かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相

【かまいたちのよる とりぷる みかづきじまじけんのしんそう】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 プレイステーション2
発売元 セガ
開発元 チュンソフト
発売日 2006年7月27日
定価 6,090円
判定 なし
ポイント 内容は『2』の続編&フォロー
再び我孫子武丸氏がメインで執筆
ミステリー構造は『1』形式に回帰
水増し感の強いバッドエンド
いろいろありつつも綺麗な幕引き
チュンソフトサウンドノベルシリーズ



戻ろう。全てを終わらせるために



概要

人気サウンドノベル『かまいたちの夜』シリーズの第3作にして、『1』『2』から続く物語の完結編。
前作のシナリオは3人体制だったが、本作では『1』と同じく我孫子武丸氏1人に戻っている。
前作『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』は、メインであるミステリーシナリオの方向性を前作と大きく変えた事で評価が揺れたが、本作はその『2』のメインシナリオの続編・後日談にあたり、『2』当時に指摘された矛盾点をフォローするような描写も多い。


ストーリー

50年に一度の「かまいたちの夜」に三日月島で起きた事件から月日が流れた。
その当事者である香山誠一は、一連の事件の中で殺害されたある人物が、今も三日月島の呪いに苦しんでいるという夢を見るようになる。
そこで香山は、事件のちょうど1年後である8月15日に、事件の当事者たちを三日月島に招いて、未だ浮かばれぬ魂の供養を行う事を決意した。

惨劇の夜の後、自分の暮らしに戻っていた当事者らは、香山から供養に誘われてそれぞれ複雑な思いを胸に、再び三日月島へと赴く。


特徴

  • 『1』『2』のメインストーリーが同時再録
    • 本作のシナリオは『2』と密接につながっており、前作を未プレイだと内容を理解するのが難しいため、『1』と『2』のメインシナリオが再録されている。『×3(トリプル)』というタイトルはここからきている。
    • それぞれ、『1』の「ミステリー編」を「ペンション“シュプール”編」と、『2』の「わらべ唄篇」を「監獄島のわらべ唄編」に加え、『3』本編を「三日月島事件の真相編」としてタイトルで選択する方式。
    • 再録はあくまでメインシナリオのみであり、サブシナリオへの分岐はない。また一部のBGMやムービー、文章がオリジナル版から変更されている。
    • 単に話を掴みやすくするための再録であるため、既に前2作をプレイ済みならば『3』からいきなり始めても問題は無い。
      • またセーブデータはシナリオごとに独立しており、再録シナリオをクリアしても本編への引き継ぎ特典などは一切存在しない。
    • なお、後発のケータイアプリ版では『1』『2』も同時配信されている関係上、これらの再録シナリオはカットされた。
  • システム・構成
    • 本作の主人公は複数主人公制を取っており、三日月島での一夜を4人の異なる視点から描くという多重視点形式になっている。
      • ただし最初は香山しか選べず、特定の箇所まで読み進めるかバッドエンドを迎えることによって、他の主人公が徐々に解禁されていく。誰が主人公に加わるかは解禁されるまで伏せられている。
      • 選択肢によってある主人公の行動が変わると、それに影響されて他の主人公の展開も変化するという『』と同様の相互干渉性が存在する。
    • 『街』のPS移植版のような「タイムチャート機能」があり、既読箇所は自由にジャンプできる他、主人公の切り替え(=シナリオのザッピング)もここで行える。
    • シナリオは、本編である「真相編」が大部分を占める。その他のシナリオは、真相編をクリアした後に見られる「犯人編」と、全編通して完全にギャグ調のおまけシナリオ「番外編」の3つのみ。
    • 『2』のメインシナリオは田中啓文氏によるものだったが、本作のメインシナリオは『1』と同じく我孫子武丸氏が担当している。
+ 登場人物主人公キャラクターのネタバレ注意、長いので折りたたみ、前作のネタバレは極力除外)

登場人物

主人公

  • 香山誠一(かやま せいいち)
    • 大阪の会社社長。お好み焼きのチェーン店を経営している。前作の事件の供養のため三日月島を買い取って館を修復し、夢に出てきたある人物の魂を供養するため、事件の関係者らを招待する。
  • 矢島透(やじま とおる)
    • 前2作の主人公でもある大学生の青年。大学が休みの時にペンション「シュプール」を臨時バイトとして手伝っている。香山の依頼と、真理との関係を進展させるために、再び三日月島へと向かう。
  • 久保田俊夫(くぼた としお)
    • 快活なスポーツマンだったが、1年前の事件が原因ですっかり変わってしまい、酒浸りの荒んだ生活を送っていた。真相を掴むため再び三日月島に向かう。
  • 北野啓子(きたの けいこ)
    • ぽっちゃり系のOL。恋の悩みを抱えており、想いを伝えるために三日月島での供養に参加する。

供養の参加者

  • 小林真理(こばやし まり)
    • 前2作のヒロイン。1年前の事件をきっかけに、ペンション「シュプール」の若き美人オーナーとなった。香山に誘われ、透と共に供養のために三日月島を訪れる。
  • 春子(はるこ)
    • 香山の元妻(現在の苗字は不明)。優しくしっかりとした女性。香山に頼まれ、供養の参加者に食事を振舞う料理人として参加する。
  • 美樹本洋介(みきもと ようすけ)
    • 髭面でワイルドなフリーカメラマン。図面もなかった三日月の館を修復するため、香山に一年前の写真を提供し、三日月島での供養にも参加する。
  • 渡瀬可奈子(わたせ かなこ)
    • ロングヘアーの美女。かつてはOLだったが、事情により退社後、美樹本の元でアシスタントをしている。OL時代に仲が良かった啓子とは疎遠になっていた。美樹本と共に供養に参加する。

その他、上記にない前作の登場人物も数名が再登場している。


評価点

  • シナリオについて
    • 『1』と同じく再び我孫子武丸氏がメインで執筆を手掛けたことで、文体の雰囲気も『1』を思わせるものに戻っている。
    • メインシナリオの構成は、序盤と中盤に推理選択肢があり、犯人指摘に失敗すると次々に人が殺されていくバッドエンドに向かってしまう…という『1』を彷彿とさせるものに回帰した。
      • トリックも(後述するようなややご都合主義的な展開も一部あるが)、概ね現実的な内容になり、前回のような偶然任せの要素は改善されている。
    • ある主人公の推理で他の主人公を犯人として指名すると、指名された主人公視点で推理の矛盾を突いて自身への疑いを晴らしつつ、本当の真犯人を指名するという複数主人公を活かした展開も存在する。
    • 多人数視点を採用したことでフラグの管理が複雑になり、また犯人の名前だけでなくトリックも入力形式で指摘する必要があるため単純な総当たりが難しくなり、推理の難易度も上がっている。前作の「展開が一本道」「推理が簡単」と言った問題点は改善されていると言える。
    • 本編を一度クリアしたあとに見られる「犯人編」では、それまでの展開や描写を逆手に取った驚きの展開を見せる。
    • ゲームを完全クリアした「金の栞」で追加されるエピローグはシリーズの締めくくりとも言えるもので、綺麗に完結している。
  • 前作の矛盾点のフォロー
    • 『2』で批判のあった「食事時の遺影はどこに消えたのか」「ご都合主義すぎる偶然」などの問題点について一応の説明がなされた。
  • グラフィック・BGMについて
    • 『2』がベースであり、ほぼ据え置きの高品質を保っている。『1』のシナリオプレイ時において本作の高画質を実感できる。
    • BGMはほとんど『2』の使いまわしであるが、新たに追加されたキャラクターの固有BGMは人物や雰囲気に合っていて好評。
      • 俊夫のBGMは哀愁と情熱の感じさせるもので推理時に流れる際には鳥肌が立つ程に印象的。一方であるキャラのBGMは演出も相まって狂気としか言いようのない印象を与えており、インパクトは絶大である。

賛否両論点

  • シナリオ面
    • 今作は『2』と違って過去に殺人事件が起こったという前提で話が進むため、心に傷を負っている人物も多く、(『2』のサブシナリオとはまた違って意味で)陰鬱な心理描写やキャラクター同士の緊迫したやり取りが多い。
    • 本編は中盤以降、シリアスな雰囲気のミステリーとして進んでいくが、正規ルートを進めて行くと、終盤から急にオカルト色&ギャグ色が強い展開に突入する。
      • 従来のシリーズで言う「ピンクのしおり」のサブシナリオのようなノリであるにもかかわらず、本編と地続きの設定であるため、本編から直接進むと少なからずギャップを覚える部分である。
      • 過去作品のメインシナリオはあくまで本格ミステリーでありオカルト要素を前提とする物語ではなかった*1ため、ある意味『1』→『2』における変化よりも大きいと言える。
      • ただしあくまで特定人物からの視点のシナリオに限った話であり、物語全体としては仮にオカルト要素の部分がただの夢であったとしても成り立つようになっている。
+ 終盤のシナリオにおける一部ネタバレあり
  • 『1』同様、二人目の被害者が出た直後の推理パートで失敗すると以降は登場人物達が徐々に殺されていく所謂サバイバルルートに突入するのだが、『1』ではこの状況でもバッドエンドながら犯人に一矢報いて生き残れるルートがあったのに対し、本作ではこの展開に突入した時点で経緯こそ様々だがいずれも死亡エンドが確定してしまう。
    • 一応は事件解決のためのヒントにはなっており、また本作の事件の全貌や、犯人の目的、隠しシナリオ「犯人編」との兼ね合いもあるのだろうが、絶望的状況を生き残るという希望が一切無く打ち砕かれるというのはやはり切ない。
  • キャラクターの描写について
    • 前作までの主人公の透とヒロインの真理は『2』の時点では友達以上恋人未満といった関係で、今作でもそれは概ね変わらないのだが、とあるシーンで真理が明確に「付き合っている」と発言している。だが、経緯などの説明が一切なく、プレイヤーが想像するしかない。
      • もっとも、透視点では未だにはっきりしない関係のままであるため、少なくとも本編の最中は前作までと比べてそこまで関係が進展しているわけでもない。
    • 他にも、実質的にメインライターが田中氏から我孫子氏に再度交代したためか、『2』と比較してキャラの一人称や呼称が変化していたり、キャラ設定が異なるのではという点がある。
      + あるキャラの説明についてややネタバレ
    • 前作で死んだ人物の霊が、別の人物の霊を「話してみたらそう悪い人でもない」「(前作での悪い振る舞いは)この館に入ったことで呪いを受けたせい」と評するが、前作では同じ人物に対して「その相手と一時期同棲していた」「質の悪いヒモだった」「やっと逃げ出せた」などと発言していたため、呪いに関係なく元々ろくでもない人物であったとしか思えず、やや食い違っている。
  • 再録シナリオも含め、『2』にあった綿密なフローチャート機能が廃止。代わりに、『3』のシナリオではタイムチャート機能が用意されている。
    • これは多人数視点によるフラグ管理をフローチャート形式では示すのが難しい、純粋に難易度を上げるためといった理由があると思われる。
  • サブシナリオがほぼ無くなった
    • これまでのシリーズにあったような設定が大幅に異なるサブシナリオへの分岐要素が実質「番外編」のみになった*2ため、全体的なボリュームやシナリオのバリエーションは減少した。
    • 番外編は本編とは違い単独主人公で、ややギャグ寄りの設定、バッドエンドこそ多いものの選択肢を誤った時の即死系ばかりと、複雑な構成の本編に比べると明らかにオマケに近い内容である。ただしシナリオ自体は従来の「ピンクのしおり」のノリをきちんと踏襲している。
    • また、上記に挙げたように本編に組み込まれたオカルト系シナリオもノリ自体は従来のサブシナリオに近いため、これもサブシナリオの代わりと見ることもできる。
  • 再録された『1』『2』のメインシナリオについて
    • あくまで本編の理解を助ける補助としての再録であるため、メインシナリオのみの収録であり、セーブデータも『3』本編とはそれぞれ独立している。
    • エンディングリストこそ用意されているが、コンプリートしても特に何もない。
    • システム面ではフローチャート機能が無くなり、『1』『2』共に進行度が小説のように章仕立てで区切られた大まかな形式になっている。
      • 『1』についてはスーパーファミコン版のシステムに回帰したとも言える。
    • 『1』は画質が向上し、文字フォントも『2』以降準拠になった。ただし、シルエット自体は従来の単色で平面的なもののままで、さらに一部の演出がPS版と比較しても簡略化されている(BGMが異なったり、猫が飛び出すシーンや、バッドエンド時の徐々にくずおれる死体など)。
      • さらに、『1』に限り周回で選択肢が増える要素は無くなっており、本来なら追加選択肢だったものが最初からオープンされている他、一部の箇所は選択肢そのものが削減されている。
    • 一方、『2』はオリジナル版と同様に一度クリアすると、2周目以降で番外的なバッドエンドに繋がる選択肢フラグが解放される要素がそのまま搭載されている。
      • ただし、本来本編に含まれていたはずの追加バッドエンドのうち、「消えた殺人者」と「END」の2つが削除されている。後者はそれまでの物語と繋がらないシュールな内容だが、前者は本編の事件と密接に繋がる内容であったため削除には疑問が残る*3
      • こちらは同ハードで発売されたこともあり、見た目的にもオリジナル版とほぼ同一のため、実質「体験版」に近い内容になっている(オリジナル版とのセーブデータの互換性はないが)。
  • 『2』からの素材流用の多さ
    • 本作のグラフィック・BGM・メニュー画面など、素材のほとんどは『2』からの流用が目立っており、それ自体は高品質であるものの新鮮味が薄い。
      • さらに、新たなBGMについても上記の固有BGM程度ぐらいで数は少なく、BGMがほとんど無いシーンもいくつかある。
    • 舞台となる三日月館についても「わざわざ金を掛けて当時そっくりに修復した」とやや強引ながらも背景がほぼ同じである理由付けをしている。
    • 落合ディレクターへの公式インタビューによると、本作を制作するにあたって中村光一氏から「『2』で作った舞台、登場人物、開発資産や開発環境を使って『2』よりも価格を抑える」「再び我孫子氏に執筆していただき、1作目のユーザーが喜ぶような連続殺人のミステリーにする」「ネット上で、犯人が暴露されても楽しめるようにする」という3つの条件が提示されていたとのことで、制作上の縛りとして課せされていたと考えるべきであろう。

問題点

  • シナリオ面
    • 本作の大半を占める「真相編」だが、主人公全員が閉鎖空間内に居合わせているシチュエーションなため、同じ展開やセリフを何度も繰り返し読むことがかなり多く煩わしい。
    • またこのシステムの都合上、誰か1人がバッドエンドを迎えるとたいてい他の3人も連鎖的にバッドエンドで共倒れとなってしまう。
      • 本作のバッドエンド数は多いものの、実際には似通った内容のバッドエンドが主人公分あるだけという物が多く、水増しに感じられる。バッドエンド埋めも作業感が強い。
      • 主人公によって職務や作風がガラッと変わっていたり、他の主人公がバッドエンドとなるきっかけを作ってしまっていてもほぼお構いなしに今選んでいる主人公の物語を進められたりする『街』などと比べて、複数主人公制を採っている必要性が薄いと批判される事が多い。
      • 『街』にもそういった共倒れEDがなかったというわけではない*4のだが、そちらでは主人公同士が一緒に行動して相互に干渉しあうという限定状況が滅多に存在しなかった(他方が一方通行的に影響を与えるケースが多い)ため、特に問題にはならなかった。
    • 複数主人公である関係上、例えば主人公Aからの視点でBが怪しい行動をしていて犯人と疑うシーンがあっても、その後に見る主人公B視点ではその行動の理由がはっきり分かってしまうなど、過去作に比べて疑心暗鬼による怖さは薄れてしまっている。
      • ただし主人公が徐々に解禁されていくというシステム上、「Bが後に主人公に加わる」という展開は主人公Aの段階ではまだ不明であるため、前情報が無い場合は「怪しかったBが主人公になる」という意外性もある。
      • また、この視点を逆手に取った意外なシナリオも存在するため、一概に悪いとは言えない面もある。
  • 前作の矛盾点をフォローし切れていない箇所
    • 『2』のメインシナリオを出来るだけ矛盾なく本作に繋げようという努力は見て取れるのだが、それでも目につくご都合主義的な点が散見される。
    • 館の重要な仕掛けについて、「そこにあるのに気付かなかった」の一言で片付けられているものがある。
      • 前作でも今作でも殺人が起こった際に館内をくまなく捜索しているはずなのだが、その時は見つからず、その後しばらくしてから存在に気がつくというご都合的な展開になる。
      • 前作では舞台となる館に大規模な隠し仕掛けが存在し、それをもとにトリックを成立させている。前作のラストで館はボロボロに損壊し、この作品では別の人物が館を買い取って改修したという説明がされるのだが、今回の事件でも隠し仕掛けが再び使用される
      • 不必要な大規模な仕掛けを何故復旧させたのか、損壊を免れていたとしても、改修時に何故撤去しなかったのか、という疑問は尽きない。
      • その他にも館には新たな仕掛けがあることが今作で初めて判明する。この点については損傷が無かった為、館の改修時に手をつけなかった、という説明が作中の人物になされるが、やはり不自然である。
      • 設計図が無い建物とはいえ、そのような仕掛けがあることに気付かないまま、あるいは手つかずのまま大規模な改修が行われる、というのも不自然な点である。個人での修理ではなく、業者に数千万円も支払うような大規模な改修工事であれば、そこまでずさんであることは考えにくい。
      • 「警察が(劇中の)チュンソフトに我孫子について尋ねたらおしまいだ」という根本的な指摘についてもフォローなし。どうしようもなかったのかもしれない。
    • なお、『2』のメインシナリオは田中氏が手掛けたものであり、本作のシナリオはそれを元にして我孫子氏が引き継いでいるため、繋がりが多少強引なのは仕方ない面もある。
+ 犯人について(シリーズ作品全体の犯人の特徴に軽く触れているためネタバレ注意)
  • 殺人の犯人について
    • 『2』でもそうだったのだが、真犯人(あるいは共犯者)のある特徴が『1』と被っている。
    • 大きくわけて二つ「その場にいない筈の人物*5」「途中で死亡した思われていた人物*6」。
    • そして『3』の犯人は「過去作で死亡したと思われていたその場にいる筈のない人物」である。…真犯人の引き出しがどうにも少ない様に感じられる。
  • 物語の終盤の展開が荒唐無稽すぎる
    • 詳しくは伏せるが、大まかに言うと『ある人物が霊体となってラスボス(!?)とファンタジーなバトルを繰り広げる』冗談と思うだろうが事実である。冗談であってほしかった。
  • システム上の問題
    • オートセーブをオフにした場合、セーブするたびにタイトル画面に戻されてしまうため、煩わしくなった。
    • 前作までの主人公とヒロインの名前が「(矢島)透」「(小林)真理」で固定になり、変更できなくなった。
      • 本作では主人公が増加した上、作中の一枚絵に名前が入っているものが存在する為だと思われる。
      • 一方で、再録シナリオの『1』と『2』については主人公とヒロインの名前を変更可能なままであり、好きな名前に変えて『1』→『2』と順番にプレイしていた場合は『3』で突然デフォルト名に戻されるという事態になってしまう。

総評

賛否両論の激しい前作『2』と密接に繋がっている続編。
『2』はメインシナリオの一本道が批判されていたが、本作は『1』と同じく推理によって惨劇の回避を目指す構造に原点回帰。
また『2』の矛盾点のフォローや補足も兼ねた内容になっており、『街』を彷彿とさせる多人数視点を取り入れたシステムも意欲的。
ただし、こちらは同じ展開やセリフを何度も読み直す必要があったり、バッドエンドが水増しされてしまったりと問題点も生まれている。
それ故に、サウンドノベルとしての完成度は手放しで評価できない点があるのも事実である。

ともあれ、賛否の割れていた前作の物語は、本作の内容をもって無事完結を迎える。
「ご想像にお任せします」で突き放されることも、不幸な結末を迎えたままシリーズが終焉してしまうこともなかった。
初代『かまいたちの夜』の物語を架空のものとしてしまった前作は、その存在自体が非難の対象となった面もある。
とはいえ、前作にどのような感想を抱いたにせよ、シリーズのラストを締める本作のエピローグを見届ける価値はあるだろう。
登場人物達のその後はハッピーエンドとなり、『2』を許せなかった『1』のファンも多少は溜飲が下がると思われる。
シリーズ3作を通して見ると結果的に、奇しくも伝承にある「かまいたち」の如く「1匹目が転ばせ、2匹目が傷つけ、3匹目が薬を塗る」を踏襲したような形になっている。


携帯アプリ版(参考記述)

  • 2007年に携帯電話アプリ(フィーチャーフォン用)として配信。
  • シナリオは『×3』の「真相編」と「犯人編」のみ収録。残念ながら「番外編」はない。
    • 『1』と『2』については別アプリとして同時配信されているため本作への収録は無し。
  • 容量の関係でシナリオおよびエンディング数がやはり大幅削減されている*7
  • 初代と違い、スマートフォン版はリリースされていない。

余談

  • PS2版予約特典の限定非売品書籍として『かまいたちの夜 挟み忘れた栞』が付属していた。
    • 我孫子武丸による番外シナリオを3本収録。うち1本は前作「ラブテスター編」のゲームブック化。
  • 「完全攻略本」は本作の再録シナリオを含む全エンディングを攻略したものとなっており、インタビューや資料なども充実している。
    • 飯野文彦による書き下ろし短編小説『かまいたち殺人』も収録。可奈子を主人公とした本編とはパラレルのストーリーとなっている。
  • 『2』⇒『×3』の流れをくむ物語は本作で完結したのだが、2011年にPS3/PSVで『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』が発売。
    • 登場人物と世界観を一新し、『1』と同様のシチュエーションが舞台などより原点回帰を意識した内容となったが、こちらもいろいろと詰めの甘さが目立っている。

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最終更新:2023年10月21日 01:34

*1 パラレルであるバッドエンドやサブシナリオにはしばしばあった。

*2 「犯人編」はあくまでメインシナリオの派生に過ぎない。

*3 どちらもスプラッタ要素の強い内容であったため、『2』発売当時から4年を経て規制の強化に引っかかってしまった可能性も考えられる。

*4 ワニに襲われた美子と彼女を助ける正志のED等。

*5 『1』の真犯人は途中参加と思われていたが、実は一番最初から潜んでいた。『2』の真犯人は冒頭から「不参加」と明言されていたのだが、実はずっと島に潜んでいた。

*6 『1』の真犯人は物語途中で素人とは思えない手段で死体を演じきり、犯人候補から見事に外れて見せた。『2』の真犯人は別の人物に成り済ました上で、自身の変装姿の死を偽装というまわりくどい方法を使い暗躍。ちなみに、変装に使われた人物は『3』終盤にて島内のある場所で、ひっそり不運な死を遂げていたというなんとも哀れな事実が判明する。

*7 「真相編」+「犯人編」80個 ⇒ 36個。