暗黒伝説

【あんこくでんせつ】

ジャンル アクション
対応機種 PCエンジン
メディア 2MbitHuカード
発売元 ビクター音楽産業
開発元 アトラス、レッドカンパニー
発売日 1990年9月7日
定価 6,200円
判定 なし
ポイント 魔境伝説の続編的存在
ひたすらに暗い雰囲気
前作ファンからは賛否が分かれる内容


概要

  • 1990年にビクター音楽産業(現:ビクターエンタテインメント)からリリースされた横スクロールアクションゲーム。
  • タイトル画面などのクレジットにはアトラスやレッドカンパニー(現:レッドエンターテイメント)の名が表示されているあたり、実開発はここが担当していると思われる。
  • 北米版PCエンジンであるTurboGrafx-16では"The Legendary Axe II"というタイトルになっている。二年前に同じくビクター音楽産業からPCEでリリースされた『魔境伝説』の北米タイトルが"The Legendary Axe"で、シリーズ作品という扱い。
  • 一人プレイ専用。全7ステージ構成。

ストーリー

人々を恐怖させていた魔王ドロダムは勇者ブレイスによって倒された。
ブレイスは人々に求められて王となり、その隣にはドロダムから救った幼なじみグレイスが王妃として寄り添った*1
平和な日々が続いたが、あるとき王が急死し、さらに王妃までが亡くなってしまう。遺された王子達は王位を求めて争い始め、今や残っているのは長兄ザークと末弟セリウスの二人だけ。この争いの中、ザークはかつて父が倒した魔王ドロダムを復活させていた。魔王の力を借りたザークに敗れ王宮から転落するセリウス。
だがセリウスはからくも生き延びていた。そんな彼のそばに伝説の王剣が落ちてくる。兄ザークを倒すため、セリウスは王剣を掴み立ち上がり、王宮を突き進んでゆくのだった。


主なルール

  • 操作系統。
    • 方向キーで主人公(セリウス王子)の移動操作。ボタンは各自、攻撃とジャンプに使用する。またRUNボタンも使用対象に含まれる。
      • 方向キー左右で前後移動。
      • 方向キー下でしゃがみ動作。主人公の下位置に地形がある場合は、キー下 + ジャンプボタンで下に降りられる。
      • 攻撃ボタンはII。主人公の持っている武器で攻撃を行う。武器の1つである「鎖鎌」を所持している場合のみ、方向キー上 + 攻撃ボタンで斜め上攻撃ができる。
      • ジャンプボタンはI。ボタンを押す長さによって主人公のジャンプ力に変化があり、ジャンプ中は方向キー左右である程度の移動調整が可能。
        ジャンプ中の主人公足元には攻撃判定があり、ほとんどの敵に対し踏みつけてダメージをあたえられる性能を持つ。
      • RUNボタンで使用回数制限のある「マジックボム」。使うとキーンというような効果音がして、放物線で放たれる。それが地形(天井や壁を含む)や敵に触れる事で画面内全体の敵にダメージをあたえる。
        なお同様のボムを一部の敵も使ってくる。同じく効果音つきでボム自体を避けても無意味な画面全体攻撃だが、こちらの攻撃で破壊すればダメージを受けずにすむ。
  • 武器について。
    • 主人公には3つの武器が存在し、武器アイテムを取得する事により武器の変更ができる。武器の性能は以下の通り。
      • 「剣」…プレイヤーの初期装備で、リーチ、攻撃判定共に安定した性能を持つ。説明書では「伝説の王剣」とされている。
      • 「斧」…リーチが短いのが難点だが、3武器中最も攻撃力が凄まじく、攻撃判定も強い。北米版タイトルにある"Legendary Axe"はこの斧なのだろうが、日本版の説明書ではこれといって何か語られてはいない。
      • 「鎖鎌」…リーチが非常に長い利点を持つ反面、攻撃判定に隙が多く、大量の敵を捌くには厳しい場面もある。この武器のみ上記の操作系統で示した通り、斜め上攻撃が可能。
    • 各武器は武器アイテムを取得する度にパワーアップできる。
      • いずれかの武器アイテムを取得すれば武器変更と併用してパワーアップの効果も付く。パワーアップは最大4段階まで可能。
      • 所持している武器と別の武器アイテムを取得してもパワーアップ効果は持続される。
  • アイテムについて。
    • 敵を倒すと時折オーブ型のアイテムを落とす。以下その詳細。
    • 武器アイテム。
      • 「剣」…武器を剣に変更 + 1段階のパワーアップ効果。
      • 「斧」…武器を斧に変更 + 1段階のパワーアップ効果。
      • 「鎖鎌」…武器を鎖鎌に変更 + 1段階のパワーアップ効果。
    • ライフアイテム。
      • 「ライフ」…ライフが1ゲージ回復。
      • 「ライフ増加」…ライフゲージ最大値が1増加 + ライフが1ゲージ回復。
      • 「全ライフ」…ライフが完全回復。
    • その他アイテム。
      • 「ボム」…ボムのストックが1増える。
      • 「1UP」…1UPの効果。
      • 「7UP」…7UPの効果。中盤ステージのとあるザコ敵が持っている。
  • ミス条件について。
    • 敵・敵攻撃・障害物に触れる事によるダメージのライフ制。それに加えて残機制も兼ねる。ミス後は戻り復活となる。
      • ミス条件は「ダメージによるライフゲージ全消費」「各ステージの定められた制限時間が0になる」のいずれかとなる。
      • ダメージをもらうと、いかなるダメージでもライフゲージ1消費となる。
      • 本作には落とし穴によるミス要因はない。ゲームの関係上、高い場所から落下する状況に遭遇しやすい傾向にあるが、若干のひるみが発生するだけで一切のダメージはない。
    • 主人公のステータスとペナルティに関して。
      • ゲーム開始時の主人公ステータスは「装備武器は剣」「ライフゲージ最大値が5」「マジックボムストック0(非所持)」となっている。
      • ライフ増加アイテムを取得するとライフゲージ最大値が10まで増やせる。
      • ミスすると「ライフゲージ最大値が1減る(但し初期値の5を切る事はない)」「装備武器が剣に戻りパワーレベルもリセットされる」というペナルティがある。

評価点

  • 上質なグラフィック・BGM周り。
    • 前作に比べて作風の方向性が変わってしまった(下記)ものの外観面でのクオリティは高い。
      • ダークファンタジーを上手く表現したグラフィックの書き込みと、それを盛り上げてくれるBGMの評価はプレイヤーから概ね好意的に見られている。
  • 上質なゲームバランスは健在。
    • ある程度やり込めば無理なくクリア可能な難易度調整がなされている。
      • 仕様変化により前作よりも難易度が下がったが、それでも「急激なヌル難易度化」という極端さはなく、達成するやりがいは十分に持っている。
      • ダメージをもらっても武器のパワーダウンはせず、アイテムが適度に登場する為、極端に苦戦する場面は抑えられている。
      • 1ステージの構造は適度で極端に長くも短くもない為、あっけなかったり、だれたりする事もなくプレイできる。
    • 操作性に関しても前作同様の軽快さで、無駄な操作の不備による足止めとは無縁である。

賛否両論点

  • 前作とは雰囲気が変わりすぎている。
    • 本作はひたすらに暗い色使いが多用された、ゲームタイトル通りの「暗黒的な一面」が大きく目立つ外見となっている。
      • 「世界が暗黒に閉ざされ、主人公が戦う舞台が兄の潜む塔内限定」という事もあり、日が当たる様な場面が一切存在せず、ひたすらに影がたたずむ陰湿なデザインで塗り固められている。
      • 敵側デザインは人型、機械型、グロテスク型が主流で、どれも陰の強いものばかりである。明暗がはっきりとしていた前作の敵群と比べると、無機質なキラーマシーン的な敵の割合がかなり多い。
      • BGMに関しても、「ひたすらにおどろおどろしい、もしくは哀愁的なムードの楽曲」がほとんどで、プレイしていくうちに瘴気に包まれそうな気分になってくる。
        前作に関してはBGMも明暗のバリエーションが豊富だっただけに、あまりの楽曲の変わり様に違和感を覚えるプレイヤーも少なくなかった。
    • そして極め付きは救いなど全くないといわんばかりの欝エンディングでとどめを刺される事になる。
+ ネタバレ

弟は苦行の末、魔王もろとも兄を倒し、王座を奪還する事に成功。邪魔者が消えた王座に弟が就き、多くの配下に囲まれて高笑いで歓喜に酔いしれる。
しかし、王座を狙う刺客が配下の中に紛れ込んでおり、座にいる弟に襲い掛かってきた。あまりも突然の出来事に何もできずに驚愕する弟、そして容赦なく刃を向ける刺客。
毒牙にかけられる寸前の弟の場面が映し出された後に、画面が暗転してスタッフロールへ…。

本作はイベント中の文章表示が一切されないので、正確なる描写の意味合いは実のところよくわからない。
しかし、「かつての兄を倒したのに悲しむどころか王座にて高笑いする弟の非情さ」「一向に晴れない暗黒」といったシーンから察するに、「弟もまた、兄同様欲望に飲み込まれ、同等の道を選んだ」ととれてしまう。さらには刺客による命の危機でその栄光すらも三日天下に終わる徹底的に救えないオチ
その後、仮に弟が刺客に殺されたとしても、刺客を返り討ちにして弟が王として居続けたとしても、どの道こんな欲まみれの者たちが王に君臨する王国に平和が訪れる時代はままならないだろう…。

  • ゲームシステムも前作から変わりすぎている。
    • 「重い攻撃」よりも「斬りまくる攻撃」に特化した爽快感の変化。
      • 前作では「溜めによる一撃必殺攻撃」という重量感のある攻撃技を当てる面白みが大きな魅力だったが、本作にはそういう溜め系の攻撃は完全に廃止されている。
      • しかし本作では、溜め攻撃がなくなった代わりに、前作よりも攻撃連打が効きやすくなっている。大量の敵をガスガスと斬りまくるという意味では本作の方が優れており、爽快感の意味合いが大分違う。
    • 武器の性能が前作とは別物。
      • 前作の主人公の武器は斧一本のみだったが、本作の主人公は「剣・斧・鎖鎌」の3種を使い分ける形式を採用している。
      • 良くいえば武器を使い分ける楽しみが増したといえ、悪くいえばこだわりの武器1つだけで敵地に乗り込む硬派感が薄れたともとれる。
      • なお、本作の主人公も斧は使えるが、前作の斧とはほぼ別性能の武器となっており両者の関連性は特にない。
  • やっぱり洋ゲーチックな絵図。
    • 純国産ゲームなのに前作同様の洋ゲー臭を持っている。
      • ジャケット絵が映画「コナン・ザ・グレート」みたいなマッチョな剣士が敵に囲まれるイラストになっており、媚びが全然感じられない。
      • 前作よりかはイラストタッチのクセは比較的控えめであるが、ジャケットの絵柄的には本作の方がソダンっぽい。
    • 前作に引き続き、ゲーム内の主人公がパンツ一丁のマッチョな容姿。
      • ちなみに兄の容姿はアーマー装備で割と普通である。なんで主人公の弟だけが半裸なのかは謎である。
      • 前作とは違い、主人公側にはヒロインは存在しない。しかし、雑魚敵の中にはコウモリ女「ウィウィ」という女キャラはいる(しかも妙にエロい容姿)。

問題点

  • ゲームとしてやや不親切な面もある。
    • 全体的にキャラが大きめに表示されている関係上、一部の場面では敵などの配置が分かり辛く、唐突なダメージを食らう事が多々ある。
    • ミスするとパワーアップが初期に戻るなどのペナルティがある為、復活後の乗り越えが若干困難になる可能性もある。とはいえ、腕前と運さえしっかりしていれば十分乗り越える余地はあるが…。
    • 前作『魔境伝説』を含め、他の多くのPCEソフトがポーズをRUNボタン*2に割り振っているところ、本作はSELECTボタンに振っている。ではRUNボタンは何かと言えば、前述の通り使用回数に制限のあるマジックボムである。
      • このために、ポーズをかけるつもりでついRUNボタンを押してしまい、ボムを無駄撃ちしてしまうという恐れが非常に高くなってしまっている。
        パッド上のボタンの並びが左からSELECT・RUN・II・Iなので、「ボム・ポーズ・攻撃・ジャンプ」よりは「ポーズ・ボム・攻撃・ジャンプ」の方がという配慮なのだろうが、ゲームに慣れ親しんでいるプレイヤーはどうしても混乱しがちである。
        ボムの誤爆ならまだいい方で、PCエンジンは本体にリセットボタンが無くRUN+SELECTでリセットというのが標準仕様であったため、ポーズやボムを使おうとして誤爆リセットという事故も起こりがちである。
      • メインボタンが2つしかないPCEではSELECTやRUNをゲーム中の操作ボタンとして割り振ったソフトは本作以外にも少なからずあった。
        なお、本作リリースの翌年1月には、RUNとIIボタンの間に新設されたIIIボタンにSELECTもしくはRUNボタンの機能を割り振ることの出来るアベニューパッド3が発売されている。
  • 難易度選択などのオプション設定が無い。
    • コンティニュー回数も3に固定だが、裏技で最初にゲームオーバーになった時に増やす事は可能(連打を頑張れば100くらいは増やせる)。

総評

雰囲気的にもゲームシステム的にも、前作とは似ても似つかないような変貌を遂げた続編ではあるが、ゲームそのものは丁寧に作られた佳作。


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最終更新:2023年03月02日 15:58

*1 『魔境伝説』の内容と似ているが、あちらの主人公はゴーガン、ヒロインはフレイア、敵の親玉はゲ・エナジーガ。全員別人である。

*2 ファミコンのコントローラーなどでいうところのSTARTボタン。