ガンダム00バレまとめ @ ウィキ

新・大人のガンダム



【新・大人のガンダム】


■新・大人のガンダム 9・11以降の国対国でない形 二極構造をやめるチャレンジ 監督・水島精二インタビュー(2008/12/24)


――水島さんが『00』の監督を引き受けるにあたり、なぜガンダムが存在するのか、なぜ戦うのかという根拠を一から考え直したと思うんです。それはどういう段階を経て作られていったのでしょうか。

 まずガンダムは、過去の作品もそうなんですが、兵器であることはまちがいない。擬人化された『SDガンダム』などを別にすれば、モビルスーツ(以下MS)というロボットを使って戦争が行われているという状況は、どの作品でも概ね変わりはないと。だとすると、やっぱりガンダムは人が使う道具なんですよね。そこは忘れないようにしようと。道具であるMSを使って戦うということは、どういう形であるにしろ戦争を描くことになりますが、その形が問題でした。
 米国同時多発テロ以降、国対国ではない戦いの形も出てきた状況を踏まえると、MSにどういう人たちが乗り、どこに対して何を行うかを安易には決められない。戦争の動機として大義があるのか、怒りにかられているだけなのかも分かりづらいのが現状ですから。
 でも武器さえ持っていれば戦える環境が出来上がってきていることは確かですよね。そこでチャレンジの1つとして、二極構造をやめてみようという案が浮上しました。そうすることで各陣営からいろいろなMSを出せるだろうと。
 そこからホビー方面の戦略も考え、ビジネスも含めた作品全体として、どういうことをやりたいのかを決めていきました。つまり最初の段階で、今回はガンダムがどこにも属していない第3勢力的な存在であることが決まっていたわけです。第3でも第4でもいいんですが、従来ある勢力図の外から突如として降臨してくるところから始まることが重要でした。
 ではその主人公たちが乗るガンダムは何機あるとベストなのか、前の作品はMSの多くがガンダムっぽくなっていたが、そうする必要があるのかも含めて、早めにバンダイから要望を掬いあげました。以前の作品でもサンライズに出向で来ていたバンダイホビー事業部の方を呼び込んで意見を聞き、彼にバンダイ内のリサーチもしてもらって、それらのニーズを作品に生かすという約束をしながら作っていったんですね。

――結果として、水島さんの考えるビジョンはどうなったのですか。

 ガンダム以外に勢力は3つはあったほうがいいだろうと。というのは、ロシアと中国を中心にした人革連と、米国経済圏らしいユニオンは早めに構築していたんですが、岡部いさくさんとお話をさせてもらったなかで、ヨーロッパはヨーロッパでまた独特な歴史を歩むだろうと、そういうパワーバランスが浮かんできたんです。そこでEUの発展型であるAEUが3つ目の勢力となりました。

――現代の延長線上にある300年後なんですね。

 はい。ガンダムを兵器として描き、そうすることで現代の戦争状況を感じさせるものを作りたかったんです。毎日放送の竹田靑滋プロデューサーはそういうところにすごく興味をもたれる方ですし、逃げずに描けることはわかっていた。生臭いものを表現するには兵器としてのガンダムというところから出発しなければいけないし、MSをカッコよく描くためには、正義にも悪にも見える構造はいいんじゃないかなと。各々に正義があるから、局面を切り取るとその機体は単なるやられメカではなくなる。そんな複雑な構造をファーストシーズンの序盤に用いたら、“ドラマは薄い”と評価されたんですけどね(笑)。世界観のほうに注力しすぎ、キャラクター間の描写が足りないのはわかりました。

――ガンダムを絶対的なものとして描く際の理由づけは?

 主役だからということに尽きるかな。既存の作品では、主人公は“巻き込まれ型”でガンダムに乗るというパターンがありますが、今回は主人公がガンダムに乗りたいと思わないと成立しないんじゃないかと。それは黒田(洋介)君のストーリーテリングのなかでどうしても必要だった。
 ずっとギリギリの状況で戦ってきた、戦うことしか知らないような少年兵がガンダムに神を見るというのは、乗るきっかけになるんじゃないか。一瞬のうちに戦争という、もうこの場から逃げたいと思っている状況から逃がしてくれた存在、しかもあのときに助けてくれたものと同種の機体に乗ることができるなら、自分もそうありたいと。結局、本当に戦争を根絶することには実はつながってないんですけれども、止める力を持つものに憧れるというのが、刹那の出発点としてはいいなというふうに思いましたけどね。
 ぼくとしては、とにかく感情移入しづらい主人公像をいまの若い子に向けてみたいと思ったんですね。ただ群像劇だったので、なかなか刹那だけに集中できなかったこともあって、見ている側がすぐに焦れちゃった。わからないものを、もうわからないから嫌だと切り捨てるのが早かったんです。何か思わせぶりなことを言っているけど、キャラクターがわからないから、つまらないと。

キャラクター間の関係値を高める修正をした


――それは最近の傾向ですか。

 あまりにもアニメの作品数が多すぎて情報過多になっているから。最初に開示してくれないものにはついてこない。作劇的にもったいつけていたのだとしても、事実としてぼくらに餌を与えてくれていないんだから、ぼくらはもっとたくさん餌を与えてくれるほうに行くよという、明快なロジックなんですよ。ライトユーザー、アニメを見ている層の多くは、メカとかではなく、やっぱりキャラクターなんですよね。かわいい女の子を見たいとか、かっこいい男の子を見たい。そのキャラクターたちが能動的にやんや、やんやと動いているのが好きなわけですよ。
 でも『00』のキャラは引いた視点で描かれているので、そこの部分で乗っかれないというのを最初にはっきり言われた。やっぱりガンダムというものに甘えたんだなと反省して、これはアカンと思ってファーストシーズンの途中からはドラマを引っ張る部分をキャラクターにもっともっと寄せていこうと言って、制作進行中の数話から修正をかけていきました。

――ドラマを引っ張る部分をキャラクターに寄せるというのは、具体的にどんな感じなんですか。

 キャラクターの関係値を高めることが基本です。どういうことかというと、本来、各々のキャラクターが過去に色々な因縁を持っていたら、彼らのいる世界はすごく狭いはずなんですよ。『00』も最初はもっと広く群像劇にしようと思っていました。ひとりを基点に、各人の点が線でつながっているという世界を描きたいなと思っていました。でも、それが淡泊に見えるという。自分がよいと思っている演出手法や物の考え方が、いまガンダムに飛びついてくれるユーザーにとっては淡々として見える。それなら自分の演出方法は変えなきゃいかんと思って、具体的にわかりやすい演出にし、キャラクター間の関係を強調したんです。

――2期に分かれ、半年間のブレークが入ったことは、作戦変更に役立ちましたか。

 結果的にはものすごく役立ちましたね。実は、僕らが1年間の構成を一度組んだ段階で、急に半分に分けるよと言われて、えーっ、みたいな話になって。その分け目が30話ぐらいだったんですよね。それで、前半をぎゅっと圧縮しました。プロジェクトとしてそうだと言われたら、やるしかないわけですよ(笑)。で、オンエアをすると今まで何も言わなかったファンや関係者の声が、当然聞こえてきて、数値でもそういう結果が表れてきて。単純に画面上の効果であったりとか、絵コンテのカットの割り方の方向性であるとかに。それらを作品に反映していきました。
 シナリオに関しても、もっともっとドラマチックにするために、わりとこだわっていたリアルという部分を捨てて、多少漫画っぽい要素でもいいから、キャラクター同士のドラマを中心に動かしていこうと。ファーストシーズンの脚本が終わった段階で、もう1回後半の構成を見直すような形になりました。ファーストシーズンの頭の方で、太陽光発電の利権に端を発した紛争など、様々戦闘はやっているんだけど、その都度何と戦ってるのか?と言う疑問が視聴者にあったんです。いうなれば、「世界」が相手なのですが、そこが分かり辛いと。それならば、分かりやすい敵役というサインが必要だと思い、セカンドシーズンで元々登場予定だった特殊部隊(アロウズ)を、よりフィーチャーする形で構造をシンプルにしようと。ソレスタルビーイング、アロウズ、カタロンという、ここのトライアングルでなんとなく世界を見せるというふうなやり方をとりました。
 前期に比べると分かりやすいと言われるのは、こんな風にシンプルにしたからでしょうね。でも、やっぱりこれぐらいの手触りじゃないと、毎週、毎週見てもらう作品というのは難しいのかなと。視聴者の意識とか、楽しませるということを考えると、どうしても狭い世界になるんだなというのは改めて思い知らされているところじゃないですかね。

――というと恋愛要素を増やしたというのはその辺も。

 恋愛要素は用意してあったんだけど、ファーストシーズンに入らなかったんですよ(笑)。ただマリナに関しては、ずっとヒロインだ、ヒロインだと言い続けて、実際にぼくはヒロインだと思って描いています。そこにはヒロイン=恋愛なのかという一般論への疑問もあるんですよ。最初に刹那とマリナってくっつくの?と言われたときに、いや、くっつかないんじゃないかなと答えました。そういう形の恋愛じゃないと思うんですよ。自分の中ではブレずにその関係があるんですが、マリナはヒロインじゃないと言われているのを聞いて、やっぱり視聴者にとっては、主人公と恋愛関係になるのがヒロインというふうに思われているんだなと感じましたね。
 もっともっと、くっついたり、裏切られたり、どろどろするのが一般視聴者が言うところのヒロインというポジションなのかと。ぼくはドラマの軸になっている女性の中心人物がヒロインだと思っているんです。自分に対して敵か味方かだけで区別するやり方が、どんどん諍いを招いていくという現実があって、マリナは戦わずに許そう、許そうとするわけですよ。それを分かりやすく表現しようとするとその状況から、哀れな貧乏姫みたいと言われてしまう。でもドラマ的には全てをなくしても、それでも彼女が前を向いてくれないといけないので、仕方ないんですが……。演じている役者さん(恒松あゆみ)も故国が無くなるなんて思ってなかったみたいで、セカンドシーズン第5話「故国燃ゆ」のアフレコ台本が届いた週に恒松さんから“監督、アザディスタンが、アザディスタンがあーっ”というメールが来て(笑)。それまで一切言ってなかったので、どれだけ驚かれても仕方がないとは思いますが。

――マリナと刹那は、それぞれ違う方法論で争いをなくしていこうという、対照的な存在ですよね。ただ、それが思ったほどできてないで、リボンズたちにやっぱり飲み込まれつつあるのがセカンドシーズンだと思うんですけど。

 そうですね。あとセカンドシーズンでいうと、リボンズの持っている力を強大にして、わざとそういう風にまとめているというのはありますね。だから、本当は誰か1人の悪党が生み出しているのではなく、世界全体がカオスとなって生み出している、小さい個々のすれ違いとか、小さな悪意が連鎖して膨大な顔のない悪意になるような話も描きたいなと思っていたんですけど、分かりづらくなりそうでしたから。その悪意をリボンズに集約させたというところもありますね。

――せっかく絹江が「世界は簡単じゃないの」と言ってくれたんですけどね。

 そうそう。それを実感させる、そのセリフの意味を汲み取ってもらうことが、また簡単ではなくて。しかしある程度年を重ねた人や、言葉の意味を深く考えてくれた人は分かってくれたようですが……。だから何年も経つうち色々な考察が出てきて『00』が理解しやすくなったとき、諸悪の根源は1つではないという解釈がスタンダードになっていくんじゃないかなと、そうなれば良いなと。もしかしたら視聴者がその釈義を広げてくれる可能性もあるし……。『00』は作ったらそれで終わりではないので。多くの人に楽しんでもらえる作品が提示できればいいのかなと。ユーザーに考える事を促したいというのはずっと、ここ数年ぼくの作品に込めてきていることでもありますから。

戦術予報士ってお天気お姉さんみたいだね


――ガンダムマイスターという職掌と、4人がビジュアル系人気バンドのような立ち位置で全員イケメン、それぞれが決め台詞を持っているのは、1個の発明じゃないかと思うんですけど。

 でもガンダムマイスターという名称と、各々のキャラクターの決め台詞は黒田君で、4人イケメンにしようと言ったのは僕ですね。だからそういう意味では二人の初の合体技(笑)。黒田君の視聴者に対するサービスですよね。最初は“ガンダムマイスター?”という反応が中にはあったんです。が、面白いじゃん!と言ってノッたのは僕ですし。
 あと戦術予報士というのもそうで、あれも戦術予報士という言葉が出てきたときに、これはどういうモノなんだ?という話もして。別に作戦指揮官と言ってもなんら支障はないんだけど、でもそれは作品のカラーとして持っても良いなと、こういう職掌があるんだということにしようぜと言ってOKにしたんです。後に別のキャラクターもそういう立場で登場できるしそれを1つのフックに出来ればいいと、どこまで書き切れるかよりも、そういう番組の特色になるようなものは先に出しておいて、書かざるを得ない状況に自分たちを追い込めばいいんだよというノリで、OK、いいじゃないと。

――カティ、スメラギと、戦術予報士は女性ばかりですね。

 なぜ戦術予報士が女性になったかというと、戦術予報士ってお天気お姉さんみたいだねと(笑)。ぼくが女の人がいいと言って、そういうところで責任のある立場に立たせることで、心のブレも書けるじゃないかと。とはいえ、男性がなれないわけじゃないと思いますが(笑)。
 作業全体に言えることですが、全部プラスに考えるようにしています。こうもできる、こうやることもできると、なるべくマイナスに考えないようにして、もうどんどん進めていきました。そのかわり、ミスというか、失敗を少しでも減らすために、台本を読んでチェックを入れてくれる頭数を増やしました。実際にいまやってくれている助監督も全員、脚本の打ち合わせに参加してもらっています。ぼくが見逃しているところを指摘してくれと、気になるところをがんがん言ってもらっているから、逆にたったひとりで対応している黒田洋介はどれだけパワーがあるんだよと思いますね。あれだけのキャリアを持っていて、これだけのことに耐えて、ガンダムという作品をひとりで書ききっているというのはものすごいことですよ。

――弊誌読者の30代男性にはどんな感じで見てほしいですか。

 まあ、30代くらいの人に一番響いているようですから……。既にご覧いただいている方には、ファーストシーズンに比べてセカンドのほうが単純になったなと思っている方がいるかもしれないですが、いまの若い子たちがどう思うのかに着目すると、ぼくらの『00』がファーストからセカンドに向けて変化した理由を理解できるきっかけになるのかなと。それもまた見方の1つ、ガンダムを通して時代を見ることができるんじゃないかと思います。おそらく過去の作品も、そういったなんらかの変化を内包していると思うんですよね。そういう視点で見てみると、ほかのガンダムにもより一層、興味が持てるんじゃないかなと思います。