信長の野望

【のぶながのやぼう】

ジャンル SLG
対応機種 PC-6001mkII以降、PC-8001以降、PC-8801以降、
PC-9801以降、FM-7/8以降、
MZ-1500/2000、X1、MSX/MSX2、Windows*1
発売・開発元 光栄マイコンシステム
発売日 1983年5月
定価 【PC88】6,800円
プレイ人数 1~2人
判定 なし
信長の野望シリーズリンク

概要

光栄の看板ゲームの1つ。
戦国大名となって全国を統一する歴史SLG『信長の野望』シリーズの第一作。

  • ゲームの目的は大名家の当主となり、内政で勢力拡大を繰り返して他の勢力を合戦で討ち滅ぼし全17国(越後~摂津和泉)を支配下に治めること。
  • シナリオは1560年開始の一つのみ。
  • プレイヤーが選べる大名は1Pが織田信長、2Pが武田信玄で固定。

特徴

  • 従来のSLGは戦術に特化しており、コンピューター上でボードゲーム*2を再現した物だったが、本作は領国経営(戦略)と合戦(戦術)の2つで成り立っている。
  • プレイヤーは、領国に対し開墾や町作り等の様々な政策を打つ事によって、領国の経済を発展させ、軍資金と兵糧を確保しながら兵力を増量する。
    • 現代の会社経営に通じるこうした経済的概念は、一般のプレイヤーにも受け入れられ、様々なコンピュータに移植され大ヒットした。
    • この経営概念は同社の様々な戦略ゲームに盛り込まれ、以降、本作で歴史シミュレーションゲームの地位を築いた。

主なルール

  • まずゲーム開始時にプレイヤーの能力をルーレット方式で決定。
    • スペースキーを押すだけの単純な作業だが、各能力値の幅が30~110と広く、何度もやり直せた。
      • 能力値次第で内政や戦争での効果も変わってくるので繰り返しプレイしても同じ戦略が比較的通用しにくくなっている。
  • ゲームレベルは5段階で選択。
    • 最高難易度の「5」はかなり鬼畜。最初のターンさえ回ってこないうちに隣国に攻められることもあり得るレベル。能力値が低いと太刀打ちする術がなく、あっという間にゲームオーバーとなる。
  • 領国経営は国ごとに年4回(春夏秋冬ごとに1回)訪れ、一度だけ命令を実行することが出来る。
    • コマンドの種類は富国強兵に関する物が中心で、各機種の性能によって変化。ちなみに全機種対応のコマンドは、(兵の)移動、戦争、金・米の輸送、治水工事、開墾、兵を雇う、堺の商人と取引、兵士訓練、各国の様子、町を作る、民・兵に与える、何もしないの12種類。
      • なお、商人との取引では米や武器の売買も行うことになる。商人がいる確率は50%と低く、運が悪いと一年間金が手に入らず内政ができない場合もありうる。
    • シンプルでわかりやすいシステムだが初期状態だと確実に兵糧が減っていくので文字通り金1も無駄にできないシビアな内政手腕を要求される。
      • 年貢率が50%と高すぎて民の疲労度が高いのが原因。年貢率を下げてやったほうが収入が多くなる。
  • 戦争画面はヘクスで構成された戦術タイプ。ただしフィールドは9×5マスとかなり狭く、使える戦術も多くはない。6種類の地形がある。兵力は5部隊に分割され、それぞれを操作して行う。戦争のコマンドは、移動、攻撃、降参、何もしないの4種類。移動は1マスずつで、攻撃も隣接したものにしかできない。コマンド操作は1部隊につき1ターンに1回だけ。
    • なお、兵力が極端に少ない場合は5部隊未満にもなる。
    • 攻撃時に不利な方のみダメージを受ける、そのため戦力差が大きければ無傷で勝利することも可能。
  • 戦争中における勝利の条件は、敵の第一部隊が全滅する、敵の大将が退却する、敵の兵糧が底を突く、守備側が30日間持ちこたえるの4つ。
    • また、敵国に攻め込んだ時点で相手の兵力や兵糧がゼロの場合も勝利となる。
  • 大名が出陣していると、相手に与えるダメージが2倍になる。
    • 敵大名を倒すと、その大名が治めていた全ての国を自国の領国にする事ができる。敵大名が攻めてきたところを返り討ちにした場合も同様。
      • どんなに強大な国力があっても大名が倒されると滅亡である。プレイヤーの場合も同様なので、終盤でもうっかり兵力や兵糧の隙を突かれてゲームオーバーになることもある。

評価点

  • 上記でも挙げた様に戦術に内政、軍備の要素を取り入れた当時としては斬新なゲーム性。
    • 当時のSLGは大抵与えられた条件下での戦術SLGが大半であった。攻め込む、守る時の兵力、そして兵を有する国の状況を内政などによって高めることのできる今作がいかに画期的であったかが想像できる。
  • 能力、災害イベント、敵国行動のランダム性により繰り返しプレイしても全く同じ展開にはならず長く楽しめる事。
  • 歴史上の人物として国盗り合戦を行う歴史シミュレーションゲームの確立。
  • 誰でもスグに覚えられるシンプルな操作方法。
  • 総取りシステムと領地数の少なさ*3もあって1時間程度で終わる程のスピーディなゲーム展開。

問題点

シリーズの初代作にありがちな粗やバランス面での不具合が多い。

  • 初期版はプレイが継続不可能になるなどバグが多かった。
    • 今作では忠誠関連(一揆発生や謀叛)でのデメリットはなく民の忠誠度が下がりにくいため、年貢率を1%→99%→1%…としていくとあっという間に兵糧が増える。米のほぼ全てを奪い取っても餓死しないという超ドM民であった。
    • 他にも兵数を1人にして訓練し、1回で訓練度をMAXにする裏技は有名。
      • これらの問題は事実上の完成版である「全国版」では修正されている。
  • 最重要パラメータは「忠誠」。兵糧収入と兵士の戦闘能力はほぼこの能力で決まるほど重要。
    • 内政については民忠誠の数値が大きく依存しており、この数値をある程度高めながら治水を行えば必要な兵糧はほぼ確保可能。後は必要に応じて手に入った兵糧を売り払い兵士数が維持できるまでの金収入を得られるように街開発を行えば良い。
      • 前述の通り最初の2~3年はほぼカツカツの状態だがうまくいけばこれだけで500程度の兵糧は軽く確保でき、この後で開墾も行えばあっと言う間に収入がMAXの8000になる。
    • 兵士に関しては兵士数が多いほど有利なのは今作でも同じ…だが他の要素(忠誠、訓練、武装)の影響がかなり大きいので忠誠度をMAXまで上げて適度に訓練しておけば2~3倍程度の兵力なら無傷で駆逐できる
      • 4~5倍程度でも流石に地形などを考慮しなければ容易に勝たせてはくれないが決して無謀ではない。武装も高ければ10倍程度でも勝てる見込みがある。
        当時の状況下では地方ごとの兵士の能力に大幅な差があった*4*5ので納得のいく要素ではある。
      • 一度数値を上げると徴兵しても各数値が下がらず(忠誠に関しては攻めとった国に残留する兵士のみ平均化される。)、安易に物量に頼る戦い方だと維持費もかかるし攻めとった領地の運営にも支障が出るのでなまじ兵力を増やすよりも金や米を施す方が安上がりである。
      • これに関しても調整が加えられ、兵力が増えた際は数値が平均化されていくようになった。
  • 当時のパソコン性能とプログラム技術は発展途上で未成熟にあるため稚拙な点が多い。
    • NECの8ビットPCシリーズでリリースされていた以上必然であったが、本作のプログラムは大半の機種においてBASICで書かれている。つまり、プログラムの閲覧が容易で簡単に内容を書き換えられる仕様だった。
    • 文字のほとんどが半角カタカナで表示されていたのでメッセージが読み辛い。
    • 大名の顔グラフィックとBGMが無く、効果音も戦闘画面でビープ音が入る程度。
  • 舞台となる範囲が狭く、信長を中心とした近畿・中部地方の17国に限定されている。操作可能な大名は信長と信玄だけで、武将の概念すら無かった。
  • 委任コマンドがないので流石に後半10数国あたりになってくると内政が煩わしくなってくる。

総評

経営の要素を含む戦略と戦術の両方を取り入れたゲーム性、日本の歴史上の実在した人物をプレイヤーキャラにしたことによる感情移入のしやすさ、戦国時代の苛酷さを表現したシンプルかつシビアなゲームバランス等この時点でほぼ歴史シミュレーションの骨組みが出来上がっている。
後のシリーズも大半がキャラやシステムの追加、バランス調整等でゲームの方向性を変えているに過ぎない*6ことからも今作の完成度がいかに高いかを物語っている。

当時、人を集めなければプレイできなかったボードシミュレーションゲームを手軽に一人でも遊べるようにしたSLGは、コンピューター上でTRPGの再現を目指した『ウィザードリィ』などと共通している部分とも言えよう。
流石に年月の経過によるチープさ、バグや数値の上昇の異常さなどはいただけないが、ある意味特徴として捉えられなくもない。

全ての大名でプレイできる50ヶ国モードもあり、移植版の多さや携帯アプリなどの存在も影響し知名度の高い『全国版』の存在でシリーズの原点という立場さえ奪われている今作だが興味がある方はプレイして全国版と比べてみるのも良いだろう。 入手に関しては歴代タイトル全集が再現性が高いがゲーム内容自体はリターンズも大差ない。単品入手の場合ならば価格が安く操作性の良い下記リターンズ版かSteam版*7を入手するとよいだろう。


信長の野望 リターンズ

【のぶながのやぼう りたーんず】

ジャンル SLG


対応機種 Windows
プレイステーション
セガサターン
発売元 コーエー
発売日 1999年1月22日
定価 【Win】1,980円
判定 なし
  • 初代をベースにインターフェイスの変更等の要素を追加したリメイク版。
    • ただし兵士1訓練、年貢率改正による訓練、忠誠度上昇については修正されているので注意。序盤のバランスも若干厳しめに設定されている。
      • …と思いきや年貢率の改正技は(流石に1%→100%のような極端な変更では効果がなくなっているものの)使用でき、旨くやればやはり内政せずとも兵糧収入を上昇させられる。PS版の説明書に「バランス崩壊技」として記載するあたりある程度意図したものと思われる。
  • ※17ヶ国モードのみで全国版は遊べない。

主な変更点

  • 『全国版』以降の作品同様にBGMの追加。
  • 「効果」コマンドの追加。
    • コマンド実行時の予測効果が表示されるためにより的確なコマンド実行が行えるようになった、年収もわかるので便利。
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  • コーエー
  • 初代

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最終更新:2022年12月09日 07:07

*1 歴代タイトル全集とSteam版

*2 駒や陣地を取り合う囲碁や将棋のような物。 一般的なものはヘクス(六角マス)で構成されたボード上でプレイするもの。他にも大ざっぱなエリア間でプレイする簡単なものから、メジャーで距離を計測したりする緻密なものまである。 史実を題材とした作品やオリジナルの世界での冒険要素を取り入れたTRPGが新たなジャンルとして生み出された事からRPGの始祖とも言える。

*3 これらは当時のPCの容量の少なさも起因しているのだが…。

*4 実際「甲斐(武田)兵一人で尾張(織田)兵五人と同等」と呼ばれ尾張兵は貧弱の極みであったとされる。その為に信長は豊かな国力を活用し、鉄砲による遠距離攻撃の強化と足軽雇用によって恒久的に圧倒的戦力を行使可能にする常備軍の配置でのカバーを行い、それを以って然る後に長篠の戦いで武田軍を破った。

*5 織田軍の十倍もの兵力で今川義元が攻め込んできた桶狭間の戦いでも、総大将の今川義元に的を絞って奇襲し討ち取ることで唯一の勝ち筋を手にしたのである。当時の兵は純粋な軍人ではなく民間人をかき集めて戦わせることも多かったため、現在の軍のように命令だけで統率できること自体が希であり、武将の運用方法次第で兵力差を覆すケースは決して少なくはなかった。

*6 現在の箱庭式の作品でもそれは同様で、基本的な戦略的要素の骨組み(富国強兵→合戦)はほぼ変わっていない。

*7 NOBUNAGA'S AMBITION / 信長の野望と表記