The Witness
【ざ うぃっとねす】
ジャンル
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パズル
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対応機種
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Windows OS X(Steam) プレイステーション4 Xbox One
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発売・開発元
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Thekla
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発売日
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2016年1月26日 2016年12月15日(PS4/日本) 2018年3月28日(One/日本)
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定価
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$39.99 3,980円(PS4/日本) 4,320円(One/日本)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対称)
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判定
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良作
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ストーリー
目が覚めてみると、あなたはたった独りで謎に満ちた奇妙な島にいます。驚きと挑戦が待ちうける島に。
自分が誰なのか、どうしてここにいるのかも分からないまま、あなたは探検を始めます。謎解きの手がかりを見つけ、記憶を呼び起こし、無事に家に帰れることを願いながら。
(Steamの紹介ページより)
概要
高い評価を得たパズルアクション『Braid』の製作者による、一人称視点探索型のパズルゲーム。
内容は、人のいない孤島を探索しながら島中にちりばめられたパズルを解いていくというもの。
一応上記のような導入はあるものの、作中ではそれすら触れられず、ストーリーは薄い。
「線をつなぐ」というシンプルな基本ルールと、トゥーン調の色鮮やかなグラフィックが特徴的。
システム・特徴
パズルでの基本的な操作はいたって簡単。
島の様々な場所に「始点(丸型/〇)」「終点(半円型/D)」があり、これをポインターで一筆書きの要領で線をつなぐ(〇ニニニニDの形にする)。これだけである。
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プレイヤーがとれる行動は、移動以外にはこの「線をつなぐ」のみ。扉の開閉やエレベーターの起動なども機械に上や下を指すパズルが置かれ、これを操作することで行う。
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始点となりうる場所はやや大きめの円形となっている。これはパズルだけでなく…。
評価点
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高品質なパズルの数々
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基本ルールこそシンプルなものの、そのバリエーションは非常に豊富。その数は約30種類、計600以上。
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ただし、半数近くはクリアには必要のないパズルである。ちゃんとディスプレイが用意されている問題ですら、クリアに必要なかったりする。
このため、クリアが目的なのか、コンプリートが目標なのかで大きくプレイ時間が変わる。
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基本的にルールの説明自体が全くない。それどころか文字による説明が最初のチュートリアル以外皆無。先行する『タロスの原理』と比べてヒントの提示が少なく、ごくシンプルなパズルから徐々に難易度をあげる形でヒントとしている。
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本格的に島の探索が始まると、よく考えないとルールの分からないものや、周囲の環境がヒントになっているもの、存在自体が隠されているものなど、一筋縄ではいかないパズルが次々と登場する。
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丁寧なレベルデザイン
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レベルデザインもしっかり練りこまれている。一瞬で解けるような簡単なものからメモを取って考えこまなければならないような難しいものまで、丁寧に段階を踏んで難易度が上がっていく作りになっている。
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中には複雑なルールに見えるが非常に単純な解答のパズルがある。意図せず偶然に解答を見つけてしまい、なぜこの解答が正しいのかという形でルールを推測するような問題も存在する。
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想定正解率1%以下という難問もあり。
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舞台となる島の静かな雰囲気、色鮮やかな色彩
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1つの島の中に春夏秋冬の季節や、砂漠や雪山といった場所が同時に存在するという現実にはありえない光景であり、シュルレアリスム的な雰囲気が出ている。グラフィック自体も彩度が高く抽象化されたものであり、リアル系のグラフィックとはまた違った美しさがある。
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音響効果にも力を入れており、人の気配がない静かな世界を効果的に表現している。
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巧妙かつウィットに富んだ、パズル以外の隠された要素
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島の各所のオブジェや自然物の中には、特定の角度から見ると一つの絵画になるよう配置された騙し絵などイースターエッグが多々存在している。一見殺風景な無人島だがこれらのユーモアが孤独感を相殺し、風景やパズルを眺める楽しさに貢献している。
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島の至る所にICレコーダーらしき小さなオブジェクトが置かれている。これを調べると、アインシュタインといった著名な科学者、老子などの偉人から、ニファリという聞いたこともないような人物まで様々な人物の言葉が再生される。この内容が意味深・哲学的であり、広々とした島の中でパズルを探すプレイヤーの心理にどこか響くものとなっている。
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島の中央に広がる湖に置かれた各オブジェクトは、実は一部の隠し要素の解禁状態を反映させて変化する。
賛否両論点
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パズルとオープンワールドのかみ合わせについて
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本作はパズルゲーム+オープンワールドという変わったジャンル。そのためか、やや両者がかみ合っていない部分がある。
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入り組んだ地形の中にあるパズルの場所が分からず右往左往したり、まだ遭遇したことのないルールの問題の応用問題にいきなりぶち当たったりする。地図も一応存在するが、島の全体図とパズルの大まかな位置しか書かれておらず、しかも持ち歩けないのでスクショ等をする必要がある。
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エリアによっては特定の要素に対するチュートリアルとなるパズルが用意されているケースがあるため、そうなっているエリアを探して基本を把握しておく必要がある。
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例えば
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最初の大きな扉を抜けた先からは家のような建物・桜並木・町の廃墟のいずれかに行くことになるだろうが、町の廃墟は他の全エリアで登場するパズルが複合したエリアとなっているため、このエリアは(最終地点となる山を除けば)最後に挑戦することを推奨。
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「クリアのためにパズルを解くこと」を目的にすると、一手先に進むために5つ、時には20以上のパズルを解く必要があることにテンポが悪いと感じてしまい、各地にいくつか存在する移動する足場の動きの遅さがそれに拍車をかける。また、さほど広くないとはいえオープンワールドの島を歩き回るのが冗長になる。
一方、コンプリートを目標にすると、問題を隠すためのオープンワールドだったのだと気づく事となる。隠された問題を探して島じゅうをキョロキョロと目を血眼にして探索するハメになる。
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隠しENDについて
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表ENDクリアに必須ではない部分では重要になるのだが、なぜかを説明するとネタバレそのものになってしまうので…この要素なしだと全体の半分も遊んでいないことになるだろう。ゲーム内でもそれの存在を示すヒントもあり、達成の状況も知ることができるし、すべての要素をクリアしようと思った場合にはこちらのほうが数倍時間がかかるはずである。なにより一度気付いてしまうと何気なく通り過ぎていた場所に隠し要素が転がっているのを理解してしまい驚愕することに…
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表ENDまで遊んだけど気付かなかった人へ
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終盤のオブジェのうち“パズル板をキャンバスに見立てて風景画を描いている男性像”の視線の先を見ると… 最終盤まで“ソレ”に気づかなかった人でも気づくよう丁寧に視線誘導されており、製作陣のレベルデザイン力の高さが窺える。
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それでも気付かなかった人へ
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とりあえずスタート地点に戻り、最初の問題のあった扉から地下室へ出て、真っ直ぐ進んで壁に突き当たったところでスタート地点を振り返ってみよう。 そこに、最初の隠された問題がある。
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表ENDのそっけなさ。
普通のゲームでいうエンドロールに準ずる演出は隠しENDにしか存在せず、表ENDの演出はむしろバッドエンドに近い。
かと言って隠しENDは本当に隠されているためノーヒントでの到達は非常に難しく、大多数の人がゲームを投げるか攻略を見るかの選択に迫られるだろう。
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一応、迷い込んだ島から脱出するという目的はあるのだが、各地にある映像や音声も含めてもストーリーは薄く、それでモチベーションを保つこともできないので、好みに合わないと醒めやすい。逆に、ただパズルを解き続けることが好みに合ったプレイヤーはハマり込めるのだが。
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各地にあるオーディオログや映像はゲームとの関連が(一見)薄く、しかも難解な哲学・物理・宗教の話題が中心で、理解・興味を示すプレイヤーはかなり少数派であると思われる。
問題点
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一部のパズルの問題
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解答選択肢の少ない一部の問題では、答えを間違えると、ペナルティとして一つ前のパズルに戻されるものがある。おそらく総当りによるゴリ押し解答を防ぐための措置だろうが、中途半端なペナルティでありテンポの阻害にしかなっていない。
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終盤のパズルに、画面自体を見づらくしたり、操作をやりづらくしているものがいくつかある。思考力やひらめきとは関係ないところで難易度をあげているのはパズルとして問題といえる。
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詳細
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特に問題なのが、画面が高速で回転するパズルと、画面の色が高速で切り替わったり動いたりするパズル。神経が敏感な人なら気分を悪くしてしまう恐れがある。
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エンディング
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詳細
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いったん表エンディングを見た後、進行状況がすべてリセットされてしまう。
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実は「ゲームをロード」からセーブデータをロード可能であり、またエンディング直前にオートセーブが作成されるのだが、ゲーム内ではこの説明が一切ない。
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3D酔い
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人によっては強い3D酔いに苦しめられる。一人称視点のゲームに慣れているプレイヤーでも酔ったという報告が多数ある。
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FOV(視界)が狭いことが主な原因だったが、アップデートにより視界の広さを変更できるようになった。酔いが心配な人は設定を変えてプレイすることを推奨する。
総評
海外のレビューサイトなどで高評価を得た作品だが、けっして万人向けといえる内容ではない。
しかし、ハマる人にはゲームをしていない間にもパズルのことを考えてしまうほどの中毒性を持っている。好みの分かれるゲームといえよう。
全クリアにはひらめき、論理的思考力、観察力を総動員することが求められる。高品質で歯ごたえのあるパズルゲームをやりたいという人にはおすすめの作品。
余談
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本作は名作謎解きアドベンチャーとして知られる『MYST』にインスパイアされた作品であると開発者が語っている。
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人の気配がない孤島を探索するシチュエーションなどに共通点が見られる。
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One版におけるタイトル表記は日本のストアでは何故か「目となる者(The Witness)」となっている。
最終更新:2023年04月10日 16:23