真 流行り神2

【しん はやりがみつー】

ジャンル ホラーアドベンチャー


対応機種 プレイステーション4
プレイステーション3
プレイステーション・ヴィータ
発売・開発元 日本一ソフトウェア
発売日 2016年7月7日
定価 パッケージ / ダウンロード
【PS4/PS3】7,344円 / 6,171円
【PSV】6,264円 / 5,143円
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 なし
ポイント 話が進むごとに薄れる恐怖感
キャラクター描写は良好
前作の問題点は大分改善
流行り神シリーズ



それは、理の境界を蝕む恐怖



概要

都市伝説のような事件を捜査していくホラーアドベンチャー『流行り神』シリーズの一作。

前作『真 流行り神』は以前のシリーズ旧作『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』の良点を完全に廃し、また1つのアドベンチャーゲームとして見ても質の悪いものだったことから大批判を受けた。
制作側はこの点についてインタビューで度々言及しており、本作では「原点回帰を意識した」という。
旧作のシステムを復活させ、シナリオ原案を旧作の第1・2作のシナリオを担当した新川宗平*1が担当している(本作のプロデュースも担当)。
レーティングは前作同様CERO:Z(18歳以上のみ対象)となっている。

作品の時系列は前作の「ブラインドマン編」から2年後で、舞台は日本一ソフトウェアの所在地である岐阜県がモデルの「G県」に移っている。主人公は続投しているが、他の登場人物は一新されている。
また、寒村が舞台というクローズド・サークルものの趣きが強く、サウンドノベル寄りのシステムだった前作から一転し、独立した事件を捜査する従来のオムニバス形式に戻った。


ストーリー

  • 第一話「●●女」
    「G県」では、「ヒキコさん」「ベンチの下の女」「カオルさん」「カシマさん」といった都市伝説に符号する怪事件が起きていた。G県警に異動となった主人公・紗希は、巡査の刹那(せな)*2とともに事件の捜査に赴く。
  • 第二話「半分こ」
    G県内で、体を縦半分に切断された中年女性、横半分に切断された女子高校生の遺体が見つかる。紗希と刹那は第1の被害者の娘に母の死を伝えるが、2人は娘に異様なものを感じる。
  • 第三話「TVに映ったアイドルの霊」
    死亡したアイドルが、翌日の生放送の歌番組に映った。紗希と刹那はアイドル死亡の原因を捜査するが、互いをアイドル殺害犯であると言い合うプロデューサーとトップアイドルの周りで怪異現象が頻発する。
  • 第四話「都庁の秘密」
    紗希と刹那は慰安旅行中に助けた外国人から、明日都庁で花火が上がるから近づかないようにとの警告を受ける。都庁に爆弾が仕掛けられた可能性を考えて2人は捜査するが、その中で刹那が「都庁ロボ」の設計図を見つける。
  • 最終話「星を見る少女」
    G県では、少年少女の首吊り自殺が多発していた。その集団自殺の原因であると自称する少女や、彼女の知り合いである少年に出会ったことで、紗希と刹那はG県で暗躍する組織の存在を認識する。
  • 番外編「首なしライダー」
    以前から刹那が探し続けていた都市伝説の怪人が発見された。刹那は突如家に現れたメイドとともに、怪人の元へ向かう。

システム

ほぼ前作と同じなので、そちらも参照

  • ストーリーに「超常的なものを信じない科学ルート・信じるオカルトルート」の分岐が復活した。
    • 第四話は、各キャラクターの視点から描かれる「紗希ルート・刹那ルート」に分かれる。
      内容から考えると、紗希ルートが科学ルート、刹那ルートがオカルトルートに相当すると思われる。
    • 番外編は旧作と同様分岐なし。
  • 自問自答により、その後の展開が変化する「セルフクエスチョン」も復活した。

評価点

  • 前作の問題点が多数改善されている。
    • 前作のキャラクターは主人公も含め全く感情移入のできない存在だったが、本作では前作に比べていずれも描写が丁寧であり、好感の持てるキャラクターとして描かれている。
      • 前作の主人公の先輩はクズもしくは役立たずに過ぎなかったが、本作の相棒は高い行動力と豊富な都市伝説の知識により様々な場面で頼りになる存在となる。
      • 自己中心的な主人公も改善され、第一話の時点でこそ前作の影響でネガティブな面があるが、相棒と共にそれを乗り越えいいコンビとなっていく。また、服装も(当然と言えば当然だが)前作の革ジャン&ミニスカから一転して刑事らしいスーツ姿に。
    • 相手に投げかける選択肢と実際の台詞の不一致が多かった「ライアーズアート」は、選択肢と台詞が一致するようになった。シナリオ上では「前作では主人公が未熟だったため、うまくライアーズアートを使えなかった」「前作での苦い経験で己の未熟さを痛感し、技術の研鑽に努めてきたことで使いこなせるようになった」と理由付けされている。
      • 短かった制限時間は長くなり、雰囲気にあっていなかったハイテンションなBGMは落ち着きのあるものになった。シナリオ最後のライアーズアートのBGMも効果的に使われている。
      • なお、前作のライアーズアートのBGMも特殊な状況で1度だけ使われるが、その際のライアーズアートはイマイチな結果に終わる。自虐か何かだろうか。
    • 前作ではキャラクターデザインとイベント絵の絵柄が違いすぎるために違和感が凄まじかったが、本作のイベント絵の絵柄は比較的キャラクターデザインに近くなった。キャラクターデザイナー自体、あまり絵が上手くないというのは変わっていないが。
      • 今回は複数の絵師がキャラクターデザイナーの絵柄を真似て描いているのだが、これによる新たな疑問点が指摘される。これについてはキャラクターデザインとともに後記問題点にて記す。
    • 用語のデータベースは総数は前作と変わらないものの、個々が濃密になっている。
    • 前作は全編に渡って必要以上に暴力的・猟奇的な描写が散見されたが、本作ではそのような描写は適切な箇所で行われるようになった。具体的に言うと、ほぼ第二話に集中している。
  • 第二話は犯人の不気味さなどにより、恐怖感は本作随一である。また、序盤のある場面は直前の演出とあいまって怖い点として挙げられることが多い。また、CERO:Zに相当する残虐表現は、ほぼ第二話に集中している。

賛否両論点

  • 第二話までは前作と比べれば『流行り神』らしいと言える内容なのだが、第三話以降は都市伝説もホラーも薄くなっていく。ただ、ホラー抜きでも内容自体を評価する声はある。
    + 各話のネタバレ
    • 第一話のオカルトルートでは後半、突然クローンなどという明らかに浮いている設定が出てくる。しかも、これが噂ではなく実際にストーリーに盛りこまれてくるので、初見は呆気にとられてしまうユーザーも多い。しかし、第三話以後のストーリーの酷さの為に、プレイ後はあまり印象に残らないユーザーも多い。
    • 第三話は都市伝説無関係で、ホラーと言える描写もほとんどない。オカルトルートで「悪霊を吸い込む掃除機」というおふざけのようなアイテムが出てきたり、推理ものなのに「被害者の幽霊と話して解決」等と、どこか外した感がある。
      • 事件の真相自体は悲しく、美しいと受け取れるものである。
    • 最終話では都市伝説は序盤にちょっと出てくるだけで、以後は科学ルートは超能力もの、オカルトルートは魔法少女ものと化す。強力なマインドコントロールや、時間を巻き戻すなどやりたい放題。それを行う人物たちも『流行り神』の世界観からかけ離れたキャラクターデザインであり、浮いている。
      • 「ループもの」の熱い展開やライバルの協力など見どころはある。
    • 番外編は都市伝説の存在が大きく扱われているものの、行われるのはバイク同士の追走劇である。
      • 内容自体は刹那の過去を掘り下げたもので、これまでの話で彼を好きになれていた人にとっては良い話となっている。
      • ただし、最終的には頭が悪く言動も気持ち悪い上にストーリー上何の存在意義もないパートナーに台無しにされてしまう。
  • G県(岐阜県)の郷土料理の話題が何度も出てくる。時に、ホラーよりこちらの方が力が入っていると言われるほど。「飯テロ」として面白がられることもあれば、全体的に軽めな雰囲気を更に軽くしているとの指摘もある。
  • ライアーズアート使用時に主人公が「ライアーズアート…」と呟くようになった。まるで「必殺技発動時の決め台詞」のようであり、言いようのない寒さを覚える。
    • 他の登場人物からも「ライアーズアートか、興味深いものを見せてもらった」といったセリフが有るが、主人公は普段から自分の心理テクニックに名前を付けて周囲に吹聴しているのだろうか?
      • また、ライアーズアートは「カマをかけてボロを出させる」「相手の冷静さを奪うためにわざと侮辱する」「語句への反応から相手の本音を推測する」といったものなのだが、そういうテクニックの使い手が自ら自分はいつもそういうことをする者ですとバラしていては、他人の口が固くなってしまうだけである。主人公の判断力に疑問が残る。
    • 作中に「ライアーズアートは心理学を応用したもの」という旨の会話が有り、現実の心理学にも「ドアインザフェイス」といった近いテイストの用語が有るが、勿論使う時に技名を唱えたりはしない。
  • 前作では明確にされなかったが、本作で旧作(『真』シリーズ以前)と同じ世界が舞台であることが明らかとなり、旧作の登場人物が重要な役柄で登場する*3
    • この人物の登場を喜ぶファンもいるが、前作の出来により真シリーズに良い感情を持っていないファンもおり、旧作と絡めたこと自体に不満を持たれてもいる。

問題点

  • キャラクター性は前作に比べると基本的に好評だが、それは酷評された前作という比較対象を立てての評価であり、今作のみの評価となると下記のような問題点が指摘される。
    • 警部補の新美心太朗はステレオタイプな「エリートだが若干幼稚さの残る性格」として描かれており、「"僕"と言いかけて"俺"と言い直す」シーンが何度も繰り返される。
      また32歳の警部補なのに7歳も年下の平巡査である刹那と無闇に煽り合う場面も多く、シリアスな空気を阻害している。
      本作におけるオカルト否定派であるが、旧作のオカルト否定派のように「こういう理由でオカルトは有り得ない」と論理的に否定するのではなく、理由もなくただオカルトは有り得ないと喚くだけなので不快感が強い。
      ただし魅力的な役回りをする場面も有るので、不快一辺倒のキャラというわけではない。
    • 科捜研所長の如月蜜子は旧作の登場人物である霧崎水明(オカルトに造詣が深い)、式部人見(科学的に物事を考える)、犬童蘭子(特殊能力者)の全てを兼ね備えていると公式に言及されている通り、科学・オカルトの知識が豊富で、降霊などの特殊能力も持つ。
      これらの能力で不可能事に見える問題も簡単に解決してしまう為、主人公たちはいらないのではと思わせられる。
  • ゲーム全体の雰囲気がオカルト寄り。
    • 全体的に科学ルートの出来が悪い。オカルト事件を科学的見地から捜査していくが、どの話もオカルトルート前提であるかのように進み、結局謎だらけのまま終わってしまう。
      • 旧作での基本的な構造は、オカルトルートで事件の根本にある都市伝説や怪異の正体が考察され、科学ルートでは事件関係者の人間関係や確執が浮かび上がる、それらの情報を合わせて見る事により「何故この事件はここまで大きく凄惨な事になってしまったのか?」という全貌が明らかになる造りとなっていた。少なくとも製作者の用意した「真相」はある程度明確にされていた(プレイヤーがそれに納得出来るかどうかは別にして)。
      • そういう謎だらけのものこそが都市伝説と言うものだが、本作では最初から真相を何も考えていないのではないかというくらい、理解不能なものが多い。
      • 第一話の科学ルートの推理ロジックが端的な例で、「事件の現実的な解釈」ではなく「科学的には現代でも可能なのかもしれないが現実的じゃない」ような用語が正答になっている。
    • メインと言えるキャラクターは5人いるが、そのうち3人は科学・オカルトの両方に柔軟に対応し、残りの2人はオカルト否定派だが活躍が少なめ。このことも雰囲気がオカルト寄りであることに拍車をかけている。
  • 旧作はルートによって真相が大きく変わっていたが、本作は第四話を除いて科学ルートもオカルトルートもほぼ同じであり、ひねりがない。特に第三話は全く同じと言っていいほどに内容に変化がない。
  • 年配のキャラクターなどは容姿に過度な特徴がつけられており不気味。「オッサンキャラが生理的に気持ち悪い」などと批評される事もある。
  • 全体的に雰囲気が明るめ・軽めで、コミカルなシーンが多い。ホラーを求めていると拍子抜けする。
  • 序盤において、主人公が前作の先輩のことを相棒として回想する場面が多々あるが、先輩は主人公とは一緒にいる時間が多かっただけで特に相棒としての描写はなかったため、違和感がある。
  • カリッジポイントの意味が薄い。
    • ライアーズアート後に回復する仕様のせいで存在価値が薄い。前作から継続している問題であり、本作ではシナリオによって初期値を少なくするという対策がなされたが焼け石に水。
    • カリッジポイントを消費する選択肢が「 "物語が進行" か "バッドエンド" のどちらか」ばかりで、「どちらを選んでも物語は進行するが、ある程度内容が変わる」というものがほとんどない。
      結局正解の選択肢を選ばなければならないので、このシステムを搭載している意味がない。
  • 第四話の存在そのもの。他の話は好意的・批判的意見のどちらもあるが、第四話はほぼ批判一色である。
    + 第四話ネタバレ
    • 第四話は都市伝説を題材としてはいるものの、ホラーではなくコメディ全開。
      • 紗希ルートはロボットアニメのパロディギャグが詰め込まれている。紗希はその状況を夢と信じ、現実ではないと否定し続けるため、プレイヤーは話に乗り切れない。ギャグ自体も滑っている。
        本筋と無関係なロボットバトルのディテールを延々と描写されるので、元ネタを知らないプレイヤーにとっては苦痛以外の何物でもない。最初は変な展開自体を面白く思えても、確実にウンザリする長さ。
      • 刹那ルートは紗希ルートに比べればホラーと言えるが、「ジャンピングばばあ、紫ばばあ、ターボばばあといった都市伝説の老婆の波状攻撃を受ける」という状況は笑わせに来ているとしか思えない。
    • 第四話という異様な話自体が最終話に出てくる能力に関わってくるので、第四話は必要な話ではあるのだが、あまりの異質ぶりには目を疑う。「こういうのは"おまけシナリオ"でやるべき」という意見が大勢。
  • ゲームを進めると、本作の都市伝説が別に怖いものではないことが分かってしまう。
    + ストーリーの根幹に関わるネタバレ
    • 第三話を除く全ての話の事件は、怪異の力で世界征服を目論むカルト組織が起こしている。これでは怖いのは都市伝説ではなくカルト組織である。
      • 本作中では比較的評価の高い第二話には全く関わっている様子がないのに、ゲームを進めると関連していることが分かる。何故関連付けてしまったのか。
      • そもそも、「怪異の力で世界征服を目論むカルト組織」というのが意味不明である。せめて、「SCP財団」のような怪異を収容する組織であれば世界観に合っているのだが…。

総評

「原点回帰」を謳っていたが、蓋を開けてみれば単に科学・オカルトの分岐が復活しただけであった。
酷評された前作だが、前作ではおまけ的な話を除いて一応ホラーものをやっていたことを考えると、途中からホラーものではなくなっていく本作は、ホラーアドベンチャーとしては前作より酷いと言える。
ただ、ほぼ問題点しかなかった前作に比べれば、それらの問題点を多数改善した本作は遥かに良くなっている。好感の持てるキャラクターや、ホラーものではなくなる第三話以降の展開をどう捉えるかで評価は変わってくるだろう。


その後の展開

  • 2019年7月18日にSwitchでカップリング移植『真 流行り神1・2パック』が発売された。

続編について

  • 本作発売前の時点で続編の発売が発表されており、本作が前作の約3万5000本を越える売上を出せばプロジェクトがスタートするとされているが、本作の売上は1万2000本程度にとどまっており*4、続編の開発は絶望視されていた。
    • しかし、日本一ソフトウェアの新川社長は発売後の公式インタビューで「期待に応えられなかったからこそ、これらを踏まえた“3”を作りたいですね。」とコメントしている。
  • その後、2021年7月29日にその続編である『真 流行り神3』がPS4/Switchで発売された。ストーリーは『2』のエンディングから直接続く物語となっており、登場人物も続投している。また、従来のカットインに加え一枚絵が動くという新たな演出が追加されている。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 2016年
  • PS4
  • PS3
  • PSVita
  • ADV
  • 日本一ソフトウェア
  • 流行り神

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年02月26日 23:06

*1 日本一ソフトウェア社長。『マール王国』や『ディスガイア』など同社の他作品のシナリオも多数手掛けてきた。

*2 名前だけ聞くと女性のようだが男性。

*3 前作ではある人物が旧作に登場する組織に所属していることを思わせる描写がある一方で、登場人物が旧作のゲームを持っているという描写もある(つまり旧作が劇中劇になっているということである。こちらはギャグ的な描写ではあるが)。

*4 電撃オンライン調べの販売ランキングでは、PSV版が6,889本、PS4版が4,564本。PS3版はランキング外で計測不能であり、ランキングから推測すると1,000本に達しているかどうかというレベル。