シャイニング・ウィズダム

【しゃいにんぐ・うぃずだむ】

ジャンル アクションRPG
対応機種 セガサターン
発売元 セガ・エンタープライゼス
開発元 ソニック
発売日 1995年8月11日
定価 5,800円
判定 なし
ポイント 蘇る連打ゲー
シャイニングシリーズ


概要

  • セガのRPGシャイニングシリーズ初期の作品。本作ではアクション要素の豊富な見下ろし型アクションRPGとなっている。
    • しかしレベルアップシステムが無く、強化アイテムの収集・装備アイテムの活用がメインなので『ゼルダの伝説』同様「アクションアドベンチャー」ととる事もできる。
  • シャイニングフォースII』のキャラクターがゲストとして登場する。本作の物語中では割と重要なポジションにいるが、本作自体が外伝に近い扱いなので作品との関連性は殆ど無い。
  • 開発元のソニックは、セガ内における制作チーム(ソニックチーム、当時の第8AM研究開発部の通称)とは別。初期シャイニングシリーズの開発を行っていた会社(後にスタッフがほぼ同じである兄弟会社のキャメロットと合流)である。
    • この頃に外国からのスタッフが参入しており、社内の3DCG技術が向上。本作も絶世の「3Dゲームブーム」だったのでそれに肖ってキャラクターは3DCGで描かれている。
  • なお、本作はサターン初期のRPGラインナップ強化のプロジェクト『ロープレ 王国 (キングダム)』の3本のうちの1つとして発売されており(同プロジェクトで他に発売されたRPGは『魔法騎士レイアース』『リグロードサーガ』がある)、本作はプロジェクトの中核を担うソフトとして位置づけられていた*1

ストーリー

(説明書6ページより引用)

パルメキア大陸の東に位置する、オデガン王国。豊かな自然に満ちあふれる、この国に、ひとつの言い伝えがあった。
4つの精霊の力が伝説の巨人を蘇らす時、世界は闇に飲み込まれるであろう…。
4つの精霊と伝説の巨人。この言い伝えが、何を意味するのか、今となっては知る者すらいなかった。
ここに一人の若者がいた。マルスというこの若者は、幼きときから武芸の修行を続け、今日、はれてオデガン城の兵士となることを許されたのだった。
かつて、平和な国オデガンに、邪悪なドラゴンが出現したとき、ひとり剣を持って立ち向かっていった英雄ジャイルズ。
彼の一人息子のマルスは、父の死後、祖父と祖母に育てられ、先祖代々伝わる"加速の術"を身につけた。
祖父の激励を受け、城へと向かうマルス。その行く手には、いったい何が待ち受けているのだろうか?

システム

  • 基本操作
    • シンプルな見下ろし型アクションゲーム。メニュー画面で武器や魔法等、道中で手に入れたアイテムをセットし、対応ボタンを押す事で使用可能。なお、ボタンごとにセット出来るカテゴリがあり、その内約は以下の通り。
      • Aボタンは薬草や天使の羽(ダンジョン脱出)といった「アイテム」が該当する。セットした状態でAボタンを押せば予備動作なしで回復や瞬間移動が可能なほか、特定の扉を開ける鍵もこのボタンが担当する。
      • Bボタンは「オーブ」をセット出来る。魔法を使うための4種のオーブをセットして加速(後述)した上でCボタンを押せば、オーブの属性に対応した魔法が発動する。他にもセットするだけで何らかの効果をもたらす特殊なオーブ(こちらは全て隠しアイテム)も存在する。
      • Cボタンで扱うのは剣・靴・グローブといった「装備」。セットした状態でCボタンを押すと、装備に応じたアクションが使用できる。その種類は剣による斬撃といった攻撃動作から、特定の靴を履くと使用できるジャンプなど謎解き専用のものまでさまざま。
  • 加速の術
    • 冒頭で主人公が祖父から教えてもらえる特技で、本作のもっとも特徴的なシステムとなる。Bボタン*2を連打する事で移動速度が上昇。加速する事で様々なアクションが強化され、魔法も使えるようになる。
    • ライフゲージの下にある加速ゲージ(最大値は基本的に4だが、セットする装備によっては3や5になる)が3以上になると体当たりが可能になり、そのまま敵にぶつかればダメージを与えられるが、当たり方によっては自分もダメージを負う。
      • オーブをセットした状態で加速ゲージを4(組み合わせる武器によっては5)にしてCボタンを押すと、オーブの種類に応じた魔法が発動する。例外として、初期装備の剣などはオーブと組み合わせても魔法が発動しない。
      • 加速ゲージの値はBボタンを押しっぱなしにする事でホールドが可能。ダメージを食らっても固定は解除されないが、ゲージの値が強制的に2減らされる。また、連射パッドは有効。
    • 特定の装備をセットして加速の術を用いると、Cボタンで装備を使った時の効果が変化する。装備のみならず、加速ゲージが4か5かで魔法の威力や範囲も変化する。装備によっては「装備のアクションを使う」「オーブと組み合わせて魔法を使う」事で、加速ゲージがリセットされるものがある。
      • さらに特定の装備をセットして魔法を使うと、その武器専用の魔法が発動する。単純に攻撃手段として有用なもののほか、攻略に必要な組み合わせもあるが、ただ攻略が「楽になる」程度の物も。
    • これらの装備と魔法を駆使し、謎解きと戦闘をこなして行く。
  • 強化要素
    • 本作では経験値の類はなく、主人公の攻撃力は武器や魔法に完全に依存している。一方で最大HPは、フィールドやダンジョンに隠された「ライフの器」を集める事で上昇していく。
    • また、ライフの器の色違いとなる「ライフストック」というアイテムも存在し、HPが最大の状態で体力回復アイテムを拾うとストックに蓄積され、HPがゼロになった時に自動でライフストック分のHPが回復した状態で復活する。
      • 別作品で例えるなら、「任意で使用できないロックマンXシリーズのサブタンク」「『スーパーメトロイド』のリザーブタンク(オートモード)」と言えば分かり易いか。

評価点

  • 多彩なアクション
    • 本作では、基本的な近接武器である剣(進行に伴い3種類手に入る)のほかに、離れたスイッチの起動やアイテム回収も出来る中距離武器「マジックハンド」、攻撃判定を持つスライディングを繰り出す「スリップシューズ」、爆弾を始めとする重量物を持ち運ぶ「パワーグラブ」など、様々な装備品を扱う事が出来る。
    • 上記の通り一部の武器はオーブと組み合わせれば、それぞれの武器の特色を活かした専用魔法が発動する。武器未装備or一部武器装備時で発動する汎用魔法も含めれば、アクションの幅は非常に幅広い。特に「スリップシューズ+フリーズオーブ」で発動する高速長距離スライディングには、主に移動面でお世話になったプレイヤーも多いのではないだろうか。
    • ただし、アクションが多彩な反面、ダンジョンの謎解きにおいては一筋縄ではいかない場面が見受けられる。決して理不尽なレベルとは言い難いが、後述の連打重視仕様もありプレイヤーへの負担は決して小さくはないのが難点である。
  • BGM
    • 2作目やゲームギア外伝3作を手掛けた武内基朗氏が本作でも作曲を担当しているが、そのクオリティは高い。
    • ダンジョンにおいては神秘的なものや暗い雰囲気のものが揃う一方で、ボス戦やフィールドのBGMでは電子オルガンを使ったプログレッシブかつハイテンポな曲調にしてあり、非常にテンションが上がる仕上がりとなっている。特に川を挟んで西側のフィールドのそれは「本当にフィールドBGMか」とツッコみたくなること請け合いである。
  • キャラデザ
    • 他のシャイニングシリーズにも参加している梶山弘氏(現:梶山浩)の作画は、時代を感じさせる絵柄であるが総じて出来が良い。
    • 眼が大きく強調された女性陣、かなり濃い顔のオッサン達やラスボス配下など、人によって好みの分かれる画風ではあるが、会話シーンで表示される顔絵には瞬き・口パクのアニメーションが付いているなど芸の細かさが光る。

問題点

  • 3Dありきのゲーム内グラフィック
    • この頃ゲーム業界全体が「何が何でも3D」という風潮にあったため、膨大な量の3Dゲームに埋没している印象は拭えない。
    • パッケージを飾る主人公と姫の2ショットでもわかる梶山氏の画風とは裏腹に、ゲームで実際に動く3Dキャラクターはほぼ全員が2~3頭身程度のメルヘンチックな仕上がりに。
      • 更に言えば、パッケージでは主人公は割合カッコイイ兜をかぶっているのだが、作中に同じデザインの兜は一切出てこない。一応「ペガサスヘルム」という兜が存在するがその見た目はカワイイ寄り。
    • 本編が始まる直前を描いたOPデモも、そんなクオリティの3Dキャラクター達で進行するのだが、台詞はおろか状況を説明するテキストもなく動きだけで表現されている事もあり、緊張感の欠片もない
      • ラスボスも当然OPデモとほぼ同じグラの頭身を相手にするのだが、バリアを展開しつつホバー移動で高速突進する際になぜか手足をバタバタさせるその挙動が純粋に見苦しい。ジッとさせていればもう少し様になっていたと思うのだが…。
    • タイトル画面も主人公・姫・ラスボス一味・が集合写真の様に並んでいるという何とも言えない構図。素直にパッケージと同じイラストを採用すれば良かったのではないだろうか?
  • 一部アイテムのデザイン
    • ファンタジーな世界観でありながら柔道スーツ*3にモンキースーツ、果ては自動車という世界観を完全に無視するアイテムが手に入る。
      • オマケに自動車に乗ったまま実家に帰るとレースゲームが出来る様になる(その名も「どいてなUSO」。元ネタはタイトルから何となく察しがつくであろう)。これってRPGだよね?
    • 柔道や自動車は隠しアイテムなのでまだ許容できるとしても、モンキースーツは本編中で必ず入手する攻略必須のアイテムな上に、装備すると猿の鳴き声と共に猿の姿へモーフィングし、かなり吞気な曲調の専用BGMに切り替わるという、シリアスさの欠片もない演出に入る。
      • 前述したタイトル画面の説明でも軽く触れているが、本作では異様なまでの猿推しがされている。その理由としては、当時のセガサターンのCMキャラクターだった『セガール&アンソニー』がモデルではないかと言われている。実際、本作のCMではモンキースーツを着るシーンを使っており、セガールを意識している可能性は高い。
  • 連打ゲー
    • スムーズに移動するにも魔法を使うにもまず連打で加速する必要があるという、連打ありきのゲームシステムとなっている。
    • 一応説明書にも加速ゲージの固定は書いてあるのだが、ゲーム中ではその説明が無い。改善出来ないかと設定画面を見て気付く可能性はあるだろうが、読まないor調べない人には超絶連打ゲー。
    • アクションを起こす・ダメージを食らうなど、何かある度にゲージが減速orキャンセルされるため、ゲージ固定を知ってる人でもやっぱり連打しないといけない。連打自体はそれほど速くなくても支障はないのだが、楽しむためには連射機能付きパッドが必要になるかもしれない。
    • 謎解きにおいては、加速ゲージを上げたうえでの武器のアクションや魔法が必要となるケースが多く、謎解きに行き詰まるほど指への疲労は蓄積する。ボス戦に至っては(オーブが手に入って以降は)魔法の連発がほぼ前提となるため、ボス攻略にはBボタン連打を何度も繰り返す事が必須となる。無論、ゲージ固定を知らない人には相当な苦行になるのは言うまでもない。
    • X,Y,ZボタンがBボタンと同様加速ボタンに対応しているので、3本指で流れるように押すだけで一瞬でゲージを溜めることができる。これに気付けるかどうかが負担が全く違ってくる。
  • メニュー画面を開くと、フィールドにある隠し階段が見えるようになる。
    • 本来は樹木や茂みが塞いでいて見えないのだが、セガサターンの半透明処理の関係でメニュー画面の背景越しに見えてしまう。一応、ウィンドウの設定をいじる事で見えなくすることは可能である。

総評

説明書を読むか読まないかでクソゲー/良ゲーが分かれるのは多くのゲームが身をもって証明している。これもその類であるが、パッケージと実機のキャラグラに大きな差があるので、ゲーム性とは別の面でもハードルの高さは否めない。更に生産数が多く、セガサターンワゴン/セガサターンジャンクソフト(動作保証無し)の常連となっているあたりが、この作品の評価を更に下げている。
だが、決して理不尽な難易度だったりゲーム内容がつまらない訳ではない。ワゴン/ジャンクで格安で手に入るのも考えようによっては評価点なので、セガサターンが健在で指の強度腕に覚えがあるなら遊んでみるのも良いだろう。


余談

  • 本作のストーリーは「新任兵士が常人よりも魔法の耐性が優れていた為、災いの巨人復活をもくろむダークエルフ一味を相手に英雄的活躍をして行く」というものなのだが、エンディングで生死不明の状態に陥った際の同僚や国王たちの反応がかなりひどい。*4
    • 「実は他の先輩兵士達から疎まれ妬まれていた」「その先輩たちは仲間のエルフを(こちらがラスボスを倒したと勘違いして)称賛しつつ主人公をボロクソ言う」「王や大臣、父の親友である隊長ですらエルフに指摘されるまで彼の身の安否を心配しない」という怒涛の展開を迎える。周囲の反応がそんな有様である中、姫だけは真っ先に主人公の安否を気遣ってくれることだけが救いだが。
      • より正確に書くと、「巨人封印の報を聞いて、主人公の安否を知る前にその場を離れて周囲に伝えに行く」と事情を考えると致し方ない反応を見せる者や、「主人公の今までの任務失敗*5に不安を覚えていた事を打ち明け、エルフから主人公の功績と安否を直接聞かされ言葉を失う」と良心を覗かせた者もいる。王や隊長も主人公の安否を気に掛けなかった自身を恥じるなど、フォローと言える描写は存在する。
      • が、謁見の間の前に控える兵士2人はどうあがいても擁護不可能。「(エルフの手柄だと聞いて)ムネがスーッとした」「主人公は新米のくせに自分達よりも出世して付け上がってる」などとのたまうだけならまだしも、「こんな奴らのために散った」と悔しさをにじませるエルフを見送りながら「えばりやがって!だからエルフは嫌いなんだ」「ここは我慢だ。どうせエルフは帰るし主人公も死んだんだしな」と、無駄口を叩きながら笑い合うというクズっぷりを披露する。
    • 主人公は、ゲームの序盤で出会ったグドーの谷の妖精*6の力により一命を取り留めるが、主人公は周囲からの仕打ちに応えるかのごとく自分が助けた姫との生活を早々に終わらせ、一人何処とも知れぬ迷宮に幽閉されている妖精*7を助けるためあての無い旅に出るという、オープニングからは想像できない結末を迎える。
      • ただし、本作よりも未来の時系列である『III』のメニュー画面では彼女と全く同じ容姿の妖精「アクーユ」が登場する。本作の妖精はデータ選択画面で「イシャハ・カット」という精霊と面識がある事を話すが、『3』のアクーユと共にメニュー画面にいる老人がそのイシャハ・カットであるなど、容姿以外の共通点もある。もしアクーユが本作の妖精と同一人物ならば、主人公の目的は達成出来たことになり、それは一応の救いと言えるだろう。
  • ログアウト冒険文庫から小説版が発行されている。
    • ストーリーは駆け足気味だがゲームに忠実。ゲームでは無言だった主人公(マルス)が喋るようになっているほか、「加速の術」は「飛走脚」に改変されている。
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最終更新:2023年08月02日 21:24

*1 ポジションとしては本作が「キング」、『リグロードサーガ』が「プリンス」、『魔法騎士レイアース』が「プリンセス」と位置付けられていた。

*2 実際はX、Y,Zボタンも対応している

*3 セガで柔道着といえばかの「せがた三四郎」を思い浮かべるが、彼が表舞台に立ったのは1997年であり、本作のこれとは何の関係もない。

*4 一応彼の国の国民はそういう人たちなのだという描写は随所に描かれているが。

*5 ゲーム中盤からは、巨人復活の鍵である「ジン」の解放を阻止する為に各地の迷宮を巡るが、その先々でラスボス配下四天王に先を越されている。

*6 ゲーム開始時のデータ選択画面の案内役でもある。

*7 「精霊は自然の運命に関わってはいけない」という掟があり、本来死ぬはずであった主人公を救った罰として閉じ込められた