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    <title>邪気眼小説まとめwiki</title>
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    <description>邪気眼小説まとめwiki</description>

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    <title>邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】後編</title>
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    <description>
      *邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】後編

??/??　黄龍降臨の間

「グァウァァァガァァアアアアアアア！？！！？」

突然、絶叫し、のたうち回る外道
喉を抑え、苦しそうに

「馬鹿なッ…何がッ…！？」
「外道…！！」

俺の両手の黄龍鉄甲が光り輝きだす、今までも最も激しく煌く…
その煌きの中に浮かぶ無数の人たち、想いが伝わる
ノスフェラトゥ、いや、外道
これが真の、黄龍の力だ！！！

「目覚めろッ――！黄龍ッ！！！！」

２つの輝きが、混ざり合った
究極の陽の力と、究極の陰の力、決して相容れる事の無い２つの力はそれを遥かに上回る想いによって束ねられる
身体を覆う鎧は金色と黒が混ざり合う
黒き鎧に金色のライン、すべてを飲み込む闇と、すべてを包み込む光
そういえば前にゆき兄に借りたゲームで言ってたな
『調和する２つは完全なる１つに勝る』…だっけ？
それが真実なら…俺は…！！

「グッ…新たな変形を会得したところで俺にはッ…！！」
「おおおおおおおおッ！！！」

右腕が、外道の腹部に叩き込まれた
今までなら感触はあったもののまるで効いてはいなかった、でも今回は…

「グブゥッ…！？」
「爆ぜろォォォォォォオオオ！！！」

拳から爆発が起こる、陰と陽の力を拳の先で激突させ巻き起こす爆発
外道からすればほぼ体内に爆発をブチ込まれたような状態

「がっはぁぁ…きっさぁ…まぁ…！？」

後ろにずり退がりながら腹部を抑える外道
その瞳に宿る憎悪が更に燃え上がっていく

「…なぜだ…！体力の限界…いや命の限界のはずのお前が…！
　なぜ今になってこんなッ…！！」
「俺の力は俺一人のものじゃないからだッ！！！
　お前からしてみれば脆すぎる人の命も力も、束ねれば何よりも強いんだッ！！」
「ほざけぇぇぇぇええええええええええええええええええええ！！」

外道が怒りの形相で向かってくる
寸前で、外道が高く飛んだ
そのまま宙を舞い、真後ろに着地する

「たまゆらぁぁあああああああああああああ！！！」

外道の拳が背中に叩き込まれる、だけど、殆ど何も感じない
そのまま振り向きざまに拳を振った、所謂裏拳
それが外道の顔を捉えた瞬間に起こる爆発

「ガァッ…！！」

煙をあげながら、顔を抑え、後ろへと後退する外道
指の隙間から覗く目、憎悪の塊

「陰の力で力を飲み込み、陽の力が力を包み込み霧散させる…！
　ふざけるなッ…！そんな力…認めるものかッ…！！！
　認めるッ…ものかぁぁああああああああああ！！！」

外道が顔を抑えながら絶叫する、見開かれた目は血に染まる
大きく開き過ぎた口は両端が裂け血を流し始める
そして、一直線にこちらに向かってきた

「たぁまぁゆぅらぁあああああああああああああああああああああああああああ！！！！！」

その拳を、拳で受け止める
外道の口が大きく開かれた、その喉の奥で何かが光るのが見え、俺は咄嗟に顔をズラした
次の瞬間、外道の口から放たれたレーザーのような光が後ろの壁を貫き砕いた

「いよいよ何でもありだなッ…！爆ぜろォォォォォオオ！！！」

拳の先から起こる爆発の衝撃で外道の拳が離れる
だが次の瞬間にまた拳が煙を引き裂いて向かってきた
すぐさまそちらをガードする

「お、俺、ｵﾚ、は、完全、、死は、恐れ、な、い、いい、いぃぃ、い…！」

外道は完全に壊れていた
口から血が混じった泡を吹き、目は焦点が合わずにあちこちをグルグルを見渡している
膨らみすぎた憎悪が心を打ち砕いた、闇に堕ちノスフェラトゥとなった人間は更にそれを越え最強最悪の魔物へと変貌した

「コロス、コロォォォォオオオス！！！」
「クッ…！！」

最早外道の攻撃に加減など無かった、１撃１撃が全力、ありったけの殺意を乗せ打ち込まれる拳
通常ならこんな調子で攻撃をし続けるとすぐに体力切れを起こすものだが
黄龍を宿す外道にそれは無い、それはたまゆらも充分にわかっていた

「爆ぜろッ！！」

両手から巻き起こる爆発の直撃を受けて外道は後ろに盛大に吹っ飛んだ
地面を転がるも、床に指を突き刺し、床を抉りながら停止する
そしてすぐに立ち上がる、その顔には笑みが浮かんでいた

「…この力で、全ての悪夢を断ち切る…」

たまゆらが両手を構えた
それはしっかりと外道を狙っていた

「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ！」

飛び上がる外道、そのまま天井に指を突き刺してそこに停滞した
たまゆらが狙いを上に上げるとほぼ同時、天井からまるで流星のように落下の速度を加えた蹴りがたまゆらを襲った

「グッ…！？」
「やはり、俺が勝つ！勝つ勝つ勝つかぁぁぁあああつ！」

叫びながらまた距離を取る外道
吸収しきれないほど威力の攻撃、陰陽極まった究極の鎧越しにたまゆらは痛みを感じた
早くしないとやはりやられるかもしれない
しかし外道はあちこちを動き回り、狙いを定めることが出来ない
生半可な攻撃では動きを止めることが出来ない、故にたまゆらは自らの最大攻撃を叩き込む必要がある
しかしそれには狙いを定めるという間が必要となる、強い攻撃だからこそ間は必然
外道は知ってか知らずかその間を作らない

「クソッ…このままじゃ…」

??/??　校庭

「何やってんだ！畳み掛けろ！！」
「そこだそこぉぉぉぉ！」
「噛め！抑え付けて噛み千切れ！！」
「回り込めよ！！」

校舎の上で戦う２体の黄龍
それはたまゆらと外道の戦いと同時に展開されるもう１つの戦い
たまゆらと共に戦おうという想いが生み出した黄龍と外道の憎悪が生み出した黄龍の食らい合い
互いが互いを押さえつけ、食らおうとする

「…たまゆら君」

数百人の応援の叫びの中でリカが静かに呟いた
ぶつかり合う２体の黄龍を見つめながら

「ゆき兄も、そこにいるんでしょ…？
　神様…私の全てを差し上げますから…どうか…２人を…」

神に祈ろうとし、組もうとしたリカの手を誰かが止めた
それは白やんだった

「…神なんかいない、どんな運命も人が切り開く
　人は弱いから神を信じ祈るのも仕方ない、だけど今だけは神に頼ることなどしないで置こう
　あそこで戦っているのは神なんかじゃない、俺たちの想いだ」
「…そうだね…」

リカは手を強く強く握った

「勝とう、皆で」


黄龍が、一際大きい咆哮を上げた
その爪が、狂いし黄龍の身体を押さえつけた

「行け！今だ！！」
「トドメだ！トドメ！！！」
「行けぇー！！龍ちゃぁーん！！！！！」

そして狂いし黄龍の身体に、深くその顎が突き刺さった
絶叫する狂いし黄龍、断末魔の悲鳴にも似た叫び声
同時に校庭から沸き立つ歓声

??/??　黄龍降臨の間

「グァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！！！！！！」

突然絶叫と共に外道の動きが止まった
身体を抑え、もがき苦しむ、まるで身体に無数の牙を突き立てられたかのように
その理由はたまゆらが知る由も無い、だけどたまゆらは何となく理解できていた
何にせよ最大のチャンスには違いなかった

「皆、ありがとう…」

呟き、両手を構えるたまゆら
金色と黒が両掌の中で交じり合う
外道は動けない、身体を抑えたまま顔だけをたまゆらの方向に向ける

「や、め、ろぉ…」
「これで終わりだ！外道ォォォォオオオオオオオ！！！
　陰陽完全調和！！！滅殺黄龍弾！！！！」

両掌に交じり合った金色と黒が撃ちだされた
陰にも陽にも属さない調和する完全を越える究極の力
ライフル弾のような回転する小さな玉
それが、外道の額を直撃した

「ああッ…がッ…げっ…！？」

全身を痙攣させながら大きくのけぞる外道
その額に空いた穴から漏れ出す光
徐々に、身体中に穴が空き出し、そこから光が漏れ出してくる
必死に穴を塞ごうと手で押さえながら、フラフラと揺れ動く外道

「ゲッ…ガッ…身体が…ッ…そんなッ…！！」
「狂った黄龍ごと、消し飛べ！！！」
「ぎぃぁぁがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！」

断末魔の叫びと同時に、外道の身体から漏れ出た光が一層強まり
外道の身体は大爆発を起こした
極限まで凝縮された陰と陽の気の弾丸
体内に入り込み、全身を駆け巡り、やがて体内より大爆発を巻き起こす
それが陰陽完全調和【滅殺黄龍弾】
爆風と衝撃と熱が部屋を包み込んでいった



??/??　校庭

『ウォォォォオオオオオォォォォ…』

狂いし黄龍の身体が徐々に光の粒子となっていく
それはまるであの日見た花火のように暗い夜空を照らしていく
１人の男子生徒が叫んだ

「勝った…勝ったんだ…！！」

その言葉が一斉に周りに伝わった

「勝ったぞぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！」
「やったぁああああああああああああああああああああああああ！！！」
「何が何だかわかんないけどとにかく勝ったんだぁあああああああああああああ！！！！」

喜んでいるのは一般生徒だけではない
執行部もほろにがもヤチャマルも白やんも阿部さんもカナも神楽君も喜びの声をあげていた

「やった！やったよ！勝ったんだ！たまゆらさんが勝ったんだ！！」
「本当にアイツはやってくれるぜ！」
「当然でしょ！たまゆらさんが負けるわけがないんだし！」
「ちっきしょう、何か泣けてきた！」
「さすが同じカマを掘った…いや、違った」
「店長２回目だとさすがにクドいです！！」
「おいおいおいおいおいおい！あいつ本当にやりやがったぜ！！」
「まるで夢を見てるよう…」
「見てみろ！龍が消えていくぞ！！」

狂いし黄龍が完全に消え去ろうとした頃
想いより生まれた黄龍の身体も徐々に粒子と化していく
空に昇る、金色の光
例え消えようとも、生まれた希望は決して消える事は無い
希望は根付いたのだから
それを見ながらリカが言った

「後は、ちゃんと２人で帰ってきてね…」


??/??　黄龍降臨の間

「ハァ…ハァ…」

爆風が過ぎ去り、俺の身体を纏っていた黄龍の鎧は２つの黄龍鉄甲に戻っていた
全て終わったと思った、だが煙が晴れた時に戦慄が走った
内部からの爆発で粉みじんになったはずの外道が、立っていた

「ウゥ…ァァ…」
「クッ…」

外道がこちらに手を伸ばしてゆっくりと近づいてくる
駄目だ、もう戦えない…！
だが予想を遥かに越える出来事が起こる
外道の伸ばした手が先から割れたガラスのようにバラバラと地面に落ちていく

「な、ぜ…だ…俺は…完全なは…ず…」
「強引に黄龍を宿すことは出来ても器で無い限り必ず限界が来る…」
「ゆき兄ッ！？」

いつの間にかゆき兄が立ち上がり、俺の横に立っていた
やっぱり、生きてたんだ…
外道がゆっくりと、ゆき兄の方向を向いた、その間にも外道の身体の崩壊は止まらない

「俺は、死ぬ…の、か…？」
「死ぬだろうな」
「そう、か…」

それだけ言うと外道は俺たちに背中を向けた
すでに両腕は砕け散り、身体も徐々に崩壊を始めていた

「６０年…ずっと望んでいた…この時を…
　欲しかったのは…完全なんかじゃなくて…この優しい…安そッ…」

パキィン！と高い音が周囲に響いた
足と胴体と頭、残った外道の身体が全て一瞬で砕け散った
ガラスの破片のような外道だった者の欠片がその場にガチャガチャと落ちた
これで、全部終わったのか…

「…これで全部終わったの、ゆき兄？」
「多分な…外道ごと黄龍も吹き飛んだとは思うが」
「そっか…じゃあやっと…帰れるんだね…」
「…ああ…」
「あ、これ返すよ」

俺は黒い黄龍鉄甲を左手から外してゆき兄に返した
少し笑いながらゆき兄は受け取る

「つってももう意味はないぞ、力の根源である黄龍が消えたんだ
　もうこいつはただの鉄甲だよ」
「…あ、そうか…」
「まぁそれでも武器として使えないことは…！？」

ゆき兄が黒い黄龍鉄甲をつけた瞬間に顔つきが変わった

「馬鹿な…！？」
「どうしたの！？」
「消えてない…！黄龍はまだ消えてない！！」
「えッ！？」

驚き、聞き返そうとした時、部屋に絶叫が響いた
これ以上ないほどの絶望を俺たちにもたらす声

『器ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！！！！！』

黄龍…！？
金色の光が目の前に集結していく
そんな…こいつ、まだ…！？

「やはり…意志ある黄龍を倒すのは不可能なのか！？」
「駄目だ、もう戦えない…一旦退こう！」
「しかし…ここで退いても…！」
「外道だって何とか倒せたじゃないか！！退くことで勝機が見出せるかもしれないだろ！！」
「たまゆら…お前…！わかった…！
　…とはいえ帰り道は瓦礫で埋まってるし…」
「外道が出てきた穴はどこかにつながってるんじゃ？」
「そうか、よしわかった…！」

集結する光が徐々に龍の形を作っていく
早くしないと…時間が無い！
俺たちは慌てて外道が出てきた穴を見る、決して広いとは言えないが全速力で走れそうなぐらいには幅がある
これならいける…！あ、でも…

「どうした？早く行け」
「あいつも…一応、なんとかならないかな」

俺は祭壇の前を指差した
そこには倒れているスイカ

「…わかった、俺は充分休んだからな、俺が担いでいく
　だからお前はさっさと行け」
「行けっていって自分だけ残るのはナシな」
「わかってるよ！」

ゆき兄はスイカの近くに走っていき力なくうな垂れた手を掴んで担ぎ上げた
その時、スイカが小さくうめいた

「…生きてる…のか？コイツ…？」
「ゆき兄！早く！！」
「今いく！！」

ゆき兄が来たのを確認して俺たちは穴に飛び込み、真っ暗な地下通路を走っていく
後ろから、黄龍の咆哮が聞こえた、どうやら完全に元通りになったらしい

「絶対振り返るなよ！前だけ見て走り続けろ！！」

後ろからそう言われただ俺たちは真っ暗闇を走り続けた
遥か後ろから聞こえる何かが崩れ落ちて行く音
そして狭い通路に反響する黄龍の叫び声

『ウツワァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！！！！！！』

岩盤を抉るような音、揺れ動く地下通路、振り向きたい衝動を必死に押さえ込む
足がとても痛く、息は吸っても吸っても酸素が足りない
心臓の鼓動は破れるように早い
やがて正面に光が見えた

「出口だ！！」
「突っ切れ！！！」

穴から飛び出した俺、カツンとコンクリートの地面を踏む
そして目の前にあった地面に空いた大穴

「うわッ！！」

危うく落ちそうになる、ここは…何だ？
上を見ると大きな穴が開いていた、見える歯車と機械
まさかここは…時計塔…？

「ハァ…ハァ…この大穴は…？
　ここは…時計塔…？」

地下通路から飛び出したゆき兄が大穴を見る
確かに気になるが今は構っている暇は無い、すぐにここから脱出しないと
梯子に向かおうとするが、ゆき兄は大穴を見つめている

「何やってんだよゆき兄！？早く！」
「…穴…？龍脈…？」

動かないゆき兄に駆け寄り腕を引っ張る
こんなときに何を考えて
するとゆき兄が背中におぶっていたスイカを俺に渡してきた

「行け、たまゆら」
「何言ってんだよ！？ここまで来てまた死ぬ気か！？」
「…そうじゃない」
「じゃあなんで行けって…！」
「…」

ゆき兄は黙った、だがその目には今までと違う、新たな覚悟が垣間見えた
何をする気なのかはわからない、だけど止めなくちゃいけないと直感で理解した

「…いいから早く逃げよう！体制を整えなおせば倒す方法だって見つかるかもしれない」
「倒す方法なら見つけた、だけど今しかない」
「それってどういう――」
『みぃつけぇたぁぞぉォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！』

壁に空いた穴、その奥から徐々に金色の光が近づいてくる
早く逃げないと…！！

「いいから早く！！」

そう言って俺はゆき兄を無理やり引っ張ろうとする
だけどゆき兄は抵抗する
そうこうしてるうちに黄龍の声と光はどんどん近づいてくる

「ああ、わかったよ…」
「え？」

唐突にゆき兄がわかったよと言った

「やっぱナシだ、逃げよう」
「…ああ！！」

安心して手を離したその時だった
ゆき兄が、思いっきり俺を突き飛ばした

「え…？」
「わりぃな、たまゆら」

スイカを抱えて上手くバランスが取れずに俺は後ろに転倒し尻餅をつく
慌てて立ち上がろうとしたが俺の身体に覆いかぶさるようになったスイカのせいでうまく行かない

「何やって…早く逃げないと…！！」
「ははっ」

ゆき兄が笑った
なぜこの状況で笑えるのか不思議でしょうがなかった
だがその刹那、笑みの理由を俺は理解した

「もう遅いさ」
『ウケイレロォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！』

ゆき兄が両手を広げた
壁の穴に向かって、即ち、黄龍に向かって
そして、壁の穴から光が溢れる
俺が叫ぶよりも早く、その光はゆき兄に直撃した

「がぁああああああああああああああああああああああああああ！！！」

光、いや黄龍は物凄い勢いでゆき兄へと吸い込まれていく
何やってんだよ、何を…その黄龍を受け入れたら…！
世界が滅ぶんだろ！？それなのに…！？
ただ呆然とし、動けない俺を尻目に黄龍はまるでなだれこむようにゆき兄へと吸い込まれていく
そして、完全に全てがゆき兄の体内へと吸収された

「グッ…がぁぁ…！！」

ゆき兄の身体から黒い炎が揺らめき立つ
それはまるで脈打つマグマのように
全身が震えているのは黄龍に抗っているからだろうか？
一体、ゆき兄は何を…！！

「ク、ククククク、ついに…器を手に入れた…
　もはや封印する者も存在しない…！！手に入れたぞ…！」

その声はゆき兄ではあるがゆき兄ではない
声を紡ぐのは、黄龍
ゆき兄の身に宿った黄龍が、こちらを向く

「手始めにお前を浄化し…
　そのあとゆっくりとこの世界を浄化してやろう…！！」

ゆっくりとこちらに近づいて来るゆき兄、否、黄龍
だが俺に到達する前に黄龍の足が止まる

「こいつッ…！またも俺に抗うかッ…！！
　だが無駄なのはわかっているだろう…！封印が無い以上、我を押し留め続けるのは不可能だッ！！」

頭を抑える黄龍
抗う…？ゆき兄が、黄龍に抗ってるのか…？

「たまゆら…」
「ゆき兄ッ！？」

その声はゆき兄本人の意志で発せられたものと理解した

「…やっぱり…これは俺の役目なんだ…
　俺が…こいつを目覚めさしたんだからな…」
「何言ってんだよ…？役目って…？」
「…楽しかったぜ…たまゆら…
　もしいつかまた…いやいつかは無いだろうな…生まれ変わったら…今度は普通に友達として…」
「無いってなんだよ！？何する気だよ！？」
「ああ…あいつには…リカには適当言っておいてくれよ…
　俺のことなんか忘れて…勝手に生きろって…」
「何が、言いたいんだよぉ…！」

頬に涙が零れ落ちた
どうしてだろう、ゆき兄の目がとても、悲しかった

「…じゃあな…たまゆら…
　貸したゲームは…お前にやるよ…それじゃ、な…」

ゆき兄は、それだけ言って地面を蹴った
向かう先は、地面に空いた大穴

「ふざけるなァぁぁあああああああああああああああああああああああああ！！！」

スイカを跳ね飛ばし、俺は飛んだ
落下していくゆき兄、間に合わない、だけど必死に手を伸ばす
俺の手に、何かがかすり、無我夢中でそれを掴んだ
強い引っ張られる力、それを押さえ込んで、必死に手を離さないようにする
俺が掴んだのは、ゆき兄のつけた黄龍鉄甲についていた赤い紐

「今…引っ張り上げるから…！！」
「離せ、たまゆら」
「嫌だ…！！何やってんだよ！？何でこんな！？」

泣きながら、どうしてこんなことをしたのかをゆき兄に問う

「…この黄龍は人の手によって抽出された龍脈の気から作り出された存在
　ならば、龍脈の流れに落としてやれば…黄龍は龍脈へと還る」
「だからって何でゆき兄ごと…！？」
「龍脈は深い地の底にある…
　黄龍だけを落としても龍脈に飲まれる前に上がってくる…
　だからあえて器である俺が受け止め、そのまま落ちればいい」
「そんなの…そんなのって…」

絶句し、言葉が上手く出てこない
そんな俺を見て、ゆき兄は言う

「落とせ、たまゆら、それで全てが終わる」
「出来るわけが…」
「…グッ！？」

ゆき兄の顔つきが変わる
そして響く声は黄龍のもの

「馬鹿なッ！この器…！我ごと死ぬ気か！？
　早く引き上げろ！！」
「ッ…！！」
「落ちれば器は間違いなく助からんぞ！？
　さぁ引き上げろ！！」

引き上げれば、ゆき兄は助かる、だけどゆき兄はすでに黄龍を宿している
手を離せば、ゆき兄は死ぬけど、黄龍も消し去れる
どうすればいいんだ、俺は…？どうすればいい？
こんな、こんな選択…したくない…！

「たまゆらー…」

今度はまたゆき兄の声
俺は答えない、ただ突きつけられた決断に迷い続ける

「…１を捨て、１０を生かすか…１０を捨て、１を生かすか…辛い決断だよな…
　でも俺は昔決めたんだ…でも俺はその意地から１度逃げてしまった…
　もう二度と、逃げ出しはしない、だからお前が気に病む必要は無い」

突然、手が軽くなった
下を見ると、俺の手にぶら下がっているのは、黒い黄龍鉄甲だけ
落ちていくゆき兄、酷くゆっくりと

「絶対に捨てなきゃいけない１なら俺が補う…この身でな…」

そう言って、ゆき兄は微笑んだ
心底、安心したかのような、笑顔

「さぁ、１００年の悪い夢は終わりだ、黄龍
　目覚めさせてしまった俺と、目覚めたお前で共に行こうぜ…」

その言葉を最後にゆき兄は暗い穴の底へと、奈落へと落ちていった
手を伸ばしても、決して届かない
言葉を失い、ただ光届かぬ奈落を見据える

「あ…ああああ…ああ…！」

引き上げたのは、ゆき兄の黒い黄龍鉄甲だけ
そこに残る温かみだけが、彼の証
それもやがて消えていく

「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」

時計塔に響く絶叫
砕かれた天井の穴から抜けるその絶叫は空へとただ響くのみ
メキリと、上から音が聞こえたと思うと、バキバキと今度は木がヘシ折れていく音
響く金属音、チャリンと、横に落ちた小さな歯車
それが合図、時計塔が壊れていく

「…」

動く気力も起こらず、壊れていく時計塔を下から眺める
全ての始まりの場所が、音を立てて、今、崩壊する
不意に、誰かが俺の首根っこを掴んだ
振り向くと、そこにいたのは…

「高橋…？」
「ゆき兄は、お前らに未来を、希望を残したんだ…！
　それなのにお前が腑抜けてここで死んだらあいつが死んでも死にきれねぇぞ…！！」
「…俺は」
「お前が死にたいなら勝手に死んじまえと言いたいが…！
　お前は託されたんだ…！そのゆき兄の想いを踏みにじらせはしないッ！！」

手に持った、黒い黄龍鉄甲を見た
微かに残る、内側の暖かさがまるで俺に…
ポタリと、大粒の涙が、鉄甲に落ちた
崩壊していく時計塔の下で俺はただ泣き続けて…



落ちていく、どこまでも、深い闇を
その闇の中で、見えた懐かしい顔

「そこにいたのか、随分待たせたけど…やっと終わるよ
　約束通り、復活の可能性はこれで全部消える…
　…そう悲しそうな顔しなくてもいいじゃんか
　そりゃ本音を言えばもっと生きたいし死にたくはないよ…
　んでもさ、なんつーか…しょうがない…かな…あと思ったより怖くはないんだ
　…託せたから、かな…ある意味最も重い物を背負わせた気もするけどね…
　でも最後に君に会えたよかったよ…例えこれが幻想だとしても…俺はもう…充分だよ」

そして、目を瞑り
静かに、深い闇へと、落ちていく、どこまでも…




翌年3/15　体育館

「…最後になりましたが、邪眼学園高等学校の更なる御発展をお祈り申し上げ、答辞とさせていただきます…
　平成XX年、三月十五日…卒業生代表、白やん」

壇上の上で淡々と卒なく文章を読み終わる白やん
拍手に包まれながら壇から降りる
卒業式が行われている邪眼学園を遠くから眺めてる男が１人いた
学園の前の道端、バイクに腰掛けながらタバコを吸う男

「丁度そういう時期か…ちょっくら寄ってくか…
　ウロついてるの見つかっても誰かの保護者って言えば問題ねぇだろ」

そう言いながら勝手にバイクをその辺に置いてほろにがは校門を潜った

「おお、久しぶりじゃないか
　ついに掘らせてくれる気になったのか？」
「ゲ…てめぇまだ居たのか…？」

ほろにがを玩具を見つけたような目で見つめるのは阿部さんだった
その手は怪しい動きをしていた

「誰が掘らせるかっつーの…」
「冗談だ」
「もー店長あんまりそういうことしないでくださいよ」
「硬いこというな、生徒にはもうやらないよ」
「そーいう問題じゃなくて…」

阿部さんに文句を垂れるのはカナだった
そんなカナを見てほろにがが呟いた

「へー、前よか胸大きくなったな、成長期か？」
「…店長、ヤっちゃってください！」
「待て待て待て待て！！！」
「ハッハッハ、掘りたいのも山々だがそろそろ式も終わったようだぞ」
「んん？」

体育館からは生徒たちがぞろぞろと出てきた
そこにちらほら混じる懐かしい顔ぶれ

「あ、お前なんでいるんだよ！？」
「おお！ヤチャマル！って何で卒業式で一升瓶もってんだよ」
「祝い酒だ」
「久しぶりに会ったことだし俺も飲ませてくれない？」
「誰が飲ませるか、誰が」
「ケチなところは変わってねぇな、あーあー、セコい人ってヤダヤダガブァッ！？」

ヤチャマルの鉄拳がほろにがの顔面に叩き込まれた

「変わってないのは攻撃の威力もだぞ？」
「よく…わかりました…」

鼻血を垂らしながら引きつった笑顔で答えるほろにが
そのほろにがにハンカチを差し出す手、白やんだった

「拭け」
「よぉ、生徒会長…」
「残念だが、もう生徒会長は引退だ」
「あ、そーなの…」
「もう堕人も黄龍も存在しないからな、力も無くなり今までの生徒会は完全に無くなったよ
　今はとても普通さ、執行部も姿を隠すようなことも無くなった」
「今の生徒会長は誰なんだ？」
「あれだよ」

白やんが後ろを指差す

「会長ー、また尻の部分破れてますよ」
「心頭滅却すれば尻また涼し…」
「意味わかんねぇっすよ…」

それを見たほろにがが笑った

「あんなんでいいのか？」
「あれはあれで有事には割りとリーダーシップがあるようだからな
　何度いっても尻はいつの間にか出ているが…」
「会長ー…じゃなかった、白やんさーん、写真撮りませんか？
　ってあれ…懐かしい顔が…」

カメラを片手に近寄ってきたのはしげるだった

「オス、久しぶりだな」
「どうしたんですか？」
「近くによったから立ち寄っただけさ」
「…ああ、そういえば白やんさん」
「ん？」
「さっきあっちで喧嘩がありましたよ？」
「止めたのか？」
「止めようとする前に雷雲さんと黒やんさんがめでたい日に喧嘩なんかすんなッ！てしばき倒してました」

ほろにがが目をパチクリさせて
しげるに聞いた

「あいつらが…？信じられねぇ…」
「色々、変わったんですよ、僕らも、あれから…」
「…そっか」
「もう皆特殊な力は無いからな
　そして、アレも無い」

白やんが呟きながら遠くを見た
その方向には時計塔があったはずだが、すでにその面影は無く青空が広がっている

「…」
「なーに懐かしい顔ブレで神妙なツラしてんすか！うまい棒食べる？」
「えび助…」
「これ新発売のうまい棒焼酎味なんすけどね、隠し味にアルコールがケケケ」
「お前酔ってるだろ！？」
「酔ってへん、酔ってへん、なー、透過～！？」
「そうれす、酔ってへんれす」
「いや、酔ってる酔ってる！絶対酔ってる！
　つーかお前らいいのかそれって！？」
「いーんっすよ、卒業式の日に酔うぐらい正義れすって」

ヘラヘラと笑いながらそう言う透過
その肩をポン、とヤチャマルが叩いた

「一応、俺も教職だぞ」
「は、はははははは…」
「まぁまぁいいじゃねーか、卒業式なんだし」
「…ま、いいけどな」
「おー、ヤチャさん話がわかるっす～」
「何やってるんですかー？」
「お、蝶か…久しぶりだな」
「あれ、ほろにがさんホームレスになってまた学園に住み着きにきたんですか？」

サラッと物凄いことを言い出した蝶

「…お前めっちゃ変わったな…」
「そうですか？」
「変わったよ…」
「あ、いたいた、皆～」
「お、姫じゃん」

息を切らしながら走ってきた姫

「何やってんですか？皆で集まって？」
「怪しい不法侵入者を捕まえてたんだよ」
「仮にも一緒に戦った仲間にその言い草！？」
「立ちショーベンが何を…」
「わぁわぁ！！それは言うな！！それは！！」

慌てるほろにがを見て皆が笑う
それを物陰から見ているのが１人

「…楽しそうだな…いや、あんなくだらない集まりなんか興味ない…
　無いし…今更俺が顔を出すのも…」

そう呟いていたのはスイカ
だがぞくりと後ろから不気味な雰囲気を感じる
振り向くと２人の女生徒がいた

「ねぇねぇキリン」
「何かなミギー？」
「こういうプライド高い人が慌てふためく姿を見たくない？」
「見たいねぇ」
「それじゃどーん！」
「どーん！！！」
「うおッ！？」

突き飛ばされて転がるように物陰から皆の輪の中に飛び込むスイカ

「うおっ…」
「ハッ！？違う！別に混ざりたかったわけじゃなくて…！」
「ぎゃはははは、いきなりギャグキャラに成り下がってやんのコイツ！」
「…創造主の力を失った俺なんて無力なんだからあんまりいじめるな…所詮俺は凡人…」
「あらら、イジけちゃった」
「あ、おーい！」

桃花が友達から離れてこちらに近寄ってきた

「なっつかしい顔ぶれ～
　そういえば皆たまゆら君見た？」
「いや見てない」
「じゃあ多分あそこにいるんだよ、皆で行かない」
「ああ、なるほど…んじゃ行きますか」
「いこいこ」

皆はぞろぞろ移動を始めた
校舎の裏へ向かって


同時刻　時計塔跡地

積み上がった瓦礫を見つめている女子生徒がいた
静かに、瓦礫を見つめたまま呟く

「忘れるなんて出来るか、ばーか…」

後ろからザクザクと何人もの足音
振り向くと、共に戦った仲間たち

「皆！ほろにがさんまでいる！」
「おう、リカちゃん、髪伸びたな」
「あれ？たまゆらは？」
「あっ、何か忘れ物があるとかいって…」
「入れ違いになったか…ま、待ってりゃ戻ってくるだろ
　にしても見事に瓦礫の山になっちまったな…」

ほろにがは瓦礫を見つめる
あの夜、時計塔は崩壊し、瓦礫の山の横に倒れていたたまゆらを見つけた
そして全てを皆は知った
ゆき兄が、全ての絶望を背負って持っていったことも
後ろから、声が響いた

「皆！」
「お、たまゆら！何取りにいってんだ？」
「これ…」

たまゆらが出したのは黒い黄龍鉄甲
ゆき兄が残した、想い

「…一緒に戦った皆で集まれるの、これで最後かもしれないだろ？
　だからせめて…これだけでも」
「そ、だな…」

たまゆらは瓦礫の中央に黒い黄龍鉄甲を立てた
ゆき兄なら今すぐにでも瓦礫の下から現れる気がした
だけどそれは夢、優しい夢
決して叶うことは無いけど、もう悲しむことはしなかった
悲しむんじゃなく、ゆき兄が残した明日を、希望を生きようと誓ったから

その光景を屋上から見ている者がいた
折れた足は完治し力を失ったから以前のような威力はもう無いものの
今だその蹴り技は健在なメチャ強い不良、高橋
最もアレ以来だいぶ真面目になったようで授業にもちゃんと出るようになったらしい
その顔には、優しい笑みが浮かんでいた

「それじゃ…今から皆でイビルアイでパーティーやるか！
　先手を打って神楽君に貸切にしてもらったから！！」
「ヤチャマル偉い！」
「よっしゃ善は急げだ！！」
「たまゆら君、行こうぜ！」
「ああ、後から行くよ、先に行ってて」
「ちゃんと来いよ！！」

皆はイビルアイに行ってしまった、薄情だとは思わない
わかっている、ここにいたら泣いてしまうかもしれないんだろ？
残ったのは、俺とリカだけ
俺は黒い黄龍鉄甲に向かった

「…この楽しさが、ゆき兄が守ったものだよ
　どこかで、見てるといいな…」

次にリカが言う

「絶対忘れない、死ぬまで忘れない
　それであの世で一生分の文句を言ってやるから覚えとけよっと」

それを聞いて、俺は少しだけ笑った
空は晴天、吹き抜ける風が心地いい
きっと、今日が終わればまたとても普通な、あの頃とは考えられないような普通な日々が始まるんだろう
その普通は、ゆき兄が守りきった物、だから僕らは精一杯、日々を生きていくよ
だから、今日ぐらいはいいだろう？
思い出に、懐かしいリフレインに身を委ねても、いいだろ？

「それじゃ、いこっか、たまゆら君」
「そうだね、行こうか…」

俺たちはイビルアイへと向かった
最後に振り返ると、太陽の光を黒い黄龍鉄甲が反射してキラリと光った
なんだか、それがゆき兄が笑った気がして…
胸にこみ上げてくる想いを抑えて、俺は前を向いて歩き出した
託されたから、俺は君の分まで生きていくよ、精一杯、君が守った世界で、日々を、皆と共に…



邪眼学園黄龍譚
完


.    </description>
    <dc:date>2009-12-03T09:10:14+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/129.html">
    <title>邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】中編</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/129.html</link>
    <description>
      *邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】中編

??/??　学生寮前

「おい、全員避難完了したか！？」
「何なんだよこの地震は…クソッ…！」
「おい怪我人早く運び出せよ！！」

断続的に起こり続ける、地下での戦いと龍脈の暴走により起こる地震
そして暴走したエネルギーが起こす放電現象や数々の災害
それらは校舎だけではなく学生寮すらも襲っていた
避難を始めた生徒達をかきわけてるリカ
その顔はとても暗い

「…凄く嫌な予感がする…何…これ…？」

不安に身体を震わすリカの耳に不気味な音が響いた
それは地を這うように響く鐘の音、遠く、校舎のほうから聞こえてくる
横であたふたしていた男子生徒が言った

「時計塔が、動いてるのか…？」
「時計塔…？」

ゴォーン、ゴォーン、と鳴り続ける鐘の音
不気味な音、それがなおさら不安を煽って行く

「リカさん！無事でしたか！」
「…しげる君…」

リカに近づいてきたのはしげるだった
今まで怪我人を運び出したりしていたのか汗ダクになっていた
校舎の方向を見ながらしげるは言う

「一体何が起こっているんでしょう…
　全て、終わったはずだったのに…僕達は間違えたんでしょうか…」
「間違ってなんか…」

リカがそう呟いた時だった
背後から怒号が響いた、何人かの男子生徒が口論しているようだった

「お前勝手にどこ行くんだよ！？」
「こんな場所入れるわけねぇだろ！早く逃げないと死んじまうぞ！」
「馬鹿！まだ怪我人がいるんだぞ！！」
「じゃあ俺はそいつらのために死んじまえって言うのか！？」
「そうは言ってねぇだろ！！！」

それを見たしげるが苦虫を噛み潰した顔で呟いた

「まずいな…何もわからないこの状況で皆パニック寸前だ…
　下手すりゃ地震とかの被害よりこっちのほうが…」

口論は激化し、今にも乱闘になりそうな状態だった
ここで乱闘が起これば被害が被害を呼んで多数の怪我人…
いやもしそれで救助が遅れて寮が倒壊でもすれば、死者まで出てしまうかもしれない
それだけは断じて避けなければいけなかった、だけどどうすれば…？

「んのヤロォッ！！」

１人の男子生徒が、口論の相手に向かって拳を振りぬいた
それは、崩壊への引き金
当たれば間違いなく、狂気は伝染する
拳と男子生徒の間に、誰かが割ってはいった
バキィッ！と音がする

「え…」
「…」

割って入り、拳の直撃をその顔で受けたのは蝶だった
痛みから逃げ続けていた蝶が自ら痛みにその身を晒した
そして、さらに声が響く

「全員慌てるな！！俺の言う通りにしろ！！」

その叫び声の主は剣三郎
だがその発言に何人もの生徒が反論する

「言うとおりにしろって何様だ！」
「なんで俺らがお前らの言う通りにしなきゃいけねぇんだよ！」

その言葉に剣三郎は大きな声で返答する

「俺は執行部だ、教師、生徒会共に不在の今
　いたずらに被害を広げないために俺に従ってもらう」
「執行部だって！？」
「ふ、ふざけんな！！今までテメェらが俺たちに何をしてきたか忘れたとは言わせねぇぞ！？」
「誰がお前らの言うことなんか聞くかよ！」

反論する声がどんどん高まっていく
剣三郎は血の気が多い奴らに周囲を囲まれている
殴られる、その寸前に一人の女子が飛び出した

「待って！」

飛び出したのは桃花

「あぁ？女子はすっこんでろよ！？」
「私も執行部だから…確かに今まで私達は皆にひどいことをしてきた…！
　でもそれは元はと言えば皆を守るため…暴走したのは確かに私達の罪だけど…
　本当は生徒会と執行部は皆を守るために…！！」

嫌われることに怯え、それゆえに力に囚われた桃花が
これ以上ないぐらいに嫌われるかもしれない執行部だということを自分から明かし
暴走を始めようとする生徒を止める

「信じられっか馬鹿野郎！」
「そうやってお前ら俺らを油断させて…！」
「黙れ、下衆ども…」
「！？」

いつの間にか反論する生徒達の中に混じっていた黒いマントの男
静かに、それでも圧倒的な存在感を放つ声が周囲を驚かせる

「助けてやろうと言っているんだ
　変わらないだろう、今までと、俺たちに従うなら安全は保証され、逆らうなら罰だ
　…逆に言えば、どんな状況になろうと生徒会執行部に命を預けるなら俺たちはそれを全力で守り抜く」

空虚な思想でただ目の前に現れる者を倒すだけの存在だったはずの黒やん
それが今、他の執行部の意に沿うように意見し、あまつさえ守り抜くと言った
僅かに、反論していた生徒たちに動揺の輪が広がっていく

「だ、だけどやっぱり…」
「執行部なんて…信用…」
「何を信じるか、自らの正義は何なのか…悪とは何のか…
　境界線など無い、守りたいという想いは時に人を傷つけてしまう
　それでも守りたいという想いだけは決して嘘なんかじゃない」

ゆっくりと現れたのは透過
絶対的正義を妄信していた彼は言う
正義と悪に確かな境界線など無いということを

「信じてくれとは言わない
　それでも、守りたかったという気持ちは嘘じゃない
　執行部になってからは狂ってしまった俺たちも、執行部に入ろうとしたのは守りたかったからだ」

反論していた生徒達は押し黙る
その中の１人がゆっくりと剣三郎に近づいた

「…どうすれば、いいんだよ」
「全員校庭の真ん中に避難、元気な奴らは怪我人を運んでやってくれ
　まだ寮に取り残されている怪我人などは執行部が探索して救助する！急げ！」
「わ、わかった！！」

１人が走り出した、それは輪のように一斉に他の一般生徒に広がった
怪我人を抱きかかえ、何人もの生徒が校庭へと避難していく
それを見て安心したような顔をする剣三郎の肩にポンと手が置かれた
剣三郎が振り向くと黒やんが手を置いていた

「こりゃ次期生徒会長はお前かな」
「生徒会長って柄ではないがな…」
「ああ、それと」
「ん？」
「ズボン、破れてるぞ、尻の部分な」

その少し後ろでは頬を抑える蝶を桃花が介抱していた
奥歯が折れたらしく、蝶は口から血を流していた
一般生徒のために身体を張って下手すれば袋叩きにされたかもしれないのに執行部だということをバラし
パニックになるのを抑えた皆を見てリカは感じていた
それは、たまゆらがもたらした、闇に淀んだ学園の希望
全ての闇を撃ち払う、守りたいという気持ち、思いやる心、…絆の力
同時にしげるも感じていた、そして思い出していた
ツチノコの言葉、人の心にある星の煌きのような儚くも、確かに光る…
しげるは、その本当の意味が今更ながらやっとわかった気がした
星空は決して１人で作ることなんか出来ないんだ、と
剣三郎が尻を隠しながら叫んだ

「２手に分かれて男子寮と女子寮に取り残されてる生徒がいないか見に行くぞ！
　死傷者なんか絶対に出すなよ！！！」

処罰するためでは無く、守るために執行部の面々は駆け出していった
男子寮の中は断裂した電源ケーブルなどが宙ぶらりんになったり、水道管から水が溢れたりと酷い有様になっていた
剣三郎は叫ぶ

「誰かいないか！！」

その時、誰かが階段を駆け下りてきた
剣三郎がそちらを振り向くと背中に３人もの人間を抱えた雷雲がいた
自らを傷つけ、誰かを傷つけるだけだった雷雲が
必死の形相で助けるために３人もの人間を背負っていた

「これで…もう誰もいないぞ…」
「よくやった！」

だが雷雲の真上の天井にビシリと亀裂が走った
天井が崩れる、間に合わない

「雷雲伏せろォッ！！！」

咄嗟に飛び出した誰かが天井に向かって何かを投げつけた
爆発が起こり、砕けた天井の破片が辺りに散らばった

「えび助ッ！」
「…守るために壊す…か
　あのジャングルジムもよく考えればただ壊されたわけじゃなくて…
　子供の命を守るために壊されたんだよな…」

誰よりも破壊を憎んだ故に完全な破壊者になってしまったえび助
だが知った、壊すことで誰かを守れることもあり、誰かを守るために壊さなければいけない物もあるのだと
剣三郎たちは男子寮から脱出する
桃花と蝶も女子寮から２人を背負って出てくる

「どうだ！？」
「大丈夫、女子寮もこれで全員」
「よし、俺たちも校舎に…」
「…リカさん？どうしました？」

しげるが立ち尽くすリカに声をかけた
リカは静かに、校舎のほうを見ながら佇んでいた
そして呟いた

「…たまゆら君、ゆき兄、わかるよ…きっと今も戦ってるんでしょ…？
　いつもいつも私だけ置き去りなんだからさ…
　…ね、希望が芽吹いたんだよ、だからもう学園は大丈夫…大丈夫だから…」

リカが地面に膝をつき、座り込んだ
ポタ、ポタ、と涙の雫が地面を濡らしていく

「…うっ…くっ…今度もっ…ちゃんと…帰ってくる…よね？
　大丈夫…だよ…ね？
　まだ…私…ちゃんと伝えてない…よ…ゆき兄…ゆうくん…」

??/??　黄龍降臨の間

…誰かの声が聞こえた気がして、意識が徐々に戻ってくる…
どうやら俺はまだ生きているみたいだった
外道は、どうなった…？
そう思った時だった、鼓膜を揺らす、外道の声

「何だッ…！？力がッ…抜けてッいくッ…！？
　龍脈の気が…戻って…！？」

目を開けると、身体を抑える外道の姿
その身体から金色の光が溢れ出ていた、まるで何かに取り出されているように
何が起こってるかわからない…が、チャンスなのか？
俺の身体は…動くのか…？
遠くから、ガラガラと瓦礫が崩れる音が響いた
そちらを見ると、血を流し身体の至る部分が焼け焦げたゆき兄がいた、立ち上がっていた

「…声が聞こえた…あいつの声が…」

ゆき兄がそう呟いた
俺も聞こえたよ、誰のかはわからなかったけど、ゆき兄はわかったのかな？

「…ここで死んじまったら…どんだけ馬鹿にされるかわかったもんじゃねぇ…
　死後もずっと馬鹿にされるのは我慢ならねぇんでな…」

一歩、外道へと近づくゆき兄
だがその身体はいつ倒れてもおかしくないぐらいフラフラで
踏み出した足が地面についた瞬間に、ゆき兄は口から血を零す

「ハァ…ハァ…目覚めろ…黄龍…！」

ゆき兄の黄龍鉄甲が変形し鎧となる
だがその黒い炎は今にも消えてしまいそうなほど儚い
それを見た外道は自らの身体を抑えながら叫ぶ

「力が抜けていくと言ってもお前を殺す程度の力ならまだ有り余っている…！
　そんなに死に急ぐなら今すぐ殺してやるァァァァアアアア！！！」

外道が、ゆき兄へと向かう
俺の身体は、動かない…

「黄龍冥撃―――」
「遅いッ！！！」
「グッ！？」

ゆき兄の攻撃が放たれるより早く、一瞬で懐に潜り込んだ外道の拳がゆき兄の腹部に叩き込まれる
そして、外道の攻撃は加速していく
避ける体力も残っていないゆき兄は砂の代わりに血が詰まったサンドバッグのよう
殴り飛ばされる度に周囲に赤い飛沫が飛んでいく

「がはっ…ごほっ…げっ…！」
「死んでしまえ！死んでしまえ！死んでしまえぇぇぇええええ！！」

叫び声と同時にゆき兄が吹き飛ばされる
床石を抉り、轟音を立てながら俺の足元に吹き飛んでくる
もはや焦点が定まっていない虚ろな目
口元は自らが流した血で真っ赤に染まっている
外道は吹き飛ばしたゆき兄を追うこともせずに自らの身体より抜け出ていく力を留めようと必死になっている

「た、ま、ゆ、ら…」
「ゆき兄…大丈夫！？」

相変わらず目の焦点は定まっていないが、ゆき兄は静かに笑った
そしてゆっくりとその手の黄龍鉄甲を外し、俺に突き出してきた

「つか、え…」
「え？」

意味がわからず、俺はどうしていいかわからなくなる
早く受け取れと、言いたげにゆき兄は黒い黄龍鉄甲を俺の前で揺らす
腕が、動いて、俺はそれを掴んだ

「…おまえ、に…全部…託す…本当は…俺がケリを…つけなきゃ…いけないのに…な…
　だいじょ、うぶ…お前な、ら…きっ、と…陰であろうと、陽であろう、と…
　手を取り合わせ、た…お前な、ら…
　わり、あと、頼む…わ…」

ゆき兄はそれだけ言うと静かに目を瞑り、黄龍鉄甲を渡した手が力なく地面に落ちた
嘘、だろ？冗談だろ…？なぁ…？
死ぬなんて、冗談だろ？ここで死んだら、ずっと馬鹿にされるって言ってたじゃねぇかよ…

「外道ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！！」

どこにそんな力があったのか
俺は今までで一番大きいとも言えるほどの絶叫を放った
悲しみ、怒り、あらゆる感情が入り混じった、叫びを
その声に、外道がこちらを振り向いた

「どうした…死んだか…そいつ？
　ざまぁないな…ヒャハハハハハハ！！」
「…許さない…」
「勝つことも出来ないのに許さないと？」
「勝つ…絶対に…それに…」

ゆき兄が死ぬわけはない、意識を失っただけだ、そうに決まってる
でもゆき兄は最後に残った力を俺に託したんだ
俺たちは、一緒に戦うんだ…一緒に…！！
お前を倒して、すぐにゆき兄をヤチャマルに診てもらう…
だからお前は、一刻も早く倒さないといけないんだ…
俺は空いている左手にゆき兄から受け取った黒い黄龍鉄甲をつけた
身体の芯から湧き上がる、とても熱く、強い力、そして、悲しみと、怒りと、後悔の念
ゆき兄がずっと心に宿していた想い、激流のようなその想いを今全て理解した
だからこそ、俺は…この想いを託されたからには…

「外道ォォォ…！！」

何度倒れても、立ち上がる、そして戦う、お前が何度俺の前に立ちはだかり
何度俺を地に倒そうとも、立ち上がる、そして…お前を倒す！！！

外道は思っていた、なぜ立ち上がるのかと、力が抜けているとはいえ今だその力の差は歴然
なのにどうしてこいつらは負けるとわかっていて立ち上がるのか
絶望してヤケになったのかとも思った、だがたまゆらの目を見た時に感じた
その目から溢れ出る、自らを倒すという揺ぎ無き意志の力を
そして同時に、外道の背中に冷たい物が走る

（馬鹿な…俺は完全なる者…決して俺には誰も勝てないはずなのに…
　なんだ、この感覚は…！？）

その感覚を忘れようとするように頭を振る外道
あるはずが無いのだ、黄龍と融合を果たし完全なる者として生まれ変わった自分に
不安など、ましてや恐怖など、あるはずが無いのだ
外道はそれを確かめようと思った、つまりたまゆらの息の根を完全に止めようとする

「たぁまぁゆぅらぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ！！！」

??/??　時計塔

「やべぇ…吸い込まれるッ！！！」
「ほろにがぁ！！何やったんだよ！！」
「いやちょっと立ちショーベン…」
「はぁぁぁあああああああ！？」

ほろにがとヤチャマルと白やんはそれぞれが地面の窪みや、壁に伸びているパイプなどを掴んでいた
スパークした機械が爆発したと同時に突然金色の光の噴出が止まった
それだけならよかったが今度は逆に物凄い勢いで大穴は辺りのものを吸い込み始めた
全員吸い込まれないように咄嗟に周辺の物を掴みその吸引に抗っていた

「耐えろよッ！落ちたらどうなるかわからねぇぞ！！」
「言われなくてッ…！？」

ほろにがが手に力を入れた瞬間だった
掴んでいたパイプの上部のボルトが吹き飛び、パイプが傾いた

「おわっ、おわっ…」

そして、上部の支えを失い下部のボルトまでが吹き飛んだ
パイプが宙を舞う、掴んでいたほろにがもまた同様に

「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！
　こんなとこで死ぬのはいやぁああああああああああああああああああああああああああ！！」
「ほろにがァッ！！！」

地面を掴んでいる白やんが手を伸ばした
ほろにがは咄嗟にパイプから手を離してその手を掴んだ
白やんの身体に強い力が加わり、窪みを掴んでいる片腕が離れそうになるがなんとか耐え抜く

「大丈夫か？」
「…生徒会長っつうのも伊達じゃないのか？」
「フン…」
「白やん、ほろにが、こっちに移って来い
　そこからパイプ越しにここまで来れるはずだ」

遠く離れた場所のパイプに捕まっていたヤチャマルが言う
ほろにがが反論する

「まずパイプに行くのが無理なんだよ！
　白やんが手をかけてるのは小さな地面の窪み！ついでに片手は俺を掴んでんだぞ！」
「しかしそのままではいずれ吸い込まれる！！」
「だ、そーだが…生徒会長サンよぉ…どうする？」

白やんが小さく笑う

「伊達じゃないのかと聞いたが…生徒会長などという名に意味など無いさ…
　全てを救うなんてとても俺には出来ない…だから白やんと呼べよ、ほろにが」
「…じゃあ、白やんよぉ、どうする？」
「全てを救うことなんか出来ないが…
　お前１人なら、余裕だッ…！！うおぉぉぉぉぉおおおおおお！！」

白やんの腕に血管が浮き上がる
そのままほろにがを一気に引っ張り上げパイプに届く位置まで持ってくる
ほろにがはパイプを掴んで強度を確認した

「…俺だってな、お前１人ぐらいなら余裕なんだッ…よぉぉぉおおおおおお！！」

今度はほろにがが渾身の力で白やんを引っ張り上げた
白やんの腕がパイプを掴む
２人で同じパイプに掴まって顔を見合わせる

「…まぁ本当は３人ぐらいなら余裕なんだけどな」

白やんがそう言うとほろにがは口元をピクリとさせて反論した

「いや俺も実は５人ぐらい余裕かな」
「頑張れば７人もいける」
「俺だって頑張れば１０人はいける」
「１１人」
「１２人」

火花を散らすような２人を見てヤチャマルは呟いた

「あの２人本当は気が合うんじゃないのか…？
　ああ、いや…おいっ！！早くこっちに来い！！」

そう２人に呼びかけると２人はパイプからパイプを伝いゆっくりと移動を始める
ギシギシと危うげなパイプもありゆっくり、ゆっくりと…
その時、白やんの掴んでいたパイプが砕けた
劣化し、錆と化したパイプが負荷に耐え切れなくなったのだ

「しまったッ…！！」

白やんは他の場所を掴もうとしたがすでに遅かった
身体は浮き、穴へと吸い込まれそうになっていく

「白やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん！！！！！」

ほろにがが、自らパイプから手を離し、白やんのほうへと向かった

「馬鹿ッ！何をしている！！」

それを見た離れた場所にいたヤチャマルもパイプから手を離した
白やんは吸い込まれながらも驚愕の表情をして叫んだ

「な、何をしている！？
　これじゃお前らまで…！！」
「言ったろうがぁぁぁ！お前１人助けるぐらいなんでもねーんだよ！！」
「ここでお前が死んだら寝覚めが悪いッ！それに俺は保険医だッ！！
　生徒が死にそうになってりゃ助けなきゃいけねぇんだッ！！」

それでも２人の手は白やんには届かない
白やんの足が穴へと差し掛かる
その時、頭上からガァン！という音が響いた、同時に穴の吸引力が失われた
だが吸引の余波が白やんを完全に捉え、もはや後は落下するだけと言った具合だった

「手を伸ばせぇぇぇぇえええええ！！！」
「クッ！！」

白やんが伸ばした手をほろにががキャッチする
だが穴から大きく身体を出していたほろにがも踏ん張りきれずに仲良く穴に落ちそうになる

「うわっうわっうわわわわわ！！！」
「ええい！世話がかかる！！！」

ずり落ちそうになるほろにがの足をヤチャマルがガッチリと掴んだ

「やった！早く引き上げてよ神様、ヤチャマル様！」
「現金な…！！」

ヤチャマルは地面を蹴るように身体全体を使ってほろにがを引っ張り上げる
芋掘りのようにほろにがに続いて白やんも穴から顔を出す
３人でその場にへたり込む
さすがに疲れたのか３人とも無言で座り込み続けている

「…しかし何だって急に止まったんだ？」
「上からガァン！って音がしたような気がしたが…」

３人は上を見上げた、遥か上の螺旋階段を誰かが歩いていた

「…ありゃ、ピュアか？」

ほろにががそう呟くと上からピュアの声が響いた

「大丈夫ですか！？
　歯車に鉄パイプを挟んで無理やり機能を止めました！！
　とりあえずこれで大丈夫です！！」

それを聞いて３人は顔を見合わせた

「あいつに助けられたってことか…」
「実はけっこうやる奴だったんだな…」
「つーか、俺たち何もしてないような…」
「立ちショーベンしただけかな…俺」

それを聞いて白やんがハッ！と気づいたように自分の手を見た
しばらくそのまま考えたあとにほろにがに向かって叫んだ

「手洗ってないだろ！！汚ぇ！！」
「いや男なら普通手とか洗わないだろ！！」
「洗うわ！！！」

その場で口論を始めるほろにがと白やんを見てヤチャマルはため息を吐いた

「やっぱ仲いいんじゃねぇかなコイツラ…」

??/??　黄龍降臨の間

「ヒャーッハッハッハッハッハ！！！」
「グッ…」

２つの手甲を使い、必死に外道の攻撃を受け続ける
だが受けるだけでもその衝撃は身体の芯から揺れるような痛みを呼び覚ます
それでも必死に受け続けていく、直撃すれば死は免れない
攻撃の手を緩めずに外道は言う

「力の流出が止まった…！残念だったなたまゆらぁぁぁぁあああああ！！」

双掌を重ねた鉄甲に叩きつける外道、自らの身体から聞こえるミシミシという音
鉄甲の中で握り締める拳に水気を感じるのは恐らく出血しているから
ガードと殴打、限界を超えた俺の身体にかかる過負荷は高橋と同じように自らの攻撃で自らを傷つけている
それでも俺は倒れるわけには行かない

「グッ…オォォォオオオ！！」

外道の双掌を弾き飛ばす、よろめいた外道の胴体ががら空き
そこに陽の黄龍鉄甲を叩き込む
殴打だというのに深く肉に突き刺さる感触、そう、攻撃はこれ以上無いぐらいに確実に命中しているのだ
なのに外道はさも平然と立っているだけ
当たってはいるが効いていない、それが俺と外道の間にある決定的な力の差
それでも諦めない、効いていないというなら効くまで殴り続ける

「オオオオオオオオオォォオオオ！！！」

自らを鼓舞するかのように俺は叫び、両椀を何度も何度も外道へと叩き込む
外道は動かない、ただ殴られ続けている

「…あまり調子に乗るなッ…」

外道の右手がゆっくりと上げられる
一旦引くかどうか迷うがここで退いたらいつまた懐に飛び込めるかわからない
ならば、今はただぶっ飛ばされるまで殴り続けるだけだ！！
視界に、外道の顔、その瞳は感情の色を感じさせない、虚無の目

「死―――！？」

振り下ろされると思った外道の拳がビクンと跳ねる
なぜか、拳は振り下ろされない
外道の顔が、憎らしげに歪んだ

「アァァァァアアアアアアアアアアアアア！！！」

同時に、頭に叩き込まれた外道の渾身の一撃
額から血を噴き出しながら、後ろへと倒れる
頭が、グラグラする
それでも、俺は…
指に力を入れる、大地を掴み、俺は立ち上がる

「なぜお前は立ち上がる…！
　いくら器と言えどもとっくに死んでいるはずだ！！」
「俺１人なら…な…」
「どういうッ…」

外道の言葉を待つことなく、地面を蹴り出し一気に間合いを詰めた俺の拳が外道の腹部にまた突き刺さる
だがそれで終わりではない、俺はそのまま走り続ける
外道を壁に叩きつけようとして

「貴様ッ！！」

外道の手が、俺の顔面を打ち据え…なかった
なぜか、顔すれすれでその拳は止まっていた

（何故だ…何故拳が止まる…！！
　恐れていると言うのか！？完全なる者である俺が…器といえどもただの人間を恐れていると！？
　認めん、認めん、認めん…！そんなことあるはずが…！！）

外道の手が震える、震えごと握りつぶすかのように外道は強く拳を握る
あまりにも強いその力により手からは血が滴り落ちる
それが起爆剤、外道の感情のタガを吹き飛ばす

「俺は完全なのだぁぁぁぁぁァァァァアアアアアアアアアアアアアアア！！！」

外道の拳が光り輝く、それは自らの気を一点に集中させたことにより起こる発光現象
どんな物でも穿ち、砕き、爆砕し、一片たりとも残さず焼き尽くす
まさにそれはあらゆる命を殲滅する、狂いし黄龍の力
たまゆらの背筋を駆け巡った冷たい空気
足元から這いずり出し、隙を見せた者を一気に絡めとる、死の空気


??/??　校庭

「また地震だッ…！」
「落ち着け、さっきよりかは小さいぞ…！！」
「お、おい、校舎見ろよ！何だよアレ！！」

１人の生徒が指差した先、校舎のあちこちから吹き上がる金色の光
壁を砕き、ガラスを粉砕し、天井を破壊して、あちこちから立ち昇る光は校舎の遥か上空に巨大な龍を形成していた
それは、黄龍、猛り狂う、そして神々しさに遥かに勝る禍々しさを見ている人間全てに与える
黄龍を見て呆然としている生徒の中には執行部の姿もあった、そして剣三郎が呟く

「…あれは…たまゆら…いや、違う…」
「たまゆらさんの力には似ている、でも…彼のような暖かさを全く感じない…」
「それどころか…冷たい…凍りつくような…
　見ているだけで心臓をワシ掴みにされてるような気分だ…」

校舎の上で、黄龍が叫ぶ

『俺は完全なのだぁぁぁァァァァアアアアアアアアア！！！
　あまねく命を血に染める！！！皆死んでしまえ！！皆！何もかも！！！』

その黄龍は、外道の身体から溢れ出た気が形作った謂わば幻影
外道の意志を、思想を多数の人間に知らしめるために生まれた存在
その言葉に打ちのめされる者、信じようとしない者、泣き崩れる者
黄龍の口より語られる言葉に嘘は無い、本能で人はそれを理解する
だからこそ、黄龍を宿した器は世界を統べる

『故にお前は今ここで死ぬべきなんだァァァァアアアアアア！！
　たぁまぁゆぅらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ！！！』
「たまゆらッ！？」
「アイツ、今たまゆらって言ったぞ！？」
「まさかやっぱりアイツ、戦ってるのか…こんな…力と…たった１人で…？」

執行部の面々に広がる動揺
だけどどうすることも出来ない、どこで戦っているのかもわからない
何より自分たちが離れれば今度こそ一般生徒は暴動状態、止めることができなくなる
何も出来ない悔しさの中で、しげるが呟いた

「…ばれ、たまゆらさん…」
「え？」
「頑張れ！！たまゆらさぁぁぁぁぁあああああああん！！」

しげるの叫び声、一瞬の間を置いて
今度はえび助が叫んだ

「…頑張れ！たまゆら君負けるなッ！！！」

続くように、桃花、透過、黒やん、雷雲、蝶、剣三郎
全員がたまゆらのことを応援しだす
やがて、その輪は状況を理解してはいない一般生徒にも広がっていく
状況が理解出来ていないと言っても彼らは理解していた
誰かが、俺たちのために戦っていると

「頑張れーー！！絶対負けんなーー！！」
「勝てー！たまゆらぁー！！」
「そんな奴さっさとやっつけろぉぉぉお！」
「死ぬなんてごめんだぁぁ！！たまゆらぁぁ！助けてくれよぉぉ！！」
「勝ちやがれぇー！！！」
「たまゆらぁぁぁああああああああ！！」

応援が、すべての生徒に広がって行く
執行部も最初は面食らっていたが、すぐにたまゆらの応援に戻る
いつの間にか、生徒ではない奴らも生徒に混じって校舎に向かって叫んでいた
何も出来ない、ただそれでもどうにかして君を助けたい、その思いが大気を揺らす声となり、大地を揺らす衝撃となる

「コラー！あたしが惚れたんだー！勝てー！」
「同じカマ掘った…じゃなかった、同じ釜の飯を食った仲だからな
　俺も応援させてもらうよ、たまゆらぁぁぁああ！！！！お前なら勝てるぞぉぉぉぉ！！」
「ありったけのマジックアイテムサービスするから絶対生きて帰ってこいよぉぉぉ！！！！」

気がつくと、校庭は金色の光に包まれていた
暖かく、優しい、光
それが空へと立ち昇っていく

――そう――

――黄龍の世界を統べる力とは決してその強大な力で強引に統べることじゃない――

――ただ、戦うだけ、自らを信じ、戦い続けるだけ――

――強い想いを胸に抱き、傷つきも戦い続けるその姿に人々は希望を見出す――

――希望を見た人たちは、希望に向かい想いを束ね、とても強い…時として天命すらも凌駕する力を生み出す――

――それこそが、真の黄龍の力――

「俺たちだって同じなんだたまゆらッ！！」
「ただ守りたいんだ！」
「じっとなんかしてんじゃねぇ！！たまゆらだけが戦ってるんじゃない！」
「俺たちだって覚悟していた…！」
「お前だけじゃねぇ！学園を守りたいのは俺らも一緒だ！！」
「俺たちだって同じなんだｯ！！」
「お前は１人じゃない！！！」
「「「たまゆらッ！！たまゆらッ！！たまゆらッ！！！」」」


校庭の外れである４人が、その光景を見ていた
ヤチャマル、ほろにが、白やん、ピュアはその光景に驚いていた

「龍が見える…」

呆然とした顔でそう呟くほろにが
たまゆらを応援する生徒たちの身体から立ち昇る金色の光が一体となり黄龍の姿を形作る
ヤチャマルがそれを見て言った

「…凄まじいほどの想いが…いや、気が集まって黄龍を形作ってる…」
「黄龍が、空に昇る…！！」

空へと昇った龍は校舎の上で猛り狂う、狂った黄龍へと咆哮した
それを受けた狂いし黄龍も咆哮
２体の黄龍は途端に激しくぶつかり合う
金色の光を散らしながら、互いを互いを噛み殺そうと
それを見た、ほろにがはじたんだを踏み出した

「…なんか、暴れたくてしょうがねぇよ！！俺も行ってくるわ！！」

そう言ってほろにがは走り出した
残ったヤチャマルと白やんとピュアは顔を見合わせた
そして、３人は同時に頷き、ほろにがに続いて走っていった


――束ねられた想い…黄龍はそれを具現化したに過ぎない――

――人の想いは何て強いんだろう…運命すらも打ち破る程…――


真なる黄龍が、咆哮と共に狂いし黄龍の喉に食らいついた
絶叫をあげ、のたうち回る狂いし黄龍
それを見た校庭の生徒達はさらに沸き立ち、大地を揺らす



.    </description>
    <dc:date>2009-12-03T09:09:00+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/128.html">
    <title>邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】前編</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/128.html</link>
    <description>
      *邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】前編

邪眼学園黄龍譚
２０時限目　- 君が守った希望 -

??/??　黄龍降臨の間

大爆発を起こした黄龍の口から煙が立ち昇る
仰け反り、のたうち回る黄龍
勝てる、のか？俺たち、こいつに勝てるのか？
ゆき兄のほうを見ると信じられないという顔をしていたが、微かな笑み、希望を感じる
勝てる、１人なら勝てなくても２人なら…！

『グゥゥォォォ…！！無駄な足掻きはやめろォォォ…！
　受け入れろ…！！我を受け入れろ！！』

黄龍の吹き飛んだ部分が修復されていく
ゆき兄が肘で俺を突付いてくる

「何…？」
「威勢良く啖呵切ったものの…
　ダメージは与えられてる…だけど微々たる物だ…
　…その微妙なダメージを与えるには俺らは自分の最大の技を放たないといけない」
「…」
「意味わかったよな？」
「じゃあどうすんのさ！？」
「…待て、考えてる
　不運なのは…」
『我を受け入れろォォォォォォォオオオ！！！』
「ゆっくり考えさせてくれるような相手じゃないってことかな」

ほぼ同時に俺とゆき兄は互いに左右に飛びのく
今まで自分たちが立っていた場所に黄龍が激突する
ゆき兄は着地しながらどうすべきかを必死に考えている
ゆき兄だけに任せておくわけには行かないだろうが…俺は黄龍についての情報は全く無い…
どちらにせよ一緒に攻撃しないとダメージは与えれらないんだ、今は避けて避けて避けまくるしかない

『チョロチョロとォォォォォォオオ！！！』
「パワーが増した分、動きが多少遅くなってるな…
　この分ならしばらく時間は稼げそうだな…」

??/??　時計塔

「馬鹿な…なんだこれは…！」

白やん信じられない光景の目の当たりにしていた
血に染まった部屋、倒れているきのこさん
一体何が起こったというのか、それを考えるより早く白やんはきのこさんを抱きかかえる
しかしきのこさんに触れたその瞬間、白やんは全てを悟った
死の力を持つ白やんだからこそ、すぐに理解できた
すでに彼女が事切れていることを

「…う…ぉぉぉぉぉぉおおおおッ！！！」

激情に任せ床を叩く
最初はただ、守れと言われたから守っていただけだった
ただそれでも長く触れ合う内にいつしか白やんは命令だからじゃなく自分の意志で彼女を守ろうとするようになった
堕人を殲滅し油断していた自分を恨めしく思う
硬い床を叩き続けた白やんの手からは血が滲んでいる
その痛みで少しだけ冷静になった白やんは考え出した

「…ここまでのことをするのは…少なくとも生徒ではない…
　かといって泥棒や強盗の疑いも薄い…
　やはり…堕人か…？まだ生き残りが…？」

そこまで考えたとき、時計塔が大きく揺れた
いや、時計塔じゃない、地面が大きく揺れている
白やんは事切れたきのこさんを担いで時計塔から出る
揺れは収まらない、それどころか段々酷くなっていくように感じる
しかし突然揺れがピタリと収まる

「…これは…何が起こっているんだ」
「おー、生徒会長
　今なんか変な地震だったなー」
「！？」

振り向くとそこにいたのはほろにがだった、手に一升瓶を持っている
ほんのり赤く染まった顔が白やんが背負っているきのこさんを見た瞬間に一気に青ざめていった

「…いかん、久しぶりで飲みすぎたか…」

目頭をグリグリと押さえた後にもう１度ほろにがはきのこさんを見る
ほろにがの手がプルプル震えながら指先がきのこさんを指す

「…なんか、凄く死んでるように見えるんだけど
　気のせいだよ、な…？」

白やんは首を横に振った
そして小さく呟いた

「…残念だが…気のせいではない」
「は、ははは、嘘だろオイ、洒落キッツいぜ…」

まだ信じられない、といった具合でほろにがが白やんに近づく
そして背中に背負ったきのこさんをマジマジと見つめた後に
片手をきのこさんの首筋に当てる

「…」
「…」

２人とも一言も発しないまま無言の時が流れる
しばらくして、ほろにがが叫んだ

「ふざけんなよテメェ！！！なんでこんなことになってんだ！！」
「そんなもの俺が知りたい！！！」
「…とにかく、すぐにヤチャマルのとこに」
「無駄だ、すでに完全に事切れてる…蘇生することはない」
「なんでわかんだよ！！」
「ずっと死に触れてきた俺だからわかるんだよ！！」
「ッ…！」

ほろにがは何かを言おうとしたが口篭り、一升瓶を投げ捨てて歩き出した
それを見た白やんがその背中に言う

「何処に行く気だ」
「仕事だ」
「…仕事？」
「そ、仕事、犯人見つけてやるよ」
「待て」

去っていこうとするほろにがを白やんが止める
ほろにがの足が止まる

「…協力しないか」
「…今回だけな…」

その瞬間、また地面が大きく揺れた
ほろにががガバッと姿勢を低くして地面に耳をつけた

「地震…じゃねぇ、地面の下で何かが暴れてる…？
　きかんぼうのモグラが頭振ってんのか？」
「何を馬鹿なことを…」

白やんがそこまで言った時、突然時計塔の入り口が勢いよく開け放たれた
まるで強い力に耐え切れなくなったかのように
そして開け放たれた入り口から轟音と共にまるで爆発するように金色の光が噴出した

「ベトナムかここはーッ！！！」

あらゆる物を吹き飛ばすような荒ぶる金色の光を咄嗟に飛びのいて避ける白やんとほろにが
光が走った地面は強い熱を帯び、煙を上げる
白やんが時計塔の中を見ながら呟く

「今のは…一体…」
「ほろにがぁッ！」
「おおっ、ヤチャマル！」

走りながら近寄って来たのはヤチャマルだった
慌てて起きてきたようで寝巻きの上にコートを羽織っていて頭は寝癖が跳ねていた

「何だこの圧倒的な気は！？
　そこらじゅうの地面から噴出してるぞ！」
「俺だってわかんねぇよ！！時計塔の扉が吹っ飛んだと思ったらいきなり何か噴出してきやがった！！」
「時計塔…！？」

全員が時計塔を見る、静かに扉を開け佇むだけの時計塔
なのに恐ろしいほどの威圧感と存在感を際立たせる
頭上から、ガチリと、音が響いた
同時に鐘の音が辺りに響いた
ゴォーン、ゴォーン、と不気味に、何度も何度も

「なぜ…時計塔が動く！？」

白やんの驚愕の声
時を刻むことなく何年もその動きを止めていた文字盤の秒針がゆっくりと動き始めたのだ
ヤチャマルが何かに気づいたように叫ぶ

「なんだ…地面の下から物凄い気が駆け上がってくる…！？」
「おいおいおいおいおい！！！やべぇんじゃねぇのか！？」

ほろにがが叫んだ直後
開け放たれた扉から見える室内の床が盛り上がり砕ける
そしてそこから金色の光が噴出する
天井を砕き、螺旋階段の中央を貫く光の柱
時計塔の頂上にまで駆け上るその光は頂点で爆散し空へと散っていく
たちまち空には暗雲が立ち込め、雷を伴う激しい土砂降りを巻き起こした
雨に打たれながらなおも立ち上る光の柱を見てほろにがが呟いた

「…なぁ、ヤチャマル、気のせいかな
　上へと登っていった光が…俺には龍に見えるんだ…」
「龍が…雨を呼んだと言うのか…！？」
「一体何が起こってるというんだ…！！」

後ろで、誰かが湿った土を蹴り上げる音がした
咄嗟にヤチャマルが振り向くと、そこには苦しそうに身体を抑えてうめき声を上げならが雨に濡れ
ドブネズミのようになっているピュアがいた

「ピュア…お前、起きたのか！？」
「…抽出量を制御する装置が無くなって…
　龍脈を塞いでいた床も大破して…溢れ出している…！」
「何を言ってる…？」
「このままじゃ…、学園は…」

??/??　黄龍降臨の間

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！』

黄龍の鳴動、その身体がさらに巨大化して行く
同時に黄龍から感じる力の波動も増していく
勝ち目は無いかもしれない、それは俺もゆき兄も充分に理解出来ていた
人がどれだけあがこうと、巻き起こった&quot;天災&quot;の前には為す術も無いというのを痛感させられる
それでも諦めずに俺たちは黄龍の巨体から繰り広げられる攻撃を避けながら
隙が出来た瞬間を狙いゆき兄と同じ部分に自らの最大攻撃を撃ち込む

「黄龍冥撃夢幻黒蓮破！！」
「究極黄龍破邪滅閃…！？」

力が入りきらずに俺の攻撃が止まる
放たれたゆき兄の黒い波動は黄龍の身体に吸い込まれるように消える
思わず膝を突く、黄龍の鎧からは徐々に金色の光が消えていく

「たまゆらッ！」

ゆき兄が駆け寄ってくる
荒い呼吸を整えようとするが喉に異物が詰まったように上手くいかない
心臓の鼓動は裂けるように早く、心なしズキズキと痛みが走る
余りに巨体となった黄龍は狭いこの室内では上手く動けずに天井を破壊するように暴れまわっている

「…高橋との戦闘と俺との戦闘、そこに最大技の乱発だ
　気力、体力共にもうお前は限界だ」

確かに自分の身体が限界なのは自分が１番理解していた
しかし俺とゆき兄の２人の同時攻撃じゃないと黄龍にはダメージは与えられないんだ
倒れるわけにはいかない

「まだ…行ける…！」
「馬鹿言うな！とっくに限界なんだろ！」

俺はゆき兄の襟首を掴んで叫んだ

「俺がここでいなくなったら黄龍は倒せないじゃないか！！」
「お前が命を賭ける必要は無い！！これは俺の問題だ！！」

そう叫び返された
思わず、ゆき兄の顔面を殴りつけた
予想外の行動に避けれずに直撃して、その場に倒れこむゆき兄

「…まだ、命を賭ける必要なんて無いとか言ってんのかよ…」
「…」
「ずっと、戦ってきて、これが最後なんだ…これさえ終われば皆笑えるんだ…！
　ここまで来て自分一人の問題で片付けようするなよ！！
　俺だってもう覚悟をしてここまできたんだ！命を賭ける必要が無いとか勝手に決めるなァッ！！」

ゆき兄は黙っている、目を伏せて唇を噛んで何かを堪えるように
そして頭上で響く黄龍の咆哮が耳を劈く。
見上げると黄龍は体勢を整え終わりこちらへと向かって来ようとしていた

「まずいッ…！」
「たまゆら、もう１発だけ撃てるか」

ゆき兄が小さく呟き聞いてくる
俺は頷いた

「…チャンスは一瞬、口から体内に叩きこんで内側から吹き飛ばしてやる
　倒せはしなくても運がよければ再結集までに若干の猶予があるはずだ」
「わかった…！」

黄龍がその顎を大きく広げながらこちらへと向かってくる
鋭く、そのままでも充分武器として使えそうな牙がその存在を誇示している
伸ばした右腕にコツン、と音を立ててゆき兄の左腕が当たる
狙う場所はただ１点のみ、恐れるな、迎え撃て
この１撃だけは絶対に不発なんて格好悪いことにはさせない
今までで一番の威力の１撃にしてやるんだ、そう決意する

『ウォォォオオオオオオオオオオッ！！！』

黄龍の牙が寸前に迫る
全身を焼け焦がすような呼気、灼熱の空気
それでも決して目は背けない、決して可能性を見逃さないために！！

「今だたまゆらッ！！」

ゆき兄の声が耳に届いた瞬間に俺は掌に全ての想いを結集させる
小刻みに震える腕を押さえ込み、狙いを済ます
コンマ数秒の間を置いて、俺は叫んだ

「究極黄龍破邪滅閃双撃龍波ァァァ――――――！！！」

それに完璧に合わさったかのようなタイミングでゆき兄も叫んだ
俺と対になる最強の攻撃の名を

「黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――！！！」

放たれた光と闇、陰と陽
螺旋を描き、黄龍の口へと吸い込まれる
その力は圧倒的エネルギーの権化である黄龍の身体を切り裂いて行く
それを見届けると俺とゆき兄はまるで最初からそう決めてあったかのようにお互いにその場から離れた
光と闇の渾身の力の光弾は黄龍の身体の中心部で収束し爆発を巻き起こす

『オオオオオオオオオォォォォオォオオオオオオ！！！』

その雄叫びは痛みから来る絶叫なのか、それともまたしても得物に寸前で逃げられた怒りから来る絶叫か
黄龍の身体の中心がボコリと膨れ上がる
その丁度反対側もまた膨れ上がる
次から次へと黄龍の身体のあらゆる場所が膨れ上がる、それは体内で連鎖的に爆発が起こっていることを容易に連想させた
膨れあがった黄龍の皮膚はやがて伸縮の限界を越え、その一部に亀裂が走った
そこから溢れ出す金色の光、亀裂はどんどんその数を増やして行く

『器がァァァァァァアアアアアアアア！！！』

バァン！とまるで巨大な風船が爆発するような、音が周囲に響く
耳鳴りに襲われる俺の視界に映るのは辺りに吹き飛ぶ、バラバラになった黄龍の巨体
勝ったのか、俺たちは？
そう思ってゆき兄を見る、だけどゆき兄の表情は曇ったままだった

「…思った以上に爆散したな、今のうちに―――」

そこまでゆき兄が喋った時
突然、横の壁が爆発するように砕け散った
破片が黄龍の鎧に弾かれる、それよりも驚愕したのはぽっかりと壁に開いた穴からゆっくりと出てくる存在
土煙が薄れていき、俺の目に映る２度と会うはずもないと思っていた存在
究極の悪意、殺戮の王、醜悪なる者、その名

「我は、不死なる者…、ノスフェラトゥ…」

自らの目を疑った、完全に倒したはずのノスフェラトゥ、それがまたこうして目の前に佇んでいる
だがなぜかわからないが、前より数十倍の危険さを感じていた
その理由は白いはずのノスフェラトゥの仮面が誰かの返り血で真っ赤に染め上げられていたこと
黒いマントのあちこちにも血がべったりと付着して中には乾ききっていない部分まである
同様に鉤爪も深紅に染まっている
だけどそれだけではなく、雰囲気が明らかに前とは違っていた
本能が拒否している、こいつはここにいていい存在ではないのだと

「…なぜ生きているんだ…」
「恐れてなどいなぃ、憧れてなどいなぃ…
　誰が、誰がお前らなど恐れるか…」
「質問に答え―――」
「恐れてなどいない！！憧れてなどいない！！
　我は不死なる者！最も完全に近い存在！なぜ恐れなければいけない！なぜ憧れなければいけない！！
　完全になるんだ！完全に！誰にも何も言わせない！ヒャーハッハッハッハァ！！！」

こちらの質問に答えず、意味のわからない言葉を叫び、笑い狂うノスフェラトゥ
戦慄、あまりにも異質なその存在
そして理解する、ノスフェラトゥは今や完全に壊れていると
何があったのかはわからない、だが以前のノスフェラトゥから感じられていた余裕や人を食った雰囲気はもう微塵も感じられない
小刻みに震えながら自らの身をその鉤爪で掻き毟る、いや、削り取る

「俺はぁ…死なない…どれだけ血を流しても…どれだけ…身を削っても…
　なぜだ…なぜ死は俺に安息を与えない…！安息を永遠に奪われ…！
　なぜ闇の中で１人孤独に生きていかなければいけない…！？
　俺に教えてくれよ、教えてくれよ…なぁ！？」

ノスフェラトゥはこちらにその仮面を向ける
赤く血に染まった仮面、それは完全なる恐怖の具現
思わず唾を飲み込んだ、ノスフェラトゥは動かない、まるでビデオの一時停止のように微動だにしない
全く動いていないのに、声だけは響く

「あの小娘は言ったことなど…違う、違う、違う、違う、違う！！
　恐れるものか！俺は完全なんだ！！
　だから最終封印は俺の手で解けたんだ！俺が選ばれるべきなんだ！！
　この血は俺を馬鹿にした報いだ、報いだァァァァア！！！」

俺の横から、ゆき兄がノスフェラトゥに向かって飛び出した
一瞬だけ見えたその顔は怒りに満ち溢れていた

「きのこさんに何をした貴様ァァァァァァアアアアア！！！！」

怒号と共に、その拳とノスフェラトゥに向かって振りぬくゆき兄
避ける素振りも、受ける素振りも見せずに、ただノスフェラトゥはその拳を受け入れた
直撃した拳の威力がノスフェラトゥを激しく吹き飛ばし轟音と共に壁に叩きつける
壁が砕け、ノスフェラトゥの仮面の目の部分から血が流れ出す、まるでそれは涙のよう

「死ななぃんだ…これでも俺は…死ななぃんだ…！」
「なら死ぬまで殺してやらァァァァァァアアアア！！」

ゆき兄の追撃、壁に叩きつけられたノスフェラトゥへと向かう
ノスフェラトゥは動かない、だが呟いた

「ダクテュロス…」
「何ッ！？」

ノスフェラトゥの右腕が服を裂き、ほどけた
ゆき兄に向かい、鉤爪をつけた右手が物凄い勢いで飛来した
その爪は黄龍の鎧を貫き、ゆき兄の腹部に突き刺さった
信じられないといった顔でゆき兄は腹部に刺された鉤爪を掴み、顔を上げてノスフェラトゥを睨んだ

「…この技はッ…お前…スイカかッ…！？」

確かにあの技は自ら作り出した虫を体内に寄生させていたスイカだけが使える能力
だけど、なんでスイカが…

「小川と、ピュアだけだと思ってたんだが…な…
　いつの間に、スイカにまで…」
「お前は、俺の不死の秘密を解いているのかぁ…？」

不死の秘密…？
その言葉に疑問を抱いているとゆき兄は不適に笑っていた

「…お前は特定の身体を持たない…いわば人に取りつく意識生命体なんだろ…
　そのために対象には仮面を被らす必要があるんだろ…」
「よく気づいたな…そうだ…それ故に俺は死なない…死ぬことが出来ない…」
「なら…話は簡単だ…」

それだけ言うとゆき兄は自らの拳で腹部に突き刺さっていた鉤爪を上から叩きつけた
鋼の砕ける音がして砕けた鉤爪がバラバラと散る

「何度でもその仮面を砕いてやる！」
「ダクテュロス…」

ノスフェラトゥの両腕がほどけた
駄目だ、いくら黄龍の力を発動してるゆき兄といえどあの量は…！
助けに行こうとしたが身体に上手く力が入らない
膝が笑い、その場から動けない、俺の身体は思った以上に限界を通り越していたのかもしれない
それを自覚した時、足から力が抜けてその場にへたり込む
同時に黄龍の鎧がただの黄龍鉄甲へと戻って行く
無数の触手がゆき兄に襲いかかる
ゆき兄は後ろに飛び退き距離を取って両手を構えた

「まとめて焼き尽くしてやるッ！！
　黄龍冥撃夢幻こッ…くッ…！？」

ゆき兄の膝がガクンと地面についた
同時に身体を覆っている黄龍の鎧がパラパラと宙に消えて行く
俺と同じだった、ゆき兄の身体もとっくに限界を通り越していたんだ
完全に無防備になってしまったゆき兄にノスフェラトゥの触手が一斉に襲いかかった
１本が身体に巻きつき、右腕、左腕、左足、右足、そして首と順に次々と触手が身体に巻きついていく
そのままゆき兄の足が地面から離れ宙に浮く

「グゥッ…！くそッ…離せッ…！！」
「お前を殺せば、俺は、完全に近づけるのか？
　なぁ教えてくれ、教えてくれよぉぉぉ…」
「がっ…あぁぁ…！！」

ゆき兄の表情が苦悶に満ちる
金魚のように口をぱくぱくさせているのはきっと上手く呼吸が出来ないから
触手によって全身を締め上げられてるようで、身体全体が痙攣している

「ゆき兄ッ…ぐっ…」

立ち上がろうとする足に痛みが走り、その場に倒れこむ
このままじゃ…ゆき兄が…！

??/??　時計塔

「時計塔をぶっ壊せって正気か！？」

ほろにがは驚愕の表情でピュアにそう問うた

「正気だ」

問いに対し、ピュアは迷い無く答えた
時計塔を破壊するというとんでもないことをさも当然と言うように
あまりにもさらりと言い放つもんだから反論しようとしたほろにがは何もいえなくなる
そこにヤチャマルが意見する

「…確かに異常な事態だが、壊すとなると…」
「いや、壊すといっても地下の穴を塞げばいいんだ、それだけである程度は抑制が効く
　とにかく時間が無い、暴走した力がここまで溢れ―――」

背後から爆音、無数のガラスが一斉に割れていく
幸いガラスがほろにが達に降り注ぐことは無かったが
それだけで少なくとも時間が無いということだけはその場にいた全員が理解した
白やんがきのこさんをそっと地面に降ろし、つぶやく

「信じよう、時計塔地下の穴を塞げばいいんだな？」

それを聞いたほろにがが腕をぐるぐると回し始めた

「しゃーねぇ、どうせこの学園からもそろそろおさらばだ
　最後のサービスだぜ」
「これほどの量の気を放置してたら何が起こるかわからんからな
　ただ問題は力の噴出を続ける穴をどうやって塞ぐか…」

口元に手をあて考え込むヤチャマル、それをほろにがはニヤニヤと下から覗き込んで笑う。

「らしくねぇなぁ？悩むなんて…
　俺らなら噴火してる火山の火口を塞ぐぐらい楽勝だって」
「一体その自信はどこから…」
「まぁとにかく行こうぜ、行って考えよう
　…って、あれ？生徒会長は？」

ほろにがが辺りを見渡すと白やんはさっさと時計塔の中に入って行こうとしていた
一瞬だけ振り返りほろにがとヤチャマルに向かって喋りかける

「置いてくぞ」
「おい、待てよォ！」

慌てて後を追うほろにが
１人残ったヤチャマルはピュアに向き直った

「お前はここで待っていろ」
「しかし…」
「大丈夫だ」

ただそれだけ行ってピュアの肩を叩いてヤチャマルも時計塔へと飛び込んだ
目指すは時計塔地下の大穴
龍脈の気を吸い上げるための、どこまでも深い穴を塞ぐために
時計塔の中に飛び込んだ３人がまず感じたのは空へと昇りきらずに残留している爆発的な龍脈の気

「うおっ…んだこりゃ…何もねぇのに…
　気を抜いたら押し潰されちまいそうだ…！」

それを感じているのはほろにがだけじゃあなかった、返事こそしないものの白やんもヤチャマルも同じ状態だった
足を１歩踏み出すのですら何百という重りをくくりつけているかのような鈍さ
少しでも気を緩めた瞬間、外に叩き出されてしまいそうな空気
辺りのコンクリートは真っ黒に焦げついている

「それで…どっから地下にいけるんだ…！？」

白やんが指差した場所、壁際の地面に人一人がやっと入れそうな穴があった
鉄で出来た梯子が地下へと続いている
穴には蓋がかぶせてあったような感じだが下からの強い衝撃で蓋はどこかに吹き飛んでいる

「先に行くぞ…」

白やんが呟いて穴へと向かい、梯子を使わずにそのまま身体を滑り込ませて飛び降りる
続いてヤチャマルも同じように穴へと飛び降りる

「待てよ、俺も…っギャァァァァァァアア！！」

ほろにがも飛び降りたが２人より体格が良かったせいで
穴の淵に思いっきり背中をこすり叫び声を上げながら盛大に落下した
見事に尻から落下し、これ以上ないぐらいに口を大きく開けて声にならない声を漏らす

「恥骨がッ…恥骨が複雑骨折ッ…」

のたうち回るほろにがを意にも介さず白やんとヤチャマルは金色の光を吹き上げる穴へと近づく
弱まり、強まり、また弱まり、また強まる、そのサイクルを繰り返す金色の光の噴出
しかし決して止まることはなく永続的に空へ向かい続ける光の柱
圧倒的エネルギー量、止める方法を２人は考えていた
これほどの噴出力だ、適当に塞いだとしてもすぐに破壊されてしまうだろう

「…気というのは専門外だな…
　ヤチャマル、どうすればいい？」
「どうすればいいと言われても…」

考え込む２人をよそにほろにがは辺りを見渡しながら尻をさする
相手にしてもらえずスネたようにポケットからタバコを取り出し口に加えて火をつける
煙を吐いていると不意に身体がぶるっと震えた
困ったように視線をあちこちに向けてタバコを加えたまま大きな機械の物陰にこっそりと移動する
そこでしばらくゴソゴソと動いた後に機械に向かって静止する

…じょろじょろじょろ…ちゃぱぱぱぱぱ…

「ふぅっ…」

斜め上を向いて恍惚とした表情でタバコをふかすほろにが
足元には黄金河が出現していた
そこに、パチリと火花が散った

「あん？っと…」

疑問を口にした瞬間、ポロリとタバコが落ちた
ゆっくりと落下するタバコが自らの排出したものに触れた瞬間
目の前の機械に青白い電撃がバチリという音と共に走り、炸裂した

「ほげェェェェェエ！！！！あだっ、んぎゃっ、ぐげっ、だぉぅッ！！」

後ろにぶっ飛び、地面に叩きつけられ、叫び声を上げながら転がるほろにが
爆発音とほろにがの叫び声に驚いたヤチャマルと白やんが振り向くと
下半身丸出しでうつぶせに倒れているほろにが、その頭の先に激しく鳴動しながらバチバチとスパークしている機械があった

「お前何やったんだよ！？」
「ななななな、何もしてねぇよ！？」

そう言いながら必死にパンツとズボンを上げるほろにが
ほろにがは思っていた「この役回りは明らかに剣三郎なのに」と
まるでほろにがには興味がないようにガタガタと動く機械を見ていた白やんが呟く

「…嫌な予感がするぞ…！」

??/??　黄龍降臨の間

「ゲホッ…ガハッ…」

地面に四つんばいになったゆき兄が喉を抑えて咳をする、首元には締め付けられた後が痣となって残っている
ノスフェラトゥがゆき兄を完全に絞め殺そうとした時、部屋の中心に巨大な金色の光が集合した
それは咆哮と共に、龍を象る
爆散した黄龍の力がその意志によって姿を取り戻した
それを見たノスフェラトゥは突然ゆき兄から全ての触手を離した、それでゆき兄は落下し床に叩きつけられた

「大いなる物…俺に…完全なる…
　俺を、完全に…」
『器はどこだァァァァァァァァァアアアア！！』
「俺を完全なるものにィィィィィィィイイイ！！！」

黄龍と、ノスフェラトゥの互いの絶叫が入り混じる
互いの声が聞こえてないようにただ叫び続ける獣が２匹
やがて黄龍が、動けなくなっているゆき兄を視認したようだった

『そぉこぉかァァァァァァアアアアアアアアア！！！！』
「ゆき兄ッ…避けろッ！！！」

俺が叫び、ゆき兄が動くよりも早く
ノスフェラトゥが先に動き出した、繰り出されたノスフェラトゥの足がゆき兄を真横に吹き飛ばし壁に叩きつける
黄龍の直線状に、ノスフェラトゥが舞い上がった

「ヒャーハッハッハッハッハッハッハッハァァァアアア！！！！！」
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！』

ノスフェラトゥの身体に、黄龍が直撃した
黄龍はまるで吸い込まれるようにノスフェラトゥに吸収されていく
爆発的なエネルギーが、ノスフェラトゥの身体の中に入り込んでいく
もう黄龍の咆哮は聞こえない、ただノスフェラトゥの笑い声だけが響き渡る
やがて黄龍の巨大な身体がノスフェラトゥの身体に完全に吸収される
バキバキと、異音を響かせながらノスフェラトゥの仮面に亀裂が走り始めた
仮面が、割れる

「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ！！！
　取り戻した！俺は取り戻したんだぁぁァぁぁぁあああああああああああああああ！！！！
　あぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」

呼応するかのように、仮面が砕け散る
その下から出てきた顔、創造主の力を与えられし生徒会が１人

「スイカァァァァァアアアア！！」

スイカは俺の声など聞こえていないように腕を震わせながら自らの顔にその手で触れる
そのまま頭を抑えてうずくまる

「何を、俺は、何をしていた…
　あの仮面の男は、俺に何をした…！あの仮面は…俺自身…？
　グブッ…！？」

うずくまったスイカの身体がビクンと大きく跳ねた
大きく反り返るその上半身、えび反りになった身体がビクビクと震えている
何だ、何が起こっているんだ？

「あぁぁ…望んでいない…そんなの望んでいない…
　俺はただ…ただ…自らが理想とする幸せを…求めていただけなのに…！
　届かない、どれだけ手を伸ばしても…！心を殺し…人を蔑み…それでも届かない…！
　俺は踏み台なんかじゃ…」

スイカが震える腕を宙に伸ばす、その指は何かを掴もうとするように、決して届かない物を求めるように
その目から、一筋の涙が流れた

「踏み台なんかじゃないんだァァァアアアアアアアアアアア！！！！！」

叫び声と同時に、スイカの胸が大きく縦に裂けた
首元から下腹部まで大きく、とてつもない量の鮮血をぶちまけながら
大きく見開かれたスイカの瞳に自らの血が降り注ぐ

「嫌だ、あぁぁぁぁあぁぁ…！」

グジュリと嫌な音を立て大きく裂けたスイカの傷口が盛り上がった
そこから何かが飛び出すように生えてくる
それは鮮血を滴らし、ドクドクと脈動する赤い肉の塊のような…
肉の塊が物凄い勢いで傷口から噴出し、さながらそれは塔のように聳え立つ
塔、違う、これは…
グジュグジュと水気を含む音を立てながらその頂上が８方向に裂けていく
まるで、花のように、蕾がゆっくりと開くかのごとく
その中心に胎児のように丸まっていた何かがゆっくりと立ち上がる
何かは、開かれた花弁より飛び降りた

「ククッ…俺は…これで完全だ…！！
　身まで手に入った…もはや何者も俺を止めることは出来ない…！
　人が一生とかけても得られぬ叡智と、力を！俺は手に入れた！手に入れたぞォォォォォオオ！！！」
「お前は…ノスフェラトゥなのか！？」
「んん？」

振り返ったノスフェラトゥ、その顔に仮面は無い、その身体にはボロ布が巻きつけられていた
ジッと俺を見つめたノスフェラトゥが言う

「思い出したよ、たまゆら…
　俺とお前は会っていた…６０年前…あの全ての始まりの日に…！
　なんという因縁だ…」
「６０年前…？」
「わからないか…？
　完全なる者と迎合した私は本来より著しく若返ったから無理も無いが…
　なら、これでどうだ？」

ノスフェラトゥの顔がグニャリと歪んだ
そしてその顔が、いつかどこかで見た、顔となる

「お前はッ…！？」

記憶の中にあるその顔、今より６０年前の時で見た顔
必死に記憶を手繰りよせ、思い出すコイツの言葉

「君がここに来るのはわかっていた
　だから少し罠を貼らせてもらった」
「私は悲しいよ、風太君
　優秀な研究員であった君ならばこの計画の素晴らしさが理解できたはずだがね」
「生きた人間を使った実験などは道徳的には禁じられるべきものだ
　だが本音は医者だって科学者だって果ては軍隊までそういった実験を行いたいんだ
　ここはそんな欲望を代わって叶える場所だ」
「我々がいなくともいがみ合いは続く、それが人の業だ
　それにお前がここに至るまでに殺した研究員にも家族がいる者はいたのだぞ？」
「馬鹿が…もう止められんぞ…
　完全なる不死の人間になる予定だった者たちはもう自我も何も無い
　肉を喰らい、血を啜るのみのただの闇に堕ちた人に成り下がるぞ！！！」


思い出した言葉と、風太がコイツに向かっていった所長と言う言葉
まさか、こいつは…？
ノスフェラトゥの顔がまた歪み、元の若い顔と化す

「思い出したか？」
「お前は…まさか」
「俺は、七三一部隊隊長、外道…
　龍脈の気を使い不老不死の兵を生み出そうとした我らは風太の裏切りによって
　暴走し逆流した機械に巻き込まれ…不完全な不老不死、闇に生きる堕人と化した
　全ての七三一部隊は堕人となり大半の記憶すら失い、永遠の闇の中でもがき続けることになった…
　黄龍が目覚めるまではな…」
「堕人は…七三一部隊だった奴ら…？」
「だがまぁ…俺は最早堕人ではない…
　黄龍と迎合を果たした…完全なる存在だ、あまねく大地を血に染める…
　のうのうと我らの苦しみの上で生き続けた全ての命を滅ぼす！！」
「…ッ！ただの逆恨みじゃねぇか！！」
「ヒャハッ！ヒャァハッハッハッハッハ！！」

笑い出すノスフェラトゥ、否、外道
ひとしきり笑った後にこちらに歩み寄ってくる
目の前まで来た時、顔を近づけて呟く

「恨みとは全ての人間が抱えて生きる物
　恨みに正当な理由が必要だと誰が決めた？所詮この世界は不条理…
　人は皆不可避の罪を抱える、そして逆恨みだとしても身を焼け焦がす憎悪の念は止まる事は無い
　なぜだかわかるか？たまゆらよ？」

その問いには答えずに俺は顔を背ける
血のように赤いその口を見たくはなかったら

「野心、憎悪、憤怒、狂気、欲望、そして絶望…
　それもまた、人を動かす心の力だからだよ…
　恨みを支えに生きている人間もまた数は少ないが確実に存在するそれは決して覆せない
　生まれ持った人の弱さ、そして同時に強さでもある」
「何が言いたいんだお前は！？」
「俺を動かすのは、全てに対する恨み、憎悪だ
　もう否定もしない、俺はお前達がうらやましく、そしてどうしようもなく憎らしかった
　だからこそ、壊す、お前達を、いや、世の命を全て、俺の手で血に染める
　ヒャハッ…ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ！！！！」

また、笑い出す、けたたましい笑い声が耳元で響き渡る
その時気づく、僅かだが俺の身体が回復してることに
だが究極黄龍破邪滅閃双撃龍波を撃てるとなると…１回…
黄龍には効かなかったがコイツになら…
外せばいよいよ撃つ手が無い、ゆき兄ももう動けるような状態ではない
それでもうなだれているだけじゃ、確立は限りなく０に等しい
やるしかない…やるしかないんだッ！
笑い続ける外道、今なら黄龍発動と同時に放てばほぼ零距離で全て叩き込むことが出来る
チャンスは今しかないッ！！

「目覚めろッ――！黄龍ッ！！！！
　究極黄龍破邪滅閃双撃龍波ァァァ――――――！！！」
「おっ…！？」

一瞬だけ聞こえた外道の驚く声
その声はすぐに射出されるエネルギーが巻き起こす爆音に飲まれた
ゆき兄の時のように弾かれてる感じも黄龍に攻撃した時のように力を飲み込まれている感覚も無い
完全なる直撃、いけるか！？

「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハ！！！！
　効かねぇ効かねぇ効かねぇッ！全ッ然効かねぇよッ！
　そんなものかたまゆらぁッ！？」
「そんな…！？」

間違いない俺の放つ攻撃は外道の身体に直撃し、身体を焼け焦がし、駆け巡るエネルギーが全身を噛み砕いているはずなのに
それなのに外道は笑い声を上げながらその場に立ち尽くしている

「うぉぉぉおおおおおおお！
　黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――！！！」

外道の右から向かってきた、黒いエネルギーの奔流が外道に直撃する
ゆき兄、もう回復したのかよ、さすがじゃん！！

「ヒャーッハッハッハッハッハ！どうした！？
　アリに噛みつかれてるぐらいだぜ！？こそばゆいぜぇ！？」
「うぉぉぉぉぉぉおおお！」
「ぐぅぅううううううううう！」

放つエネルギーが更に増大する、ゆき兄の放つ黒いエネルギーも恐ろしく出力を上げている
常人ならば触れた瞬間に骨も残さず蒸発するんじゃないかと思えるほどのエネルギー
それが２つ分直撃しているにも関わらず平然と笑い声を上げ続ける外道
やがて外道がエネルギーに晒されながらもゆっくりと動き出す

「闇の中で、記憶を失い、彷徨い続ける地獄…
　ただ募るのは生者に対する憎しみのみ…
　お前らの力がどんなに強くても、俺の憎悪は止められない、絶やすことなど決して不可能だ！！」

外道の右手が、俺の射出しているエネルギーを掴んだ
そして左手がゆき兄の射出しているエネルギーを掴んだ
それとほぼ同時に身体から黄龍の力が抜けていく
ゆき兄の身体から立ち上る黒い炎もすでに無くなりかけている
若干のラグはあったものの俺とゆき兄はほぼ同時に黄龍の力を失った

「くはっ…！」
「くっそぉ…！」

外道の笑い声が更に大きくなる
その両の掌、右手には金色のエネルギーの塊、左手には黒色のエネルギーの塊

「消えろ！！消えろ！！消えてしまえ！！！
　俺以外の生命は皆消えてしまェェェェェェエエエエエエエ！！！！」

２つのエネルギーが、発射された
目の前を、埋め尽くしていく金色の光
それに飲み込まれた時、発狂するかのような痛みすらも軽く凌駕する痛み
叫び声をあげているのかいないのか、生きているのか死んでいるのかすらもわからない
肉が焼け焦げ、引き裂ける、内臓が潰れていく、骨が粉々に砕かれていく、あらゆる痛みが断続的に全身にくまなく襲いかかる
だがそれもすぐに終わった
視界が真っ暗になり、激痛が遠のいていく
それは嬉しいことなんだが、どうしようもなく、寒い…

「そうだ！！命の終わりこそ俺がずっと憧れて！！憎悪した！！
　俺が望んでいたのは、終わりだ、終わりなんだ、終わりだぁァァァァァアアアアアア！！！」



.    </description>
    <dc:date>2009-12-03T09:07:50+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/22.html">
    <title>邪眼学園黄龍譚</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/22.html</link>
    <description>
      ＊邪眼学園黄龍譚
邪眼探偵ゆき兄の後に今度は学園物が書きたいと言い出したゆき(ry
珍しく書き出す前に設定を練りこんで書き始められた作品。
故に他の作品とは一線を画す長編と化し現在も連載が続いている。
１１月中には完結するメドが立っている。
なお、たまゆらが主人公に起用されている。


＊あらすじ
邪眼学園という全寮制の高校に転校してきたたまゆら。
異常なまでに校則を守れと皆に言われ疑問を抱く。
その理由は人ならざる力をもつ生徒会による生徒の完全管理だということに気づく。
やがて生徒会に襲われるたまゆら
絶体絶命かと思われたその時、たまゆらに金色の光が降り注いだ…


＊閲覧
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[[邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】中編]]
[[邪眼学園黄龍譚２０限目【君が守った希望】後編]]    </description>
    <dc:date>2009-12-03T09:07:07+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/127.html">
    <title>邪眼学園黄龍譚１９．５限目【黄龍降臨】後編</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/127.html</link>
    <description>
      ??/??　黄龍降臨の間

「何を考えているんだ？」

天下がこちらを見ていた
相変わらず口元には微笑

「いや…」
「もうすぐ、封印は解ける…完全に…
　その時は、受け入れろ、もう逃げ場などない
　今更お前がどう足掻こうが、もう間に合わん、復活は確定的だ」
「…」

天下は、たまゆらが楔を破壊すると同時に弱まったきのこさんの封印から漏れでた
黄龍の意志の、断片
人の姿を取るが、根底は人ではない、自ら肉を作り出したエネルギーの集合体
いくら殺したところで復活する

「…約束、守れなかったなぁ…」


同時刻、時計塔最上階

「はぁ…はぁ…」

胸を押さえ、苦しそうに呻くきのこさん
心臓の鼓動はとてつもなく早く、全身は焼けるように熱を持つ

「抑え…切れない…！」

机に倒れ込むより寄りかかる
積まれていた本がドサドサと崩れ落ちる
その時、部屋のドアがガチャリと開いた音がする

「誰…白やん…」
「いや…」

そこにいたのは白やんではない
招かざれる客、黒いマント、白い仮面、長い鉤爪

「なんで…！？」

２度の死すら乗り越え、またも現れる究極の悪意
その名は

「…限りある者よ、平伏せよ…！
　我は…不死なる者！ノスフェラトゥ！！！」
「くっ…！」

ノスフェラトゥに半ば体当たりするように脇をすり抜け逃げようとするきのこさん
だがその髪の毛をノスフェラトゥが鉤爪の無い左手で掴んだ

「うっ…」
「わざわざ来たんだぁ…そう邪険に扱うなぁ…」

きのこさんはノスフェラトゥを振りほどこうと暴れるが
ノスフェラトゥはその手を離さない
それどころかギリギリと力を込めて引っ張ってくる

「…ふん、わざわざこなくてもよかったな…
　お前に施された封印はもう皮一枚で繋がってるような状態だな」
「…」
「ま、俺もそろそろ余裕が無くなってきててなぁ…
　早いとこ…迎合を果たし完全なる者に…そしてたまゆらを…奴の仲間を惨殺する…！！」

鉤爪をカチカチと鳴らすノスフェラトゥ
その言葉の節々から憎悪が滲み出ていた
きのこさんからしてみれば絶体絶命の状況

「ふふ…」

それなのに彼女は小さく笑った
面白そうに、嘲笑するように、小さくても確かな笑い
無論それをノスフェラトゥが聞き逃すはずは無かった

「何がおかしい…？」
「滑稽すぎるわ、貴方は」

凛とした声でハッキリとノスフェラトゥを&quot;滑稽&quot;と称す
今まさに命を奪われんとする状況で躍り出た
ノスフェラトゥに対する嘲笑の言葉

「何だと…？」
「…限りある者ども平伏せよ？不死なる者？馬鹿みたい…
　貴方は怖いだけでしょう？たまゆら君が、いえ、たまゆら君だけじゃない全ての人間が怖いんでしょう？
　限りある命だからこそ一際大きく輝こうとする人間の力に怯えているんでしょう？
　貴方は自分には永遠に手に入らない物に怯えると同時に憧れているだけ
　不死の力に振り回されてるだけの、ただの哀れな道化よ」
「…道化…俺が…道化？」
「図星ね？完全なる者に固執するのは自分がどう足掻いても人になれないのを知ってるからでしょう？
　人の輝きに怯えると同時に羨ましくて、切望して止まない…
　仮面をつけてるのは怯え、憧れる顔を見られたくないからでしょう？
　プライドだけは無意味に高い…自分を曝け出せなくて…
　取り繕っている表面と内面のギャップにまた自らを嫌悪する」
「…だ、黙れ…！！」
「怯え、怖がって、だけどその輝きに魅了され、憧れて、切望してでもどうしても手に入らないから壊そうとする
　私にはまるで貴方が暗闇の中で泣き続けている子供に見えるわ
　…哀れよ、ノスフェラトゥ」
「黙れぇぇえええええええええええええええええええええええええええええ！！！！」

ノスフェラトゥの耳を劈く絶叫と共に
きのこさんの背中に鉤爪が突き刺される
背中に突きこまれた鉤爪の先端は胸を切り裂き、その切っ先を空気に晒す
口から血を流しながらも、きのこさんはもう１度言った

「…貴方は最初から負けているのよ、ノスフェラトゥ
　本当は、気づいているくせに…」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ！！！
　黙れッ！黙れッ！黙れよオマエッ！！！
　怯えてなんかいない！！憧れてなんかいない！！
　喋るな！黙れ！！黙れ！！黙れェェェエエエ！！！！！」

何度も何度も、爪を抜いては刺し、抜いては刺す
爪を抜くたびに噴出す鮮血が周囲を赤に染めていく
鉤爪は真紅に染まり
跳ね散った返り血により、白い仮面も赤く染まっていく
やがて、きのこさんの手がブラリと力に失ったようにうなだれた
それでもノスフェラトゥは爪を突き刺すのを止めない
泣き声が混じったような声で否定と呪詛の言葉を淡々と呟きながらただ爪を突き刺し続ける
やがてその動きも止まり
真紅に染まったノスフェラトゥは放心したようにその場に立ち尽くす
きのこさんがドサリと床に倒れる
それを見ていたのか見ていないのか、ノスフェラトゥはブツブツと喋りだした

「怯えてなんかいなぃ…！憧れてなんかいなぃ…！
　恐れてなんかいなぁぃ…！切望なんかしていなぃ…！
　オレは道化じゃなぃ…哀れでもなぃ…！オレは…オレはノスフェラトゥ…！
　不死なる…不死…なる者…あぁぁあああ…！！」

頭を抑え、その場にうずくまるノスフェラトゥ
きのこさんが最後にノスフェラトゥへと放った言葉
それはノスフェラトゥ自身がずっと心の奥底に押し留めていた感情
自分より遥かに脆弱で、虫ケラのように思っていた人に対する、怯え、恐怖、憧れ、切望
それはノスフェラトゥにとって、何よりも耐え難い&quot;真実&quot;
突きつけられた真実から逃れることは最早ノスフェラトゥには出来なかった
全身を返り血に染め、否定と呪詛を吐き続けるノスフェラトゥ
そんな彼の後ろで倒れているきのこさんの身体から何かがゆっくりと出てきた
それは金色の光球、しばらくきのこさんの真上で停滞した後一気に壁を貫き、どこかへ向かっていった
うずくまっていたノスフェラトゥはフラフラと立ち上がった

「そうだ…なればいい…完全なる…存在に…
　迎合するんだ…恐れるものか…憧れるものか…」

呟きながら、ノスフェラトゥは静かに血で赤く染まった部屋を出て行った
残されたのは…最後の封印の抜け殻のみ…


同時刻　黄龍降臨の間

「きひゃひゃひゃひゃひゃ！！！
　来たぞ！！封印が解けた！！」

突然天下が笑い出した
封印が解けただと…馬鹿な、早すぎる！
まさか、きのこさんの身に何かが…！？
慌てて時計塔に向かおうとする俺の手を天下が掴んだ

「どこへ行く気だ…？
　今更逃げることは出来ないぞ…？」
「逃げねぇよ！！少し様子を見てくるだけだ！！離せ！！」
「まぁそれでもいいが…オマエが消えればそこで倒れてるたまゆらのほうを器にするだけだ」
「…！？クソッ！！！」

俺は天下の手を振り解いた
天下は心底楽しそうに笑い続ける

「諦めろ、どうせ皆死ぬんだ」
「天下ェェェェェェェェエ！！！！」
「見ろ、来たぞ…我が本体…！！
　今こそ、黄龍が降臨する…！！！」
「！」

龍の像の正面に、光が集まっていく
１年半前と同じだけどあの時と違うのはハチ切れそうなほどのエネルギーが荒々しく暴れている
螺旋を描き、広がる、眩いばかりのエネルギーの総体

「ヒャハハハハハハ！！復活だ！！
　ついに我は完全なる復活を果たしたぞぉぉぉぉぉぉぉ！！」

天下の身体が浮き、光の塊となり、像へと吸い込まれていく
地響きのように周囲が揺れ動き、天井から砂がパラパラと落ちてくる
&quot;完全なる意志&quot;を取り戻した黄龍の力は段々と統率が取れてくる
ゆっくりと力と力がまるで織り込まれるように、互いを包み込むように重なっていく
そして、それは１つの形を作り上げる
伝承に伝わる、黄龍の姿を

『ウォォォォォォオオオオオオオオオオオオ！！！！』

黄龍の咆哮、後ろに吹っ飛びそうになる
おかしい、以前よりエネルギーが強い気がする…
気のせいなんかじゃない、間違いない…！

「そうか…時計塔によって新たに汲み上げられた…龍脈の気まで取り込んだんだな…！！」

見ただけでわかる、こんな力が世に解き放たれれば世界が終わる
だけどもう封印することも出来ない
身を持たない膨大な量のエネルギーである黄龍を倒すことも出来ない
万事休すか…
でも、安心しろよ、たまゆら…
世界を滅ぼす罪を、お前に背負わしはしない
人類最大の罪とも言えるこれを背負うのは、もう罪にまみれている俺がお似合いだ

『器ァ…！！器はどこだぁ…！！』
「黄龍！！」
『そこに…いたかぁぁああああああ！！！』

俺は両手を広げた、黄龍を受け入れるために
目を瞑り、これから起こることを考える
自分の意志とは無関係に殺戮を繰り返すんだろうな
これだけのエネルギーを全部使えるんだ核兵器を受けても死なねーんじゃねぇかな
…駄目だな、嫌なことばっかり思いついちまう
いっそのこと、一瞬で世界全部消し飛ばしちまうってぐらいのほうがまだ救いがありそうだ
全身に叩きつけられる黄龍の波動
もう避けようと思っても間に合わないな…終わり…か…




「ゆき兄ッ！！！！！」
「えッ？」

横から飛んで来た誰かが、俺の身体を巻き込んだ
２人で仲良く転がって、俺の背中ほんの数ミリと言った所を黄龍が掠める

「たまゆら…」

壁に叩きつけられ、回転が止まる
器を見失った黄龍は壁にぶつかり、爆散する
それを見たたまゆらが叫んだ

「やった！あいつ自爆したぞ！」
「いや、駄目だ！今のあいつには完全なる意志がある！すぐに元に戻るぞ！！」

俺の言った言葉とおり、周囲に散った金色の力はすぐにまた一箇所に集まり
先ほどとなんら変わりの無い黄龍の姿へと戻る

『どこだァァァァァァァアアア！！！器ァァァァァアアアアアア！！！』

黄龍の叫び声、暴れまわる超自然エネルギー
自らを宿す器を探し、部屋を破壊しつつ爆散しては集結し、爆散しては集結し…
それを横目で見ながら俺はたまゆらに食ってかかった

「どういうつもりだ！折角俺が…！！」
「よくわかんないけど…アレ倒せば…全部終わるんだろ？
　アレさえ倒せば…俺たち、また笑えるんだろ！！！？」
「…無理だ、エネルギーの総体である黄龍を倒すのは不可能だ
　意志を封印して散らすことももうできない…！」
「…気なら！？俺の究極黄龍破邪滅閃双撃龍波と…
　ゆき兄の…えとほら、似たような技を同時に叩き込めばなんとかならないかな！？」
「それも無理だ…どんなに出力を上げてもアレほど莫大なエネルギーの前には吸収されて終わりだ」
「えーと、えーと、じゃあ…！！」
「無理なんだよ！こうなっちまった以上、黄龍は倒せないんだ！！！」

思わず、叫んだ
たまゆらは何かを言おうとしたが俯いて黙ってしまった

『そォォォォこォォォォかァァァァァアア！！！！』

黄龍が向かってくる
勝てないんだよ、黄龍には…だからたまゆら…
お前が器になったら…最後に心残りが出来ちまう、だから早く逃げてくれ
そんな俺の心とは裏腹に、たまゆらは俺の前で向かってくる黄龍に向かって構えた
その右手に、黄龍鉄甲

「馬鹿よせ！！無理だ！！！」
「どっ…」
「ん？」
「どっ…どんな強大な力に襲われても可能性はある
　それでもうずくまってるなんとかなるのを待ってるだけじゃ何とかなる可能性は０に等しいんだ…
　そう教えてくれたのは…ゆき兄じゃないか」
「…！」
「言ったじゃないか…ゆき兄…！
　死んでも自分の張った意地から逃げ出すなって…！！
　俺は、逃げない、絶対に！！！
　ゆき兄がそう教えてくれたから！！だから俺は立ち上がる！！
　そして信じるんだ！！可能性を！！！」
「…たまゆら…お前…」

俺は右手を見る、そこにあるのは黒い黄龍鉄甲
…そうだ、俺は何故受け入れようとしていたんだ
最後の最後まで、足掻いてみればいいのに、どうして最初っから諦めてたんだ…
俺はまだ…戦える！！

「目覚めろッ――！黄龍ッ！！！！
　究極黄龍破邪滅閃双撃龍波ァァァ――――――！！！」

そうだ、エネルギーの総体である黄龍を倒すには
直接的な攻撃ではなく、同様のエネルギー…気を使っての攻撃にしか可能性は無い
だが、人が作り出せるエネルギーが黄龍に効くのか…？

『笑止…自らの力で撃たれる愚か者などおらぬわァッ！！
　あまり調子に乗るなァ！！器がァッ！！！』
「くっそ…」
「そのままだ、たまゆら」
「ゆき兄…！？」
「猛り狂え、黄龍――」

黄龍鉄甲が変形し、黒き鎧と化す
そしてそのまま俺は右手を、全ての元凶、そして自らの力の源へと向けた
効くとか、効かないとか、そんなことを考えるのはもう止めよう
例え効かなくても、最後の一瞬まで足掻いてみよう

「…黄龍冥撃夢幻黒蓮破――――！」

俺の右手から放たれた黒き力、陰に属するエネルギー
それがたまゆらから放たれていたエネルギーに絡みつく
ぶつかり合うことなく、互いが互いに螺旋を描き、決して交じり合わず、それでも決して反発することなく
陰陽、２つの力が、同時に黄龍の額にと命中し、爆発が起こる
そのとき黄龍の巨体が、揺れた

『ナッ…ニィィィイ…！？』
「効いた…！？」
「…そうか…陰陽どちらにも属さない…
　言うなれば、それ単体で完全なるバランスの攻撃…！
　決して他に飲み込まれることない攻撃…これなら…！！」
『キィサァァァマァァアラァァァァァァ！！！！！！！』

黄龍の咆哮、常人なら失神してしまいそうなほどの怒りの咆哮
溢れ出す怒気は、心の底からの恐怖を呼び起こす
だけど俺は恐怖なんか沸かなかった、その怒りは微かだが俺たちの勝利という可能性に繋がる気がしたから

「…まさか今さらお前に教えられるなんてな」
「ゆき兄…」
「正真正銘、ラストバトルだ
　覚悟はいいか？たまゆら？」
「ゆき兄こそ、準備いいの？」
「ハハッ、言ってくれるじゃねーか」
「ハハハハッ、ゆき兄に感化されたかな」
「笑っちまうな…
　…だが残りの笑いは、勝った時まで取っておこうぜ！！」

俺とたまゆらは黄龍に向き直った

『器ゴトキィガァァァァァァァァァァ！！！！！』
「来い！！人は手を取り合えるだから何だって越えられるんだ！
　そいつを今から教えてやる！！」
「生きようとしている者がどれほど強いか叩きこんでやる！！
　馬鹿げた夢はここで終わりだ！！！」

俺とたまゆらはお互いに狙いを定めた
何も言わずとも感じられる、互いの想い

『フザケルナァァァアアアアアアアア！！！！』

黄龍が向かってくる
全てを飲み込むかのようなその巨体
それが目前まで迫った時、ほぼ同時に俺とたまゆらは叫んだ

「「人の運命は人が決める！！お前の出る幕なんか無い！！！」」
「究極黄龍破邪滅閃双撃龍波ァァァ――――――！！！」
「黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――！！！」

黄龍の牙が、俺たちに届く寸前で巻き起こった大爆発
絶叫と共に後ろに仰け反る黄龍
微かな勝利の可能性は徐々に大きくなっていく
いや、信じよう、この小さく不確かな、可能性を！！



１９．５時限目　- 黄龍降臨 -
終




.    </description>
    <dc:date>2009-11-21T01:29:40+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/126.html">
    <title>邪眼学園黄龍譚１９．５限目【黄龍降臨】前編</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/126.html</link>
    <description>
      *邪眼学園黄龍譚１９.５限目【黄龍降臨】前編

??/??　黄龍降臨の間

肉が焼ける匂いが周囲に漂い、身体から黒い煙をあげながら倒れるているたまゆら
さすがにもう動けはしないだろう…
パチパチと、静かになった室内に音が響く

「ずっと見てたのか、天下」
「ええ…」

影が歪んでいく、正確には壁の手前
歪んだ空気は徐々に色を得て行く
そして、天下の姿となる、微笑を浮かべながら俺に拍手を送る
俺は、天下の胸倉を掴み上げ、壁へと叩き付けた
それでも冷静に天下は言葉を紡ぐ

「…無理なのは知ってるだろ？
　僕は一部分だ、いくら殺したところで…」
「…クソッ」

俺は天下を離した
乱れた胸元を直しながら天下はゆっくりとたまゆらに近づいた

「…ふぅん、チャクラだけにダメージを集中させたのかい
　殺したほうが手っ取り早いのになぜそんなことを？」

ニヤニヤと笑いながら
たまゆらの身体に触れる天下
天下のほうなど見ずに俺は黄龍の鎧を元に戻しながら返答した

「命まで奪う必要は無いんだろ
　……ま、今までの礼も含めてそれだけに留めておいた」
「…クックック…！どうせ結末は同じなのにかい？」
「…」

奥歯を噛み締める
天下は半ば笑い声が混じった声で続ける

「長かった…この１年半、自らを縛る鎖を呪い、呪い続け…！
　何度君を引き裂いてやろうかと思ったか…！
　でももういいんだ、もう終わる、君が黄龍を受け入れればそれで終わる」

１年半…もうそれぐらい立つか…
俺は黄龍鉄甲を見た、鈍き漆黒の輝き
それは俺の最大の力でもあり、罪の象徴でもある
決して消える事の無い…





１年前、春

喉を下る刺激が心地よく、俺は缶を垂直にし一気に流し込んでいた

「よくまぁ、その量を一気飲みできるな」

呆れたような口調でそう言いながら高橋が何かを投げてきた
左手でそれをキャッチすると、ぶにゅっとした感触
視線をやると中身の餡子がちょっと飛び出した饅頭があった

「やるよ、食え」
「饅頭ねぇ…」

ピリピリと音を立てながら包装紙を破る
半分ほど破ったところで饅頭にかぶりついた

「うん、うん…けっこううまいなコレ…」
「それより本当に行くのかよ？」
「面白そうじゃね？
　もしかしたらなんかこう、財宝とかあって一攫千金かもよ？」

指についた餡子を舐めながら高橋に返答する
饅頭ってなんか物足りないんだよな、食い終わった後が

「しかしよぉ…隠されてた怪しい通路って…
　なんかヤバい気もしねぇか？場所もあの廃屋ばっかのとこだろ？」
「ああ、あそこだぜ？」
「しかし瓦礫に埋もれて隠れてのをよく見つけたな
　つーかお前あそこで何してたんだ？」
「廃屋街って面白いじゃん」
「…いや、意味わかんねぇ」

高橋が頭を抑えて顔を伏せる
そのまま小さく呟く

「つか、１人で行きゃあいいじゃないか」
「それはそれで怖いし」
「お前な…」

頭痛がする、そう言いたげな感じで高橋が呆れ果てたような目でこっちを見つめた
指に突いた餡子を全部舐めとると俺は親指を立てて高橋に笑顔を送った
それを見た高橋は溜息をつきながら言った

「今回だけ、だからな？」
「ああ、わかってる、今回&quot;こそ&quot;今回だけ、だろ？」
「…それで？いつ行くんだ？」
「膳は急げって言うし、今日の夜行こうぜ
　まぁヤバそうだったら途中で戻ればいいだけのことだろ？」
「…まぁな」
「んじゃ１１時過ぎぐらいに廃屋街な！」

そう、偶然見つけた、真実へと至る道
好奇心をそそられた俺は高橋を誘って探検してみることにしたんだ
今思えば、どうしてそんなことをしたのかな
好奇心は猫を殺すって格言もあるのに、昔の俺は何も考えていなかった
いや、考えようとしなかったんだ…
それで夜になって…

「お前から誘ってきたのに何で寝てるんだよ！！」

高橋がまだ頭が覚醒しきってない俺の手を引っ張って廃屋街へと連れていく
俺はぐぁんぐぁんと半目で頭を揺らしながら
おぼつかない足取りで廃屋街へとたどり着いた

「あー…」
「あー…じゃねぇよ！！
　ほら、ついたぞ、入り口はどこだよ」
「ん、これだよ」

俺は印をつけておいた場所を見つけ
土に隠れている鉄板の端を思いっきり上に持ち上げた
ガゴッと音がして現れる地下へと続く石造りの階段
月明かりによって照らし出される暗黒、続く先は光すら届かぬ深淵の闇
漂う冷たい空気、なのにまとわりつくようなとてつもなく不快な瘴気
隣で高橋が生唾を飲む音が聞こえた

「…おい、本当に、ここ入るのか…？」

若干震えた声で高橋が俺に聞いてきた
正直俺も少し怖い、正確には物凄く怖い
しかしだからこそ高橋を連れてきたのだ、この恐怖を紛らわすために
それに恐怖よりこの先に何があるのかという好奇心が勝った
俺は高橋に向かって親指を立てた
高橋は覚悟を決めたように懐中電灯を取り出した、用意がいいなコイツはと思った
懐中電灯の明りに照らされる深淵しかしその光すらも最奥を照らすことは無い

「…危ないと思ったらすぐ逃げる…で、いいんだよな？」

最終確認といわんばかりに高橋は俺に向かって聞いてきた
俺は無言で何度も頷いた
高橋は大きく息を吐いて、階段へと足を踏み出した
俺も高橋の服の裾を引っ張り続いておりる
ひんやりとした空気に体が震える、俺と高橋はゆっくりと１歩1歩足を踏み外さないように階段を降りていった
響く音は俺たちの足音と呼吸音だけ
懐中電灯の光だけが先を照らし、完全なる深淵へと向かっていく
やがて階段が終わる、先に続く長い通路
高橋が唾を飲み込む音がヤケに大きく聞こえた

「まだ…行くよな」

どうやら高橋もあまりに学園の地下にあるあまりに不気味なこの通路を見て
恐怖よりも好奇心が勝ったらしい、俺の返事も待たずに足を踏み出す
懐中電灯の光が左右にゆらゆらと揺れる
壁に書かれている絵の意味を考える余裕も無く、先へ、先へと
ただ、歩き続ける、まるで地獄の底に続いているかのような道をひたすらに
足元から背中を這いまわり脳髄に到達する恐怖
深淵の闇に隠れた後ろから誰かに見られているような恐怖
心なし多く聞こえるような足音、小さな囁き声
気のせいに決まってる、気のせいだ
ここにきて俺は少々後悔していた、来るんじゃなかったと、ここは人が足を踏み入れていい場所じゃないのではないかと思い出した
しかしどうせ戻るにしてもまたあの長い長い暗闇を抜ける必要がある
…それにどうせ高橋は前へ前へとグングン進んでる
俺たちは無言で延々と通路を歩き続けた
階段を降りてからどれだけ歩き続けたのだろうか
唐突に高橋の足が止まる
そして正面で懐中電灯の明りに照らされていたのは大きな、両開きの扉…
通路もそうだが、なぜ学園のこんな場所が？いつ、誰が、何のために作ったんだ？
高橋も同じ疑問を抱いているだろう
…答えはこの扉の先にあるのか…？ならば…
俺は高橋の前に出てゆっくりと扉に両手をかけ、力を込める
周囲の壁に反響する不気味な音を響かせ、ゆっくりと扉が開く
扉が開いても相変わらず真っ暗だったがどうやらかなり広いらしい
俺に続いて高橋も足を踏み入れる
周囲を見渡すようにあちこちを懐中電灯で照らしていく

「…かなり広い部屋みたいだな」
「部屋っていうか、広場かな…」

閉塞感から開放されたからかそれとも暗闇に慣れたのかわからないが若干心に余裕を取り戻す
とても広い広場でしばらく動けずにそこに立ち止まる
すると突然、俺じゃなくかといって高橋でも無い声が響いた

「…誰？」
「え？」

声の聞こえたほうに高橋が懐中電灯を向ける
深淵の闇の中に、少女が立っていた
透き通るような周囲の闇に同化するような長い黒髪
それらが浮き立たせる、白い肌
俺と高橋は言葉を発することなく、少女に釘付けになった
恐怖とか、驚きじゃない、深淵の闇で出会ったその少女にある種の&quot;神々しさ&quot;を見たから
例えるなら、闇の中に咲き誇る、１輪の白い花

「…誰なの？」
「えっ…あっ…」

もう１度聞き返されて我に返る
しかし冷静に考えてみろ、誰？と聞きたいのはこっちのほうだ
こんな闇の中に１人でいる少女ってどう考えても怪しすぎるだろ
だけど不思議と、逃げようとは思わなかった
怖くない、むしろなんだろう、彼女を見ていると、切なくなった…
なぜかはわからないけど、その表情がどうしてだか…とても悲しい物に見えた

「俺は…高橋、こっちはゆき兄…
　君は…誰だ？なぜここにいる？」

高橋が問いに対する答えを返す
そして、今度は彼女に問いかける
小さな声、だけど淀みなく、彼女は言う

「私はきのこ、なぜここにいるか…
　ずっといた…ずっと…守ってきた」
「守って？」
「すぐにここから出て行って…
　ここは人が足を踏み入れてはいけない…そういう場所だから」

それだけ言うときのこと名乗った少女は俯いた
俺と高橋は顔を見合わせた
互いにどうする？といった表情でお互いの言葉を待ってるような状態
確かにここは人が足を踏み入れてはいけない場所、そういうのはなんとなく俺たちも感じている
だけどここまで来てノコノコ元来た道を戻るというのも…
そう考えていた時、頭に軽い痛み

「つッ…！」
「どうした？」

突然頭を抑えて呻いた俺を見て高橋が慌てる
心配そうに顔を覗き込んでくる

「いや…急に頭痛が…」

『来い』

「…！？」

頭に直接響くような声
頭蓋骨の中を反響し、何度も、何度も

『来い…こっちだ…来い…』

「誰かが…呼んでる…」
「え？」

高橋がはぁ？と言う顔をした
俺にしか、聞こえてないのか…？
頭痛が酷くなり、頭に響く声は大きくなっていく

「ぐぅっ…！！」
『来い…！』『我を解き放て…！』『こっちに来い…！』
『暗き獄より我を…！』『器よ…早く…！！』
「うっぐ…！！」

頭痛は、まるで頭が割れるんじゃないかという痛みへと変貌する
立っていられずに、俺はその場に倒れこむ

「ぁっがぁ…ぎぃ…」

押し寄せる痛みは激しさを増していく
地面を掻き毟る指は爪が剥がれ落ち、血を滴らせる
その痛みを感じる事もさせてくれないほど、頭痛は容赦無く直接脳を掻き回すかのように…
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い…

「ゆき兄！？おい…！？」

高橋が慌てている
だけどその声は俺には届かない
頭痛と共に、俺に届く声は誰かの、呼び声だけ

『来い…』

「うぅ…」

立ち上がり、前へと足を踏み出す
一瞬、頭痛が治まる、がすぐにまた割れるような痛みが押し寄せる
もう一歩、前に進む、また治まる、だけどまたすぐに元に戻る
痛みから逃れようと足を前に出し続ける
その進行方向にあの少女が立ちはだかった

「駄目…この先は…！」

どいてくれ、頼む、痛いんだ、死にそうなほど、痛いんだ
お願いだ、道を、開けてくれ…！
そこを、退け

「共鳴してる…駄目！行ったら駄目！！」
「ど、け…！！」

自分の口から出た声が、自分でも信じられなかった
憎悪の塊のような、聞く者の魂を震え上がらせるような言霊を携えた声
悲しげな顔は、より悲しげに、それでも少女はその場を動こうとはしない
多分、後ろでは高橋が今の俺の声を聞いて信じられないと思っているんだろう
だけどそんなこと、今はどうでもいい
今は、この痛みを何とかしたい、それだけでいい

「…どけぇッ！！！」

俺は、少女を突き飛ばした
そして頭を抑えながら、震える足でその横を通り抜ける
後ろに倒れ、尻餅をつく少女はそれでも尚も叫ぶ

「駄目ッ！！その先に眠っている物を起こしたら…！！」
「知る…か…！！」
「ゆき兄ッ！おいッ！！」

後ろから高橋の声
だけど、どうでもいい
この痛みが、俺を縛る、何も届かないほどに
頭を抑えながら導かれるままに先へと進む
半ば体当たりするように現れた扉を開ける
扉の先にある通路をただ痛みを和らげるために進み続ける
開け放たれた扉が閉まる直前に聞こえる少女の叫び声

「駄目ェェェェェェェッ！！！！」

その叫び声は、閉まる扉に阻まれて、俺に届くことは無かった
１人で深淵の闇に包まれた通路を歩き続ける
歩みを止めれば襲い来る狂ってしまいそうなほどの頭痛
ただそれから逃れたい一心で先に何があるのかなど考えず俺は歩き続ける
どれだけ歩いたのか、目の前にまた扉
扉に描かれている…鳥と、亀と、虎と、龍…？

『来い…』

声はどんどん大きくなる、立ち止まっては駄目だ
俺は一気に扉を開け放った
扉の先は、俺の想像を遥かに超越した場所だった…

部屋に入ると同時に頭痛は嘘のように止んだ
それよりもその部屋に俺は目を奪われた
いくつものかがり火の炎に照らされた壁、床、天井、その全ては金色に光り輝いていた
本当に財宝が眠ってたってわけか…？なんてことを思いながら先に進んで見る
途中に、ボロボロの何かが落ちていた
気になって拾い上げて見るとそれは紙…だけど随分と色あせている
何か書かれているが…読めない
かろうじて龍のような絵だけは判別できた、なんだろう、コレ…
とりあえずその紙をポケットにねじ込み、また奥へと進んで見る
やがて何かが見えてくる

「すげ…何だこれ…龍…？」

黄金で作られた大きな大きな、龍の像
炎の輝きに照らし出されたソレからは圧倒的な威圧感と神々しさ
なんでこんなもんがここに…
もう少し近くで見てみようと思い、その像に近づいていくと
像の前に小さな机のような物が置かれていた
まるでここに供え物をしろって感じだな…
そこまで近づくと、また頭に声が響いた
今まで１番ハッキリと、大きな、声

『よくぞ来た…器よ…』
「誰だ…！」
『我は黄龍…世の理を司りて、四神を束ねし存在…
　証を…器として…証を…』
「！？」

突然右腕にずっしりとした重みを感じた
黒い、グローブ…？いや、鉄甲？いつのまに…？

『器よ…我を受け入れ…世の理を正せ…
　天運によって選ばれし…世に…救いを…』

いまいち要領を得ないが…面白そうではあるな
ヒーローになれってか？望むところだ
元々そういうのには憧れてたから、俺だって男の子だから

「ああ、わかった、それじゃどうすればいい？」
『証を…かざせ…黄龍鉄甲を高く掲げろ…』
「こうか？」

俺は像に向かって右手をあげた
金色の光を反射する像から何かが薄っすらを浮き出てくる
ホタルの光のような、儚く、淡い金色の光
それが螺旋を描き、広がって、美しく壮大なタペストリーのような模様を宙空に描いていく
その光景に目を奪われていると、突然背後で大きくドアの開く音

「止めて！！」
「君は…」

振り向くと、さっきの広場で出会った少女がいた
息を切らしているのは長い通路をここまで走って来たからだろう
そういえば切羽詰ってとはいえさっき突き飛ばしちまったんだよな…
謝っとこうかな…

「あの…さっきは…」

謝ろうと思って口を開いたその時
俺の言葉を遮るような、絶叫にも近い少女の声

「駄目！その黄龍は狂ってる！！！」
「え？」

狂ってる？
よくわからないが、ここから離れろと言っているのは間違い無い
若干躊躇したがとりあえずその場を離れようとし、後ろに振り返った、刹那

『もう、遅い』
「何ッ！？」

背中に、恐ろしい衝撃、皮膚を焼き切り、内臓までも焼け焦がすような激痛
穴を開けられた皮膚に焼けた鉄の棒を力任せにねじ込まれていくような感覚
痛みを衝撃ではなく、痛みと脳が判断した瞬間に俺の口から出たのは痛みの絶叫

「がぁあああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！？」

尋常ならざるほど視界が揺れるのは激痛によって目の焦点を失ったから
全身がガクガク震え、自らの息はまるで炎を吐いてるかのような熱を帯びる
頭のてっぺんから足の指先まで全身を万遍無く内側から焼かれる痛み、発狂するほどの死の痛み
顔を必死に逸らすと俺の背中には黒いレーザーのような物が直撃している
それはさっきまで俺の目の前にあった金色の龍の像の口から放たれていた

「…ゆき兄ッ！？」

高橋の声が聞こえた
震える視界に映る、少女の傍で呆然とした顔をする高橋
何が起こってるか、わからないと言った具合で
少女がこちらに走って来た

「離れろぉぉぉお！」

少女は俺の身体を突き飛ばす
同時に黒い光は途絶え消える
だけど俺の痛みは止まらない、床を転げ回り、悶え苦しむ
さらに頭に響く声

『全ての命を散らせ』
『狂ってしまった世界を浄化せよ』
『何もかもを消し飛ばし、全てをあるがままの状態に』

止めろ、そんなの、望んでない…！
俺は…そんなこと…望まない！！
こんなの…違う…！！

『お前は我を受け入れた』
『抗うな』
『器として本分を果たせ』
『全てを回帰させよ！！』

嫌だ…！嫌だ…嫌だ…！出来ない…出来るわけが無い…！
そんなものが…救いであってたまるか…！！！

「ゆき兄ッ！大丈夫か！？」

高橋が近づいてくる
視界に映る、高橋の顔

「お前…泣いてるのか…？」

泣いてる？どうして…俺は、泣いてるんだ？
痛みのせいか？それとも真実を知った悲しみからか？
いや、そんなことより…

「逃げろ…高橋…」
「え？」
「逃げろォォォォオオオオ！！！」

逃げろ、という叫び声とは裏腹に、俺の右手は無防備な高橋の腹部に叩き込まれた
信じられない、そんな顔をして高橋は身体を折り曲げ後ろへと吹き飛んだ
壁に叩きつけられ、手を俺のほうに伸ばす
だけど、その手が力なく地面に落ちる

「うぅ…あぁぁああああ…！あぁぁ…！！」

俺はゆっくり立ち上がる、俺の意思ではない
まるで操り人形みたいに、誰かが俺の身体を動かしてる
俺の瞳は少女を見る
よせ、やめろ、動けよ、俺の身体…！！

「…」

少女は俺を睨んでいる
当たり前か、忠告を無視してこんなことになった奴に同情する余地なんか無いだろう
だけど気づいた、少女の視線の焦点は俺ではない
俺のすぐ真後ろ、何も無いはずの空間を睨んでいる

「…お前は誰だ？」

俺の口から出た、俺じゃない誰かの言葉
俺の声、だけど発しているのは俺ではない
少女はその問いに小さく答える

「最後にあの人は守人として
　決して誰も貴方という暴走した力に近づかないために私を作った
　そしてもし発動しても、押さえ込むために、言うなれば私は最後の保険…」

この子は、何を言っている
俺の声で、俺ではない者が喋る

「何を言う…我は生まれるべくして生まれた存在…
　世の理が乱れた時に現れ…世を正す…」
「違う…確かに貴方は何も悪く無い…
　あの人は最後に気づいた、自分が決して踏み入れてはいけない領域に踏み込んだことに
　だから私をここに置いた、私は百年ここにいて…守り続けた」

百年、ここにいた？
ずっとこんな暗い場所に百年も…？
ふと気がつくと、右手の黒い鉄甲の形が変わっている
まるで鉄甲と同化した剣のように鋭い刃が光っていた

「…ねぇ、聞こえてる？
　貴方に入り込んだ黄龍の力は人工的に生成された所謂狂った力…
　もしそれが完全に発動すれば…世の理どころじゃない、全ての生きとし生ける者が死滅する！」

それは多分、俺に向けられた言葉
全ての生きとし生ける者が死滅か…はは、ゲームとかでよくある設定だな
残念なのは…俺がそっち側に来ちゃったってことか…
…ま、もう俺は戻れないんだろうな
視界の端で力なく壁に背を預けている高橋、その足元には赤い血だまり
ゴメンな、俺に付き合わせてこんなことに…
ただ、コイツだけは絶対に許さない

「抗って…！その力に飲まれないで…！！」
「無駄だ、もはや我は器と完全に同化しッ…！？」

あんまり調子乗ってんじゃねぇぞ…！！
さっきから人を物扱いしやがって…！テメェに思い通りにならないことがあるって教えてやる…！！

「…調子…乗りすぎだ…クソ野郎…！」

それは俺の声、俺じゃない誰かの声じゃない
紛うことなき、俺の意思によって紡がれた言葉
自らの足に突き立てた剣による激痛が、僅かだが俺の身体の支配権を俺に戻した
誰かの声は追いやられ、また俺の頭に直接働きかける

『器が我に逆らうかァァアアアアア！！』

憎悪を込めるかのような絶叫
吹き飛ばされそうな意識を繋ぎとめ俺は声を紡ぐ

「俺たちの世界は俺たちが作るんだ！！
　お前の出る幕なんか無い！消えろォォォオオオオオ！！！」
『消えろ、か、ハハハハハッ、無様だな！
　人ごときが森羅万象より産み落とされた我を消滅させることなど出来ぬ！』
「…クッソォォォオオオ！！」

足から剣がズルリと、血を滴らせながら抜ける
同時にまた身体は俺の意に反して動くようになる
やはり、俺が死ぬしかないのか…！？
もう1度、もう１度だけ一瞬でいいから支配権が俺に戻れば…！！
そう思っていると少女が目の前に飛び込んできた
右手が、突き出されようとする

よせ、やめろ

酷くスローモーションな世界
少女の視線と俺の瞳が交錯する
深く静かな悲しみの内に眠る、確たる意志
それを見た瞬間に、右手に伝わる、柔らかくも重たい感触
胸の中心を貫き、背中から切っ先を覗かせる刃
少女の口から鮮血、だけど、その顔に微笑み
両手がしっかりと、刃を掴む

「…黄龍鉄甲は黄龍の力を引き出す媒介
　逆に言えばそれは形無きエネルギーの集合体である黄龍本体へと通じる唯一の道…」
「何を…する気だ！！！」
「私は擬似的な黄龍の器…
　力を引き出さずに永遠にその身に黄龍を封じ込める…牢獄…！」

黒い黄龍鉄甲が物凄い勢いで震えだす
右腕が千切れるんじゃないかと思うほどの圧倒的な負荷
それでも少女はしっかりと刃を握り、暴れる刃によってその手を傷つけられようと決して離さない
俺の口を介し、黄龍は喋る

「…器でも無い者が、我の力を全てその身に留めることなど不可能だ」
「ええ、そうね」

そうね、と言いながらも少女はクスリと笑った
まるでその言葉は想定のうちだとでも言うように

「確かに莫大な量のエネルギーである黄龍全てを身に閉じ込め切ることは出来ない…
　でも私は&quot;力&quot;は封じない、力の方向性を決める&quot;存在&quot;、即ち&quot;黄龍の意志&quot;だけをこの身に封じ込める！！」
「！？」
「私の中で永久に眠りなさい、黄龍！」
「キィサァマァァアアアアアアアアアアアア！！！」

何かが、黄龍鉄甲を介して、彼女に流れ込んで行くのを感じた
同時に頭に響く声は薄れて行く
身体のあちこちに弾けるような衝撃を感じる
全身を巡るエネルギーが指令塔を失って暴走し、ぶつかり合っているような感覚
互いにせめぎ合い、押し合い、炸裂するように弾けながら力が１ヶ所に集中する
そして、俺の胸が&quot;裂けた&quot;
赤い血を噴水のようにブチまける、その鮮血は目の前にいた少女にも降り注ぐ
むせ返るような血の匂い、そして裂けた胸から勢いよく放たれた７つの光の塊
光の塊は壁や天井をすり抜けてどこかに消えて行く
それを見届けると、一気に全身から力が抜けた
自らの血で出来た血だまりの中に倒れ込む
あれだけ血が出たというのに寒くない、むしろ全身が焼けるように熱くて冷たい床が心地いい
どうやら、俺は生きているようだった
だけど意識は朦朧として、視界はぼやけている

「う…」

黄龍鉄甲を右手から外し、投げ捨てる
ガコォンと、音が耳に響いた
どこに向かって手を出したんだろう、何を掴みたかったんだろう
ただ何もわからないまま、倒れたまま右手を前に出した
虚空を掴もうとする右手、何も掴めず、それでも何かを掴もうと、何度も何度も空を切る
不意に、暖かく、柔らかい何かが右手に触れる
それは俺の右手を包み込み、聞こえてくる、命の脈動
…視界を定める、触れているのは、少女、いや、きのこさんの両手

「…ぐッ」

左手で胸を抑え、這いずるように倒れている彼女へと近づく
ゆっくりと、力無く倒れる少女を抱きかかえる
その儚さ、美しさは血に染まる…汚してしまったのは…俺…

「ちくしょ…おっ…なんで…こんな…！！
　俺はッ…！俺はぁぁああああああああああ！！！
　あぁあああああああああああああああああああああああああああああああ！！」

涙が、零れ落ちる
止めようとしても、溢れてきて、止めることが出来ない
どうしてこんなことになった？
全部俺のせいだ、俺がここの入り口を見つけなければ、興味なんか持たなかったら
高橋すらも巻き込んでしまった、忠告を受けたらすぐに引き返せばよかった
全部、俺のせいなんだ…俺の浅はかさが招いたんだ…！
自らを呪い、侮蔑する、絶望の嘆きを叫び続ける
そんな俺の頬に暖かい脈動
叫びを止め、そっとそれを握る

「…大丈夫、今なら間に合うから」
「どういう…意味？」
「…君の中には大量の黄龍のエネルギーが残ってる
　それを分け与えれば…あの人も息を吹き返す…
　君の胸の傷もほとんど傷が塞がってるでしょ…？」
「…！？」

胸を触って見ると確かに血にまみれてはいるが傷口なんて存在していなかった
これが、黄龍の力…？

「さ、早く…手遅れにならないうちに…」
「でも、分け与えるってどうやって…？」
「黄龍の力は本来無原罪の…いわゆる白紙のような力…
　使う者の想いによって様々な世界が描かれる…君が望めば…どんな力でも…」

俺はゆっくりきのこさんの手を地面に置き
壁によりかかる高橋へと近づく
もう生気を感じられず、白いシャツは乾いて変色した血によって赤黒く染められている
俺はそっと高橋の胸に右手を押し付けた
冷たく、鼓動も何も感じられない、意志を失ったたんぱく質の塊
逝かせるものか、決して逝かせはしない
お前を逝かせるわけには行かない、この程度でお前が死ぬわけなんて無い
生き返れ、黄龍の力が正義だろうが悪だろうが何だっていい…！
誰にも負けないように、どんな力に晒されてもお前の力なら武器なんか無くたって…！
生きろ、生きてくれ！高橋！！
強く、強く俺は願った

右手から金色の光が溢れ出す
その光はゆっくりと高橋に吸い込まれていく
青ざめた顔に、薄っすらと赤みがさし、トクン、と小さなでも確かな心臓の鼓動が聞こえた
そして、ゆっくりとその目を開けた

「…あれ…」
「高橋…」
「…何泣いてんだ？」
「悲しい涙じゃないのは確かかもな…」

それから、俺と高橋はきのこさんから詳しく黄龍の話を聞いたんだ
１００年前、ある研究機関が中国伝承に伝わる黄龍に興味を持ち、ある仮説を立ち上げた
黄龍とは大地を巡る気、龍脈の流れが滞り、気が凝り固まった存在ではないのかと
戦乱などで大地に多数の血が巡れば龍脈の流れは滞る、それはつまり世の理が乱れたということ
凝り固まった気が黄龍となり器に宿って世の理を正す、それは圧倒的力を持つ黄龍の器による統治を指すのではないかと
そして研究者たちはさらにもう１歩踏み込んだ研究を始める

龍脈より気を抽出し、人工的に黄龍を作りだそうという、自然の摂理に反する実験
実験の内容は龍脈に届くほどの大きな穴を大地に開け、専用の機械を用い大地に影響が出ないように
少しずつ、少しずつ、龍脈から溢れた気を溜めていくという気の遠くなるような実験
更に機械は大規模な物でなくてはいけない、科学とは対極に位置する気という物を扱うというのも問題だった
まず龍脈からエネルギーを抽出する塔を研究者達は建てた
しかしそれだけでは駄目だった、エネルギーを循環させる設備、膨大な量のエネルギーを溜め込んで置ける設備
カモフラージュとして傍目からはただの大きな施設にしか見えぬように彼らはそれを作り続けていった

だが１人だけ人工的に黄龍を作るということに内心反対していた研究者がいた
膨大な量の自然エネルギーの塊、確かに上手くいけばとんでもない利益をもたらしあらゆるエネルギー問題を解決する鍵になるだろう
だが強すぎる力は諸刃の刃、成功したところで扱えなければ何が起こるかは予想もつかない
…結局途中で研究は中止になる、しかし施設は配置そのものが存在しているだけで徐々に龍脈からエネルギーを抽出する
完全に取り壊されない限りは仮説が正しいとするならいつか黄龍は完成してしまう
黄龍自体はエネルギーの塊であるからそれ単品では問題ではない、だがもし器が現れ、黄龍を受け入れてしまったら…

だから反対していた研究者は最後に守人としてきのこさんを作った
あらゆるパターンを想定し、どんな力にも存在する方向性、意志を封じることが出来る存在として
その研究者の名前は&quot;天鈴楓&quot;、通称でこたん
彼女の予測は当たり、誕生した黄龍は狂った力、器と結びつけば全ての命を滅ぼそうとする
約束を守り、きのこさんは１００年一人で守り続けた、暗い地の底で…

黙って話を聞いていた俺と高橋
信じないわけにはいかないだろう、あれだけのことが目の前であって
高橋も１度死んで息を吹き返してるんだ
話し終えたきのこさんに俺は聞いた

「…それで、これからどうするの？」

きのこさんは俯き少し考えるような仕草をする
しばらくすると顔を上げて言った

「…またここで…過ごすよ…」
「そんなの駄目だ！！」

思わず叫んでしまった
きのこさんはびっくりした目でこちらを見る
高橋は頬をかきながら冷静に俺を見ていた

「…１００年…ずっとこんな場所に１人でいて…
　ずっと守ってきた…それがどんなに辛いことだったのか俺たちには想像もつかない…！
　黄龍はもういない、ここに留まる必要なんてないだろ？俺たちと一緒に行こう。」
「…」

呆然として俺を見るきのこさん
何でこんなこと行ったのかわからない
ただ、１００年もこんな場所に１人でいた彼女が可哀想に思ったのかもしれない
同時に、俺が黄龍を目覚めさせてしまったという負い目もあったのかもしれない
とにかく俺はきのこさんを外に連れ出そうとした
だけどきのこさんは静かに首を振った

「…黄龍はいなくなったわけじゃない
　ただ意志を封じただけ、方向性を失った力はバラバラに砕けて散った
　もしかしたらまたいつか復活する可能性もあるから…だから離れるわけには…」
「…復活」

その言葉は俺に重くのしかかる
確かに、あの力を復活させるわけにはいかないだろう
だけど、それじゃ永遠に…きのこさんはこの暗い闇の中で…？
長い沈黙、そのあとゆっくりと俺は言った

「…なら復活の可能性を俺が全て潰してやる」
「え…？」
「…俺はきっと許されないことをしたんだろうね…
　眠っていたものを起こしてしまっただけじゃなく…永遠に続く恐怖まで呼び起こしてしまった…
　でも君に助けられたから…俺は君を助けたい…！
　決して許されなくても…！それでも俺は…！」
「…」

その後、とりあえずきのこさんは了承してくれた
何かあったらすぐに戻るという条件付きで
住む場所は高橋と人に見つからないサボり場所を探していて忍び込んだ時計塔の上にある部屋がいいんじゃないかということになった
どうやら人間とは違うらしくきのこさんは何も食べなくても別に平気なようだった
そのうち堕人が現れるようになる
きのこさんに聞くと強く光を放つ黄龍の力に呼び寄せられて出て来るんだろうと言うことだった
堕人も気にかかるがきのこさんも日に日に体調が悪くなって行った
でこたんという研究者の想定を越えていたのかどうか知らないが、封印のせいなのは明らかだった
何日も眠れぬ夜を過ごし、堕人を殲滅しながら解決策を高橋と話し合った
黄龍を完全に封じ込め、さらに堕人まで封じ込めるには…

そしてある日、思いついた
要するに学園に散った７つの黄龍の欠片が光を放っている
それに引き寄せられるように堕人が現れる、つまりバランスが取られようとしているのだ
ならば意図的に堕人と同じ陰に属する気を増大させれば、それでバランスが取られ
堕人の出現は食い止めることも出来る
さらに７つの欠片がある場所に強い陰の気を配置すればそこにある黄龍の力の欠片はバランスが取れ安定する
楔とは、堕人を封じる存在ではない
黄龍の欠片を封じるための存在、堕人の封印は本来二の次なのだ
完全にピースがはまったような気がした
しかしそれはつまり…

「…だけどそんなことをしたら」

高橋が不安そうに言う
自分でもどうなるかはわかってる
それでもこれしか方法が無い、苦渋の選択だが、事態は一刻を争う

「学園の平和と、世界中全ての命…
　どちらを取れと言われたら俺は…情けないな…
　１を捨て１０を得るか、１０を捨て１を得るか、捨てなきゃいけない１なら俺が補うって決めてるのにな…」
「ゆき兄…」

高橋が俺の肩に手を置いた

「お前は、間違っては無いさ」
「…そうだと、いいけどな…
　…どうしようもないだけさ…」
「この学園に、新たな秩序を作ろう」
「…傷つく人が、出てもか」
「…やるせないな」

結局、俺たちはその作戦を実行した
全てを話すわけにはいかない、だから何も知らない人間にまず力を与える
最初の人間は割りと無作為に選んだ
いや、たまたま廊下ですれ違った時、その輝きの無い瞳に資質を見たからだ
彼には最低限のことだけを伝えた、堕人を倒せ、きのこさんを守れ
そして俺の代わりに生徒会長として一般生徒を放課後は学園から遠ざけろ
俺は、彼に力を与えた、高橋と同じように
とても強い死の力と、他人の力を覚醒させる能力
俺と少し違うのは、俺は力を与える、俺が望めばどんな力でも与えてやれる
彼の能力は元々ある力を覚醒させる、トラウマや陰に近い思想から力を実体化させる
彼…白やんは全てを承諾した

実際白やんはとてつもなく有用だった
最初こそ指示は与えていたがそのうち完全に俺のやることは無くなった
七不思議の噂を流布し、そこになるべく人が近づかないようにしたぐらいだ
最も生徒会がたまに暴走を始めたりするのはアレだったが
そのぐらいの犠牲は仕方ないと見てみぬふり、だった
それがまた、どうしても自分の心を掻き乱していく
友達と笑っても、心のどこかで湧く罪悪感
いつしか、俺は段々と皆と距離を置くようになっていった
それでよかった、何も知らないふりをして笑うほうがよっぽど辛かったから
夏がきて、秋がきて、冬がきて、また春、夏、秋…

堕人も滅多に現れず、黄龍の封印も安定している
これでいいのかもしれないと思っていた時に、たまゆらが転校してくる
なんでかわからないが、近い物を感じた俺は警戒を緩めた
その理由はしげるとの戦いで理解した
たまゆらも、黄龍の器だった…ただし俺とは対極に位置する陽の黄龍の器
本当なら適当にしげるをあしらってたまゆらには２度と生徒会、七不思議に関わるなと念を押そうとしたのだが…
どうすればいいのか、俺は迷った
生徒会が消えれば、堕人が、そして黄龍が復活する、それだけは避けないといけない
何度か、たまゆらを手にかけようとした、でも出来なかった
迷っているうちに、何度もたまゆらを助けることになる
そのうちに傷つき倒れても、何度でも立ち向かっていくたまゆらに、誰かの面影を見た
その瞬間、俺はたまゆらに賭けてみようと思った
裏から色々手を尽くした、鎌を失った白やんのために新しい鎌を生み出してやったり
黒い巨人に１撃を加えてやったり…
だけど、もしもたまゆらが黄龍と融合すれば…たまゆらはその手で世界を滅ぼす…
たまゆらがそれに耐えられるわけがない
…その時は、俺が…始まりが俺ならば、最後も俺で終わらすしかない…
１番辛い場所を、たまゆらに丸投げなんて…



.    </description>
    <dc:date>2009-11-21T01:29:08+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/125.html">
    <title>邪眼学園黄龍譚１９限目【真実にて猛る最強の力】後編</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/125.html</link>
    <description>
      *邪眼学園黄龍譚１９時限目【真実にて猛る最強の力】

11/18（土）　深夜

白やんのメモに導かれ、廃屋街へとやってきた
どうやらここから謎の通路に侵入できるらしい
倒壊した家と家の隙間、メモを確認するとやはりここ
地面を注意深く調べる、するとどうも感触がおかしい一角を発見した
土ではない、なんだか硬すぎる
表面の土を払っていくと鉄板のようなものが現れた
近くの廃材をひっかけてテコのように鉄板を引き上げる
鉄板の下には地下へと向かう続く階段、その先はまるで深淵に続いているかのよう
暗闇をポツリポツリと照らす壁に設置された蝋燭
…蝋燭に火がついているってことは、誰かがこの先に？

白やんから渡された紙を握りつぶす
ゆき兄、やはりここにいるのか…？
漂ってくる冷たい空気とカビたような匂い
それが余計に心中の不安を煽って行く
誰か呼んでくる…？いや、全員堕人との戦いの傷で消耗しきっている
３日立ったといえ完全に回復しているとは言えない、何が起こるか分からないこの先に連れていくことはできない
黄龍の力を受けて回復している俺じゃないと…
深呼吸して気持ちを落ち着ける
そして、俺は深淵へと続く階段へと踏み出した
その先に在るであろう、真実を目指して

??/??

瓦礫と化した広場を背に、俺は通路を進み始めた
もう戻ることも出来ない、ただ先へ進むしかない
壁画に囲まれた、人１人がなんとかすんなり進める程の狭くるしい通路
ふと、壁画に目をやる

「…これは、虎？」

反対側の壁画に目をやる
そこには炎を纏ったような鳥のような絵
さらに歩を進めると、巨大な亀のような絵
そして身体を捻っている龍の壁画
間違いない、これは四神の絵だ
だがなぜ四神の絵が書かれているのか？
黄龍鉄甲と関係があるのか…いや、無いほうがおかしいだろう
…今考えるのはよそう、この先に行けば全てがはっきりするはずだ
俺はまた先へと進みだした
長い、長い通路、まるで永遠に続いているかのような
もしこの先が行き止まりだったら？などという縁起でも無い想像をしてしまう
胸を埋め尽くす、どうしようもない不快感
それらを必死に抑え込み、出来るだけ何も考えないように必死に先へ先へと歩みを進める
どれだけ歩いたのか、何時間？何十分？それとも数分？
俺の目の前に扉が現れた
その扉には朱雀、白虎、青龍、玄武が彫られていた
まるでこの先に全ての答えがあることを示しているように
ゆっくりと扉に手をかけて、力を込める
ギィ…と音が響き、開いた扉の先から灯りが漏れてくる
ガタン、と一層大きな音を響かせ、完全に扉が開いた

「すっ…げぇ…」

それしか言葉が出なかった
その部屋は天井や壁に幾つもの松明が設けられ
周囲の壁は炎によって出来た灯りを煌きと共に反射する
黄金で彩られた壁、天井、床、幻想的な光景
長方形のように部屋は奥へと続いていた
煌きの中をゆっくりと奥へと進んでいく、まるで別世界に迷い込んでしまったように現実感が希薄だ
やがて奥に何かが見えた
それは、黄金で作られた、龍の彫像
部屋の最奥の壁を背に鎮座する、まるで神像
その足下に作られた祭壇のような場所、そこに、&quot;彼&quot;が座っていた
いつものように、お気に入りのジュースを飲みながら

「ゆき兄ッ…！」
「来るな」

走り出そうとした俺をゆき兄が制止した
その声は、今まで聞いたことも無いような、魂すらも凍てつかせるような冷たい声
驚きからか、それとも声に込められた力からか
何かはわからないが、俺の身体は動きを止めた
グシャリと、ゆき兄はコーラの缶を握りつぶした
そして小さく喋りだす

「俺とお前が出会って、まだたったの３ヶ月だ
　…長いようで短い時間、なのにこの３ヶ月でいろんなことがあった」

俺は黙ってゆき兄の話を聞いていた
そうするしか出来なかった、ゆき兄から発せられる雰囲気が俺にそうせざるを得ないという状況に陥らせていた

「俺は忠告したよな、校則は守れよって…
　…本当ならお前の横槍がなければ全てはいずれ解決するはずだった」

何を言って…

「…確かに、ここまでのお前の活躍は素晴らしかった
　堕人を殲滅し、学園の闇を全て払ったかには見えた
　…だけど覚えているだろ？与えられた情報だけを妄信してしまった結果、堕人の枷を完全に外してしまったことを
　同じさ、黄龍鉄甲とは何なのか、なぜ堕人が現れるようになったのか
　疑問に思いながらも自ら知ろうとはせずに戦い続けた
　お前は、また与えられた情報以上のことを知ろうとはしなかったんだ」

記憶に残るどこかで聞いた言葉…
『お前がやっていたことは目的とはまるで逆
　与えられた情報だけを盲信してしまった結果』
どこで、この言葉を、俺は聞いた？
違う、覚えてる、覚えてるけど、認めたくないだけだ…
認めてしまえば、俺は…

「…黄龍とは、超自然エネルギーの集合体
　本来言葉で表すことは不可能だが便宜上&quot;黄龍&quot;と称されているだけに過ぎない
　そして黄龍の器とは膨大な量の超自然エネルギーを先天的に身に宿せる者のことを言う
　世の理が乱れた時、黄龍は現れ、導かれた器は黄龍を宿し、世の理を正す…
　黄龍鉄甲は器に与えられる、黄龍の力を引き出すための媒介としての役割を果たす」

違う、違う、違う…！
嘘だ、嘘だ、嘘に決まってる！
これじゃまるで、まるでゆき兄が…！！！

「聞いたんだろ？
　白やんから、生徒会のこと」
「！！」

そう、聞かされた
生徒会室で、俺は…


11/18（土）　午後

手から、コーヒーカップが落ちて
陶器の割れる音、絨毯に広がる黒い染み

「今、何て言った…？」
「…生徒会長、書記、会計
　１つだけ足りない役職がある…生徒副会長…」
「そいつが、まだ残ってるっていうのか！？」

語尾を荒げ、白やんに問う
白やんは静かに首を横に振った

「違うんだ、たまゆら
　…俺の本当の役職は邪眼学園生徒&quot;副会長&quot;」
「ってことは…」
「…本当の生徒会長が誰かは俺も知らない
　彼はいつも顔を隠して、マントで全身を覆っていたから…
　あの人は俺に死の力と、他者の能力を覚醒させる力を授けて
　生徒会を作り、そして堕人から学園を、きのこさんを守れと…
　あとはたまに、指令が来たり、接触して指示をくれたり…
　…隠していてすまなかった…だけど言うわけにはいかなかったんだ…」

信じられない、だけど、白やんの顔は真剣そのもので
嘘をついてるとも思えない
俺は、信じられなくても信じるしかなかった
それでも一縷の望みを賭け、もう１度、聞きなおした

「…冗談、だろ？」
「いや…全て本当だ…」
「は、ははは…」


??/??

白やんから聞いたこと
そして全てを知れるというこの場所
そこにいたゆき兄、これらから導き出せるのは…

「それじゃあ…じゃあ…」

聞きたくは無い
だけど、聞くしかなかった
俺の、望んだ答えが返ってくることだけを願う
でも、返ってきたのは、あまりにも無情な

「…俺が、邪眼学園生徒会長だ」

なん、だよ、それ…
それじゃあ、今まで全部、知ってたのかよ
知ってて、ずっと、遊んでいたのか？
一緒に戦ったのも、死にそうになってたりしたのも、全部、演技だったとでも言うのかよ
認めない、そんなの、認めない…！！
認める、もんかッ…！！！

「…世の理を正す、と言ったが
　黄龍を宿した器に与えられるのは全てを支配するほどの圧倒的な力だ
　……俺はそれがどうしても欲しくてな
　お前がいなければ今頃俺の物になっているはずだったんだが…」
「…ゆき、兄ィィィ…！！！」
「見ろよ」

ゆき兄が背後から何かを取り出す
それは、とても見覚えがある形

「黒い、黄龍鉄甲…？」
「…俺も器なんだよ、黄龍のな、お前と違う点といえば俺は陰に属する黄龍の器…
　ただ器として目覚めた時点じゃ黄龍を宿しきるのは不可能でな…
　力を蓄えつつそのうち宿してやろうとしたが…お前が来やがった
　器が２つ在っては黄龍の力が２分しちまう
　だから古より器が２人現れた時はそいつらは戦う運命なんだよ」
「それって…」

ゆき兄が祭壇から飛び降りた
その手に、黒い黄龍鉄甲を装着して

「俺らも戦わなくちゃいけないってことだ」

ゆき兄の言葉が、胸に突き刺さる
戦う、ゆき兄と？今まで共に戦ってきたのに？でもそれは全部嘘？俺はずっと騙されていた？
わからない、わからないんだ…信じたい、けど…！！！
俺は…俺ッ…はッ…！！！！
深い闇に落ちていくような感覚、何を信じるべきなのかもうわからない
でもその時、頭に浮かんだ言葉
『与えられた情報だけを盲信してしまった結果』
『よく考えろ、そして決めろ、歩むべき道を…』
そうだ、まだ、全てを信じるには早すぎる
与えられた情報だけを妄信するな、考えろ、今のゆき兄の話だけじゃ納得いかないところがある
語られる言葉だけが真実じゃない、戦うことで見える真実だって存在する

「…違う」
「何？」
「ゆき兄は、まだ何か隠してる…！
　そうじゃなきゃ今までのことに説明がつかない！！」
「全部フェイクだよ…全部な」
「嘘だァッ！！！！」

声を荒げ、全身全霊を以て否定の叫び声
全身がビリビリと痺れるような叫び声の余波
ゆき兄は何も言わず
静かに、黒い黄龍鉄甲を構えた

「嘘だと思うなら、身体に分からせてやる
　真実の痛みって奴をな」

俺もゆっくりと黄龍鉄甲を構える
どちらも動かずに、ただ一瞬たりとも目を離さずに相手を見続ける

「…力づくでも…！本当のことを喋ってもらう！！！」
「やってみろ」
「目覚めろッ！！白虎ォォォォォォォッ！！！！」

白虎の力を発動させると同時にゆき兄へと向かう
白き虎の爪がゆき兄へと振りぬかれる
その爪が、受け止められる

「なッ…！？」

振り解けず、それがブレーキとなり、不自然に足が地から離れ宙へと浮く
背中に、衝撃、同時に手を離され、そのまま正面の壁と叩きつけられる
白虎の力が消えていく…何が、起こった…！？
クラクラする頭を抑えながら壁から離れもう１度ゆき兄に向き直る
何も無かったかのように、ゆき兄はただ佇んでいる

「圧倒的攻撃力と速度で敵を翻弄する白虎の力…
　だがその分防御力は犠牲になる
　そして最大の武器である速度が逆に動きを読まれると最大の弱点になる」

ただ淡々と説明するゆき兄
クソッ…！ゆき兄こんなに強かったのか…！？

「目覚めろッ！朱雀ゥゥゥゥゥッ！！！」

発動と同時に天井近くまで上昇する
ゆき兄はただこちらをじっと見つめてる
１撃で決めてやれば…！！
羽根から炎が噴出し、灼熱の空気を生み出す

「朱雀爆炎大焔帝！！！」

炎が右腕に収束する
同時に翼から放たれた爆炎が圧倒的な加速力を生み出す
右腕を突き出し、炎のエネルギーを全て叩き込む！！
一直線に向かう炎の矢、それを目の当たりにしてもゆき兄は眉一つ動かさない
それが逆に、ひどく不気味に感じた

「くだらねぇ」

小さくゆき兄が呟いた
同時に最早寸前まで迫っていた俺の拳をゆき兄の黄龍鉄甲が
とても自然に、まるで虫を追い払うかのようにとても軽く、弾いた
拳がズレ、力の方向がズレるそして、視界には壁
状況を理解する暇すら与えてくれず、全身を襲う衝撃と熱、爆風
大きな穴が開いた壁、全身を襲う激痛、朱雀の力が…消える…
ぼやける頭にゆき兄の声が響く

「使いどころをよく考えろ
　爆発的推進力ってある意味諸刃の剣だ
　こんな狭い場所で使えば少し力の方向をズラされただけで今のお前みたいに容易く自爆に繋がる」
「ク、ソッ…！！！」

立ち上がるとパラパラと砕けた石が地面に落ちる
全身の皮膚が引きつれるようでとても動きにくい
倒れそうになりながらも必死に立ち上がる
それを見たゆき兄はいつものように、めんどくさそうに言った

「…次は？」
「…目覚めろッ！！玄武ゥゥゥゥ！！！」

玄武の力が発動すると共に身体の痛みが一気に引いていく
これで行ける！そう思った時、目の前に、黒い塊
脳を揺さぶる鋼鉄の拳
身体に叩き込まれる直接骨を砕くような連撃
内臓すらも突き破るような、研ぎ澄まされた１撃
玄武の防御能力と超回復能力すらも上回る殺戮の連続攻撃
何も出来ない、まさしくそんな状況でただ攻撃に身をさらし続けるしか出来ない
やがて、玄武の力が途絶える
そして、吹っ飛んでいく世界、違う、飛んでいくのは俺
天井、激突、落下、床、また激突…

「か、はッ…！？」

攻撃が、まるで見えない
頭に１撃受けて意識が飛びそうになったとはいえ…そんな…！

「超回復能力を持つ相手を倒すには１撃で即死させるか
　回復能力を上回る程の勢いで攻撃し続けるか、そのどちらかだ」
「クッ…！目覚めろ青龍ゥゥゥゥゥ！！！」

黄龍鉄甲が分離しビットがゆき兄へと向かって行く
なんとか上半身を起こす
放たれる無数の光弾、ゆき兄がこちらに向かって走り出した
だが距離は充分にある、この距離ならビットの光弾を当てる余地は充分にある！！
左に右に高速で動き、ゆき兄へと光弾を発射するビット
着弾と同時に巻き起こる小さな爆発すら避け、ゆき兄はひたすら俺へと向かってくる
だが光弾の１つが、確実な命中するラインへと乗った
背後からの１撃、避けることは不可能、やったか！？
だがゆき兄は走りながら身体を回転させ、振り向きざまに光弾を黒い黄龍鉄甲で弾き飛ばした
そしてそのまま何も無かったかのように俺へと向かってくる

「避けられるのは避けて
　どうしても当たるものは弾けばいい、普通だろ？」

普通、確かにそうなのだが
無数に乱射される光弾の中から自分に当たる物だけを見切るなんて…
しかも背後だぞ、あり得ない…！
充分だと思った距離は、もう後僅かしかなかった
迫り来る、黒き鉄槌、湧き上がる、恐怖

「うわぁあああああああああ！！！」

一際大きい光弾が、ゆき兄の背後から発射された
それは必死に自分を守ろうと放った光弾
ゆき兄が、飛んだ、いや、舞った
爪先をかする光弾、そして光弾を過ぎ去るより早く、黒い黄龍鉄甲が光弾へと叩きつけられた
光弾は軌道を変え、向かう先は、俺
視界が青白い光に染まっていく、そして…全身を焼け焦がすような痛みと、鼓膜を突き破るような爆音…

「自動追尾で発射するってのは
　ま、こういうことも起こるんだぜ？」
「うっぐっ…」

強すぎる…なんだよ…この力、こんなの…反則じゃないか…
圧倒的すぎる…

「舐めんなよ、たまゆら
　俺も黄龍の器だぜ？そしてお前より歴は長いんだ
　例えお前が全力で来たとしても俺は倒せねぇよ」

全力で、来たとしてもか
そうだ…まだ、全力じゃ…ない…！！
まだ残ってる…まだ可能性はある！
俺は立ち上がる、ポタ、ポタと足元で血が跳ねる

「目覚めろッ――！黄龍ッ！！！！」
「来るか…黄龍の力…」
「うぉぉぉぉおおおおおおお！！！！」

金色の光の爆散と同時にゆき兄へと突っ込む
金属音が響き渡り、俺の拳とゆき兄の黒い黄龍鉄甲がぶつかり会う
弾き飛…ばない…！？互角なのか…！？
何も変化していない黄龍鉄甲で黄龍と渡り合えるっていうのかよ！？

「…やっぱり」

ゆき兄が呟いた

「何だよ！」
「お前は俺には勝てないわ」
「どういう――！？」

右腕が、弾き飛ばされた
一気に押し込まれた力に耐え切れず、真上へと弾き飛ぶ
ゆき兄の顔は無表情、ただ無意識に何かを為すように
その黒い黄龍鉄甲が、視界を遮る
顎を救い上げるように、下から上へと
足が地面から離れ、宙へと浮き上がる浮遊感
視界が真っ白になり、一瞬の間を置いて床へと落ちる
黄龍の力でも、駄目、なのか…！？そんなのって…！

「…やはり駄目か」
「な、ん…」

声は、声にならない
かすれるような途切れ途切れの言葉しか出てこない
立ち上がろうとしたが、足に力が入らない
必死に立ち上がろうとして転倒するを繰り返す俺を見ながらゆき兄が言った

「…俺の黄龍鉄甲にはお前みたいに沢山の変形は無いんだ
　俺の変形は一つしかない…」
「えッ…！？」
「猛り狂え、黄龍――」

黒い風、いや、衝撃波が周囲を揺らす
痺れるような空気、金色ではなく、黒き光を放つゆき兄の黄龍の鎧
あまりにも美しい黒き光は、俺と同じように一種の神々しさを併せ持っていた
しかし違うのは、放つ光の圧倒的な量の差
淡く周囲を照らす俺の金色の光とは違い、周囲を飲み込むかのように眩い黒い光
本能が告げる、絶対的な力の差
同じ力を扱うものだからこそ分かる、決して埋めることが出来ない差
その目が、赤く輝き、絶対的な黒の中で自らの存在を誇示する
これが、ゆき兄の黄龍鉄甲…

「アァァァァ――…」

それは、唸り声なのか、それともただの呼気の振動なのか
その声に触れる者全てを一片の欠片も残さず焼き尽くすと錯覚するような絶大なるエネルギー
動けない、白やんの時のようにイメージに縛られて動けないんじゃない
爆発的に放射される形の無いエネルギーが波動となり&quot;物理的&quot;に身体を押えつける
そんなことありえるはずがない、だけど現に俺は動けず、叩きつけられるようなエネルギーを感じていた
まるで床に磔にされたように、指の１本すら思い通りにならない
猛り狂う、俺と同じ、だけど圧倒的な力、それがゆっくりと近づいてくる
心臓の鼓動が、とても大きい、呼吸する音が頭蓋骨に響く
とても勝てる気がしない、いや、そんな次元の話じゃない、力の桁が違いすぎる
逃げるか？逃げ道なんてないだろう？じゃあどうすればいいんだよ！！
１人で自問し、１人でパニクって…俺は何がしたいんだ…！
勝たなきゃいけないのに…勝たなきゃ…！！

「ぐっ…おぉぉぉおお…！」

右腕に渾身の力を込める
押えつけてくる力に抵抗し、ガクガクと震えながら
掌をゆき兄へと向ける、チャンスは今しかない
油断してる今、全エネルギーを叩き込むしか方法が思いつかない
それでどうなるかはわからない、それでも地に膝をつけるぐらいは出来るかもしれない
ノスフェラトゥさえ圧倒した、黄龍の力を…！叩き込む！！

「黄龍烈破滅閃双撃破ァァァ――――――！！！！」

右手の掌から放たれた金色の光
ノスフェラトゥの動きすら封じ、撃ち倒した爆発的エネルギー
それがゆき兄へと一直線に迫る
黒い炎が弾け、金色の飛沫が散る
無表情で、右手を突き出したゆき兄、そこに命中した金色の究極の破邪の力
力は、そこでまるで壁にぶつかったかのように上下左右へと爆散する
ゆき兄は届かない、片手で俺の全てのエネルギーを受け止めている
勝て、ない、何をしても、俺は、ゆき兄に、勝てない
想像、予想、未来、そのどれでもない、それらのどれよりも確実な事実
心が絶望に閉ざされていく、戦う気力は削がれて行く
そんな俺の心に呼応するかのように金色の光のエネルギーの放出が止まる
右腕が、落下し、ガツンと音を立てて床に転がった
もう力が、入らない…

「…それじゃあな、たまゆら
　信じないかもしれないけどな、お前と友達になれてよかったと思ってるよ
　器とか、そんなものが無ければ…きっと俺は…」
「ゆき兄ッ…！俺…！」
「だが、これが現実だ、捻じ曲げられることは決して出来ない真実
　可能性という無数の世界から選ばれたたった一つの世界
　…どんなに残酷で、無情だとしても決して変えられはしない！！」

ゆき兄の身体から放たれていた黒い光が収束した
来る、俺と同じ、最強の力
最も威力は俺の何倍、いや、数十倍、数百倍？
だけどすぐに考えるだけ無駄だと悟った、どのみち、負ける

「お別れだ、たまゆら
　…今まで、ありがとう」

ありがとう？何で今更そんなこと言うんだよ…
意味分からないよ、分からない、けど…
俺は知ってるんだぜ？
…冷たいフリして、他人の痛みなんか知らないフリして、やってられかってフリして
でも、それが全部嘘で、本当は、誰よりも…！
それすらも嘘だとは、俺は絶対に思えない
この３ヶ月で、沢山の君を見た、共に戦い、共に笑った…！
偽りなんかじゃない、確かな暖かさを俺は感じた、だから…だから…！
力の入らなかった拳に暖かさを感じた、痛いほどに強く握った拳が紡ぎだす覚醒の力

「…黄龍冥撃夢幻黒蓮破ァァァ――――！！！」

黒い、全てを覆い尽くそうとする、破壊の力
部屋すらも飲み込んでしまいそうな極大エネルギー
もしこれが、君がずっと、１人で抱え込んできたものと言うなら…！！！
この闇から君を救い出す！！！今までと同じように！必ずゆき兄を救う！！
絶対の、絶対の、絶対にだッ！！！！

「究極黄龍破邪滅閃双撃龍波ァァァ――――――！！！」
「なにッ！？」

俺の身体から放たれた金色の光が黒い炎と激突した
周囲に金と黒と撒き散らし、拮抗する２つの波動
荒ぶる２つのエネルギーの激突が大気を奮わせ衝撃波を生み出す
松明が倒れ炎が消える、それでも放たれる２つのエネルギーの輝きが部屋を照らし続ける
夢か現か、ぶつかり合う２つの力の狭間に揺れた景色

それは倒れている人の中で、何かに抗い続ける、ゆき兄の姿
自らの足に剣を突き立て、苦悶の表情を浮かべながらも覚悟を持ったその瞳

『器が我に逆らうかァァアアアアア！！』
「俺たちの世界は俺たちが作るんだ！！
　お前の出る幕なんか無い！消えろォォォオオオオオ！！！」
『消えろ、か、ハハハハハッ、無様だな！
　人ごときが森羅万象より産み落とされた我を消滅させることなど出来ぬ！』
「…クッソォォォオオオ！！」

景色が、変わる
血まみれの少女を抱き、自らの血に染まり
涙を零し続ける、ゆき兄

「ちくしょ…おっ…なんで…こんな…！！
　俺はッ…！俺はぁぁああああああああああ！！！
　あぁあああああああああああああああああああああああああああああああ！！」

絶叫、込められた痛いほど伝わる悲痛な想い
断片的な記憶から伝わる過去の事実
ゆき兄、何があったんだ…どうして…話してくれなかったんだ…！
俺が弱いから？もっと、もっと強ければ、話してくれたのか？
強く、なるから、俺はもう誰にも負けないから…！負けないから！！！

「うぉぉぉおおおおおおおおおおおッ！！！」

金色の光が更に増大する
それはまさに闇を貫く流星

「尽きることなく無尽蔵にエネルギーを増大させていく…！
　これがッ…たまゆらの強さ…！！だけど…」

ゆき兄の黒い炎が爆散し、一気に収束する
俺の金色の光が徐々に押され出す、いや、飲み込まれていく
これでもまだ…足りないのか！？

「俺には届かない」

黒い炎が金色の光を貫いた
そしてそのまま黄龍の鎧すらも…
黄龍の鎧すらも貫く爆発的なエネルギーが全身を&quot;噛み砕く&quot;
５体が引き裂け、爪の先まで砕け散るような感覚
鼻腔を突く、肉が焼けるような匂い
意識に&quot;穴&quot;が開く、泡が弾けて消えるように&quot;穴&quot;はどんどん増えて…
全てが闇に落ちる寸前に聞こえた、強く、悲しい声

「…お前には、黄龍の力と宿命は重過ぎる…」

意味を問おうとしたが
だけど、もう俺の口から言葉は出なかった
最後に見たのは、悲しそうにうつむく、ゆき兄の顔



１９時限目　- 真実にて猛る最強の力 -
終



.    </description>
    <dc:date>2009-11-09T01:35:36+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/124.html">
    <title>邪眼学園黄龍譚１９限目【真実にて猛る最強の力】前編</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/124.html</link>
    <description>
      *邪眼学園黄龍譚１９限目【真実にて猛る最強の力】前編

??/??

暗い通路、まるで地の底へと続くような
埃っぽく冷たい空気を蓄えた石の通路
僅かな蝋燭の灯りだけが先を照らしている
足音が反響し、ただ闇へと向かう俺の心をざわつかせる
やがて俺は少し開けた場所へと辿り着いた
広場、その真ん中に立っている男

「…来た、か」
「高橋…なんでここに…」
「戻る気は？」

俺は静かに首を横に振った
暗く、冷たい、広場
その真ん中で後方に在る扉を守るように高橋が、構えた

「…誰１人この先に行かせるわけにはいかない
　例え相手でお前であろうと」
「聞かせてくれ、この先には何があるんだ？
　お前がそうまで守る物って…」
「…この先には…全ての始まり…
　そしてあの日、沢山の罪が生まれた場所…」
「…」
「…堕人は消えた…お前の活躍によってな
　これ以上足を踏み入れることはただの蛇足だ…
　それでもお前は、この先に進むと？」

高橋の目に宿る確かな、覚悟
暗い広場の中でもわかる
魂の輝きを宿した、悲壮なまでの覚悟
何者にも折ることが出来ない意志の力
だけど、その覚悟を持ってるのは、高橋だけじゃない

「…俺はただ…知りたいんだ…
　全ての始まりと言われるそれが何なのかを…」
「真実を暴くことで幸せになれるとは限らない
　知ってしまえば更なる痛みと生み出すだけかもしれない」
「…そうだな…
　そんなこと…もう痛いほど…味わってきたよ…
　でも、それでも、退き下がるわけにはいかないんだ
　…どうしてもここを通さないと言うなら…
　高橋、お前を…倒す」

俺は黄龍鉄甲を構えた
それを見た高橋はため息をついた

「…風哭、いや、風太だったか…」
「！？」
「あいつにトドメを刺したのは俺だ
　その事実は受け入れよう…
　だから、本気で来い、俺も本気でお前を止める」

高橋の周囲の空気が凍りついたかのように一変する
その身体が何倍も大きくみえる
全身に突き刺さるような、殺気
…本気なんだ、高橋は
本気で俺を殺してでも止めるつもりなんだ…
身体の中で何かが熱く、滾る
交錯する視線、ぶつかり合う殺気と殺気
意志と意志、どちらが上回るのか
答えを見つけようと、高橋と俺は互いに互いの命へと走り出した



11/18（土）　午後

保健室のベッドの上で眠り続けるピュア
倒れてからずっと眠りっぱなし、聞きたいことは山ほどあるのに聞きだす術は無い
微かに語られた断片は時計塔の地下、その言葉
６０年前で俺が見た時計塔の地下にあった巨大な機械…
そして現代の地下にある大穴…
ピュアは、何を知っているんだろうか
そして「止めなくちゃ」その言葉の意味は…
…いや、俺が本当に知りたいのはそんなことじゃない
眠り続けるピュアの身体を掴む、シーツにしわが出来る

「…お前が…ノスフェラトゥだったのか…？
　それとも…何かの間違いだったのか？」

それだけが、ただ知りたい
なぁ、目を開けてくれよ、それで笑顔で「違う」と言ってくれよ…
お願いだから、お願い…だから…
保健室のドアが開く音、足音は近づいてくる
振り向かずに俺はシーツを強く掴み、頭をうずめていた
肩に置かれる手

「…たまゆら」

顔をあげ振り向くとそこにいたのは白やん
心配そうな顔、その表情は以前の白やんからは決して想像することは出来なかった

「気になるのはわかる
　だけど少しは休んだほうがいい」
「…そう、だね」

小さく返事をして俺はまたピュアのほうを向いた
静かな寝息を立て続け、その口は何も語ることは無い
後ろから白やんのため息が聞こえた

「…少し、話したいことがあるんだ」
「何？」

振り返らずに俺は聞き返した

「…ここじゃ話せない
　少し、来てくれないか？」
「…わかった」

俺は立ち上がり、白やんと共に保健室から出た
廊下を歩き、連れて行かれたのは生徒会室。
部屋に入ると白やんは椅子を出した、机の上にコーヒーが置かれた
一口ほど口をつけ、俺は白やんに聞いた

「それで、話したいことって…？」
「…」

白やんが窓の外を見る
太陽の光に薄く照らされるその横顔
ゆっくりと、白やんは喋り始めた
それは全てを覆すかのような、真実
手から、コーヒーカップが落ちて
陶器の割れる音、絨毯に広がる黒い染み

「…冗談、だろ？」
「いや…全て本当だ…」
「は、ははは…」

なぜか、乾いた笑いが零れ落ちた
呆然とする俺に白やんは続けた

「もしも、全てを知りたいと言うなら…」
「…？」
「…少し待て」

そう言うと白やんは机から紙とペンを取り出して
何かを書き始めた
地図、のようなものか…？

「ふむ」

書き終えたのか白やんはその紙を俺に渡してきた
やはり、地図、学園の…？

「あれ？」

見ているとどうもおかしい
あるはずのない通路が書かれている
その通路の先には大きな部屋が書かれている
こんな通路と部屋ってあったかな…？

「そこに行け」
「え？」
「…ただ、そこで何が起こるか、俺には予測不可能だ」
「…」

それだけ言うと白やんは黙ってしまった
紙をポケットに入れると俺も無言のまま生徒会室から出る
…この場所に、全ての真実が？
とりあえず一旦寮に帰ることにする
寮の前まで来ると見覚えのある顔が立っていた

「たまゆら君…」
「リカちゃん…ど、どうしたの？」

不安そうな顔のリカ
思わず何があったのかを聞いた

「…ゆき兄、どこ行ったんだろうと思って
　焼肉パーティーのときからいなくなって連絡もつかないし…」
「…」

確かに、ゆき兄はあれ以来どこかに消えてしまった
だけどノスフェラトゥとの戦いの時、黄龍を発動させた時にゆき兄の声は聞こえた
どこにいるのかはわからないけど、少なくとも死んでるというわけじゃあない

「…大丈夫だと思う
　もう生徒会も堕人もいないわけだし」
「あ…そっか…そうだよね…
　ただどっかでブラブラしてるだけなのかな？」

若干リカの顔に余裕が戻った

「多分そうだと思うよ
　そのうちひょっこり帰ってくるんじゃないかな？」
「…うん、そうだね…」

納得したリカは俺にお礼を言って女子寮へと戻っていった
とはいったものの、本当にどこに言ったんだろう
相談したいことは山ほどあると言うのに…
何か、ゆき兄が行った場所の手がかりになるようなのは…


11/18（土）　夜

俺は今、ゆき兄の部屋の前にいる
もしかしたら部屋にいるかもしれないという淡い期待を抱いて
だがすでに１０回はノックしている
それで反応が無いということは間違いなく部屋にはいないんだろう、室内からは物音一つ聞こえない
何の気なしにドアノブに手をかけてみる
ゆっくりとドアノブを回して引いてみる
予想に反して、ドアが開いた

「開いてる…？」

少し躊躇したが別に泥棒しに来たわけでもない
あくまでも突然いなくなったから心配して手がかりを探しにきただけだ
うん、そう、だからとりあえず中に入るべきだ
１人で勝手に納得して部屋へと入る

「真っ暗か、電気電気…」

壁のスイッチを押して電気をつける、２度の明滅の後蛍光灯によって部屋が照らされる
…部屋は相変わらず汚かった
コーラの缶とペットボトル、スナック菓子の袋や服などががあちこちに散乱し
ベッド脇には漫画が塔のように積まれ今にも倒れそうになっている
この部屋からあるかどうかもわからない手がかりを探すのは無理な気がする…
ふと、汚い部屋の中で不自然に生理整頓された机が目に入った
まるでそこだけ空間ごと切り離されたように

「…？」

気になって机に近づくと数冊かのノートが置いてあった
表紙には何も書かれてはいない
勝手に見るのはどうも気が進まないが、不自然なまでに整頓された机の上に置かれたノート
それがどうしても気になり、適当な１冊を手に取った
少し見て戻せばいい、どうせゆき兄のことだからくだらないことしか書いていないはずだ
そう思いノートを開いた
そこには日付と、何行かの文字

「…日記か…ゆき兄ってマメに日記書くような奴じゃないと思ってたけど」

だが別に毎日書いてるわけではないようだ
途切れ途切れに、酷いときは１ヶ月ぐらい日付が飛んでいる
とりあえず日記なら大したことは書かれていないだろう、あまり人の日記を見まくるのもいい気分じゃない
ノートを閉じようとした時、ある１文が目に入った
見間違いかと思い、もう１度確認する

『20XX 5/21
　特異な形状をした堕人が現れる
　戦闘能力は今までと比べ物にならないほど高い
　どうやら他にもこのような奴らがいるらしい
　便宜上、上級堕人と称す』

「…！？」

自分の目を疑った、しかし何度見ても見間違いではない
日付は、１年前の5月21日
ゆき兄はこの頃から堕人を知っていた？
いや、知っているどころかこの文章はまるで戦ったかのような…
慌てて他のページも調べて見る
ノートに綴られた過去の字列、そこに必死に目を走らせる
机の上に置かれた全てのノートを開き、そこに書いてある文章を片っ端から読んでいく
途中から日記形式では無くなり、無数の文字がビッシリとページを埋め尽くしている
大半はひどく乱れた殴り書き、その中から必死に判読可能な文章だけを探していく

『衰弱が激しい、これだけでは駄目だ』

『解決策が思い浮かばない
　考えれば考えるほど頭が痛くなる』

『根本的な解決ではない』

『楔』

『堕人の出現にはやはりアレが関係している可能性は高い』

『生徒会による深夜の校舎への侵入の禁止
　順ずる校則違反の罰の強化
　迷い出た堕人の殲滅、状況安定』

『酷く眠い、だけど眠れない』

『図書室、資料、陰陽、五行思想
　仮説、強すぎる陽に引かれた陰、それが堕人』

『思い違い、極面に目を奪われている可能性』

『６０年前、軍の施設、しかしそれ以上は出てこない』

『×引かれた
　○元からいたものが目覚めたもしくは出てこれるように』

『状況、依然安定』

『生徒会への不満が高まっている
　反動が来ないことを願う』

次々とページを捲っていく
心臓の鼓動はまるで早鐘を打つように異常なほど早い
奥歯がカチカチと音を立てる
なんなんだ、これ…一体ゆき兄は何をしようとして…？
そして、非常に見慣れた文字が俺の目に飛び込んできた

『転校生、たまゆら、１０円』

『たまゆら、器として覚醒、運命と言えば聞こえはいいが…』

『保護』

『困ったことになった
　可能性が無いわけではないが賭けるには余りにも分が悪い』

『楔が抜ける、早く決断しなくてはいけない』

『賭けてみよう、たまゆらに
　しかし背負わせるにはあいつは優しすぎる
　もしもの時は…』

『しばらく剣を使うことになりそうだ、皮肉なことだ』

『ノスフェラトゥ』

『なぜ名前を知っていたか？』

『恐らく堕人
　しかし何か他とは違う、統率者か？』

『黄龍の意志、不確定因子
　残された時間は僅かだということだろうか』

『カルディアからヒントを得る』

『決着がつけば楔が全て消えることになる
　最終封印が残ってるとしても過去の状態と照らし合わせると…
　様子を見に行ったほうがいいかもしれない』

それ以降は何も書かれていなかった
後には白紙のページが延々と続いている
呼吸を整えようとするがうまくいかない
一体これは何なんだ、これは本当にゆき兄が書いたのか…？
もしそうだとしたら…これじゃまるで最初から全部知っていたような…！
俺はノートを机の上に置いた
見るんじゃなかった。そう思った
静かな水面に投じられた小さな石、だけどそれは心をかき乱すには充分すぎた。
不安が、胸中を満たしていく

「…最後の一文、様子を見に行ったほうがいいって…
　ゆき兄はそこに行って…？
　でも、どこなんだ…？あっ…」

ポケットに手を突っ込む
指に触れる紙、そっとそれを取り出す
白やんの言う、全てを知れる場所…
もしかして、ここなのか…？


??/??

「うおぉぉぉぉおおお！！」
「…」

俺の攻撃を高橋は完璧に避けていく
その回避には一片の無駄は存在しない。
完全なる必要最小限の動きで全てを避ける、高橋はほとんど動いてないに関わらず黄龍鉄甲はかすりもしない。
一瞬頭に沸く焦り、その瞬間腹腔が爆発したかのような衝撃。
視界から高橋が遠ざかる、背中に感じる風、そして、全身の骨を直接殴られたかのような、痛み。
蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられた、それだけは理解できた。

「うっ…ゴブッ…」

口の中に生暖かい大量の液体
それを血と判断する前に、正面の空中で足を振り上げる高橋

「目覚めろッ！玄武ッ！！！」

黄龍鉄甲の玄武の力を目覚めさすと同時に両手で高橋の足を防ぐ
腕を襲う、&quot;壊滅的&quot;な威力の衝撃
その衝撃が俺の立っている場所の石で出来た床を砕く
なんだこの威力…！？玄武じゃなかったら腕ごと砕かれてる…！

「回復と同時にガードか…
　随分的確な判断が出来るようになったんだな」
「たっ…かはしぃ…！」

足を離し、距離を取る高橋
その身体から何かが噴き出しているのが見えた
黒い、炎のようなものが全身から発せられている

「まさか…お前も能力者だったのか…？」
「…確かに力はもらった、だが」

そこまで高橋が喋った時
視界が反転した
宙を舞う、俺の身体、そして追撃しようと襲いかかる高橋

「俺はただ、身体能力が人の限界を超越した、それだけだ」

振り上げられる高橋の右足…
鉄を突き破り、コンクリートを砕き、そして…風太を殺した…
破壊の、化身
防ぐ術無く、破壊の化身は無情に俺の身体を撃ちぬいた
何も理解出来ぬまま、俺の身体は地へと向かい
硬い床に叩きつけられ、床を砕き、大小様々に砕かれた床石に埋もれる

「あ…ああ…」

伸ばす手が、虚空を切る
立ち上がることが出来ない、意識が、途切れ…
うまく呼吸が出来ず、呼吸しようともがけばもがくほど広がる血の味
溺れるような苦しさ、痛みが駆け抜け、それが意識を奪い去ろうとする
必死に繋ぎ止めたところで身体は動かない
途切れそうな視界の端に見える高橋

「ノスフェラトゥを倒したお前の力はその程度のものなのか？
　ここまで来たお前の覚悟はそんなちっぽけなものなのか！？
　お前が今まで背負ってきた想いは俺１人に押し潰されるようなものなのか！！」

そんなわけ、ない
俺はッ…俺が今まで背負ってきたのは…！
俺の、俺の覚悟は…！！
手が、ピクリと、小さく、確かに動いた
そしてそれが全身へと伝わり、ゆっくりと、だけどしっかりと俺は立ち上がった
それを見た高橋が小さく笑う
そうだ、こんなところで、負けるわけにはいかないんだ…！！
必ず、真実を掴む、だからこそ俺はここに来たんじゃないか…！
なのにここで倒れるわけにはいかないんだ！！

「使え、たまゆら
　ノスフェラトゥさえ圧倒した黄龍の力を！
　お前が持てる力の全てを出し切られないと俺は越えられないッ！！！」

静かに、黄龍鉄甲を構える
出来るかな、ノスフェラトゥの時は半ば無我夢中だったけど…
いや、出来るさ…だって俺はもういつだって…
どんなときでも、１人で戦っているわけじゃないから
戦いの中で見つけた絆を信じられたなら、いつだって黄龍はその想いに答えるから
だからきっと、俺は高橋に勝てる
勝たなきゃいけないんだ！！！

「目覚めろッ――！黄龍ッ！！！！」

黄龍鉄甲から金色の光が溢れ出し、変形する
両腕は如何なる物も切り裂く黄龍の爪を携えた拳
両足は大地すらも掴む黄龍の爪
あらゆる攻撃を弾き返す黄龍の龍鱗の如く神々しく輝く鎧
全身を駆け巡る熱く滾る血液、動かずにはいられないほどの身体の奥から沸いてくる躍動感
ノスフェラトゥすらも圧倒した、究極の力

「行くぞ、高橋」

蹴り出したと同時に床石が砕けた
ノスフェラトゥの時と同じ、飛び込んだと思った時にはすでに高橋は目の前
右腕を振るう
だが、高橋は上半身を捻り、それを避ける
いや、完全に避け切れてはいなかった
僅かだが黄龍の爪が高橋の服を切り裂いた

「あぁぁぁあああ！」

間髪いれずに左腕を叩き込もうとする
そこに高橋の足が来る

「舐めるなッ！！！」

黄龍の爪と高橋の蹴りがぶつかり会う
金色の光と黒い炎が弾け飛び、暗闇の広間を照らし出す

「うぉぉぉぉぉおおお！！」
「連牙双脚！！！」

両の拳を高橋へと振るう
高橋は両脚でその全ての拳を蹴り弾く
敵の攻撃を弾き、自らの攻撃を相手に叩き込もうとする応酬
金色の光と黒い炎はまるで線香花火のように弾けては消え、弾けては消え
黄龍の力に互角に渡り合う高橋
高橋と攻撃を撃ち合う度にその蹴りから伝わる高橋の想い
「絶対にこの先には誰も行かせるわけにはいかない」、その覚悟が、高橋の力を数倍に引き上げていることが理解できた
だけど、何度も言うけど…

「俺だって生半可な覚悟でここまで来たんじゃない！！！！」

一際大きい金色の光が弾ける
まるで闇に咲き誇る金色の華、美しく、儚く、あまりにも神々しい
より強い力で蹴りを弾かれた高橋がバランスを崩す
そして出来る、高橋の胴体へと攻撃を直撃させるライン

「食らえッ！！！」

渾身の力を右腕に込め振りぬく
完全に通る、間違いなく直撃だ
そう確信した時、顔に衝撃
上半身が横にずれ、渾身の１撃は直撃せずに僅かにかするように命中する
そして逆に俺の身体に黒い炎をまとった高橋の脚が直撃する
黄龍の鎧越しでも充分すぎるほどの威力が俺の身体に伝わる
後ろへと吹っ飛ぶが今度は壁に叩きつけられる前に衝撃を殺し、滑るように着地する
いや、それよりも…！

「クソッ…」

高橋の手が、ポケットから外に出ていた
蹴り技しか使わず防御も脚でこなす高橋、手は回避の時以外はポケットから出ていることは無かった
その高橋が直撃を避けるためといえど手を使い俺を攻撃した
つまりそれだけ追い詰められたってことだ…
だけど素直に喜ぶことは出来ない、脚だけでほぼ互角の戦いだったというのにそこにさらに手からの攻撃が加わるとなると…
…いや、簡単じゃないか
攻撃が激化するというなら、それを更に上回ればいい
今までの俺なら無理だった、でも今の俺なら…！

「たまゆらァァァァアアアアア！！！」

高橋が、纏う黒い炎、立ち上るそれはまるで黒き龍
両脚に加え、両腕、４つの武器から繰り出される怒涛の攻め
どんな防御も貫き、敵と絶命させる
だけど、俺はそれを全て弾く
腹部を穿とうとする高橋の脚を、俺の脚が弾き飛ばした

「馬鹿なッ…この蹴撃、俺と同じ…！？」
「お前に使えて俺に使えないことがあるかぁぁぁあ！！！」

１撃、１撃、残像を巻き起こすほどの高速の攻撃を弾き飛ばす
徐々に、殆ど分からないほどゆっくり、だけど確実に高橋の攻撃速度が低下を始める
何百発の撃ち合いをした者にしか分からないほどの変化
黒い炎と金色の光に混じり、赤い何かが飛び散っていく
それは血、黄龍の力と生身で撃ち合いを続けた高橋の脚と腕に蓄積されたダメージ
限界を越えたダメージに耐え切れなくなった高橋の身体
それは裂傷、打撲、断裂となり、撃ち合いの度に皮膚が裂け、血を周囲に撒き散らす
苦痛に歪む高橋の顔、それでも攻撃は止まらない

「もうッ…やめろッ…！！」
「グッ…オォォォオオオオオオ！！」

もう、最初の頃のような攻撃のキレは完全に無くなっていた
どれだけ強い力を持っていようがあそこまで傷ついてしまえば…
なぁ、お前はどうしてそこまでして…
正直俺はどうしようもなかったとしても風太を殺したお前が、やっぱり許せない
だけどもしお前をそこまでさせるほどの覚悟の理由がこの先にあるというのなら
やはり、俺は行かなくちゃいけない、そして、見なくちゃいけない
だから俺は、お前を…
俺の右足が、後ろへと下がる
高橋の右足も後ろへと下がり、攻撃が停止する
この１撃で勝負をつける、互いがそう思った
高橋の四肢より零れ落ちる、いや、流れ落ちる血液が床に血溜まりを作っていく
やがて、血溜まりが、跳ねた
左足を軸に、渾身の力を右足に込め、相手の身体に叩き込む
ほぼ同時の発射、だが…

「…！？」

先に相手の命へと辿り着いたのは、高橋ではなく俺の足
そして衝撃で後ろに吹き飛ばされた高橋の攻撃は俺に命中することは無かった
宙を舞い、遥か後方へと吹き飛び壁へと叩きつけられる高橋
壁石が砕け、それだけでは飽きたらず衝撃で出来た亀裂が天井にまで到達する

「ガッハッ…！」

高橋の口から大量の吐血
それが白いシャツの胸元を赤く染め上げた
黒い炎は、すでに消えていた
同時に黄龍の鎧は鉄甲へとその形を戻していく
勝った、という実感は沸かなかった、ただ何故か無性に悲しくなった
それと同時に周囲が揺れた、いや、揺れたのは部屋
天井へと走った亀裂が広がっていき、その隙間から土が零れ落ちる
広場が、崩れていく
頭上から、ひときわ大きい何かが崩れた音
見上げると、崩れた天井、大量の瓦礫、降り注ぐ
まずい、避けれな…
そこに飛び込んだ、黒き龍、自らの血で赤く染まる足が、瓦礫を粉々に砕く

「…え？」

高橋が着地すると同時に何かが折れるような音
右足が、ありえない方向へと曲がっていた

「ぐぅっ…！」
「高橋！」

高橋が俺を睨み、叫んだ

「勝ったんだろお前は！！行け！！
　言って全てを知って来い！！！」
「でも…高橋お前も…！」

そこまで喋った時
高橋は俺の胸元を血に染まる手で掴んだ
そして小さな、だけど確かな声で言った

「俺の覚悟を、踏みにじるな」

身体に強い衝撃
高橋の左足が、俺の身体に叩き込まれた
吹き飛んだ先にあったのは扉、高橋が守り通そうとした扉
身体が叩きつけられ、扉が大きく開き、通路に投げ出される

「何をッ…」

慌てて立ち上がり崩壊を続ける広場へと戻ろうとする
そこに、叫び声

「来るんじゃない！！！！
　お前が俺を倒したのは振り返るためか！！？
　ここはまだ道の途中だ！お前が目指すべき場所はその先だ！！！」
「だからって…見捨てられるわけないだろ！！！」
「…お前は、甘すぎるんだよ
　だけど、その甘さはアイツが忘れてしまったものだ…
　忘れるしかなかった、それでも…アイツは…」

瓦礫が、ドアの前に大きな音を立てて落下した
隙間から見える広場も最早広場とは言えない、瓦礫の、山

「行って来い、そして出来るなら、あいつを救ってやってくれ
　俺には、出来なかった、結局俺も加害者でしかなかったんだ
　…頼んだぜ、たまゆら」

高橋が、笑った
全ての憂いを吹き飛ばすように、初めて高橋が見せた笑顔
だけど、どうしてだろう、その笑顔はまるで死に向かう者が見せた最後の…
瓦礫が、まるで滝のように
俺の目の前に落下した瓦礫が完全に通路と広場を遮断した

「高橋ィィィィイ――――――――！！！！！
　うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」

もう声は聞こえない
ただ、崩れ落ちる崩壊の音だけが瓦礫越しに聞こえる
いつしかそれも止み、残るのは静寂のみ…
瓦礫を見つめる俺の瞳から零れ落ちる、涙
どうして、泣いているんだ？俺は…？
高橋は風太を殺した張本人なのに、どうしてこんなに…

「悲しい…んだよ…！！
　ちく…しょぉぉぉ…！！」

流れる涙を止めることも出来ずに、地面に膝をつき
ただ、泣き続けた、理由もわからずに…




.    </description>
    <dc:date>2009-11-09T01:34:02+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/18.html">
    <title>ひぐらしの無くなる頃に</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/18.html</link>
    <description>
      ＊ひぐらしの無くなる頃に
かの有名なひぐらしが鳴く頃にの設定を借りスレで書き出した作品。
序盤は割とギャグが多めの展開だが中盤から後半にかけて熱い展開になるのが特徴。
恐らく原作を意識してのことだと思われる。
基本的に描き溜めせずに即興で書き続け完結した作品。
なお、この作品で初めてたまゆらが主人公に起用される。
本家ひぐらしを知らないと話が掴めない可能性が高い。


＊あらすじ
雛見沢の学校へと転校してきたたまゆら。
とある仲良しグループと仲良くなり同時期に転校してきたゆき兄と
その妹ゆきと一緒に仲間と親睦と深めていく
だけどある事件がきっかけで彼らは雛見沢の暗部を知ることに…


＊閲覧
[[ひぐらしの無くなる頃に【前編】]]
[[ひぐらしの無くなる頃に【中編】]]
[[ひぐらしの無くなる頃に【後編】]]    </description>
    <dc:date>2009-11-01T03:58:09+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/2.html">
    <title>メニュー</title>
    <link>http://www26.atwiki.jp/jaganou/pages/2.html</link>
    <description>
      |[[TOP&gt;http://www26.atwiki.jp/jaganou/]]|
■[[FAQ&gt;FAQ]]
----
■完結作品一覧
├[[ゆき兄ハーレム王国]]
├[[ゆき兄ハーレム王国外伝]]
├[[ひぐらしの無くなる頃に]]
├[[バナ丸、旅をする]]
├[[邪眼探偵ゆき兄]]
└[[邪眼学園黄龍譚]]

----
■オムニバス作品
├[[脳内幻想物語]]
└[[カソリー５０]]

----
■ネタ作品
├[[えび助ハグリッド]]
├[[ゆき兄とスイカの里巡り]]
├[[ロリコン鬼]]
├[[END OF SHIGERU]]
└[[バタフライハグリッド]]

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■未完結作品一覧（未うｐ含む）
├[[ゆき兄ハーレム王国弐]]
├[[ピュアハートの邪気眼修行日誌]]
├[[記憶屋]]
├[[BLACK ROOM]]
├[[約束ノ刻]]
└[[コワレユクセカイノカミ]]

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