カルドセプト リボルト

【かるどせぷと りぼると】

ジャンル カードゲーム+ボードゲーム
対応機種 ニンテンドー3DS
発売元 任天堂
開発元 大宮ソフト
ジャムソフト
発売日 2016年7月7日
定価 5,076円
プレイ人数 1~4人
レーティング CERO:B (12歳以上対象)
判定 良作
ポイント システムとバランスが大幅に変更
カルドセプトシリーズ
初代 / セカンド / サーガ / リボルト


概要

初代セカンドサーガに次ぐシリーズ第4作(移植作を含めると第8作目)。
基本的なところは3DS版をベースにしながらも、旧作で連綿と受け継がれていたシステムにある意味「破壊」とすら言えるほど大胆な改革を施した新世代カルドセプトになっている。

プラットフォームは引き続き3DS。何気にシリーズで初めて「一つのハードで出すのは一作のみ」という伝統を打ち崩した作品である。

システム

  • 「ダウン」
    • 本作におけるシステム上の最大の変化。以前のシリーズと違い、本作では全ての領地にいつでも領地コマンドを使用できる。その代わり、「不屈」のキーワード能力を持ったクリーチャー以外は召喚時「ダウン」した状態で召喚され、ダウン状態のクリーチャーには領地コマンドは使用できない。
      • ダウンしていても戦闘能力に変化はない。あくまでレベルアップや移動侵略といった領地コマンドの使用の可否だけに絡むシステムである。
    • 領地コマンド、秘術を使用したクリーチャーは再びダウンし「全種類のゲートを通って周回ボーナスを貰う」「ゲートに丁度止まる」のどちらかの条件を満たすまで再び命令を出すことはできなくなる。
    • 領地能力はスペルフェイズに使用する「秘術」に変更されたため、使い勝手がだいぶ変わっている。
  • 基本仕様の変化
    • エリアシステムの削除。マップ内の全ての領地が連鎖するようになっている。
    • 一時的に手札を7枚以上持つことができるようになった。7枚を超えた場合、ラウンド終了時に6枚になるまで任意で捨てることになる。
      • なお、スペルや戦闘中発動する能力を加味すると8枚以上まで増えることもあるが、10枚を越えるとそれ以上は強制的に破棄されてしまう。
    • 支援効果*1が廃止された。このため先制クリーチャーがやや弱体化している。
    • 「ラウンドゲイン」というシステムの追加。毎ラウンド開始時に微量の魔力が必ず得られる(1ラウンド目20G、2ラウンド目21G、3ラウンド目22G……と、以下1ラウンドごとに1Gずつ加算されていく)。このため、魔力がなくて何もできない、という事態は起こりにくくなった。
    • ダイスが「マップごとに異なる最大目のダイスを振る」から「0~5の目を振られたダイスを2個振る」に全てのマップで統一された。
      • ただし特殊仕様として0のゾロ目は12扱いになる*2
      • この仕様によって一部のスペルの効果が変更されている。
  • 施設の変更。
    • 「城」「砦」の区別がなくなり全てが「ゲート」で統一された。
      • ゲートを通過してマークを集めて最後のマークのゲートを通過すればそれで一周した扱いになる。このため周回ルートが旧作に比べかなり柔軟に組めるようになった。
    • 「ほこら」の削除。
      • 以前からガチプレイヤーには「運次第で戦略が破綻する」として不評だったので概ね好評。
    • 新施設「魔力トラップ」「魔法陣」「分岐スイッチ」「司令塔」の追加。
      • 魔力トラップは「6以上の目を出して通過または停止すると魔力の20%を奪われる」「3以下の目を出して通過または停止すると蓄積した魔力を受け取れる」という効果。露骨な走り抑制である。ちなみに4または5の目で通過または停止した時は何も起こらない。
      • 魔法陣に止まると、ランダムに提示された2つのスペルカードからどちらか1つを魔力消費なしで使える。
      • 分岐スイッチは分岐路に設置されており、一定ターンごとに切り替わって指定された方向にしか進めなくなるという効果。直接分岐スイッチを踏むと任意に切り替えることも可能。ポイントを切り替えても切り替えなくてもスイッチを踏んだ時点で切り替わりまでの残りターンはリセットされる。
      • 司令塔に止まると全ての領地に手札からクリーチャーを召喚できる。空き地を確保するもよし、守りの薄い敵領地に奇襲をかけるもよしである。
    • 聖堂は「宝石屋」に変更。売買するものも「護符」から「属性石」という物に変更された。
      • 概ね以前の聖堂と似た感覚で運用できるが、単価が高かったり友好属性同士でも価値が上がったりと結構違う点がある。
    • 地味ながら橋がマスとしてカウントされなくなった。前作まではホーリーワードなどを使って橋を踏ませるとマップによってはすさまじい遠回りを強いられる羽目になっていたが、今作ではそのような事態は起こらなくなった。
    • 無属性土地は削除された。無属性クリーチャーをモーフ土地に配置すると、複属性土地に変化する。
  • 新しい特殊能力として「不屈」「感応」「合成」が登場、援護に制約の追加。
    • 不屈は前述のように「領地コマンドを使用してもダウンしない」能力。召喚直後から領地コマンドを使えるため、展開速度を速めることができる。
    • 感応は対応する属性のクリーチャーがマップ上に存在している(敵でも味方でもいい)と自分の能力がプラスされる効果。条件が緩い割に上昇値が高く使いやすい能力と言える。
    • 合成は使用時に手札コストを要求する一部のクリーチャー、スペルに存在する特殊能力。手札コストとして指定された条件のカードを捨てると追加効果が発動したり全く異なるクリーチャーに変身したりする。
    • 一部クリーチャーの援護に制限が設けられた。「援護【全】」というクリーチャーなら今まで通り全てのクリーチャーをアイテムとして使用できるが、「援護【火地】」というような場合火属性と地属性以外のクリーチャーは使用できない。
  • 新しいスペルの分類として「密命」「世界呪い」が追加。
    • 密命は相手セプターからはカードの裏側しか見ることができず、「密命カードである」ということ以外その内容を知ることができないスペル。効果は特定の条件を満たした場合に限り大量の魔力を得られたり、特定のクリーチャーにダメージを与えたりと様々。発動が厄介な反面不意打ちや読み合い用カードとして強力。
    • 世界呪いは6ラウンドの間全てのセプター、クリーチャーを対象に発動するスペル。過去作における「アイドル」(今作には未登場)の改訂版としてデザインされており、似た効果のスペルも多い。
  • サーガ出身のカードが多めに採用されている。シーフなどサーガ仕様のデザインになったクリーチャーも。
    • ただし、能力は調整されているカードが多い。
  • コストやカード効果の大幅な調整
    • ラウンドゲイン等や周回の高速化を考慮してか低コスト帯のクリーチャーはコストが上がって配置力が落ち、高コスト帯は条件付きのクリーチャーはコストが落とされるといった調整がされている。
    • 強打アイテムの条件が相手ではなく「使用クリーチャー」を参照するようになった事で強打が狙いやすくなったり、いくつかの道具が防具に差し替えられたり削除されたりしており、「汎用性があるがコストが高く効果に劣る道具」と「コストが安く強力だが使用者が限られる防具」と言う様な住み分けがこれまで以上に強化されている。
    • また、これまで低コスト、基本的なカード扱いで主力になり得なかったレアリティNにテコ入れがされており、後述のプラックソードや配置制限が無い上にステータスだけなら上位クリーチャーレベルでエコノミーパック(つまり最序盤で)で入手できるキングバラン、補正値がランダムだがHP、STどちらも上昇するスペクターローブと言った上級者でも使用を考慮するようなカードも追加されている。スペルに関しても単純だが確実な効果を見込めるものが多く、ブックに欠かせない物も多くなった。
    • 更にこれまでのシリーズに登場したアイテム破壊の道具はグレムリンアイに差し替えられレアリティNのカードを破壊できなくなったのでこれまでは弱いと言われていたNカード主体のブック構築も一考できるようになった。
      • S、RにはNでは補いにくい無効化の付与や条件を満たせば3桁の補正もありうるアイテム、条件が合えば恐ろしい爆発力や防衛力を持ちうるクリーチャーや使い手を選ぶが効果が強力なスペルがあるのでNだけが過剰優遇という訳ではなくバランスは考慮されている。
  • キーワード能力の変更
    • 戦闘終了後に一定ダメージの毒は衰弱に、麻痺は戦闘行動不可に変更された。
  • 本作の戦闘マップは、「セプターがその戦闘力を最大限発揮できる仮想空間」という設定になっている。
    • 特にゲームシステムに関わる設定変更ではないが、前作までのシリーズでは「城の上に城がある」というツッコミが入っていたので、恐らくそれを回避するためと思われる(前作までは戦闘マップについて特に設定はなかった)。
      • またこれに伴い、「ロカ」「ダムウッドの森」と言った地名系のマップ名はなくなり、「シンプルサークル」「デュアルブランチ」など名前からマップの形状がイメージしやすくなっている。

評価点

  • 過去作に比べ、大幅に侵略有利の一発逆転型のバランスに調整された。
    • 大半のクリーチャーは召喚に要する魔力が削減され、ラウンドゲインの追加もあって強力なクリーチャーを召喚しやすくなった。
      • 全体的に侵略クリーチャーが非常に強力になっており、90Gと火領地という低コストで召喚できるにもかかわらず、ST50HP40、先制、水風貫通、水風強打という凶悪な組み合わせの能力のファイアービークヘビー級の召喚コストに相応しく高いSTHPに先制、敵破壊時の領地変換までも併せ持ったテュポーンやティアマトなど、過去作に比べ強力なバランスになっている。
      • 一方で何の前提条件もなくいきなりHP70のステータスで配置できるG・ノーチラス防具を持つだけで全ての直接攻撃を無効化し援護まで併せ持つ突破困難なアクアデュークなど、主に水属性で防御力が強化されている面もある。要するに火と水を中心に能力のインフレが起こっている。
      • 強力な侵略武器も追加されている。連鎖数に従って青天井に火力を伸ばすチェーンソーや、高いST補正に加えレア度Nクリーチャーが使うだけで強打を発動できるプラックソード、相手の無効化・反射を無視できるムラサメなどが筆頭。
      • その反面防御側アイテムは全体的にやや弱体化。コストこそ莫大だが対抗手段が僅かで通常攻撃も巻物攻撃も無力化出来たホーリーグレイル*3やコストのみで通常攻撃を無効化出来るアイテムのガセアスフォーム*4、通常攻撃を反射するという効果で前作で環境をも動かしていた*5防具カウンターシールド*6と言う様な単純に強いだけのカードは削除されている。防衛に関してはよりクリーチャーの素の性能が物を言うようになっている。
    • 旧作でお馴染みだった各属性の20/30の弱小クリーチャーが、火は強打、水は無効化、地は援護、風は先制と各属性の代表能力を備えた低コストクリーチャーに差し替え。
      • ステータスこそ低いが低コストで各種制限が緩く、旧作の弱小クリーチャー組とは比較にならないほど使える。特に火のフロギストンはMHP40以下という広い範囲に強打でき、水のアクアリングも低コストでMHP30以下に対する無効化を持つためばらまきに適しているため、カード資産が揃った後でも十分実用圏内。
    • システム面でも全ての領地にいつでも領地コマンドを出せるようになった関係上、隙を見せればすぐさま隣接領地から攻め込めるようになっており、「拠点を築くならば隣接領地を抑えておくこと」が今まで以上に重要視されるようになった。
      • その隣接領地にしても、ダイスが2つになった弊害で容易に隣の領地に止まりにくくなった事で配置しにくくなっており、またたとえ周辺を固めても司令塔のあるマップだと直接侵略される危険もある。
    • 総じて「どれだけ堅牢な拠点を作っても決して安心できない」バランスになっており、大差を付けられても一発逆転が非常に狙いやすくなっている。もちろん自分がトップに立っても話は同じで、試合の最後の最後まで気が抜けない。
  • 旧作で強かった戦法の抑制。
    • 足系スペルが全体的に弱体化*7しており、前作で強力だった走り戦法はやりにくなっている。また魔力トラップや「スピードペナルティ*8」などの存在で一気に周回数を稼ぐ戦法は抑制されている。
    • マジックブーストは削除された。まぁ本作の環境で存在しているとダウンしていない全ての領地のレベルを半額で上げられてしまうので、当然と言えば当然である。
    • 属性間バランスも調整されており、前作で不遇気味だった火属性は侵略力の大幅な強化で止めきれないと非常に危険な属性となっている。概ねどの属性主体でも十分戦えるようなバランスである。
  • 複属性ブックが組みやすくなった。
    • 前作までは展開速度などの関係で単色ブックが対人戦ではメインで使用されていたが、本作では「火属性と地属性」「風属性と水属性」(ゲーム内では「友好属性」と呼称)それぞれの組み合わせで用いられる2色構成が強くプッシュされている。
      • 友好属性それぞれで発動する強打武器や無効化防具、友好属性間の感応や合成により友好属性前提で力を発揮するカードが多数存在する。
    • もちろん今まで通り単色で構成するブックにも強みはあるし友好属性を狙い撃ちするようなカードもあるため、ブック構成における選択肢が増えていると言っていいだろう。
  • シナリオのボリュームが多く、評価も高い。
    • 今までの主人公とは違い本作では主人公に明確なキャラクター付けが施されており(対人戦では任意のアバターを使用可能)、よりストーリーに深みが増した。
      • 物語冒頭は「悪の統治者伯爵の支配する街からの脱出を目指す組織フリーバッツの一員として伯爵の放つセプターたちと戦う」という勧善懲悪型のストーリーだが、シナリオが進むと衝撃の事実が明らかになる。シリーズおなじみの喋る杖ゴリガンも今までにない意外な形式で主人公と遭遇することになる。
    • キャラクター数が多く、それぞれのブックも性格も個性的。むしろ仲間のはずのフリーバッツメンバーより伯爵側キャラの方が魅力的という意見も散見される。特に最初の敵キャラであるナイトホークは前作のライバーンのようなお調子者ポジションかと思いきや、自らの誇りを貫き通す「漢」らしい言動で人気が高い。
    • 本作では、クエストクリア方式を採用しており一つのクエストをクリアすると別のサブシナリオに派生することが多い。サブシナリオではシチュエーションが変化した形式での試合に挑戦でき、内容面においてもキャラクターの個性をより深く掘り下げているため好評。
  • AIがやや強化。
    • 相変わらず謎な挙動は少なくないが、ブックパワーも改善されており前作までの感覚だと手ごわく感じるだろう。過去作で鉄板だったケルピーやオールドウィロウでハメる戦法も、それ自体が弱体化したのもあり頼り過ぎると手痛い反撃を貰いがち。
    • なお、アドバイスカーソルは前作から引き続き実装されているが、応援効果を考慮してくれなくなったなどこのAIに関してはむしろ前作よりおバカになっている模様。まぁこれについては本質的にはむしろあまり頼り過ぎてはいけないものなので多少馬鹿なぐらいでちょうどいいのかもしれない。
      • おバカになったとは言っても、序盤の段階ならば相変わらずそこそこ的確な手は教えてくれる。アドバイスカーソルに逆らえるようになったら初心者卒業、といったところだろうか。
  • 新システム「ブリードカード」。
    • 「自分で成長させる新しいカード」の売り文句通り、最初はゴブリン並に貧弱だがブックに入れて試合に参加させるごとに徐々に成長していき、後述のショップで購入した各種パーツを組み込んで様々な能力を獲得させることができる。最終的に、他のどんなクリーチャーでもない自分だけのオリジナルクリーチャーを作り上げることが可能。
      • この手の「自分オリジナルのカードを作れる」カードゲームは希少な部類になるだろう。外見はドラゴン系しかないのがネックだが名前は自由に付けられる。
      • これを利用して過去に登場したクリーチャーのうち今作に登場しないクリーチャーの能力を再現することもできる(完全にはできないものもあるが)。
      • シナリオでもキーアイテムの一つとして扱われているが実際にブックに入れて使うかどうかは任意であるため、「成長させていなかったらシナリオ上で使用を強制されて詰んだ」というような事態は起こらない。付与させることができない能力も少なくないし、最大でもブックに2枚しか入れられないので他のクリーチャーを食うほど凶悪な存在にはなっていない。
  • その他システムの改善点。
    • カード入手手段が前作までの「試合終了時ランダムに入手」から「試合終了時に順位に応じてもらえるGPを消費してショップでカードパックを購入」になった。
      • 「火属性クリーチャーのみ」「スペルカードのみ」「高価だがレア度SとRのカードのみ」などパックの種類も多く狙いのカードを引きやすくなった。
      • 余ったカードをGPに変えて他のカード購入資金に変えることも容易。
    • 全てのセプターの手札を下画面の名前タッチでいつでも確認可能になった。
      • 今までの作品でも「相手セプターの手札は確認可能」というのがカルドセプトの特徴の一つだったが、旧作では相手の手番に頑張って暗記しないといけなかったためいつでもじっくり確認できるようになったのは戦略の構築において非常にメリットが大きい。
      • ただしカードの効果までは再確認できない。そのため効果自体は覚えておかないといけないほか、ブリードカードはプレイヤーがある程度自由に効果を決められるためそこだけは覚えておかなければならない。
      • 各種カード効果を記憶し、そして相手のカード名を覚えなければ対戦が成り立たないのが初心者に極めて優しくない仕様だったのだが、とりあえずいつでもカード名は確認できるようになったおかげで手番制限時間の存在しない一人用モードやフレンド対戦のハードルは大幅に下がったのが嬉しい。
    • 試合の「打ち切り」が可能になった。
      • 試合開始から最低5ラウンド以上経過していることが条件だが、参加者の過半数(一人プレイでは自分だけ)が打ち切りに賛成することで、その試合を引き分けで終了させることができる。試合の経過ラウンドに応じてわずかだがGPも得られるので完全に無駄になることもなく、急な用事で試合を急きょ中断したい時などに便利。
  • シリーズで初めて課金要素が追加されたが、有料なのは「アバター」「ダイスの見た目」「ブックカバー」「追加シナリオ」のみで、カードやマップの有料解放がない点は好評。
    • 有料要素は見た目を変えるものばかりでゲーム内容には関係しない。「欲しければ課金すればいいし、いらないなら無視すればいい」程度に収まっている。
    • 追加シナリオだけは少しまとまった中身があるものの、特典として手に入るカードは(レアではあるが)通常パックから入手可能なカードである。特にバランスを崩す要素にはなっていない。

賛否両論点

  • シナリオ主人公に関する仕様。
    • 主人公に明確なキャラクター付けが施されたことでストーリーに深みが増した一方、やはり「自分の分身(アバター)でカルドセプトの世界観を楽しみたい」とする一部ユーザーからは残念がる声もあった。
      • 前述の通り、対人戦では自由にアバターを選ぶ事が可能。割り切れるのであれば然程大きな問題にはならない。
    • 前作から引き続きシナリオの主人公と対人戦のアバターで名前を共有する仕様となっているが、女性型のアバターを使うつもりで女性っぽい名前をつけるとストーリー中の違和感が凄まじい事になる。更に、一度ネットに接続すると変更不可能。
      • この名前共有についてはストーリー上の理由もちゃんと存在してはいるが、「どうにかならなかったのか」という声はキャラ付けに肯定的なユーザーの間からも聞かれる。
  • クエストの長さと制約の厳しさ。
    • 今作は各章とその中のメイン、サブクエストと言う様にシナリオ数が膨大化しており、(メインだけ進めても)最終開放までの道程がかなり長い。
      • メインクエストをクリアしなければカードもブリード用パーツも解放されないので、シナリオやキャラクターの濃厚さを求めるプレイヤーならともかく「とにかくカードを集めてネット対戦でガチバトルがしたい」と言う様なプレイヤーには苦行としかならない。
  • 高速環境に伴うゲーム終了の早期化
    • パッケージ裏でも謳われている本作のウリ。各種挙動が前作までより高速化され、一試合にかかる時間が減った。
    • ラウンドゲインの追加やダイスが全てのマップで最大12になったこともあり、試合展開そのものも非常に早くなった。ブックが一周する前に試合が終わることが多くなっている。
    • 通常の目標魔力の場合、20~30ラウンドで勝負が決してしまう事も多い。ドロースペルを用いてもブックの半分近くのカードを引けない計算になるので、従来より「引き運」の影響が色濃く出てしまう。

問題点

  • スピーディーな試合展開の代償として、少々忙しくなった面がある。
    • ネット対戦での持ち時間が前作の60秒から40秒に削られた。手際よく操作すればそこまで足りない時間ではないが、長考はしづらくなった。
    • 手札整理の際、捨てるカードの確認が入らなくなった。ワンボタンで捨てられるためテンポは良くなった反面、うっかり操作ミスの代償が大きくなっている。
  • やはり避けられないこととはいえ、対戦で人気の高い強カードは本作でも存在する。
    • 全体的にゲーム全体を支配するような凶悪なカードよりは「小回りの利く」カードの人気が高い少々異色なバランスである。
      • マッドハーレクイン(風属性)……前作までのマッドクラウンの調整版のような存在。魔力だけで召喚できるにもかかわらず、不屈と「戦闘地と隣接している領地に自クリーチャーがいる場合ST&HP+20×隣接自クリーチャー数」という強力な応援を持つ。本体性能は控えめだが、採用率は高い。
      • バードメイデン(火属性)……やはりサイズは小さいが不屈とスピリットウォーク*9付与秘術を持つ。不屈と秘術の組み合わせが強力で、土地確保から侵略の下準備まで幅広く活用できる。
      • リビンググローブ(無属性)……本来なら「リビングアイテム」という「アイテムとしても使用できる特殊なクリーチャー」なのだが、コイツに限ってはアイテムとして使うよりクリーチャーとして使った方が強いという意見多数。「戦闘中ST&HP=自分と異なる属性のクリーチャーの数×5」という凶悪な能力を持っており、試合終盤は容易に能力が100を越える危険クリーチャー。
    • 一応抑制手段も少なくない。特にリビンググローブはサーガより襲来したアーマードラゴン*10が完全な天敵。しかしその一方で「アーマードラゴンが強くて無属性のHP30以下クリーチャー(シリーズ伝統のデコイなど)が使いづらい」という見方もある。
    • スペルとしてはマジカルリープという「1~4マスの任意の範囲で自由に移動できる(橋の向こうは不可)」スペルが使い勝手が良く大変便利。前作のマジックブーストのような壊れ性能ではないが、高額拠点回避から確実に落とせる敵拠点の侵略、周回ボーナス獲得直後にゲートを通過し直してショートカット、分岐スイッチを飛び越せるなど役立つシチュエーションが多い。飛んだ後は自由に動ける方向を選べるのも利便性を増しており、エスケープなどの他の足スペルを食いがちである(差別化可能な要素は少なくないが)。
    • これらのバランスはスペルの強さと防御手段の少なさにも原因がある。
      • 凶悪なカードはコストが高いものが多いが、コスト100以上のカードを全プレイヤーの手札から消し去るレイオブロウの存在により狙い撃ちされてしまう。*11
      • それを掻い潜って配置した凶悪クリーチャーも強制的に体力が高いだけの非力な防御型クリーチャーに変えられるターンウォールや、戦闘時に無防備になるバインドミストで容易く無力化されてしまう。
      • 配置後にそれらを防げる防魔能力もあるが、所持クリーチャーはブリードカード以外はそこまで強力でなく、防魔能力を付与するマジックシェルターはデメリットも同時に付与され、秘術で付与できるクリーチャーも本体が非常に弱い。
      などバランス取りがしっかりなされているためである。逆に言えば耐久に特化した防魔ブリードカードは作成が可能となっている。一度配置されると止める手段が限られ、戦闘でも勝利しにくいため、人気カードの一つでもある。
  • 難易度が高い。
    • チュートリアル終了後の初戦の相手であるユマが旧作の初戦セプターと比べると強い。守りの固い水地クリーチャーをメインにホープやマナで手札と魔力をしっかり補充してくるなど、序盤の相手にしては非常に堅実な戦略を打って来る。オマケにこちらはまだブック編集不可で初期ブックのまま戦う必要がある*12
      • 侵略力は非常に低い*13ため、こちらもガッチリ守りを固めれば勝つのは難しくない。とはいえ、特に初心者にはかなり優しくない相手であり、この次に戦うことになるゲンよりも明らかに強いという意見が多い。
      • 今までの初戦セプターは、四属性をメインにしておりどれを主体にするのかよくわからない適当な戦略であることが多かったが、ユマはそういった遊びが少ない、ということである。キッチリ相手の戦略の穴を突く戦い方が求められるが、それをブック編集すら許されていない段階で初心者に求めるのは少々酷というものだろう。
      • なお、上記のパターンのセプターはチュートリアルでの対戦という仕様上GPの入手は不可能である*14
    • それ以降もナイトホーク初戦からかなりガチガチに組んだ厄介なブックが頻繁に登場してくる。相手は基本的に自分が今の時点で手に入らないカードは使わないが、今作では今までにあったストーリー序盤でしか使わないようなパワーが低いカードがほとんど存在しないため相手のブックが完成度が過去作に比べると非常に高くなっている。
    • ストーリー内で頻繁に同盟戦が出てくるがカードパワー面だけでなく敵の二人のブックの相性が良いということもありさらに苦戦しやすい。特にストーリー中盤に出てくるモリー・メメンコンビは属性が一致していることにより連鎖が非常に伸びやすく、呪いや感応能力も使いこなしおまけにカードパワーもこの時点では非常に高いためここで詰まったというプレイヤーの報告も多数あった。
    • 極めつけに今までのシリーズでは例がなかった*15同盟無しの4人戦も存在する。
    • GPの入手量が渋め。値段の安いパックしかない頃ならさほど問題ではないが、中盤辺りから解放され始めるパックに手を出し始めると全然足らない。
      • 特にリッチパックは並のパックの2~3倍のGPを消費すると言う事もあり*16、攻略WikiではGPを効率よく稼ぐための専用ブックまで投稿される有様。
    • 総じて言うと、シリーズ経験者でもやや手こずる難易度に仕上がっており、初心者にとってはなおさら厳しいものがある。もちろん「極悪」というほど難しくはないが、AI戦だからといって気は抜けないだろう。
      • 上記の評価点にある様に、今作はバランス調整がこれまでより徹底されたのだが、これによってカードラインナップから「無駄」や「遊び」が削ぎ落とされているという点が仇となり、結果的に敵セプターの強化に繋がってしまっている。
      • 幸い、ストーリー中盤からはこちらも強いカードが多々手に入るようになる。人にもよるが、4人戦を乗り越えた辺りからは楽に進められるだろう。
  • ブリードカードのリセット仕様。
    • ブリードカードは一戦ごとに「AGE」が上昇し、「AGE」に応じて能力を成長させたり付与させたりするのに使用する「SP」を得られる、という仕様なのだが、一度でも能力を付けてしまうとその能力を削除してもSPが返ってこない。そのため能力の付け直しには「AGEを含めた育成の完全リセット」が必要になる。
      • AGEを最大まで上げるには10戦する必要がある。最初から計算して能力を付けて行かないと、かえって損をしてしまい結構面倒くさい。
  • カードプールそのものは3DS版より微減している。
    • 属性ごとの特色を残すためか、クリーチャー総数も変動していない。新クリーチャーが多く採用されたため、涙を呑んでリストラされたクリーチャーが少なくない。
      • これまでは皆勤賞だったクリーチャーの一部もリストラの憂き目に遭っている。
      • ただし、これまでには明らかに遊び、無駄の多いカードも存在していた。より対戦に特化したラインナップであると評価できないこともない。
      • 一方で残留クリーチャーの選別基準やコストの見直しに関しては各属性で必ずしも公平とは言えず、疑問点も多い。
      • カードの種類が多いと今度は各カードの効果を把握するのが大変になって*17敷居が上昇してしまう点からもこの枚数位が妥当なのかもしれないが。
  • 相変わらず同盟戦ではAIはあまり頼りにならない。
    • プレイヤーが癖のあるカードをブックに投入している或いは偏った戦法を用いる場合、AIがそのカードを使いこなせなかったり一々修正するような戦い方をして足を引っ張るという事態に陥るケースも多い。この場合は諦めてAIが使い方を理解できる程度にシンプルな構成のブックや戦法にするという必要性がある。
    • またブリードカードはその複雑な仕様を把握しきれていないのか、謎な対応を取りがち。AIとの同盟戦ではブックに入れない方が無難である。
    • またダウン仕様のため、クリーチャーのレベル上げや交換を勝手に行うので前作よりも戦略の破綻が起こりやすくなっている。
  • 他セプターの手札を確認できるようになったのはいいが、閲覧できる情報はカードの分類と名前のみ。
    • 詳細な効果は結局暗記しておく必要がある。また、効果までは覚えていてもレア度は把握していない、という人も少なくなくグレムリンアイの破壊対象になるかどうかで混乱を来すこともある。それでも、名前だけでもいつでも確認できるだけ旧作よりも良心的なのだが……。
      • ブリードカードに至っては、実際に召喚されるまでは完全に正体不明と言い切ってしまってもいいだろう。
  • 各コンプリート時の演出やご褒美がショボい。
    • 前作までは各属性のクリーチャーをコンプリートした時や全カードをコンプリートした時に豪華なムービーとメッセージが流れ、ご褒美としてそれぞれの属性を司る神*18のカードが手に入ったのだが、今作では各属性のクリーチャーをコンプリートした時はそれを知らせるメッセージだけでご褒美も何もない。
    • 一応全カードをコンプリートした時には簡素なムービーが出るが前作までと比べるとあまりにもしょぼく、ご褒美も創造神(主神)の力を持った特別なカード*19ではなくブリードカードである。
      • 設定上四属性の神はすでに消失しており、創造神(主神)に至っては普通にCPUキャラとして登場するため仕方ないのかもしれない。
      • ただ、四属性の神がもともと存在しない設定のサーガでも四属性の神のカードは手に入ったのだから、こちらくらいは何とかならなかったのであろうか。
  • カードパックはレアリティや属性、種類の表記しか無いために無駄買いを誘発しやすい。例を挙げると…
    • 「レアリティN(ノーマル)のカードのみ入っている」と言う触れ込みのエコノミーパック(内訳 N:5)では実際はトライアルブロック(コウモリのマーク)のカードしか出てこない。トライアルブロック以降(「街の漂流者」、「闇に潜む者」)のNカードはスタンダードパックを購入しないと入手出来ない。
    • スタンダードパック(N:6 S(ストレンジ):3 R(レア):1)では「トライアル」、「街の漂流者」、「闇に潜む者」の(かつ開放済みの)ブロックのカードしか入手出来ない。
    • 終盤で解放される「救世の神都」及び「眠れる神々」のブロックには専用のカードパック(内訳 N:4 S:4 R:2)があるが、そのブロックにはレアリティSとRのカードしか存在していない。つまり、専用カードパックに4枚入っているNカードはそれ以前のブロック(「トライアル」、「街の漂流者」、「闇に潜む者」)で手に入れられるカードで確定、更にレアリティS・Rのカードも専用ブロック以外のSやRを引き当ててしまうケースが報告されている。
      • 表記上は「対応ブロックも含む」となっているので、一応虚偽記載という訳ではないのだが、スタンダードパックの倍のGPを使って購入するのに半数近くがダブり確定&残りの半数も旧パックとのダブリの可能性があると言う事実に今一つ腑に落ちないユーザーは多い様子。
    • そして、どのパックもブロックごとのコンプリートを知らせてくれるアナウンスは無いので無駄買いを起こしやすいし、クエストを進める事で入手カードが解放される仕様上、序盤では入手カード種類の少なさでダブりが誘発され易く*20、終盤では入手カードの増加で目的のカードが出難くなるというジレンマに悩まされる。

総評

一言で言うと、意図して作られた世紀末ゲー
酷いレベルでバランスが取れているを丁寧に調整したらこうなりました、といった感じだろうか。
旧作におけるシステムを根本的な部分で作り替えた結果、ゲームバランスは大幅に変化しているが全体のバランス自体は非常によく整っており、自分好みの様々な戦略を組むことができる。
最後の最後まで逆転のチャンスが残された非常に熱いゲームが展開されるようになっており、対人戦の完成度はいままで以上となっている。

…ただし、これまで世に放たれてきた多くの世紀末ゲーがそうであったように、本作においても楽しさを実感できるようになるまでの道程は初心者には(或いは、経験者にとっても)厳しいものがあるだろう。
幸いにして前作から続投したアドバイスカーソルや、攻略Wikiに寄せられる上級者のアドバイスなど、ゲーム内外のサポートは充実している。興味を持ったならば、是非とも腰を据えて取り組んでみてほしい。
アドバイスカーソルの指示に逆らえるようになった頃には、きっと新たなカルドセプトの世界が開けている筈だ。

余談

  • カードゲームとしてはあまり類例のない戦闘中Aボタンを連打すると能力が上昇する(ただし一定値を超えると逆に激減する)というボードゲームなのに連打力を問われるクリーチャーが実装された。STが上がる火属性の「アングリーモブ」とHPが上がる水属性の「ビジランテ」が該当する。
    • 全体に「遊び」要素が削られた本作では珍しいほぼ完全なネタカードである。一応役に立つシチュエーションがないでもないが、一連打での上昇量がランダムというのがひっかかり安定したパラメータを出すのが非常に難しく対戦での人気は非常に低い。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 3DS
  • 2016年
  • TBL
  • カルドセプト

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月08日 21:01

*1 戦闘地と自分の土地が隣接している場合、隣接1つにつきST+10

*2 たとえダイスを3個振って3つとも0だったとしても進めるのは12であり、1、0、0だった場合は1しか進めない

*3 使用クリーチャーより基本STが高いクリーチャーのみ完全無効化出来るラグドールに差し替え

*4 同効果防具のスフィアシールドに差し替え

*5 使用カードランキングアイテム部門で長らくトップの位置に君臨し続けた。…恐ろしい事に実はこれでも「以前のシリーズより弱体化されたカード」だったりする。

*6 巻物攻撃も反射出来る様になったが対戦相手がアイテムを使用すると効果を発揮しなくなるミラーホプロンに差し替え

*7 というよりはダイスが2つになったのに殆どのスペルが効果据え置きなのが原因

*8 周回数が上のセプターから周回数差×100Gの魔力(現金)を奪うスペル。

*9 好きな空き地に自由に移動できるようになる能力。

*10 無属性クリーチャーに30ダメージを与える秘術を持つ。本体性能も非常に高い。

*11 実際これまで紹介したカードはアーマードラゴン以外コスト100未満であることからも、このスペルの影響力がうかがえる

*12 似たようなセプターにセバスチャン(スペルが少なく配置力が高い、援護クリーチャー主体&アイテム豊富&無効化対策の巻物持ち)がいるが他のステージを先に攻略できたり、最初のマップで稼げるがこちらはそれも不可能である。

*13 とは言え援護クリーチャーもいる上にこちらの防衛力も高いとは言えないので侵略も(体感的にだが)結構高くなる。

*14 「ひとりで対戦」で戦う際は実戦用のブックを使うので楽に稼ぐこともできない。

*15 実はセプターズギルドのオマケシナリオで登場しているが本編に登場するのは今作が初

*16 カード集めの終盤になると入手できていないのはS,R辺りになるのでコンプリートのためには嫌でも買わなければならない。

*17 このゲーム自体が対戦相手のカード効果を確認できるルールではない事を認識して頂きたい。

*18 火のビステア、水のイクシア、風のテレイア、地のセレニア

*19 初代:オムニポーテント セカンド:ソルティス サーガ:ゼロム

*20 一応、「1パック内で排出ガードがダブった」というケースは今の所確認されていない。