シーマン ~禁断のペット~

【しーまん きんだんのぺっと】

ジャンル 育成シミュレーション

対応機種 ドリームキャスト
開発元 ビバリウム
発売元 セガ・エンタープライゼス
発売日 初版:1999年7月19日
2001年対応版:2000年8月10日
定価 6,800円(税抜)
判定 なし
ポイント シェンムー』同様業界に衝撃を与える

概要

ドリームキャストが発売直後のスタートダッシュに失敗し、キラーソフト不足に頭を悩ませていた頃に発売されたソフト。謎の人の顔を持つ魚のような生き物(つまり人面魚)「シーマン」を育ててゆく。
その独特なデザインや、DCの性能を生かしたリアルさ、音声認識システムを使ったコミュニケーション*1といった要素が当時のユーザーやゲーム業界に衝撃を与える。
様々な賞を受賞するなど爆発的に一般層への知名度を高め、当時ソフト不足に苦しんでいたDCの数少ないキラーソフトとなり、一時はどこのゲームショップでも本作とDCが見当たらなくなるなど、短いながらブームを起こした。
当初は1990年代前半にMacintosh向けに開発され、そちらで発売する予定だったが、当時のゲーム機やPCではスペック不足だったためか、1998年に(当時の基準では)高い3D描写能力を誇っていたDCが登場するまで長らくお蔵入りになっていたという少々特殊な経緯を持っている。

特徴

主なシステム

  • 本作は水槽の中でシーマンを育てていくのだが最初からシーマンを育てるのではなく、ゲームプレイ時に水槽で数個の卵を孵化し『マッシュルーマー』と言われる幼態を育てる必要がある。
  • 水槽の温度をあげたり、エサをやったりしないといつまで経ってもゲームが進むことはない。
    • 何もしないで、時間が経過すると勝手にマッシュルーマーが生まれたりシーマンに成長したりといったことは一切なく、要はゲーム中のヒントを元に進めないと簡単には飼育できないので、後年の飼育ゲーム全般と比べると少し難しい。
    • 生き餌の飼育、シーマンを誕生させる方法などは飼育ゲームというよりもアドベンチャーゲームに近い。本作が実質的にアドベンチャーゲーム扱いされるのはそのためである。
  • シーマンはゲームを起動しないままいると1日放置した程度で死に、ゲームオーバーとなってしまう。
    • そのため、本作をプレイするにはゲームを日々起動するこまめさと時間が必要となる。
  • DC版のみ、ビジュアルメモリを使用したエサのやり取りが可能になっている。

コミュニケーション

  • 本作の最大の特徴というとやはり、周辺機器を使用したコミュニケーション機能である。
    • これを使用し話しかけることで、シーマンはプレイヤーとの会話に応じてくれる。会話の内容はバリュエーション豊かでプレイヤーを飽きさせない。
      • ちなみに、マッシュルーマーは音声には応じてくれない。
  • 水槽をトントン叩くことで、水槽内の生物を呼び寄せたり、これを利用して戯れることが出来る。
    • 音声に反応しないマッシュルーマーに対して唯一反応をうかがうことが出来る手段でもある。
  • シーマンを掴みあげることもでき、会話とは違った行動が見られる。

登場する生物

  • マッシュルーマー
    • シーマンの幼体。名前の通り形は小さい球体に、細いシッポが生えている。
    • またこの球体には目玉のようなものが入っている。かなり気色の悪い生命体であり、生理的嫌悪感を覚える人も多く、「シーマンよりキモイ」と評する声も多い。
    • 水槽ではただふんわり浮かんでいるだけで、音声認識システムを利用したコミュニケーションは一切取れない。だが水槽をたたくと反応はする。エサにも特に反応しない。
      • なお、これが下記のノーチラスに食われることでシーマンと化す。
  • ノーチラス
    • 巻貝に酷似した生物。巻貝の中からは例えるならばタコかイカのような姿を見せ、古代の生物のアンモナイトを思わせる生物である。マッシュルーマーとはまた一味違う不気味さを誇る。
    • 実は水槽の中にある置物のように見える巻貝はこのノーチラスなのだが、水槽をたたかないと全容を見せないために気が付かないまま本作を挫折したユーザーも多い。
    • この生き物が上記のマッシュルーマーを食べてしばらくするとノーチラスがいきなり黒い墨を吐き出し、水槽の中を苦しみながら暴れまわるという不気味な姿、通称「死のダンス」を起こす。そしてノーチラスの体から、シーマンの稚魚の「ギルマン」が誕生する。
    • しかしこのノーチラスの一連の行動は、本作プレイにおける障壁とも化している。「マッシュルーマーを食べてから稚魚を生み出すというわかりにくい方法」「稚魚の誕生までの行動が生理的嫌悪感を覚える」「そもそもノーチラスの存在に気が付かない」といった理由から、ここで本作を挫折した人も多い。
  • シーマン
    • シーマンの幼体はシーマンと比較すると小さく、体がやや透けている。
    • 人間語が話せないので会話は不可能だが、音声自体は認識してくれるのでここでようやくコミュニケーションが取れる。
    • なお、稚魚のうちはどんな言葉で話しかけても意味不明な単語しか発してくれない。
    • しかし、話しかけるうちに簡単な日本語を話せるようになる。
      • ちなみに、この状態での声は成体のシーマンのような成人男性ではなく、幼児の声である。
    • また、仲間のシーマンをどんどん吸血し、捕食していく。故に生き残れるのは数匹。
    • このシーマンで体が完全に魚のものが「ギルマン」と、体に人間の手足が生えたものが「ハイギョ」と言われる。このハイギョは交尾し、死と引き換えに卵を産む。
  • タッドマン・フロッグマン
    • 上記のハイギョの卵から生まれる生物。タッドマンはオタマジャクシのような姿、フロッグマンはカエルの体に成人男性の顔を持った生物。なおPS2版では名称が変更されている。
    • 親の記憶を持っており、プレイヤーがシーマンに話したことを少し覚えている。これはゲームの設定によるとどうやら遺伝らしい。

2001年版の特徴・追加要素

  • 2001年版はシーマンにするまでの育成要素の難易度が低くなっている。
    • そのため、「マッシュルーマーの時点で挫折する」といったことは少なくなった。
  • マイクデバイス、シーマイクコントローラーを使用した音声認識システムの精度が多少向上している。
    • しかしそれでも認識能力は低く、改善されたとは言い難い。
  • 会話バリュエーションが多少増え、認識できる音声が増えたほか、本格的に成長要素に会話が絡むことになった。
    • 会話によって成長速度が速くなるためモチベーションを保ちやすくなった。
  • 新たな視点追加によりシーマンを観察できる角度が増えた。また操作性も変更が加えられている。

評価点

  • 非常に美しいグラフィック。生物の3Dモデリングも大変美しく作られている。
    • またシーマンのモーションも現実の魚にかなり近い動きをするなど作りこまれている。2018年現在の飼育ゲーにも見劣りしない。
    • シーマン以外の生物も細部まで細かく作られており、生物らしさが良く出ている。
  • マイクで会話をして行けは後にプレイヤーの性格や癖を覚え、愛着が湧いてしまう。おせじにも可愛いとは言えない声ではあるが当時のプレイヤーに衝撃を与えた。
    • 会話のパターンは多く、ポケモンネタなどもある。覚えた事柄は子供にも受け継がれるなど、死んでも以前の会話の感覚を楽しめる。
    • 音声認識システムが不完全なため、全部の会話が聞きにくいのがやや厳しいところか。
    • 2001年対応版とPS2版では会話の量が増量されている他、会話によって成長速度が変わるなどの変更が施されている。
  • 水槽を叩いてシーマンやマッシュルーマーを呼んだり、掴んで体を見たりするなど純粋に観察的なことも出来る。
  • 特にストーリーが重視されているわけではないが、世界観や設定は大変細かく設定されている。

問題点

  • シーマンを育てるまでの経緯が難しすぎる。
    • シーマンにまでするのが難しい。序盤はノーヒントであり、飼育と言えるような要素が少ない。
    • また誤解を招きやすいような部分も多い。とくに『ノーチラスがマッシュルーマーを食べて稚魚を生む』件に関してはゲームオーバーだと勘違いしやすいような挙動であり、ここで諦めてしまった人もいた。
      • 2001年対応版ではやや育成要素の難しさが減っているため、シーマンを育てるのは比較的楽になっている。
  • マッシュルーマーの時点ではコミュニケーションが取れないので、コミュニケーション部分を期待しているともどかしい時間が長くなる。
    • シーマンの姿まで成長しても、稚魚の状態の時点では会話が出来ない。ここで本作自体に飽きる人もいた。
  • マイクの反応がかなり悪い。テストプレイよりはこれでも良くしたらしいが、発言と違うことを答えるなど大変認識能力が低い。
    • これを誤魔化すために当時の開発者は「音声認識が失敗するとシーマンが不機嫌になる」「前述の方法で不機嫌になったシーマンにプレイヤーがなだめる声で話しかけるようにするための誘導をする」といった方法を使った。この点は音声認識の低さをうまく誤魔化しているとして評価されている。
    • なお、「反応しないのでムカついて喋ってたら家族が気味悪がった」などという当時の感想や一部のプレイヤーの話がいくつか残っている。
    • 後に完全版として発売された2001年対応版、及び後述のPS2版は比較的認識能力が良くなっている。
  • 生理的嫌悪感をもたらす外見。
    • シーマンは初見でははっきり言って不気味で、購入を思いとどまる人も少なくなかった。
      • パッケージも人を選ぶデザインである。さらにシーマン自体は大丈夫でも、マッシュルーマーやノーチラスなどでリタイアした人もいる。
    • 単純にデザインだけでなく、シーマン同士が共食いする姿やノーチラスの死のダンスなど、動きや生態で不愉快さを覚えるような描写が多い。
    • 生理的嫌悪感を覚えるかどうかは個人差もあるだろうが、やはり気持ち悪いのは確かであろう。
  • 1日放っただけで死ぬ。社会人や学生にはなかなかシーマンまで育て上げるのが厳しい仕様である。
    • さすがにもう少し、忙しいプレイヤーに対しての救済処置がほしかったところ。

総評

今となっては過去の遺物であるが、当時のプレイヤーに色々な意味で大きな衝撃を与えた作品であることは間違いない。
単なる奇抜さだけでなく、折しも新世紀を間近に控えていた当時の世相にあって、新時代のゲームの可能性を予見させるものであった。
また、『シェンムー』と同じくドリームキャストというハードの可能性を見せたソフトであったであろう。

その斬新さからゲーム界以外でもニュースや雑誌等で結構特集を組まれたため、当時はゲーマー以外でも知る人は多かった。あまり大きくはないが社会的な影響もあったゲームである。


シーマン ~禁断のペット~ ガゼー博士の実験島

【しーまん きんだんのぺっと がぜーはかせのじっけんとう】

ジャンル 育成シミュレーション

対応機種 プレイステーション2
発売元 初版:アスキー
完全版:D3パブリッシャー
開発元 ビバリウム
発売日 初版:2001年11月15日
完全版:2003年2月27日
定価 初版:8,800円(税抜)
完全版:8,190円(税込)
判定 なし

概要(ガゼー博士)

DC末期にPS2にて発売された。マイクの反応などが少し改善され、追加要素がある。
PS2移植に伴うハードスペックの向上に伴い、改善された部分が多い。しかし当然ながらDCのビジュアルメモリは使えないため、他のプレイヤーとの交換要素は削除されてしまっている。
新たな新形態の登場、行動範囲の大幅な向上、世界観の広がりなどDC版から大幅にボリュームがアップされていることから、完全版というよりは続編に近い立ち位置でもある。
既に製造中止となってしまったDCから当時の主流ハードであるPS2に舞台を移したのはいいが、既にシーマンのブームは過ぎていたためか話題にならず、続編が出るのはしばらく時間がかかることになる。


余談

  • 本作は最初の1999年版の発売後、2001年対応版、コンプリート、PS2版、同・完全版…と4回ほど完全版商法を繰り返していた。
    • なお、続編である『シーマン2 ~北京原人育成キット~』はPS2末期である2007年に発売するなど、完全版が絶え間なく出た割には続編の発売は5年以上かかっている。
  • リメイクの希望も少なからずあり、Twitterにて「3DSで見てみたい」との意見にシーマンの生みの親である斎藤由多加氏が「期待していてください」と回答した出来事があった。
    • しかし、残念ながら制作は流れてしまった模様(参照)。
  • なお、ブームが過ぎた後に放映された三浦工業のCM映像において、なんと島田紳助氏の顔のシーマンが登場した。
  • 本作をベースとしタレントの美川憲一氏を起用したダブルタイアップのような形で2002年に京楽産業.からパチンコ機として「CRP-MAN(ピーマン)」が制作され全国のパチンコホールに導入された。「シーマン」の「シー(C)」を「パチンコ(PACHINCO)」の「ピー(P)」の頭文字に置き換えている。
    • キャラクターは野菜のピーマンに美川氏の顔の付いた少々不気味な見た目で、それが水中でしゃべりまくるというもの。言うなればピーマン型の人面魚である。
  • PS2版に付属したシーマイクコントローラは、前面6ボタン・柔らかく操作しやすい十字キー・アナログスティックが付属したUSBパッドであったため、PC用コントローラでは長らく良質パッドとしてPCゲーマーに認識された*2
    • ただし、初版の「限定同梱版」に付属していたコントローラーは見た目こそ特別仕様でゲームの雰囲気にマッチしているが、肝心のコントローラーとしては操作性、耐久性ともに通常版の足元にも及ばない出来となっている。
  • 海外版でのナレーションは米ドラマ『スタートレック』の「Mr.スポック」で有名な元俳優の故レナード・ニモイが担当している。

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最終更新:2024年03月24日 21:26

*1 勘違いされやすいが、音声を生かしたコミュニケーションゲームは本作が初ではなく、本作の約7ヶ月前に発売されたN64の『ピカチュウ げんきでちゅう』が先。

*2 当時のPC用ゲームパッドは数少ない例外を除いて、耐久性が極端に低いなどの酷すぎる品質のものがほとんどだった