熱闘餓狼伝説2 -あらたなるたたかい-

【ねっとうがろうでんせつつー あらたなるたたかい】

ジャンル 対戦型格闘ゲーム
対応機種 ゲームボーイ
メディア 4MbitROMカートリッジ
発売元 タカラ
開発元 さんえる
発売日 1994年7月29日
定価 4,660円(税抜)
プレイ人数 1~2人
周辺機器 通信ケーブル(通信対戦)
スーパーゲームボーイ/同2対応
判定 なし
ポイント キムと十平衛の凶悪な永久コンボ
暗黒の帝王の意地を間違った形で見せた真空当て身投げ
熱闘シリーズ中ふきだしシステムが使われた唯一の作品
出来は褒められたものではないが、なかなか頑張っているアレンジ移植
ゲームボーイだからと侮れないBGM
備考 スーパーゲームボーイを使用した場合のみカートリッジ1本で対戦プレイ可能
通信ケーブルでの対戦プレイ時はカートリッジ2本必要
餓狼伝説シリーズ
熱闘シリーズ


概要

スーパーファミコン(以下「SFC」)やメガドライブなどへの『餓狼伝説』シリーズ移植作を発売しているタカラ(現:タカラトミー)がゲームボーイ(以下「GB」)用に発売した、『餓狼伝説2 新たなる闘い』(以下『2』)の移植作品。
タカラのGB用の対戦型格闘ゲームの「熱闘シリーズ」2作目に当たる。

なお原作『2』と違い、本作のサブタイトルはひらがな表記の「あらたなるたたかい」が正式名称である。

特徴

  • GBに合わせて全体的にデチューンされている。
    • キャラクターはデフォルメされた。
    • 一部コマンド入力の変更。
      • 攻撃の強弱はボタンの押した時間で使い分けるようになった。
      • 超必殺技は一律で「キャラクター毎の技コマンド+AB同時押し」で出す形になった。
    • キャラクターボイスは収録されていないが、その代わりとしてなのか、熱闘シリーズで唯一「ふきだしシステム」を採用した作品となっている。
      • 特定の技を出したりした際に、さながら漫画のようにふきだしが出るというもの。
  • 本作の仕様の一部には『餓狼伝説』シリーズ次作品である『餓狼伝説スペシャル』(以下『SP』)の要素が加えられている、
    • 『2』では本来舞ステージでしか使用できない技「ムササビの舞」が、『SP』同様にどのステージでも使用可能となっている。
    • 対空技などを喰らった時のダウンも弱と強とで異なっている。
  • 熱闘シリーズ前作の『熱闘サムライスピリッツ』にあった得点の概念はなくなった。
    • それに合わせてボーナスステージも消滅している。
  • スーパーゲームボーイ使用時に専用フレームが付くようになった。以降の熱闘シリーズでも恒例となる。
    • 前作同様、SGB使用時のみカートリッジ1本で対戦プレイ可能。

評価点

可能な限り原作の雰囲気を出そうという努力が見られる

  • スペックの制約は受けているものの、その中でも技のモーションなどといったものは概ね再現されているし、体力が点滅している状態のアクセル*1に挑発をすればアクセルラッシュを繰り出すといった、細かい点の再現には流石に全部は無理でも力が入っている。
    • ボタン設定の問題もあって実際に出せるかと言われると苦しいが、一応避け攻撃*2などのアクションもカットされずに収録されている。
  • なお、こういった対戦中の行動パターンに関する原作再現は熱闘シリーズ初期作の特色となっており、後期の作品は再現よりもアレンジを施す方向性となっている模様。
  • SFC版ではカットされていたオープニングデモも、演出などにアレンジを加えて収録されている。

雰囲気はしっかり出ているBGM

  • 流石にマシンスペックの問題はあるのでアレンジは施されているが、元となるAC版などのBGMに出来る限り忠実にしているため、曲の雰囲気はしっかり再現されている。プレイヤーの中には「SFC版の『2』や『SP』よりもよっぽど曲の出来が良い」と評する者も。

癖はあるが技はちゃんと出せる

  • ボタン入力受付にやや癖はあるが、満足に技(特に斬影拳)を出す事もままならないSFC版『餓狼伝説』や癖さえ解れば技が出せるものの、特に溜め技などにおいて独特すぎる入力受付で批判意見も強いSFC版『SP』に比べれば、そこまで強烈なものではないので強弱の使い分けの問題はあれど、GBのハードでもちゃんと技が出る事は評価すべきであろう。

ボスキャラクターが使用可能

  • AC版ではプレイヤーキャラクターとして三闘士+クラウザーは使用できなかったが、特定コマンドを入力する事で彼らを使う事ができる。
    • 使用する技や超必殺技のコマンド、エンディングなどは『SP』仕様となっている。

問題点

キムと十平衛のお手軽すぎる永久コンボ

  • キムの飛翔脚と鳳凰脚、十平衛のダッシュ二本背負いはなんと相手がダウンしていようともお構いなしに成立してしまうため、一度彼ら相手にダウンを奪われてしまうとそのままKOまで技の繰り返しで持って行かれてしまう。
    • 十平衛のダッシュ二本背負いは投げ技なので仕方ないにしても、何故か見た目は投げ技でもなんでもないキムの鳳凰脚までガードできない*3*4ために『SP』同様、キムの体力を減らした方が余計に苦戦するというあんまりな事になってしまっている*5
      • ただし、コンピューターはたとえ最高難易度であっても、さすがに永久コンボとしては使ってこない。
  • 余談になるが、十平衛はSFC版『SP』でもゲームバランス崩壊ものの「真空大いずな落とし」と呼ばれるバグ技がある。タカラには熱狂的な十平衛ファンでもいるのだろうか?

クラウザーの真空当て身投げ

  • クラウザーの当て身投げも攻撃をガードした直後にコマンドを入力すると、相手がどこにいようがお構いなしに掴んで投げてしまうため、これまた凶悪な性能になってしまっている。
    • 例えば、テリーが相手でパワーウェイブをガードした直後にコマンドを入れると、たとえお互いが画面端にいる状態であっても関係なく投げてしまうという事になる。
      • とはいえ、こちらは技の入力がやや難しく、あくまでも攻撃を防いだ後で使わなければ普通の当て身投げのモーション*6となってしまい、隙だらけになるという点もあるだけキムや十平衛の永久コンボよりはマシかも知れない。…存在している時点でまずいのだが。

全体的に動きがもっさり

  • 不快感を催すほどでもないが、流石に気にならないとするには無理があるといった程度には全体的にもっさり感がある。
    • 本作の動画などで1.5倍の速さにするとやや丁度よくなるため、熱闘ワールドヒーローズ2JETのように高速化モードがあれば快適であったかもしれない。

ふきだしシステムが中途半端

  • ウリにするには量は多くなく、かといってあれやこれやと付け加えられても今度は邪魔になるため、いらないシステムだという意見が多い。
    • 実際、前作の『熱闘サムライスピリッツ』を含め、熱闘シリーズにおいてこのシステムが採用されているのは本作だけである。
  • ふきだしなのに何故かチンの挑発(相手に尻を向けて叩く)に「ペシペシ」という尻を叩く時の「効果音」が出てきたり等、色々な意味で不可解なものもある。
    • 他にもチンの気雷砲の吹き出しがおかしく、本来なら技名をそのまま叫ぶところが「ニータウタウ」という意味不明な台詞になっている。
      • 元々原作でのチンのボイスがやや聞き取りづらいため、おそらく開発陣が聞こえた空耳をそのまま当てたものと思われる。言ってるセリフが解っているうえで聞けばそう聞き取れるが、その辺の情報なしで聞けばこのように聞こえても仕方がない部分がある。もっとも、移植作品ということを考えると、「そんなやり方でいいのか」という疑問が浮いてきてしまうが。
  • テリーやビッグ・ベアの挑発は英語表記になっているが、ふきだしサイズの問題でテリーの挑発は本来の「HEY, COME ON! COME ON!」から「HEY COME ON」に短縮されている。

ラインの概念の削除

  • ハード性能上仕方がないところもあるかも知れないが、餓狼シリーズと言えば2ラインを使ったシステムであるため、削除されてしまった事を惜しむ意見もある。
    • なお、後に出た『熱闘リアルバウト餓狼伝説スペシャル』ではラインの攻防も再現されているが、こちらは逆にラインの攻防を含めてシステムを詰め込みすぎてやりづらいという意見も挙がってしまっている。
  • この弊害として、クラウザーの超必殺技であるカイザーウェイブが猛威を振るうことに。
    • この技の攻撃判定は縦に非常に大きく、しゃがみはおろかジャンプでも避けられないものとなっている。原作ではライン移動で回避するのが前提であるところもあったのだが、本作では…。
    • そして、クラウザーは体力が減るとカイザーウェイブの連発が可能になる。飛び道具を一切持たないキャラクターだと、クラウザーの体力を減らしたらかえって苦戦するどころか、連発され完全に身動きが取れなくなる事態も起こり得る。
    • とはいえ、画面比率から考えるとキャラクターが小さくジャンプが高い関係上、中距離に陣取られる事もそうそう無い本技(コマンドが真後ろタメである為)は間合いを十分取っていればジャンプで避けられはするしジャンプまでのラグさえ気を付ければライン移動するまでもなく避けられはする。
      • 原作の仕様に倣えば、別ラインに飛ばされるとダメージを受けるために実質1ライン制になっている三闘士のステージで起こり得るものだったのが、本作では全ステージで起こり得るようになってしまったという事である。

総評

そもそもGB自体がハード形状や性能上、対戦型格闘ゲームは無理があると言われる事もあるハードではある。
だが、その中にあって可能な限り原作の雰囲気を残しつつGBでも楽しめるようにアレンジをされ、本格的な対戦格闘ゲームを要求するプレイヤーにとっては不満物である事は間違いないものの、気軽に楽しむ分にはそれなりに楽しめる作りになっている。

しかしながら、十平衛とキムのお手軽永久コンボやクラウザーの真空当て身投げは極端な例であるにしても、それ以外でも作り込みが甘いところが大小の程度の差はあれど少なくないため、お世辞にも作品の完成度も高いとは言えない。
そのため、一般的な評価も高いとは言えないが、それでも気軽に『餓狼伝説2』が楽しめると言える位のものとはなっているので、割り切ってプレイする分には十分ありな作品である。


余談

  • 本作の発売日と同日にSFCでは『餓狼伝説スペシャル』が同じくタカラから発売されている。
  • 開発元のさんえるは後に『ストII』のGB版も作ることになるのだが…詳細は該当ページへ。

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最終更新:2024年01月10日 21:21

*1 元々『2』の三闘士には超必殺技の概念が無いのだが、今作は概要にある通り、『2』に一部『SP』の概念を加えているため、『SP』で超必殺技と設定されたアクセルラッシュは体力ゲージが点滅しないと出せなくなっている。

*2 ガードモーション中に6+弱パンチ(キャラクター右向き時・テンキー表示)で出す事のできる反撃技。この攻撃中は上半身が無敵になる。2ボタンの本作でも出し方まで忠実に再現してしまっているため、的確に弱攻撃を出せるでも無ければ効果的に使うのは難しい。余談になるが、アーケード(以下「AC」)およびネオジオ版の『2』ではアンディのみなぜか避け攻撃中は全身無敵となり、逆に舞は避け攻撃に無敵が付かない。

*3 なお、「見た目は投げ技でもなんでもない~」に関しては、元々AC版およびネオジオ版『2』の鳳凰脚は移動投げ技扱いである。本来は投げ技なのでガードポーズを取ることは出来ないのだが、なぜか鳳凰脚の移動ポーズ中は相手がガードポーズを取れるため、投げる事ができなくなる(主に2D格闘ゲームではガードポーズ中の相手を投げる事ができないものが多い)。そのため移動ポーズを取る間もなく技が成立する至近距離以外は「投げ技なのにガードができる」という変な仕様だった。ただし、本作では距離に関係なく無条件でガード不能となっている。

*4 ちなみに、至近距離で出された鳳凰脚がガード不能という『2』の仕様を擬似的に再現した技として『THE KING OF FIGHTERS 2002』および『THE KING OF FIGHTERS NEOWAVE』のMAX2超必殺技として実装されている「ゼロ距離鳳凰脚」がある。

*5 『SP』の鳳凰脚は打撃技扱いとなり、至近距離含めてガードできるが、ガードしてなおキムの方が先に動けるほどに隙がなく、おまけにガードで割と多く体力を削れるのでこれまたKOするまで鳳凰脚で削り殺されると言った事も往々にして起こっていた。

*6 敵の攻撃にタイミングを合わせれば勿論その攻撃は取れるが。また、この技は『SP』と異なり、通常技だけではなく、必殺技も取れる。