ガンダム00バレまとめ @ ウィキ

アニメージュオリジナル



【アニメージュオリジナル Vol.3】


【特集】ロボットとアニメ Part01:ロボットで語る/ロボットが語る 「ガンダム」ブランドが担うロボットアニメの方向性とは?(2009/4/24)

まったく新たな視点でガンダムワールドに斬り込んだ野心作『機動戦士ガンダム00』。TVシリーズ完結を記念して、水島監督と黒田氏に「ガンダム00」の手ごたえ、それを踏まえてのロボットアニメへの展望を併せて語っていただいた。

次なる作品へのバトンタッチを意識した『ガンダム00』


――お2人は現在、ガンダムシリーズの最新作に関わっていらっしゃるわけですが、やはり〈ガンダム〉らしさという部分に、こだわりはありますか?
黒田
 いや、そんなことはないと思います。例えば、特撮には『仮面ライダー』の流れと、『ウルトラマン』の流れがありますよね?『ウルトラマン』は、必ず科特隊みたいな組織があって、ウルトラマンがその隊員の中にいて、怪獣をやっつけて、といった……ある意味、凄く保守的ですよね?一方で『仮面ライダー』は、いわゆる「平成ライダー」路線のように、時代に合わせてフレキシブルに変化していっていると思うんですよ。

――なるほど。
黒田
 最初は僕も『ガンダム』が『ウルトラマン』寄りに見えていたんです。「ガンダムはかくあるべし」みたいな……でも逆に、そういう部分をゆっくり壊していかないと、時代と合わなくなったときに(作品が)閉塞していくんじゃないか、とも考えたんですね。だからこそ、『ガンダムSEED』がファーストへの原点回帰という形に収まったのなら、やはり今回はブレイクスルーの方向に走らないといけないんじゃないか、という想いがありました。「平成ライダー」で例えると『クウガ』が『SEED』。で、僕と水島監督は、『アギト』を作っていた感じというか……。たぶんこの次の作品(ガンダム)で、さらに大きなブレイクとなる『龍騎』のような作品が来てくれると思うので、そこへ上手くバトンタッチできればいいと思います。

水島
 そう言っちゃうと、次にガンダムを作る人はハードルが高くなるなぁ(笑)。

――それは意外ですね。黒田さんは、むしろ今回の『00』では従来のガンダムらしい部分を、意識的に取り込んでいるようにも見えましたので……。
黒田
 濃いファンではなくて、本当に『ガンダム』くらいしかアニメを観ないといったような人たちへの保険として、そういう部分を多少は入れておかないといけないのかな、とは思いましたけど。そう見えたとしたら、「監督がガンダムを判らない分だけ、僕が頑張らないと!」という意識が多少強めに出てしまったのかもしれませんね。

水島
 僕は今回、全くガンダム人脈じゃないところから呼ばれているし、だからこそ(ガンダムは)変っていいんじゃないか、という印象があったんですね。とはいえ、周りのスタッフがとにかく『ガンダム』好きな人ばかりだから、「別に俺が知らなくても、結局(作品は)ガンダムになるわ」と、早くから安心できましたし、特に黒田君みたいな『ガンダム』を知り尽くしている人間がシナリオを書いてくれたというのは、心強かったですね。一方では、僕が知らないことを免罪符にして、スタッフも新しいことをどんどんやることができたし、そういう意味ではバランスが上手くとれたんじゃないかな。

「ガンダム」だけでは観ないアニメファンに何をするべきか


黒田
 実は『ガンダム』を知り過ぎていて、反省したこともあるんですけどね。

水島
 あれ、そうなの?

黒田
 シリーズ構成上、どのタイミングで、どのくらいの情報量を開示していくか、というのを考える際に、今回ファースト・ガンダムを意識してみたんです。例えば、リュウ・ホセイやカイ・シデンって、シリーズを通して観ても、家族構成も、過去に何をやっていたかもわからないですよね?それくらいの情報量で、当時は十分にドラマが成立していたんですね。だから今回、マイスターたちの情報開示もこのくらいで大丈夫かな、と思ったんですが、やはり30年の時が経過して、ファンの興味はドラマよりもキャラクターに寄っていた、という事実を改めて感じました。そういう考えではいけないということに、気づかされました。

水島
 観る人がキャラクターのバックボーンを求めるというのは、大きいよね。もっとキャラの細かい部分の設定を早くからストーリーに忍ばせておけばよかったかな、という反省は確かにあります。他の作品を観ていると、確かに最初から(設定の要素を)いろいろ言葉にして喋っているんですよ。今の観客に求められているのは、あのくらいのテイストなんだね。

黒田
 ファーストシーズンの第1話は、自分なりに伏線をバリバリに入れているんですよ。ヴェーダとリンクするティエリア、ハレルヤと話すアレルヤと、以降の話数のネタを入れ込んで、どれだけ興味を持ってもらえるかな、と思ったんですが……わからない時にはやっぱりわからないんですね(笑)。

水島
 しかも「わからない」となったところで、そこで(観客は)思考停止しちゃうんだって知った時に、怖くなったね……最初の頃は「ガンダムだから絶対に観てくれるだろう」という油断というか、おごりがあったから。

黒田
 それは、僕もあったと思います。でも、僕が小学生のときに『ガンダム』を観た頃は、「ちょっと難しい作品を俺は観てるぞ!」みたいな感じが嬉しかったんですけどね。

水島
 その背伸び感は大事だよね。僕らの世代からすると、あれぐらいの情報でも全然大丈夫なんです。でも、もっと若い子たちに向けた<現代のアニメ>として作らなければ駄目だったんだ、とは思いました。

――現代のアニメとは、例えばどういう部分を指しているんでしょうか?
水島
 要するに、受け手側にアニメというか、映像全般に対しての飢餓感がないんですよ。今は、何でも簡単に手に入りますし。だからこそ、受け手が欲した時に一定の情報を与えた方が、その興味を継続できるんです。そこから妄想も働いていきますからね。

黒田
 正解を作品内で明示しないといけない、というのもあるみたいですね。多分、観た上で想像していることで全然正解なんですけど、ちゃんとこちらが「ピンポーン!」と言わないと納得してくれない。

水島
 今はあるひとつの解釈が、ネットなどを通じて急速に広がるからね。作り手から発せられた情報じゃなくても、いろんな情報が乱反射している状況の中で混乱していって、自分が好きなキャラクターのドラマに対しての自信をなくしてしまう。そういう複雑な構造が生まれてきていることも原因のひとつでしょう。

――ひとつのブログの感想が、一般論として普及してしまうのは怖いですね。
水島
 そこは、現代の作り手の悩みみたいなところでもありますね。逆にみんなも、もっと自由に楽しめばいいのに、と思いますけど。そういうことに振り回され続けるのは、かわいそうですよ。

黒田
 僕はあまりネットの感想は見ないんですけど、たまたま見た時に、最終回の放送前にその展開を全て当てている人がいて(笑)。やっぱり想像力逞しい、凄い人がいるなあ、と感心したんです。だから、そういう風にちゃんと考えている人たちもいますし、(ネット上の意見の)全てが悪いとは言えないですけどね。

水島
 もちろん。僕らが考えていることだけが正解とも限らないからね。僕らは作品において、ある種<神>みたいな存在だから僕らが「こうだ」と言ったら、そういう展開になるかもしれないけど、それに対して「違う」と言ってる人がいたって全然良い。

黒田
 フィルムに描かれていない範囲のことは、個人レベルでいくら解釈してもらってかまいませんから。

水島
 そういう部分が、逆に作品の深みにつながっていくんじゃないか、と思っていますしね……って、ちょっと最初の質問から答えがズレてしまいましたね(笑)。

ロボットアニメというジャンルが抱える問題とは?


――今回特にお聞きしたいのは、「ロボットアニメに未来はあるのか?」ということです。このジャンルは70~80年代にひとつのピークを迎え、その後定期的に作品が作られてはいますが、企画そのものは制度疲労しているところもあるのでは、という印象もあります。
黒田
 巨大ロボットアニメだけを前提にすると、現在は「なぜ巨大ロボットが作品世界に存在しなければならないのか?」という理屈づけが非常に難しい部分があります。一応、産業機械から派生してヒト型に発展したという、僕が『レイバーパターン』と呼ぶもの。あと、敵が大きいからメカも大きくしましたという『(超時空要塞)マクロス』パターン。それに『伝説巨神イデオン』みたいな古代人の遺跡だったり、『機神兵団』の「今の技術では小さくできないので、大きくなっちゃいました」的なパターンくらいしか、リアリティを持たせることはできないですよ。

――なるほど。
黒田
 でも、『ガンダム』は30年間分の免罪符というか、既に歴史があるのでそこは揺るがないと思います。モビルスーツという言葉が、既に前提としてありますからね。

水島
 僕は、「リアルロボットもの」みたいにジャンルで括っちゃう時点で、作りにくい理由が生まれちゃうんじゃないかな、とも思うんだけど。リアルな兵器や、その運用を最初に考えて(作品を)スタートしていくことに対して、懐疑的なんです。もちろん、そういうアプローチも大好きだけど……。

――その辺りは『(地球防衛企業)ダイ・ガード』の監督っぽいコメントですね(笑)。
水島
 結局、そこにこだわっていると、大人向けになっちゃうからね。逆に、大人の鑑賞に耐え得るリアルなロボットものって、極端な話、「自衛隊が人型兵器を開発しました」みたいなところまで行っちゃうしかない、と思うわけです。でもロボットアニメの魅力って、もっと根源的に「ものすごくデカい機械が動く」という部分があって、子どもは、ずっとそういうものを楽しんでくれている。だからこそ、「(スーパー)戦隊もの」というジャンルが脈々と続いているわけです。だから、単純にそれに対抗するロボットアニメがなくなっているから、「ロボットアニメに未来はあるのか?」という問いかけが出るのかもしれませんね。だからこそ、僕も「子どもが夢中になれるようなロボットアニメを作り続ける」ということを、もう一度最初から考えようよって、ここ数年ずっと各所で言っているんですけど。

――「勇者ロボシリーズ」復活論みたいな感じですか?
水島
 個人的にロボットものでやりたいなと思っているのは、実は今、そっちの方向なんです。多分、「メカモの大好き!」って言っている人ほど、今、黒田君が言っていたところに陥っている気がしますし。

黒田
 そうなんですよ。大人の鑑賞に耐え得るリアルロボットアニメが難しいところは、リアリティをどこまで突き詰めるか、という一点に尽きます。でも、そういうリアルなものをこそ見たいと思っているお客さんも、間違いなくいますし……。

水島
 そういうものが好きだと言っている人は、どこまでもリアルに、自分たちが納得する理屈を求めるから、結果として自分たちの首を締めているんだと思うけどね。

黒田
 そういう意味では、本当にリアルにつきつめて考えた時に、ロボットのデザインは人型を否定するところに入っていくような気がするんですね。

水島
 それは絶対にあるね。

――そうなると、アニメファンは拒否反応を持つかもしれませんね。
水島
 いや、そうなるのは結局、コアなアニメファンだけじゃないかなあ。例えば『ガンダム』って、そういう先入観がない層が観てくれているから、これだけ長い間、広い層に支持されていると思うんだよね。

黒田
 そうですね。そういう層には、多分、18mの人型兵器である理由なんて、必要ないと思うんですよ。ただやっぱり『ガンダム』って、確かにそういうところを気にするファンもいますし……。

水島
 だから、僕らはその部分の理屈として『GNドライヴ』を用意したんですよ。

黒田
 そういう必然性はやはり、考えなくちゃいけないところだと思います。

子供向けロボットアニメに本気で取り組む必要がある


黒田
 この『アニメージュオリジナル』を読まれる層の方々は、変な言い方をすると、『(宇宙戦艦)ヤマト』『ガンダム』『マクロス』『(新世紀)エヴァンゲリオン』の呪縛から逃れられないんだと思います。そのうえで「ロボットアニメに未来はあるのか?」と問われれば、僕は正直言って、縮小再生産になっていくんじゃないかな、と感じる部分もあるんです。

――やはり、その流れから逃れることはできないのでしょうか?
黒田
 リアル路線に限っていえば、そうなんじゃないでしょうか。

水島
 でもそろそろ、誰かが次のブレイクスルーを作るんじゃないかな?もちろん、10年くらいのスパンで考えていかないと無理だろうけど。『(鉄の)ラインバレル』『(機神大戦)ギガンティック・フォーミュラ』『(天元突破)グレンラガン』とか、そういう種は既に撒かれていると思うし、そういう意味では間違いなくロボットアニメに未来はありますよ。

黒田
 とはいえ、正直いって今『ガンダム00』と『マクロスF』の劇場版、そして『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』がある中、「これだけあるんだから、(ロボットアニメの新作は)いらないんじゃないか?」って思ってしまう自分もいるんですよ(苦笑)。

――過去のブレイクスルーの作品が、全て新作として現存しているわけですからね。
黒田
 ええ。その中であえて新しいものを作るというのは相当リスキーでしょうし。それならば、全く違った才能を持ってくるしかないと思うんです。「ガンダムみたいなの(を作る)」「マクロスみたいなの」なんて言っているだけなら、それこそ袋小路に向かうだけで、そこにロボットアニメの未来は間違いなく無いです。それは本気で思いますよ。

――かつての状況と比較すると、ロボットアニメはジャンルとしては沈静化している印象があるんですけど、その理由をどう考えますか。
水島
 今のアニメのブームが『萌え』だからじゃないですか?結局はトレンドの問題なんだと思います。だからこそ、僕はあえて玩具会社とガッチリ組んで、子供向けのロボットアニメを復活させたい、と本気で思っているわけです。今回、『ガンダム00』では、メカデザイナーとメーカーのリンクという部分をしっかりやってみたんですが、その打ち合わせの中で「このメカをこうすればカッコいい」みたいな意見が双方からいっぱい出てきたんですよ。そこにすごく手ごたえを感じたし、そういう要素を上手く現場に落としこんでやれるのなら最高だと思いますし。

――そこから新しい可能性が開くのではないか、と?
水島
 ええ。先ほども言いましたけど、特撮のスーパー戦隊ヒーローものって、そこをきちんとやっていますよね。バンダイと東映が、商品の投入時期も合わせて、企画段階から情報を共有している。しかも、それを少女もの(『フレッシュ!プリキュア』)でもやっているわけです。「東映ができて、なんで他のアニメ会社はできないのか?」というのが個人的にすごく気になっていて。

黒田
 メカものというのはやっぱり予算もかかりますし、それに見合うだけの商品の売上も考えなくちゃいけない。となると、特に今の時代、その企画にゴーを出すのはなかなか難しいだろうなとは感じますけどね。

水島
 でも、今のアニメ業界って、「市場が何を求めているのか」とか、「ロボットアニメで子どもを惹き付けよう」と考える事よりも、細かい設定を作ることで自分たちを満足させるとか、そういうことが優先されている感じもあるんですよ。

黒田
 そうですね。

水島
 でもアニメーターは、実は単純にカッコいいロボットを描きたいと思っている。ロボットがカッコよくアクションすると、作品を観てくれた子は商品を買ってくれる。少なくとも『ガンダム』は、ある程度こういう流れが出来上がっている。もちろん、ガンダムシリーズに関しては、ずっと続けているからできているわけですが、同じように「1年だけじゃなくて、予算を守って、この体力で何年間やりましょう」というスタンスで挑めば、絶対いけると思います。

黒田
 確かに。ロボットものをやるなら、3ヵ年計画とか5ヵ年計画くらいで見ないと。

水島
 最初にきちっと計画を立てて、「これまで何が受けたのか?」というリサーチも含めて、ノウハウをきちんと蓄積していけばいいんですよ。当然そういったもの以外にも、コアなメカファンが大喜びするような作品――例えば『(交響詩篇)エウレカ(セブン)』みたいな作品もあるべきだとは思いますけど。

視野を広げることで見えてくるロボットアニメの新たな可能性


黒田
 僕も、やっぱり二世代の観客を意識しないといけないと思います。ローエンドとハイエンドを意識したフィルムづくりや商品作りを視野角に入れないと、絶対極端なマニア向けのものか、それとも子ども向けのもののどちらかになってしまう。どちらにもきちんと喜んでもらえるくらいの作品の幅広さがなければ、ビジネスとしても成功しませんし。例えば、「ガンダム」というブランドに当てはめるとするなら、個人的には、2種類の『ガンダム』を同時に作っていくべきだと思うんです。子ども向けにある程度特化したモデルと、『(第)08(MS)小隊』みたいなアダルト路線のモデルを同時に進めていくくらいの気持ちじゃないと、これからは難しいんじゃないかな。

――ブランドの二極化ですか。
黒田
 僕の考えとしては、その2世代間のぎりぎりのところに、『00』を持って行ったイメージがあったんです。でも、ちょっと子供を取りこぼしてしまったという印象がありまして。

水島
 若干、大人向けすぎたかもね。

黒田
 だから、次の『ガンダム』を作る方々には、もう1回『ガンダム』を子どものものにしてほしい。『00』は、「男の子にガンダムを取り戻した」という自信はあるんですけど、「子どものものにしたか」というと自信は揺らいでいるので。そこを意識して作っていかないと駄目だろうなとは思います。

水島
 そういう意味では、作り手の僕らから変わっていかなければいけないんじゃないかな、とも思いますね。

黒田
 そうですね。今回『ガンダム00』を作らせてもらったおかげで、そういう考えにも至ることができたとも思います。

水島
 特に僕は、『鋼の錬金術師』と2作続けて大きい作品に関わらせていただいたので、いかにこれまでの自分の視野が狭かったかということを、本当に思い知らされた。

黒田
 逆に、狭い視野角を狙って、ピンポイントで(作品を)供給するのは、楽なんですよ。方程式も作りやすいですし。

水島
 もちろん、そこから凄い作品が生まれる場合もあるから、それ自体を否定するわけではありません。ただ、もっと視野を広げれば、閉塞しているといわれるこの状況も、まだまだ可能性はあるかな、と思います。