙い思考回路があるアイデアを生み出した。
まりさ種はゆっくり達の中でも殊に活動的だ。その点では、ゆちゅりーの理想と言ってもいい。
そのゆまりさの健康で活動的な肉体を得れば、自分もああなれるのではないか。
無論、肉体を手に入れると言っても脳を移植する訳ではない。元よりゆっくりにそのような知識は無い。
あるのは本能だけ。故に、他者の肉体を得る方法はただ一つ。―――食べる事だけだ。
ゆちゅりーは虚ろな表情で、ゆっくりとゆまりさににじり寄る。
「ゆっ!たすけてくれるの!!?ゆっくりひっぱってね!!!」
「…………」
ゆちゅりーは答えない。というか、聞こえていない。今のゆちゅりーにあるのは強烈なまでの食欲だけだ。
「ど、どうしたの!!?さっさとたすけてね!!!」
「…………」
偶然にも周囲にゆっくりの姿は無い。まるでゆっくりの神があるいは悪魔がセッティングしたかのような状況である。
もうゆまりさの体温すら感じられる程に肉薄している。耳障りな雑音も聞こえない。
ぶよぶよと震える皮は美味そうとしか考えられない。
普段は友愛を喚起させられる体臭も今では食欲をそそる香りだ。
肌身離さずかぶっている帽子や、美しい金色の髪に至るまでが御馳走に見える。
そして、
「ゆ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!や゛め゛で!!!や゛め゛でよ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」
思い切り良く頬に食らいついた。その瞬間、口の中をかつて無いほどの至福が駆け抜けた。
―――すごい。こんなにまりさがおいしいなんて。ゆめみたい。
全身が四散しそうな程衝撃的な味は、ゆちゅりーを虜にした。
一心不乱にゆまりさを喰らう。否、このゆちゅりーはゆまりさをただ食っているのではない。愛しているのだ。
今のゆちゅりーの最大限の愛情表現こそがこの共食いという最も恐るべき行為だった。
「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!どうじで!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」
一口齧る毎に、一声絶叫される毎に、ゆちゅりーは心身共に活力に満ちて行くのを実感していた。
このような感覚は生まれて初めてだった。母の蔓に生まれ、目を覚ました時ですらここまでの爽快感は無かった。
「ぐがが……お゛ぼぉ゛……ゆ゛……ゆ゛ぐぐ……ゆ゛っぐり゛ざぜでね゛!!!!!」
それがこのゆまりさの最期の叫びだった。後はただゆまりさの残骸を余さず食う音だけが響いていた。
「むきゅぅーん……」
ゆちゅりーは涙した。一時の激欲に身を任せて友を食べてしまった自責の念で。
もう二度と自分の知らない場所にまで連れて行ってくれた相手と会えない悲しみで。
そして、身も心もかつてない程のゆっくりに満ち溢れている喜びで。
もっと。もっとこのエネルギーが欲しい。友を喪うのは悲しいけれど、それを遥かに上回る喜びが得られるのなら。
「だから……!(福山潤の声で)」

翌日の朝、ゆちゅりーは森の中を全速力で駆け回っていた。恐らくゆっくりまりさと同等の速度だろう。
ゆちゅりーは感動している。速く走れるとはこんなに素晴らしいことなのか。それもこれもまりさと一つになったお陰だ。
もっとだ。もっと食べれば、もっと生きていられる。もっとゆっくりできる。そう、食えば食う程―――強くなる。
……新たな餌を、発見した。

数年後、そこにはかつての貧弱さなど微塵も感じさせない力強いゆっちゅりーが居た。
体躯は通常のゆっくりより一回りも二回りも大きく、その眼力に他のゆっくりはただ畏れるしかなかった。
今やゆっくりれみりゃさえもゆっちゅりーには近付かない。
ぱちゅりー種でありながら餌を横取りされたゆっくりれみりゃの群れ十匹を返り討ちにするような怪物に逆らう程、ゆっくりも馬鹿ではないのだ。
そう。今やこのゆっちゅりーはこの森に住まうゆっくり達の王なのである。
好きな時に好きなゆっくりと共にゆっくりし、好きな時に好きなゆっくりを食べる。それが王の在り方だった。
だが、王はこの生活にも飽きてきた。以前とは比較にならない位強大な生命力を得た王にとって、通常のゆっくりでは物足りないのだ。
もっと。もっと大きくて栄養のある餌が欲しい。際限無い欲望を持つという点では、人間の王とゆっくりの王は大差無かった。
決意するのに、そう時間はかからなかった。王はこの楽園を捨て、新天地へ向かう事を決意した。
大丈夫。今の自分は強い。ゆっくりれみりゃやゆっくりフランでさえ自分を恐れて近付かない程に。
どんな敵が現れようと打ち倒し、食べるだけだ。
そうして王は向かった。幻想郷の中心部にある人間の里へ。
森を出て三時間、里の外れの外れにある小さな集落を発見した。
地面にしゃがみ込み何かをしている人間が居る。第一村人発見である。王はこいつが記念すべき最初の人間だと決定した。
射程距離まで音を立てず慎重に移動する。まだだ。あと十ym(ゆっくりメートル)。あと八ym、六ym、よし今だ―――!
その瞬間、人間がこちらに気付いた。だが構うものか。後は飛び掛り、組み伏せ、食い尽くすだけなのだから。だが……
王は知らなかった。ゆっくりと人間など、同じような物だと慢心しきっていた。
世界で最も強かったのはゆっくりフランで、自分はそれ以上の生物なのだと勘違いしきっていたのだ。
そう、つまり―――ゆっくり内での序列がどうあれ、ゆっくりである限り人間の食料に過ぎない事をまるでワカっていなかった。
「ごらー!おらの畑で何しとるだァー!!」
食い物である筈の人間はそう叫ぶと、手に持った棒切れを振りかざし、王の頭に振り下ろした。
ぐしゃり。
決定的な音を、王は確かに聞いた。懐かしい感覚。自分の意識から立ち昇る死の匂い。
嫌だ。せっかく生きられるようになったんだ。こんな絶望から逃げる為に同胞まで食ったんだ。
助けて、助けて、助けてまりさ。れいむ。ありす。にとり。うどんげ。にいと。あやや。てんこ。ちぇん。さくぽ。れみりゃ。フラン。
助けろ!私は、私はお前らの王なんだぞ……!!
と、ありえない光景を見た。森に居た多くの仲間達が自分を見ている。ああ、やっぱり助けに来てくれた……皆!
「たすけろ、だってさ」
「おお、いやだいやだ」
大勢の仲間が、嫌な笑顔でこちらを見ていた。
どうしてこんな顔を向けられるんだろう。
どうしてこんな事になってしまったんだろう。
わたしはただ、みんなとゆっくりしたかっただけなのに……

「おーい母ちゃん。こんなもんが畑を荒らしとったぞー」
「あんらーお前さんそりゃ『ゆっくり』だよぉ。それを里に持っていくと高く売れるんだわー」
「へぇそうかい。そいじゃちょっくら売ってくらぁ。おぅ、種蒔きは代わりにやっといてくれよ」
「そんな事言ってまた遊んでくるんじゃないんだろうね!いやだよこの間みたいに土産とか言ってエロ同人誌五十冊も買って来るのは」
「へっへっへ、もうあんな事はしねえよぉ。んじゃ行って来る」
「全く。気を付けて行って来てなあ!最近は妖怪が出るとか言うけんねー!」
「おおう!妖怪なんざ俺のコブラツイストでボッコボコにしちゃるけん!」
「調子いい事言うんだから。妖怪になんて勝てる訳……おや、何だいこりゃあ」
彼女の足元には文字が刻まれていた。そこはかつての王が息絶えた場所だ。そこにはこう書かれていた。
「ゆっくりしていってね!!!」

DEAD END

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最終更新:2011年07月28日 00:47
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