テイルズ オブ ベルセリア

【ているず おぶ べるせりあ】

ジャンル ロールプレイングゲーム
(シリーズ内ジャンル名:君が君らしく生きるためのRPG)


対応機種 プレイステーション4
プレイステーション3
Windows(Steam)*1
発売元 バンダイナムコエンターテインメント
開発元 バンダイナムコスタジオ
発売日 2016年8月18日
定価 8,070円(税別)
プレイ人数 1人(戦闘のみ1~4人)
レーティング CERO:B(12才以上対象)
廉価版 Welcome Price!!:2017年6月1日/3800円(税別)*2
コンテンツアイコン セクシャル、暴力
通信機能 PlayStation Network対応(DLC配信)
判定 良作
ポイント (CS機では)シリーズ初となる単独女性主人公
シリーズの中でも上位といえる高いストーリー性
テイルズ オブ シリーズ



これが、私の"生き方"だ。



概要

テイルズ オブシリーズの1作。略称はTOB。PS3最後のシリーズ作品で、PS4とPS3のマルチプラットフォームで発売された。

ゼスティリア』(以下前作)の前日譚であるが、メインヒロインな筈のアリーシャの扱いを始めとした前作の評価があまりに低く、加えて本作が前作の過去の物語である情報が発売前より流れていたことで、本作もまた惨憺たる出来となることを危惧していたプレイヤーも少なくなかった。

しかし、蓋を開けて見れば前作の評判を払拭できる内容であり、前作で説明不足だった設定や伏線が丁寧に回収されているためシナリオの評価は高い。システム面も非常に洗練されている。
内容も前作の続編というよりは、本作の発売と同時期に放送されたアニメ版『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』(以下ザ クロス)との関わりが深い。
アニメ版のザ クロスはゲーム版『ゼスティリア』を単純にアニメ化したものではなく、内容を一部改変し『ベルセリア』の設定を取り入れている。
そのため、『ベルセリア』で迎えたエンディングの続きと言った方が正しい、どちらの作品の世界観から見ても無理のないシナリオに仕上がっている。

メインキャラクターデザインは、いのまた氏(主人公)・藤島氏・奥村氏・岩本氏の4名が担当。
シナリオはこちらも前作を担当した山本尚基氏、『リバース』のシナリオライターを務めた平松正樹氏*3、そして前作ディレクターの長谷雄太氏が担当。
主題歌はFLOWを起用。『ザ クロス』でも主題歌を担当している。

本作は過去にマザーシップタイトル*4として扱われており、本作はこの分類において初の単独女性主人公作品とされていた*5


特徴

ストーリーライン・シチュエーション

  • 今作の主人公は「強い憎しみを持つ相手を殺す」という復讐を動機として行動する、一般的には悪役の主人公である。
    • これまでの作品でも善側の主人公たちが悪しき道を行く強大な国家や組織を相手にするために公的機関と敵対する状況は存在したが、今回は本当にアウトローなスタンスで行動し、なし崩しとはいえ1つの集落の経済基盤を崩壊させたり、必要とあらば他人を使い捨てることもいとわないと口にし、裏社会の組織と手を組むなどかなりリアリストで没価値的な主人公である*6
      • 主人公がこうした行動をとる理由が説明され、その内容もアクセプタブルであり、主人公自身も自分の行動を目的達成のためと自覚的であるため、まるで反道義的な人物像というわけでもない。こうした図式は様々な創作にしばしばみられるものであり、抵抗感のある設定にはなっていない。
      • また、構造的暴力などの社会悪に加担することもせず、あくまでも即物的な利得ではなくプレイヤー目線で理解しやすい理由で行動するようになっている。
      • 悪役とはいえ、あくまでも「テイルズオブシリーズのストーリー」なのでそこまで極端な描写も存在しないし、アートスタイルも物々しいわけではなく明るいスポットなどはいつも通りに明るい。

戦闘システム

  • 本作で使用されている新戦闘システムは「Liberation-LMBS(リベレーション・リニアモーションバトルシステム)」で、そのLiberation(解放)の名の通り、従来のLMBSから解放されたシステムとなっている。
    • 具体的には、従来のライン上の操作が廃止され、左スティックでの通常操作がフリーランとなり、右スティックでカメラを自由に移動できるようになっている。
    • また攻撃ボタンは○×△□全てとなり方向入力は攻撃コマンドの内容に関わらないようになり、連携の組み立てもメニューから自由に行える。ガードするにはL1、メニューを開くにはパッドを入力…と、多くのシリーズ作品の操作とは一線を画している。
      • 前作や『グレイセス』と同様、通常攻撃コマンド自体が廃止され、コンボに繋がるすべての行動が術技として組み込まれている。同じくアラウンドステップも健在。
  • 行動リソースは「ソウル」「ブラストゲージ」の二つに集約されている。
    • 「ソウル」は術技とステップの発動に関わる個数式のパワーソースであり、術技を連続して繰り出せる回数は現在の「所持ソウル数」と同じ数までとなる。
    • 術技はプリセットの連携ツリーへ任意に配置して対応ボタン×連携段数ごとの派生コマンドを設定可能であり、連携をつなげるほど様々なメリットが付与される。
      • 術技とステップの発動には「ソウルゲージ」というリソースを各コマンドに定められた分だけ消費する。ソウルゲージは消費しても時間経過で回復し、その容量は「所持ソウル数」の数だけ増減する。
    • 「ソウルゲージ」なしでも術技は発動できるが、攻撃を敵にガードされやすくなったり、「聖隷術」(一般的なRPGの魔法スキル)の詠唱時間が伸びるといったデメリットが発生するため回復を待たず闇雲に術技をバンバン撃ちまくれるわけではない。
      • ソウルの「所持数」は戦闘中非常に流動的に変化する。
        敵を倒す・スタン等の状態異常を与えたりするなどで敵から奪う、「秘奥義」を発動する、「アラウンドステップ」により対応回避*7を発動した際にフィールド上に放出されたソウルを「拾う」ことなどで増加させられる他、シンボルエンカウントの際に敵の背後から気付かれないようにエンゲージすることであらかじめ所持ソウル数が増えた状態で戦闘を開始することもできる。
      • 逆に敵からスタンさせられたり状態異常を受けると、ソウルを奪われてしまう。また、相手のソウルが1つしかない場合は、それ以上奪うことができない。
      • ソウルが多いほどこちらの攻撃リターンが増えるが、所持ソウルが多いほど敵に攻撃された際の被害が増えるため一気に逆転されてしまう可能性も高まる。
    • 「ブレイクソウル」というコマンドを使用すると、「ソウル」を1個敵に与えながらキャラごとに異なる効果を発動する。
    • ブレイクソウルは連携数をリセットして再度術技の連携につなげられる。これにより戦闘を有利に運べるほか、体力を回復することもできる。
      • 例えば主人公ベルベットのブレイクソウルは、発動時に攻撃を与えた敵により攻撃時に効果が付与される。発動中は体力が減少していくが、体力が少ないほど威力が増すという諸刃の剣。
      • 前作同様、状態異常にかかっている間はアイテムや回復術による体力の回復が封じられるが、このブレイクソウルを利用すれば状態異常にかかっていても回復可能。
    • 「ブラストゲージ」は「スイッチブラスト」「秘奥義」の発動に必要なゲージである。
      ブラストゲージは主に前述の「ブレイクソウル」を発動することで戦闘中に増加する。
      • 「スイッチブラスト」はブラストゲージを一回ごとに 1 消費して戦闘参加メンバーを交代しつつ固有攻撃を行うというもので、『エクシリア』にも似たようなインスタント入れ替え要素が存在している。
      • これにより状態異常を回復することができるほか、待機中のキャラは体力が回復でき、登場したキャラにはソウルが1つ付与される。
      • 前作ではできなかった、戦闘不能となった待機中のキャラにライフボトルや蘇生術を使用して復活させることも可能。
      • 「秘奥義」は必殺技に相当し、発動時にコマンドに設定されている数値分のブラストゲージを消費する。今作の秘奥義は独立した隠し技ではなくコマンド体系の一部分として序盤からチュートリアルによって明かされ、その種類もキャラごとに何種類も持っている。
  • 属性に関するシステムにも変更があり、敵の種族と弱点を全て突くことで「弱点連携」が発生し、耐性を無効化、状態異常発生率が上昇する。
    • 前作では存在しなかった「人間」種族への特攻が付いた技も本作では存在するため、人型のボスに対する対抗手段が増加した。
    • 『ゼスティリア』同様、各「属性」は「能力値低下」「状態異常」と結びついている。例えば、「攻撃力減少」のキャラは「麻痺」の発生確率が大幅に増加する。

まとめると、術技の連携によって敵を攻撃し、スタンさせることによってソウルを奪い連携数とソウルゲージを増加させてより強力な連携数増加のメリットを得て、「ブレイクソウル」によってさらなる連携につなげ、場合によってスイッチブラストや秘奥義などにつなげてフィニッシュするというのが本作のバトルフローとなる。
独自要素が多いが、やることはゲージ管理の割合が大きい。

  • ストーリーを進行することで入手できるアイテムを所持し、高グレードを維持した状態で戦闘を続けると、強力な敵「ワンダリングエネミー」が出現する。
    • ワンダリングエネミーには特殊な取り巻きの雑魚が存在し、雑魚は無敵状態となっておりダメージを与えることができない。
    • 倒すと特殊なアイテムが入手できるが、逃走することも可能。出現時、一定時間は一切行動しないため、逃走の猶予は十分にあるためその点は安心。

装備システム

  • 前作のスキルシステムが複雑であり不評だったためか、単純に素材を消費することで各装備を強化する、というシステム。
    • 装備ごとに固有のマスタースキルと強化スキルが存在し、そこにランダムスキルが付与される。
      • マスタースキルは装備中に一定量グレードを稼ぐことでキャラクターが習得することができ、装備を外しても効果が残る。
      • 強化スキルは装備を強化することで開放され、装備を強化するごとにスキルも効果が上昇する。
    • 装備の強化に必要な素材は、フィールドで拾うことができるほか、装備を分解することで入手することもできる。

フィールドの移動

  • 前作同様フィールドは広い代わりに、ストーリーを進行することで移動速度の速い乗り物である「レアボード」が入手できる。
    • フィールド上でワンボタンで使用することができ、弱い敵にぶつかると戦闘が発生せず相手を倒すことができる。
      • ただしその際経験値やお金等は一切入手することができない。また、使用するにはフィールド上に存在する地相樹を見つける必要がある。
  • 「イノーフボトル」「デノーレボトル」というアイテムが存在し、前者は使用することで一度行ったことがあるマップへパッと移動することができ、後者はダンジョンの入口にパッと移動することができる。
    • 少々高価だが、ショップで購入することもできるほか、ストーリーを一定まで進めるとそれぞれ無限に使用できるアイテムが入手できる。
      • ただし道中にイベントが存在する場合、いずれのアイテムも使用できないという欠点がある。

評価点

  • 本作の主人公であるベルベットに関する描写
    • 実の弟と平穏に日常を暮らしていたが、ある日突然冷酷な人物に豹変した義兄アルトリウスの手により、自分の目の前で弟を殺害され、余りにも非道な彼自身に怒りを覚えたベルベットが復讐を誓い、仇を討つまでの過程に関する描写やベルベット自身の心境が丁寧に掘り下げられており、プレイヤー達にとって感情移入しやすい人物像なっている。
    • 復讐心に縛られる姿ばかりではなく、仲間の中で重要なカウンターパートとなっていくライフィセットとの関係性の変化に伴って彼女の様々な面を見ることができ、RPGとしてよくできている。
    • 終盤で彼女に突きつけられた残酷な真実を知り、絶望するも、ライフィセットやシアリーズの励ましもあり、最後までアルトリウスに対して弟の仇を討つことを自分自身に誓うベルベットが現実と向き合う姿勢は多くのプレイヤー達の共感を呼んだ。
      + 本編のネタバレ注意!
  • シナリオのクオリティ
    • 前作は言わずもがな、シリーズ歴代作と比べても高い。
    • 重い展開が多いが、矛盾や説明不足な点がほとんどなく概ね好評である。前作であやふやになっていた設定にもある程度のフォローがされている。
      • 世界的に重要なのに全く掘り下げがなかった「マオテラス」や、全てが謎だった銃「ジークフリート」の詳細、ほぼ名前のみの登場だった「カノヌシ」に関する設定、ほとんど掘り下げがなかったザビーダの過去、導師の切り札「神依」のルーツにも触れられる。
    • 特に、モアナとメディアの会話シーン、ライフィセットが残酷な真実を知り絶望したベルベットを救うシーン、エンディング時のベルベットの悲壮な決断は評価が高く、泣いたという人も少なくない。
      • 仲間達の成長、主人公の葛藤、一時的に協力体制が起こる展開など万人向けと言える展開も概ね押さえている。
      • 本作をプレイしてから、この世界の先が気になった場合は、ザ クロスを視聴することを勧める。逆にザ クロスを先に視聴すると本作のネタバレが非常に多いので注意。
    • 今回はサブ人物が非常に充実しており、中盤以降は様々な人物がベルベット達に協力することとなる。
      • 同行中の人間を絡めたチャットが多くあり、ストーリーの充実に一役買っている。
    • 主人公一行の活動は良くも悪くも直接的に人類の居住地域に影響を及ぼすのが多く、NPCの会話から自分たちの成果を実感しやすい。
  • 戦闘システム
    • 戦闘システムは前作を改良したというよりは『グレイセスf』を様々に仕様変更したような造りになっており、前作及び大部分の歴代作をも上回っていると言って差し支えない。
    • どの技も何段目にでもセットできるようになったが、強い技の連発にならないように、消費SGを多くすることで調整している。SGが不足すると防御で割り込まれるようになっている。また、連携の後ろに配置する技ほど様々な恩恵が上乗せされていく。
    • 『グレイセス』や前作に備わっているロックオン機能*8に加え、さらに左スティックを倒すことにより自由な方向に攻撃可能。
    • ステップよりもフリーランの方に比重が寄った。ソウル総数に対するステップでの消費割合が多いため、『グレイセスf』のように攻撃後の硬直を消したり位置取りを変更する用途でステップする人は減ったかもしれない。
    • 1人ごとに持つ秘奥義数が4つと非常に多くシリーズではトップに近い。
      • また、待機も含め、味方の秘奥義同士を次々と連携させていく連携秘奥義というシステムも追加されている。
    • ある術・技の発動後に、術はL2ボタンを押すことで、技は押しっぱなしにすることであらかじめ指定された術・技へと連携可能になっており術・技欄の圧迫を軽減している。
    • NPCのAIが比較的優秀である。
      • 敵のAIや各種パワーソースの管理などが違うため一概には言えないが、難易度ノーマル以下ならば体感的には『グレイセスf』と同等以上に働いてくれる。
      • ただしベルベットに関してはブレイクソウル周りのシステムに癖があるためか、優秀とはいえない。具体的には体力低下効果によってしょっちゅうHP1になって勝手に死んでしまうため、自動操作時は使わないように設定しておくのが安定というなんとも残念なもの。
      • またこれはAIよりシステム側の問題になるが、本作では後述の通り高難易度にすると極端に回復術の効果が落ちるため、誰かのHPが減るとAIがひたすら効かない回復術を唱え続けるパターンに陥ることが少なくない。適宜技の自動使用設定を管理する必要がある。
      • 逆に"レイズデッド"などの蘇生術に関しては一律「蘇生の追加効果を持つ回復術」に統一されたので、エクシリア・同2のように途中で詠唱を止めることはないが、発動時に対象が既に復活していても無駄にならなくなった。
      • といってもこの点ではグレイセスが本作と同じ仕様だったため、正しくはエクシリア、同2、ゼスティリアを経て4作品ぶりに仕様が復刻したと言うべきではある。
  • その他のゲームシステム
    • アイテムが自動的に手に入るシステムとして異界探索が導入された。船を出航させると30分程度で指定した島ごとにアイテムを持ち帰ってくれる。
    • 探索を繰り返すと行ける島が増え、有利に探索が行えるスキルが自動で発動するようになる。入手できるアイテムは料理の材料やアタッチメント、水着など。
  • また、前作では一切なかった配膳ゲーム等のミニゲームが大量に存在する。
    • しかもそれらのゲームは称号やトロフィーなどでやり込むことを強制しておらず*9、報酬は初回クリアのビジュアルアイテムとTLコインのみ。
    • 一部病的なものに至ってTLコインしか貰えない。好きなミニゲームを好きなように遊べるストレスレスの仕様になっている。
  • BGMは女性主人公に似合った高音のBGMが多めで使用箇所も各場面にあっており印象に残るものが多い。
    • 他のBGMと毛色が異なる壮大さを感じさせ本作で最も評価が高い「Theme of Velvet」・通常ボス戦闘「Daemon's assault」・ラストダンジョンとラストダンジョン戦闘を兼ねる「The way of the embodied dragon」・敵組織である聖寮との戦闘「The will that opposes reason」など。
    • 前作からいくつかBGMが使いまわされているが、そちらも高評価。
    • コンポーザーはシリーズおなじみの作曲家・桜庭統氏であり、「テイルズらしいテイスト」を維持している。

賛否両論点

  • レーティングがCERO:B(12歳以上対象)であるためか、流血描写はかなり少ない。
    • 過去作品でも敵を殺すシーンや命のやり取りをするイベントで流血描写が無いことは多々あったが、今回はそういった場面が多いため、かえって不自然に思えてしまう。
      • いっそ『エクシリア2』のようにレーティングを上げてでも描写を解禁した方が良かったかもしれない。
  • 前作の過去を舞台にしている以上、前作でほぼ破綻していた「穢れ」「誓約」といった設定もガッチリ引き継いでいるため、そういう設定が絡む場面ではどうしてもご都合主義的な展開になりがちな面もある。
    • 「誓約」に関しては今作においても詳しくは言及されず、「そういったものがある」程度の扱いなので、最後まで曖昧な部分を多く残している。
    • 「穢れ」に関しては隠しダンジョンで触れられているが、はっきり語られたわけではない。
      + "穢れ"について 隠しダンジョンネタバレ 「天界天族」という新たな存在が登場したがその詳細は明かされず、穢れや業魔化・ドラゴン化については、「その天界天族によって人間達と地上に降りた天族にかけられた呪い」という形でひとまず処理された。
  • ダークな設定を打ち消すようにギャグ性の強くて漫画的なキャラクター(マギルゥとビエンフー)が存在する。
    • もちろん、主人公がかなりクールであることや悲惨な設定面、パーティー一行がアウトローなためその辛みを緩和する甘味を挿入するためのバランサーとしてのコミックリリーフではあるが、大袈裟にお道化た会話の分だけ雰囲気の独自性は薄れ、「結局歴代作品と同じ」ような味わいに着地しているともいえる。
      • 『ジアビス』のアニスや『デスティニー』のリリスのような「甲高い声でオーバーアクトに喋り、漫画的で極端な会話やリアクションを行うキャラ」の系譜に位置しているが、こうしたキャラの存在が一般層との乖離を招く要因ともなっている。
      • テイルズというだけで好む客層がいる反面、ゲーマーの中にはテイルズというだけで入りにくさを感じる層も確固として存在している。
      • 1990年代に確立したこうしたスタイルがトレンドの変遷で必ずしも受けなくなり、客層の高齢化などブランドの問題もあってこうしたテイルズ的な個性と癖の強いオーバーアクトなキャラの存在は良くも悪くも転換期に差し掛かっている。
  • 前作でキーとなった要素である「神依」が敵専用の技として登場する。
    • 「神依」を使う敵は前作通り性能が段違いに高くなるがかなり大きな欠陥もある。
    • 本作ではパーティメンバーにより、「反吐が出る」「ふざけた名前」など散々扱き下ろされる。
      • 前作ファンから批判が集中しても仕方が無い発言であるが、前作での神依自体がゲームバランス崩壊の最大の要因であり評判が著しくなかったため、作中での理由とは別の理由であるが、プレイヤーから共感が得られる事が少なくないため、批判はあまり無い。
  • 難易度の仕様
    • 難易度が上昇すると、敵のステータスが増加することに加えて、回復術の効果が軽減されてしまう。
    • 他にも逃走速度の低下、アイテムの待機時間の延長、戦闘不能時のBGの減少などの影響が大きい。そのため、基本的な戦い方は据え置きで難易度のみが上がるというよりは、戦い方そのものの見直しを迫られるような調整になっている。取得経験値が減るのも前作同様。
    • ブレイクソウルの回復量は据え置きのため、回復術ではなくこちらがメインになっていく。
    • 高難度でのみ解禁されるシステムもあるため、それを利用すれば低難度よりもスタイリッシュな戦闘を見込める。
    • ちなみに、今作での通常難易度の敵は全体的にステータスが低下傾向にあり、HPが中々削れなくて辛いといったことにはなりにくく、全体的にヌルめになっている。ボス戦も同様。
    • 回復術が用無しになっていく反面、ステータス異常のみを回復できる術というものは存在せず、必ず回復術と抱き合わせになっている。
    • これは、回復術を無効にするとステータス異常も治療できなくなることを意味するため、回復術の有効・無効や作戦の設定には難儀する。
    • シンボルエンカウントで敵に背後を取られたりダブルシンボルに接触した際の敵の強さの上昇度合いが強く、思いもよらないタイミングで全滅することもある。その唐突な初見殺し度合いはかの『真・女神転生III』にも匹敵する。
  • スタン・状態異常がどちらかといえば敵の方に有利な調整。
    • 敵の状態異常攻撃は高確率でスタンも付与してくる。
      • 大抵の戦闘は敵の方が頭数が多く、マークを逃れたエネミーが広範囲に状態異常を付与する技を使ってこちらの意識外から毒や麻痺を受けた上でスタンさせられソウルを失い攻め手をなくした上で連続攻撃を当てられたりスタンを重ねられるという嵌め殺しが起きやすい。
      • ソウルの仕様によって、この種のRPGとしては一度崩された場合のリカバーがかなりやりにくい。
    • 味方側にも一方的に攻撃するチャンスは存在しているのだが、高難度ほどハメるかハメられるかというピーキーなバランスにまとまってしまっている。
    • ノーモーションの攻撃で即座にスタンさせられたり、超反応でガードされることもかなり多い。
  • 2周目以降の周回プレイが賛否両論。
    • 今回はグレードショップの内容が、過去作品に比べるとやや少なくなっている。レアボード(高速移動アイテム)、術・技、マップ情報、強化した装備品を引き継ぎたかった人は多かった。
      • 前作も装備品引継ぎは無かったが、クリア後に前周の装備が手に入る仕様にはなっていた。
    • 1周目で大抵の要素が解禁できるようになっている。そのため、2周目以降の旨みが薄い。逆に言えば1周するだけでかなりの要素が解禁できるため、数十時間に及ぶ無駄な手間(周回作業)を省くことができるとも言える。
    • 周回時に術・技はグレードショップにより習得を早める(習得レベルを半分にする)ことが可能ではあるもの、最後のブレイクソウルと秘奥義は何周目であろうとラストダンジョン以降でないと手に入らないようになっているため、最初から強い状態で始めたい人は周回する気が減退しやすいかもしれない。
  • 装備強化に関して。
    • 強化に要求される金額があまりに多いのに対し、戦闘で入手できるお金が少なすぎる。売却専用のアイテムを売り払って溜めるか、2周目の「強化費用半分」「獲得金額アップ」をアテにするしかない。
    • この2つを併用してなお、最大強化した高レベル装備を揃えるにはそれなりの時間を金策に費やす必要がある。
  • 歴代要素が多いが少々露骨。
    • アイテムやり込み要素に、過去作のワードが使われることは今までにもあったが、今回はかなり多い。かなり重要なアイテムや、ストーリー中で示唆されることもあるため、そこはオリジナルの名称で良かったのではという声も。とはいっても名前だけ借りているだけであり、設定までそのまま持ってきているということではない。
    • 技名も過去作のものが多く使われており、エレノアが『アビス』の主人公ルークの第二秘奥義である「ロスト・フォン・ドライブ」を使うのに違和感を覚えた人も。
      • この秘奥義は該当作の根幹設定に深く基づいており、ルークだからこそ使いこなせる重要な奥義だったせいもあり、あまり嬉しくない歴代要素と言える。
    • また、シナリオ中盤で「一行が伝染病にかかったため、治療に必要な薬草を取りに行く」というイベントがあるのだが、その薬草の名前が過去シリーズに登場したキャラクターをモロに使った名前である上、それを「(見た目などに関して)趣味が悪い」とあまりにも不自然に連呼するシーンがあり、そのキャラに思い入れのあるユーザーはもちろん、それ以外からも少し悪乗りが激しいという意見が見られた*10
    • 前作と同様、かめにんによる『エクシリア2』のパロディが存在する。前作の時点で賛否両論だったが、今作では「同じ作品の同じシーンを2作連続でパロディ」という点もあって前作以上に厳しい目で見る人もいる。

問題点

  • 秘奥義演出について
    • シリーズおなじみの秘奥義だが、今回はほぼ好きなタイミングで出せるため、特に敵に使用される際の前兆などがほぼなく従来の「起点の技に当たらないようにする」「発動可能状態になった敵から離れ、味方を分散させる」などの対策が取れなくなっている。
    • こちらが秘奥義を使った際、演出が終わったあと敵が一切のけぞらず、全員が棒立ちの状態から戦闘を再開するためコンボが途切れる。また味方より敵のほうが明らかに行動再開が早い。
      • この影響で、味方に秘奥義使用を許可する設定にしていると、戦闘開始後すぐに聖隷術連携で接近させられる前に敵を押しとどめる目論見でいたのが、自動操作のパーティーキャラの秘奥義で詠唱中断 → その隙に敵が近寄ってきて嵌め殺し…のようなことになり、かえって不利になることがしばしば発生する。
  • 一部の技の性能が高く、同じ技を連発している方が安定してしまう。
    • 同じ技を連発すると威力が減衰したり、スタン・状態異常確率の減少といったデメリットが発生するが、ごり押しでスタンさせてしまえばソウルをほぼ確実に入手できるというメリットの前には霞む。
    • 特にベルベットのブレイクソウル「コンジュームクロウ」の効果時間中は絶対に死なないため、ソウルの稼ぎやすさは不死身でいられる時間の長さに直結するため、ソウルが稼げるようになると高難易度でもほとんど死ななくなる。
    • 味方が全員倒れてベルベットだけで大量の敵を相手するという光景も珍しくない。他キャラのブレイクソウルに関しては、無敵時間が発生するものはあるが、効果時間がすぐに終わるため、このようなことは起こらない。
  • フリーランの比重が大きくなり敵味方の位置関係が非常に流動的になった影響で、ロックオンしている敵が一気に遠くに行ってしまったり、囲まれやすくなったり、敵が近づいてきているのにロック対象にならないなど、ロックオンやセミオート操作に関する弊害がやや大きい。
    • 特に自衛能力が低くリーチも短いライフィセットは序盤戦闘に苦労しやすい。術師優先ルーチンの敵が多いこともあり、全般的に後衛キャラは一度懐に潜り込まれるとそのままスタン → 嵌め殺しされやすかったり、ずっと敵のヘイトが向き続けて詠唱の暇すらないことがままある。
      • 上記の秘奥義に関する仕様もあり、術師メインでプレイする人は今作だとストレスを感じやすい。
  • メニューを開かないと待機キャラのBGが確認できない。
    • このため、キャラを入れ替える時に入れ替え先のキャラのBGを確認するのが面倒くさい。そして確認を怠った場合、メンバーを入れ替えた後BG切れを起こし、状況が変わりピンチになっても引っ込めることができないという状況が起こりやすい。
    • 連携秘奥義、協力秘奥義を使う時は、メニューを開くことが多くなるため、テンポが悪くなりやすい。
  • イベント戦の戦闘中での会話は、誰かに秘奥義を発動されるとキャンセルされてしまう。
  • 便利な移動アイテムが揃っているが、入手できる時期はいずれも遅いうえ、使いたいときに使うことができないという問題を抱えている。
    • そのため、前~中版は広大なフィールドを走り回らねばならず、移動速度もお世辞にも速いとは言い難いため、主に2周目以降が煩わしい。
    • 加えて、レアボードの操作には少々癖があるため操作がやたら難しいのが欠点。隠しダンジョンではこれを駆使することを強要されるステージが鬼畜。
  • グラフィックはもともとPS3ベースで製作していたためか、2016年のPS4のゲームとしてみるとかなり抑え目。
    • 立ち姿や走り移動や梯子の昇降などモーション面も機械的で人形のように見えてくる。
    • ただし、これでも歴代シリーズとの比較では進歩しており、各種表現を充分違和感なく楽しむ事が出来る水準である。
  • 主人公たちは戦闘中に飛び回ったり跳ねまわったりしていて身体能力が高く、フィールドでも一部の場面でジャンプなどができるのに小さな段差や普通の斜面すら登れず、明らかに移動中の違和感がある。
    • 貧相な移動システムのために行きたいところに行けないストレスが大きい。
  • 前作に存在していた、戦闘開始時に初遭遇の雑魚モンスターの特徴を説明するショートチャットが削除された。
  • ビジュアルアイテム(外見変更装備)のうち、「アタッチメント」の装備に不可解な制限がある。
    • アタッチメント(アクセサリーなどの小物)は各キャラ3つまで装備できるのだが、アタッチメントごとに「コスト」が設定されており、コスト上限である3を超えてしまう組み合わせは装備できない。この制限は有料DLCで入手できるアタッチメントも例外なく当てはまる。
    • ビジュアルアイテムはあくまで外見を変えるだけであり、ゲームバランスにはなんら影響を及ぼさない。にもかかわらずこうした制限を設けていることで、単純に遊びの自由度を狭めてしまっている。
    • 装備する位置や角度、カラー・サイズなどを細かく変更・調整できるなど、本作のアタッチメントまわりはなかなか凝った作りになっている。そのため、余計にコスト制であることがもったいなく感じられてしまう。


Win(Steam)版

Win用移植版が2017年1月27日に配信されている。
が、これがジオブロッキングによって日本除外仕様(通称「おま国」)であり、日本製のゲームなのに日本人はプレイできないという酷い売り方になっている。
海外市場でも日本同様評価そのものは高く、ゲームメディアによる批評でも80%の評価を得ており上々。
微細なグリッチは存在するが移植精度も高く1080p60fpsでプレイできる。

日本市場に流通させないようインターフェース・テキストの日本語が存在しない仕様だったが、日本語プレイしたさに韓国人のプレイヤーがバイナリエディタなどを使った日本語可の方法を調べるなどしており、売り方そのものに疑問符が付かざるを得ない。


総評

前情報では操作方法の大幅な変更など戸惑う部分もあった上、なによりシリーズの中でも歴代最悪とも言われる前作の前日譚ということも相まって、発売前より地雷として購入を見送ろうとしたプレイヤーも少なくなかった。
…が、いざ蓋を開けてみれば、前作の悪評を完全に払拭するほどの良作であった。
売上も初週こそ前作をやや下回った計25万本程だが、3週ほどで30万本を突破するなど歴代作と肩を並べる売り上げを残している。
前作の設定を引き継いではいるものの、この1作で物語が完結しているため新規のプレイヤーでも問題なく遊べる。
キャラやシナリオは高い完成度であり、とりわけクールな女戦士やかわいらしい少年といった設定のキャラが好きな人、或いは年上の女性と年下の少年の関係が好きな人はかなりハマるような設定になっている。
ダークなシナリオや描写を問題なく受け容れられるなら、手に取って損は無い逸品であり、是非とも主人公であるベルベットの生き様を見届けて欲しい。


余談

  • 「ファミ通アワード2016」にて、本作は「優秀賞」を、主人公であるベルベット役の佐藤利奈氏が「女性キャラクターボイス賞」を受賞。
  • ザ クロスでは1期5話と6話が本作の序盤を描いたものとなっている。
    • 他、OPにベルベットが登場したり、2期でベルベットの存在について語られているなどタイトル通りクロス要素が見られている。
  • 『ファミスタクライマックス』にて、本作の主人公のベルベットがバンダイナムコスターズの選手として登場した。
  • 2018年6月11日のE3において『テイルズ オブ ヴェスペリア』リマスター版のリリース決定と同時に、本作が世界累計販売本数100万本を突破したことが正式アナウンスされた。
  • 上記の通り『ゼスティリア』の影響もあり、購入をためらった層が多く出たことが響いており、ブランドの復権は次回作である『テイルズ オブ アライズ』に託されることとなった。
  • 2024年3月10日にいのまた氏が63歳で死去したため、氏がキャラクターデザインを担当したCS機作品は本作が最後となった*11

その後の展開

  • 2021年9月9日にシリーズ最新作『テイルズ オブ アライズ』がPS5/XSX/PS4/One/Winで発売された。
    • 公式ジャンル名は「心の黎明を告げるRPG」で、グラフィック・デザイン・アクションがこれまでのシリーズから一新されている。
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最終更新:2024年03月20日 10:20

*1 Win版は日本ではプレイ不可能。

*2 PS3版はダウンロード版のみ。

*3 平松氏はチャットのテキストも担当している。

*4 シリーズ内におけるメインタイトル。

*5 マザーシップタイトル以外も含めると、携帯電話用ゲーム『テイルズ オブ ブレイカー』のミカが初の女性主人公である。また、『テイルズ オブ エクシリア』のミラもマザーシップタイトルの女性主人公だが、ジュードとの「W主人公」であるため「単独」ではない。

*6 ただし、本作よりも前の主人公である『シンフォニア』のロイドや『ヴェスペリア』のユーリは、相手が悪人だとはいえ何の躊躇いもなく人を殺める描写が存在するので彼女だけに限ったことではない上、前者2人とは異なり『ジアビス』のルーク同様、人を殺めてしまった罪悪感を抱くなど一般人としての感性を持ち合わせているので、プレイヤーたちからの非難の声は一切存在しない。

*7 ステップ動作で敵の攻撃を回避するのに成功した際に発動するモーション。

*8 プレイヤーが攻撃中に味方が別角度から攻撃を加えても、次の攻撃で空振りしない。

*9 一応、TLコインをある程度集めるトロフィーがいるが稼ぐ手段は限られてない。

*10 正確には「○○××」と男性キャラ名を2つ繋げた「BL二次創作のカップリング名」のような名称であるため、それを遠回しにいじったネタであると思われる。

*11 シリーズ全体で最後にキャラクターデザインを担当したのは、スマートフォンでリリースされた『テイルズ オブ クレストリア』となる。