ポイズンピンク

【ぽいずんぴんく】

ジャンル ダークファンタジーS・RPG
対応機種 プレイステーション2
発売元 バンプレスト
開発元 フライト・プラン
発売日 2008年2月14日
定価 7,140円
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 なし


概要

バンプレストとフライト・プランが送る完全新作SRPG。
同タッグの代表作と言えば『サモンナイト』シリーズだが、ポップな雰囲気のそれらとは異なる、全体的にダークな世界観が特徴。
むしろ同じくフライト・プランが開発したダークファンタジー作品『BLACK/MATRIX』シリーズを想起させ、タイトルも色繋がりから関連を匂わせるが、実際はそちらとも作風が異なっている。

キャラクターデザインには幻想的な絵柄が特徴のtomotika氏を起用。本作の雰囲気づくりに貢献している反面、氏の絵柄をCGに起こすことは難しかったのか、絵柄と3DCGが乖離してしまっている。(詳細は後述)

あらすじ

結婚を間近に控えていたバルダミアン王国の姫ルナーシェが突如姿をくらまし、同時に多数の魔神が住む獄界ベセクが出現した。
バルダミアンのバルド王は、獄界ベセクに囚われた姫を救い出した者には身分を問わず望みの褒美を与えるとの声明を出した。
姫のため、望みのため、獄界ベセクに何組もの挑戦者が足を踏み入れていく。


特徴・システム

  • 本作には拠点となる街とダンジョン以外の要素は存在せず、街とダンジョンを往復すること以外は出来ない。
    • これは作品の規模を狭めてもいるが、同時にプレイヤーの想像する余地を多く残している。ダンジョンの外に広がっているであろう王国の様子が会話中にしか登場しないことで、逆にプレイヤーに想像を促す作りである。
      • とは言え拠点は箱庭のように小さく、やはり閉塞感は感じるので賛否が分かれる所。
  • 状態異常は行動のたびにダメージを受ける「流血」。物理ステータスが弱体化する「骨折」等、あまり他では見ないダークな雰囲気に合わせたものになっている。
  • ダンジョンに登場する敵、異形の姿をした「魔神*1」を捕獲していく事が本作の一つの目的。
  • 本作の特徴的なシステムとして、魔神はもちろん普通に倒すことも可能なのだが、残りHPに加えて魔神ごとに設定されている数値(オーバーキルゲージ)を足した以上のダメージを与えることでoverkill扱いとなり、魔神を捕獲することが出来る。(文章では説明しづらいので一例:現在HPが20、オーバーキルゲージが30の場合、49以下のダメージで通常撃破、50以上のダメージを与えるとoverkill扱いとなる。)
    • 捕獲した魔神のスキルを武器や防具に付加したり、魔神の血をPP(ポイズンピンク)に変換し、貯めたPPを消費して魔神を自軍の仲間にする事もできる。
    • 登場している魔神は韮沢靖氏や安藤賢司氏といった著名な面々がデザインを担当。
  • シナリオ中ではそれぞれ異なる3組の主人公たちと、彼らのシナリオクリア後に現れる2人を主役にしたシナリオ、5人全てのシナリオクリア後に挑める最終章の6つのシナリオがある。
    • 5人目は終盤面のみのショートストーリー。最終章は戦闘一度のみのファイナルバトルになっている。
  • 選んだ主人公のパーティで複数のルートの中から一つのルートを選び、獄界ベセクを攻略していく。
    主人公によりストーリーは異なるが、最初の数ステージと節目は主人公に固有で、その途中のステージを選択できる。
    • 獄界ベセクには迷い込んでいる「救護者」がいる場合があり、救助すると拠点で会話したり、アイテムを貰えたりできる。

評価点

  • ゲームの雰囲気
    • ダークな世界観とそれによくあっている音楽・イラストについては評価が高く、ステージにもそれぞれプレイヤーの中二心を存分にくすぐってくれる名前と解説文がついている。
    • ミニゲームをクリアするごとに解放される設定資料やイメージイラストも豊富に収録されており、見応えがある。
  • ルート分岐
    • 導入部の数マップは各主人公毎にまったく違っており、その後の共通ルートも中盤が三択、終盤が二択から選べるようになっていて、繰り返しのプレイに飽きが来ないよう工夫されている。
  • 救護者
    • 救護者たちはアイテムをくれる他には会話をするしかない、必要がなければ無視してしまっても構わない存在だが、固有の立ち絵と、会話を通じて各々の背景をうかがえる。
      「幽霊の貴婦人」「故郷が白い翼と黒い翼の抗争に巻き込まれた有翼人」「現代から迷いこんだ女子高生」「時計うさぎと、それを探すアリス」など、かなり濃ゆい面々が顔を並べる。本編の主人公たちが終始陰鬱な雰囲気なので、ゲーム中の癒しになるだろう。
    • 救護者は複数のイラストレーターが担当しており、中にはサモンナイトシリーズのキャラクターデザインでお馴染みの飯塚武史氏も参加している。
      • ただし会話回数は救護者によって大きく異なる。序盤から終盤まで会話出来るキャラクターもいれば、設定にほとんど触れないまま会話1回で立ち去ってしまうキャラクターも多い。

問題点

単調な戦闘画面

  • 戦闘時のモーションは通常攻撃一種、クリティカル、固有の必殺技、魔法使用時で四種類のみ。カメラワークも少なく、ポリゴンである意味が薄い。
    • 属性付加攻撃でも通常攻撃のモーションと変わらず、炎等のエフェクトすら無い。二回攻撃は通常攻撃のモーションを二回流すだけ等、手抜き感が漂う。
    • エフェクトが追加されるのは状態異常付加攻撃が成功したときのみである。
  • 通常は一対一の戦闘画面だが、槍等二体の敵を同時に攻撃出来るキャラクターは武器を振っただけで敵も出ずに戦闘画面が終わり、ダメージ表示等はマップで行われるため、違和感がある。
    • いわゆるマップ兵器のような扱いになっている。巨大な魔神もいるため敵2体を同時に表示して攻撃させるのが難しかったのかもしれないが、それなら1体の敵の場合は通常、2体の敵の場合はマップ兵器と、状況によって分ければよかったのでは?

立ち絵と3DCGの差が激しい。

  • 本作のキャラクターの1枚絵は、このゲームのダークな世界観に合っているため比較的評価は高めだが、逆に戦闘やOPイベントの3DCGの方は、1枚絵と比べるとあまりに残念な出来であるため、そのギャップに嫌気がさしてしまう。
    • ムービーのCGの質そのものは高いのだが、美少女キャラはリアルな造りにアニメ顔が上手く当てはめられなかったのか、出来の悪いフランス人形といった不気味な顔になってしまっている。男キャラはまだ悪くない出来ではあるが、それでも微妙。犬はかなりリアルなのだが。
    • 戦闘中のCGはムービーほど酷い顔ではないが、2008年製ということを考えるとCGそのものがやや微妙な出来。
    • 本作のダークでゴシックな世界観に惹かれて購入したプレイヤー達にとって、この点はかなりのマイナスであった。

長めのロード時間。

  • 戦闘時は基本的なシミュレーションで、攻撃する時だけ視点が変わって攻撃する側される側がアップになる(ファイアーエムブレムシリーズのような形といえば分かりやすいだろうか?)のだが、この際のロードが長めで画面が切り替わるまで10秒近く掛かる。しかも、ロードが終わっても上記の通り、モデルはイマイチだしエフェクトもしょっぱいので…。
    • クローズアップ演出はオプションでカットでき、その場合の戦闘はマップ上で行われるが、ユニットは一切動かず攻撃エフェクトが出るだけの非常にそっけないものとなる。
  • フリーズも多い。再現性のあるものもあるが、基本的には唐突にフリーズする。

不親切なユーザーインターフェース。

  • 比較的1ステージに時間がかかり、しかもリセット&リターンも重要なSRPGというジャンルにも拘らず、ステージ中のセーブ・ロードは不可
  • R1と○の長押しで会話の高速スキップ、スタートでイベントスキップが可能。なのだが、何故かイベントスキップは戦闘中のみ。
  • 装備品に能力アップや特技のスキルをセット可能だが、装備してる状態でしかつけ外し出来ないため管理が非常に面倒。さらに誰も装備出来ない装備品のスキルは外せない。
  • 装備は街の拠点とショップで可能だが、スキルの装着はショップでのみ可能。だがキャラクターのステータス画面表示は拠点のみ。戦闘前の準備画面だと装備とスキル装着とステータス画面表示が全て可能だが、ショップと違いスキルの説明が無いため分かりにくい。
  • 装備品によりステータス異常の耐性を付けることが可能だが、何が付加しているかはキャラクターのステータス画面では確認不可。確認するためには装備品をいちいち外してアイテム説明を見るしかない。戦闘中の確認も出来ず、敵の耐性も確認出来ない。
  • 一度ステージをクリアした後は、前のステージに戻ったり別のルートに変更したりはできない。
    • サモンナイトやBLACK/MATRIXでは一部を除いて幾らでも可能だったフリーバトルもない。そのためレベルアップがままならず、難易度はやや高め。
  • スキルの説明も不十分。本作のスキルは独自に体系化された架空の言語構成となっているのだが、まず一見ではどれが攻撃でどれが回復なのかも分からないようなスキル名であり、初心者は戸惑う。
    • 接頭語は「パル」→「メデ」→「マク」の順に強力になるのを基本として、十字範囲攻撃を意味する「ラト」、回復を意味する「レス」等が組み合わさる。
      • 分かりづらさの極みは闇魔法スキル。「グレド」を基準に「パルグレド」「レスグレド」「モルグレド」「メデダズグレド」「ラトマクグレド」等。これらは全て攻撃系なのでまだ分かり易い方。これに攻撃補助系と状態異常系が合わさる。
  • 状態画面左下の3つのパラメータが、見ただけでは何を意味しているのか全く分からない上に説明がない。説明書にも掲載されていない。
    • 実はこの3つのパラメータは左から「回避率」「反撃率」「クリティカル発生率」を表す、極めて重要なもの。何故説明がないのか。
    • 3つのパラメータのアイコンが説明書の画像と実際のゲーム画面で異なっており、情報を求めて解説ページを開いたプレイヤーは一層混乱することになる。

テージルートが初見殺し

  • 金髪ゴスロリの少女「テージ」。5人の主人公の代表格=メインヒロインで、パッケージにも一番大きく描かれている看板キャラ。当然、最初にゲームを始め、主人公を選択する際には多くのプレイヤーが彼女を選ぶだろう。
    • しかしこのテージ、実は非常にピーキーな性能をしており、全く初心者向けのキャラではない
      • まず、彼女の攻撃魔法は非常に強力で、初心者が彼女を使用すると頼ってしまいがち。しかも彼女は魔法を無効にする能力者という設定で、魔法全般が効かない。
      • では鉄壁の防御力なのかと言うとそうではなく、「魔法無効化」という設定が曲者で、テージは回復魔法も無効化してしまう。つまり彼女には回復魔法が効かない。アイテムを使用して回復するしかない。
      • このテージだけが持つ魔法無効化は何も説明が無い。魔法が当たるとダメージ数値の代わりに英文が出るが、普通は分からないだろう。そして最初の三人のうちの誰かのシナリオをグッドでクリアした後に現れるロンデミオン編で「魔法が効かない体質」とだけ会話の中で語られるが、今更である。
  • パーティのバランス等を考慮すると、初心者は「オリフェン編」から始めるのが良いとされている。

魔神障壁

  • ボス魔神には魔法障壁というバリアがあり、最初に弱点を付いて魔法障壁を破壊しなければ一切ダメージが通らない。
    • 序盤は特定属性の攻撃や、特定属性の魔法なら何でもといった形で簡単に破壊出来るが、終盤は特定のキャラを育ててないと使えない高位の魔法であったり、数面前のボス魔神を捕まえて使用出来る攻撃であったり、事前に用意してないとどうしようもない場合があり、積み状態に陥る可能性が高い。
    • ボス魔神は規定ターン経過で逃亡するのでゲーム進行事態には問題無いが、極めて限定的で予想も出来ない攻略法であるのにもかかわらず、事前情報が一切無いのは不親切である。

その他の不可解な点

  • 雰囲気ぶち壊しな空気の読めない会話イベントの存在。
    • 戦闘中、一定ターンの経過などで会話イベントが発生するが、その中にこれまでのダークな空気をぶち壊しにするような会話イベント(何の脈絡もなく始まるキャラクター達のエロトークなど)があり、それがこのゲームの世界観を壊してしまっている。
    • これらの会話はテキストからしてキャラの性格等を考慮しておらず、キャラのイメージを激しく壊してしまっている。何故かテージ編のみで繰り広げられるが、知的な犬のラキが語尾にワンを付けて喋ったり、魔神が友達感覚で話し掛けてきたり、スタッフが悪ふざけで入れたお遊びが消されず残ってしまったのだろうか?と疑うレベルでおかしいテキストである。
    • 芸人の小島よしおや女性芸人のにしおかすみこのネタそのものの会話が唐突にぶち込まれる場面も。
  • ナレーションには総合格闘技でお馴染みのレニー・ハートを起用。ナレーションの他に、全ての魔神との戦闘時にあの巻き舌で魔神の名前を紹介する演出があり、ダークな雰囲気をぶち壊してしまっている。何故ダークファンタジー物で格闘技を彷彿とさせる演出を入れたのだろうか?
  • 様々な伏線を残したまま終わるストーリー。
    • 物語の肝心な部分についての伏線はあらかた回収しているが、一方でキャラクターごとの細かい部分については、特に触れずに終了している。各シナリオはラスボス撃破後に打ち切りのように唐突に終わり、ファイナルバトル後もラスボス撃破後に唐突に終わってしまう。各シナリオクリア後のエンディングムービーで、各キャラのその後とみられるイラストが多少見れる程度である。
    • 一応ゲームの最後で、続編の存在を示唆するような台詞があるが…。
  • 魔神の問題
    • 宣伝では「力を奪うか、従属させるか」といった自由度の高いゲームを想像しそうだが…
    • 実際は魔神の捕獲は面倒な手間を踏まなければならず*2、しかも捕獲した魔神は成長しない為、結局使い捨ての駒になってしまう。
      • これらの問題から、タイトルにもなっているポイズンピンクを使用して魔神を召喚するシステムがほとんど使われない。
    • ちなみに宣伝では「100体以上の魔神を仲間に出来る」とPRしているが、実際は55種類のみ。
      • 見た目が同じ色違いのレベル違いの魔神をすべてカウントしてようやく101種である。
  • メインキャラのレベルや装備は二周目に引き継げるが、街で仲間に出来るサブキャラクターは引き継ぐことは出来ず、さらに装備中の物は破棄されてしまう。
  • 仲間キャラクターは主人公含めメイン11人、サブ12人といるが、ファイナルバトルは主人公5人と魔神しか使えない。

総評

ゲームシステムは大きな問題はないものの、どうにも力不足で魅力に欠ける。ボリュームはそこそこといった所だが、やり込み要素もなく、ゲーム性だけ見ればプレイヤーを引き込むような作品とは言い難い。少なくとも従来通りの同社のゲームのように、ドット絵とイラスト中心で戦闘画面を作ればそれなりの出来と評価になったはず。

一方で、サモンナイトシリーズは元より、BLACK/MATRIXシリーズとも趣の異なるゴシックダークな作風には目を引くものがある。明らかに人を選ぶゲームであるのにもかかわらずAmazonの評価が妙に高いので、刺さる人には刺さるといった様子。

余談

  • KOTY2008において話題に挙がったが、結果は選外。中の下程度の凡作と判断された。
  • 問題点にてビジュアル面の難を挙げたが、実は「PVにゲーム画面がほとんど映らない」「ムービーゴリ押し」と、事前情報から危険な香りを放っていた。
  • ユーザーのテンションとは裏腹にファミ通のクロスレビューでは8/7/8/7とそこそこの得点。
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最終更新:2021年10月18日 21:03

*1 ゲーム中では、人の上に神が乗った造字

*2 overkillを叩き出す為には敵味方の性能とダメージ計算式を基に、プレイヤーキャラの攻撃ダメージを正確に算出する必要がある。もちろん電卓は必要不可欠。ステージ中にセーブは出来ないのでミスしたらステージの最初からやり直し。