将棋新世紀 PonaX

【しょうぎしんせいき ぽなっくす】

ジャンル 将棋
対応機種 Windows 8.1/8/7
発売元 マイナビ
開発元 マイナビ
ダイスクリエイティブ
発売日 2014年5月30日
定価 13,824円(税8%込)
判定 クソゲー
ポイント バグだらけ
バグを差し引いても不便なGUI
充実してない機能
思考エンジン自体に問題はなし
回収・返金対応は評価


概要

プロ棋士をも破った将棋プログラム「Ponanza」を一般向けのゲームソフトとして商品化したもの。
USI仕様*1に準拠したPonanza思考エンジンと、独自開発されたGUIとで構成されている。
発売元は定番将棋ソフトの一つである『激指』シリーズや『東大将棋』シリーズを発売しているマイナビで、14,000円前後という強気な価格設定だったこともあり、将棋ファンは期待していたのだが…。


問題点

モードは対局モードのみで、価格に対してボリューム不足

  • 安価な将棋ソフトは対局機能のみのものも多いが、高価なものには様々なモードやオプションが搭載されているのが一般的。
    • 例えば、同じ発売元の『激指』シリーズには、指導対局、プロ棋士*2との模擬対局、異なる思考のAIとのリーグ戦、自分で解く詰将棋、プロ棋士の解説付きの定跡の閲覧など豊富なモードやオプションがあるのに対して、本作にはそのようなものが全くない。
    • また詰将棋機能もないため、詰将棋を解かせることはできない。
  • 一応、モード画面には「対局開始」「棋譜読み込み」「盤面編集」の三つがあるが、一つで済むモードをわざわざ三つに分けており水増しでしかない。
  • 対局専用のソフトだと割り切ったとしても、バグだらけ・不便すぎる・機能が少ないといった不満点が残る。詳細は後述。

GUI*3がバグだらけ

  • フリーズが頻発する。そのためまともに対局する事ができない。
    • それどころか対局開始ボタンが機能せず対局開始すらできない事もある。
  • 対局開始時に駒が表示されない場合がある。
  • 棋譜の読み込み・保存や指定局面からの対局に失敗する事が多い。
    • 棋譜の読み込みに失敗する確率は3分の2と高い上に失敗した場合フリーズする。
    • しかも、運良く棋譜の読み込みに成功してもその後対局する事ができない。
  • こちらが先手で始めたとき、棋譜ウィンドウを閉じてから指すとPonanzaが指さなくなる。
  • ヘルプファイルを見る事ができない。
  • 起動すると、なぜか全く関係ないアプリが20~30個も立ち上がる事がある。本作を閉じると、その関係ないアプリも全部落ちる。
  • 一応パッチが出されているが、直っていないバグが多く不完全。

バグを抜きにしても不便すぎるGUI

  • GUIが非常に分かりづらく、使いにくい。
    • 対局相手の設定は矢印で指定するようになっており、「自分とPonanzaとの対局しかできない」と勘違いしやすい。
      • また、先手・後手とも「対局条件を変更する」にチェックを入れないと対局を開始できない。
    • 棋譜を保存する際は必ず拡張子も入力しなければならない仕様になっており、棋譜の保存がしにくい。
  • 検討機能は「対局中」かつ「人間の手番」でないと使えない。棋譜解析に至っては機能自体が存在しない
    • 中断機能がないため、検討しながら指そうとすると「待った」をしながら指すしかない。
    • 読み込んだ棋譜から検討したい場合も「現在局面から対局」をしてから何か一手を指さないと検討できない。
    • 検討すると盤面は15~20手先の盤面のみが表示され、その間の経過は文字で示すだけ。その経過も長すぎて全部表示できていない。
  • 駒を動かしたときの反応が遅い。
  • 機能も高額ソフトと思えないほど少ない。これについては後述する。

下手すれば安価な将棋ソフトにすら劣る機能

  • 中断機能がない。そのため、一度対局始めてから対局をやめたい場合は投了する必要がある。
  • 設定機能(オプション)がないため、充実したオプションすらない。
    • そのため読み上げの声が消せず、強制的に読み上げの声を聞くことになる
      • ちなみに、本作の読み上げは山口恵梨子女流初段が担当している。
    • また、盤や駒を設定することもできない。
      • なおユーザーの解析により、内部データに盤画像と駒画像らしきデータが複数収録されていた事が判明しているが、設定機能がないため当然使えない
  • Ponanzaの戦型が指定できない。定跡の編集や変更もできない。

評価点

  • ほとんど問題点しかないGUIだが、画期的な評価点が全くないわけではない。
    • レーティングの強さを10から3000まで10単位で細かく変更できる。つまり実に300段階の強さ設定が可能。
    • 対局後にレーダーチャートで対局を評価してくれる。項目は攻め・守り・スピード感・安定感・発想力の5つ。
  • まともに対局できるかは別だがルールまでは破綻しておらず、一応将棋としては成立している。

総評

強力な思考エンジンを搭載したものの、肝心のGUIはバグが多い・使いにくい・安価なソフトより少ない機能と散々な出来であった。これでは折角の優秀な思考エンジンも台無しである。
Ponanza自体は佐藤名人をも破るなど対人戦で全勝する*4・コンピュータ将棋で初めてディープラーニングを取り入れるなど2018年現在も最強クラスの将棋ソフトであるだけに、もし新バージョンが出るならばGUIの抜本的な改善が望まれるところである。
しかし本作が回収・返金対応するほどの失敗作になってしまったためか、新バージョンの販売を望む声が多いにもかかわらず現在に至るまで新バージョンは発売されていない。


余談

  • ユーザーによる検証の結果、思考エンジンには問題がないことが判明している。
    • 思考エンジンを抜き取ってUSI対応のGUIソフト*5と組み合わせれば問題なく遊ぶことができる。任意の局面での検討、棋譜解析、詰将棋解答なども可能になる。
      • それでも戦型指定や定跡の変更は不可能。
    • 2013年に初めて現役のプロ棋士を公式戦で破ったプログラムだけあって、当時の将棋ソフトでは最強クラスの実力であった。そのため、上記の方法にたどり着いてまともに遊ぶことのできたユーザーの間では、強さに関しての評判は悪くなかった。
      • さすがに2018年現在は、プロ棋士が全く勝てなかった「Ponanza」を破ったこともある「平成将棋合戦ぽんぽこ」「技巧」「elmo」や、第4回将棋電王トーナメントで2位となった「Apery」などの無料で公開されているUSIエンジンや本作発売後にマイナビが発売した『激指14』の方が強く型落ちになってしまったが。
    • そのため、「マイナビは(商品失格レベルのGUIを付けず)エンジンだけを売った方が良かった」という意見もある。
      • なお海外ではコンピュータチェスソフトを販売する際、思考エンジンのみを販売しているケースも多い。
  • あまりのバグの多さに発売元は当初行っていたパッチでの対応を断念し、発売から2週間経過した6月13日に購入者に回収・返金対応を行った。サポートも2015年3月31日までと早期に終了。
    • 元々市場が小さい一般PCゲームである上に高額なソフト*6だったこともあり、ほとんどが回収されたと思われるため、現在では本作を入手する事はほぼ不可能である。
  • 2chの本スレでは発売前の盛り上がりが嘘のように、発売元への怒りのレスであふれるほどのアンチスレと化した。それどころか、返金を求めて国民生活センターに相談する人まで現れた。
    • 実績のある発売元・14,000円前後という高価格・クソゲーがそうそう出ないジャンル*7で安心買いして核地雷を踏まされたのだから購入者が怒るのは当然である。
      • 一応、本作のGUIのプログラム開発は前科のあるダイスクリエイティブが主に担当したため、全く前兆がなかったわけではない。
    • その後本スレは5スレまで伸びたが、回収・返金対応を開始した後は怒りのレスも静まりdat落ちした。
  • 発売元だけでなく「Ponanza」開発者の山本一成も批判に晒されたが、山本一成はバグに関する苦情に対して「私自身は思考エンジンしか提供してない状態で、正直困り果ててます」と発言し購入者への謝罪も行った。
    • 発言から察するに、山本一成は問題点の殆どを占めるGUIの開発には一切関わっておらず本作(≒GUI部分)の出来の酷さを知らなかった可能性が高い。
  • 2018年8月31日にマイナビから『将棋神 やねうら王』が発売された。しかし本作の失敗が祟ってか、購入を控える将棋ファンが多かった。
    • 『将棋神 やねうら王』には「やねうら王2018年版」「tanuki-SDT5版」「tanuki-2018年版」「Qhapaq」「読み太2018年版」の5つのエンジンが収録されているが、「Ponanza」は残念ながら収録されていない。
      • しかも収録エンジンは無料で公開されているものがほとんどだったため、将棋ファンが『将棋神 やねうら王』の購入をますます控える原因となった。
    • ただし『将棋神 やねうら王』の出来自体は(値段に見合う内容かは別として)そこまで悪くない。また積極的なアップデートにより、多くの修正・便利機能の追加が行われている。

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最終更新:2023年10月08日 06:56
添付ファイル

*1 将棋思考ルーチンとユーザーインターフェイスを連結するための統一仕様。

*2 シリーズによってはあの羽生善治との模擬対局ができる作品もある。

*3 「Graphical User Interface」の略で、パソコンの表示機能の一種でマウスやタッチパッドを使うのは大体これ。

*4 他の追随を許さない圧倒的な棋力を見せ付け世界に衝撃を与えたAlphaGoですら1敗している。

*5 幸い、「将棋所」「プチ将棋」「ShogiGUI」など無料のソフトが存在する。

*6 しかも、実質的な発売期間も発売日の2014年5月30日から回収対応発表の2014年6月13日までのわずか2週間と非常に短い。

*7 厳密には将棋のクソゲーがないわけではないが、将棋は囲碁や麻雀よりはルールが複雑ではないため、ありうるとしたら「思考エンジンがバカでまともに対局できない」ぐらいで、そういうのがありえないと保証がされていれば大丈夫と考えるのが常識である。