リングにかけろ

【りんぐにかけろ】

ジャンル 対戦格闘・シミュレーション
対応機種 スーパーファミコン(ニンテンドウパワー専売)
発売元 メサイヤ(日本コンピュータシステム)
発売日 1998年6月1日
定価 3,000円
判定 なし
ポイント 原作愛を感じる演出の数々
対戦ツールとしての出来は…?
少年ジャンプシリーズリンク


概要

1977年から1981年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載され、同誌では初めて最終回に巻頭カラーを飾る*1など人気を博したボクシング漫画『リングにかけろ』(通称:リンかけ)を原作とする格闘ゲーム。人気の割に雑誌掲載時にはメディアミックスの機会に恵まれていなかった『リンかけ』にとって同作は初の他メディア化であったが、続編である『リングにかけろ2』やテレビアニメ『リングにかけろ1』のリリース前*2というやや中途半端な時期でのリリースとなっている。

元々は1995年発売を目指し制作されていたソフトで、一旦マスターアップはしたものの見込み通りの発注が取れずに発売延期を続けているうちにSFC市場が縮小してしまったため発売中止に、その後ニンテンドウパワーによる書き換えサービスが始まったことを機に同サービス専売ソフトとして改めて発売された、という経緯がある。


システム

  • 本作はメーカーがM・R・B(モーションリアクトバトル)システムと称する行動ポイントの蓄積とコマンド入力を組み合わせたシステムによってゲームを進行していく。対戦格闘ゲームながら『ストII』をはじめとした一般的な対戦格闘ゲームよりアクション要素は薄めでむしろシミュレーションの要素が強い。
  • キャラクターの状態は以下のパラメーターで管理する。
    • 体力ゲージ
      • これが0になると負け。なお本作の体力ゲージは一旦緑色のゲージが底をついた際に赤色のゲージに変わり、その赤色のゲージが底をつくと0、という方式になっている。
    • バランスメーター
      • 体勢の安定度を表す。青>緑>赤>黒、と色調が無段階で変化する。一定の値以下になると一切の行動が不可能になる。
    • 行動ポイント
      • 後述のようにジャブを当てることで増やすことができる。これを消費することでパンチを打ったりカウンターを仕掛けたりすることができる。
    • ボルテージゲージ
      • 後述のメイン画面でセレクトボタンを押し続けることで溜めることができる。溜まり切ると必殺技が使えるようになる。
  • まずはメイン画面(リング上でキャラクター同士が向かい合う画面)でジャブを当て、行動ポイントを溜めていく。ジャブ1発を当てるごとに行動ポイントが4入る。
    • ただしジャブでダメージを与えることはできない。しかしながらボルテージゲージを溜めている時にジャブを食らうとバランスメーターが一気に最低になってしまう。
  • 行動ポイントが10以上溜まるとパンチを打てるようになる。攻撃側がパンチを打つとM・R・B画面(キャラクターの上半身で攻防を表す画面)に切り替わる。
    • パンチはAボタンがフック、Bボタンがボディー、Xボタンがアッパー、Yボタンがストレートで、それぞれちょい押しだと左(命中率は高いが威力はそこそこ)、長押しだと右(威力は高いが命中率は低い)となる。
    • ボルテージゲージが溜まっていると必殺技を使用できる(L+十字ボタン)。必殺技は大ダメージを与える必殺ブローの他回避率アップや行動マーク(後述)のスピードを変化させるなどといった補助技がある。
  • 攻撃側がパンチを打つと防御側も行動を選択することになる。
    • 行動はブロック(L+Rボタン、防御を固めダメージを減らす)、スウェイ(L+十字ボタン、パンチをかわしダメージを回避するがバランスメーターは少し悪くなる)、カウンター(L+相手のパンチと同じボタン、相手のパンチをかわして逆にダメージを与える)の三種類。
  • 攻防それぞれの行動が決まったら、それぞれの行動マークが動き出しぶつかり合う。ぶつかり合った位置によってそれぞれの行動成功率が決まり、パンチや必殺技がヒットしたり防御行動が成功したり、といった結果が出る。なお必殺ブローの場合行動マークのスピードが遅いため命中率が低くなる。
  • ダメージを受けすぎるとダウンすることもあるが、ダウンした際はAボタンの連打で復帰する。

モード紹介

ストーリーモード

  • 原作の「チャンピオンカーニバル編」~「世界大会編」を基に設定や展開を組み直された*3ストーリーに沿って戦っていく。
  • 試合によっては戦うキャラを選ぶ事も可能。

対戦プレイモード

  • 任意のキャラクター*4を選んで対戦プレイができる。対コンピューター戦、対プレイヤー戦(対人戦2人プレイ)、観戦(CPU同士の対戦を観る)、の3つが用意されている。

勝ち抜きモード

  • 使用キャラを1人選び、残りの選手を倒していく。
  • こちらにもストーリーが用意されており、後述する隠しキャラが大きく関わっていくことになる。

オプション

  • ゲーム速度、1ラウンドの時間(1分・3分・5分)、1試合のラウンド数(1R・3R・5R)、勝敗決着の方法(KO(体力0)のみか、3ノックダウン負けもありか)を設定できる。サウンドテストも用意されている。

キャラクター

日本代表(黄金の日本Jr.) 高嶺竜児

  • 本作の主人公。名トレーナーでもある姉・菊と共に世界一のボクサーを目指す。
    • 必殺技は「ブーメラン・フック」「ブーメラン・スクエアー」「ブーメラン・テリオス」「パワーリスト」。ストーリーモードではストーリーの進行に伴い必殺技も変化する。

剣崎順

  • 自他共に認める天才ボクサーで、主人公・竜児のライバル。財閥の御曹司で試合にも取り巻きの少女たちを連れている。
    • 必殺技は「ギャラクティカ・マグナム」「ギャラクティカ・ファントム」「剣崎ガールズ」「菊のお守り」。

香取石松

  • 小柄だが根性ナンバーワンの「千葉のケンカチャンピオン」。かわいい女の子にめっぽう弱い。
    • 必殺技は「ハリケーン・ボルト」「スパイラル・タイフーン」「ねえちゃん追っかけ」「ケンカチャンピオン」。

志那虎一城

  • 剣術道場の息子で見切りを生かした回避能力の高さが武器。剣術の修行で右腕を負傷している*5
    • 必殺技は「ローリング・サンダー」「スペシャル・ローリング・サンダー」「神技ディフェンス」「備前長船」。

河合武士

  • ピアノを嗜むイケメンで抜群の女性人気を誇る。竜児同様姉が師匠である。
    • 必殺技は「ジェット・アッパー」「ジェット・ラベンダー」「ファンからの薔薇」「ピアノの旋律」。

イタリア代表 ジュリアーノ

  • イタリア代表で出ているのは彼のみ。

アメリカ代表 シャフト

  • アメリカ代表で出ているのは彼のみ。コークスクリューブローの使い手。

フランス代表 ナポレオン

  • フランス代表の主将で5つ子の長男。フランス代表は5つ子兄弟で構成しているが出てくるのは彼を含め3人のみ。

ティファニー
フェリスタ

  • フランス代表の残りでナポレオンの弟たち。カマイタチの原理を用いたパンチを放つ。5つ子ということもあり、ビジュアルはナポレオンの色違い。

西ドイツ代表 スコルピオン

  • カリスマ性に優れ「総統」と熱狂的な支持を受ける*6西ドイツ代表の主将。

ヘルガ

  • IQ300を誇る西ドイツ代表の参謀。フォルコメンハイト(完璧)が口癖で、必殺技返しを使ってくる。

ヒムラー
ゲーリング
ゲッペルス

  • 包帯で顔を隠した西ドイツ代表の選手たち。彼らもまた必殺技返しを使ってくる。
  • 原作ではゲーリングのみ髪をさらしている等の差異があったが、それぞれ色違いのボクサーになっている。

ギリシア代表 アポロン

  • 原作の世界大会編におけるラスボスで、ギリシア代表主将。竜児のブーメラン・スクエアーをも耐える強靭な肉体を誇る。
    • 本作でもイーコール(神の血)で何度でも体力を回復するなど、ラスボスに恥じない性能を誇る。

ユリシーズ
オルフェウス
イカルス
テーセウス

  • ギリシア代表の選手たち。彼らもまた異様に強い。

隠し選手

+ ネタバレ除け

車田正美

  • ご存知原作者。キャラクター付けは1980年の愛読者賞*7優勝作品の読み切り漫画『実録!神輪会第二話 リングにこけろ』がベース。やけくそでパンチを振り回したり、土下座をして相手の気を削いだりしてくる。ストーリーモードクリア後、一定時間待機すると演出と共に登場し、倒す事で出現コマンドが見られる。作者を使って剣崎にリベンジが可能
    • ちなみに、ストーリーモードは原作における「ギリシャ十二神のヘリ」が上空にやってくる所で終わるのだが、そこから突然原作を無視して啖呵を切りながら作者が登場するというサプライズになっている。

影道総帥

  • 勝ち抜きモードの真・ラスボス。勝ち抜きモードでは影道一族が関わってくるシナリオになって、最後に総帥と決戦になる。実は剣崎の双子の弟。バランスメーターを一気に最低にしたり、徐々に体力を減らしたりといった強力な必殺技を多数持つ強敵。勝ち抜きモードクリア後出現コマンドが見られる。

評価点

  • 原作愛を感じる派手な演出。
    • 相手を会場外に吹っ飛ばす*8必殺ストレートKO、天井まで打ち上げる必殺アッパーなど、豪快な演出が盛りだくさん。マニュアルでも「原作ファンならば感涙間違いなしでしょう。」と評価されている。
    • 低確率で「吹き飛んだ際に相手が旗に包まれて落下し即KO」になる事もある。原作における剣崎によるN・B・フォレスト(Mr. ホワイティ)の瞬殺シーンの再現となっている。本人は登場していないのに、これが出るとたとえどんな強敵が相手だろうが一瞬で試合が終わるので非常に強力。
    • そのほかにも必殺技が外れた時も壁が粉々になったりマットが裂けたり、頬に傷が付いたり血を吐いたりと原作に存在した細かいシチュエーションが採用されており、演出が光る。
    • またことあるごとに観客席のカットが入って「で、出たーー!」などとボイスが入るのも雰囲気を盛り上げる。
    • ストーリーモードでは試合の展開に応じて原作の名場面も再現できる。
      • 西ドイツ戦で剣崎が吹き飛ばされた際にアポロンがイーコールでダウンを回避させるといったマニアックなシーンが悉く再現できるので原作の再現を徹底して試みる楽しみ方もできる。
  • 選手の再現度の高さ。
    • 試合中の選手は大きなカットインイラストで表現され、原作のタッチを完全に再現している。
      • 全体的な雰囲気としてはSFC版の『幽☆遊☆白書』に近く、アニメセルで表現されたような大きなキャラが多彩にアニメーションする。
      • 発売当時、「リンかけ」はアニメ化していなかったので、カラーでかつ喋る竜児たちを見る事が出来るのは貴重だった。
      • 特徴的な必殺技の演出も秀逸。志那虎のスペシャルローリングサンダーが命中した時に瞬時に五発のブローを叩き込むカットインも、食らった方の表情も(原作で殴られていないキャラでも用意しているという凝りようで)完全に再現している。
    • その他試合中もボルテージゲージが溜まっていない状態ならば*9画面下部に台詞が映し出されるなど選手のキャラクター性が上手く表現されている。
  • 質量共に優れた音楽。
    • 試合中のBGMは熱く盛り上がる曲揃い。操作キャラやラウンドの進行で曲が変わる芸の細かさもある。
    • サウンドテストもあるので心ゆくまで聞き放題。

問題点

  • カウンターが強すぎる。
    • 相手のパンチを目視確認してからでも十分コマンド入力が間に合う上、カウンターが決まると防御側の行動マークが攻撃側のそれを押し返し防御側の行動成功率を上げるため非常にカウンターが決まりやすい。
      • よって対人戦だとカウンター狙いの待ち合いになりかねない。
    • ただあくまで「行動成功率を上げる」だけなので、カウンターでも外す時は外す。
  • 素材の使い回しが目立つ。
    • 掛け声やビジュアル(必殺パンチを放つ絵など)など。特に黄金の日本Jr.以外の選手でその傾向が強い。
    • キャラの性能的にも「相手体力の1/3程度を削る必殺ブロー+補助技」という構成のキャラが多く差を実感しづらい。
  • パンチ力や素早さといったキャラ性能を表すパラメーターを確認する手段がない。
    • これもキャラの性能差を実感しづらい理由の一つとなっている。
  • 声は当時青二プロダクション所属の声優たちが当てていたのだが、そのクレジット表記の一部に間違いがある(「口大助(本当は「口大助」)」など)。
  • 1990年代後半のゲームであるにもかかわらずパスワードコンティニュー方式であること。
    • ただパスワード自体は0~9の数字+A~Fのアルファベット4桁でさほど記録は苦痛ではない。

総評

かなり今更な時期に出たキャラゲー。ゲームそのものの完成度にはやや疑問符が付くものの原作愛を感じる演出は随所に認められ、原作ファンであればそれなりには楽しめるだろう。ただ書き換え専売ソフトであることもあり現在プレイすることは困難を極めると思われる。



余談

  • 本作で河合武士役を務めた声優の神谷浩史氏は後年テレビアニメ『リングにかけろ1』でも河合武士役を務めている。
  • 前述の通り本作は一旦発売中止になった経緯があるが制作の進行自体は順調だったようで、他メーカーの作品ではあるが『SFC版シムシティ2000』に同作の宣伝用リーフレットが同封されていた。

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最終更新:2018年11月03日 17:27

*1 同様の扱いを受けたのは他には『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』、そして『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のみ。

*2 『リングにかけろ2』連載開始は2000年、『リングにかけろ1』の放映開始は2004年。

*3 剣崎が「前回優勝者」の肩書でチャンピオンカーニバルの決勝で登場する、一部の対戦国については登場選手が省略されている、など。

*4 後述する隠し選手も条件を満たせば使用可能。

*5 ゲーム中でも左でしかパンチを打ってこない。

*6 全体的な描写がナチスのそれである。連載当時はそれほど問題になってなかったと思われるが…。

*7 ジャンプの人気作家陣が連載とは別に読み切り作を発表し、読者投票で人気を競うという企画。1973年~1983年に施行されていた。

*8 必殺技が決まることで体力が0にならずとも見ることができる演出。

*9 溜まっていると必殺技の入力コマンドが出る。