ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン

【どらごんくえすと しょうねんやんがすとふしぎのだんじょん】

ジャンル ローグライクRPG
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 キャビア
発売日 2006年4月20日
定価 7,140円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:全年齢対象
廉価版 アルティメットヒッツ
2007年6月28日/2,940円
判定 なし
ポイント 不思議ダンジョン式DQモンスターズ
初心者向けの難易度
ドラゴンクエストシリーズ
不思議のダンジョンシリーズ


概要

『ドラゴンクエスト』シリーズの世界観やキャラクターを使ったダンジョン探索ローグライクRPG『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』シリーズの流れをくむ作品。
それまで主役を務めていた「トルネコ」に代わり、『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』(以下『VIII』)に登場した仲間キャラクター「ヤンガス」が主人公である。

ストーリーはヤンガスの少年時代を描いたものであり、壷の中に広がる異世界「ポッタルランド」が舞台。そこで、同じく『VIII』に登場する「ゲルダ」や、シリーズの前主人公であるトルネコと出会う。

『モンスターズ』(以下『DQM』)シリーズのような「配合」システムが採用されており、その手続き担当として『VIII』から「モリー」が登場している。
グラフィックは『VIII』に近い3D+トゥーンレンダリング。BGMも『VIII』におけるヤンガスのテーマ曲「そうだあの時は…」のアレンジ版などが使用されている。

また不思議のダンジョンといえば、何らかの形でチュンソフトが関わってきたが、今作は関わっていない。


特徴

  • 主人公のレベルは初期化制。冒険失敗やクリアでポッタルランドに戻ると、ヤンガスのレベルも1に戻される。
  • チュートリアルの「まどわしの森」を除くと、「カンダタ遺跡」の1つがメイン。
    ただし、特定のフロアには下に降りる階段以外に別のダンジョンへの入口があり、ダンジョンが分岐する構造になっている。
    • 一度入口を見つけたダンジョンは、2回目以降はポッタルランドから直接向かえる。
      • 地上へ戻らずに攻略していった場合、レベルやアイテムは続きのダンジョンに持ち越される。
  • 敵モンスターは主に『VIII』から参戦。トルネコシリーズでお馴染みのモンスターも、近い特性を持つモンスターが『VIII』にいる場合はバトンタッチしていることが多い。
    • 同系統の色違いモンスターはほぼ全種類登場。そのため、本作には「マクロベータ」「ディープバイター」といったマイナーどころがぽつぽつ顔見せしている。
  • 『DQVIII』の力をためることでダメージを上げる「テンション」システムが導入された。これを使えば強敵も一撃で倒せたりできるがおなかが減る。これによりHPをとるか満腹度をとるかといった選択ができる。
  • ダンジョンにいるモンスターは仲間にすることが可能。
    • モンスターごとに異なる所定の条件を満たした上で、「モリーの壷」というアイテムを使用すると捕獲できる。条件は基本的に「HPを減らす」ことだが、モンスターによってはこれに加えて「特定の状態異常にかける」「ワナにはめる」など2つあるものもいる。
    • 仲間モンスターも戦闘で経験値を得てレベルアップする。モンスターのレベルはダンジョンを出ても継続される。
    • 一度に同時に外に出せるモンスターは3体まで。壷が割れてしまったなど何らかの原因で4体目以降が外に出てしまうと、「大混乱状態」になってしまう。壷に戻せば治るが、大混乱状態のモンスターを放置して次の階層に降りると、そのモンスターははぐれてしまい死亡扱いになる。
    • モンスターは「おなか」ではなく「つかれ」というパラメーターがある。特技を使った時や長時間合体し続けていると溜まっていき、これが100%になると強制的に壷に戻ってしまい、70%以下になるまで壷から出せなくなる。(この時に空いている壷を持っていない場合も大混乱状態になってしまう)
    • 仲間モンスターは「信頼度」というパラメータをもち、これが低いうちは一部の作戦しか出せないためこちらの言うことを聞かない。仲間にしたばかりの時はむくれていて壷からも出てくれないが*1、アイテムをプレゼントする、レベルアップさせる、アイテムでHPを回復するなどして機嫌を取ると信頼度が上がって壷から出てくれるようになり、さらに仲が深まると命令できる作戦が増えていき、「ここでまってて」「合体しようぜ」などの命令に従ってくれるようになる。
      • 系統毎に好物とする種別のアイテムがあり、好物をプレゼントすると信頼度がよく上がる。小さなメダルは全てのモンスターが好物とする。
        さらに、各モンスターに個別に大好物のアイテムが設定されており、大好物をプレゼントすると信頼度が大幅に上がる。
      • 信頼度が高くなると能力値に若干プラス補正が付く。
      • また、この信頼度によって仲間モンスターの台詞が変わる。雌モンスターの中には、ヤンガスに気のある素振りを見せる者も。信頼度が90以上になると冒険や配合のヒントを教えてくれるようになる他、後述する隠し階段を見つけてくれるようになる。
    • モンスターブックという図鑑があり、仲間にしたモンスターが記録されていく。
      • 仲間にした事のないモンスターでも、「ものしりの杖」を振ると捕獲方法などの一部情報が記録される。配合で作れる一部のボスは、倒すだけで全情報が記載される。
  • 配合システム
    • 信頼度が一定以上の仲間モンスター2匹を掛け合わせて強力なモンスターを生み出すシステム。子どもは親の持つ特殊能力を継承するなどの優遇措置がある他、これでしか仲間にする手段のないレアモンスターもいる。
    • モンスターズシリーズとは異なり、信頼度さえ足りていればレベル1でも配合できる。必要な信頼度は種族毎に異なる。
    • 生まれてくるモンスターの性別を自由に変える「祝福」を無料で行うことが出来る(モンスターズシリーズでは有料だった)。更に、育成途中でモンスターの性別を変えられるアイテムもある。
    • 配合所は一定以上ゲームを進めるとポッタルランドに常設されるほか、後述する秘密の通路に出現することもある。
    • ゲームを進めると、配合の際に贈り物を行える。配合するモンスター2匹の他にアイテムを使うことで、子どもの能力を底上げしたり、突然変異で全く異なるモンスターが生まれたりといった変化が起こる。
  • 「合体しようぜ」
    • 仲間モンスターに出せる作戦の1種。ヤンガスとモンスターが合体することで、モンスターの特技・特性を任意で活用できるようになる。
    • 合体形態は4種類。仲間モンスターの種別によって異なる。
      • 『乗せる系』
        ヤンガスの頭にモンスターを乗せる合体。主にスライムなどの小型モンスターと合体をする。ヤンガスの攻撃の後に乗せたモンスターが攻撃するため、実質2回攻撃が可能となる。つかれも溜まりにくく、序盤から終盤まで使いやすい。
      • 『乗る系』
        主にドラゴンなどの4足歩行のモンスターがこれ。トゲトゲ床やツルツル床の影響を受けずに移動できるほか、俊足(2倍速1回攻撃)・水中移動といったモンスターの移動能力も適応できる合体。後のライドシステムとも言える。
      • 『掴まる系』
        ドラキーなど鳥系のモンスター全てや、飛行能力のあるモンスターと合体する。常に飛行しているためワナを踏まずに進んだり、壁の無いフロアでショートカットが可能になる。つかれは溜まりやすい。
      • 『融合系』
        人型や上記の合体が難しいようなモンスターがこれ。神速(2倍速2回攻撃)や壁抜けといった移動能力、連続攻撃や魔法反射などの身体特性を共有でき、モンスターによっては合体するだけでほぼ無敵になるものもいる。一方で呪文などの能動的な特技は一切使えない、壁抜けや透明などの強力な能力を持つモンスターは疲れが物凄く溜まりやすいといったデメリットもある。また、融合中はモンスターの系統に応じてヤンガスの顔が変わる。
    • モンスターと合体するには、そのモンスターの系統に対応した『心』というアイテムが必要。心はストーリーを進めると入手することが出来る。
  • 秘密の通路
    • ダンジョン内に、普通の階段とは別に隠し階段が現れることがある。最初から見えておらず罠チェックと同じ要領で探す必要のあるものや、周囲に障害物や罠が張り巡らされたものがあり、入るには仲間モンスターの能力やアイテムを駆使することが重要。
    • 中はミニダンジョン(全3階層)、配合所、トルネコの店*2、ゲルダのクイズ(連続正解数に応じたアイテムがもらえる)のいずれか。ミニダンジョンでは通常のダンジョンよりレアアイテムが出やすい他、ここでしか捕獲できないモンスターもいる。
  • ストーリー進行の上のイベントシーンにはアニメムービーが挿入される。
    • ナレーション担当は八奈見乗児(『ヤッターマン』のボヤッキーや『ドラゴンボール』のナレーションで有名。もっと言えばCDシアター版DQ4のブライ役)。

難易度について

難易度は、ローグライクゲームとしては易しめである。

  • トルネコシリーズで登場した凶悪モンスターも、全体的に特殊能力がマイルド調整されている。
  • 満腹度の減少は20歩で1%。トルネコシリーズは10歩で1%だった。
    • テンションを上げると満腹度が減る点や、仲間モンスターにもパンを与える必要性が出てくる点(後述)を考慮した調整の可能性がある。
  • モンスターを十分に強化していた場合、アイテムは余り気味になるほど。
  • 装飾品は従来の「指輪」を2つ装備できる他に「お守り」という指輪以上に強力な効果のアイテムがあり、全て同時に装備できる。
    • ちなみに『シレン』シリーズにも腕輪を両手装備できるものはあるが、そちらは装備している装飾品が壊れるシステムも併せ持っていて、プレイヤーに有利である反面バランスは厳しく調整されている。
    • これ以外にも、同系の他作品では一長一短に設定されている要素から短所が緩和されている例(2マス先まで攻撃できる武器を盾と同時に装備できるなど)は多い。
  • ダンジョン内の店での泥棒も非常に簡単になっている。「大部屋の巻物」と「そこでまってて」を指示できる仲間モンスター1体だけを使って100%確実に且つ安全に泥棒が出来るテクニックがある上、そのテクニックが普通にゲーム内で推奨されている。
    • このためか、本作はシリーズ従来作と比較するとダンジョン内の店の品揃えがあまり良くなく、 呪われたアイテムが陳列されている 場合もある。
    • なお、本作の持ち込み不可ダンジョンはゴールドも持ち込めない仕様になっており、泥棒をしないと商品が手に入らない局面が多くなった。盗賊のヤンガスが主人公となったため、それに合わせて泥棒を前面に押し出した作りにしたと思われる。
  • このように不思議のダンジョンとしては低めの難易度に調整されている一方、死亡した際には後述のようにゲルダにボロクソに罵られるため、一度も死亡することなくクリア出来ることを想定して難易度を調整した可能性も考えられる。
  • 救済措置も充実している。
    • 攻略失敗の際は持ち物が半分消失、逆に言えば半分残る。また武器防具は「彫刻屋」に銘を彫ってもらうことで消失しないように出来、死亡ペナルティは低く抑えられている。
    • 一度ポッタルランドに連れ帰って牧舎名簿に登録した仲間モンスターなら、ダンジョンで倒されても帰ってくる(ただし『トルネコ3』同様、攻略中に獲得した経験値はリセットされる)。
  • 例外として、罠だけは全体的に強化されている。
    • 装備品含め多数のアイテムを落としてしまう「ビックリのワナ」(従来の「転び石」より凶悪な上に防ぐアイテムも存在しない)や、『トルネコ3』での封印のワナと弱化のワナを合わせたような「ゼロ化のワナ*3」といった凶悪な罠が多数登場している。
      • 特に「ビックリのワナ」は部屋内のアイテムを全てモンスターに変える「モンスター化のワナ」とのコンボが凶悪。この「モンスター化のワナ」自体も強化されており、『トルネコ3』では1回限りだったのが、本作では壊れる確率が他の罠と同等になった。
    • クリア後ダンジョンには「隠し階段の周囲8マスに大型地雷が敷き詰められている」という初見殺しまで存在する。踏み込む角度によっては仲間モンスターもろとも消し飛ぶことになる。このワナに限って「ワナ抜けのお守り」というアイテムが無効になるという、『トルネコ3』を思わせる意地悪な仕様まで存在する。
      • 上位版の16マスに渡って大型地雷が敷き詰められている光景は“地雷原”という名称でプレイヤーに恐れられている。
    • 罠の数自体もやたら多く、狭い部屋では何らかの罠を踏まないと通り抜けられないような構成になっていることもしばしば。
    • 罠が壊れる仕様は以前にもあったが、「見えているワナを意図的に踏んだ際に作動せずに壊れる」という仕様が加わったことで、「装備外しのワナで呪いの装備を外す」「地雷で敵モンスターを巻き添えにして倒す」といった罠を逆利用するテクニックが使いにくくなっている。
    • 罠を壊す手段自体は豊富にあるが、「石」は地雷などを壊す際に作動させてしまう、「おおかなづち」は何度か使用すると壊れる、特技の「ワナこわし」は習得するモンスターが1体しかいない上に生み出すにはクリア後ダンジョンに低確率でしか落ちていないレアアイテムが必要…と、いずれも一長一短に調整されている。
    • 掴まる系のモンスターと合体しながら進むと罠を回避することが出来るため、それを利用することを前提とした調整の可能性もある。しかし、掴まる系のモンスターは非常につかれが溜まりやすく、長時間合体したまま進むことは出来ない。

評価点

  • 不思議のダンジョン入門としてはかなり良作。チュートリアルは丁寧すぎるほどといってよく、大先輩であるトルネコが最初のダンジョンで手取り足取り教えてくれるうえ、ダンジョン爺さんという謎の老人が始めて入るダンジョンの情報を教えてくれる。他の不思議のダンジョンシリーズより救済措置が多く仲間モンスターも連れていけるため、死亡してもプレイ意欲がそがれにくい。死亡したときのムービーもコミカルなので落ち込みにくい。(説教はともかく…)
  • 『DQM』シリーズに近いシステムの採用により、モンスター収集要素・育成要素の強いローグライクゲームとして楽しめる。DQMでおなじみの配合もできるうえ、大魔王などももちろん居る。
  • 『トルネコの大冒険』シリーズ同様、ドラゴンクエストのスピンオフ作品であるという強みを持つ。DQ8の世界と全く同じ世界であり、DQ8で出てきたアイテムやモンスターもたっぷり。ヤンガス、ゲルダ、モリーの若いころを見られるのも面白い。
  • グラフィック・アニメムービーの質は良好。登場キャラクターにも愛着を抱きやすく、ほんわかと温かみのあるシナリオやBGMの雰囲気ともよく合っている。
  • トルネコ3』などの単純な確率依存とは異なる、条件さえ揃えれば運に頼らず確実に捕獲できる能動的なモンスター仲間システムは好意的に見られている。
  • 『VIII』ではあまり出番が多くなかったゲルダの人物像がかなり掘り下げられた。
    • 前述のゲルダのクイズは彼女の好きな物や考えていることなどを当てていくクイズであり、意外な一面が分かることもある。
    • 2015年にDQ8が3DSでリメイクされ、ゲルダとモリーが仲間に出来るようになったが、今作の影響を無視することは出来ないだろう。
  • 町の中での移動のテンポが良い。どこでもルーラをMP消費無しで使用でき、店などの各施設に瞬時に移動出来る。(DQ8では天井があると頭をぶつけてしまうが今作ではその心配はない。ポッタルランドだからなのか?)
  • 仲間にしたモンスターと会話が出来る。それぞれオスとメスで口調が違い、信頼度によって会話内容が変わる。つまり一匹につき六種類ものセリフがある。200種類ほどいるのでテキストだけでもかなりの量である。好きなモンスターを仲間にしてどんなふうに喋るか、なんて楽しみ方もある。

問題点

  • 正直ストーリーはいつもどおりあってないようなもの。
    • 大筋は「謎のツボに吸い込まれてしまったので脱出するためにダンジョンを攻略する。」というもの。これが『シレン』シリーズなどゲーム性を重視するシリーズだったら特に問題はなかったが、今作は演出面にかなり力が入っていて、なおかつストーリー自体もウリとして宣伝。にもかかわらずいつものノリなのはいただけない。
    • 後述するフラグ管理の手法のせいではあるが、各種モンスターの心は「必要になるダンジョンに入る直前に唐突に町の人から貰える」という展開が殆どであり、ご都合シナリオに感じられてしまう。
      + 最後に入手するモンスターの心について。ネタバレ注意
      • ラストダンジョンに入るのに必要なモンスターの心は、壷の外の世界にいるはずのヤンガスの父親から激励の手紙と共に贈られてくる。熱い展開と取るか、ご都合主義と取るかで賛否が分かれる展開となっている。
  • 仲間モンスターのAIにかなりの難がある。
    • 特技を乱用するなどの勝手な行動が目立つ。仲間モンスターはとにかく特技を使いたがる。信頼度や作戦を活用させるためとも受け取れるが、その作戦を駆使しても、いまいちかゆい所に手が届かない。
      • 炎無効の敵に炎を吐き続ける、回復は「いのちだいじに」以外の作戦でもヤンガスのHPが1減っただけでベホマを使うほど過剰、重ね掛け無効の補助呪文を重ね掛けする、特定の状態異常を治す呪文(キアリクなど)を覚えると誰も該当の状態異常になっていなくてもその呪文を連発する等、とにかく無駄な行動が多い。
      • 炎で分裂する敵にも炎属性の特技を使うのを逆手に取った自動レベル上げ技も考案されているが、敵の耐性を一切考慮しないのは総合的に考えればデメリットの方が多いであろう。
      • 部屋の入口で「大防御」を使って動かなくなる(ヤンガスもそこを通れなくなる)といった、単純にプレイの邪魔になる行動が含まれているのも厄介。
    • 上記の通り特技を使うと「つかれ」が溜まるため、無駄撃ちをされるのは困りもの。仲間モンスターにパンを投げ与えると疲れが回復するが、巨大なパン等の全回復系以外は効果量が小さい。
      • 強力な特技程疲労も大きいので、最強クラスの威力の呪文・特技が軒並み地雷と化してしまっており、それらの特技を多く習得する魔王系などのモンスターは「生み出す労力に見合わないガッカリ性能」と評されやすい。
    • 作戦を「とくぎつかうな」にすれば特技を使わせないようにできる。しかし、この作戦にすると何故かモンスターが移動の必要性がないターンでも必ず1歩歩くようになるため、早送りのテンポがかなり悪化し、HP回復のときなどに時間がかかる。
  • クリア前の配合の自由度が低く、クリア後でないと入手出来ないモンスターが非常に多い。
    • 本編中はフラグで通行止めしている箇所が殆ど無く、モンスターの能力によって行ける範囲が制限されている。しかし、そのシステムとの兼ね合いのためにストーリー進行度によって仲間に出来るモンスターの種類が露骨に制限されている。
      • 序盤からレアモンスターを連れ回すような遊び方がしたい人にとっては、「ストーリーに縛られている」と感じられてしまう。
      • 系統×系統の配合が「○○系×△△系or□□系or××系」といった具合に簡略化されているのも上記の制限のきつさを感じさせる要因となっている。
    • モンスターズシリーズと違って掴まえたモンスターの初期レベルが一律1に設定されているため、モンスター毎のレベル1時のステータスにかなりの差がある。このため、行動範囲を広げる能力を持つモンスター以外にも「初期ステータスが非常に高く、クリア前ダンジョンの敵相手なら無双出来てしまうモンスター」もクリア後でないと入手できないようになっている。
    • 行ける範囲を広げる訳でも強過ぎる訳でもないのにクリア後でないと入手できないようになっているモンスターも少なくない。配合でしか作れないのに野生の捕獲条件が設定されているモンスターもいるため、設定ミスが含まれている可能性がある。
    • この関係で、作りたいモンスターよりもレア度の高い親を要求される配合の組み合わせが非常に多い。基本的に配合でしか作れないモンスター以外はダンジョンで掴まえて来た方が楽な場合が多く、配合システムの良さを活かし切れていない。
  • レアモンスターを生み出すにはクリア後ダンジョンに挑戦することになるが、アイテムや仲間モンスターの持ち込みに制限のあることが多く、配合重視のプレイにおいて不自由。
    • また、同じ理由により鍛えたモンスターなどを活躍させる場も少なく、「持ち込み可の高難度ダンジョンがもっとほしい」という意見はよく見られる。
    • しかしある程度は持ち込み制限を設けないと、ダンジョン自体の難易度に歯応えがなくなるという別の問題が出てくる。後半になるにつれ、ローグライクゲームと配合・育成システムとの間に齟齬が出る格好になった。
    • 前述のようにクリア後でないと入手できないモンスターが非常に多くなってしまっているのも、この不自由さを余計に感じやすい一因となっている。
    • 没データの中にはステータスが桁違いに強化されたボスモンスターが存在するため、鍛えた仲間を試すための更なるダンジョンも構想にあったが実現しなかったと思われる。
  • テンポが良くない。
    • プレイヤーキャラの一挙手一投足に付随する細かい仕草や、配合時・攻略失敗時などの演出が、長時間プレイでは煩わしくなってくる。本作の下地となっているゲームのどちらも「快適さ」を重視されやすいジャンルであることが大きい。
      このせいで、前述したように罠の数が多いにもかかわらず罠チェックが面倒という『トルネコ3』同様の問題点も。
    • 特にダンジョンのテンポは散々言われ続けた『トルネコ3』よりも悪化している。探索を「あきらめる」機能は搭載されているのだが、肝心の「再挑戦機能」が存在しない、死亡時に3匹のももんじゃが踊る長いムービーとゲルダに長々と説教されるイベントが入る、持ち込みなしダンジョンに再挑戦する際には残った道具をまとめて売り払ってゴールドもきっちり預けないと門前払いを食らう、など再挑戦への気概を著しく削ぐ仕様となってしまっている。
    • ダンジョンの入り口、「秘密の通路」のミニダンジョン以外、最下層にリレミトストーンという脱出用の仕掛けがあり、使用するとファンファーレと共に「ダンジョンを無事脱出した!」というメッセージが流れる。このファンファーレとメッセージはスキップできない。最下層ならまだしも入り口でこれを使い「無事脱出した」なんて言われてもただ煩わしいし違和感があるだけである。また2回目のエンディングを迎えたあとに解放されるムービー鑑賞も「ダンジョンの中に入る」必要があり、終わったらリレミトストーンで「無事脱出」することになる。せめて乗った場所によってファンファーレの有無やメッセージを変えるなどして欲しかった。
  • 色違いモンスターが漏れなく登場している=せっかくの仲間モンスターが色違いばっかり、とも取れる。行動パターンや配合方法も似ていて変化に乏しく、バリエーション多彩に見せる工夫に欠ける。
  • 全体的に低めの難易度から、ダンジョン探索に危機感を感じられず探索が単調になって、ダレることも多い。
    • ダレた時こそ最も危険で思わぬアクシデントに見舞われるジャンルであり、本作とて気を緩めたまま全制覇できるほど甘くはない。しかし、慎重に構えてしまうとあくびが出る。そんな、絶妙に退屈なバランスである。
    • 逆に難易度が高い所もあり、レベルがリセットされるにもかかわらず敵が強いストーリーダンジョンとして、「しゃくねつのほら穴」と「まぼろし雪の迷宮」が存在する。本作ではレベルアップでの能力成長もあるため、レベルが多く上がる前に強い敵と戦闘するこの2ダンジョンのみ極端に厳しい。後述するように序盤のヤンガスが弱いのもあって「戦闘は鍛えた仲間モンスターに任せて、ヤンガスはその後ろに隠れる」という状況になりがちで、ストーリーの最後に挑む「盗賊王の迷宮」よりも遥かにキツい戦いを強いられる事が多い。その「盗賊王の迷宮」は持ち込み可ダンジョンにもかかわらずモンスター出現テーブルが持ち込み不可ダンジョンと同一であり、難易度調整が上手く行っているとは言い難い。ちなみにこの2種類のダンジョンに出る敵は他のダンジョンではそこより深い階層に配置されている。
    • 本作最難関ダンジョン「魔導の宝物庫」の設定は、最深部999階、仲間・お金含めた完全持込み不可(ある方法を使えば、レベル引継ぎは可)。しかし100F以降はモンスターテーブルの変化はあるものの敵が全く強くならず、根底の難易度が低く緊張感を維持できないため、200階程度も降りたところで殆どの人がダレるだろう。
      • このダンジョンについては「999階もあれば必要なアイテムが揃わず詰む事は無く、ここまで深くする必要性が感じられない」など位置づけに対する反論も多く、事故率の高さなら各階で必ずモンスターハウスが発生する上に仲間を確保するためのアイテムが非常に出にくい「夢幻の宝物庫」の方が上。こちらを最難関とするプレイヤーも多い。
    • マップを踏破して登録するとそのマップ上に敵位置の動きが常に映るようになる。例えるならば「常時地獄耳の効果」。このため、ダンジョン探索の緊張感が極端に減った。
      • 先述のダレる理由として真っ先に挙げられる部分である。なお設定で無効化することはできない。
      • 仲間のステータスを見るとカメラがその仲間の元に移動するのだが、この時その部分が未踏だと踏破した扱いになる。このため、強い仲間に『ガンガンいこうぜ』を指示してフロアを巡回させ定期的にステータスを確認すれば、安全にマップの踏破が出来てしまう。
    • ヤンガスや仲間モンスターの成長曲線が極端な晩成型になっており、持ち込み不可ダンジョンでは「序盤は厳しい戦いを強いられるが、終盤に近付くにつれ簡単になる」という展開が起こりやすい。
      • ヤンガスはレベルの低いうちは攻守共に過去作のトルネコより低く、戦闘は仲間頼りになりがちだが、レベル60辺りで攻撃力・防御力といった各種ステータスが最大値に達し、HPが数百もあるのに敵からの被ダメージが20前後になるという無双状態になる。
      • 仲間モンスターはそれ以上に極端。捕まえたばかりの状態では非常に弱く、注意していないとすぐやられてしまうが、ある程度レベル上げや配合を重ねるとヤンガスや敵モンスターと比べて極端に強くなる。
        どれくらいかというと、ボスですら鍛えた味方の攻撃3発でやられてしまうほど。これに加えてヤンガス自身も上述の通り序盤こそ弱いもののレベルや装備をある程度整えれば強くなるため、ボス戦は完全におまけ。
      • クリア後ダンジョンの1つである「もっとまどわしの森」は持ち込み可のボスラッシュダンジョンなのだが、クリア後序盤から挑めるという事もあってか難易度がさほど高く設定されておらず、鍛えた仲間モンスターであれば余裕でクリア出来てしまう。ここが数少ない「味方の強さを試せるダンジョン」である事も悔やまれる。
  • ヤリ系武器が全て2マス先を攻撃可能になっており、非常に使いやすい。そのため、ヤリ以外の武器が全体的に不遇。
    • 正面2マスに敵が並んでいる場合は一度で2体を同時攻撃可能、ワナチェックも2マス先まで確認可能、という点も便利さに拍車をかけている。
      • ファーラット系やさまようよろい系など、1マス距離を空けてくるモンスターはヤリ系武器があると無傷で倒せる。
    • このヤリ系の2マス攻撃能力は、合成で他の武器に継承することはできない。
      • そのため、1マスしか攻撃できない剣などの武器は、ベースにするメリットがとても薄くなってしまった。
    • 最弱のヤリ「鉄の槍」でも大半の剣より有用と言われるほど。最強のヤリ「メタルキングの槍」はなんと3マス先まで攻撃できる。
    • 『トルネコ3』で2マス攻撃が可能な「ストレイトソード」はレアアイテムだったし、『シレン』シリーズでも3マス攻撃できる「アイアンヘッドの頭」は入手がモンスターのドロップ限定、盾と同時に装備にできない、敵が並んでいても貫通同時攻撃はできない、ワナチェックは1マス先しかできない、といったデメリットでバランスが取られていた。
      • しかし、本作ではシナリオのボス撃破後の戦利品で「鉄の槍」や「ウィンドスピアー」を早期に入手できる上に、これといったデメリットもない。強いて言えば、仲間モンスターには2マス攻撃は当たらないのに、店主のガーゴイルには当たって敵対してしまうという意地悪な仕様があるくらいである。
  • 敵味方共に、会心(痛恨)の一撃が出る確率が非常に高い。
    • 会心(痛恨)の一撃が発生した際にカメラがそのキャラにズームアップする演出が入るのだが、頻繁に起こるのでテンポを悪化させてしまう。
    • 会心率は「運の良さ」というステータスに依存しているのだが、鍛えた仲間モンスターともなると2~3ターンに1回は会心の一撃を出すようになる。
    • とある2つの武器の効果を合成して組み合わせると「通常攻撃が全て会心の一撃になり、尚且つ必ず命中する」というチート性能の武器が出来上がる。尤も、これら2つの武器はクリア後ダンジョンにしか落ちていない上に出現率も低いのだが…。
  • 各ダンジョンの出来にも問題がある。
    • 殆どのダンジョンでモンスターの出現テーブルが使いまわされている。本編中では持ち込み前提の難易度調整で段階ごとに難化する形のため全く問題ないものの、本編のラストダンジョンと持ち込みなしの隠しダンジョンの殆どが同様の出現テーブルになっているため、ダンジョンごとの特色が薄い。
      • 独自テーブルなのは爆弾石を利用して進む「しゃくねつの大洞くつ」と上記の「夢幻の宝物庫」ぐらいである*4
      • 出現テーブル自体はバランスも良く十分に練られた配置ではあるが、流石にそれひとつだけでは面白みに欠けるのも事実である。
    • 前述の隠し階段から行けることのあるミニダンジョンのモンスターテーブルも、同じダンジョン内では階を降りても全く変化しない。序盤は強敵ばかり出現するのでかなりのスリルを味わえるが、それらの敵も終盤には経験値の足しにもならない雑魚と化しているため、レアアイテムを回収するだけの作業になりがち。
  • ダンジョン1つにつきBGMも1つしか用意されておらず、階段を降りてもBGMが一切変わらない。
    • 特に上記の「魔導の宝物庫」では999Fまでずっと同じ曲を聴き続けることになる。BGM自体は恒例のすぎやま氏による良アレンジとなっているのだが、使い方が致命的に悪いと言わざるを得ない。
  • トルネコ2・3同様、自由にアイテムを使えるタイプの倉庫が存在しない。
    • そのため、保存の壷以外の壷(強化の壷・メッキの壷など)の中身を取り出す・「ぎゃくてんの杖」で仲間モンスターの性別を変える等したい場合は、いちいちダンジョンに入る必要がある。

総評

レアアイテム探索やボス討伐などといった所定の目的を遂行するためにダンジョンに潜るローグライクゲームのスタイルで作られてはいるが、全体的なプレイ感は「目的を達成するための手段(育成)も楽しむ」という『DQM』シリーズの特性が強く出ている。
そう考えると、有能なモンスターのいるダンジョンに限ってアイテムなどの持込制限がキツく繰り返しプレイが難儀だったり、せっかく育てたモンスターを活躍させる機会が少なかったりといった細かい部分が気になってくる。

ストーリーにひと区切りつくエンディングまでは制限が緩く、易しめの難易度と自由度の高いシステムとでバランスが取れているものの、いざやり込もうとしたときに何かと不満点が出てくる。
これは「むしろクリア後からが本番」であることが多いジャンルの作品としては、それなりに無視できない問題点だろう。

本作はローグライクゲームであり、育成重視型RPGであり、DQのキャラゲーでもある。
そういった様々な側面をまんべんなく押さえはしたが、様々なところに粗が多く、中途半端と評価されやすい作品である。
結果論で言うなら、「不思議ダンジョンの正当進化」か「システム違いの『DQM』」か、どちらかに徹底するべきだったのかもしれない。

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最終更新:2023年12月29日 23:14

*1 『出す』のコマンドで出てくれないだけで、壷を割って強制的に出すことは可能。

*2 ゴールドを預けたり、不要なアイテムを売却したり出来る施設。ここでアイテムを売却する際、『売れ筋』のアイテムだと通常の2倍の売値で買い取ってもらえる。

*3 装備している武器・盾・指輪のいずれか1つの+値が反映されなくなり、印の効果も発揮されなくなる。 武器の場合はその武器を装備して10回攻撃する、 盾か指輪は装備して10回攻撃を受けるまで解除されない。

*4 ただし「夢幻の宝物庫」のテーブルも共通テーブルをベースにしているため完全にオリジナルとは言いにくい。