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    <title>自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家</title>
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    <description>自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家</description>

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    <title>星がはためく時/327 第241話　報復者奮戦</title>
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    <description>
      第２４１話　報復者奮戦

１４８５年（１９４５年）７月２９日午前９時２０分　リーシウィルム沖

第５７任務部隊司令官であるジョン・リーブス中将は、旗艦リプライザルのＣＩＣで対勢表示板に記されていく敵味方の駒
を見据えていた。

「司令官。ＣＡＰが敵編隊と交戦を開始しました。」

参謀長のフラッツ・ラスコルス少将がリーブスにそう伝える。
ラスコルス少将は、３か月前までは空母イントレピッドの艦長を務めていたが、少将に昇進後は本国で待命状態にあった。
今年の６月後半に、ＴＦ５７の編成が決まると、ラスコルスはリーブスの推薦でＴＦ５７参謀長に就任し、７月１日より
ＴＦ５７のＮｏ．２として、日々の任務をこなし続けている。

「現在、敵編隊は我が機動部隊より西方９０マイルの所まで接近しています。敵編隊の数は、迎撃隊が対応している部隊で
２００から３００ほど。５分前にピケット艦から届けられてきた新たな敵編隊は、１００から２００機以上は居るようです。」
「総計で４００ないし５００近くの敵編隊が、このＴＦ５７に迫っている事になるな。」

ラスコルスの説明を聞いたリーブスは、静かな声音で答える。

「この敵編隊の数を見る限り、俺達は蜂の巣をつついた悪戯小僧のような状態に陥ったようだな。」
「確かに。この敵編隊の数は明らかに多いですな。我々だけでは、荷が重いかもしれません。」

リーブスは、やや複雑な表情を浮かべながら腕を組む。

「……ひとまずは、敵の第１波攻撃隊を凌ぎ切る事を考えよう。敵の第１波が過ぎ去れば、幾らか間が空く。参謀長、敵の第１波が
終わり次第、第１次攻撃隊の収容を行う。第１波と第２波の距離は１３０マイル以上もあるから、その間になんとか降ろせるだろう。」 


「わかりました。」

ラスコルス参謀長は軽く頷いてから、航空参謀を呼び付け、リーブスの指示を伝えた。
９隻の空母から発艦した迎撃機は１４０機を数え、敵の第１波攻撃隊に猛攻を加えていたが、敵編隊も４割ほどを戦闘飛空挺や
戦闘ワイバーンで固めていたため、敵の攻撃機をなかなか減らす事が出来なかったが、それでも、一部のＦ６ＦやＦ４Ｕが敵の迎撃を
突破して、痛撃を与えた。

午前９時４０分頃には、敵の攻撃隊は第５７任務部隊第１任務群に接近しつつあった。

空母リプライザル艦長ジョージ・ベレンティー大佐は、艦橋のスリットガラス越しに接近して来る敵編隊の姿を視認していた。

「遂に来たぞ。」

ベレンティー艦長は、眉をひそめながら小声で呟いた。
双眼鏡越しに、少なくとも８０は下らぬ数の飛行物体が見える。その大半は翼を上下させており、残りは翼が動いていない。

「ワイバーンと飛空挺の混成編隊とは。これまた珍しい物だな。」

彼は、初めて見る編成に喉を唸らせつつ、艦内電話で砲術長を呼び出した。

「こちら艦長。砲術長、いよいよ実戦だぞ。準備は出来ているか？」
「ええ。準備万端。いつでも行けますよ！」

受話器の向こう側の砲術長は、自信に満ちた口調でベレンティーに言って来る。

「ようし。あと少しの辛抱だが、念のためだ。命令があるまで撃つな。その時が来たら指示を伝える。」
「了解です！」 
ベレンティーは砲術長との会話を終え、受話器を置く。
視線を敵編隊の接近しつつある方角……艦の左舷側前方に向け直す。

「敵編隊、二手に別れます！」

見張り員の声が響いて来る。ベレンティーは、双眼鏡の向こう側に映る敵編隊が、その報告通りに動くさまを無言で見つめ続ける。

「高空と低空に別れたか……大雑把に二手に別れて左右挟撃に移るかと思ったが……ここは戦力を集中して強引に突破を図ろうと
考えたようだな。」

ベレンティーは、敵の戦術を冷静に読み取りながら、敵編隊が輪形陣に近付くのを待つ。
心中では、久方ぶりに体験する敵の空襲に半ば緊張していたが、表情は平静そのものであった。

「外郭の駆逐艦が対空戦闘を開始！」

唐突に、見張り員の声が艦橋に響いて来る。
ベレンティーは、自らの目で左舷側方向に広がる戦闘の模様を確認する。
輪形陣左側の駆逐艦部隊は、アレン・Ｍ・サムナー級駆逐艦９隻が展開しており、それぞれ６門の５インチ砲を、接近しつつある
敵編隊目掛けて撃ちまくる。
陣形左側の上空は、高角砲弾が炸裂するたびに多数の黒煙が湧き出し、空があっという間に砲弾炸裂の爆煙で覆われていく。
リプライザルの左舷側を行く巡洋戦艦のトライデントが、重巡ロサンゼルスと軽巡ホーマー、アムステルダムと共に対空戦闘を開始する。
たちまち濃密な弾幕が敵編隊の周囲で形成されていく。
高空に展開しているワイバーンと思しき敵影が１騎、２騎、３騎と、次々に墜落して行く。

「砲術長！射撃を開始しろ！」

ベレンティーは、艦内電話で砲術長に命令を伝えた。 

それから１秒後、リプライザルの左舷側に搭載されている８門の５４口径５インチ砲が火を噴いた。
断続的に放たれる５インチ砲弾が、敵編隊の周囲で炸裂して無数の破片を飛び散らせる。
破片を食らったワイバーンが致命傷を負い、夥しい血を流しながら海面目掛けて落下して行く。
その時、一群のワイバーンが駆逐艦群めがけて急降下を開始した。
１４、５騎のワイバーンは、それぞれ４、５ずつに別れて、１隻の駆逐艦に向けて突進して行く。
危機を察知した駆逐艦は、５インチ砲のみならず、４０ミリ、２０ミリ機銃を撃ちまくって、接近するワイバーンを迎撃する。
狙われた駆逐艦は３隻。
うち２隻はワイバーンの攻撃をかわしたが、１隻が爆弾２発を浴びた。
その駆逐艦は中央部付近と前部付近に３００リギル爆弾を受けた後、黒煙を吐き出しつつ、艦隊から落伍して行った。
後続のワイバーン隊は、それ以上駆逐艦部隊に攻撃を加える事も無く、高空の急降下爆撃隊と低空に展開した雷撃隊は、高角砲と
機銃を撃ちまくる駆逐艦を尻目に輪形陣の内部へと突き進んでいく。
駆逐艦部隊の迎撃網を突破した最初の急降下爆撃隊は、次に巡洋艦群と巡戦トライデントの放った対空砲陣に捉われた。
これに加えて、陣形左側に面しているリプライザルとレイク・シャンプレインも畳み掛けるように、高角砲を撃ちまくる。
ワイバーン隊の被撃墜数がここに来て急増し始める。
最初に駆逐艦の防衛ラインを突破して来た１８騎のワイバーンは、あっという間に１１騎にまで数を減らした。
更に、あとに続いて来た降下爆撃隊１９騎も猛烈な対空弾幕に捉われてばたばたと叩き落とされていく。
そこに、シホールアンル側の雷撃隊が駆逐艦の防御ラインを突破して巡洋艦群をすり抜けようとする。
雷撃隊の中には、見慣れたワイバーンと違って、変わった飛行隊が混じっていた。

「艦長！護衛艦のトライデントが敵の雷撃隊に複数のケルフェラクを確認せりとの事！」
「何？雷撃隊にケルフェラクだと？」

ベレンティーは、スピーカー越しに伝えられた報告に眉をひそめながら、脳裏で敵の狙いが何であるかを推測する。
（錬度の低いとされるワイバーン隊と比較して、ケルフェラク隊はまだまだ高い錬度を維持していると聞いている。
連中は、ケルフェラク隊にも魚雷攻撃を行わせて、こっちの空母を沈めるつもりかな）
ベレンティーがそう思う間にも、対空戦闘は続いて行く。 

敵の降下爆撃隊の第１陣が遂に巡洋艦と巡戦に防御ラインを突破し、空母群の上空に躍り出して来た。

「敵機直上！本艦に向けて急降下ー！」

見張りが悲鳴じみた叫び声を上げて来る。
先陣を切ったワイバーン隊７騎は、定めた目標に対して急降下爆撃を敢行した。
敵の目標は、リプライザルだ。
ワイバーンが翼を半ば折り畳んだ状態のまま急降下していく。
限界にまで砲身を振り上げた５インチ砲と４０ミリ機銃、２０ミリ機銃が火を噴き、猛烈な弾幕がワイバーンの前面に形成される。
僚艦の高角砲と機銃も、ＴＦ５７の旗艦であるリプライザルに指一本触れさせぬとばかりに激しく撃ち放たれる。
リプライザルの上空には、高射砲弾炸裂の黒煙が無数に湧き立つ。炸裂煙の密度は、まるで空中散歩も可能と思わんばかりに濃い。
だが、ワイバーン隊はそれに屈する事無く、リプライザル目掛けて効果を続けていく。
先頭のワイバーンが４０ミリ機銃弾の集束弾を受ける。
ワイバーンは瞬時に頭部が爆ぜ、竜騎士は痛みを感じる暇もなく、手足を残して体全体が粉砕される。
一瞬にして細かく分解された指揮官騎を見ても、後続のワイバーンは怯むまでもなく、逆に、武人の本懐を遂げた指揮官に敬意を表しながら、
相棒と共に火の嵐と化した空域に突っ込んでいく。

「取舵一杯！」

ベレンティーは命令を発した。
彼の指示はすぐさま航海科に伝わり、舵輪を操る水兵が勢いよく回して行く。
リプライザルは、その大きさゆえ、舵輪を勢いよく回してもすぐに舵を切れない。艦が回頭を始めるには、最低でも４０秒ほどはかかる。
２騎目、３騎目が撃墜され、更に４騎目も指揮官騎と同様にワイバーン、竜騎士もろとも粉砕されたが、５騎目が遂に高度５００メートルまで
降下し、腹に抱えていた爆弾を投下した。

「敵機、爆弾投下！」 

という声が響いた直後、リプライザルの艦首が回り始めた。
リプライザルの艦首が、左に大きく回っていく。
敵５番騎の爆弾は、リプライザルの艦首右舷側海面に落下して、高々と水柱を噴き上げた。
続いて６番騎が爆弾を投下するが、これは右舷側海面に大きく外れ、虚しく水柱噴き上げる。
更に７番騎の爆弾も落下して来る。
ワイバーンの体から投下された爆弾の姿が、ほぼ真円に近かった。

「む……こいつはまずいぞ……！」

ベレンティーは背筋に冷たい物を感じた。
落下する爆弾が外れる時は、大抵が長い棒のような感じに見える。
そうなれば、爆弾は艦に落下せずに済むが、見える爆弾の姿が、今のように真丸に近い形の場合は高確率で命中する。

「来るぞ……！」

ベレンティーは被弾を覚悟し、両足を思い切り踏ん張った。
直後、右舷側から付き上がる様な振動が伝わり、リプライザルの巨体が直撃弾を受けたかのように揺さぶられた。

「うぉ！？」

ベレンティーは振動に体を揺らしながらも、何とか耐えた。

「右舷中央部付近に至近弾！右舷第３機銃群に損害！」

今度はダメコン班から被害報告が入る。
どうやら、先程の爆弾は右舷側に至近弾となって落下したようだ。 

（ふぅ、危ない危ない）
ベレンティーは内心安堵しつつも、次の指示を口から吐き出す。

「舵戻せ！面舵一杯！」

彼の指示が伝わり、操舵員が舵輪を反対に回して行く。
回頭を行っていたリプライザルは、程無くして直進し始め、その次に右に回頭し始めるが、その頃には、敵降爆隊の第２陣が
リプライザル目掛けて襲い掛かって来た。

「１１時上方より敵騎７、急降下！」
「８時上方より敵騎４、向かって来る！」

見張り員が２つの報告を届けて来る。
（２方向から突っ込んで来るとは。この敵は意外とやり手かもしれんぞ。）
ベレンティーは心中で呟く。
リプライザルが爆弾回避のために急回頭した事で、ＴＧ５７．１の陣形はやや乱れていた。
陣形は、リプライザルに追随する形で回頭を行ったトライデントと重巡ロサンゼルス、軽巡ホーマー、陣形左側に居た駆逐艦８隻と、
そのまま直進を続けた空母レイク・シャンプレインとグラーズレット・シー、軽空母タラハシーと巡戦コンステレーション、
重巡アストリア、軽巡アムステルダム、ガルベストン、駆逐艦９隻の２つに別れている。
敵編隊は、リプライザルの居る陣形に襲い掛かっていた。

「低空の敵雷撃隊の一部が第２防衛ラインを突破しました！」

ベレンティーの耳にその報告が伝わって来る。
彼は、更なる脅威が迫りつつある事を確信しつつ、自らの目で低空の敵を確認する。
低空侵入の敵編隊はワイバーンばかりであった。 

「敵騎急接近！あっ、爆弾を落としました！！」

見張り員の声が響く。
その次の瞬間、リプライザルの左舷側海面に水柱が噴き上がる。
水柱は艦首側に１本立ち上がったと思いきや、その後方に１本、そのまた後ろに１本と、申し合わせたかのように立ち上がった。
４本目の水柱はリプライザルの左舷側後方に突き上がったが、そこは艦橋の死角に位置していたため、ベレンティーは見る事が出来なかった。
５本目が、リプライザルの艦首から２０メートル程の位置で立ち上がる。
まるで、逃げ惑うリプライザルを阻まんかの様に突き上がった水柱は、その直後に、３０ノット以上の高速で驀進するリプライザル自身に
突っ込まれ、呆気なく崩れていく。
大量の海水が、滝のような音を立てて広大な飛行甲板に降りかかってきた。
ベレンティーがそれに何か思う暇もなく、新たな爆弾が右舷後部付近に至近弾として落下し、リプライザルの巨体を揺さぶる。
至近弾落下の衝撃を感じた直後、異音が飛行甲板で鳴ったと思いきや、激しい爆発音が響いて来た。

「これは……！」

ベレンティーはその轟音を聞くや、リプライザルに何が起こったのかがわかった。

「飛行甲板中央部に被弾！」

彼は見張り員の報告を聞くなり、遂に……と呟いた。
リプライザルの乗員達が、初の被弾に驚くが、そこに、新たな１発が飛行甲板を叩いた。

「ぐ……！」

２発目の被弾に、ベレンティーは険しい顔つきを浮かべながら振動に耐える。
今度の衝撃は後部付近から伝わって来た。敵の爆弾は、中央部のみならず、後部付近にも命中したのだ。

「後部付近に爆弾命中！」 



見張り員の報告を聞きながら、ベレンティーは無言のまま、額の汗をハンカチで拭き取る。
シホールアンル軍の３００リギル爆弾は、米軍の使用する１０００ポンド爆弾とほぼ同等とされているが、実際はやや重量が重く、炸薬量も
若干多いため、威力面では３００リギル爆弾の方が上だ。
これまでなら、爆弾を食らった米空母は、命中個所の応急修理を行わなければならない。
米正規空母の飛行甲板は木製であるため、被弾すれば修理が必ず必要になり、命中個所によっては、現場での応急修理も不可能となる場合が
多く、被弾は即ち、戦闘不能と言う事を意味している。
だが、それは、これまでの“米空母”の話である。
リプライザルは、その点について異なっていた。
ベレンティーは、けたたましく鳴り響く艦内電話に気付き、受話器を取った。

「艦長！ダメコン班からです！」
「おう。被害はどうなっている？」
「ハッ！敵は飛行甲板中央部と後部付近に爆弾を命中させましたが……命中個所には火災はおろか、被害を受けた様子は見当たりません！
僅かに、命中部分と思われる場所に微かな凹みと、焼け焦げた跡があるだけです！」
「よし！わかった！」

ベレンティーはそう返すと同時に、心中では大きく安堵していた。

「敵はまだ来るぞ。引き続き、警戒にあたってくれ！」

彼はそう返してから受話器を置き、視線を低空から迫るワイバーン隊に向ける。
低空侵入の敵ワイバーンは５騎。いずれもがリプライザルに向かって来る。
リプライザルの左舷側の機銃座が、この低空侵入の敵に向けられ、すぐさま発砲される。
敵ワイバーンは、後方のトライデントやロサンゼルスから追い撃ちを受けていた事もあって、すぐに２騎が撃墜された。

「面舵一杯！」

ベレンティーは新たな指示を飛ばしつつ、視線を低空の敵に固定する。 


敵ワイバーンは、距離１０００メートル程に迫ってから一斉に魚雷を投下した。
避退する敵ワイバーンに対して、対空砲火が注がれるが、ベレンティーの関心は敵ワイバーンから投下された魚雷に移っていた。
この時、リプライザルの艦首が右に回り始めた。
魚雷は３本中２本がリプライザルに向かっていたが、リプライザルが回頭した事によって、命中しなかった。
２本の魚雷が艦首の前方を通り過ぎた時、ベレンティーは再び回頭を止めさせた。

「敵ケルフェラク接近！数は１６機！」
「１６機だと！多いな……！」

ベレンティーは舌打ちをしながら、再び視線を左舷側に向ける。
その時、敵機の半数が大胆にも編隊から離れ、増速しながら、大回りでリプライザルの後部へ、そして、右舷側に回り込んで来た。

「まずいぞ！右舷の敵は味方艦と離れている分、対空砲火に襲われる危険が少ない！」

この時、リプライザル隊と本隊は、２０００メートル以上も離れていた。
リプライザル隊に一番近い位置に居るレイク・シャンプレインとタラハシーは援護の対空砲火を放って来るが、回り込んだ８機の
ケルフェラクは、悠々と雷撃態勢に入って行く。
その一方で、真正面から立ち向かって来た８機のケルフェラクは、反対側のケルフェラクよりも先にリプライザルへ接近しつつあったが、
リプライザルと後方の巡戦、巡洋艦から十字砲火を浴びせられている事もあり、１機、また１機と、対空砲火に叩き落とされていた。
だが、ケルフェラクはワイバーンと違って頑丈な事もあり、８機中５機が魚雷投下まで生き残り、距離８００メートルほどで魚雷を投下した。
魚雷は扇状に投下されていた。
その中の１本が、４０ノット以上のスピードで、リプライザルの左舷前部付近に迫っていた。

「くそ、間に合わん！」

ベレンティーは既に取り舵一杯を命じていたが、敵の魚雷は、艦首が回り始める前にリプライザルの舷側に突き刺さった。
その瞬間、リプライザルの左舷側に大量の海水が噴き上がった。
轟音と共に水柱が立ち上がった時、基準排水量４５０００トンの艦体は揺さぶられた。 


だが、ベレンティーは魚雷が命中した時、サラトガに乗艦している時に感じた衝撃とは何かが違うと思った。
（ん？振動が妙に小さい……だと？）
彼は違和感を感じつつも、すぐに意識を切り替え、右舷側の敵を見つめる。
敵編隊は既に１０００メートル程の距離に迫っていた。
リプライザルの右舷側に配置された高角砲、機銃が唸りを上げる。
たちまち、猛烈な弾幕射撃が展開され、ケルフェラクが１機、２機、３機と撃墜されていく。
だが、リプライザルの自慢の対空火器を持ってしても、全機の撃墜はやはり不可能であった。
残り３機となったケルフェラクは、リプライザルから５００メートルの近距離に迫った所で魚雷を投下した。
魚雷投下に申し合わるかのように、リプライザルが回頭を始めた。
その際、敵の投下した３本の魚雷は悉く外れる結果となったが、その内の１本は、猛スピードでリプライザルの右舷中央部に迫って来た。

「くそ、また食らうぞ！」

ベレンティーはそう呟いた後、白い航跡が斜め横から迫るのを見てから、両足を踏ん張った。
リプライザルは魚雷を回避しきれず、新たに１本を受けてしまった。
リプライザルの右舷側に水柱が立ちあがった。
これで、リプライザルは２本の魚雷を受けた事になる。
（左舷に１本、右舷に１本か。敵の飛空挺乗りもやるな。）
ベレンティーは、僅か１６機で２本の魚雷を命中させた飛空挺隊の錬度に舌を巻いた。
程無くして、またもや艦内電話が鳴り響いた。

「こちら艦長！」
「ダメコン班です！先の被雷による被害ですが、右舷側の第４甲板に若干の浸水がある以外は何ら被害はありません！それから、左舷側の方では
やや浸水がありましたが、こちらも既に別の班が対処中で、目立った損害はありません！」
「そうか……引き続き、被雷箇所の修理を行ってくれ。異常があればすぐに報告しろ！」
「アイアイサー！」

ベレンティーは受話器を置いた後、ひとしきり艦橋内を見回した。

「爆弾を受けても、魚雷を受けても損害は軽微とは……辺りどころが良かったとはいえ、我が合衆国は凄い船を造った物だ………」 


午前１１時２０分　第５７任務部隊第２任務群

シホールアンル側の第２波攻撃隊は、戦場到達時刻が予想よりもやや遅れたものの、迎撃機の妨害を突破した敵編隊は、第１次攻撃隊の収容作業が
完了したばかりのＴＧ５７．２に襲い掛かって来た。

「敵編隊接近！敵の数は約７０以上！」

ＴＧ５７．２旗艦キティーホークの右舷後方に位置している軽巡洋艦ウースターの艦橋では、艦長であるウルフ・スカウラドツキ大佐が
無表情のまま双眼鏡越しに敵編隊を見つめていた。

「……多いな。」

ポーランド系アメリカ人であるスカウラドツキ艦長は、堀の深い顔をやや引き締めた後、敵編隊が輪形陣手前で旋回し始める様子を確認する。
（距離は、目測で１６０００と言った所か。陣形手前の駆逐艦からは１４０００メートルほど離れている。３８口径で撃っても効果は薄いから、
まだ発砲は無いな。）
彼はそう思った後、艦内電話で砲術長を呼び出した。

「砲術長！こちら艦長だ。」
「はっ！艦長、準備は整っています。」
「うむ。では、敵に長砲身５インチ砲をぶちかましてやれ。」
「アイアイサー！」

スカウラドツキ艦長がそう命じた直後、ウースターの右舷側に振り向けられていた５４口径５インチ連装両用砲が、初めて火を噴いた。
右舷側に向けられていた５インチ砲は計１８門である。
発砲開始から僅か数秒後には、旋回しつつ、二手に別れていた敵編隊のど真ん中で高角砲弾が炸裂した。
ウースターは断続的に１８門の高角砲を撃ち放って行く。
今の所、射撃を加えている艦は、ウースターの他に、同じく５４口径５インチ砲を搭載している群旗艦キティーホークだけである。 

「おっ、敵編隊の動きに変化が……」

スカウラドツキは、砲撃を受けた敵編隊の隊形が乱れていく様子をまじまじと見つめる。
ウースターとキティーホークの砲撃は、敵攻撃隊の指揮官機を撃墜していた。
この事で、敵編隊は一時的に統率を失い、体制を立て直すまでに少しばかり時間がかかってしまった。

「敵編隊、我が方に接近して来ます！」
「ようし、来たぞぉ。」

スカウラドツキは小声で呟きながら、高空と低空の二手に別れたシホールアンル軍攻撃隊を睨みつける。
敵編隊に対して陣形の外輪に位置する駆逐艦部隊も砲撃を開始する。
敵編隊の周囲には無数の黒煙が湧いているが、その大半はウースターとキティーホークの放った５インチ砲弾によるものだ。
それに加えて、他の護衛艦の高角砲弾も次々と炸裂し始める。
敵編隊は、瞬時に濃密な対空砲火網に飛び込む事となった。
ウースターの１８門の５インチ砲は、戦闘開始とほぼ変わらぬペースで発射を続けている。
敵騎の落ちるペースが今までに見た事無いほど早い。
通常は１騎、また１騎といったペースでゆっくりと数を減らして行くのだが、今は３、４騎がぽつぽつと墜落していく。
最初に陣形の進入を果たした２０機前後のワイバーン隊は、駆逐艦部隊の上空を通り過ぎる時には半分以下にまで撃ち減らされていた。

「艦長！低空より敵雷撃隊！ケルフェラクです！」

その報告を聞いたスカウラドツキは、即座に反応する。

「砲術！低空の敵に３インチを使え！」
「了解！」

返事がするや否や、ウースターの舷側から、５インチ砲とは違う別の砲声が響き渡る。
その砲声は、５インチ砲と比べてやや音が軽く感じたが、発射速度は５インチ砲よりも明らかに早い。 


この時、ウースターは、駆逐艦の防御ラインを突破して来た１５機のケルフェラクに対して、３インチ両用砲と２０ミリ機銃弾を
撃ち込んでいた。
ウースターには、新型の５０口径３インチ連装両用砲が４基搭載されている。
この３インチ砲は１分間に２０発の砲弾を発射する事ができるため、５インチ砲よりも効果的な高射砲弾幕を張る事が出来る。
ウースターは、その新式砲を連装式で４基搭載しており、ケルフェラク隊には、このうち２基が向けられていた。
ケルフェラク隊は、見慣れぬ巡洋艦の前や横を通過しようとした所を、ＶＴ信管付きの３インチ砲弾を撃ち込まれた。
砲弾が炸裂し、夥しい破片がケルフェラクの機体を容赦なく切り刻む。
至近距離で砲弾が炸裂するや、ケルフェラクは片翼をあっさりと千切り飛ばされ、海面に落下する。
別のケルフェラクは、次々と炸裂する砲弾に機体全体を穴だらけにされた挙句、搭載していた魚雷に破片が命中して大爆発を起こし、虚しく四散した。
ケルフェラク隊の周囲の海面は、次々と炸裂する３インチ砲弾や、放たれる多量の２０ミリ弾によって地獄の釜のように沸き立っている。
更に、３機のケルフェラクが、ウースターの３インチ砲弾の射撃を受けて撃墜され、海面に飛沫を上げた。

「流石は新型の速射砲……あの落としにくいケルフェラクをばたばたと叩き落とすとは！」

スカウラドツキは、新兵器の凄まじい威力に感心しつつも、視線はぴったりと敵に張り付かせたまま、艦の指揮を執り続ける。
１５機のケルフェラクは、ウースターの３インチ砲弾と２０ミリ機銃で７機が撃墜された。
残りの８機がウースターを通り過ぎて行ったが、その８機もウースターの左舷側に搭載されている３インチ砲や２０ミリ機銃の追い撃ちを受ける。
新たに１機が、３インチ砲弾の直撃を受けて粉砕され、別の１機が２０ミリ機銃弾に穴だらけにされた末に、海面に墜落した。

「艦長！敵ワイバーンがキティーホークに向かいます！」

見張り員の声がスピーカー越しに響いて来る。その音はかなり大きかったが、ウースターの放つ対空砲火の喧騒のせいで聞き取り辛い。
とはいえ、辛うじて内容を聞き取ったスカウラドツキは、視線をキティホークの上空に向けた。
キティーホーク目掛けて、複数のワイバーンが急降下で接近して行く。
キティーホークは、舷側の５インチ砲や４０ミリ機銃、２０ミリ機銃をけたたましく撃ちまくり、多量の曳光弾が火のシャワーのように、
ワイバーン目掛けて打ち上げられている。
ウースターは左舷側の５インチ砲を、降下中の敵ワイバーンに向けて発砲した。
左舷側に向けられる５インチ砲は８門で、ワイバーンの未来位置に高角砲弾が次々と炸裂する。 


ワイバーンの２番騎が、猛スピードで急降下して行くが、そのすぐ前方でＶＴ信管付きの砲弾が炸裂し、ワイバーン２番騎が黒煙に覆い隠された。
スカウラドツキは、敵ワイバーンが黒煙を突っ切るかと思ったが、それは起こらなかった。
その代わりに、無数の細かい破片らしき物がぱらぱらと落ちて行くのが見えた。
続いて３番騎が撃墜され、更に４番騎も機銃弾に両翼を千切り飛ばされて墜落して行く。
キティーホークに突進していた敵騎は９騎であったが、そのうち７騎が対空砲火で撃墜された。
残った２騎がキティーホークに対して爆弾を投下した。
キティーホークの左舷側海面に水柱が噴き上がった直後、飛行甲板中央部付近に爆炎が噴き上がった。

「キティーホーク被弾！」

見張り員が切迫した声音でそう知らせて来る。
キティーホークは、敵の爆弾が炸裂した瞬間、火柱が噴き上がり、直後に飛行甲板が黒煙で覆われた。
だが、その４秒後には黒煙は後方に吹き散り、キティーホークは火災は愚か、被弾した事すら無かったかのように３０ノット以上のスピードで
航行を続けていた。

「なんて奴だ……爆弾を食らったのに何とも無いぞ！」

スカウラドツキは驚きの余り、やや高い声音でそう言い放った。
キティーホークには更に２０騎の降下爆撃隊と、低空侵入のケルフェラクとワイバーンが襲いかかって来た。
だが、敵機の大半はウースターを含む護衛艦の対空弾幕の前にばたばたと叩き落とされ、最終的に、キティーホークに攻撃を仕掛けられたのは、
降下爆撃隊のワイバーン８騎とケルフェラク６騎、雷撃隊のケルフェラク３機とワイバーン２騎のみであった。
キティーホークは、１０分間の間に、新たに３発の爆弾と魚雷１本を受けていた。
スカウラドツキは、キティーホークの右舷側後部に魚雷が命中した時は、さしもの装甲空母も運が尽きたかと思ったが、
彼の思いとは裏腹に、キティーホークは速度を衰えさせる事無く、相変わらず３０ノット以上の速力で定位置に付いていた。 

午後１時４０分　ヒーレリ領リーシウィルム

ルルシガ基地の地下にある予備司令部で、第１次、第２次攻撃隊の総合戦果と被害報告を聞いていた第１２飛空挺軍司令官スタヴ・エフェヴィク中将は、
驚きの余り目を丸くした。

「そ……それは、本当なのか？」

エフェヴィク中将は、参謀長のジェギィグ少将に問うた。

「事実です。第１次、第２次攻撃隊の損耗率は４割を超えます。特に、敵機動部隊への攻撃を敢行した攻撃飛行団や、ワイバーン隊はいずれも
壊滅状態に陥っており、ワイバーン隊に至っては、攻撃に送り出した空中騎士隊が文字通り全滅したとの報も入っています。」
「……何たる事だ………」

エフェヴィク中将は、ショックのあまり、項垂れてしまった。
第１２飛空挺軍は、敵の第１次攻撃隊が去った後、ワイバーン隊と共同で敵機動部隊に対する反撃を行った。
反撃戦力は２波に別れており、第１次攻撃隊は戦闘用のケルフェラク２１機と対艦攻撃用のケルフェラク３１機、戦闘ワイバーン８９騎と
攻撃ワイバーン５９騎。
第２次攻撃隊は戦闘用のケルフェラク１８機と対艦用２７機、戦闘ワイバーン６７騎と攻撃ワイバーン５６騎という編成であった。
総計３６８騎の攻撃隊は、敵戦闘機の妨害と敵艦隊の猛烈な対空砲火によって大損害を被った。
帰還できた数は、第１次攻撃隊で戦闘ケルフェラク１２機、対艦攻撃隊１６機。戦闘ワイバーン５６騎と攻撃ワイバーン１４騎。
第２次攻撃隊で戦闘ケルフェラク１０機と対艦攻撃隊７機。戦闘ワイバーン４８機と攻撃ワイバーン１９騎の計２１２騎。
全体の総数で、実に４割以上もの損失が出た事になる。
特に損害が大きいのは、敵空母に攻撃を敢行した対艦攻撃隊で、こちらの総数は１２３騎中５６騎のみが生還するという惨憺たる有様であり、
この中に含まれていた第６３空中騎士軍所属の第２３３空中騎士隊は、作戦に参加した２１騎中全騎が未帰還という状態に陥っている。
また、それに加えて、ワイバーンよりも頑丈であるケルフェラク隊までもが、高い損耗率を出している。
特に、第４５攻撃飛行団は、出撃機２７機のうち、損失２０機という凄まじいまでの損耗率を叩き出していた。
しかし、ここまでやった以上は、戦果は必ず上がっている筈であった。
敵空母は撃沈に追い込めないまでも、２、３隻程は戦闘不能に陥れたであろうと、誰もが思っていた。 

だが、現実は残酷であった。
第１２飛空挺軍と第６３空中騎士軍が多大な犠牲を出してまで得た戦果は……航空機６４機撃墜。駆逐艦１隻大破と、空母３隻を小破させたのみであった。

「何故、こんなに戦果が少ないのだ……君達も途中報告で確かに耳にしていただろう？」

エフェヴィク中将は、すがる様な目付きでジェギィグ少将の顔を見つめる。

「ワイバーン隊とケルフェラク隊は、敵正規空母に対して複数の爆弾、魚雷を当てたと報告して来た。なのに、何故、敵空母は戦場を離脱していないのだ？」
「……司令官。先程、攻撃に参加した搭乗員達から、短いながらも攻撃時の様子を聞き取る事が出来たのですが……もしかしたら、敵は防御力を大幅に
強化した新鋭空母を、あの海域に持ち込んだのではないでしょうか？」
「というと……？」
「はっ。近頃、情報部より通達のあったアメリカ軍の新鋭空母。確か、リプライザルと言う名前の空母でしたかな。それが、リーシウィルム沖に
展開しているかもしれません。攻撃飛行団の搭乗員達は、いずれもが、一番大きな空母を狙って攻撃したと言っております。そして、最後に必ず、
こう付け加えていました。」

ジェギィグ少将は、額を抑えながら言葉を続けた。

「撃破した筈の敵空母が、何事もなかったかのように動いている様子は、遠目からでもよく見えた、と。」
「………」

エフェヴィク中将は、ショックのあまり、何も言葉を発せなかった。

「また、敵機動部隊は、護衛艦の中に新たな新鋭艦を紛れ込ませていました。」
「新鋭艦ですと？」

第１２飛空挺軍の航空主任参謀が聞いて来る。

「ああ。第４５飛行団の搭乗員がそう言っていた。なんでも、アトランタ級巡洋艦を大型化したような巡洋艦が、大型空母の側でとんでも無い量の
対空砲火を放っていたと。第４５飛行団は、３分の１がその防空巡洋艦にやられたらしい。」 

「アトランタ級を大型化した防空巡洋艦だと……参謀長。私はその敵艦の情報今初めて聞いたぞ！」

エフェヴィクは、目を吊り上げながらジェギィグに言う。

「は……私もそうです。」
「それで、その防空巡洋艦はどれぐらいの大砲を積んでいた？」
「医務室で片足を失って治療を受けている搭乗員から聞き出したのですが、その新鋭艦は、良く見かける中型の高射砲を２０門以上と、
それよりやや小さい砲を６門から８門ほど搭載していたようです。先程、絵の上手い魔道士に、私の証言をもとに簡単な絵を書かせてみましたが……」

エフェヴィクは、ジェギィグの懐から出された紙を手渡された。
紙には、その新鋭艦の絵が書いてあり、絵は真横から見た物と、真上から見た物の２つがあった。

「なんだこの砲の配置は！？この新鋭艦は、アトランタ級の２倍の砲戦力を持っている事になるぞ！」
「閣下。信じられぬお気持ちになるのはよくわかります。ですが、この情報は、第４５飛行団の中でも最も視力の良い搭乗員から聞き出した物です。
戦闘中ですから、幾つかの違いはあると思いますが、それでも、本物との誤差はあまり無い物と思われます。」
「……中型艦の艦体に３０門も高射砲を乗せるとは。アメリカ人共め、なんて無茶苦茶な事を……！」

エフェヴィクは、この常識外れの軍艦が存在し、味方攻撃隊に大損害を与えた事、が未だに信じられなかった。
だが、それは、動かしようの無い事実である。

「司令官。先の攻撃で、我々は多大な損失を出しましたが、一応、内陸の予備飛行場には、まだ戦力が残っています。」

第１２飛空挺軍は、万が一の場合に備えて攻撃飛行団の稼働機の半数を予備飛行場に避退させていた。
参謀長は、その戦力を使って第３次攻撃を行うかと聞こうとしたが……

「参謀長。君は残存戦力で第３次攻撃を行おうと考えているようだが、私はそれを認めん。敵機動部隊に対する攻撃は即刻中止する！」
「な……しかし、司令官。」
「本国の命令は？と言いたいのだろう？」 

エフェヴィクは目を細めながらジェギィグに問う。彼はジェギィグが答える前に言葉を吐き出した。

「本国の命令のまま攻撃を続ければ、第１２飛空挺軍は無謀な突撃を繰り返させた挙句に、貴重な攻撃飛行団を無意味にすり潰してしまうだろう。
私は、そのような事はやりたくない。」
「では……？」
「……今回の戦闘の詳細を、すぐに本国へ送り届けるのだ。敵が爆弾はおろか、魚雷をぶつけてもビクともしない空母や、１隻でアトランタ級
２隻分の働きをする新鋭巡洋艦を送り出した以上、我が航空部隊が攻撃しても、あたら犠牲を増やすだけだ。」

エフェヴィクはそう言いながら、自らの拳を強く握りし閉めた。
彼は表情には出さなかった物の、心中では悔しさの余り、声を大にして叫びたいと思っていた。
しかし、飛空挺軍司令官という肩書が、彼の平静さを維持させていた。

「参謀長。今すぐ報告を送りたまえ。われ、敵機動部隊を攻撃するも、甚大な損害を受けて以降の攻撃は実行不可能り。敵アメリカ海軍は
戦艦並みの防御力を備えた大型空母と、対空火力を飛躍的に増大させた防空艦を戦場に投入した可能性、極めて大……とな。」     </description>
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    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/465.html">
    <title>関連書籍</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/465.html</link>
    <description>
      *日昌晶（ひよし あきら）
-[[覇壊の宴&gt;http://www.amazon.co.jp/%E8%A6%87%E5%A3%8A%E3%81%AE%E5%AE%B4-%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E8%A6%8B%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%A2%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%97%A5%E6%98%8C-%E6%99%B6/dp/4829129441/ref=sr_1_5?s=books&amp;ie=UTF8&amp;qid=1284029179&amp;sr=1-5]]
-[[覇壊の宴2 大いなる墓標&gt;http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E3%81%84%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%A2%93%E6%A8%99%E2%80%95%E8%A6%87%E5%A3%8A%E3%81%AE%E5%AE%B4%E3%80%882%E3%80%89-%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E8%A6%8B%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%A2%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%97%A5%E6%98%8C-%E6%99%B6/dp/4829113251]]

*柳内たくみ（やない たくみ）
-[[ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 1.接触編&gt;http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E2%80%95%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E5%BD%BC%E3%81%AE%E5%9C%B0%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%81%E6%96%AF%E3%81%8F%E6%88%A6%E3%81%88%E3%82%8A%E3%80%881%E3%80%89%E6%8E%A5%E8%A7%A6%E7%B7%A8-%E6%9F%B3%E5%86%85-%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%BF/dp/4434142356/ref=pd_sim_sbs_b_4]]
-[[ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 2.炎龍編&gt;http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E2%80%95%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E5%BD%BC%E3%81%AE%E5%9C%B0%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%81%E6%96%AF%E3%81%8F%E6%88%A6%E3%81%88%E3%82%8A%E3%80%882%E3%80%89%E7%82%8E%E9%BE%8D%E7%B7%A8-%E6%9F%B3%E5%86%85-%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%BF/dp/4434147633/ref=pd_sim_b_1]]
-[[ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 3.動乱編&gt;http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E2%80%95%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A-%E5%BD%BC%E3%81%AE%E5%9C%B0%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%81%E6%96%AF%E3%81%8F%E6%88%A6%E3%81%88%E3%82%8A%E3%80%883%E3%80%89%E5%8B%95%E4%B9%B1%E7%B7%A8-%E6%9F%B3%E5%86%85-%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%BF/dp/4434152548/ref=pd_sim_b_2]]
-[[ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 4.総撃編&gt;http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E2%80%95%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A-%E5%BD%BC%E3%81%AE%E5%9C%B0%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%81%E6%96%AF%E3%81%8F%E6%88%A6%E3%81%88%E3%82%8A%E3%80%884%E3%80%89%E7%B7%8F%E6%92%83%E7%B7%A8-%E6%9F%B3%E5%86%85-%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%BF/dp/4434157205/ref=pd_sim_b_4]]
-[[ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 5.冥門編&gt;http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E2%80%95%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E5%BD%BC%E3%81%AE%E5%9C%B0%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%81%E6%96%AF%E3%81%8F%E6%88%A6%E3%81%88%E3%82%8A%E3%80%885%E3%80%89%E5%86%A5%E9%96%80%E7%B7%A8-%E6%9F%B3%E5%86%85-%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%BF/dp/4434162381/ref=pd_sim_b_1]]    </description>
    <dc:date>2012-05-09T00:16:34+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/303.html">
    <title>朱き帝國</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/303.html</link>
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      作:   reden
場所: 分家・Ｆ世界との交流その２
※第2次世界大戦中、スターリン全盛期のソ連が召喚されます。

#ls
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    <dc:date>2012-05-09T00:13:28+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1219.html">
    <title>朱き帝國/43 第19話</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1219.html</link>
    <description>
      1941年８月１３日
モラヴィア王国東部　グレキア半島
州都ブルーノの南東２００キロ



　広漠とした荒原の直中。州都ブルーノを始点に東部属州各地の都市に向かって伸びていく街道のひとつ。
　平時には多くの隊商が往き来するこれを扼するように、西部方面軍第１９３狙撃師団は布陣していた。
　同師団は、クトゥーゾフ作戦においてはモラヴィア新領土鎮定軍主力が存在する東グレキア平原を南側から迂回し、そのまま一直線にモラヴィアの後方拠点であるブルーノを一撃する役割を担う西部方面軍に属している。
　任務の性質上、同方面軍の所属師団の機械化率は北部・北西軍と比較しても高く、輜重の自動車化も可能な限りなされている。
　
　
　太陽が地平線の彼方に没して数刻。
　赤軍の将兵たちにとって、ここが異世界なのだと最も実感させてくれる存在―――赤と青の二つの月は、今夜に限っては厚い雲によって隠れ、地上は闇に閉ざされている。
　そんな中にあって、赤軍の宿営地には至るところに人工の灯りがともされていた。


　幾つもの天幕が張られた野営地。その周囲を囲うように、天幕の群れから数キロ離れた周囲には有刺鉄線と歩哨線が張り巡らされている。
　宿営地から２，３キロも離れてしまえば、辺り一面は完全な暗闇。灯りとして頼りになるのは、工兵隊によって設えられた歩哨塔のサーチライトと、歩哨線を巡回する兵士の懐中電灯だけだ。
　
　そんな野営地を囲む有刺鉄線の防壁に沿うようにして歩く人間たちがいた。


　モシンナガン小銃とマシンピストルを携えた歩哨の巡回である。
　既に巡回ルートの半ばまでを消化したあたりで、兵のひとりが「うん？」と声を上げる。
　
「どうした」

　班長を勤める伍長が周囲にしっかりと目を配りつつ問うた。

「いえ、何か妙な……すえたような匂いがしたもので」

　首を傾げる兵の疑問の答えに、伍長はすぐに思い至った。

「あぁ…死体の匂じゃないか？大方埋め立てたとは言っても戦場からそう離れてるわけでもなし。風向き次第でそういうこともあるだろう」

　どこか気楽そうに伍長は答える。
　モラヴィア魔道軍の主力を相手取っている北部方面軍とは異なり、西部方面軍はここまでに大規模なモラヴィア魔道部隊との交戦を経験していない。
　もともと、クトゥーゾフ作戦自体が北部方面軍で敵主力を拘束し、残り２軍で敵領を制圧するというものであったこともあるし、モラヴィア軍もレニングラードという分かりやすい攻撃目標が存在する北部方面軍担当戦域に主力の梯団を貼り付けていたために、西部軍の相手と言えば、軍の進路上に存在する中小都市の守備隊……中隊か、精々大隊規模の分散した２線級部隊でしかなかったのだ。
　この師団も例外ではなく、モラヴィア領進攻の先鋒に位置する部隊であるにもかかわらず、これまでの戦闘履歴はほとんど無人の野を往くが如くといった有様であった。
　――――無論、いくつかの遭遇戦は経験しているが、それも撤収の遅れた歩兵部隊…それも剣や槍で武装した集団であり、脅威度という点においては旧バルト諸国内のパルチザンにも劣る存在でしかない。　
　歩兵部隊の中には連隊規模のものも存在したが、武装がこれでは脅威になり得るはずもなく、そのほとんどが襲撃機連隊の掃射と、自動車化された狙撃兵部隊の追撃によって溶け去っていった。
　いくら実戦とはいえ、このような有様では如何に司令部・政治部が引き締めをはかろうとも、多少弛緩した空気が出来てしまうのも無理からぬことだった。

「ま、嗅いでいて気分の良いものでもない。早いところ終わらせようや」

　そういって会話を打ち切る伍長。
　そして巡回は再開される。


　深夜。空は厚い雲に覆われ、加えて陽も落ちたことで辺り一面は夜闇に閉ざされている。
　３人の足元を黒い靄のようなものが漂い始めていることに、彼らは最期まで気づかなかった。



「マランディン大佐はまだ戻らんのか？」

　第１９３師団師団長を務めるミハイル・V・アルカーシン少将は憮然とした表情で参謀長に尋ねた。
　１時間ほど前に、１９３師団所属の第２７３狙撃連隊長であるアレクセイ・マランディン大佐が幕僚２名を連れて所属大隊の査閲に向かったまま、消息がわからなくなっているという連絡があったのだ。
　大佐が向かった第２大隊の野営地までは車を走らせれば５分とかからない。だが、既に彼が消息を断ってから３時間が経過している。

　
「各大隊本部に確認はしたのだろうな」


「もちろんです同志。１７８連隊本部、及び各歩哨塔にも確認済みです」


　顎に手を当て、数秒ほど思案したアルカーシンはやがてひとりごちるように呟いた。


「歩哨線の内側に……モラヴィア軍が浸透して―――いや、ないな」


「ええ。哨戒網は幾重にも設けられていますし、大佐が消息を断ってから計算すると、すでに３時間は経っています。もしその時点で浸透を受けていたなら、今頃我々は無事ではいないでしょう」


　ここで二人の脳裏を過ぎるのは魔道という未知の技術だ。
　これがもし魔術絡みの事態なら、ここで自分たちがいくら頭をひねった所で正解にはたどり着けないだろう。
　―――ならば、答えを知っているかもしれない人物に聞くのが一番良い。


「軍司令部に連絡を取れ。こういうときこそ同盟国の知識が役に立つ」


　方面軍ないしは軍の司令部にはネウストリアから派遣された魔術師が帯同している。
　さしあたってはこれに頼るのが良いだろう。


「しかし、何らかの手段により五列が入り込んでいる可能性も捨てきれん。歩哨線の巡回はさらに密にしろ。また、事態が明らかになるまで宿営地内であっても単独での移動は禁じるよう全隊に令する」


「了解しました」


　指示を実行すべく、天幕を出ていく参謀たち。
　それを見送ると、アルカーシンは報告を待つ傍ら、明日以降の作戦行動について確認をしていく。
　机に広げられた地図、ネウストリア側から寄せられている現地の情報など。確認しなくてはならないものはいくらでもある。

　それから、どれほど時間が経っただろうか。１時間は経っていないだろう。
　外から何やら喧騒が聞こえてくる。

「なにかあったのか？」

　集中を乱されて顔を顰めるアルカーシンに、傍らで書類をより分けていた副官が「自分が見てまいります」と、立ち上がった。

「ああ構わん。どうせすぐそこだ」

　アルカーシンは軽く副官を制すると、椅子から立ち上がった。
　軽く肩をほぐしてから、天幕の外に向かう。


　
　―――――――――轟音。 


　アルカーシンが外に出るのと、耳をつんざくような爆発音が響きわたったのはほぼ同時のことだった。

「！？」

　外気に肌をさらした直後。熱風が正面から吹きつけてきて、アルカーシンは思わず顔を両腕で庇った。
　反射的に一歩後ずさりながらも周囲を確認し、視界に飛び込んできた光景に絶句する。


　―――――――――なんだ、これは。


　風と共に漂ってきたのは吐き気を催すほどに濃密な血臭。
　喧騒などというものではない。
　そこは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
　炎に包まれる天幕。
　其処此処に転々と転がる赤軍兵士の屍。

「ヒッ！くるな！来るなァ！！」

　口角泡を飛ばしながらマシンピストルを乱射する兵。
　連続して発射される銃弾を立て続けに撃ち込まれながらも、まるで意に介した様子もなくのっそりと兵に近づいていく人影―――人？

「な、んだ……なんなのだこれは！？」

　呆然とした面持ちでアルカーシンは呻く。
　炎によって照らし出されたそれは、確かに人間の形をしていた。
　いや、原型を留めていた……というのが正しい。
　腹を大きく裂かれ、飛び出た臓物を地面で引きずりながら歩く人間が何処にいるというのか？
　銃弾を何発も叩きこまれながら、まるで意に介さずに歩き続けられる人間がどこにいるというのか？
　あれは――――……

「死体……？」

　喘ぐように呟く。
　辺りに点々と転がる赤軍将兵の屍。その周りを覚束無い足取りで闊歩する者たち。
　腐臭を漂わせ、白濁した虚ろな瞳は虚空を睨みつつ、未だ生きて抵抗を試みようとする兵へと群がっていく。
　立て続けに撃ち込まれる銃弾。だが、歩く屍は止まらない。
　銃弾がその胸板に吸いこまれる度に、着弾の衝撃によってビクリと身体を震わせるものの、倒れる様子はない。
　やがて、抗戦を続ける兵士たちは群がる死体に取り付かれ、地面に引き倒されてゆく。
　そこから先は見るに堪えない。
　断末魔の悲鳴があたりに響き、やがてそれは弱まり、消える。
　燃えさかる天幕の、火種の弾ける音に混じって、柔らかいなにかを咀嚼する音が微かに聞こえてきた気がした。

　辺りに漂う死体の腐臭と、一面に飛び散る鮮血の臭い。
　あまりにも濃密なそれに、アルカーシンは喉元まで迫り上がってきた胃の内容物をすんでのところで飲み下した。
　と、後ろから動転したような声が上がる。

「閣下！？こ、これは一体…」

　アルカーシンに続いて天幕から出てきた副官は、目の前に広がる惨状に、彼の上官と同様に固まってしまう。
　副官の激しく動揺する様を見て、アルカーシンはようやく我に帰った。

　――――そうだ。とにかく事態を収拾しなくては…

　だが、周りは既に混乱の坩堝だ。
　参謀たちの姿はどこにも見えず、そもそも宿営地のど真ん中であるにもかかわらず、味方の姿は死体以外に見当たらないとはどういうことか？

　あまりにも現実離れした事態に、アルカーシンの思考は空転する。

「閣下！」

　副官の鋭い叫び。
　その視線の先にはこちらに向かってよろばうように進んでくる亡者の群れがあった。
　迫りくる死の群れから逃れようと踵を返し、反対側からも似たような群れが向かってくるのが見え、アルカーシンは引きつった笑みを漏らした。

「は……はは……悪夢だ……」

　微かに肩を震わせながら、ホルスターからトカレフを引き抜き、亡者めがけて引き金を引く。
　アルカーシンの背後をカバーするように副官が背を向け、背後から向かってくる群に対してマシンピストルを撃ちまくる。　
　胸板に２発、３発と撃ち込まれながらも、堪えた様子もなく群がってくる死体の群れ。
　抵抗は長く続かなかった。
　最初に副官が死体にとりつかれた。
　腕に喰らいつかれながら地面に引きずり倒され、悲鳴を上げて上官に助けを乞う。


　師団長は彼の願いに応えた。
　淀みの無い挙措で副官の額に７．６２mm弾を撃ち込み、続いて銃口を自身の口にくわえる。


　　


　―――――――そして、最後の銃弾が発射された。     </description>
    <dc:date>2012-05-09T00:11:40+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1218.html">
    <title>朱き帝國/42 閑話③あとがき</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1218.html</link>
    <description>
      417 ：reden：2012/05/03(木) 01:43:22 ID:wlaiBnjM0

    &gt;&gt;408さん
    さすがに伏線がわざとらしすぎましたねw
    悪の魔法王国といえば、やっぱりネクロマンシーじゃないかと思うのですよ。

    &gt;&gt;409さん
    性根はともかく、外交力は雲泥の差ですがw

    &gt;&gt;410-414さん
    モラヴィア側による魔法王国版焦土作戦のはじまりです。
    これ以上国を荒廃させたら仮に撃退できても国としての未来は閉ざされそうですが。

    &gt;&gt;414-415さん
    ゾンビ映画などで見る一番怖いところって、ゾンビ発生直後だと思うんですよ。
    ある時突然、隣人が化け物に変わってしまう。あるいは平穏な日常から突然地獄に放り込まれるという精神的な奇襲。
    今回のは後者ですね。



    では、本編の続きになります。
    話の都合上、ちょっと時系列が前後します。    </description>
    <dc:date>2012-05-09T00:11:26+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1217.html">
    <title>朱き帝國/41 閑話③</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1217.html</link>
    <description>
      　部屋を出たルーキンは直ぐに腕時計を確認する。
　残り６人の魔術師との面談を今日中に終わらせた上で、報告をまとめなくてはならない。
　捕虜の移送は国内軍分遣隊に引き継ぐ形になるだろう。
　小脇に抱え持っていたバインダーの書類を１枚めくり、先ほどの女性将校の面談記録に自身のサインを書き込む。

　そのまま次の部屋に向かおうとしたところで、後方から聞こえてくる規則正しい靴音が耳に入り、ルーキンは振り返った。
　足音の主を見て、サッと姿勢を正して敬礼する。
　ルーキンに少しばかり遅れて、パーシャも続くように敬礼した。


「順調かな、ルーキン」


　一人のNKVD将校が微笑を浮かべながら歩いてきた。
　何かの傷痕のようにも見える皺の深い顔に、やや薄くなりかけたくすんだ金髪。
　歳は50代半ばということだが、顔つきだけ見れば７０過ぎの老人のようにも見える。しかしその動きは矍鑠（かくしゃく）とし、軍人らしく隙のないものだ。
　磨きあげられた軍靴。皺ひとつないプレスされた制服の襟元には大佐の階級章が縫い込まれている。

　
「君と顔を合わせるのも半月ぶりか。何か問題や心配事はあるかね？」


「いえ、万事順調です同志。既にこの地区の魔術師に関しては本日中にモスクワへの移送手続きを完了する見込みですので」


「ほぉ、それは素晴らしい。」


　皺だらけの顔に浮かべた微笑をさらに深め、グレナジー・クラシュキン大佐は満足げにうなずいた。
　クラシュキンは革命期以降２０年以上のキャリアを持つ古参のNKVD幹部職員であり、同時に、NKVDにおける魔道技術収集のための特別セクションの責任将校でもある。
　ベリヤの直属であり、彼が報告をあげるのは直属の上司であるベリヤか、ヨシフ・スターリンの二人だけだ。

　ルーキンは先ほど書き込んでいたバインダーをクラシュキンに手渡す。
　表紙の名簿と進行表をざっと眺めると、クラシュキンは破顔した。


「相変わらず仕事が早いな、ユーリー・ステパーノヴィッチ。この手の仕事では、やはり君が頭ひとつ抜けているようだ」


「恐れ入ります」


　クラシュキンは笑みを大きくしてルーキンの肩を叩いて称揚するが、ルーキンの表情は今ひとつ晴れない。
　見た目は知性的・理性的な大佐であり、保安将校としての能力も十二分にある。
　が、同時に執念深く、許すことも忘れることも決してない男であり、必要とあればどんな汚れ仕事も眉ひとつ動かさずにやってのける冷酷さも合わせ持っている。
　革命期における白軍将兵やその家族。粛清期における己の同僚、はては女子供にいたるまで、彼が手にかけた人間は数知れない。


「これなら次の任務にも期待が持てそうだ」


　そういってクラシュキンは親指を立てるとくいっと後ろに向け、先程ルーキンが出てきたのとは、また別の一室を指差した。


「そこまで付き合え。込み入った話になる。――ああ、来るのは君だけでいい」 


　ルーキンは後ろを振り返り、、パーシャに先に行けと言うとクラシュキンに従った。　
　木製の扉を開けて部屋に入る。
　先ほどの面談に使用した部屋より一回り大きなそこは応接室か何かのようで、設えてある家具なども見たところではそこそこ値の張りそうな物が揃っていた。
　うち一つのソファにクラシュキンは無遠慮に腰を下ろし、顎をしゃくってルーキンにも座るように無言で促す。
　ルーキンが無言で従うと、クラシュキンはおもむろに口を開いた。


「さてルーキン。お互い忙しい身だ。下らんお喋りはなしにして、早速本題に入るぞ」


　ルーキンにしてもそれは望むところである。
　

「まず、今後についてだが、君と君のグループは今後しばらく私の直属として動いてもらうことになる。君を我が3課きっての防諜将校と見込んでの抜擢だ」


　うれしかろう？とでもいいたげな口調で話すクラシュキンに、ルーキンは内心でげんなりしながらも、表情は何とか取り繕って「光栄です」と答えた。
　ルーキンの内心を見透かしたように、薄笑いを浮かべるクラシュキンだったが、直ぐに笑みを消すと手元のマニラフォルダから何枚かの書類を取り出した。
　それを枚数を確認するようにパラパラと捲りつつ、クラシュキンは話し始めた。


「…今から二日前になるがな。ブルーノへの接近路、南西２００キロの地点に展開していた西部軍の師団が奇妙な集団に襲われ、壊乱した」


「―――奇妙、ですか」


「ああ。こちらの哨戒網・歩哨線をどうやってか擦り抜けて、１９３師団の宿営地を急襲されたそうだ。混戦になって僅か数時間の戦闘の後、士気崩壊を起こして師団は潰走した」


「それは……」


　尋常な事態ではない。師団規模の赤軍部隊が潰走するなど、クトゥーゾフ作戦発動以降ではこれが初めてのはずだ。
　まして小隊・中隊程度ならいざ知らず、大規模な会戦があったわけでもないというのに師団規模の軍が数時間で潰走するなど聞いたこともない。


「士気崩壊を起こして、と言われましたが」


「ああ、混乱の中で師団司令部が襲われた。師団長以下、司令部は全滅。加えて、襲ってきた相手が問題だった」

　
「相手、ですか」　


　ルーキンは内心で首を傾げた。説明の内容が断片的過ぎて、現地で何が起きたのかがさっぱり掴めない。　
　また、今ひとつ要領を得ないクラシュキンの話し方もひっかかる。
　幾つもの疑問が脳裏を渦巻くが、ややあってルーキンは最初の疑問を口にした。
　　、　　

「モラヴィアの魔道軍でしょうか」


「かもな。だが、少なくとも人間ではない」


「どういうことでしょう」

　
　クラシュキンは口の端を微かに釣り上げて答えた。


「死体だよ」


「は？」


　ルーキンはあんぐりと口を開けて固まった。
　

「死霊魔術……ネクロマンシーというそうだがな。」


　そこで言葉を切ると、クラシュキンは捲っていた書類をまたマニラフォルダに戻し、ルーキンに放って寄越した。


「まずはそいつを読め。話の続きはそれからだ」　　


　それまで大佐の顔に張り付いていたニヤついた笑みは、いつの間にか消えていた。     </description>
    <dc:date>2012-05-09T00:11:12+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1216.html">
    <title>朱き帝國/40 閑話②あとがき</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1216.html</link>
    <description>
      403 ：reden：2012/04/24(火) 22:34:54 ID:wlaiBnjM0


    &gt;&gt;381-382さん
    &gt;&gt;386さん
    実際のところ彼女にまともな選択肢はないでしょう。
    抵抗などまず無理なので、はやいところソ連に靡くのが身の為でしょうね……


    &gt;&gt;383さん
    まぁ大概は【事務的な保護】になるでしょうね（汗
    特にベリヤ子飼いの連中に捕まったら……


    &gt;&gt;384-385さん
    &gt;&gt;387-391さん
    &gt;&gt;393さん
    一応、モラヴィア側にもいくつか切り札的なものがあったりしますが、それでどれだけ時間が稼げるかは…



    &gt;&gt;392-395さん
    彼女が決断するまでモラヴィアという国が残っているかといえば……今のままだと微妙ですね。
    常備軍の主力が壊滅した現状で、赤軍の３個方面軍の縦深突破をどうやって止めるのか……えっと、無理？





    &gt;&gt;陸士長さん
    &gt;&gt;397-402さん
    ……実際、ソ連だとジョークどころかリアルに有り得るところがなんとも……     </description>
    <dc:date>2012-05-09T00:08:49+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1215.html">
    <title>朱き帝國/39 閑話②</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1215.html</link>
    <description>
      　重厚な木製の扉を開けて入室してきた異世界人将校の姿に、クラリッサは反射的に身をこわばらせた。
　守備隊の屯所を接収した臨時の捕虜収容所から引き出され、政庁に連れてこられてから、かれこれ半刻近く。
　緊張と不安で気が参りかけていたところでの来客である。
　入室してきたのは二人組だった。
　ひとりは中肉中背の、どこか怜悧な雰囲気を身に纏った長身の将校。続いて入ってきたのは西方の騎馬民族にも似た彫りの浅い顔立ちの男で、こちらは先に入ってきた将校の部下だろう。クラリッサに細い目で軽く一瞥をくれただけで、そのままドアの傍らで休めの姿勢で待機する。


「待たせたようで済まないね、クラリッサ・クローデン大尉。」

　
　笑みこそ浮かべていないものの至極穏やかな調子でそういうと、将校は簡素な木組みの机を間に挟んだクラリッサの対面の椅子に腰を下ろした。


「まずは自己紹介をさせてもらおうか。私はユーリー・ルーキン少佐、そちらに立っているのは部下のコクンコ中尉だ。…突然呼び立ててすまないね。お茶はいるかな？珈琲でも良いが」


「……結構だ」


　微かに戸惑った様子でクラリッサが答えると、ルーキンはやれやれといったふうに肩を大袈裟に竦めた。


「私の勧めを受け入れたら自分の弱みになる、などと思っているならそれはとんだ勘違いだぞ？……まぁ、君の立場からすれば戸惑うのも無理のないことか」


　最後の方はひとりごちるように呟くルーキンに、クラリッサは困惑することしきりだった。
　困惑の原因はソ連の捕虜に対する扱いにある。
　まず、この世界において、前世界におけるハーグ条約のような戦争捕虜の取扱いに関する明文化された条約は存在しない。
　捕虜の取り扱いは各々の国家・文明圏によってまちまちであり、大概の場合、それは人道などというものからはかけ離れたものになる。
　例えばモラヴィア軍の場合、投降してきたロシア人捕虜に関しては傷病兵は殆どがその場で処刑され、健常なものは奴隷として使い潰されるのが当たり前だ。
　これはモラヴィアからすれば、ソ連自体が自国の手で召び出した被召喚物にすぎず、対等な国家とは認めていないからでもある。
　いわんやロシア人など自分たちが新たに所有するべき土地を【不当に占拠している】蛮族でしかない。例外は将校だが、こちらも情報源としての役割が済めば待っているのは死だ。
　実際、転移直後のレニングラード・沿バルト攻防戦において、占領下に置いた都市でモラヴィア魔道軍が振るった蛮行の数々はロシア人をして顔色をなくす程に凄惨なものだった。

　ではモラヴィア以外の国はどうか？
　これがもし、同一の文化・文明圏の国同士であれば、捕虜の待遇や交換について協定を定めている国も一部にはある。
　例えばネウストリアを中心とした精霊神教国などがそれだ。
　しかし、そのネウストリアであっても、協定を結んでいない国や邪教蔓延るモラヴィア軍が相手では捕虜の扱いも過酷なものになることが多い。
　ことが宗教問題でもあるだけに、大陸各国を巻き込んだ大規模な条約などなかなか結べるものでもないのだ。

　こういった事情から、モラヴィア軍人にとって、投降というのは【死よりはマシ】という程度の行為であり、クラリッサにしたところで最悪蛮人の慰みものになったあげく殺されるのがオチだろうと半ば考えていたほどだ。
　むろん、そのときには自身の持てる力を駆使して最後まで抵抗するつもりだった。

　だが、実際にはどうか。拘束されてこそいるものの、食事は一日三度供され、恐れていた過酷な拷問もない。そして、ある日突然政庁に連れてこられたかと思えば、この待遇である。
　寝返りでも促されているのだろうか？だが、たかが一大尉にそこまでするものなのか。
　ソ連側の意図が読めず、押し黙って様子を伺うクラリッサに、ルーキンは微かに口の端に苦笑めいたものを浮かべた。

「君を呼んだのはほかでもない。ひとつ提案したいことがあってね」

　そういうと、一枚の紙をクラリッサの前に滑らせる。

「君たちの国の言葉に翻訳してあるから読めるだろう。……何と言うか…通訳がいらんのは助かるが、こういうときは少々不便に感じるな」


　召喚時の魔術の影響か、話し言葉が自動的に翻訳されてしまうために、会話する上での意思疎通には問題はない。
　だが、ヒヤリングは問題なくとも文章の読解にはこの恩恵がないらしく、占領地の軍事・行政を掌握する際の大きな障害となっていた。
　モラヴィア王国との最初の接触から未だ二月足らず。通訳の育成はネウストリアの支援のもとで行われているものの、未だ実用に耐え得るものではなく、現状ではモラヴィア側の書物の解読には現地人を徴用して行わせている状態なのだ。
　加えて言うなら、読み解くのが高度な技術資料―――魔術書ともなると現状では完全にお手上げである。
　モノがモノだけに、こればかりはネウストリアの人間に任せられるものでもなく、ソ連としてはモラヴィア占領地域で狩り出している魔術師を自国に協力者として取り込む必要があった。
　そして、今回の面談はまさにその問題に直結したものだった。

　紙面に書かれた文字を読み進めていくうちに、困惑に彩られていたクラリッサの表情が冷ややかなものに変わっていく。
　やがて、読み終えたクラリッサは机に紙を置くとルーキンを正面から睨みつけた。

「ふざけないでもらおう。故国を裏切るなど、万に一つもありえぬことだ」

　吐き捨てるように言う。それは誓約書だった。党への忠誠と人民への奉仕を誓いソ連邦に帰化するための。
　クラリッサの反応は予想済みだったのか、ルーキンは気分を害した様子もなく、ただ肩を竦めた。
　
「立派な心がけだ」

　それだけではなく、クラリッサを讃えるかのように笑みさえ浮かべた。
　今度こそ完全に混乱したクラリッサの表情の変化を見ながら、ルーキンは「失礼」と一言ことわると懐から紙巻き煙草を取り出して咥え、マッチで火をつけた。
　吐き出される紫煙が鼻についたのか、クラリッサは微かに眉を顰める。
　ルーキンはまるで世間話でもするかのように語りだした。

「今のはあくまで提案だ。強制はしない。が、申し出を受ける受けないに関わらず、君はこの後ソヴィエト本国に移送されることになる。きみの祖国への忠誠心は賞賛されてしかるべきものだが、君自身のためにもこの提案は受けておくべきだと、私は思うよ」

　ルーキンは生粋の防諜将校らしい相手の内面までを見透かそうとするような目でクラリッサをじっと見る。
　恫喝されたわけでもないというのに、クラリッサは気圧されたように押黙った。

「ここに来るまで、君が何を警戒していたかは大体想像がつく。女性軍人が捕虜になって、真っ先に考えることだろう。実際、君の泣き叫ぶ姿に快感を覚えるような連中もここにはいる」

「……脅しか？」

「いや、案じているだけだ。君の立ち居振る舞いを見させてもらったが、拷問などに対して訓練を受けているようには見えなかったのでね」

　拷問、という言葉にクラリッサの顔から血の気が引く。

「…まぁ、訓練など大した問題ではないがね。していようがいまいが、結局のところ人間は継続して与えられる苦痛には耐えられるものじゃない。そこに至る経過が異なるだけで、君が選びとることの出来る選択肢は一つしかないんだ。……申し訳ないがね」

　そういうと、ルーキンは誓約書を机の上に置いたまま、席から立ち上がった。
　顔を青くしながらも必死にルーキンを睨みつけるクラリッサに、彼女の抵抗心を打ち砕く言葉を放った。

「既に、我が軍はモラヴィア東部の州都ブルーノに手をかけつつある」


「――――――な…」 



　クラリッサは完全に絶句した。
　東部属州の州都ブルーノはモラヴィア本国と東部をつなぐ交通の結節点であり、政軍の中枢。
　それだけではない。モラヴィア王国の最も有力な穀倉地帯は西部から中西部にかけて集中しており、貿易都市ブルーノはそこから食糧を、また王都を含むモラヴィア中央から軽工業品や高度な魔術工芸品等をモラヴィア東部へと流し込む物流の大動脈であり、物資の集積拠点でもあるのだ。
　ここを落とされた場合、士気の面での影響はもちろんのこと、兵站面においてもモラヴィア地方軍は深刻な危機に陥る
　この世界の軍は魔術を運用しているだけに、一部においては非常に先進的なドクトリン・軍編成を取っているが、その科学技術はあくまで近代以前のレベルに過ぎない。
　兵器・弾薬・燃料等の補給面での負担は機械化されたソ連赤軍に比べれば格段に軽いと言えるが、それでも食料の供給を絶たれれば立ち枯れるほかない。
　元々、大陸北限を占めるモラヴィア北東部はそこまで肥沃な土地というわけではないし、同時に東部から中部にかけて数多く存在する遺跡や魔術研究都市でのマナ乱獲が祟って砂漠化が一際進んだ土地柄でもあり、食糧生産高は王国領内で最も低い。
　人口が少ないこともあって、元からの住民の食糧分程度は自給可能だが、対ソ戦に備えて集結中の地方軍の分はどうか？
　ブルーノの陥落。それはモラヴィア東部属州の失陥にほかならないのだ。

　
「馬鹿な！東グレキア平原の会戦から一週間…そんな短期間で―――」


　その先は言葉にならない。
　あの煉獄のような戦場で見た光景が、その先を言わせない。
　不可能。本当に？
　モラヴィア魔道軍の精華を、まるで卵の殻を踏みくだくように粉砕してしまった鋼の大軍勢。
　あの黙示録の軍勢が、モラヴィアの諸都市を焔に沈めていく光景が、まざまざと脳裏に浮かぶ。


「モラヴィア全土に赤旗が翻るまで、どれほどかかるものか……君にも祖国に守りたい人間がいるんじゃないか？そこもふくめて、今一度この申し出について考えてみてくれ。それがきみのためだ」


　死人のように青ざめた顔色で顔を伏せるクラリッサ。その耳元で囁かれたルーキンの言葉は、悪魔の囁きのように彼女の意識に滑り込んで行った。    </description>
    <dc:date>2012-05-09T00:08:32+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1214.html">
    <title>朱き帝國/38 閑話①あとがき</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1214.html</link>
    <description>
      376 ：reden：2012/04/20(金) 20:33:03 ID:wlaiBnjM0


    &gt;&gt;355-357さん
    &gt;&gt;359さん
    まぁ貴族制・専制君主制が主流のこの世界でソ連の存在は劇薬でしかないですからねぇ。
    ネウストリアとしては元の世界にのしつけておくり返したいところでしょう。


    &gt;&gt;ヨークタウンさん
    赤軍の進撃は会戦から逃げ延びた僅かな将兵たちによって尾ひれ付きまくりで伝わっていたりしますw


    &gt;&gt;360-364さん
    &gt;&gt;366さん
    戦艦の建造…実際のところバルト沿岸諸都市が纏めて内陸都市になった際に、商船隊から補助艦艇に至るまで半壊してますから（汗
    たぶんその再建がさきになるかと。


    &gt;&gt;365さん
    &gt;&gt;368-372さん
    一言で言えば、想像力の欠如というところですね。
    魔法文明によらず、自分たちを圧倒できる文明圏が存在するということ自体に考えが及ばなかったのが今回の失敗原因かと。


    &gt;&gt;373さん
    傀儡国家というのはありだと思います。
    問題は、現地の被支配民族にどれだけ人材がいるかということで、最悪ソ連が人材・統治費用総負担のお荷物国家に…



    &gt;&gt;374-375さん
    ベリヤのNKVDによる【適切】な保護……嫌な予感しかしない。     </description>
    <dc:date>2012-05-09T00:08:13+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1208.html">
    <title>朱き帝國/37 閑話①</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jfsdf/pages/1208.html</link>
    <description>
      朱き帝國閑話①




１９４１年８月１６日　１１：００
モラヴィア王国　グレキア半島東部　都市リンゼン　

　
　モラヴィア東部属州のなかで最も東に位置する人口２万人弱の小都市。
　白煉瓦の瀟洒な街並みと郊外に広がる家畜の放牧地は、平時であれば長閑な雰囲気を醸し出していることだろう。
　だが現在、街を歩く人々の顔には不安の色が濃い。
　彼らは時折、怯えるように街の中央―――リンゼンの地方行政を所掌する政庁に向けられる。
　このリンゼンに存在する建築物の中で最も広大な面積を敷地面積を有するその城館の前。数日前まで、そこにはリンゼン知事を務めていた子爵家の紋章旗、そしてモラヴィア王国の国旗が掲げられていた。
　現在そこに掲げられているのは赤地に鎌と鎚の意匠が縫いこまれた異世界軍の旗だ。
　そして、城館を時折出入りする人々の殆どはカーキ色の軍服に青帽子を被った男たちだ。
　街の主要街道である石畳を歩いていた青年が、ふと後ろの方から聞こえてきた耳障りな音に、ぎょっと表情を引き攣らせて路の端に寄る。
　端に寄った青年の目の前を、何やら車輪の付いた奇妙な鉄製のゴーレムが、後部のパイプから煙を吐き出しながら走り抜けていく。
　すれ違いざま、ゴーレムに備え付けられた座席に掛けている青い帽子を被った異界の将校と一瞬目が合い、青年は怯えるように目を逸した。
　そのまま走り去っていくゴーレム――――ソ連においてGAZ-61と呼ばれている車は市街を走り抜け、街の中心に建つ政庁に向かうようだった。
、
　道路の凸凹を車輪が乗り越える度にガクガクと上下に身体を揺られながら、ユーリー・ステパーノヴィッチ・ルーキン保安少佐は先ほどすれ違った住民の青年の視線に含まれた感情について考えを巡らし、小さくため息をついた。
　ルーキンは今年で３０を迎えたばかり。この歳で少佐というのは、他国でいえば相当なスピード出世だ。
　しかし、将校全体の平均年齢が異常に若いソ連にあってはそこまで珍しい存在というわけでもなかった。
　NKVD作戦グループ要員として任務につく彼は、この先の任務の難しさを思い遣って再び嘆息した。

―――魔法王国と呼ばれるモラヴィアにあっても、魔術を扱える人間というのは限られている。
　この世界の人間は誰もが大なり小なり魔力という魔法の動力源、或いはマナを汲み上げる際の鍵となるエネルギーを体内で生成できるようだが、実際に、手から火の玉を飛ばしたり、土塊から巨人のような人形―――ゴーレムを作り出して人を襲わせたりできるのは１００人に一人もいればいいほうだ。
　モラヴィア領侵攻作戦が開始される以前より、正確には捕虜からの情報により魔術という技術の存在を知ってからになるが、NKVDではモラヴィアの魔道技術を解析するためのセクションが立ち上げられており、今回の作戦でも、侵攻軍が制圧した地域・都市にはNKVDの作戦グループが展開し、モラヴィア魔術師の狩り出しと、技術情報の確保に当たっている。
　このために現地には既に1000名を超える専任のNKVD職員が入り込んでいるほか、内務人民委員部隷下のNKVD軍が3個旅団（各方面軍に１旅団）投入されており、これらを統括する方面軍作戦トロイカが占領地の治安維持も含めて後方の面倒を見ることになる。
　このリンゼンを含む北部方面軍占領地域を統括する作戦トロイカはモスクワ及びレニングラードNKVDが主体となっており、イヴァン・セロフ保安大将がその議長を務める。
　トロイカと名がつく通り、その執行委員は３名から成り、トロイカ議長のセロフのほか、方面軍政治部長、実行部隊であるNKVD旅団長がそのメンバーとなる。
　

「どうしました少佐。心配事でも？」


「いや……そうだな。会戦後に捕えた連中の移送もほぼ終わったことだし、そろそろ我々にも移動命令が来る頃じゃないか？」

　
　上官の浮かない様子を目ざとく見とがめた運転手―――アジア系らしい彫りの浅い顔立ちのNKVD中尉の問いかけに、ルーキンは一瞬何と答えたものかと言葉を濁し、ややあって当たり障りのない返事を返した


「また引越しですか。たまりませんなぁ……書類の梱包だけでも大仕事だ」


　大げさに首を振る中尉を横目に捉えつつ、ルーキンは苦笑を漏らした。
　赤軍占領地において魔術師捕縛に血道を上げているNKVDだが、全部隊合わせて３万近い人員を抱える国内軍３個旅団は主に治安維持部隊であり、捜査官としての役割を担うのは各方面軍に300名程度配置されているルーキン達のような作戦グループだ。　　
　この長閑な街でルーキン達作戦グループが行っているのは言うなれば人狩りだ。
　魔術を扱う事のできるもの。魔術について知識を有する者。そういった『技術者』たちを捕縛し、ソヴィエト本国に移送する―――それも軍属・民間人問わずだ。
　占領地にあっては降伏した現地行政機関への指揮・命令権を有し、さらには言葉の壁という厄介なものが無いこともあり、移送作業は滞りなく進んでいるといってよい。
　既に、このリンゼンでは500人近い魔術技能者を拘束しており、そのうち軍属及び高度技術者―――導師と呼ばれる者たち―――と見られる60名程が既にモスクワに送られている。
　ＺＩＳトラックに押し込められて東のソ連領に向かって連れ去られていく魔術師達。
　日々繰り返されるその光景は、リンゼン市民の心理を恐怖で染め上げた。

（まぁ、魔術だの魔法だの魔獣だのと、訳がわからんものを怖がるのもわかるがね）

　本国のお偉方の気持ちも分からなくはないが、やりすぎて現地住民がパルチザン化でもしようものならえらいことだ。
　少なくとも自分たちが居るうちにそんな事態にはなってほしくないものだが……
　と、同乗の中尉も似たような感想を抱いたらしい。

「……そのうち矢玉でも飛んできそうですな」

「パーシャ。本当に飛んできそうだから止めてくれ」

　縁起でもないことを言う中尉に軽く睨みをいれる。
　戦場から、あるいはモラヴィアの本国からどんな形でソヴィエトについての情報が流れてきているのか？　
　ここに来て初めて聞いた情報によれば、我々ロシア人は異世界から召喚された魔王の軍勢らしい。
　炎の魔神を現世に呼び出し、１０万の軍勢を一瞬にして焼き払ったとか……そんなものが本当にロシアに居るなら是非お目にかかりたいところだが。
　加えて郊外の小さな村落を訪れた際、村長を名乗る男が着飾った若い娘達を連れてきて生贄ですと宣ったときは頭を抱えたくなった。
　そう、モラヴィアのようなこの世界の列強国でさえ、辺境に行けばこの程度の文化・知識レベルなのだ。


（――――いや、魔法や魔獣が存在する以上、我々が知らないだけで魔王とやらも実在しているのかもしれないが…）


　ふと、そんな厭すぎる想像が浮かび上がり、ルーキンは頭痛を堪えるようにこめかみを指で揉み解す。
　実際、妖精や魔獣などの御伽噺のような存在が堂々と闊歩する世界であるだけに、一概に荒唐無稽な流言とも言い切れないのだ。
　彼は座席にもたれかかり、深い溜息を吐いた。
　懐から紙巻き煙草を取り出し、火を点けながら車窓から見える異世界の風景を何となしに眺める。
　この街に拠点を構えてから既に４日。本国に移送するのも今日のグループが最後になる。
　数日中には次の任地について通達があるだろう。

　手元の鞄から書類を挟み込んだバインダーを取り出し、表紙を１枚めくる。
　そこにはびっしりと隙間なく人名が羅列されており、既に大部分が二重線で消されている。

「今日の７人で最後、か。将校２名に……鍛冶師？そんな者まで魔術師か」


「後でそれ、私にも見せてもらえますか」


「すぐに直に見ることになる。そこ、左折だ」


　運転手に指示を出しつつ、さらに書類を一枚めくる。
　２枚目以降は魔術師一人ひとりについての詳細な情報だ。
　降伏した都市行政機関から吸い上げた情報がそこに記載されている。

（ふむ…国家規模で魔術師を管理しているだけあって徹底してるな）

　軍からの投降者に関しては情報の無い者もいるが、リンゼン出身者に関しては家族構成・履歴に至るまで詳細な情報が書き込まれている。
　それを流し読みつつ、ルーキンは目的地への到着を待った。
　市街の中心に舗装された街道を曲がり、駐留部隊の司令部が置かれている旧市庁舎に向かう。
　小都市の割には随分と立派な庁舎は遠目にもすぐにわかる。
　庁舎前のコンコースには６台程のＺＩＳ５トラックとＢＡ２７－Ｍ装甲車が３台停車している。
　臨時に設けられた駐車場に車を止め、運転手を務めていたパーシャ・コクンコ保安中尉とともに車から降り立ったルーキンを、大尉の階級章をつけたNKVD士官が出迎えた。

　リンデンに駐留する国内軍旅団分遣隊の将校で、任務の都合上こちらに何度も顔を出しているルーキンとは顔見知りだ。

「ああ…ちょうどよかった。少佐殿、実はいま本国から派遣されてきたモスクワ本部の大佐が施設を視察中でして」

　ほっとしたような表情で告げる大尉に、ルーキンは微かに眉を顰める。
　
「所属はどちらに？」

「……3課です」

　ルーキンは心底嫌そうに表情を歪めた。
　ルーキン自身が所属している国家保安総局第3課はNKVDの対諜活動を所掌する部門の中でも最大の規模を誇る部局であり、抱える人員も膨大だ。
　その職域・権能は非常に多岐にわたる。そこは対内保安を司る部局であり、その守備範囲には外国人・外国人ビジネス駐在員・各国大使館及び大使館員の身辺調査、国外に逃亡したソ連国籍保持者や収容所脱走者の追跡・捕縛、ブラックマーケットの手入れ、そしてソ連領内に潜伏する敵国工作員や反体制主義者の摘発が含まれる。
　元々がモスクワ勤務のルーキンからすれば自身の古巣であり、実際、親しい同僚だっている。
　が、本部の3課に所属する大佐クラスと聞くと、思い浮かぶのはロクでもない連中ばかりだ。
　そこはベリヤの懐刀にしてグルジア共産党時代からの相棒であるフセヴォロド・メルクーロフの膝元であり、その幹部クラスは尽くベリヤの忠実な子飼いばかりだ。
　ルーキンは決してベリヤを無能とは思っていないし、その配下の連中にしたところで大概は情報官・工作担当官として相応の能力を持っている。
　が、その人間性に関しては毛ほども尊敬はしていない。
　課内では公然の秘密として扱われているベリヤのおぞましい性的嗜好云々に至っては触れたくもない。

「……で、こちらに来ているのは誰なんだ？」

「グレナジー・クラシュキン大佐です」

　後ろを振り返り、パーシャを見ると、苦い薬を飲んだような顔をしていた。
　嫌な予感はよく当たる。先ほど思い浮かべた能力はあるロクデナシの一人だ。

「車で待っていましょうか？」

「貴様、ふざけるなよ」

　歯をむき出して睨みつけるとパーシャは力なく肩を落とした。
　ふん、と面白くもなさそうに鼻を鳴らすと、大尉に向き直る。

「今は館内を回ってるのか？」

「いえ、旅団長と応接室でお話中です」

「よし。いらん口を挟まれる前に、さっさと仕事を終わらせるぞ。パーシャ、来い」

　足早に館内に向かうルーキンを、パーシャが慌てて追う。
　目的の場所に向かって歩きながら、ルーキンは先ほど車内で見ていたバインダーを取り出す。

（最初の一人は……女か）　

　面倒が起きる前にさっさと終わらせたほうがいい。
　ルーキンは無言で歩みを早めた。

　書類には戦地で撮影したらしいモノクロの顔写真とともに、魔術師の情報が書き込まれている。
　最初一枚に書かれていたのは、憔悴しているものの育ちの良さそうな雰囲気のブルネットの女性将校、氏名欄にはクラリッサ・クローデンと書かれていた。


　重厚な木製の扉を開けて入室してきた異世界人将校の姿に、クラリッサは反射的に身をこわばらせた。
　守備隊の屯所を接収した臨時の捕虜収容所から引き出され、政庁に連れてこられてから、かれこれ半刻近く。
　緊張と不安で気が参りかけていたところでの来客である。
　入室してきたのは二人組だった。
　ひとりは中肉中背の、どこか怜悧な雰囲気を身に纏った長身の将校。続いて入ってきたのは西方の騎馬民族にも似た彫りの浅い顔立ちの男で、こちらは先に入ってきた将校の部下だろう。クラリッサに細い目で軽く一瞥をくれただけで、そのままドアの傍らで休めの姿勢で待機する。


「待たせたようで済まないね、クラリッサ・クローデン大尉。」

　
　笑みこそ浮かべていないものの至極穏やかな調子でそういうと、将校は簡素な木組みの机を間に挟んだクラリッサの対面の椅子に腰を下ろした。


「まずは自己紹介をさせてもらおうか。私はユーリー・ルーキン少佐、そちらに立っているのは部下のコクンコ中尉だ。…突然呼び立ててすまないね。お茶はいるかな？珈琲でも良いが」


「……結構だ」


　微かに戸惑った様子でクラリッサが答えると、ルーキンはやれやれといったふうに肩を大袈裟に竦めた。


「私の勧めを受け入れたら自分の弱みになる、などと思っているならそれはとんだ勘違いだぞ？……まぁ、君の立場からすれば戸惑うのも無理のないことか」


　最後の方はひとりごちるように呟くルーキンに、クラリッサは困惑することしきりだった。
　困惑の原因はソ連の捕虜に対する扱いにある。
　まず、この世界において、前世界におけるハーグ条約のような戦争捕虜の取扱いに関する明文化された条約は存在しない。
　捕虜の取り扱いは各々の国家・文明圏によってまちまちであり、大概の場合、それは人道などというものからはかけ離れたものになる。
　例えばモラヴィア軍の場合、投降してきたロシア人捕虜に関しては傷病兵は殆どがその場で処刑され、健常なものは奴隷として使い潰されるのが当たり前だ。
　これはモラヴィアからすれば、ソ連自体が自国の手で召び出した被召喚物にすぎず、対等な国家とは認めていないからでもある。
　いわんやロシア人など自分たちが新たに所有するべき土地を【不当に占拠している】蛮族でしかない。例外は将校だが、こちらも情報源としての役割が済めば待っているのは死だ。
　実際、転移直後のレニングラード・沿バルト攻防戦において、占領下に置いた都市でモラヴィア魔道軍が振るった蛮行の数々はロシア人をして顔色をなくす程に凄惨なものだった。

　ではモラヴィア以外の国はどうか？
　これがもし、同一の文化・文明圏の国同士であれば、捕虜の待遇や交換について協定を定めている国も一部にはある。
　例えばネウストリアを中心とした精霊神教国などがそれだ。
　しかし、そのネウストリアであっても、協定を結んでいない国や邪教蔓延るモラヴィア軍が相手では捕虜の扱いも過酷なものになることが多い。
　ことが宗教問題でもあるだけに、大陸各国を巻き込んだ大規模な条約などなかなか結べるものでもないのだ。

　こういった事情から、モラヴィア軍人にとって、投降というのは【死よりはマシ】という程度の行為であり、クラリッサにしたところで最悪蛮人の慰みものになったあげく殺されるのがオチだろうと半ば考えていたほどだ。
　むろん、そのときには自身の持てる力を駆使して最後まで抵抗するつもりだった。

　だが、実際にはどうか。拘束されてこそいるものの、食事は一日三度供され、恐れていた過酷な拷問もない。そして、ある日突然政庁に連れてこられたかと思えば、この待遇である。
　寝返りでも促されているのだろうか？だが、たかが一大尉にそこまでするものなのか。
　ソ連側の意図が読めず、押し黙って様子を伺うクラリッサに、ルーキンは微かに口の端に苦笑めいたものを浮かべた。

「君を呼んだのはほかでもない。ひとつ提案したいことがあってね」

　そういうと、一枚の紙をクラリッサの前に滑らせる。

「君たちの国の言葉に翻訳してあるから読めるだろう。……何と言うか…通訳がいらんのは助かるが、こういうときは少々不便に感じるな」

　召喚時の魔術の影響か、話し言葉が自動的に翻訳されてしまうために、会話する上での意思疎通には問題はない。
　だが、ヒヤリングは問題なくとも文章の読解にはこの恩恵がないらしく、占領地の軍事・行政を掌握する際の大きな障害となっていた。
　モラヴィア王国との最初の接触から未だ二月足らず。通訳の育成はネウストリアの支援のもとで行われているものの、未だ実用に耐え得るものではなく、現状ではモラヴィア側の書物の解読には現地人を徴用して行わせている状態なのだ。
　加えて言うなら、読み解くのが高度な技術資料―――魔術書ともなると現状では完全にお手上げである。
　モノがモノだけに、こればかりはネウストリアの人間に任せられるものでもなく、ソ連としてはモラヴィア占領地域で狩り出している魔術師を自国に協力者として取り込む必要があった。
　そして、今回の面談はまさにその問題に直結したものだった。

　紙面に書かれた文字を読み進めていくうちに、困惑に彩られていたクラリッサの表情が冷ややかなものに変わっていく。
　やがて、読み終えたクラリッサは机に紙を置くとルーキンを正面から睨みつけた。

「ふざけないでもらおう。故国を裏切るなど、万に一つもありえぬことだ」

　吐き捨てるように言う。それは誓約書だった。党への忠誠と人民への奉仕を誓いソ連邦に帰化するための。
　クラリッサの反応は予想済みだったのか、ルーキンは気分を害した様子もなく、ただ肩を竦めた。
　
「立派な心がけだ」

　それだけではなく、クラリッサを讃えるかのように笑みさえ浮かべた。
　今度こそ完全に混乱したクラリッサの表情の変化を見ながら、ルーキンは「失礼」と一言ことわると懐から紙巻き煙草を取り出して咥え、マッチで火をつけた。
　吐き出される紫煙が鼻についたのか、クラリッサは微かに眉を顰める。
　ルーキンはまるで世間話でもするかのように語りだした。

「今のはあくまで提案だ。強制はしない。が、申し出を受ける受けないに関わらず、君はこの後ソヴィエト本国に移送されることになる。きみの祖国への忠誠心は賞賛されてしかるべきものだが、君自身のためにもこの提案は受けておくべきだと、私は思うよ」

　ルーキンは生粋の防諜将校らしい相手の内面までを見透かそうとするような目でクラリッサをじっと見る。
　恫喝されたわけでもないというのに、クラリッサは気圧されたように押黙った。

「ここに来るまで、君が何を警戒していたかは大体想像がつく。女性軍人が捕虜になって、真っ先に考えることだろう。実際、君の泣き叫ぶ姿に快感を覚えるような連中もここにはいる」

「……脅しか？」

「いや、案じているだけだ。君の立ち居振る舞いを見させてもらったが、拷問などに対して訓練を受けているようには見えなかったのでね」

　拷問、という言葉にクラリッサの顔から血の気が引く。

「…まぁ、訓練など大した問題ではないがね。していようがいまいが、結局のところ人間は継続して与えられる苦痛には耐えられるものじゃない。そこに至る経過が異なるだけで、君が選びとることの出来る選択肢は一つしかないんだ。……申し訳ないがね」

　そういうと、ルーキンは誓約書を机の上に置いたまま、席から立ち上がった。
　顔を青くしながらも必死にルーキンを睨みつけるクラリッサに、彼女の抵抗心を打ち砕く言葉を放った。

「既に、我が軍はモラヴィア東部の州都ブルーノに手をかけつつある」


「――――――な…」


　クラリッサは完全に絶句した。
　東部属州の州都ブルーノはモラヴィア本国と東部をつなぐ交通の結節点であり、政軍の中枢。
　それだけではない。モラヴィア王国の最も有力な穀倉地帯は西部から中西部にかけて集中しており、貿易都市ブルーノはそこから食糧を、また王都を含むモラヴィア中央から軽工業品や高度な魔術工芸品等をモラヴィア東部へと流し込む物流の大動脈であり、物資の集積拠点でもあるのだ。
　ここを落とされた場合、士気の面での影響はもちろんのこと、兵站面においてもモラヴィア地方軍は深刻な危機に陥る
　この世界の軍は魔術を運用しているだけに、一部においては非常に先進的なドクトリン・軍編成を取っているが、その科学技術はあくまで近代以前のレベルに過ぎない。
　兵器・弾薬・燃料等の補給面での負担は機械化されたソ連赤軍に比べれば格段に軽いと言えるが、それでも食料の供給を絶たれれば立ち枯れるほかない。
　元々、大陸北限を占めるモラヴィア北東部はそこまで肥沃な土地というわけではないし、同時に東部から中部にかけて数多く存在する遺跡や魔術研究都市でのマナ乱獲が祟って砂漠化が一際進んだ土地柄でもあり、食糧生産高は王国領内で最も低い。
　人口が少ないこともあって、元からの住民の食糧分程度は自給可能だが、対ソ戦に備えて集結中の地方軍の分はどうか？
　ブルーノの陥落。それはモラヴィア東部属州の失陥にほかならないのだ。

　
「馬鹿な！東グレキア平原の会戦から一週間…そんな短期間で―――」


　その先は言葉にならない。
　あの煉獄のような戦場で見た光景が、その先を言わせない。
　不可能。本当に？
　モラヴィア魔道軍の精華を、まるで卵の殻を踏みくだくように粉砕してしまった鋼の大軍勢。
　あの黙示録の軍勢が、モラヴィアの諸都市を焔に沈めていく光景が、まざまざと脳裏に浮かぶ。


「モラヴィア全土に赤旗が翻るまで、どれほどかかるものか……君にも祖国に守りたい人間がいるんじゃないか？そこもふくめて、今一度この申し出について考えてみてくれ。それがきみのためだ」


　死人のように青ざめた顔色で顔を伏せるクラリッサ。その耳元で囁かれたルーキンの言葉は、悪魔の囁きのように彼女の意識に滑り込んで行った。


　部屋を出たルーキンは直ぐに腕時計を確認する。
　残り６人の魔術師との面談を今日中に終わらせた上で、報告をまとめなくてはならない。
　捕虜の移送は国内軍分遣隊に引き継ぐ形になるだろう。
　小脇に抱え持っていたバインダーの書類を１枚めくり、先ほどの女性将校の面談記録に自身のサインを書き込む。

　そのまま次の部屋に向かおうとしたところで、後方から聞こえてくる規則正しい靴音が耳に入り、ルーキンは振り返った。
　足音の主を見て、サッと姿勢を正して敬礼する。
　ルーキンに少しばかり遅れて、パーシャも続くように敬礼した。


「順調かな、ルーキン」


　一人のNKVD将校が微笑を浮かべながら歩いてきた。
　何かの傷痕のようにも見える皺の深い顔に、やや薄くなりかけたくすんだ金髪。
　歳は50代半ばということだが、顔つきだけ見れば７０過ぎの老人のようにも見える。しかしその動きは矍鑠（かくしゃく）とし、軍人らしく隙のないものだ。
　磨きあげられた軍靴。皺ひとつないプレスされた制服の襟元には大佐の階級章が縫い込まれている。

　
「君と顔を合わせるのも半月ぶりか。何か問題や心配事はあるかね？」


「いえ、万事順調です同志。既にこの地区の魔術師に関しては本日中にモスクワへの移送手続きを完了する見込みですので」


「ほぉ、それは素晴らしい。」


　皺だらけの顔に浮かべた微笑をさらに深め、グレナジー・クラシュキン大佐は満足げにうなずいた。
　クラシュキンは革命期以降２０年以上のキャリアを持つ古参のNKVD幹部職員であり、同時に、NKVDにおける魔道技術収集のための特別セクションの責任将校でもある。
　ベリヤの直属であり、彼が報告をあげるのは直属の上司であるベリヤか、ヨシフ・スターリンの二人だけだ。

　ルーキンは先ほど書き込んでいたバインダーをクラシュキンに手渡す。
　表紙の名簿と進行表をざっと眺めると、クラシュキンは破顔した。


「相変わらず仕事が早いな、ユーリー・ステパーノヴィッチ。この手の仕事では、やはり君が頭ひとつ抜けているようだ」


「恐れ入ります」


　クラシュキンは笑みを大きくしてルーキンの肩を叩いて称揚するが、ルーキンの表情は今ひとつ晴れない。
　見た目は知性的・理性的な大佐であり、保安将校としての能力も十二分にある。
　が、同時に執念深く、許すことも忘れることも決してない男であり、必要とあればどんな汚れ仕事も眉ひとつ動かさずにやってのける冷酷さも合わせ持っている。
　革命期における白軍将兵やその家族。粛清期における己の同僚、はては女子供にいたるまで、彼が手にかけた人間は数知れない。


「これなら次の任務にも期待が持てそうだ」


　そういってクラシュキンは親指を立てるとくいっと後ろに向け、先程ルーキンが出てきたのとは、また別の一室を指差した。


「そこまで付き合え。込み入った話になる。――ああ、来るのは君だけでいい」

　ルーキンは後ろを振り返り、、パーシャに先に行けと言うとクラシュキンに従った。　
　木製の扉を開けて部屋に入る。
　先ほどの面談に使用した部屋より一回り大きなそこは応接室か何かのようで、設えてある家具なども見たところではそこそこ値の張りそうな物が揃っていた。
　うち一つのソファにクラシュキンは無遠慮に腰を下ろし、顎をしゃくってルーキンにも座るように無言で促す。
　ルーキンが無言で従うと、クラシュキンはおもむろに口を開いた。


「さてルーキン。お互い忙しい身だ。下らんお喋りはなしにして、早速本題に入るぞ」


　ルーキンにしてもそれは望むところである。
　

「まず、今後についてだが、君と君のグループは今後しばらく私の直属として動いてもらうことになる。君を我が3課きっての防諜将校と見込んでの抜擢だ」


　うれしかろう？とでもいいたげな口調で話すクラシュキンに、ルーキンは内心でげんなりしながらも、表情は何とか取り繕って「光栄です」と答えた。
　ルーキンの内心を見透かしたように、薄笑いを浮かべるクラシュキンだったが、直ぐに笑みを消すと手元のマニラフォルダから何枚かの書類を取り出した。
　それを枚数を確認するようにパラパラと捲りつつ、クラシュキンは話し始めた。


「…今から二日前になるがな。ブルーノへの接近路、南西２００キロの地点に展開していた西部軍の師団が奇妙な集団に襲われ、壊乱した」


「―――奇妙、ですか」


「ああ。こちらの哨戒網・歩哨線をどうやってか擦り抜けて、１９３師団の宿営地を急襲されたそうだ。混戦になって僅か数時間の戦闘の後、士気崩壊を起こして師団は潰走した」


「それは……」


　尋常な事態ではない。師団規模の赤軍部隊が潰走するなど、クトゥーゾフ作戦発動以降ではこれが初めてのはずだ。
　まして小隊・中隊程度ならいざ知らず、大規模な会戦があったわけでもないというのに師団規模の軍が数時間で潰走するなど聞いたこともない。


「士気崩壊を起こして、と言われましたが」


「ああ、混乱の中で師団司令部が襲われた。師団長以下、司令部は全滅。加えて、襲ってきた相手が問題だった」

　
「相手、ですか」　


　ルーキンは内心で首を傾げた。説明の内容が断片的過ぎて、現地で何が起きたのかがさっぱり掴めない。　
　また、今ひとつ要領を得ないクラシュキンの話し方もひっかかる。
　幾つもの疑問が脳裏を渦巻くが、ややあってルーキンは最初の疑問を口にした。


「モラヴィアの魔道軍でしょうか」


「かもな。だが、少なくとも人間ではない」


「どういうことでしょう」

　
　クラシュキンは口の端を微かに釣り上げて答えた。


「死体だよ」


「は？」


　ルーキンはあんぐりと口を開けて固まった。
　

「死霊魔術……ネクロマンシーというそうだがな。」


　そこで言葉を切ると、クラシュキンは捲っていた書類をまたマニラフォルダに戻し、ルーキンに放って寄越した。


「まずはそいつを読め。話の続きはそれからだ」　　


　それまで大佐の顔に張り付いていたニヤついた笑みは、いつの間にか消えていた。    </description>
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