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    <title>円卓同盟作品紹介wiki</title>
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    <title>ソレイユ～私の太陽～【オープニング】</title>
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    <description>
      〔オープニング/前半〕









　　　　――独白だ、当然のことながら










　　人生というこの難物は　とかく何が起こるのか　予測がつかないものだ

　　無力で不完全な我ら　人に与えられし矮小で卑しき生は

　　嵐の大海に飲み込まれた一艘の舟のように　なす術もなく

　　己の身を任せるその気まぐれな波風に　ひたすら怯えながら

　　待ち受ける運命を前にし　ただ呆然と立ち竦むのみだ


　　人の運命

　　天より定められしもの

　　人は生まれながらに自身の意思と関係なく　泣きながら不浄の地に堕ち　命を得る

　　誰しもが皆

　　その時点では　例外なく分け隔てなく等しい

　　だが　いつしか気付くことになる

　　一見無限のように広がるその蒼い空と緑の大地の果てに

　　やがて翳りの闇が迫り来るということを

　　己の前に広がっている道が　予め定められていることに



　　そのことに意味などない

　　いや　そのことには何らかの意味が

　　人々は誰もがその意味について考える

　　そしてそのことに何らかの理由をつける

　　抗うものなのか　受け入れるものなのか

　　ぐるぐると回り続ける

　　その尻尾を掴まんと　いつまでも回り続ける魯鈍な犬のように

　　時に「神」という発明を自らの手で拵え　あつらえて　その理由としながらも



　　恐らく意味などないのだ

　　分かっている

　　始終私を昼も夜も悩まし苦しませるそれ

　　そのことに意味などない

　　でも人はそんなことは分かっていても　何らかの意味をつけようとする

　　まるでその意味を求めることが目的かのように　いつまでもそうしながら



　　なぜか？

　　生きているからだ

　　こうなると初めから分かっていれば

　　一体誰があの子宮の家より望んで出ようとする者がいようか

　　だが　それに気付いた時にはもう遅すぎるのだ

　　ハズレのクジを引いたからと

　　いまさらあの心地の良い　母なる温もりの中に戻る訳にもいかないではないか



　　私の身にあの時何が起ころうとしていたのか　あの時は知る由もなかった

　　私はこの地上に生まれ堕ちた際　その過酷な運命になんぞ気付くはずもなく

　　だが我が肉体が齢を重ね　物心をつけるにあたって

　　やがてその宿業という

　　自らの身に起きた悲劇

　　否が応にも気付かされることになる

　　私は生まれながらにして　磔柱を背負わされた罪人であった



　　私はただ翻弄する波の中でなるようにしかならないのを

　　さりとて神というヤツに祈る訳でもなく

　　己の卑小な運命が　自身の手には負えない波風になす術なく翻弄されるのを

　　そんな事態の行く末を呆然と佇みながら

　　ただなすがままに身を預けるより他に術がなかった……

　　そう　あの時もまた







　――あれはくだんの聖人の暦において、△□○×年の事であったか。
　私は旅路の途にあった。

　ある種の意味での罪人である私にとって、旅とはおおよそ気楽なものであった。
　道行での飯の種の不安さえついて回る事がなければ、の話ではあるが。

　しかしこの時はいつもと勝手が違っていた。
　いつもは町から町へと渡り歩き、さながら根無し草のように、その集団の煩わしさというのに嫌気がさしたら気ままに移り歩くのを旨としていた所業の身であったが。

　無論、根無し草の渡り歩きなど、真っ当な人間のする事ではない。
　というよりか真っ当な定職も就く事も適わないこの状況、行商か旅芸人のような特殊な異能者でもない限り、もしくはそれこそ托鉢の巡礼僧でもない限り、それをやろうと思ってもそうそう適うものではない。
　もしくは人の道を外れたそれを生業とする者。

　ここに懺悔するならば。
　私は後者であった。
　つまりは喰ってゆくためにありとあらゆる事をして……それを可能にしていたのだった。
　私とは、そういう卑しき部類の人種であった。

　ともあれ、新しい町にやってきては何らかの手管を用いて（方法は状況にてまちまちであったが）、自らの身に危険を察したら尻尾を切り離したトカゲのように、振り返る事もなく、一目散におさらばする。
　そしてまだ顔を覚えられていない場所へ、町から町へと。その道先もただあてもなく。
　そういう稼業であったのだが。
　この時は、珍しく目的地を定まった上での旅であった。

　私が目指してる目的地。
　私が苦手としている煩わしい世俗から遠く離れた場所であることは間違いないが。
　一般に、神の家、その道を修めんとする者達の永久居住区、そう言われる場所である。
　地上にいながらして天上の王国の再現を図ろうとせんとしたそれ。
　僻地の修道院。「神聖」の住まう所。

　生まれついての罪人であり、今や自他共に認める実質的な罪人である私が、かような一見して無縁とも思える場所、罪深い私にとってはその存在自体が牢獄であるかのような神の家にこうして自ら足を運ぶことになる日が来るとは。
　私自身、驚いている。
　どういう経緯でそういう事になったのか、それを説明するためにはこれよりさらに時間を数ヶ月遡る事となる。



　あの日は折から来る季節風に乗じて、激しい風雨に夜っぴて晒されていた。
　その時もまた私は同じように旅の途上の身にあった。
　ある理由から私は長い事同じ町に滞在するような事はない。ちょうどその時も『一仕事』終えたために、早いところその場を後にせんがためにそれまでいた町を離れ、夜中にも関わらず陰に紛れて次の町へと足を向かわしてた最中であった。
　特に今回と状況が違うのは、その行く先が特に決まっていなかった事だ。
　『ある目的の町へと向かう』のが目的というよりかは、『今までいた町から離れ去る』事自体が、その行為の本来の意義であったからして。

　だから普通の旅人ならば一日出発を延ばすだろうこんな悪天の日であっても、私にとっては好都合。
　むしろ、そんな日の闇夜の方が人目につく可能性も少なくて済む。

　そんな豪雨の降り荒ぶ道の途中。
　私はある馬車が土砂崩れに巻き込まれ、土砂の中で埋もれているのを発見したのだった。
　
　こういった場合、思う事は二つに一つだ。
　この面倒事が、自分にとって幸いなものか、または面倒事以上の何物でもないか。
　この場合……後の結果からすれば、その両方であったと言えなくもない。

　しかし私のような卑賤な身の者がこの辛辣な世で生き伸びて行くためには、何事をもいつこのように訪れるチャンスを逃してしまってはとても叶うものではない。仮にそれが悪運を招く事態へ繋がる可能性があったとしても、好転へ変えねばとてもこの先やってけるものではない。
　さっそく覆い被さった土砂から覗く馬車の一部分を観察すると。
　そこには貴族のエンブレムらしき姿が見受けられた。
　………これはひょっとすると、ひょっとするぞ。
　
　私の嗅覚がそれと嗅ぎ付けたら、もぅ逃さない手は無い。
　金持ちの貴族ならば、幾ら他愛ない物見遊山とは言え、当然身につける金目の物をある程度は備えてるに違いなく。
　私としてもだ、それだけでも回収出来れば、わざわざ危険を犯してまで『あのような仕事』をする必要もなければ、数年は遊んで食っていけるやもしれんのだ。
　真っ当な人間なら、「何を人の不幸に……」と私の卑しい行いをなじり、恥を強要させるところだろうが。
　バカ言っちゃいけない。飛んだお笑い草だ。
　私のような文字通り身も心も貧しい卑賤の者にとっては、そんな事はおよそ関係がない。
　そんな事を言っていられるのは明日喰う物にも寝る所にも困る事のない、恵まれた連中達の贅沢な良心ごっこというものさ。
　それが良いか悪いかなんて判断なんぞ、余生が確立された身の上になって初めて、ベッドの上でくつろぎながら悠長に考えればよろしい。
　それまでは、生き残るためには何がなんでもして生き残らねばっていうのが、何よりも神に与えられた使命ってものさ。

　して、人の不幸を悼むどころか、これぞ僥倖とむしろ口笛を吹きながら、横倒しになった馬車の上によじ登り、土砂を払いのけて側面の扉を多少の覚悟を持って開け放った私だが。
「ひあっ」
　扉を開けたると同時に、何者かの呻き声を耳にしたのは同時だった。
　そして、まるで墓所より蘇った地獄の亡者のように、開いた扉から手を上に伸ばして来ており。
　私は思わず仰け反った。

「………っ」
　苦悶の表情をしながら、男が私の方を睨み付けた。
　その身形からして、恐らくこの御者を含めこの馬車に乗っている人間の中で一番身分の高い人物だという事は推察できた。
　年齢からしてみれば、三十代後半辺り。そろそろ中年にさしかかろうとしている年頃だろうか。

「大丈夫ですかぃ、旦那」
「……御者は？」
「見ての通りの有様で……」
「そうか………。どうやら、何とか無事だったのは私だけのようだ」
　見ると、他の従者らしき二人は、一人は首の骨が奇妙に折れ曲がり、もぅ一人は頭を酷くぶつけて片目の玉が孔（あな）よりひん出ていて垂れ下がっており、見るからして望みがない事は一目瞭然だった。

　さて。ここでまた一つの選択が迫られる。
　この男を助けるか、助けないか。
　見てのところ、男は重体まではいかないが、流石に突然の予期せぬ馬車の横転により、ところどころを酷く打っていて一人で歩くのもままならない有り体に見える。
　つまり、私の言う選択とは。
　もし膂力に自信のある者ならば、の話であるが。
　奪うか、救うか。そういった選択、という事だ。

　もし私がそれに自信があるのだったら、やはり前者を生業のレパートリーに加えていたやもしれない。
　しかし、私の体型その他、生来の諸々の問題から鑑みるに、それは得策ではない。
　それよりも、ここで恩を売っておき、謝礼の一つでも………と考えた方が、例えここで持てる全てを奪ったとしても、より多くの実入りを生む可能性も無きにしもあらず、だ。そこは賭けになるが。
　それにこの死に損いを黙らせて馬車内をこの暗さの中物色するよりか、この男を引きずり出すなりなんなりして早くにでも去らないと、この状態では再び発生した崩落に巻き込まれる危険もなくはない。
　迷っている余裕はない。
　こうなっては、一生懸命引き摺り上げたこの男を何とかして自分の家へと送り届け、それなりのものを戴かない事には間尺に合わないというものだ。

　ということで、結論は出た。
　私はこの貴族の男を非力ながらも、何とかして引き摺り上げた。
　そして、再び崩落が起きない内に、連れ立って大急ぎで馬車から離れ去る。
「……おおっ！？」
　と、同時に。
　再び土砂の崩落が始まり、馬車は流されたまま、谷底へと転落していった。
　実際、危なかったのだ。

　その様を見、思わず安堵の息を漏らしながら、私は一人では足を挫いて歩く事の出来ない、この御仁に肩を貸しながら歩いて行った。
　隣町までどの位あるかは分からないが、何せ深夜で、この嵐である。
　このまま豪雨の中で無駄な助けを求めているよりかは幾分かマシというものだろう。

「そういえば………まだ礼を言ってなかったな………ありがとう」
「…………」
「……危うく君にまで危険が及ぶところであったな。申し訳ない。何と言ったらいいものか」
　確かに危ないところだった。だがしかし………
　私はその時、一体どうしてそんな事を言う気になったのか分からない。
　ふと、気がつけば私はこんな事を口走っていた。

「へへ………旦那は。やつがれがそんな親切心から、旦那を助けたとお思いで？」
「……？」
　貴族の男は、予測しなかった言葉に怪訝な顔をして問い返す。
「というと？」
「もしかしたら、どんな気の迷いで私がいつ追い剥ぎに化けるか、分かったモンじゃないですぜ」
　そう聞いた途端、男はそこで初めて私の見てくれまじまじと観察したようだった。
　そして、笑った。
「………ふっ、確かに。
　でも、事実。君はこうして私を助けた」
「それも、何かの腹積もりがあっての事かも知れないですぜ」

　今度は私は笑みを漏らさず、真顔で言い放った。
　そうして、相手の顔色を伺った。
　普通こんな夜陰の中、出会い頭に私のような顔に出くわしたとしたら。恐らく十人中九人は驚いて逃げ出すやもしれない。
　自慢じゃないが………いや、それは皮肉にしかならないのだが、それだけの自信が私にはあった。
　顔だけではなく、見てくれも十分に怪しいだろうから、普通の人間ならこんな状況下ではない限り、まずは怪しんで然るべきだから。
　そんな中、敢えてこの状況でそんな事を言ってみたら。
　この世間を知らなそうな人のいい御仁は一体どんな顔をするのであろう？
　ふと、そんないたずら心が浮かんで来た途端。
　私は後先の事も考えず、ついこの言葉が口を吐いて出ていたのである。

「………はは。君は中々面白い事を言うな。
　というよりか、この状況だ。信じるより、他あるまい」
「そうですよねぇ………通りがかったのがどっかの柄の悪い連中でなくて、旦那はついてまさぁ」
「そうだな」
　この貴族の中年男は、そうして一人笑った。



　しかし、一体どうしてこうなったのか。
　私の心積もりは大きく外れた。
　当初、私の予定では、男の身の上がどうであれ、それ相応の礼の証さえ戴けたら、つまりは貰えるもの貰えたらそれまでの付き合いだと思い込んでいたし、そのつもりだった。無論、ふんだくれるだけふんだくる心算ではあったが。
　そのつもりでしたし、相手もそのつもりでいるのだと思い込んでいた。

　むしろ、このような人の良さそうな金持ちといえども、幾らああいった特殊な状況下で約束事めいた取引をしたところで。
　状況が変わればいとも簡単にそんな事はなかったかのように反故にしてしまう、そんな人間の浅ましさを知っていため、いざとなったら支払いを渋りやしないだろうか………と。この男を連れて行く途中も、実はその心配事が頭から離れないでいた。
　しかし、この男が謝礼の代わりに口にした事は。

『我が屋敷にて働かないか』
　………と、いう提案だった。

　私は戸惑った。
　そんな事思いもよらなかった。
　正直言えば。貰う物をさっさと貰って、面倒事には巻き込まれず、さっさとおさらばしたかった。
　しかし。

『ここにいれば毎日寝床に困らないどころか、恐らく流れの君にとっては大層なものが食えるぞ。何、仕事も大したものじゃない』
　貴族の旦那は、そう言った。
　やはり、この言葉が私の後ろ髪を引かせた。
　幾ら気ままといえども、それは飯と寝床に困らなければ、こそだ。
　実際はそんな気楽なものではなく、腹が減って悶える日々が続けば、生業上、つい人気が気になって睡眠も十分ままならない。
　『仕事』が失敗に終われば、私の命がそこで尽きる危険が常に付き纏うのは説明するまでもなく。
　そんな私に、飯と寝床にずっと困らない環境が。しかも、そこは金持ちの貴族の屋敷と来ている。
　こんなチャンスなんぞ、恐らく今後訪れる事はあるまい。
　というか、普通に貧困に喘ぐ者からしてみれば垂涎を滴れさせながら飛びつく話に違いない。

　しかし、そうなると、ここで働くという事は。
　慣れない人の輪の中の生活を強いられる。
　それはずっと人を避け、流れて生きて来た自分にとっては不得手としているものだった。
　元来、私が抱えている宿業の意味からしても。
　
　ところが、この人でなしは。
『一つ言い忘れていた。
　別に、ムリというならいいのだ。ただ、君の目にはどう映るか分からんが、ウチも君が思っている程余裕があるではないのでな。
　助けてくれたお礼に何か、とも思ってはみたが、さりとて代わりに差し上げられるものもないのだー。
　で、あるからして、せめてこんな形でしか、という訳でな』
　と、開き直ったように言い放ったのであった。
　つまり、直訳すれば。
　出て行くならそちらの自由で勝手にすればいいが、その際、ビタ１ペセタ（＝金単位）とて渡せんと。

　こうなると、もぅ私に選択の余地はないと思われた。
　あの苦労をして、全てが無駄だったとは思いたくはないし、認めたくはない。
　しかし、実際はそうしてしぶしぶその屋敷で働いてみると。
　この男の言ってた事が、まるで大嘘であった事が分かった。
　このいけすかない貴族の旦那は、実際はくだんの暗黒大陸との貿易船に手を出しており、結構なやり手だったのだ。
　にもかからず………この仕打ちとは。
　納得がいかない。クソ、あの忌々しい業突く張りめ。

　そして、やはりというか。
　私はその屋敷にて、どうしても周囲と上手くやっていく事が出来ずにいた。
　天はここに来ても私を見放していた。
　執事の言う話には、この旦那自体は何とか私を上手く使おうと思ってくれていたらしいが………私の見てくれからしておよそ金持ちの屋敷とは似つかわしいそれだ。まるでその事を気にしようともしない主人とは異なり、周囲の使用人達にはことごとく奇異の目で見られ、さらに主からの特別扱いが気に入らない者達から、直接的にも間接的にもそれ相応の手厚い礼を受ける事となった。
　さりとて私とても望んでなった身の上ではない。
　周囲の合わそうとする気もさしてなく………細かい諍いは後を絶たなかった。

　仕方がないので、本来の自分のあるべき姿を思い出し。
　折角のこの状況。ある程度金目のものを拝借して、夜中こっそりお邪魔しようかと思ってたその頃。
　再び、あの御仁から声がかかった。
　それは、また一つの提案とでも言うべきもので。
　それこそが、今回、私が今向かっている行き先に他ならなかった。という訳だ。



「…………」
　私は思わず、後ろを振り返った。
　今、行き先の簡単な地図と、その目的地の名前が記された紙が手にある。
　その目的の場所には、『ルモンド修道院』という言葉が書いて○がしてあった。基本的に私は言葉というヤツを読めないが、この位の名前なら、辛うじて理解できる。

　修道院……？
　一体どういうつもりだ。
　私があの御仁を救った時に語った言葉。
　その時の笑み。
　その意味が、一体どういうものであったのか。

　修道院だと……？
　あのいけすかない坊主共の寄り合いか？？
　神父というもの。卑賤の業にて口に糊している私にとってすれば、火と油の仲に等しい。自ら監獄に飛び込んで行くようなものではないか。
　どういうつもりかは知らないが、誰が好き好んでこんな………
　街の教会ならばまだ分かるが、人里離れた修道院など、その話にしか私は聞き及んだ事がない。
　私のこの歪んだ卑しい精神を正そうとでも思ったか？　一体全体何様のつもりなのだ。

　幸い、あの貴族からは旅の費用には、十分過ぎる程の手当てを貰っている。
　実際、何度引き返す………というか、このままとんずら決め込もうかと思ったか知れない。
　しかし、だ。
　まだそれがどんな所かは行って見なければ分からないのは確かだ。
　前述した通り、いかなるチャンスをも逃さない心構えでいない限り、とても生きてゆけたもんじゃない。からして。
　行ってみて、やはり下らない所であれば。そのままあるもの戴いて退散するつもりでいいではないのかな。
　ともかく、そういった心積もりで、私はその場所へととりあえず歩を進めていた。

　………しかし、本当にそうだろうか？
　自問自答が、ふと私の足を止めた。
　私は、どこか気まずさを感じていたのかもしれない。
　私はただ相手の命を救ったのは善意からではなく、あの言葉の通り、金の成る樹だと思ったから、そうしたまでだ。
　にも関わらず、あの御仁は私を疑おうともせず、幾ら命の恩人とはいえ、どこぞの怪しい身の上か分からない自分を招き入れ、使用人にまで取り立ててくれた。どこぞの怪しい泥棒紛いを自ら好んで招き入れてどうする、そんな声もあったに違いない。
　私がなぜだかどこかしら負い目を感じてしまうのは、その折角のチャンスを与えてくれた御仁の想いに応えられなかった上に、また機会を与えてくれたからだろうか？

　…………。
　まさか。そんなバカな。
　そんな負い目を感じる必要がどこにある。

　私は、正当な取引をしたのだ。
　いかにも金持ちの考えそうな事ではないか。
　それで天国行きの免罪符が買えるというのなら。安いものなのであろう。

　恐らくあの御仁は。もぅこの地上では手に入れるべきものは手に入れ、先行き何の不安もないのだろうが。
　そんな金持ちでも唯一、この地上での役割を終えたその先での事は。
　保険を置いておかない事には………不安を消す事が叶わぬらしい。
　それより実際は。
　その地位と財を手に入れ、保持してゆくために。一体何人もの貧しい者を泣かし、弱みに付け込み、ついには罪人へと走らせたのか。
　つまりは今となって、懺悔の気持ちの表れが、一見して納得のいかない不可解な行為である、これだ。
　天国への片道切符を買うためのダシとして、使われたのだ。私は。
　でなければ私のような者をわざわざ。

　善の羊の皮をその身に纏う。例えそれは自己満足に過ぎなくとも、それはさぞや本人にとっては気持ちのいいものなのだろうか。
　あまつさえこやつは。本当に自分のことを善人だと思って疑わないのであろう。
　私の見てくれを見て哀れにでも思ったか？
　ふん、精々そのつもりでいるがいい。
　私は礼なんぞ言わんぞ。
　勿論、表向きはいかにも従順で幸の薄い、哀れな迷子の子羊を演じようではないか。

　利用できるものならば何でも利用しない手はない。
　未だ脈打つ我が卑しい心の波動が、それを良しと言っている。
　負い目を感じる必要など、何一つない。



　一時の迷いは一応の結論を得て、私は再び歩みを開始した。
　道の途中で行商人に聞いて、修道院に到る目印となる村が近くにある事を知った。
　こうしてみると、この修道院は随分と辺鄙な佳境にある事が分かる。
　あの御仁の屋敷のデカさからして、巡礼の対象になりそうな、結構な規模のモノを一瞬想像してしまったが………やはりただ面倒臭くなったから体の良いお払い箱、という事なのかもしれん。
　そう思うと不思議と逆に気分が楽になってきた。
　そうして歩いてると一人の老いた農夫が、道端で休んでいるのを見た。
　恐らく地元の人間に違いない。私は道を尋ねて見る事にした。

「おぃ、爺さん。カディルニーソという村（勿論仮名だ）を知らないかい？
　ここら辺にあるのを聞いたんだが――」
「……おぅ、それなら次に見えて来るのがそれじゃよ。ワシは隣村のモンでな」
「そうか。ありがとよ、爺さん」
「…………」
「………なんだ、爺さん。じろじろと」
　気がつけば、この老いぼれは。
　まるで妙なモノでも見たかのような目付きで人の顔を遠慮もなく眺めている。
　そうして出て来た言葉が。
「お主、面白い顔してるのぉ」

「………よけーなお世話だ」
　なんだ、このジジイは？
　私は長旅の疲れで少し苛立っていたのかもしれない。
　急にこの通りすがりのジジイが、人一倍疎ましく思えて来た。

「………んんっ？」
「な………なんだ」
「う～む………見れば見る程……。
　………面白い顔しておるのぉ（笑）」
「………っ」
　ジジイ………っ。
「ふぉっふぉっふぉっ。………おや、その顔は」
　………なんだっ。
「もぅ何べんも同じような事言われてウンザリといった顔じゃな………ふぉっふぉっふぉっ」
「………っ！」

　今からでも遅くはない。やはり私はこのまま追い剥ぎに転向した方がいいのだろうか？
　………待て待て。こんな耄碌ジジイを相手にしてもしょうがない。
　そんな事をしたら、折角の長旅が終わろうとしているのに台無しだ。
　しかし………私は市井の人間というヤツには悉く忌み嫌われる宿業の身であるが、妙にこういった爺さんなどに時折懐かれてしまう所があるのだ。困ったモンだ。
　だが、私は逆にこういったしたり顔の爺さんが嫌いだった。
　毎度、毎度。うっとおしい。
　なんで、こう後は余生を過ごすだけのこういったジジイは、毎度毎度上からの目線で何でも達観しているかのように聞いてもいないのに自ら語り出すのだ。

『ワシは人生の酸いも甘いも総て何でもお見通しだぞ。
　お主、そんな若さで世の中を分かってるつもりというなら大間違いじゃ』

　そう、もっともらしくのたまう事自体が、まるで目的であるかの如く。
　さぞ自分が先に歩んだ道を後からやって来た後進達に対して、偉そうに自己満足の説教を垂れるのが、先達の者としての使命と勘違いして思い込んでいるかのように。
　そのクセ、若さに嫉妬しているのか。妙に張り合う時もあり。
　想い出ばかりすがって、亡霊のように生きてるところも大嫌いだ。

　お前さんの想い出話に興味がある者なんぞ、本当は誰もいやしない。
　皆、ただの哀れな老いぼれの耄碌事と思って、お情けで聞いてやってるだけだ。
　さっさとそれらをお土産に墓場に向かってくれやしないか。もぅ十分あんた等生きたんだから、思い残す事もなかろう。

「………ふん」
　相手にしないで立ち去ろうと思っていたその時。
「あんな村にわざわざ何の用なんじゃ？」
　また面倒にも後ろから声を掛けられた。
「その村に用っていうかな………近くに修道院があるって話じゃないか。用があるのはそこでな」
「修道院……？　お主、あの修道院を知ってるのか？」
　爺さんは意外そうな顔付きでそう言った。

「知ってるというか………私も良く分からんのだがな、そこ」
　私は正直なところを語る。
「へぇ………お前さんのようなモンがねぇ」
「……？　そりゃ、どういう意味だ爺さん」
　私は爺さんの意味不明な発言が少し気になった。
　この顔の事を言ってるのか……？
　その時私は、まだその言葉の真意が分からなかった。


　その爺さんの言う通り、その村は爺さんと別れてから、暫くすると見えて来た。
　しかし。
　村は見えども、問題の修道院は一向に姿を現さない。
　あるのは、森とその裏一面にだだっ広く広がる大きな山脈だけである。
　おかしい。ここではないのか……？　あの爺さん、やはりいい加減な事を。
　私は近くで畑仕事をしている婆さんに聞いてみた。

「おぃ、婆さん。カディルニーソという村はここかい？」
「…………。そういうお前さんは？」
「ここ………なんだよな？」
「……そういえばそうなる。が、こんな辺鄙な所に一体何のようだい」
　なんだ、そうならそうと素直に言いやがれ。
　妙な物言いをしやがるな、と。私は怪訝に感じた。

「やはりそうなんじゃないか。この近くに修道院があると聞いたんだが……」
「ハテ………修道院？とな」
「確か名前が………そう、ルモンドとか言うヤツだ」
「………そんなものあったっけねぇ」
　一体ボケているのか、それともそのフリをしているのか……？
「…………。おぃおぃ、とぼけるのはやめてくれよ。こちとら長旅で疲れてるんだ」
　私はウンザリしながらそう言うと、開き直りというか、はたまた逆ギレとでもいうのか。
　この婆さんは逆に眼光鋭い目付きで、眉をしかめながらハッキリと言い放った。

「ではハッキリ言おう。そんなものはここにはありゃせん。
　なんか、アンタ聞き違いでもしたんじゃないのかい？」
「………あ？　だってここがそのカディルニーソなのだろう？」
「さてね」
　………くっ。
　いかん。ラチがあかない。
　誰でもいいから道を尋ねようとは思ったが、変なのに当たってしまったようだ。　
　どうするか……？　とりあえず、他の人間を探すしかないか。
　そう考えていると。
　……？
　私はふと、ある事を思い出した。

「おぃ、婆さん。一ついいか」
「…………」
「ジェフボーベン………という名前は知らないか？」
「………。お前が？」
「あ？」
「まさか。何かの冗談だろう」
「……知ってるのか？　そのジェフボーベン卿から教わって来た者なんだが」
「…………」
　今度は婆さんの方が神妙な顔付きをする番だった。
　私はあの御仁に言われていた事を思い出していた。
　カディルニーソという村に行き、修道院の名を出す時。こう言うのだ、と。
　『ジェフボーベン卿から教わり、招かれた』と。
「………アンタがねぇ。あの旦那の物好きにも呆れたモンだ」
　そうすると。
　ブツブツ言いながら婆さんは一人歩き出したのだった。
「おい……」
「着いて来な。その修道院とやらに続く道へ案内してやるよ」



（………おぃ、どこが登って直ぐなんだ！）

　私は村の婆さんの言う事を真に受けてしまった自分を呪った。
　目的のルモンド修道院とやらは、どうやら村の裏の森に続く山道を登った所にあるらしく。
　相変わらずここからは姿は見えなかったが、
『なぁに、この道登って直ぐさ』
　確か、そう。婆さんは言ってたハズだったのに。

　『真に受けてしまった』というからには、つまりは当然行けども行けども着く気配が感じられないから、であり。
　あの婆さんにしてやられたのか………とも、ふと思った。
　それともこんな片田舎に住んでいると、あののんびりした時の流れからして、こんな山道でも『直ぐ』の感覚が身に着いていて、街に住んでいる連中のそれとは異なるのだろうか？
　幸いな事は、道がひたすら一本道で迷う事はなかった点だ。もっとも、それもあの婆さんに唆された訳でなければ、の話だが。

　事実、かれこれ一時間は、こうして登り坂をひたすら登っている。
　長旅もようやくこれで終わりと思っていたのに、これだ。
　ここに来てのこの登り坂は流石に神経に堪える………一体どの位まだ先があるのか分からない不安が気力を萎えさせる事もあり。
　いい加減喉も渇いて来た………こんな事ならあの村で水の一杯でも貰っておけば良かった。
　どこかに山の湧き水など流れてはいないだろうか………そう思ったその時。

「………？」
　涼気とでもいうのだろうか。
　私はひんやりとした水の気配を感じ取った。
　ふと周りを見渡すと、それまで鬱蒼とした密林層が広がる中、右手の方だけ層の薄い空間が広がっており。
　目をやると、水辺が広がっているのがその理由だった。
（沼だ……）
　見ると、そこで行き先は二手に分かれており。
　道の作りからして、恐らく左手が修道院へ続く道であろう。
　しかし、その前にこの沼で水の一杯でも飲まない事にはやっていけない。
　迷う余地などなかった。
　私は九死に一生を得た生還者のように、活力を取り戻し、水辺へと歩みを急がせた。

「………っ」
　そうして、沼の淵までやって来ると。
　有無を言わさず、両手で掬い上げ、それの喉の奥へと流し込んだ。
　こ………これはっ。
（ンマーイ！）
　普通なら川の水ならばいざ知らず、沼の水は腹を壊す危険性があるから旅の途中で見かけても、口にするのは気をつけている私だが。
　流石にこんな山奥の沼の水だけあって、見事に澄んで清らかな質の真水であった。
　恐らくこの沼自体から湧き出ているものがあるに違いない。

「ふぅ………」
　喉の渇きが癒され、正気に戻ったその時。
　ふと、人の気配を感じ取った。
「…………」
（………なっ）
　私は驚嘆した。

　先客がいた。
　いや、別に水を飲みに来ていた意味において、先客ではない。
　女だ。
　しかし、ただの女なら別にここまで驚かない。
　女はものの見事に衣一枚纏わず、生まれたままの姿でそこにあったのだ。
　そう、女はこの沼で、人知れず水浴びに興じていたようだった。
　しかも、若い娘だった。

　しかし。
　幸いな事に、その娘は水浴びに夢中なのか、まだこちらの存在に気付いていないようであり。
　自分の視界に入らないからには、まさかこんな所に誰かやって来るとは夢にも思ってなかったのであろう。
　その事を理解した私は、何とか相手に気付かれぬ前に、この場を立ち去ろうと思った。
　遠くから覗き見るだけならいざ知らず、この状況はよもや誤解されてもいか仕方ない状況である。面倒事はゴメンだ。
　そう思って、抜き足差し足、何とか音を立てず気取られないように、後ずさりしながら場を去ろうと試みた私であったが。

「…………」
　それにしても。
　なんて美しい娘なのだ。
　緊張の一方で。否応なしに私の眼前で視界に入って来る光景に目を奪われなかった、といったら嘘になる。
　均整の取れた身体に程よい豊かな膨らみ。流線に揺れる凹凸。
　金色の長髪が、水と木漏れ日の光を受けて、キラキラと水面と共に輝きを放っていた。
　天から人知れず舞い降りてきた神の御使いが、ここで疲れた羽根をしまい込み、一時の休息を取っているかのようだった。
　はたまたこんな天気の良い時にだけ、ひっそりと人気のない所へ現れる、神話に描かれているような森の妖精の化身か。
　物音一つ立ててしまえば、または風が吹けば飛んで消えてなくなってしまうかのように、まるで夢でも見てるかの光景だった。

　や、何を私は見惚れているのだ。
　早々にここを立ち去らないと、このままでは厄介事になる。
　しばし呆然としていた自分を戒めたその時、
「あ」
　なんの前置きもなく、突如若い娘は振り返った。

「…………」

　思わず、目があった。
　私は、突然の事に、その場に凍りついた。
　何を語ればいいのか、何をすればいいのかまるで分からず。
　頭は真っ白になって。思考が全停止していた。
　娘の方といえば。
　引き込まれそうな大きな碧い目で、じーっとこちらの方を注視している。
　叫び声一つ上げる事もなく。
　私はただたじろぐより、他ならず。
　この状況で、一体何をどうすればいいのか分からずにいた。

　ひゅぅぅぅぅぅ
　その時、一陣の風がこの山中の沼地を吹き抜けた。
　が、私はそんな瑣末な事を気にしている余裕など全くなく。
「……あ」
　娘の方こそが、これを合図に、この緊張の膠着状況を打破した。
　突如、何を思ったのか、水辺より上がって、私の方に向かって来たのだ。
　生まれたままの姿で。

　私は驚愕した。
　実はこの時。
　娘は自分が着てきた衣服を、その時水を汲んでいた私の傍らにあった樹の枝に、水浴びの間の置き場所として、仮初めに掛け置いてあったのだった。
　しかし。それが、この時の突風によって煽りを受けて引っ掛けてあった枝より落ち。
　そして、よりによって、不運にもその風に吹かれて落ちた先が、他ならぬ私の視界の死角に当たる背後であった事を。
　この時、頭が真っ白になっていた私は、てんで気付かなかったのだ。

　当然、娘としては、この衣服を拾いにかかる。
　しかし、この時、私はこの世のものではないものを見た心地で混乱を極めていた。
　それは、この娘に何か普通じゃないものを感じ取ったからに違いない。

　一体、この娘の何が普通と違うというのか。
　そう、普通の娘だったら、まずあそこで叫び声か何か発するのが自然であろう。
　そして、自分の裸を覗き見られていた事を意識し、自身の肌諸々を努めて隠そうと。恥じらいの表情を浮かべたりなんぞして。挙句、そのまま目も合わせようとせずに、一目散に遁走したりなどと。それが一般に正常な反応だろう。
　しかしこの娘は違った。
　自身の御肌をまるで隠そうとしないばかりか。
　この危険な状況で覗き見ている（断じて私はそのつもりはなかったが、私が相手の立場ならばそう誤解するであろう）相手、不審者に対し、逃げるどころか何を血迷ったのか、そのまま向かって来るのだ。
　生まれたままの姿で。

　――っ！？

　私は腰を抜かし、その場にへたれ込んだ。
　やはり、私はこの世のものではない、見てはいけないものを見てしまったのだ。
　もぅ生きてはいられないのかもしれない。
　魂を抜かれるかのような心地とは、このようなものか。
　加え、何より。
　恥ずかしながら。ここに告白をすれば、こんなにうら若き美しい娘の裸体をまじまじと注視・観察する機会なんぞ、今までこの歳までなかったからであるからして。
　だからして。
　ともかく、そう、アレだ。アレなのだ。大混迷を極めたのだ、とだけ言っておこう。

　一方、私がこんな錯乱状態にあるというのに、娘の方は到って平然としていた。
　後ずさりしながらたじろく私をよそに、娘は淡々の歩みを進め、私の目の前までやって来ていた。
　生まれたままの姿で。
　そして。

「きゃあっ」

　よりによって。
　私の眼前で、倒れ込んだのだ。
　勿論、今さら説明するまでもなく、生まれたままの姿で、だ。
　向こうも向こうで平然としながらも気を取られていて、足元に生えていた草の絡まりに気付かなかったらしい。
　当然、娘の身体は体勢を崩して………倒れ込んだ場所は、ちょうど私の。
　勿論の事、その時の彼女といえば、生ま（略）。
　咄嗟に身体を起こした相手を、そのつもりはなくても直視してしまう。
　私の眼前には、女のみずみずしい夢の大陸が広がっていた。

　真っ当な心身を持ち主である若い男だったのなら。
　有無を言わさず、飛び掛って雪崩のように絡み合う格好のシチュエーション＆チャンスであっただろうに。
　だが哀しいかな。私の経験の無さから、その動物的本能こそ押さえられないで、痛い程に素直な反応を余儀なくされているのにも関わらず、私の動物的本能は理性と顔を合わせてどうすればいいのか、怯えるようにただ戸惑うより他になかった。
　蛇に射すくめられた蛙のように、その場に凍りつくより他に。




　　ついぞ今でも分からない

　　生まれながらの罪を背負わされた私に

　　意地の悪い気まぐれな神が　おまけの一日を与えたとでもいうのか

　　その思惑のことなんぞは

　　最悪の私の前に　突如天使が舞い降りた

　　羽衣一つ纏うことのない　天より授けられた無垢の魂が

　　燦々と輝く太陽の化身が………












　　　　　〔ソレイユ　～私の太陽～〕（※オープニングタイトル）












**[[　→オープニング後編へと続く&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/51.html]]    </description>
    <dc:date>2009-01-08T01:49:04+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/51.html">
    <title>ソレイユ～私の太陽～【オープニング・後半】</title>
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    <description>
      「すみません、私の服が………」
「え！？」
　私はそう娘に言われ、ようやく状況を理解した。
　何事もなかったかのようにそそくさと回収した衣服を着直すこの娘に、この気まずさを紛らわすためにも（娘は何も気にする様子も見せなかったので、もっぱら私が自分に対して、だ）私は目的地の名前を思い出したかのように尋ねてみた。

「その修道院でしたら」
　と、娘は言った。
「ご案内差し上げますわ」
　そうニコリと微笑んで、やにわ山の方に向かって歩き始めた。
　やはり、先ほどの左の道を登って行って正解だったようだ。

「旅のお方ですか？」
「えぇ………まぁそうのような者というか、そのような者だったというか」
「？」
　娘はやはり先程の事をまるで気にしてない事が、その落ち着いた様子からも見て取れた。
　私は尋ねられてもないのに、自らその時喉が渇いてあの沼で水を飲んでいて水浴びをしていた事に気付かなかった事を弁明した。
　何やら向こうが気にしてない事をこちらからわざわざ説明するのは、恥の上塗りで気が引けなくもなかったが。
　娘はやはりその事にはさして気にも留めなかったようで、逆に私が旅の者だという事を話したところ、珍しそうに幾つか旅の上での事を好奇心より尋ねられ、私はそれに応じた。
　どうやら、旅人というのが珍しいようだ。ここには余り尋ねて来る者も少ないのだろうか？

　そんな風にしながら。
　それから二十分位歩いたであろうか。
　鬱蒼とした森の小経を練り歩いた先に、ふと、視界が開けた。

「こ………これは」
　こんな所に………。
　まるで神の手によって隠されていたように、その修道院は突然全貌を現した。
　なるほど、山麓からは山と森とに上手く隠れてその姿を消している。
　場所柄からして、あの村人の対応からして、恐らくそれが意図的なものである事が伺え知れた。
　その貞淑さにより、存在自体をひた隠す未亡人のように。
　飾り気はないが、素朴で純然な美しさを備えた、こじんまりとした建物であった。
　かといって小さ過ぎる事もなく、隠れ里の修道院と言う事を鑑みれば、突然こんなものが山奥の森の中から表れ出たら、実質以上の偉容な心証をもってその目に焼き付いても不思議ではない、その位の規模は備え持った中々立派なものと言えるのではないだろうか。

　正門より院内に入ると。
「あ！　やっと見つけた」
　と、いの一番に一人の小娘が私を案内してくれた娘に対して声を掛けて来た。
「ソレイユ………もぅ、急にまたいなくなって何所に」
　やにわ私の存在に気付き。
　その顔を見るなり頓狂な声を上げる。
「………うわっ」

　…………。
　聞いたか。
　今。うわっ、て言いやがったよ。この小娘。
　なんてストレートな反応。しやがる。

　私のようなむくつけき者を見た時。
　人々の反応はそれぞれだ。
　その反応によって、その人の人格、はたまた本性が浮き彫りにされるものだが。
　………とはいえ、ここまでのあからさまな反応は久々だ。逆に自虐の魂を揺さぶられるではないか。

「ふ～ん………」
　人の顔を腫れ物に触れるかのような目付きで、じろじろと心なしか遠目に。
　妙に、見下されてる感がするのは気の所為か。
「僧院長が呼んでいたわ」
　やがて興味を失したかのように、本来の用件を娘に伝えた。
「そうですか、私も今この方をお通ししようとそちらに向おうと思っていたところです」
　そのまま用が済んだとばかりに、どこぞへと走り去ってしまった。
「…………」

　また二人になり。
　大体は程度は予測していたが、思った事をそのまま問うてみた。
「もしや、貴女はここの方だったので？」
「えぇ。今、我が修道院の長にご案内しますわ」
　なるほど。まぁ、その格好からして、そんな気もしないではなかったが。
　そして、私はこの時、あの小娘が言ってた事を思い出していた。
　そうか、この娘、名をソレイユというのだな。



　それから。私はこの修道院の院長と思しき者の謁見の間に通された。
　驚いた事に。
　ここの僧院長とは、初老の女であった。
　いや、考えてみればさして驚くにも値しないだろう。
　幾ら修道院とはいえ、女性も対象にしている僧寮であれば、その僧長はそれ相当の歳の女性であってもおかしくはない。
　私を案内した僧が女であった事からも。
　いや、それよりもここで語るべき問題は……。
　私は、妙な不安交じりの違和感を感じていた。

　私がジェフボーベン卿によって紹介された旨を告げると。
「………あー」
　………と。
　予め話が言ってたのか、そうでなかったのか、想い出したかのように、記憶の糸を探っている様子だった。
　仕方なく、その書簡を要求されたために雑嚢より取り出し、それを見せると。
「ふっ」
　と、この初老の僧長は一笑した。
　そして、
「全く………」
　と、今度は独り言のように、呟いた。

　一体、何が書いてあるってんだ。
　正直、旅の途中でもこの書簡の事が気にはなった。
　何度印を破って、その中身を覗き見る衝動に駆られたか分からない。
　しかし、一度印を破ってしまえば、もぅ中を見た事の証明になる。
　そうなるとこの話も反故になる可能性もある訳で………そこまでして中身を覗く理由も必要もまたないのも確かだ。

　そうして今度は人の顔を眉を潜ませ、じろじろ汚いものでも見るように観察しながら、一人で納得するように頷いてそうしていると、今度は隣の齢にして三十位の背の高い女が何かを耳打ちしていた。
　その言を聞きながら、首を縦に振ったり横に振ったり。
　一体何を話しているのか知れぬが、しばらくそうしていた末。
　やがて初老の女が端を切った。
「ようこそ、ルモンド女子修道院へ。
　遠路はるばるお疲れの事でしょう。どうやらここが貴方の旅の終着点のようですよ」

　………！？
　勿論、この修道院の名は私によって改変された偽名であるのは言うまでもないのだが。
　問題はそこではなく。
　女子修道院……？
　その時、私は薄々感じていた違和感が、すぅっと氷解してゆくのを感じた。

　なんて事だ。つまり………ここには女しかいないということか？
　てっきり、たまたま引き連れたのがこのソレイユと娘だったために、たまたま責任者の不在か何かで、代わりに女子寮に通されただけの事かと思い込んでいた。
　しかし、実際はどうやら、この僧院はそもそもが女子修道院そのものであるらしい。
　どういう了見なのだ、人が悪いのにも程があるぞ、あの御仁………

　全く寝耳に水の話だ。そんな事は一言も聞かされていなかったのである。
　人が悪いというのは、そこにあの御仁の意図的なものを感じ取ったからだ。
　それに、あの旅の途中での爺さん婆さんの反応。

『お前さんのような者が』
『アンタがねぇ』

　それでか………

　早い話が、そうと聞かされていたら、私はここに来る事を拒否まではしなくても躊躇った事であろう。いや、躊躇った挙句、結局この旅の資金を元に遁走を決め込んでいたに違いない。
　あの御仁の意図とは、つまりはそれを分かった上での企みに相違ないのだ。
　それにしても。
　どおりで、見かけたのがことごとく女しかいない訳だ………
　しかし、なんでまた私はこんな所に。

「という事は」
　茫然自失で何を言ったらいいのか分からない私に代わって、このソレイユという娘が反応を現した。
「今日から我々と寝起きを共にしてゆく兄弟という事ですか？」
「寝起きを共にする………という表現はいささか語弊がありますよ、ソレイユ。いかにも、生活を共にする主の僕が新たに一人加わったという事には違いありませんが。
　……まぁ、これも主の思し召しでありましょうから」
　まぁ、これも。か。
　まるでそうでもなかったら誰が、とでも言わんばかしの言い草ではないか。
　恐らくは、あの御仁の罪滅ぼしに多額の寄付金でも貰っていて、断るに断り切れなかったとか。大方そんなところであろう。

　ところが、ふと隣を見るとあの神秘の池で出会った娘は対照的に嬉々と満面に笑みを溢していた。
「そうですか！　我が家族がまた一人増えたという事ですね」
　まるでその事を素直に喜んでいるかのようであった。
　予想してなかった反応ではあったが、そう言われると流石に悪い気はしない。
「…………」
　しかし、気の所為か。
　この僧長の傍らに側立っている、この背の高い女は。
　この娘の無邪気さとは対照的に渋面で愛想なく、余り私の来訪を歓迎していないかのように窺い知れた。

「ちょっと待って下さい」
「何か？」
「確かにジェフボーベン卿からこちらの修道院を紹介されましたが………しかしそれが女子修道院だとは初耳だ。
　説明するまでもなく、私は見ての通り、その該当より外れた男に他ならない。
　………これは何かの間違いなのでは？」
「いや、間違いではないでしょう」
「ではどうして？」
「私も卿の思惑は量り兼ねますが………何かそれが適宜であると、彼が判断したからに他ならないからでしょう」
「…………」
　そんな事言われてもな。
　実際ここに身を置くのはアンタじゃなかろうに貴族の旦那………

「何、基本的に女子僧院ではあるが、例外もなくはない。実際、ここには貴方よりも先に一人、使用人の老夫もいますしね。
　ただ宿舎が一般信徒のそれになるだけで、後は変わらず生活して貰って結構ですので」
「しかし………男女のそれ以前に、私は僧院での生活からして」
　心配を隠せない私に対し、この僧院長は落ち着きを促すように言った。
「何、別に貴方に僧になれ、と言ってる訳ではないのです。
　貴方はここの使用人として、誰でも可能な雑用その他の庶務を受け持つだけの事で。心配はご無用」
「…………」
「とはいえ無論、ここは神の家ですから。
　貴方自身が自主的に自らの信仰を深める分には大いに結構。強制はしません」
　まぁ、そこまで言うのならば。
　ひとまずは鞘を収めるしかあるまい。
　相手がどうこうより、むしろこっちが気を使う、というだけの事だから。
　使用人用の宿舎が別にあるのなら、そんなに気を揉むハメになる事もなかろう。

「ただし」
　ここで初老の女が付け加えた。
「それでも今日から貴方も我が神の家族の一員です。
　僧まで行かずとも、我が神の家で生活を共にする身ならば、貴方にはこれより、三つの誓いを守って頂けなければなりません」
　む………やはり。

「郷には郷に……という言葉もある通りね。
　言わずもがな。ここは聖なる神の家。何か間違いがあってならぬ事は言うまでもなく」
　………つまりは言わんとしてる事は。
　ま、そう来るとは思ったがね。
「それが条件と？」
「その通り。
　三つの誓いとは。即ち、『清貧』『貞潔』『従順』。この三つに他なりません」
　ふむ………聞いた事があるぞ。
　修道院における、誓いの大三原則。それがこれか。

「一つ。清貧とは。
　我等が主、ジュジュ様はこう言われました。『金持ちが天国の門を潜るのは、駱駝が針の穴を潜るよりも難しい』と。
　言い得て妙ですね。我々にとっては与えられた命と知識の財産以外は、いやそれすら神より授けられた借り物にしか過ぎず。
　物に対する執着は信仰の妨げになる上、欲や隠し事を作る事にも繋がり。この執着を断ち切る事が、何より信仰への道の第一歩です。
　貧しくても、心は清らかであれ。これがジュジュ様の教えです。
　ここで住まうからには、まずこれを実践していかなければなりません」
「…………」
　ま。元々金持ちじゃない私には、まるで関係のない話だよな……。

「一つ。貞潔とは。
　説明するまでもなく。知って通り、それが男であれ、女であれ。肉なる欲望を抱くのはご法度です。
　まぁまさか、この聖なる神の家にて、わざわざそんな間違いを犯そうとする不埒者がいるとも思えませんが？
　しかしまた、聖書にはこうあります。『女を見続けて欲望を抱き、空想の上にでもこれと交わるならば、それはその者と姦淫を犯したのと同じである』と。
　当たり前の事を当たり前に説明しておくのも、また大切な事であるからして。
　頭では幾ら分かっていても。不完全な肉体と精神を持つ我々はとかく弱い。
　ついついその弱さの上から、常日頃から努めてこういう事を意識しておき制御せんとする心構えが必要なのですよ。
　その間違えを起こさないためにも、寝起きの場は我々と貴方は別になっているので、その点はご安心なさって下さい。
　逆に言えば。
　妙な誤解を生まないためにも、無闇に必要な時以外の時間帯に女子宿舎を歩き回ったりする事のないようお願いします」
「…………」
　言わんとしてる事は分かるが。
　しかし、余り深く考えていなかったが。
　『女を見続けて～』どうこうのくだりは、つまりは『ネタにするな』って事だよな？
　ネタにしただけで、本当に相手とした事と同じになってしまうとは………なんだか逆にドキドキしてしまうではないか。

「一つ。従順とは。
　賢い者は教えを聞き入れる……という事ですね。
　そして沈黙を美徳とし、むやみに笑わない。
　無駄口を叩かない。軽々しい考えを口にしない。
　こういった規律こそが、この修道精神の考えそのものを端的に表し、かつ実践しているのです。
　そしてそれを守る事は、そのまま神の御心へ近づくための捷径（近道）、となっている訳です」
「…………」
　………なーんか腹減って来たなぁ……ここでは何が食えるんだろう？
　なんか心配になって来た………まさか修行のためと水と塩だけってんじゃ……。
　話が長くなって来たからか、退屈そうにしているこちらの様子が伝わってしまったのか、僧院長はまとめに入った。

「……と、いささか堅くなってしまいましたが、これが先人から伝わる伝統の三誓願であり。
　とはいっても、そんなに難しく考えなくてもいいのです。
　貴方は立場的には飽くまで平信徒の扱いであるし、言ってる事は簡単。この修道院で生活するためには、基本的に弁えなければならない点は何とぞご留意下さい、というだけの事です。
　何か悩み事があれば、その都度いつでも告解にて承りますので。
　………しかし。とはいえ厳しいようですが、ここは規律を重きに置いた場所。これらの誓いを破った場合には、貴方にはこの修道院からの退去命令を命じなければならなくなる。そこは肝に免じておいて下さい」
「…………」

「では右手を上げて宣誓を」
　仕方ないな。
　心では何を思ってるかはともかく。ここはそうするより。
　私は言われるがままに、右手を高々と上げた。
「私、コルネロはここに三つの信条を堅く誓います。
　もし私が誓いを破ったのなら………あのいけ好かないろくでなしの業突く張りが死んでもいい」
「…………」

　シーン

　辺りを冷たい沈黙が襲う。
「……余計な事は言わなくてよろしい」
　一瞬、傍らの背の高い女はひくひくと眉を潜め……もとい、引き攣らせていたような気がしていたが。
　こんな場を和ます諧謔（ユーモア）すら理解するゆとりがないとは………やはり相当窮屈な所らしい。これでは先が思いやられる。

「そうそう、申し遅れました。
　私はここのルモンド修道院の長である、オブローゼ。
　貴方をここへ案内してくれたのは、修道女ソレイユ。
　そして隣にいるのは副院長のティアボローネです。我が兄弟として家族として、今日から貴方を迎えましょう」
　そうして、お決まりの、聖霊降臨の仕草をした。

　パチパチパチパチ………
　と、一人ソレイユだけが歓迎の拍手をしている。
　どうすればいいかは分からないが、とりあえず私は礼をした。

「さて。それでは」
　と、思ったら、急に話が変わる。
「宣誓もここに済んだ事だし、その袋と衣服の中にあるものをとりあえず全部差し出して下さい」
「は？　……それは一体」
　私は思わずたじろいだ。
　自慢じゃないが、命の次に大事なこの頭陀袋を今まで誰かに預けた事など、一度もないのだ。
　それを当然のように言うお前は一体全体何者なのだ、僧院長の婆さん。

「総ての個人の財産は、ここでは認められてはいません。
　以後、神の、つまりはこの僧院の所有物となります」
　え……？
　財産は全部没収……って。

「そんな事は……私は聞いてない」
「何をおっしゃいます。
　貴方はまさに今、『清貧』の誓いを立てたばかりではないですか？」
「あ………」
　しまった、これがそうか。
「そして！　三番目の誓いは………なんでしたっけ？」
「…………。………『従順』……です」
「はい、よろしい」
「…………（汗）」
　酷ぇ。なんという事だ。
　これで面倒になったからといって、うかつに逃げる訳にもいかなくなってしまったぞ。
　まるで図られたような気分だ………
　やはり“監獄”という形容はまるで言い過ぎではなかったようだ。

　愕然と渋る私を他所に、僧院長の婆さんの傍らにいた背の高い女が、いつの間にか私の背後に回っており、持ち物検査のように我が身体を調査し始めていた。
　成す術もなく、それを甘んじて受ける。
　私は瞬間、渾身の力で『それ』に体内の気力を漲らせて立ち蘇えらせ、異物を隠し持っているかのように見せ掛けて、その凶器を探らせ。
『失礼………これは我が至宝には違いないが、切っても切れない持ち運ぶより他ない代物であった』
　という冗談でも、一つカマしてやろうかとも思ったが。
　ふと私の動物的本能が身の危険を察知したので、ここで生存権を安々と放棄する理由もさりとてなく、とりあえずは自制するに留まった。
　私の獣の本能が、この背の高い女から発されるそれから、牙を隠した肉食動物の食物連鎖の上位のそれを感じとり、その気配を前にして自然と………ヘナヘナと萎縮の強制を促していたからであった。
「…………」
　なんか、やけに威圧感あるぞ、この女……。

　僧院長が総括するように言った。
「貴方の魂がここで主の御魂に倣い、時間をかけて清く正しく熟成されてゆく事を」
「…………」
　まるで罪人である私の本性を見抜いた上でのような文句だな……全く、あの書簡には何が記されていたと言うのか。
　今となってはもはやそれも計り知れない。
　ともあれ、こうして私の新たな生活が始まる事となった。



　…………。
　私が出て行った後、長の二人の間で何やら言葉が交わされたようだったが。その内容を、私が知る訳もない。


「………よろしいのですか、オブローゼ様。あのような者を我が僧院に入れるなどとは。
　あれは私の見たところ、相当に澱んだ危険な魂を宿しているものかと」
「仕方ないでしょう、副院長。それをどうにかするのが我々の務めなのだから」
「私は反対です………！
　それが何であれ誰であれ、まだ信仰の道を志す者なら口を阻むような無粋な事は致しますまい。しかし、あの男は………
　そもそもここは信仰の研鑽の場であって、司牧の場でもなければ、ましてや救貧院でもないのですよ！？
　ジェフボーベン様も一体何を考えておいでやら……」
「本当にねぇ………何を考えているのやら」
「オブローゼ様！」
「……まぁまぁ。いいではありませんか。
　それもまた、我々に課せられた一つの修行であり、神の思し召しと言うべきものですよ、ティアボローネ。ふふふ」
「…………」



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　               　　　　                               【オープニング了】　[[→募集内容はこちら&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/24.html]]    </description>
    <dc:date>2009-01-05T05:39:33+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/24.html">
    <title>現在進行中＆募集中の企画</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/24.html</link>
    <description>
      #center(){[[本会議はこちらで&gt;http://moon.sns-park.com/yentakudoumei/?m=pc&amp;a=page_o_login]]}
**


【タイトル】ソレイユ～私の太陽～ （※ノベル版）
【内容】 
　西洋中世が舞台の愛と憎しみのアンビバレンツ型のアダルト系物語 
【ストーリー概要】 
　詳しく話すとそれ自体がネタバレ要素があるために説明できませんが、舞台が架空の宗教世界の西洋中世の女子修道院が舞台で、色々とあります。修道院という事で、ネタに宗教的なトピックや語り口なんぞを盛り込める所がミソで、面白いテーマが（特に１８禁じゃないと出来ない描写と展開を活かして）盛り込められるのではないかなと思っていまして。 
　純愛ありの鬼畜ありで、その両ルートのギャップの二律背反が良かったり。結末は分岐ごとにどうとでもなって、様々な運命の分かれ道が。そこが１８禁アドベンチャーゲームの面白さの醍醐味なのではと狙ってみました。 
【実現難度】Ｃ＋ 
【カテゴリー（製作形態）】 
　同人１８禁アドベンチャーゲーム。 
　ルート選択型×場所移動イベント型×調教ステータス型のハイブリッド。 
　一つのルートで中編位の話の内容ですが、全体で一般コンシューマー並みのボリューム内容、ゲームシステム共になっています。同人版完成後、一般の企業製品化としての売り込みに行きたいと考えてます。 
　本作はそれをルート別に小分けしたノベル版になり、最低四編で仮完結します。
　今回はそのノベル版の募集です。
【企画運営者】 
　９０１氏の代行募集ですが、私「てん☆ぐす」の方にメッセージの方か 
　yentaku_doumei@yahoo.co.jp　の方へ直接メルの方送って下さい。 
【募集対象・状況】 
○サブキャラ絵担当（※彩色別）
（西洋時代劇なので、そういうキャラを描くのが好きな方）
※メインキャラを描いて頂く絵の方は、長いスパンを通してやらなければならないために多少の前金を用意しようと思います。
　ただイメージを統一させたい事もあって、基本他のメンバーの方が集まってから会議決定し、こちらからお願いしに行く形になりそうです。ただサブキャラ等は分けても大丈夫なので、有志の方いたらどうかヨロシクお願いします
○背景・その他デザイン（※背景・基本建物等のみ）
（西洋時代劇・ファンタジーの美術が好きな方。作業量を減らすため基本写真背景との組み合わせなので、建物だけ彩色抜きで描いて頂ければOKです）
○イベント絵（※基本白黒）
（基本カラーのイベント絵は少ないので、必要部分を白黒で。キャラの場合はシルエット絵だけでもOKです）
○彩色＋ＣＧ合成
（これは統一感を出すために一人で行った方がいいかもしれません）
○スプリクトその他
（どういったツールが好ましいかもスクリプト担当の方に合わせて考えてゆければと思ってます）
○プロデューサー的な
（販売や進行補助の役を誰か引き受けて頂ければ少し割り当てを図ろう思っています。役どころから、全体を把握しているスクリプトの方が望ましいかもしれません）
【進捗状況】 
　最低限話が完結する四編のメイン部分ならシナリオは既に完成してます。
　内容をお確かめの上ご参加よろしくお願いします。
　製作にあたって使用する背景写真や素材の方も大体準備出来ています。
【本作の特徴＆セールスポイント】
・陵辱から始まる世界平和の物語
・運命の分かれ道、救いと絶望のデッド・オア・アライブ仕様
・某宗教ネタ、テーマ、ミステリー多数。この世の果ての物語
・加え、あまりありそうでなかった１８禁だからこそ深く迫れる宗教的性愛の命題
・極めて重い内容のマジメな感動作ですが、一方でエロバカ要素多数、エンタメ配慮に徹しています

　内容が内容だけに、多少製作の規模が大きくなってしまってますが、作り手の方が作業がやり易いないし少ない労力で出来るように色々と工夫や配慮を考えていますので、どうぞご協力よろしくお願いしますｍ（_ _）ｍ
　シリアスな感動モノが好きだけど、一味違ったものに取り組んでみたい、または差し迫ったのっぴきならない内容に食指が動く方。当たりかもしれません。
　最低限物語が完結するシナリオ（四篇まで。話自体はどの編だけやっても楽しめる内容にはなってます）は大体完成しておりますので、まずは企画内容と話を問い合わせの上、確認後ご参加下さい。

※少しですが、オープニングをUPしておきます。
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/50.html 
　他どういう話を書いてるかなどもお問い合わせ下さい

----

【タイトル】
　[[夢魔（仮）&gt;http://moon.sns-park.com/yentakudoumei/?m=pc&amp;a=page_c_home&amp;target_c_commu_id=7]]
【内容】
　泣けるエロゲー。ノベルもの。
　ヒロイン一人、選択肢なし
　予想プレイ時間：3～5時間？
【ストーリー概要】
　詳しくはコミュ内の掲示板に書き込みしておきます。
本格的な作業に入るまでオープンなので
是非見てって下さい。
【カテゴリー（製作形態）】
　18禁サウンドノベル
【実現難度（Ａ～Ｄ）】
　Ｃ－～Ｄ
【企画運営者】
　トイトイ
【ローカルルール】
　・できる限り毎日連絡がとりあえず状況であること。
　・Yahoo!メッセンジャーを使って連絡を取り合うようにすること。
つまり、Yahoo!IDの登録が必須条件
【参加人数】
　シナリオライター：七星香味さん
　原画絵師：紅葉さん
　彩色絵師：kainさん
　スクリプター：チャーリーさん
　企画・管理：トイトイ
【募集対象・状況】
 注意）このゲームは無料配布をするものです。
 　　　仕事は「無償」ですのでご了承ください。
　以下募集対象です。
　①BGM作曲さん 
とりあえず今の段階では呼べれないのかな・・・？？
初期段階ができましたら正式に探していきます～。 
【進捗状況】
　シナリオ：最初の部分が出来上がってウッヒョ～イ！ 
　絵：立ち絵の線画が今週中にも完成するかも
　スクリプト：動作テスト版を作りました（作業者のみ配布） 
　BGM：まだ探せません＾－＾；
　背景：フリー素材でも使いまさ～
【ご挨拶＆一言】
　このゲーム作りの目的は・・・・、
①サークルの宣伝
②ゲーム作りを経験する
③ゲーム作りの知識などをつける
です。
　ゲーム作りの時間も決めてやるので
本気で楽しくやれるという方、
例え何もできないと思っても
参加してみてください。
自分も特にゲーム作りの作業自体は
できる者ではありませんから（－－；） 

----

【タイトル】 [[「秒速7900m（仮）」&gt;「秒速7900m（仮）」関連ページ]]
【内容】
　近未来比較的リアルＳＦものノベルゲーム。１５禁ぐらい。
【ストーリー概要】　
第１部／全４部
　2060年代の第４次宇宙開発競争時代に宇宙飛行士の卵として航空宇宙学校に集う若者たちの青春群像。本来は俺の単なる小説企画だったのがとりあえず身内で第１部は何故か単純にギャルゲーに決定（笑）キャラが当初より増えたのでそのあたりアイデア練っていただくことになるかも。
【カテゴリー（製作形態）】
　同人？１５禁ぐらいノベルアドベンチャーゲーム／吉里吉里KAG使用
【実現難度（A～D）】
　Ｃ～Ｂ
【企画運営者】
　Gunner
【ローカルルール】
　企画を煮詰めてからではなく、実装主義で行きます。参加希望者にはリソース管理システムをインストールしていただき、リポジトリへのアクセス権限を与えますので、実際にそこで作成、修正を繰り返していくという方法をとります。
【参加希望人数】
　俺含めて３～４人？
【募集対象・状況】
　とにかく絵師。というか塗り師。なんかもう塗れません俺。身内にスクリプタ/BGM担当が一人いますが、ほぼ戦線離脱状態。
【進捗状況】
　とりあえず開始１０分ぐらいのオープニングだけ実装されてます。大雑把な話は出来ているのですが、当初小説として企画されたものなので、キャラを増やす等いろいろ変えたら別物になりそうです。つうかその開始１０分ももう修正してえ。
【ご挨拶＆一言】
　プラネテスやムーンライトマイルなど比較的リアル宇宙ものが好きな方ぜひよろしくお願いいたします。作品世界はなるべく現実世界の正確な未来予測として設定されてます。

※この企画は企画立案より実際に企画を立てながら作り込んでいこう、という実装主義で動いています。基本オープンですが、本気で参加希望の人のみにリポジトリ書き換えアクセス権を教えます。 

----

【タイトル】みんなで百物語を作ろう！（仮名）
【内容】
　みんなで百物語を作ろう企画。つまり怪奇系オムニバス
【ストーリー概要】（オムニバスなので扱ってるジャンルを列記）
　ホラー・怪奇幻想・猟奇ロマン・都市伝説・ブラックユーモア・シュール・ナンセンスなど（エログロ描写の大きいものは覗く。準ずる程度のものならOK）
【カテゴリー（製作形態）】
　ビジュアルノベル・オムニバス
【実現難度（A～D）】C-～D
【企画運営者】
　まだ企画発起人てん☆ぐすのみ。
　共同オムニバスなので、その話作っている方が監督さんみたいなものなので、まとめるプロデューサー≒企画リーダーみたいな役を買ってくれる方募集。私てん☆ぐすはサブリーダーという事でサポート。
【ローカルルール】
　オープン進行で。ショートショート～中編までいかない程度の内容の話（私定義だと中編は薄い文庫本一冊位）の話を書いて公開しながら、絵を書いてくれる人を一緒に探してゆく感じです。
　ビジュアルの表現方法に関してはなんでもアリ。例えばビジュアルノベルとしてのデジカメ写真を加工したものを使ったり、イラスト書いてWEB公開している人なんかに依頼して（向こうの宣伝も兼ねられるという事もあって。例えば同じく修行中の美大生さんや漫画家のアシスタントさんとかとコラボレーションもいいかも）それっぽいものを書いて貰ったり・・・・・アニメ絵っぽいのもあっても良し。表現方法は企画の数だけあって良く、画面真っ暗で音と音楽だけでもOKだし、逆にありあわせの映像だけで繋いで話作るとか、話跨いで使う絵多様してもいいし、絵だけじゃなくてフラッシュアニメにしちゃってもいいし、やろうと思えば結構面白い事自由にできるのではないかと思ってます。
　ある程度まとまったら形にして同人販売。
【参加人数】まだこれからです
【募集対象・状況】話の数だけ幾らでも
【進捗状況】まだ始まったばかり
【ご挨拶＆一言】
　自由な企画なので。自分の書いた話、ないしイラストを見て貰いたいな、程度の気持ちでどんどんやっていければいいんじゃないかと思ってます。ノベルゲーム販売までいかなくても、結構色々とUPされた溜まってくだけでも賑わってってこのサークルの活性化にいいのではないかと。
　仮に、百物語が出来上がったら、それを生かした先の展開（ゲーム）も考えてたり。
　ともかく気軽に参加できるのが、この企画の売りなのでよろしくお願いします☆    </description>
    <dc:date>2009-01-05T05:35:41+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/23.html">
    <title>TOPページ</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/23.html</link>
    <description>
      *※ここは物語の共同創作のサークル「円卓同盟」の作品紹介のwikiのTOPページです

　　
&gt;[[共同創作サークル「円卓同盟」&gt;http://moon.sns-park.com/yentakudoumei/?m=pc&amp;a=page_o_login]]

※SNSなので新規登録が必要です（対象は１８歳以上になります）

----
#image(http://www26.atwiki.jp/yen-taku/?plugin=ref&amp;serial=9,http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/42.html)
　（※相互リンク自由です）
----

　個人または共同制作者が作った作品を自由にUPしてして頂くための場です。
　自分のHPの紹介なども作品と一緒に紹介して頂いて結構です。
　メンバーに限らず、ここで作品を紹介したい方は運営にご一報下さい。一言貰えれば、自由に当該ページで紹介してくださってOKです。
  yentaku_doumei@yahoo.co.jp

**[[作品目録（新着順）&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/21.html]]

**[[作者別&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/29.html]]

**ジャンル別

**[[現在進行中の企画&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/24.html]]（こちらを踏むと企画詳細ページに飛びます）
・夢魔（仮）18禁サウンドノベル 
・「秒速7900m（仮）」 本格ＳＦノベルゲーム
・みんなで怪奇系百物語を作ろう（仮名）
・西洋中世の修道院が舞台の同人１８禁アダルトゲーム（アダルト×宗教話×if話）


※ただ今オープン企画ＳＮＳ内で実施中！自由見学自由参加できます♪
※企画立て自由！共同運営者募集してます☆

----

物語作りの同人創作集団「円卓同盟」
http://moon.sns-park.com/yentakudoumei/?m=pc&amp;a=page_o_login

【ジャンル】 
シリアスドラマ　ロジック系　ミステリー　サスペンス　ＳＦ　ファンタジー　時代劇　戦争（戦記）物　ハードボイルド　冒険もの　ヒーロー/ヒロインもの　アクション　スポーツ系　生活系　コメディ　ギャグ　ナンセンス（不条理系）　ホラー　猟奇ロマン　ブラックユーモア　癒し系　うんちく系　趣味系　メンヘル系　ラブ・ロマンス　ボーイズ・ラブ　萌え　エロ 　etc・・・・・・ 

【製作形態】 
漫画原作　映画原作　アドベンチャー・ノベル（ゲーム）　エロゲー　ライトノベル　ウェブ小説　携帯小説　リレー小説　４コマ　フラッシュムービー（CG）　無言劇　絵本原作　ラジオドラマ　オムニバス　シェアワールド（世界観作り）　キャラもの製作　うんちく共有　etc・・・・・ 


「円卓同盟」は物語を&amp;u(){お互い持ち前のスキルを出し合って}作り上げてゆく、同人創作のサークルです。 
または漫画や映画の原作はあるけど、絵描きや撮り手を見つけたい、物語を作る訳ではないが、一つの世界観やキャラを作りたい、そんな場作りの提供をしていきたいと思ってます。 
例えば、&amp;bold(){いい物語のプロットやアイデアがあるんだけど}、シナリオ作り（構成ロジック）や文章が苦手で&amp;bold(){自分の力だけでは実現できない}。 
もしくは&amp;bold(){文章やシナリオ作りはできるけど}、イマイチ&amp;bold(){いい創意工夫の斬新なアイデアが思いつかない}。テーマが希薄だ。 
自分のキャラ作りや演出等のセンスを活かしたい。
自分とはまるで別発想の人とネタを出し合って異種化学合成の新境地を開拓したい。
そんな人達が&amp;u(){自分らの欠点をお互いに補って力を合わせて実現していこう}という主旨です。

対象は基本的に&amp;u(){初心者以上～中級者（セミプロ）まで}となります。 
根本にある理念は「&amp;bold(){物語作りを楽しむこと}」。 
勿論そのスタンスを了解の上、同人活動から初めて、いい物語ができあがりそうであれば、商業化を目指してがんばって貰っても全く構いません。 

&amp;bold(){企画立て・求人・製作}はおのおの基本ガイダンスに則った上で&amp;u(){個人の責任の元自由}です（※運営に申告の必要アリ）。 
まだ立ち上げたばかりで実際の活動はこれからといった感じなので、人材は勿論の事、運営協力者を求めております。一人だとちょっとムリなのでヨロシクお願いしますm(_ _)m 
学生やフリーターさん、夢を諦め切れない社会人、アイデアや仕事を求めるセミプロの方、大歓迎♪＾＾

----
[[検索エンジン一括登録代行＜無料＞&gt;http://touroku.s2mall.net/]]    </description>
    <dc:date>2009-01-05T05:15:33+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/21.html">
    <title>作品目録</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/21.html</link>
    <description>
      ＊＊ここはUPする作品の目録になります。以下テンプレの元、どんどんUPしてって下さい。

**↓テンプレ↓

〔タイトル〕
【作者】（タイトルと作者の間にリンクの方張って下さい）
【HP】（ある方だけ）
【形態】（例：小説/漫画原作/ゲーム原作など）
【ジャンル】（例：ホラー/恋愛もの/アクションなど）
【あらすじ】（簡潔に書いてどんな作品か分かった方が踏み易いかと）


----

【作品一覧】
※新着順に上に上げて貰って結構です
・&amp;link_anchor(ソレイユ～私の太陽～【オープニング】){ソレイユ～私の太陽～【オープニング】}
・&amp;link_anchor(開かずの間){開かずの間}
・&amp;link_anchor(〔鬼（仮）〕){鬼（仮）}（企画草案）
・&amp;link_anchor(〔Fate／lost recollection〕){Fate／lost recollection}
・&amp;link_anchor(〔セカンドコンタクト〕){セカンドコンタクト}
・&amp;link_anchor(〔愉快〕){愉快}
・&amp;link_anchor(〔電話ボックス〕){電話ボックス}
・&amp;link_anchor(〔金色の鬣の草原〕){金色の鬣の草原}
・&amp;link_anchor(予知夢){予知夢}
・&amp;link_anchor(陽炎の詩){陽炎の詩}

----

〔&amp;anchor(ソレイユ～私の太陽～【オープニング】){ソレイユ～私の太陽～【オープニング】}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/50.html
【作者】 ９０１
【形態】１８禁アダルトIFアドベンチャーゲーム。UPしているオープニングは１５禁です
【ジャンル】（宗教的アダルト話） 
【あらすじ】 ネタバレにつきナイショ♪（※お問い合わせ下さい）

※現在企画中、スタッフ募集中のアダルトゲームのオープニングのUPです

----

〔&amp;anchor(開かずの間){開かずの間}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/49.html
【作者】てん☆ぐす
【形態】（みんなで百物語を作ろう企画（仮）・他メディア原作なんでも）
【ジャンル】（猟奇ホラー？）
【あらすじ】
　曽野崎財閥の跡継ぎは、一代帝国を築き上げた先代と比べて自分がおよそ後継としての器ではない事に怯えてきっていた。
　唯一この世で心許せるのは愛娘の美弥子ただ一人。
　先代の死後も、天の父の怨念に縛られながらただの“守護者”として在り続け怯え続ける彼だったが、ある日――。

※ちょっとヤバめの話なので、１８歳以上推奨☆
----

〔&amp;anchor(〔鬼（仮）〕){鬼（仮）}（企画草案）〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/46.html
【作者】なああむ
【形態】（企画原案。メディア未定） 
【ジャンル】（和風？幻想物語） 
【あらすじ】
　鬼退治とそれにまつわる悲劇と情念の物語です。

“私の愛しい選ばれた息子よ
　汝の傷を母と分かち合いたまえ”
　（聖十字架修道院の哀歌「ウィソグラの歌」より）

----

〔&amp;anchor(〔Fate／lost recollection〕){Fate／lost recollection}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/38.html
【作者】Gunner
【形態】（中編小説、二次創作） 
【ジャンル】（サスペンス） 
【あらすじ】
　Fate／stay nightのアフターストーリー。
　一介の私立探偵が顧客から奇妙な依頼を受ける。それはとある女子学生の監視だった。一方時を同じくして、その街の周辺に、奇妙な連続殺人事件が巻き起こる。

----

〔&amp;anchor(〔セカンドコンタクト〕){セカンドコンタクト}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/37.html
【作者】Gunner
【形態】（短編小説） 
【ジャンル】（１８禁っぽい実験的官能小説のようなモノ） 
【あらすじ】
　ツンデレ田辺とおちゃらけ先輩の愛と肉欲の夜

----

〔&amp;anchor(〔愉快〕){愉快}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/32.html
【作者】Gunner
【形態】（短編小説） 
【ジャンル】（超ブラックユーモア） 
【あらすじ】
　通り魔事件を起こしたかつて凶悪犯は有能な弁護士のお陰で、あっさりと外へ出て来れた。「これだけ人を殺したのに」と内心ほくそ笑む彼は、やがて何事もなかったように、社会復帰を図るのだったが・・・・・・
　（※時期的にやや危険かもしれないので、この粗筋でそういうのを感じた方は見ないように）

----

〔&amp;anchor(〔電話ボックス〕){電話ボックス}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/30.html
【作者】Gunner
【形態】（短編小説） 
【ジャンル】（クライシスサスペンス？） 
【あらすじ】
　ある男が、何気なく立ち寄った電話ボックス。そこには危険な忘れ物が置き去りにされていた。

----

〔&amp;anchor(〔金色の鬣の草原〕){金色の鬣の草原}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/27.html
【作者】てん☆ぐす 
【形態】（ショートショート・みんなで百物語を作ろう企画（仮）） 
【ジャンル】（ファンタジー？ブラック？） 
【あらすじ】
　ある少年が親に連れられて動物園に行きました。そこで立派なライオンの鬣を見た少年は……。

----

〔&amp;anchor(予知夢){予知夢}〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/26.html
【作者】てん☆ぐす 
【形態】（短編・みんなで百物語を作ろう企画（仮）） 
【ジャンル】（怪奇） 
【あらすじ】
　桐谷真奈美はある日を境に、惨事を事前に夢で予測して見てしまう「予知夢」の能力が芽生えてしまった。
　そしてその時より彼女に人を惨劇から救うという使命が課せられてしまう。しかし、彼女の奔走の末に待ち受けていたものは……？

----

〔&amp;anchor(陽炎の詩){陽炎の詩}（かげろうのうた）〕
http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/20.html
【作者】てん☆ぐす
【形態】（短編・漫画or映画原作）
【ジャンル】（ジュブナイル）
【あらすじ】
　主人公の洋一少年は歳の割にはちょっとシニカルな垢抜けない小学生。政治家の父親が不正を犯したために、その煽りを受けて、歳不相応ともいえるどうしようもない閉塞感を幼くして抱え、息詰まる生活を余儀なくされ、ただ途方にくれていた。
　そんな中、学校は夏休みに入り。彼の今出来る事といえば、父親に買って貰った五段ギアの自転車を乗れるようになるために、ただひたすら練習に打ち込むという事。しかし、一向に成果は上がらず、早くして人生に挫折の陰を感じ始めた少年は、咽ぶような草いきれの中、河川敷の土手の先に、ゆらりと揺れる陽炎の姿を見たー。
　そんな少年の元に、ある時謎の青年が突然現れ。彼らはやがてお互い惹かれるようにして、奇妙な交流を始めてゆく。果たして青年の正体とは・・・・・？

----    </description>
    <dc:date>2009-01-05T05:13:00+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/49.html">
    <title>開かずの間</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/49.html</link>
    <description>
      **〔開かずの間〕


　その光景を、瞼の裏に焼き付ける。
　心の中の“フィルム”に永遠に留めるために。

　どうして大切なものは壊れ、やがては行き過ぎてゆくのだろう。
　どうして願えば願う程。想えば想う程。
　その願いは私の両の腕をするりとすり抜け、嘲笑うように私の元から離れて行ってしまうのだろう。

　私は、守護者。
　ただ見護るだけの者。


「ふふふ………お父様。そんなに張り切ってしまわれて、明日どうなっても知らないですわよ」

　今日も美弥子は美しかった。
　私はようやく乗馬に慣れて、手綱を握る姿も様になってきたところだった。
　美弥子は子供の昔から乗馬に憧れていた。
　その長年の夢が適って、このはしゃぎよう。
　しかし、私としてはいつ危ない事にはならないかと冷や冷やして、その心持たるは決して穏やかではない。
　気がつけば私はいらぬ世話役として過剰なまでの狼狽ぶりと、加え、また彼女の成長アルバムに新たなる１ページが加わるその喜びで。
　私は一瞬足りともその瞬間を逃しまいと構えるカメラマンと、過剰な世話役の両方を同時にこなし。代わる代わる器用にその人格を入れ替えて繰り返していた。
　その様相は傍目から見れば滑稽そのものに移っていただろうし、事実、美弥子に直接指摘されたように、この時の私は不安と興奮で訳が分からなくなっていたに違いない。

　思えばその原因は他ならぬ私にある。
　彼女が生まれた時。
　私は何か彼女と月日を共にして、連れ立って成長して行ける友達を与えられたらいいのではないかと思った。
　人ではなく、動物がいい。なるべく寿命の長いものが。
　その結果、この舶来の血統種である生まれたばかりのサラブレッドを我が家族の一員へ招き入れる事に決めたのだ。

　しかし、良かれと思って考えなしにそうしたはいいが、心配性の私は気が気でない。
　見ているだけにしなさい、と何度彼女を窘めたことやら。
　それで納得する美弥子ではない。
　連れ立って成長してゆけば、やがてこの自分の唯一の兄弟と共に冒険をしたいと思うのは、むしろ自然の成り行きというものだろう。
　ついに我々夫婦の間にはそれ以上の子宝には恵まれなかったために、その想いは一層強くなっていた。
　子飼いの血統種はまるで美弥子を導くかのように一足早く美しく成長してゆき、その仲は私が嫉妬を覚える程であった。
　今の彼女は、長年の夢を適えるために、どれだけの苦労の上にこの日を迎えたか分からなかった。恥ずかしがり屋の美弥子は私の目が届かない所で（こっちはそんな事はとっくにお見通しなのだが）、並々ならぬ努力を重ねていた事は私も気付いていた。
　どうやらいきなり乗れるようになって、私を驚かせてやりたいつもりでいる事も、執事の話から聞き及んでいた。
　だから私としても、もはやどのような言い訳を尽くしても、その希望を無下に踏み躙るような真似はとてもできないところまで追い込まれてしまったのだ。

　ついにここまで来てしまった。
　私は気が気でなかったが、しかしハンチングを被って颯爽とした彼女の騎乗姿を見て、私の憂慮は一遍にどこか吹き飛んでしまった。
　そこにいたのは散々私を困らせたじゃじゃ馬ではなく。
　もう、誰もが認める立派なレイディだった。
　私はその出で立ちをこの四角いファインダーの中にどうにかして上手く収める術はないものかともどかしさを覚えながら、様々な角度からその空間と時間とを切り取ろうと躍起になって、シャッターを押し捲っていた。
　その事に気を取られて、思わず足場を取られて体勢を崩す私がいた。

「ほら、危ない！
　私の心配も結構ですが、そうはしゃいでいるとご自分の方が怪我なさいますよ？」

　しかし、そうは言うが美弥子。
　誰よりもはしゃいでいるのは他ならぬお前自身ではないか。
　あれだけ手を焼かせて私の肝を何度潰しかねたか分からないお前がそうやって人の心配とは。
　いつからそんなに大きくなったのだ美弥子よ。ははははは。

　まるでそこだけ独立した宇宙が、聖域が広がっているかのように。
　私の天使は笑う。
　木漏れ日から差し込む幾条もの光の筋は、まるで彼女を彩るための絵画の手法のように私の目には映った。

　あぁ。
　お前は私の唯一の心の拠り所であり、私の産み出した最高傑作だ。
　何者にも変え難い、救いの聖母であり、導き手。
　この瞬間が、いつまでも、永遠に続けばいいのに。



　　　※　　※　　※



　私の家は、先代がほぼ単身で成し遂げた一代帝国だった。
　明治後期、ある商家の養子として家督の座についた先代は、逸早く戦争の到来を先見の明で予期し、巧みな交渉術を駆使して造船業に投資し、その手腕を以て満州より鉱山物資を初めとして多くの物資を運搬して巨万の財を築き上げた。
　彼が養子に入ったのは地方都市の数ある豪商の家の一つでしかなかったが、その僅かな資金源を元手に今の形の財閥を作り上げたのは、実質ほぼ一代での出来事と言っていい。
　戦況の旗向きが悪くなると、逸早く敗戦を予期してその築き上げた財をいかに保守できるかに努め、表向きは名前こそ出なくとも、戦後の変換機にそのターゲットを内部へと移行し、民主主義への移り変わりと共にそれまでの立ち位置を１８０度変えてＧＨＱへと鞍替えをし、その後ろ盾で以て別会社名義で建築業に金融業と多角事業を展開、戦後復旧の影の立役者として努め、この世を去った。

　惧れと尊崇の念で、しかしその裏ではそれぞれの一物を胸に抱え、誰しもが父の足元へと跪いた。
　大勢の人間が私の眼前を行き過ぎ、時には私自身に言い寄り、騒ぎ立て、思い思いの欲望と保身と恐れとを吐き出して行き過ぎ、立ち去って行った。
　私にとって父とは、尊崇の対象である事は勿論ではあるが、それ以前に私の前に立ち塞がる決して越えられない泰然たる峰であり、惧れの象徴であった。

　これから先。どう足掻いても、私はこの人の影を背負わされ脅かされ、引き摺って一生を過ごしてゆく事になるだろう。
　私がこの曽野崎の血を引いている限り、この人の権威から、その義務から私は一生逃れる事はできない。
　
　所詮、私はその器ではなかった。
　無論その事を、父は幼少期の頃から看破しており。さりとて、その憂いを隠そうともせず。
　恐らく来るべき帝国の斜陽の予期は、この時から現実のものとして彼の中に頭痛の種として在ったに違いない。

　いかに神のようであったとしても、所詮は人間は人間。
　永遠に続く命などあろうはずもなく。
　それはいかに現人神として持て囃されたこの男であっても、例外ではない。

　彼の死後、やがて親類を初めとして、沢山の人間がこの一代帝国の歪を好機として群がり、亡者が屍肉をついばむようにして争った。
　私は震え上がった。
　こんなものは、そもそも私が築き上げたものではない。
　いっそ、まるで初めから何もかもなかったように目が覚めたら全て消えてなくなっていればいいのに。

　ある者は。父の死を今まで手ぐすね引いて待っていたかのように。
　途端に掌を返すかのように今まで被っていた羊の皮を脱ぎ捨て、その本性を現し始めると。その所業の言い訳に。
　何を言うか。この巨万の富を築き上げるために。
　一体影で何万人の名もなき人々の亡霊が涙の海に溺れたと思っているのか。
　そう恨めしく呟き、己が欲望をさぞ粛清の如きにすり替えて容赦なき開き直りを豪語していた。

　だからどうしたというのだ。
　私には関係のない事だ。
　私に一体何ができるというのだ。
　だから私は。ただ父の言いつけ通りに、見護るだけの者とその心に決めたのだ。
　しかし、その亡者の群れの山を築き上げたのは他ならぬ父本人であったのだから、鬼がいなくなった今、その復讐は曽野崎の血筋にそのまま財産と共に相続されたといっていい。
　中には、その手段のため親族内部からその分裂を狙って近付く者も多数。

　父は今際の際に言った。
　お前は何もするな、と。何も新しい事はしようとはせず、ただ私の指定した信用のおける役員と弁護士の方針に従っていればそれでいい。例えそれが身内の言う事であっても、いや、身内だからこそ、私の遺言通り以外の行動を取るような事があってはならぬ。
　それ以外は決して手を出さずに、私の築いたものを保全し、見護る事だけを考えておればそれで良い。
　そうでなければ、きっとお前には災いが降りかかるだろう。お前にそれに対抗する力はない――。

　父は私生活でも少しの気の緩みも許さない権威者であり、私の畏れの対象だった。
　それは大人になってからも続いた。
　で、あるからして父が鬼籍に入った時。
　汗顔の至りなれど、その死を悼むよりも、この重圧から開放された事の安堵感の方が余程大きかったのは正直なところだ。

　しかし、父の魂がこの世から無くなったとはいえ。
　父が遺したこの帝国という肉体は依然として形として存在しており、むしろ存命の時と比べ、次期当主として一層の重圧を以て私の双肩に圧し掛かった。
　私はこれら一族のためにも（というよりかその重圧を回避するためにも）、父の言いつけをひたすら護り続けるよりなかった。
　死んでからも。私の父は、私の心の中に巣食う強迫観念として私の事を常に監視しているかのように思え、私の意識は安らぎを見出せずに脅かされ続けていたのだ。

　私は孤独だった。
　私の周囲には夥しい人間が訪れたものの、その誰しもが柔和な仮面の下の本来の姿を見せようとはせず。
　むしろそれが私には不気味に思え、私もまた、その裏にあるものを知りたいとは思わなかった。
　それは私の伴侶であるはずの妻であっても同じ事だった。
　それどころか、一番身近な心許せる相手でなければならないこの女の間にこそ、私は孤独をひとしお感じていた。
　いつ妻が私を裏で亡き者にしてその相続権を独り占めするのではないかと、見えざる鬼に恐々としていた。
　これも妻が先代の遺言を無視して私を懐柔してその権利を我が者にしようとしたのを、私が快く思っていなかったからだ。私を傀儡のように意のままに操るなど、造作もないと高を括って嫁入りしてきたのであろう。
　父親の亡霊に脅かされ続ける私を、妻はその心の支えになるどころか、この時ばかりはその表の柔和の仮面を崩して本性を顕わにし、激昂の末に何と軟弱な事かと詰ったものだった。
　美しい女ではあったが、私は上辺だけのものには興味はない。
　むしろその裏にある本性が見えれば、その両者の食い違いは逆効果と言っていいだろう。

　しかし、そんな私にも、一人だけ心許せる相手がいた。
　そんな美しいだけの女との間に設けた子。
　何の打算の欠片も持ち合わせていない、純然たる清らかな魂。
　私はその魂を「美弥子」と名付けた。

　世継ぎはまだかと、周囲の親族は囃し立てて急かしたが。
　私にはただ先代の亡霊に悩まされているだけの事で、こんな形骸化した帝国の維持など、そもそも余り興味などなく。
　私にはこの娘だけで十分だった。
　娘が生まれてきた時、私は思った。
　あぁ、この娘には何一つ不自由な思いをさせたくはない。
　美弥子よ、お前は孤独な私を哀れに思い、天が授け賜れた私の宝だ。
　この世俗の欲と手垢に塗れたこの家の中で、唯一穢れのない光であり一縷の救い。
　私は何一つ望む事なく、ただその笑顔を見られる事を、無上の喜びとできたのなら。
　お前はこの世でたった一つの、私が誇りを持てる希望の象徴だ。

　娘もまた、そんな私の無償の愛に応えるかのように。
　私の事を愛し、私のささやかな世界を輝かせてくれたのだった。
　この陰謀術数の屋敷の中で、ただ一人彼女は憂いというものを知らず、世俗の垢に染まらず、無邪気に笑顔を絶やさず、すくすくと成長していった。

　恐らく妻もそんな私に嫉妬の情を抱く程であったに違いない。
　嫉妬も何も、冷え切った愛などというような形容を用いるまでもなく、そのようなものは初めから存在しなかった結婚ではあったのだが。
　従って、この場合、恐れといった方が正しいか。

　妻に他の男の影が存在している事は前々から私には分かっていた。
　先代より仕える数少ない懐刀の使用人に素行調査を頼んだ時、やはり調査の結果は聞くまでもない結果であり。
　問題はそれで済めば良かったものを。
　彼女の欲望の上昇志向はついにそれでは終わらなかったのだ。
　先代の懐刀は彼女がやがては裏で私を亡き者としてその地位と権利を独占しようとしている事実を私に突きつけた。
　私はそれに対して何をしようとした訳ではなかったが――。

　それから暫くの事である。
　外出中の妻が車を運転中に事故で死に。
　その妻の情事の相手が、時を近くして階段より転げ落ちて頭を打って死亡した。目撃者はいない。

　何の感情も湧かない自分を感じていた。
　真実がどうだったかは分からない。
　分からないし、差し当たって知りたいとも思わない。
　しかし、私よりも先にこの世を去ったのは、まるでこの財閥を利用しようとした先代の呪いであるかのように………少なくとも私には思えたのだ。

　ただ一つ確かな厳然たる事実言えば、妻が死んだ。それだけの事だ。
　娘は泣いていたが、私は内心ほくそ笑んでいた。
　実際私は妻の死を悼むどころか、あんな女がいなくなって、とせいせいとしていた位だ。
　むしろ、妻に対して愛などなかった事を再確認し、ホッと胸を撫で下ろした程である。

　美弥子、悲しむ事はない。
　私にはお前だけいればいいのと同じく、お前には私だけいればいいのだから。
　少なくとも私にとっては、後他に何もいらないのだから。
　あぁ。願わくば、嫁になどいかず、この先ずっと私の傍にいてくれたのなら……。

　私は自嘲した。
　親バカもここまで来てしまってはまるで病のようだな。
　私は一度は心の中で呟いたその願いを、心の裡に封印しておく事にした。

　彼女こそは。
　私が孤独の苦悩の末、手に入れた唯一のささやかな幸せなのだから。
　私はそれ以上は望まず、ただ無償の愛を捧げるあの太陽のように、ただの守護者であり続ければいいのだ――。



　　　※　　※　　※



　しかし、悲劇は突然やって来た。
　私の目の前で、それは起こった。

　初めての遠征の後、そろそろ帰ろうかと踵を返した時。
　やにわ、雲行きが怪しくなって来たのを私は感じた。
　その雲の群れたるは黒々としており、やがて空は轟音と共に光るものが幾つか垣間見え。
　その内の一つが、我々の近くへと落ちた。
　大木を突き破ったような鼓膜をつんざく音に、我々が驚いたと同時に。
　美弥子の乗っていた馬が、正気を失って、美弥子を乗せたまま狂ったように走り出したのだ。

「きゃあぁあああ！　お父様、助けてっ！」
「美弥子ーっ！！」

　私は必死に追いかけたが、とても人の足で追いつけるはずもなく。
　手綱を決して放すんじゃないぞ、と私は何度も何度も叫んだが。ついに。
　娘の身体は馬上より易々と振り落とされると。
　よりによって、最悪にも頭上より、地面へと落下したのだった。

　神よ、いや、父よ。
　唯一の私の心の拠り所ですら、貴方はそうして奪おうとするというのか。
　やがて、続いて轟々と降り注ぐ雨は、私の涙雨へと変わった。



　　　※　　※　　※



　なぜだ。一体、なぜこうなるのだ。
　私は、もはや決して返事をする事をしなくなった、しかし変わらず今も美しい、美弥子の寝顔を眺めながら、恨めし気に吼えた。

　なぜだ、なぜなのだ。
　答えの出ない自問自答を、ひたすら繰り返す。

　そもそもが。私はこんな財産など望んだつもりはないのだ。
　そんな私が、ただ唯一望んだものが、たった一つのささやかな願いが、これか。
　こんな事があっていいのか。
　一体、私が何をしたというのだ。
　あんまりだ。
　神よ、天上の父よ………答えてくれ。私が一体、何を！？

　答えなど出るはずもない。
　何より、当の恨み言の一つも言えない身体に成り果ててしまった美弥子が不憫でならなかった。
　彼女こそは、見えない糸で操られた犠牲者であるに違いなかった。

　もしや。
　私があんな事を願ってしまったからいけなかったというのか。
　美弥子が永遠に私の元に在って欲しいなどと、この胸の中で願ってしまったから。

　願いは叶ったのではないのか？
　事実こうして、美弥子は何処にも行かなくなったどころか。
　望んでも何処へも行けなくなった。
　いや、そもそも望むという願望すら、あるかどうかすら分からず。

　私は改めて物言わなくなった美弥子の寝姿を見た。
　戦後の医療技術の発達により。
　例え脳は死しても、身体は生き続ける事が可能、という。これを奇跡と言っていいのか分からない状態で、美弥子と呼んでいいのか分からない魂はもはやどこぞへと消え去ってしまった、美弥子の形骸がそこにあった。

「それを、果たして生きていると言っていいものか――」

　医者は私に苦々しく言った。
　しかし、そんな事はどうでもいい。
　私にはもう、例え物をその口から言えなくなったとしても。
　例え、それが魂を失った抜け殻だと分かっていても。
　この娘無しには到底生きてはいけないのだから。
　お前なしでは生きていても、何の意味もない世界なのだから。

　いいだろう。
　美弥子、そうなればお前はもう私だけのものだ。
　お前は、これで私だけのものになったのだ。
　お前の世話は、これから私だけが行い、引き受ける。
　後は全部古株の役員や弁護士、各々専門の者に任せて、私はお前だけを看取る守護者で在り続けよう。
　誰にも邪魔はさせない。
　美弥子は、私のものだ。私だけのものだ。
　誰にも指一本触れさせやしないぞ。



　　　※　　※　　※



　それからというもの。
　私と美弥子との恒久とも言えるような、緩やかな時間が流れていった。
　私は、もはや引退した老いぼれのように、余生を過ごす日々のように、そうしていた。

　これでいいのだ。
　そもそもが人間嫌いの私にとってしたら、この時間こそが、何にも変え難い生きた時間であり。
　私が私でいられる唯一の瞬間だった。
　私と美弥子の逢瀬の時間は、自己との対話であり、この世の果ての、いや、もはや隠り世での世界の出来事のように、穢れた世俗から切り離されて、独立して、そこに成り立っているのであり。
　住み込みの使用人には一切暇を与え、信頼できる者だけを雇って、この部屋に一切入る事を厳禁したのだった。
　
　私は美弥子の魂の帰還を待つために。
　最新の延命医療の器具を合衆国より仕入れ。それらの使い方をを医師より教わり。
　飲み食いが出来ぬ代わり、栄養補給を管より入れずしてそれが叶わない彼女に、その不憫さに、思わず居た堪れない衝動に襲われたりもしたが。
　それら食事の代わりや、下の世話まで、全てを私一人で行ったのだった。
　床擦れが起こらぬよう、毎日何度か夜中に目を覚ましては、私は彼女の元へ参じてその度に寝かし直し。
　いつも一人じゃ寂しかろうと。昔話を読んでやったりもすれば、一緒に添い寝をして眠ってやる事も多かった。
　私は毎日彼女の服を着替えさせ。３６５日、一日とて同じ服が被らないように、彼女の趣味を思い出して、宛がったりもした。

　私はこのような状況になりながらも、決して彼女の意識が目覚める希望を失わず。
　今か今か、と待ち侘びていたのだ。
　きっと、あれから既に何年も経ったというだろうに。
　目を覚ました途端、何事もなかったかのように、私にこれだけ心配を掛けた事にも気付かず、無邪気に昨日の事のように語り出すのだろうな。
　まるで落馬した直後のように、自分の心配などは決して顧みず。馬の方は大丈夫だったか。などと。
　あの子はそういう優しい子だ。ふふふ………。

　しかし、そんな私の懸命なる看護にも関わらず。
　一向に、我が愛娘は目を覚ます事がなく。
　私がたまに瞳を抉じ開けると。宙を正体なく向いており、私を捉える事はなかった。　

　まだか。まだ………足りぬか。私の愛が。
　これはきっと、天が私に対して与えた試練なのだろう。
　異国、基督の教えの旧約聖書の中に出て来るあのヨブという男のように。
　天の父が、私の事を試しているのだ。
　それでも、娘と一緒にいる事を望むのなら、と。

　だがな、父よ。
　私が生きている限り、私が美弥子に対する愛を失う事などありえない。ありえんのだ。
　救いは、必ずやって来るはず。いや、やって来る。必ずや。
　きっと、ある日。
　何事もなかったかのように、目を覚まし、「お父様」と変わらぬ笑顔で以て私の事を呼んでくれるその時が。
　私には、それが、見える。

　私は決意を新たにし、娘の復活を少しも疑わず。
　ただひたすら新たなる受胎告知の声を待ちながら、一糸纏わぬ彼女の魂の抜け殻と向かい合っていた。

　あの藪医者め。
　何が生きていると言えるのか、だ。
　ふざけるな。これを見ろ。

　こんなにも、美弥子は。
　まるで、こうして今も、ただ寝ているだけかのように――。

　…………。
　そうして、私は震える手で、感嘆の溜め息を漏らし。
　目の前の奇跡の美に触れた。

　この肌はどうだ。
　ビロードのように決め細やかで。まるで天女の羽衣のようだ。この肌に抱きこまれてしまえば。きっと、例えそれが悪魔であっても、たちどころに泣き落ちて改心に平伏してしまうに違いない。

　この瞳はどうだ。
　人間を超越した、万物の正体を見透かす天の目だ。
　この世の全ての純潔を集約させた、最高の魂の透明度がここに表れている。
　遍く全ての珠玉も宝石もはお前の瞳の前には、くすんで塵芥のようだ。

　この胸はどうだ。
　これこそが乳と蜜の流れる約束の大地。
　お前ほどの満ち足りた至福の流線を、私は今まで見た事がない。
　吸い付くような肌に護られた程好い大きさのそれは、天より与えられし福音。
　総ての豊かさとは。お前の乳房より産まれ、お前の乳房へと還ってゆくのだ。

　この唇はどうだ。
　ほんのりと赤みがかったこの瑞々しい柔らかさは、不純の穢れを禊ぎ祓う清冽の門。
　そこから発される息吹は、枯れた花々をも蘇らせ。
　どんな果実もお前のその薄桃色の前にあっては、その甘さなどはまるで語るに及ばない。

　この豊沃な谷間にこうして顔を埋め、耳を澄ませば。
　なるほど、確かに彼女の生命の源である脈動が、この柔らかな大地を揺らしている。意識こそは無くとも、今もこうしてその呼気に上下する大地からは。
　生命の瑞々しさだけが、ただただ満ち溢れていた。

　全てが、完璧だ。
　何処に出してもおかしくない、最高の女だ。
　こうして寝ている間にも、肉体はさらなる成長を遂げ。
　今や、女としての完成された美しさを保っている状態であり。
　例え何者であっても、それだけは否定出来まい。
　天使が地上に降りて来る際、宿る肉体を探しているのなら、間違いなく美弥子の身体を借り受けて行こうと迷う事はないだろう。

　そう、なんて………美しい………
　そう、改めて見るに。
　私は目の前に横たわる奇跡に、改めて神の造り賜われた傑作の霊験を感じ取り。

　私はゴクリと喉下を鳴らしながら。
　その奇跡の御業の恩徳を、少しでも逃さず感じ取らんとした。
　あらゆる五感を総動員し。
　美弥子の魂の存在を、我が肉体の内へと再構築せんと試みた。

　こうしていると。
　お前のきめ細やかな絹のような肌の隙間に。
　私はこのまま吸い込まれていってしまいそうだ………。

　――いっそ、私も連れて行ってくれやしないだろうか。
　お前が今その瞳で見据えている虚空の正体を。
　それを一緒に、私の目にも見せてやってはくれないか。
　あぁ、いっそ。こんな肉体の呪縛など脱ぎ捨てて、お前と、お前と一つになれれば……こんな苦しい想いはもう、もう、これ以上。しなくても、済むというのに。
　美弥子。美弥子。
　分かるか、お前にこの狂おしい想いが。

　はぁ………美弥子………美弥子………っ

　どうしてこうなったかは、分からない。
　私はいつの間にか。この目の前にある肉体が美弥子なのか、それともそれが私の肉体だとでもいうのか、はたまた本当は私こそが美弥子の真の魂なのか、その肉体を一時的に抜け出した幽体のように、帰る場所も分からず彷徨い、自身の正体すらも良く分からなくなってしまっていた。

　私は自分では気付かない内に。
　その時、既に“開かずの扉”を開けていたのだ。

　――決して開けてはいけない、禁断の扉を。



　　　※　　※　　※



　『この屋敷には、魔女が住んでいる』


　私が、物心付く頃からその部屋について聞かされていた。
　決して私が入ってはいけないと言われていた、離れの二階にあるという、“開かずの間”の存在だ。

　祖父はそこに、毎日欠かさず通い、そして暫くすると出て来る。
　そして、毎日ようにそうやって人生を費やしているというのに。
　全く、その事については触れようとはしない。

　決して、世間には公にはできない、隠さなければいけない呪われた秘密だという事を。
　物心つくようになってから、私はふと思い至る事になり。
　私の家では、これは暗黙のタブーとして、決して聞いてはいけない事情となっている事を、私は悟った。

　祖父は幼い頃から、私の父親の代わりだった。
　父親と母親の記憶はまるで残ってはおらず。
　私の両親は、私がまだ物心付く前の、まだ言葉も話せない幼い頃に、不慮の事故で共に他界してしまったのだという。
　でも、初めから私にとっては、いなかったものだ。
　私はそれが普通の家庭とは違うという事を、学校のみんなの家庭を知る事によって、初めてその違いに気付いたのだった。
　そして、彼らの写真すらも残ってはいないという事に。
　流石にその時は、改めて不思議に思ったものだった。

　でもいいのだ、私には祖父がいるから。
　祖父のあの何にも増して優しい眼差しで私の事を想ってくれている、あの太陽のような温かい気持ちだけが、不在の父と母を補って余りある満ち足りた日々を来る日も来る日も私に与えてくれたのだから。
　他の家のお父さんと比べて、私のお父さん………いや、お爺さまは、仕事なんか行かないで、ずっと私の傍に。例えそれが昼間であっても夜であっても、一緒に居てくれて、飽きるまで遊んでくれるのだから。
　貴方達のご両親にそれが出来て？

　だから。
　私は両親がいないという事情がありながらも、全く他の子達対して引け目を感じてはいなかった。
　そう、「それ」さえなければ。
　それさえなければ、ずっと、私だけのお爺さまであるというのに。
　引け目こそ、感じてはいなかったが。
　その実、私は、その点だけが不満だったのだ。


　それどころか。
　そんなお爺さまの異変に。私は気付いていた。
　最近、お爺さまが私を見る目がおかしい。
　私の顔を見ると、何かを恐れるかのような目をして、私の直視を避けるのだった。
　一体、何があったというのかしら……？
　私はその違和感に、自身の危機を感じ取った。
　そうでなくとも。
　この家は、暗鬱たる何者かによって、支配されている事を。
　私は、それを呪われているものだと疑ってならなかったのだ。

　お爺さま。私の優しいお爺さま。
　どうか、あの昔の、優しい眼差しをしたお爺さまに戻って。
　毎日、遅くなるまで遊んでくれた、あのお爺さまに。
　どうして？　私が大きくなっちゃって、子供じゃなくなったから、私の事飽きちゃったの？
　私には、心を許せる身寄りなど、唯一お爺さましかいないのだから。
　私を、一人にしないで。

　でも。
　私には分かっていた。
　祖父は、悪い魔女に取り憑かれてしまったのだ。
　開かずの間にいるらしい、アレの正体とは、その魔女なのだ。

　昔子供の頃読んだ、絵本の中に出て来るお伽話。
　王子は深い森に迷い込んだまま、帰って来れなくなってしまう。
　彼は、悪い魔女によって、魔法に掛けられ。その心を奪われて、魂の虜囚と化してしまっていたのだ――。

　少なくとも、この大きな家には秘密がある。
　決して、世間には公にはできない、隠さなければいけない呪われた秘密だ。
　これだけはどうも間違えのない事のようであり。
　私はそれを知らなければならない。
　私もまた、ここの家の人間なのだから。
　そして、お爺さまを悪い魔女の手から救い出すのだ――。
　そうすれば。この呪われた家はきっと。
　本来の輝きを取り戻すに違いないのだから。



　　　※　　※　　※



　意を決した私は。
　一人意気込んで、魔女退治へと繰り出したのだった。
　お爺さまが、今さっき外へと出て行くのを確認すると。
　暫くずーっと中にいたので、もう暫くは戻っては来ないだろう、と。私は高を括って、ついに禁断の領域へと足を踏み入れた。
　
　足音だけは立てたくはなかったが。
　ギシギシと板間が鳴ってしまって、私の心は落ち着かなくなってしまう。
　魔女の方はどうだろうか。
　迫り来る足音が、いつもの祖父の者ではないと、気付いているだろうか？
　私は、客間に飾って置いてある刀を持って、緊張の汗で滑らないように気をつけながら、全ての元凶の下へと、階段を登って、一歩、また一歩と近づいていった。

　いざとなったら、勇ましくコイツを振り下ろして、魔女をバッサリと薙ぎ払わなければならない。私に、そんな事が出来るだろうか？
　魔女はその時。一体どんな方法を使って、私を貶めようというのだろう？

「…………」

　問題の間の障子の前で。
　暫くの間、私は気配を殺すようにして。待ち。
　そして、深呼吸をした後。
　思い切って、その引き戸を開け放った。

　――！？

　そうして見ると。
　そこには。確かに女が居た。

　やはり。魔女だった。
　私が思っていた通りだったんだ。
　しかし。
　これは………一体、どういう状況なのだというのだろうか？
　女は居る事には居たのだが。
　私が思っていたのと様子がどうも違う。
　女はまるで病人のように、布団の中で横たわり。
　まるで魂が抜け落ちているかのように、そこにただ在るだけだった。

　隣には何やら大仰な、見た事もない大きな機械が横たわっており。
　彼女とこれが何らかの関係があるという事が見て取れる。
　それにしても、この女は………。

　どこかで。
　どこかで見た事がある、この女は。
　一体、どこでだろう？　毎日のように、私はこの女と顔を合わせているかのような錯覚に見舞われた。

　途端に、私はこの存在がおぞましいと思った。
　お前はなんなのだ。生きているのか、死んでいるのか。
　どっちなんだ。答えろ。
　私はそう言って、女の顔を平手で叩いた。
　女は何も答えず、ただそこに在るがままでいた。
　一向に眠りから醒めようとはせず、全てしらばっくれているかのようだ。

　こんな女が。
　こんな何もできない女が、ずっと私の祖父を呪詛のように縛り付けていたというのか。
　許せない。

　そうだ、お前なんて存在してはいけないのだ。
　お前がこうして未だ存在している事自体が、何かの間違いなのだ。
　お前が存在している事こそが、お爺さまがああして苦しんでいる理由なのだから。
　だから。
　私はお前を。
　そうだ。
　そのために、お前が私を。
　私であるお前が私を、お前である私がお前を。
　引きずり出す。

「―――」

　私は、理解した。
　私が誘い込まれるようにして、ここに呼ばれたのだ、という事を。

　そう、事実この女もまた。それを望んでいるのを。
　私にはなぜだか分かっていた。
　そうして、私の手が女の首元にずむずむと伸びると。
　まるで、そうなる事が、極自然であるかのように。
　何の反応も抵抗もしない、女の首を一気に締め上げた――。


「美阿香、お前、一体何をしている」

　後ろから、声がした。
　そこに、顔面蒼白のその人の姿があった。
　あら。お爺さまだわ。
　私は、振り向いて事態の説明をした。

「魔女を………退治しておりました」
「お、お前。なんてことを。それはお前の――」

　年老いた祖父は、その先は言葉にできず、ただブルブルと震えており。
　私は事切れた女をそのままに、お爺さまの方に駆け寄った。
　お爺さまはすっかり正気を失われて、呆然と膝が落ち、腰を抜かし、その場に竦んでいたのだった。

　あぁ。なんて可哀想なお爺さま。
　身も心も、すっかりこの女の隷属と成り果ててしまったのね。
　大丈夫。もう苦しむことはないのよ？
　お爺さまには、私がいるのだもの。

「そんなに悲しまないでお爺さま……
　いいえ、お父さま。
　悪い魔女は退治されたのですから。
　もうこれでお父さまは自由なのですから。

　でも安心なさって。私がいますから。
　これからは。
　私が、この女の代わりになるの。
　いいえ、私が、この女なの。

　だからお父さま。もうそんな顔をなさらないで――」



　　　※　　※　　※



　そう言って。
　美阿香は恐れと悲しみで泣く私の頬に、聖母のような笑みで優しく触れた。

　そうやって微笑む成長した美阿香は。
　若かれし美弥子の姿、生き写しであった。
　否。「そのもの」であった。

　私は両の手を合わせ、何者かに見咎められたか罪人のように。
　ガクガクと打ち震えて、ただ謝るように平伏すより。
　一体、他に何ができたというのだろうか――。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔開かずの間/完〕


----------------------------------------------------

※蛇足の作者本人解説

いやぁ。
ヤヴァイ話を書いてしまいました＾＾；
ＤＱＮな話だねと言わないでｗｗｗ
まぁ、タブーのオンパレードですからねぇ。
近○相姦な上に、植○○間に○イプ、加え親○し・・・・・・・
加え、変態ｗ
でも、結果的にそうなってしまっただけで、それを重ねて作ろうと思った訳じゃないんですよ。
一人の孤独な男の抱えた猟奇世界を感じて欲しいなと思って書いてました。

勿論、見守るだけの存在であれねばならない禁を破ったためのオヤジの呪い（強迫観念）の話と考える事も出来れば、そんな孤独な父親に対する愛を、生まれ変わって枷となっている自分の肉体を滅ぼす事によって、見事応えたという救いの話とも捉えられるようにしました。
実際、後者推奨。そんな道を違えた世界だけに許される、素敵な話もあってもいいんじゃないかなーなんて。

ちなみに、ホラーっぽいホラーを書けないでいたので、そういったジャンルとして書いたつもりではあるんですが・・・・・・
でもよくよく考えると、この話は実際に有り得る話な訳ですよね。オカルトでも何でもなく。
人類史上、実際にこんな事をしちゃった親子がこの世の何処かに一組位はいても全くおかしくはないですよね。
その時、この父親の身になって居合わせたら、こりゃ相当に怖いはずなんですが。
本当に見えないものの導きの存在、というのを感じ取られずにはいられないでしょうね・・・・・・。
後、ここではそういう話にはなってないですが、これがずっと意識ないで寝たきりのまま娘が段々と腹だけ大きくなって来たら、家族としてはちょっと怖いですよね・・・・・あぁ、これもイケナイ話題だ＾＾；
いや～～でも実際ありそうだよな・・・・・・・


#comment    </description>
    <dc:date>2008-11-09T01:27:15+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/28.html">
    <title>「てん☆ぐす」の作品一覧</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/28.html</link>
    <description>
      **「てん☆ぐす」の作品一覧ページ

・[[陽炎の詩&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/20.html]]（短編・ジュブナイル）
・[[予知夢&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/26.html]]（短編・怪奇系）
・[[金色の鬣の草原&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/27.html]]（ショートショート・ファンタジー？ブラック？）
・[[開かずの間&gt;http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/49.html]]（短編・猟奇ホラー？）
----
〔自己紹介〕

　初めまして。このサークルの言い出しっぺ＆暫定代表です。
　とりあえず言い出しっぺという事もあり、いくつか短編をUPしてみました。実はコレ全部今回の会のための書き下ろしなんですよね・・・・・実はこのサークルの主旨の通り話を書くにあたって欠落してる弱点があって、あんま今まで話書けなくて書き溜めとか出来なかったんですよ＾＾；
　今、水面下で別の企画もやっているので、中々UPの方は出来ないとは思いますが、余裕あればって感じです。色々と大変なのでとりあえずこんなもんでカンベンして下さい（笑）。

　基本的に物語のタイプとしては、ロマン溢れる話、ないし想像の世界が広がってゆくようなワンダーな話が大好きです。でも影のある話が多くてエンタメは好きだけど、純粋な娯楽は作るの苦手かな・・・・？本気系の娯楽作品が好きです。攻殻機動隊SACとか。漫画版のナウシカとか。シグルイとか。神々の山嶺とか。
　自分が苦手なのがロジック性や構成能力求められるものなので（作品自体は好きなんですが）、そういう自分の不得手な要素を今回人材や仲間探して補いたいなと思ったのが、今回このサークルを作る動機なので、良かったら誰か一緒に話作っていきましょう・・・・！
　色々と企画の方は考えてありますので、誰か一緒に話やりたい、企画やりたいって方があれば一声おかけ下さい（TOPのメアドの方かSNSの方にメッセ頂ければ。毎日チェックしてる訳でもないので、即返事はムリかもしれないですが必ずお返しします）。

　書き手の適性としては、人情モノとか向いてるかも知れません。
　ご覧の通り、ブラックな話も多数書いてますけどね（ｗ。
　自分の作品の特性というか、信条なんですが、中道の話が好きですね。全体的な話であって単体ではこの限りではないですが、いい話にしろ、ブラックな話にしろ、マジメな話にしろ、バカバカしい話にしろ。色々混ざっててバランス取れているようなもの。世間で臭いモノと言われているものの中に、輝きを見出したり。もしくはその逆。そういうのを作っていきたい・・・・・というか、自然にそうなってくと思います。
　ヨロシクです☆


↓SNSのホーム↓
http://moon.sns-park.com/yentakudoumei/?m=pc&amp;a=page_h_home    </description>
    <dc:date>2008-10-21T06:50:55+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/26.html">
    <title>予知夢</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/26.html</link>
    <description>
      **   〔予知夢〕

　私が２１３号室の患者の担当になる事に決まってしまった。
　元々担当だった裕美子が、今度寿退職する事になったからだ。

「大丈夫よ、別に噛み付きやしないから」
「……え、そうかな」
「う～ん……噛み付く位あるかもしれないな……。
　うん、流石に殺されやしないだろうから大丈夫」
「何ソレ……」
「あはは。ゴメン脅かして。
　冗談よ、普段は大人しいものよ？」
　怯えて消沈する私に、裕美子は悪びれるように言った。
　私はその引継ぎをするために、今様々な注意点を彼女から教わっているところだった。

「当たり障りのないようにしておけばいいのよ。
　別に人に危害を加えたりするタイプじゃないから、そんなに気に病む必要はないわ」
　裕美子は私を安心させるために、いつもの朗らかな笑顔で断言した。
「そう、ならいいけど……」
「ただ……」
　しかし。次の瞬間。
　その笑顔が、ふと消えた。　

「何があっても、ただの偶然だから」
「え？」
「ただの偶然だからね。絶対に気にしちゃダメ」
　それは、冗談を言ってる時の顔ではなかった。
「何、どういう事……？」
「…………」

　彼女はそれ以上は語らなかった。
　あまり言うと逆に気にし過ぎてしまう私の性格を見抜いての事かは分からない。
　むしろ、まるで自分に言い聞かせるかのようにも思えた。



　私は、一応の引継ぎを終えた後。
　例の患者のいる閉鎖病棟の２１３号室の前にやって来た。
　特に、この棟はこの病院の中での重篤な患者が、本人の意思とは無関係に強制的に入院させられている“独居房”であり。
　一人一人部屋が与えられて、鍵も閉められて我々の監視下にある。
　私がどうしてここまで余計な心配をしているのかというと。
　あまり、この患者さんのいい噂を聞かないからだ。
　何故だか詳しい事は分からないが。
　なんとなくそんな雰囲気があるのが分かるし、みんな不気味がって担当に就こうとしたがらない。
　あんな性格の裕美子だったからこそ、何とか勤まったようなものだ。

　私が今回担当を受け持ったのは。
　決して、私がみんなの嫌がる役を率先して引き受けたからではない。
　単に私が頼まれてNOとは言えない、気弱な人間なだけだからだ。

　この“独居房”は、自殺などの予防、または逆に危険がこちら側に向かう可能性のある凶器になり得るものは一切排除してある。
　窓もあるにはあるが、開閉などはできずに簡単には割れないような強化素材によるもので作られていた。
　無論、首吊りなどができないように、窓等には格子の類はない。
　そんな隙は与えない。
　まるで刑務所だな、と私は思わずにいられなかった。
　そんな部屋の中で、例の患者は私に背を向けるような形で体育座りしているようだった。

「桐谷さん……初めまして。私が新しい担当になる石川です。よろしくね」
　私がこの部屋の鍵を開けて挨拶すると。

「…………」
　患者は一瞬だけ私の方をギロっと睨むと。
　また元の自分の世界に戻ってしまった。
　そうして、ブツブツと独り言のように何か呟いている。

　先行きの事を思い遣って、私は思わずげっそりせざるを得ない。
　ただでさえこの激務に神経をすり減らせて参っているというに。
　裕美子のような鷹揚で細かい事をまるで気にしない磊落な性格だからこそ、こんな仕事は勤まるというものだ。そもそも私のような人の顔色を直ぐ伺って小さな事ですら直ぐくよくよしてしまう人間には、この職は凡そ向いてない仕事なのだった。
　それはこの仕事に就いてから、直ぐに気付いていた。
　いつ辞めてもおかしくないこの仕事をそれでも辞めずにいたのは、それもまた結婚するまでの辛抱だと、後少し、後少しと自分に言い聞かせながら何とか毎日毎日を誤魔化しながらやり過ごしていたからに他ならない。
　私はそんな腰掛けの態度や押し隠した気持ちが、いつ同僚や当の患者に読み取られないかむしろ不安だった。

　全く、おかしな話だ。
　絶対、順番が違う。私と裕美子は同期だったのだが。
　どうして私ではなく、裕美子の方が先なのだ。
　私なんかより、あの子の方がよっぽど天職なのに。
　仕事にしろ、結婚にしろ。
　私の描いた未来予想図は。こんなはずではなかったのに。
　こんな事になるのが初めから分かっていたら、私は看護学校に通ってこうまで苦労してこの道を選ぶ必要なんてなかったに違いない。

「桐谷さん、シーツ新しいの持って来ましたからね。何か必要なものがあったら言ってね」
　いけないいけない、今そんな事考えている余裕はない。
　私は、自分の今与えられた仕事だけを終えれば。
　別に相手が無視を決め込もうが、深く関わらず、そそくさとその場を後にするつもりだった。　
　しかし、私が戻ろうとした時。

「１つで十分ですよォ」
「え？」
　２１３室の患者が、ふと口を開いた。

「えと、シーツは元から一人分しか持って来てないけど……」
　聞き間違い……かな？
　私は意味不明な言葉の発信に、どう受け応えたらいいのか、分からずただ困惑していると。

　その時。事件が起こった。
　この病棟の一番端の部屋の患者と、職員が何か揉め事を起こしているようだった。
　患者の怒号に近い、周囲を気にしないバカがつく程の大きな声が、辺り病棟全体に響き渡っている。

「４つ……４つ頂戴！」
「岸さん……２つで十分でしょう？」
「４つ……！ ４つ欲しいんだよぉぉぉッ」
「もぅ、聞き訳がないわね。皆１つで我慢してるのよ？ 岸さんだけどうして４つも」
「ねぇ、何見てるの？　何々？？　私が４つって言ってるのに分からないの？
　何？　分からないんだ？　目、２つついてるのに？　２つなのに？　意味あんのそれ？
　ねぇ？　ねぇ？？　ナァ、オイ！　いらないよ！　こんなのいらないよっっ！！
　１つで十分だねぇ、１つで十分ですよォォ！！」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁッ！！」

　一体何を言い争っていたのか、詳しい事は分からないが。
　下の作業室で、脇の下にペンを隠し持っていたこの患者が。
　突如逆上して、この職員の目に、そのペンを凶器として突き立てたのだ。

「え？」
　私は、ふと。
　錯乱したこの男が最後に放った言葉に、違和感を覚えた。
　思わず彼女の方を振り返ると。そこには。

「ビンゴォッ」
　と、満足げに独り言のように漏らし。
　ククククク……っ！と、思い出し笑いのように、身体を揺らしながらほくそ笑んでいるその人がいた。

「…………っ」
　これが、私の悪夢の始まりである。



　　　※　　※　　※



　――いつからだろう、私にその目覚めの予兆が訪れたのは。

　最初は何気ない事からだった。
　普段、さして気にもならない事で、私は所謂デ・ジャブというのを良く見るようになったのだ。

（あ、この光景前見たな）

　私は最初こそは、それがまだこんな不吉なものだとは思ってもみなかった。
　むしろ、何だか面白くて嬉しがっていたかもしれない。今思うと無邪気な話なのだが。

　決定的に私がその事を自覚したのは。
　とある都営バスに乗り込んだ時だった。
　私はそのバスの中で。
　うとうとと、疲れから浅い眠りに落ちた私は、ある夢を見た。
　最初、縁起の悪いただの夢だと思っていた。
　でもなんか気になってしまい、正直、気味が悪くなってしまったのだろう。
　その夢を見た次の停留所で降りる事にした。
　そうしたら、私が下車したまさにその直後。
　ふと、振り返った私の目の前で。

　発進し出したそのバスに強引に追い越しを仕掛けようとした車に対し、突如反対車線からやってきた車が正面より突っ込んだのだ。
　さらにその反対車線の車の後続が玉突きをさらに起こし。
　その内の一台であるタンクローリーが、激しく横転してバスに突っ込み大炎上。
　辺り一面は、火の海。地獄と化した。

『………っ！』

　私がバスの中で見た夢とは。
　まさに、今目の前で起こっている、この惨事のビジョンそのものだったのだ。
　まるでスクリーンのない劇場に一人追いやられたかのように、それらを目の当たりにし。
　さりとて、成す術もなく。
　私は九死に一生を得た。

　しかし、その反面。
　私はある種の責任感に苛まれた。
　幾ら夢とはいえ。
　どうにかならなかったものだろうか……？

　それからというもの、夢を見たら私は直ぐにそれをただの思い過ごしだとは思わなくなった。
　そう。それからというもの、というからには。
　その一件だけでは終わらなかった、という事だ。
　そんな不吉な夢は、その後も後を絶たなかったのだ。
　そして、同じような悲劇を起こさないためにも。
　それら惨事を未然に防ぐために。
　私は行動を起こした。

　私が、電車の中で悪夢を見る。
　惨事になる前に、大慌てで運転手のいる最前車両へと駆け寄り、電車の発進を阻止する。
　何とかそのビジョンに出て来た、暴走族の踏み切り侵入の立ち往生には間に合ったようだけれど。
　逃走犯であるかの如く、私は途端に駅員に差し押さえられて色々と厳重注意をされ。
　周囲の通勤客には頭のおかしい人に見られ、散々な目に遭った。

　と、思えば。　
　エスカレーターが突如逆走する夢を見。将棋倒しで皆が頭から血を流す光景を夢の中で目の当たりにしたので。
　思わず緊急停止のボタンを押すと。
　通勤通学の皆にえらく怒られ怒鳴り散らされる。

　放火殺人の事を予告し。
　共犯として、捕まる。

　未成年の少年による無差別殺人のビジョンを見たので。
　現場に先回りし、警察に通報。
　その空気を察知したのか。
　当の少年は、事を起こす前に改心。
　一体、どこに捨てたのか凶器は見当たらず。
　悪質なイタズラであるかのように、逆に私が質疑応答。
　どうしてそれに気付いたのかとばかりに。
　その後、その少年に暫くの間ストーカーのように纏わり疲れ、震え上がる。

　お陰様なのか、何なのか。
　私の奮迅により。
　惨事は全て未然に防がれた。
　しかし。
　そのお返しとばかりに。
　その都度災いは、代わりに私の身に負債となって圧し掛かった。

　その際。
　幾らこの予知夢が事前に破局を教え警鐘を与えてくれるものだという事を主張しても。
　いや、主張すればする程。
　私はただ頭のおかしい女として扱われ、信じて貰えるはずもない。

　そう、彼らに分かるはずがないのだ。
　私の咄嗟の判断により、実際の惨劇は回避され、現にこうして起こっていないのだから。

　私自身、私の身に起こるこの不可解な現象を、全て確信しきっていた訳では決してなかったのであり。
　もしかしたらこの予知夢は、たまたま最初の一件が偶然と重なってしまったために起こっただけの事なのかも知れず。
　後の未然に防いだと思っていた件は、本当に私の思い違いなのではないか……などと。
　今自分の身に起こっている、俄か受け入れがたいこの白昼の悪夢から逃れたいという意識も働いたのかもしれない。

　しかし、予知夢はその存在を証明せんとするが如く。
　私がそれを見ても、その存在を無視するかのように（とは言ってももしもの事を考えると、やっぱり自分は回避してしまうのだったが）周囲にその事を知らさぬようにして扱うと、その度にやはり悲劇は再開されたのだ。
　全ての予知夢は、私の思い違いではなかったのだ、という事を。
　私は思い知らされた。

　かといって。
　それを未然に防ごうとすれば。
　そのカタストロフィの負債は一向に膨れ上がるばかり。

　そんな中。
　私はどうしたらいいかも分からず。
　当然、周りに相談しても誰も本気で取り合ってくれず。
　一人抱え込み。悩み。
　やがて段々と精神に変調を来たしていったのでした……。


『何もね、母さん真奈美が嘘を吐いているなんて、言ってないのよ。
　ただちょっとね、疲れると色々と気になっちゃったりする時があるから。母さんだって、そう。何も特別な事じゃないんだよ』

　何度も何度も警察に再三に渡り、注意され、ついには留置所送りにまでなり。
　情緒不安定で問題を起こさずにはいられない（と思ってる）私を見て、心配して気を病んでいた母は、私に精神科行く事を促した。
　母は、若い頃に父親と離婚し、女手一つで私を育て上げてくれた立派な人だ。
　滅多に怒る事も、殊更自己主張もしない、しかし情の深い母親だった。
　全く、この母にだけは心配はかけたくはなかったのに。

　しかし、幾らこんな荒唐無稽な話をしたところで、到底信じて貰えるとは自分でも思ってはいない。
　仕方なく母に連れ立たれて私は、しぶしぶと精神科へ赴いた。
　さりとて医師の前で幾ら私が予知夢の事を語れど、それが無意味である事は、それこそ夢を見るまでもなく明らかであり。

『あのですね、真奈美さん。
　デ・ジャブ（既視感）というは、何も前に自分が体験している事をそのまま正確に映し出している訳じゃないんです。
　その時貴女の中で起こった現象を、その意識が自分の脳の中で無意識層に眠っているガラクタの記憶を結び付けて、さぞ前に体験した事であるかのような一つの映画を脳内で作り出してしまったりするような事があるんです。
　つまり、以前に視た事があるかのように思えて、その実、錯覚のケースが多いんですよ。
　特に貴女の場合は、最初に見たというケースが余りにトラウマになっていて……』

『だからそーいうデ・ジャブとかじゃなくて！
　随分前にどこかで視た事ある、っていう曖昧なものならまだしも。つい、数分前に見た記憶のハッキリしている夢の話がどうしてそうなるんですか！？』
『でも、そもそも夢の記憶なんて曖昧なものでしょ？
　じゃあ、今からでもいいですよ。何か私の身に起こる事を当てて御覧なさい。
　それが当たったのなら、私は貴女の言う事を信じてもいい』
『だから……飽くまでも私のは一方的に勝手に見せられる夢であって、自分でやろうと思ってできる占い師みたいな予知能力ではないんですって！』

　ダメだ。話にならない。
　そして、勿論。
　こういう時に限って、都合良くこの能力が上手く働くとはいかず。
　何とか証明して、このいけすかない見下し意識のヘタレ科学者の鼻を明かしてやりたいところなのは言うまでもなかったが。
　お約束であるかのように、私の能力は鳴りを潜めて一向に働く気配はないのであり。

『もぅ、いいですよ。イライラするからせめてなんか安定する薬でも下さい』
　もう理解して貰おうとするのはいい加減諦め。
　せめて精神科にやって来たのだから、このノイローゼだけは何とかしようと薬の処方を促すと。

　なんだ、自分で認めているんじゃないか。
　これが精神の異常から来るものである、という事を。
　……とでも言わんが如く。

『えぇ、ちょっと多めに出しておきますね』
　と、このヤブ医者は含みのある笑みを浮かべてそう言った。
『………っ！』

　全く、イライラする。
　この能力を証明しろと言っていたが。
　お前が夢に出て来ても、絶対に教えてやるものか。
　むしろその際、現場にわざわざ出向いて、腹抱えて笑ってやる。

　私は不機嫌極まりない中、心配性の母をもう一人で大丈夫だからと帰し、また変な夢を見る前にさっさと家に帰ろうと思っていると。
　目の前から一人の不気味な老婆の姿が目に入った。
　私はさして気にしようとも思わなかったが、擦れ違い様に、その老婆がじろじろと私を見やるや否や

『毎夜毎夜うんざりじゃろうー』

　と、聞き捨てならない事を呟き。
　私は思わず、瞬間それが聞き違いではないのかと耳を疑った。
　しかし、咄嗟に振り向くと。
　老婆もこっちを向き、それが私に向けられたものである事を確信する。
　一体、どうして私がそれだと分かったのか。
　詳しくは分からないが……同じ能力を持つ者だと、予兆でそれと分かるのだろうか？？
　私らがこうして見えるのは初めてであるにも関わらず、老婆は語った。

『お婆さん、あの夢の事が分かるの……？』
　その時の私が、一体どれだけの神妙な面持ちをしていたのかは分からない。
　この老婆はその質問は答えるまでもないと思っていたのか、それには返さず。
　渋い顔をして、自分の主張したい事だけをただ矢継ぎ早に捲くし立て、語った。

『能力を持つという事は。
　代わりに何か背負うものが生まれる、という事さ。
　でも私は。人を救うのが自分の役目なんて思ってはいない。
　自分にとって必要な人間だけは生かすとして、後はショーさ。
　さながら。特等席で火事場の見物をするためのね。
　人生の気晴らしさ。
　後、私の事をバカにしたヤツの復讐とか。
　この能力を持つと、自分の周りに災いが集中するんだ。
　だからわざとその相手の前をうろうろしてやると、災いがソイツに“引っかかる”。
　で、わざと謎めいた事だけ言って、何があるかは教えてやらない。
　相手が死ぬ前に、私の謎の言葉をふと思い起こしてくれたら大成功って訳さ』

　そう、この老婦は語った。
　もしかしたら、老婆と思ってはいたが、こうしてよく見ると。
　本当は意外に歳の若い、中年の女性なのかもしれない。
　その手入れのしてない蓬髪と皺のために、私が老婆と思っているだけの事で。
　色々な気苦労の果てに、このようになってしまったのかもしれなかった。

『アンタも。間違ってもこれが何かの使命かなんかだと勘違いするんじゃないよ。
　全部背負うのはアンタ自身なんだからね。
　畢竟、人の運命を変えるなんてしちゃいけないのさ。
　事実、何もしなくても私は一向に何の罰も与えられやしない。
　なんで、こんな能力が与えられたのか神様の気まぐれにはホトホト愛想がつくが。
　きっとこれは何かのゲームかなんかじゃないのかね？
　……ホント付き合い切れないよ』
『………』
　
　それだけ言うと。この女性は去って行った。
　私の頭の中で。この女性の言っていた事がいつまでも反芻していた。

　……そうだな。言われてみれば。
　確かにこんな力が得てしまったが……それがお前の使命なんて誰が言ったのだろうか？
　神様の啓示？　……ない、ない。
　総てを自分が背負うなんて。今時そんなの流行らないよ。
　大体幾ら救ったって代わりに私が責められるだけ。
　代わりに彼らが私に今まで何をしたというのだ。
　私が社会に出て受けた事といえば、この競争社会の中で足蹴にされ、散々な目に遭っただけだ。
　今まで何一ついい事なんてなかった。

　そうだ。なんで私がそんな事しなきゃいけないんだ……？
　大体幾ら言っても信じやしないんだ。
　私は別にキリストじゃないんだし。
　ゴーダマみたいに悟ってねーし。
　神様。これ、絶対キャスティング間違ってるよ。
　私は適当じゃない。

　ともかく。
　そう思う事にした。
　そう思う事によって、急にすぅーっと、道が開けたように楽になったのは事実。
　もぅいいや。放っておこうと思ったら。
　次の事件が起きた。

　これらの心労のために、会社を休職していた私に対し。
　心配性の母親は、折角だから気晴らしにどっか旅行にでも行って来たら？と私に提案をした。
　それもそうだな、と心機一転。
　全ての流れを変えたいと思っていた私は、一人南国のリゾートの穏やかな海と空を思い浮かべ。
　この時ばかりは、この能力の事もしっかり忘れていた。

　しかし、国際空港の出発ゲートを前にして、その時間までにウトウトしていると。
　私は、やはり見てしまったのだ。

　飛行機事故の予知夢ー。

　もぅ予知夢の事は放っておこうかと思ったのに。
　これは酷い。
　事故は私が乗ろうとした便の、その隣の機で起こった。

　何かの電波障害でも起こったのか分からないが。
　急に飛行場の機の多くが全てのコントロールを失って。
　離陸の際のトラブルと着地の際のトラブルがまた運悪く重なり、揚力が足りずに針路が狂って正面より互いぶつかり。
　花火のように滑走路の上で弾けた。

　正面から爆発するのもあれば、ムリに回避を計ろうとして管制塔に突っ込むものもあり。
　その爆発の巻き添えを食った飛行機が、片方の翼をやられてクルクルとブーメランみたいに横に回転してまた別の飛行機に突っ込み。
　モクモクと上がる黒煙がパイロットの視界を遮り、逃げ惑う滑走路の乗客の上にさらに突っ込む。
　航空ショーを花火大会に変更したような、もはやイリュージョンとも言える惨劇。
　その阿鼻叫喚の地獄の中で、何故だか自分だけが無傷の生還。
　私を避けるようにして、バラバラになった機体や人間達が雨あられのようにザンブと降って来て地面に次々と面白いように叩きつけられていったのを覚えている。一体、何千、何万の人が亡くなったのか…？

　って、こんなの見せられても（汗。
　幾ら大惨事とはいえ。
　……こんなの普通じゃない。

　あれ、今からそんな事が起こるんなら。
　例え私が無傷だとしても。
　こうして、何も気付かなかったように搭乗しても、意味なんてないじゃないか。
　恐らく、数ヶ月の間位はこの滑走路は使用不可になるんじゃないか。
　いずれにしろ、今日一日はこの空港から飛行機自体飛び立つのは無理かもしれない。
　………。
　って、私は何を呑気にしてるんだ…？

『…………』

　ふと、私は辺りを見渡した。
　空港のターミナルには。
　悲喜交々、様々な人間ドラマが、今日も繰り広げられていた。

　旅の一生の想い出に、免税店で買い物を楽しむ外国人達。
　初めて乗る飛行機を楽しみに、無邪気にはしゃぐ子供達。
　それをたしなめる、がんばって奮発した甲斐があったモンだと満足げなご両親方。
　別れを惜しみ、残された時間を慈しむ恋人達。
　海外の彼の聖地で、念願の夢を叶えるために、夢の片道切符を片手に希望に燃える若者達それぞれ。
　そして、まさに今ゲートを通過する誰もが、旅先での世界に心を馳せて、思い思いに飛行機に乗り込もうとするところだった。

　幾ら私にそんな責任がなかったしても。
　勿論、この人達にもまた、罪などあろうはずもない。
　それでも私は……。

　………。
　…………。
　今なら……
　………今なら、まだ間に合う！？

『おい……どうしたんだ君ッ！』

　私はもう、迷わなかった。
　幾らなんでも。これは、仕方がない。
　私が少しの頭がおかしいと思われるだけで、それだけの犠牲が救われるというのなら。
　今回が…今回が最後だ、畜生ッ。もぅ飛行機なんて二度と乗ってやるもんか！

『誰かッ！　誰かあの女を止めてくれ！！』

　私は警備員の目を上手く掻い潜って、一気に猛ダッシュした。
　気付いた頃には、もう問題の滑走路。
　惨劇の発端となる機の前に、駆け出していた。
　それに気付いた私の目の前ギリギリで、機が急停止を計る。

　そう。
　状況は少し違うが、まるでダイ・ハード２のブルース・ウィルスみたいに。
　今の私、ちょっとカッコイイかも。

　しかし、勿論、これは映画なのではなく。
　幾ら経緯が最悪なのまでは同じであっても、最後にハッピーエンドが待ち受ける訳もなく。
　問題の機は私の眼前で緊急停止を果たし、無事危機は回避されたのを確認すると。
　ホッと胸を撫で下ろすと。同時に。

　その瞬間、私は背筋に薄ら寒さを感じた。
　…………。ともかく。
　もぅ、危機は去ったのだ。去ったのです。
　良かったですね、皆さん。ご無事で。
　ご無事で……。

『………っ』
　人々が勿論、身を呈して命を救ってくれた私に感謝の号泣で出迎えてくれた……はずはなく。
　まるで麻薬密売犯がそうされるように、今回も後ろ手にさせられ、押さえ込まれ。これが男ならばあわばボコボコにされんが勢いで取り押さえられた。
　代わりに私を歓迎する、非難と哀れみの冷たい視線。怒号。罵声。

　私の所為で、この滑走路は数時間の間使えなくなり。
　空港会社と私の家にはとんでもない賠償金が請求された。
　一体、人生何回やり直せばこんな金作れるのか？という。

　しかし、もはや私は刑事責任というよりか、精神医療の強制（矯正？）を受ける立場にあるらしく。
　暫くの留置の末、呆然としながら家に帰ると。

『真奈美ちゃん。もう頼むから、これで最後にしてね』

　と、遺書を残して。
　この気弱な母親は、自宅で首を括っていた。
　今まで私に課せられた損害賠償は、皆母が何とかしようとしていたのだった。
　もう限界と感じたのか、単に疲れきってしまったのか。
　ともかく、私は。この夢までは見る事は叶わなかったのだ。

　ははは。これだけ素敵な悪夢散々見せ付けられて。
　無関係の人間救って、叱られて、身近な人間はこれって。
　一体、どんなオチやねん。

　なぜ大阪弁になってしまったのかは、どうでもいい。
　ともかく。私の中で、何かが終わった。
　その後、私は精神鑑定の後、自動的に精神病院に入れられる事になった。
　中でも、収容所とでも言えるような、重篤患者が集まる閉鎖病棟の中へと。

　ブツブツブツ………



　ともかく。
　私はもう疲れてしまったのだ。
　閉鎖病棟へこうして入れられた後も。
　まだあの悪夢は、相変わらず私を苦しめている。

　一つ今までとは違う事は。
　以前と違って、もう決意というか、開き直りというか、諦めの心がついたという事だ。
　やはり、あの老婆の言う事は間違っていなかった。
　こんなん、どうしようもない。
　深く考えて思い悩んでも何の意味もあったもんじゃない。
　地球なんて、別に滅んでもいいんじゃないのかなぁ。
　ブッシュとビン・ラディン。仲良くケンカしな。
　もはや、そんな事すら思えて来てしまう。
　あ～テポドンテポドン。

　勿論、そんな事思っててもしょうがないので。
　せめて私から、先に消えるとしよう。

「ちょっと何をしてるんですかっ！！」

　さっき新しく担当になった女が持って来た、この洗濯したてのシーツを使って。
　ベッドを上手い角度で縦にして、私はその足にシーツをかけて、母のように首吊りを計った。
　しかし、運悪くこの新しい担当に見つけられ。
　自殺してこの悪夢を終わらそうとしても、それすらもさせてくれない事を。私は悟った。

　運悪く…？
　冗談。私、嘘吐きました。
　はい。
　うん、分かってた。これも夢で見た。見ました。
　やっぱり止められた。止められました。この女に。
　あは。あははははは。

「クククククク…ッ」



　　　※　　※　　※



「………ッ」
　一体何がおかしいと言うのだろうか。

　今、私の目の前で、自殺を阻止させた女が、さりとて嘆く訳でもなく、止めようとした私に喰ってかかって激昂する訳でもなく。
　ただ、薄気味悪く笑っている。
　『やっぱりね』と言った感じで。
　私は、からかわれているのだろうか……？
　新人いびり……って、訳じゃないよね…？

　全く、初日だというのに、これだ。
　先が思い遣られる……。

「そういえば。裕美子ちゃん元気ぃ」
　私がどう対応していいものか分かりかねているところに。
　まるで今死のうとした事なんか忘れてしまったかのように、この女はその話を振って来た。

「もし会ったら。これでようやく『お仲間』みたいなモンになっちゃってねって言っておいてね。クク……ッ」
「何、言ってるの？　アナタ……」
「だから、あんな男止めれば良かったのにぃ。
　全く、人の話聞かないんだから……」
「…………」

　私はまたこの女の不可解な発言に、どう対処したらいいのか分からず、ただ戸惑う。
　あんな男って……彼女、この女に婚約者の事話したのかしら……？
　幾ら気さくで開けっ広げな性格だからって、私のような気弱な人間をからかったりするのが好きな冗談好きだからとはいえ、こんな状況の人相手にそんな疎まれかねないような事自慢げに話したりするような子じゃなかったはずなんだけど。

「まぁ。分かってたから言ったんだけどね」
　そうして、彼女は。
　イシシシシシッと意地悪そうに笑った。


「え！？」
　私がナースセンターに戻った後。
　同僚が慌てて私に話しかけてきて、私をそれを知り。驚愕した。

「松浦さん、それ一体いつ聞いたの？」
「いつって今よ。さっき、中島さんが忘れてった物があったから彼女に電話しようとしたら出なくて。仕方ないから自宅の方に電話したらご両親が」
「この話、誰か他の人に話した？」
「いえ、石川さんが最初よ。どうして…？」

　私を差し置いて。
　幸せ一杯と思われた裕美子が。
　どうやら、結婚式前夜に、恐らく旦那からすれば独身貴族最後の精算だとでも思ったのであろう。
　不幸にも婚約者の浮気の現場にちょうど出くわし。
　逆上の末、男と浮気相手とを包丁で刺し殺したらしいのだ。

「………っ」
　私は、薄ら寒く背筋の凍る想いをした。
　あの陰のまるでなかった（と思ってた）裕美子が……一体どうして！？
　恐らく今頃、彼女は留置所の中だろう。
　『これでお仲間みたいなモンだね』とあの狂った女の言った言葉の意味とは。
　つまり、そういう事だった……のか？

「桐谷さん、中島さんの話、一体どこで聞いたの？」
「…………」
　私は思わず、問い質さずにはいられなかった。
　しかし、彼女は素っ気無く何も語ろうとはしなかった。
　何を今さら、そんな表情をして。私の質問には無視を決め込んでいた。

　私は改めて同僚達に、彼女の悪い噂を確かめた。
「予知……夢…？」
　私はその事実に唖然とした。
　まるで、現実味のない荒唐無稽な話に。

「そう、彼女。ここへ入院になる前からずっとそんな事を言っててね。
　先生はその内その妄想も別のモノに変わるって踏んでたみたいだけど……でもねぇ、あながちそうとも言い切れないところが、彼女の担当になった人は皆口々に言うのよ。で、薄気味悪くなっちゃって誰も彼女の担当やりたくなくなっちゃって」
「…………」

　そういえば。今、彼女は？
　私がふと、戻って彼女の姿を探すと。
　彼女は今、自室ではなく、食事の時間で食堂に下りている事に気付いた。


「ねぇ、真奈美ちゃーん。
　一緒に食べない？　一緒に食べようよっっ」
「…………」
「真奈美ちゃ～ん……食べよ？　真奈美ちゃん？　ボク？　どっちどっち？？」
「食べないよ！　それにアンタッ」
　一方的に好意を持たれているのか何か知らないが。
　果たしてこれは求愛なのだろうか？
　恐らく実年齢は４０の中年と思われる入院患者の一人に、望まれぬ同席を言い寄られ、彼女は困惑していた。
　しまいには訳の分からない事を言って来たので、彼女はこの時、夢の中の話を思わず口にしようとしたのかは分からない。

「…………」
　彼女は何か思い留まるように。
　代わりに、彼の給食の食器を次々と持ち上げ。お盆だけを抜き取ると。
　どっかから持ち出した赤色のマーカーを手にし。
　何かを書き始めた。
　そして、何事もなかったように、再びそのお盆にまだ口をつけてない食事の入った食器などを戻してゆき、本人の手に返す。

「？」
　返された本人は、意味が分からずキョトンとしている。

「いいから一人で食べなよ。私はもう食べ終わったからさぁ」
　そう言い残して、彼女はそのまま一人自室へと戻って行った。
　残された中年の子供は、？？？の表情を暫く浮かべると。
「…………」
　幾ら考えてもしょうがない事なので、盆を裏返して確認する事もなく、目の前の状況を思い出し。暫くは一人で食事をしていたのだったが。
　やがて。

「一人で食べるのやっぱつまらない……
　だったら部屋で食べる！」
「あ、高木さん！　ご飯はここで食べてかないとダメ！！」

　職員の叱責の声も届かず。暴走。
　彼は子供のように無邪気に、彼は跳ね上がるように階段を駆け足で登って行った。
　思わず勢い余って。
　その足を踏み外す。

　――あっ

　その求愛の彼は。
　体勢を崩し。
　大きく後ろにのけ反って、飛ぶようにして落下し。
　階段の角に後頭部をそのまま打ちつけ。
　無残、シェーのポーズのまま、脳漿と頭蓋をしこたまリノリウムの床に撒き散らして絶命した。

「あ～汚ねぇなぁ」
　階段一面に飛び散った「それ」を眺めながら。
　事態の重大さを良く分かってない別の重篤患者の一人が、アラレちゃんがう○こを突くように、脳味噌がなくなってスカスカになっている高木の頭の中を手持ちの箸でつんつんとまさぐっていた。カニ味噌でもほじくり出すが如く。

　裏返しになったお盆の裏には。
　赤いマーカーで、こんな言葉が書き添えられていた。

『YOUはSHOCK!!!
　お前はもう死んでいる』

「キャーッ！」
　……という職員の悲鳴が聞こえたのと、
「ギヒヒヒッ」
　……と、彼女が薄ら笑うのと、ほぼ同時であり。
　私は、その瞬間の彼女を姿を見て、再びゾクッと背筋が凍る想いをした。
「………っ」

「…………」
（なんだ。初めから、こうしていれば良かったな。
　振り返れば、私の人生。
　いつもそうなんだ。取り返しのつかないような事が起こってからそれに気付く。
　もう、どうでもいいけどね……）


　そんな彼女を他所に。
　私の精神は混乱していた。
　これはもはや、偶然なんかじゃ……ない？
　しかし。果たしてこれを予知というのだろうか？
　ひょっとすると。これは予知なんかじゃなく。
　この人自身が引き起こしてるんじゃないのか…？
　それを望んでいるか、望んでいないかはともかく。
　凶事を予見しているのではなく、凶事を悪夢を元に引き寄せ、再現しているのではないのだろうか…？

　思わず、そんな気すらして来る。
　もしかして。裕美子も何か言われたんじゃないのか…？
　怖い。あぁ、怖い。
　私も、何か言われてしまうのかしら…？
　いけない、気にしちゃダメ……
　完全に、この人のペースだわ。



　　　※　　※　　※



「…………」

　幾ら、今さら人に私の予知を他人に証明する手段を思いついたからって。
　もう、終わってしまったのだ。既に。私の人生は。
　取り返しのつかない母親の死と、人生何度やり直しても返せそうにもない、大量の負債を抱え込んで。
　もうやり直せない。

　この私の能力は。
　悪い事にしか働かず、恐らく馬券を当てるとか、宝くじとか。そういう事にはまるで反応しないのだろう。
　そんな事は、言われなくても分かりきっている。
　でも、そんな事は分かっていても。
　相変わらず、私はこの悪夢を見ない訳にはいかない。
　私が生きていて、生きているからには睡眠を取らざるを得ない以上は。
　私はまた、あの悪夢の劇場へと送り込まれてしまう。

　結局。
　予知夢って。占いと違って好きで見ている訳じゃない訳で。
　その上。
　人間、誰しも寝れずにはいられないから大変な訳で。
　とはいっても。考えようによっては。
　まぁ別にフレディー出て来る訳じゃないし。
　そう、これは映画なんだ。
　精々、そう思えば。この人生の三分の一を楽しみに変えていかなきゃやってけない。

　そう思いながら。
　今宵もまた、私の意識は強制的に劇場に転送される。
　さてさて。今夜の演目は……？

　…………。

　あぁ、来るな。
　うん、来る。
　こりゃあ、もうダメだ。

　これから巨大な隕石が、この病棟に向かって落ちてくる。
　直撃コース。
　これは流石に私もかわせないな。まぁいいや。なんかもぅ疲れちゃったし。

　みんなには。
　直前になるまで教えてやらない。
　きっとヤツらは、最期になって。私の言ってた事が本当だったと青ざめるだろう。
　マッタク、その時が楽しみだ。

　クククククク……ッ



　　　※　　※　　※



「………っ」

　まただ。
　また寝ているというのに、薄気味悪く笑っている。
　一体、その夢の中で。何を見ているというの……？

　そんな彼女の満足げな笑顔を見て。
　ふと、薄ら寒いものが、何故だか上方より迫って来るのを感じていた。

　あぁ、私もなんか変な影響受けているみたいだ。
　いやだなぁ。
　あぁ、イヤだイヤだ。
　別の事を考えよう。

　明日の晩御飯何にしよう……
　私は全ての思考を閉じようとしていた。

　――大丈夫、全ては気の所為だから。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔予知夢・完〕





------------------------------------------------------

※蛇足の作者本人解説

　ズバリ世にも奇妙な物語的な内容でして。
　予知に纏わる話ですね。
　超能力を抱えた人間の苦悩、というのは。例えばナイトヘッドとかXメンとかを代表として、良くあるんですが。
　その最たるものをやってみようか、と。

　今回、予知能力というものを望まずして受けた人間がいるとして。
　それを放っておくと悲劇が必ず起きる。
　しかし、それを自分の与えられた責務として捉え、救済を全うしようとすると。
　無論、危機の痕跡すらなかったら、もう一方の未来の悲劇の選択肢なんて、相手には分かりようない訳であり。
　逆に、自分が救った相手に悪者のように扱われて、誰にも信じて貰えず、酷い目に遭ってしまうと。
　そんな理不尽極まりない状況を考えてみて、これはちょっとたまらないんじゃないか～誰であろうが人間不信真っ逆さまだろうなぁ・・・・・と思い。それを話にしてみました。
　
　旧約聖書の散々ないわれのな受難を受けながらも神への信仰を貫き通した聖人ヨブの話をちょっと思い出したりなんぞして、でも、それが自己犠牲の試練などではなく、全くただの神様のイタズラだったらどうする・・・・？そうじゃない保証がどこにある・・・・？なんていう疑問もアリ。
　そんなブラックな展開で、病院でのムチャクチャさはちょっと危険な気もするけど、それでただのウィットもので終わってないような気がするからいいかな？なんて思ってやっちゃいました。というか、ただのウィットもので終わらなくて良かったです。

　う～ん、でも病院舞台にこの手のブラック表現やったら誤解されちゃいそうで、ちょっと諸刃の剣を感じてますけど、怪奇話だからそれ以上でもそれ以下でもない訳で・・・・・どうなんだろうなぁ？そこ＾＾；


- 雰囲気は結構良かったと思います。閉鎖病棟の描写とか、各患者の病名とか、病院内の風景とか事物の名称とか、賠償金額はいくらとかというところがもうちょっとリアルに描かれていると、幻想部分との対比が効いて来るんじゃないかな～と思いました。  -- なああむ  (2008-07-24 20:29:37)
- ちょっと病名とか挙げちゃうとイケナイかなとか思ってそういうのはやめにしました＾＾；　確かにここで賠償金額とか計算できたりすれば凄いなーと思うんですけどねぇ  -- てん☆ぐす  (2008-10-13 04:09:25)
#comment    </description>
    <dc:date>2008-10-13T04:09:25+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/31.html">
    <title>「Gunner」の作品一覧</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/31.html</link>
    <description>
      *「gunner」の作品一覧ページ

----
短編小説らしきもの
|・[[電話ボックス]]　（短編・クライシスサスペンス）|
|・[[愉快]]　（短編・超ブラックユーモア）|
|・[[セカンドコンタクト]]　（短編・試験的１８禁）|

----
過去作品二次創作中篇
|・[[Fate／lost recollection]]|

----
現在進行中の企画
|・[[「秒速7900m（仮）」&gt;「秒速7900m（仮）」関連ページ]]|

----
〔自己紹介〕

　妄想がとまらない。うひうひ。つんでれ万歳。

↓個人的ＨＰ↓
http://www.gunners-high.com/
↓SNSのホーム↓
http://moon.sns-park.com/yentakudoumei/?m=pc&amp;a=page_h_home    </description>
    <dc:date>2008-08-21T23:20:36+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/27.html">
    <title>金髪の鬣の草原</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/yen-taku/pages/27.html</link>
    <description>
      **〔金色の鬣の草原〕


　お父さんとお母さんに連れられて、動物園に行ったんだ。

　そしたらライオンを見た。
　百獣の王と言われる凄いヤツさ。
　僕はもう夢中。
　中でも、雄のあの見事な鬣に惹かれたのです。

　あの見事な金色の鬣に触れたいなぁ。
　あの金色の鬣の絨毯で昼寝したら、さぞかし夢心地というヤツだろう。
　　

『できるさ』
　その時、ライオンが僕に向かって語りかけたんだ。

『さぁ、私の背中に乗ってご覧』

　僕が彼の背中に乗ると。
　その鬣は見る見るウチに広がっていって、僕の目の前で金色の草原になっていったんだ。
「わぁ～！」

『さぁ、行くよ』
　そう言ってライオンは翼が生えて、やがて大きく僕を乗せて飛び立った。





　　――そうして僕達は、星座になったんだ。


（※星座になってしまったライオンと少年の星を、涙を浮かべながら見上げ、夫は妻を支えるという図。しかしそんな状況ながらも、しっかり妻の腹には次弾が装填されており、ボッコリとなってたり）




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お　し　ま　い



----

※蛇足の作者本人解説

　なんじゃコレ！？と首を傾げる方も多いと思いますが（笑）。
　ファンタジー×ブラックユーモア≒ナンセンスという図式で作ってみました。
　勿論、あの少年はライオンに連れられて本当に星の世界に行ってしまったのかな？という含みもアリで。

　自分、漫画のゴールデンラッキーが大好きなので、そのオマージュというか、そのノリというか。作ってから気付いたんだけど、明らかに4コマの運びですもんコレ。　
　なんというか、「え？こんなんでもいいの？（汗」という例として、いいんじゃないかなー（採用されるかは別としてｗ）という事で作ってみました。


- 少年＝ライオンにくわれた &amp;br()ライオン＝銃殺 &amp;br()(;´ω｀)&gt; ｺﾜｨｺﾜｨ &amp;br()  -- 枕辺  (2008-05-14 06:47:06)
- まぁ、そこはファンタジーなので・・・・・・・ｗ  -- てん☆ぐす  (2008-05-16 02:10:17)
- オチが秀逸ですね。  -- chrom  (2008-06-07 22:44:42)
- え”～。衝撃のラストでした（笑）。ビジュアル的には綺麗ですな＾＾。  -- なああむ  (2008-07-24 20:13:07)
#comment    </description>
    <dc:date>2008-07-24T20:13:07+09:00</dc:date>
  </item>
  </rdf:RDF>

