ウルトラマン Fighting Evolution 2
【うるとらまん ふぁいてぃんぐえぼりゅーしょんつー】
ジャンル
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対戦格闘
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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バンプレスト
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開発元
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メトロ
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発売日
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2002年10月31日
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定価
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6,800円(税別)
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判定
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なし
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ウルトラマンゲーム・リンク
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概要
特撮番組『ウルトラマン』シリーズのキャラクターが登場する3D格闘ゲームの第2作。前作から4年の間を置いて発売された。
ハードがPS2に移ったためあらゆる面でグレードアップした作品となり、後の路線を決定付けた。
登場キャラクター
太字は新規参戦キャラ
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ウルトラヒーロー
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初代マン、ゾフィー、セブン、ジャック(新マン)、エース、タロウ、レオ
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怪獣キャラ
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バルタン星人、ゴモラ、ダダ、ゼットン、キングジョー、ベムスター、エースキラー、タイラント、マグマ星人
システム
前作はウルトラマンのゲームとしての再現性と本格的な3D格闘のシステムが噛み合わず微妙な出来になっていたが、本作では根本的な点から変更され、一般的な3D対戦格闘ゲームとはかなり違う独自のシステムを造りあげた。
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操作は全体的に簡略化。
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打撃ボタンは□ボタンのみ。方向キーとの組み合わせで多彩な技が出せる。○ボタンは「ふっ飛ばし攻撃」で、後述するシステムで必須となるコマンドになった。
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投げも×ボタンのみとなり四種類の投げ技と掴んでからの打撃に繋ぐことができる。掴んでから○ボタン入力で「ふっ飛ばし投げ」となる。
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ガードは『バーチャファイター』風のボタン制ではなくレバー後ろ入力に変更。
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ガード中に相手の攻撃に合わせ、攻撃ボタンを押すとガードアタックという反撃技を出せる。所謂ガードキャンセル。
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さらにガードの瞬間、レバー後ろ入力と×ボタンを同時に入力すると回り込みが可能。成功すると一瞬で回り込む演出が流れ、相手の後ろを取ることができる。
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移動は前作同様、前後左右の移動とダッシュ、前方ラン。そしてジャンプ。前転・後転・バク転といった新規動作も追加され、ジャンプの大小は廃された。
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「ふらふらゲージ」の導入。
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前作では任意で出せる代わりにほぼ役立たずだった必殺技だが、今作から通常攻撃で敵の疲労度を溜め、それに応じて必殺技を出せるというシステムが導入された。
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ふっ飛ばし攻撃がヒットすると相手が文字通りふらふらと気絶する。疲労度は「ふらふらゲージ」として視覚化しており、気絶している間に減少していく。その間にボタンを押して「必殺技ゲージ」を溜める。
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必殺技ゲージは溜めた時間によって色別に分かれており、タイミング良くボタンを離すとそれぞれの色に対応した必殺技が発動する。相手のふらふらゲージが無くなるまでに必殺技を出せなかった場合失敗する。
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通常攻撃では敵の体力が0になっても勝負はつかないので、必ず必殺技を使って敵の体力を0にする必要がある。また、投げも含め通常技の攻撃力がかなり低いので、この必殺技を当てることが勝利への鍵。つまりこのふらふらゲージを溜めることが、本作の重要なゲーム性の一つ。
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前作の「GROGGY状態」に必然性を持たせたものとなっており、SFC版『ウルトラマン』の必殺技システムに近い。ウルトラマンの醍醐味である「必殺技による決着」をシステムとして昇華させ、本シリーズを象徴するシステムとなった。
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ゲームに深みを持たせる「援軍システム」。
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各キャラの体力ゲージには青い部分があり、一定量ダメージを受けて青い部分に到達すると援軍が現れて支援攻撃を行ってくれる。
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各作品の防衛隊の戦闘機や同胞の円盤が飛来して攻撃を加える。ダメージソースにはならないが、ふらふらゲージを溜める効果を持つ。
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エースキラーやタイラントの場合は怨念が発動し、相手におどろおどろしいエフェクトが纏わり付き自然とゲージが溜まっていってしまう。
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ウルトラマン同士の対決では設定を尊重し、援軍システム自体が存在せず青い部分が消える。
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ゴモラの場合は援軍が来ない代わりに
何の前触れもなく尻尾が千切れる。
この状態になると、必殺技を含めた尻尾攻撃の攻撃判定が無くなるので、使える技が限定されてかなり不利を強いられてしまう。尻尾が千切れたゴモラで戦えるのは、恐らくこのゲームだけだろう。
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新規モードの追加。
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「ウルトラモード」
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ストーリーに沿って特定の組み合わせによるバトルを行う。一般的な格ゲーでいうストーリーモード。ストーリーに沿った特殊なシチュエーションが多く登場する。評価の概念は存在せずストーリーを楽しむモード。
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「リプレイモード」
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過去の対戦が自動で記録され、何度でも鑑賞できる。メモリーカードにコピーして保存する事も可能。
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鑑賞中にアングルを変更できる。俯瞰で動くアングルやステージ内の特定の地点(電車の中や東京タワーの展望台など)の定点カメラなど実際の映像作品のような臨場感溢れるカメラワークを楽しめる。
これらの措置により、後のナンバリングに繋がる基本システムがほぼ完成した。
評価点
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登場キャラ・必殺技の増量
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前作はヒーローは初代マン・セブン・タロウのみだったが、本作ではレオまでの兄弟が勢揃いした。
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怪獣はタイラントとベムスターが加わり、各ヒーロー毎に因縁の対決が出来るようになった。
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前作で一種類ずつしか無かった必殺技も1キャラ最大4種に増量。必殺技演出ではアストラやギラス兄弟も登場する。
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「ウルトラマンらしさ」の強化
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PS1からPS2になり、グラフィックが大幅に進化。前作で表現しきれなかったウルトラマンの巨大なスケールを十分に出すことに成功している。
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キャラクターのCGは非常に高い再現度をほこる。その完成度の高さは続編の『3』のみならず、『大怪獣ラッシュ ウルトラフロンティア』『ウルトラマン フュージョンファイト!』、『ウルトラ怪獣モンスターファーム』などの10年、20年後の作品でも使われ続けていることからも窺えるだろう。
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前作ではかなり違和感のあったステージもフルポリゴンに生まれ変わった。背景も美麗に細かく作り込まれ、リアルな街中で立体的な格闘ができるようになった。
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ステージ内のオブジェクトも大幅に増加。ウルトラシリーズらしい建造物の破壊も効果音付きで再現している。例えば電線が掛かっているステージでは電線に引っ掛かると効果音と共に細かく電線が千切れる演出が入る。
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特に前作から引き続いた神戸港、水没都市は流れる水のCGもあってかなり見栄えが良く、完全に別物である。
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これらの演出は戦闘に影響はないので、気兼ねなく派手に戦っていける。
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1つ1つのステージの作り込みに関しては、ボリュームの増加に伴って簡略化された『3』や『Rebirth』よりも完成度が高いといえる。
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モーションが大幅に改良。前作では他の格ゲーの動きを安易にウルトラマンのキャラにやらせただけのような不自然な動きが多かったが、今回は前作のモーションを流用しつつ原典の動きを多数取り入れたことでウルトラマンらしい格闘となった。
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前作の評価点であったウルトラマンらしい重い挙動・大振りな動きも引き継いでおり、グラフィックの向上によってリアルさが増している。しかし前作同様格ゲーとしては足を引っ張っているのは否めない。
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ロード画面では昭和ウルトラマンのOPでお馴染みの影絵風の一枚絵が表示される。次に戦う相手が誰か分かるようにもなっている。
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ゲーム用にアレンジされたテーマ曲は今作でも完成度は高い。『エース』の「TACのテーマ」はシリーズ中、今作でしか聴けない。
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完成度の高い「ウルトラモード」
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「怪獣殿下」「ウルトラ警備隊西へ」は原作のシチュエーションに沿った指示に従って戦うため、ファンなら十分に楽しめる。
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途中で詳細なムービーが多く挟まれ、可能な限り原作の構成を忠実に再現している。
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この二つは『3』でも引き続き収録されたが、ゲームの構成に沿ったアレンジが加えられているため本作の方が再現度は高い。
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オリジナルストーリーの「大地球侵略作戦」は参戦キャラクター総出演で展開される豪華な作り。
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このシナリオでしか見られない特殊演出が多数登場するため見応えも十分。
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最終決戦はゼットンにウルトラマンからレオまでのウルトラ兄弟が一斉に立ち向かう燃える展開。更に全員が倒されると真打としてゾフィーが登場するという熱いサプライズも用意されている。
問題点
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PS1からPS2になったというのに、キャラ数は12体が16体になっただけなので、あまり増えた気がしない。
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怪獣は前作からエレキングとメトロン星人が削られた為、数は変わっていない。
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しかも隠しキャラはゾフィーとゼットンの2体だけで、その上条件を満たすと2体同時に入手できてしまう。
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おまけにゼットンはウルトラモードの強さそのままの高性能であり一強のバランスになってしまっている。
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ゲーム自体の作りの甘さがみられる。
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攻撃ボタンが一つだけになったため全体的に技数が少なく、その上コンボ重視のバランスではなくなったので前作以上に単調な戦闘になってしまっている。
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特に下段技は発生がかなり遅く、種類が少ないため見切られやすく、ガードの使い分けの意義が薄くなっている。
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勝負を決するのに必要なふっ飛ばし攻撃だが、○ボタンとふっ飛ばし投げの2種類しかない。更に通常のふっ飛ばし攻撃は隙の大きい大振りなモーションが多く、当てるのが難しい。通常技同様に空中、ダッシュのバリエーションがあっても良かったのではないだろうか。
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必殺技は前作より格段に実用性が増したが、バリア、ダメージ軽減などの逆転要素が無いため、当てたら即・決着となる。このため突き詰めると「早く必殺技を出したもの勝ち」となり、ややゲームとしての面白味に欠ける。
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新規アクションである「回り込み」が厄介。相手の攻撃を受け流す格ゲーらしいテクニックだが、前述の通り技の種類が少なく大振りなため高確率で成功してしまう。COMはほぼ確実に連発してくる。
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また、回り込む演出が例に漏れずスローなため只でさえ遅いゲームのテンポを阻害してしまっている。
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総じて、操作性の簡略化は評価されているが、ゲームに上手く落とし込むまでにはいかなかった。ここに加えて前作から引き継いだ挙動の遅さもあり、まだ格闘ゲームとしては未完成な面が窺える。
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ウルトラモードのストーリーは上記の3本だけしかない。ゴモラ・キングジョー以外の因縁の相手は全て「大地球侵略作戦」内でまとめられている。
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『3』では大増された代わりに各ストーリーの演出が簡略化されたため、数を絞ったことで演出の完成度が高まったとも言えるが、やはり複数のストーリーを楽しみたかったという声が多い。
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必殺技の演出の際、アングルがほとんど動かないためあまり見栄えがしない。レオキックなど、大きくアングルの変わる技は演出が省略されている。
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レオキックについては原作のように高く飛び上がるのは同じだが、空中でキックの体勢をとって降下するシーンが映らない。このため敵と密着した状態で発動すると飛び上がった時に敵と激突したようにしか見えない。
賛否両論点
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前作から引き続き、原作を無視した挙動を取るキャラがいる。
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あからさまに不自然な動作は削除されたもののアクロバティックなバルタン星人やオカマのような挙動のダダはそのまま。この2体については以降のシリーズでも改変されていない。
総評
前作から一変した独特の戦闘システムは、まさしくウルトラマンらしさを十分引き出すもの。特にふらふらゲージは、必殺技の派手さと強さを両立させる卓越したシステム。
美麗なグラフィックとリアルな挙動もあり、本作はウルトラマンゲームとして見事に正当進化を遂げた。
しかし、惜しむらくは本来のジャンルである格闘ゲームとしての精度がいまいち及ばなかったことだろう。
初心者やウルトラマンファンならば簡略化された操作でウルトラマンを扱えるので、ゲーム性を考慮しなければ十分楽しめるはずである。
…と言いたいところだが…。
その後の展開
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本作にとっての最大の不幸は、2年後にシリーズ最高傑作と呼ばれる『3』が同じPS2で発売されてしまった事だろう。
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『3』は本作の完全な発展型であり、キャラは全員続投した上に大幅増加、ウルトラモードのシナリオも20本に増量され、戦闘面の問題点もあらかた解消されている。
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これにより、本作は「PS2ソフトとしての容量を活かしきれていなかった」「『3』が有ればいらない子」と白眼視される不遇な存在となってしまった。
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これも『Rebirth』と同じく『3』が神がかりすぎたのが祟った結果であろう。
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しかし『3』で容量の都合上オミットされた本作独自の魅力も存在しており、一概に凡作といえない作品である。
余談
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発売当時のCM(後半)が中々にシュールなもので印象的である。※参考動画
最終更新:2023年10月13日 23:36