『Neo ATLAS』とマイナーチェンジ版『Neo ATLAS II』を紹介する。判定は共に良作


Neo ATLAS

【ねおあとらす】

ジャンル 新世界発見シミュレーション
対応機種 プレイステーション
Windows 95/98
発売元 【PS】アートディンク
【Win】メディアクエスト
開発元 フリップフロップ
発売日 【PS】1998年2月26日
【Win】1999年7月23日
定価 【PS】5,800円
【Win】8,800円(共に税別)
レーティング 【GA】CERO:A(全年齢対象)
配信 【PS】ゲームアーカイブス
2007年10月24日/600円
判定 良作

概要

PCなどで発売された『The ATLAS』シリーズを大幅に発展させた続編的ゲーム。

世界観

  • 15世紀から17世紀頃、後に大航海時代と呼ばれる頃のヨーロッパ。主人公は貿易商社の社長になり、ポルトガル国王からの勅命を受けて探検船団を結成し、未開拓地域を調査していく。
    • 15世紀~17世紀と言っているが、史実に近い世界観ではなく、その頃のヨーロッパ人が未開拓世界に抱いた幻想的な世界風景を世界観としている。

システム

  • 主人公は貿易商社なので、街と街を貿易で結んで利益を得る事ができる。
    • 貿易船は数種類から選ぶ事が可能。それぞれ速度重視、積荷数重視、海賊を返り討ちにする戦闘力重視等といった特徴を持ち、値段も違う。
      • 効率の良い取引をする事で利益を増やす事ができる。
    • 特産品はある程度取引していると在庫がなくなってしまう。しばらく貿易をしなければ回復するが、貿易ラインを結んで放置しておくと赤字化してしまう。
    • 特産品次第では新たな特産品が登場する事がある。
      • 例えば、指輪と金を交易すると金の指輪ができる。更に金の指輪とルビーを交易するとルビーの金指輪が誕生する。
  • 提督を雇い、探検船団を結成して未開拓地域を探検させる事ができる。
    • 船で探検するので出航から戻ってくるまで時間がかかる。提督が帰還すると提督の報告を聞く事ができる。
    • 提督の報告で「陸があった」「何も無かった」と言う報告で、自分にとって都合の良い報告を信じればそれが真実になる。
      • 逆に都合が悪ければ信じず、都合の良い報告が出るまで探検しなおさせる事で地形を思い通りに変化させる事もできる。
    • 提督にもステータスがあり、船団の船を設定する事が可能。探検を続けると船団の船が損傷していくので修理したり買い換えたりしなければならない。
      • 探検を繰り返すとレベルが上がり、探検可能距離が伸びたり視野が広がったりする。
  • 発見された土地に設置された宝箱から、秘宝や遺跡、人種を発見する事ができる。
    • 本作は基本画面が「既に発見された土地の地図」で、地図は倍率を4つに切り替える事ができる。
    • 宝箱は3倍率以上でなければ見る事ができない。
  • 遺跡に提督の船団を派遣、調査する事ができる。
    • 遺跡に向かう提督によってイベントが発生したりしなかったりする。提督にはアイテムを持たせる事ができるので、所持しているアイテムによってもイベントが発生する。
  • 世界中にはさまざまな吹き出しが浮かんでいる。これは噂で、収集したり信じる/信じないの選択をする事で世界観を左右する事ができる。
    • 世界は一つの巨大な球体であるという世界球体説と、世界は平坦で端があるという世界平面説。信じた、集めた噂によって二つのどちらかを選ぶ事ができる。
  • 途中、所持金が0以下になると破産してゲームオーバーになる。
    • 計算上、翌月破産する可能性がある時には、秘書のミゲルが警告してくれる。

評価点

  • 本作のように「中世」という時代設定を選んだゲームは少なくない(多くも無い)が、紛争や政治に重点をおかず、とにかく冒険にのみ焦点を置いているゲームシステムは稀。
    • 同時に「当時の人々が信じた世界」と言う事実と離れつつも、魔法のようなハイファンタジーに偏らない世界観は独特である。
  • 信じるか信じないかで極端に変化していく世界地図。
    • ゲーム開始時点で明らかになっているのは、地中海を中心としたヨーロッパの一部のみ。ここから全世界に確定領域を伸ばしていくわけだが、地形はプレイするたびにランダムに変化し、またプレイヤーの「信じる/信じない」選択によって、ある程度自由に操作することもできる。
    • そのため、南北アメリカ大陸が地続きになっておらず航行可能だったり、アトランティス大陸があったりといった破天荒な地図ができあがる。ジパング近辺などは、現実通りの形状になる方が稀である。
      • 一応「現実で陸地の箇所は陸地に、海の箇所は海になりやすい」というルールがあるため、普通にプレイしていれば何となく世界地図らしくなる。
  • 非常に多い遺跡・秘宝・アイテム等の発見物。
    • 発見物の設置場所はある程度決まっているが、上記の通り世界地図は毎回形を変えるので、前のプレイで発見した場所が水没している事もある。逆に現実では海だった地域を陸にすると、意外なものが見つかることも。
    • BGMも十数種類が発見物として隠されている。どれもクオリティは高い。
    • イベントや遺物、遺跡等は世界史や博物誌に詳しい人をニヤリとさせるものが多い。
    • 発見物は博物誌に保存して閲覧する事ができる。
  • 特に縛りの無い展開。資金繰り以外に頭を使う必要は無い。
    • 通常この手のゲームは「○○のイベントをこなさないと××から先には進めない」と言うものがあるが、本作にはそれが無い。
    • ゲーム冒頭でポルトガル国王から「インドへ行け」と言われるが、あくまでも目的は「世界地図の完成」で、国王の命令は目安の一つでしかない。
  • 多彩な登場人物。
    • 登場人物といっても王様と秘書のミゲルを除くと提督と海賊2~3人くらいなので、特に深く考える必要はない。
    • 稀有な世界観・時代設定である本作の登場人物には、本作以外に似た人物が見受けられない個性派が揃っている。
  • 提督を効率よく動かしたり、交易路を最適化したりするパズル的要素と、地図を少しずつ確定させていくゲーム性が巧みに噛み合っており、やめ時が見つけづらい。「あと少しだけ」と思いつつ、気づいたら何時間もプレイしていたということもザラである。

問題点

  • ゲームスタート時のロードが長い
    • ロードする内容はオープニングムービーの再生のためであり、タイトルで放置しているとムービーが流れる仕様にするべきだった。
  • イベントはほとんどが短いものであるが、ある程度回数をこなさなければ全て見る事ができないイベントもある。だが数が多い分、継続中のイベントが何だったかわからなくなる事も。
  • 一度慣れてしまえば簡単なシステムが積み重なっているだけなのだが、初見では複雑怪奇に思えてしまい、ややとっつきにくい。
  • 香辛料貿易がお手軽且つぼろ儲け過ぎて、中盤以降資金繰りに頭を使う必要がほとんど無くなる。
    • スパイスは年間生産量が多く価値も高め。故に、適当にスパイス同士の貿易航路をいくつか作り放っておくだけでうなるほど金が入ってくるため、資金の意味が極めて薄くなる*1
  • 戦闘に関する仕様がやや理不尽。
    • まず、怪物や海賊とまともに戦闘が行える提督がたった一人しかいないので、討伐にかなり苦労する*2。世界が広くなるにつれ世界中にうじゃうじゃと湧いて冒険と貿易両方を邪魔してくるので早く討伐したいのだが、いかんせん人手が足りなさ過ぎる。

総評

 稀有な世界観、独特なシステム、世界史や博物史ネタにあふれるイベントや発見物、収集探索要素。それらがプレイするたびに新しい顔を覗かせる。そしてそれに見合ったクオリティのBGMと登場人物達。細部に張り巡らされた演出もまた、本作を彩る特筆すべき要素と言えるだろう。
 爽快感も派手な演出も無い。とにかく地味な作品ではあるが、ゲームとしての完成度は高く、これを名作と言わずして何を名作と言うと問う程の一作である。


Neo ATLAS II

【ねおあとらす つー】

ジャンル シミュレーション
対応機種 プレイステーション
発売元 アートディンク
開発元 フリップフロップ
発売日 1999年9月2日
定価 5,800円(税別)
判定 良作

概要(II)

  • PC-9801やPCEで好評を博したThe ATLASの系譜を踏んだシミュレーション、『Neo ATLAS』の続編。
    • 続編とは言うが、セーブデータコンバート機能がある事と、一部のサブストーリーの流れが続いているくらいで、時間はむしろ最初の時点に戻っているため、機能追加の互換作品と言える。
      • しかし、前作で登場したある提督が「昔は腕のいい提督だった」という設定で引退して酒場を経営していたり、またとある提督が前作のイメージとは真逆の役職に就いていたりと、知っているとニヤリとできる展開はいくつか存在する。
    • 1993年にPC-9801用としてリリースされた『The ATLUS II』とは全くの無関係である。

問題点(II)

  • 前作のデータコンバート機能を使わなければコンプリートできない交易品がある。
  • 前作と比較すると世界観の数が2種類減っている。
    • 特に奇抜だったふたつが消えてしまったので、ネタ的には少々寂しい。
  • イベントはほとんどが短いものであるが、ある程度回数をこなさなければ全て見る事ができないイベントもある。だが数が多い分、継続中のイベントが何だったかわからなくなる事も。
  • 戦闘関連の問題点に改善が見られない。
    • 新要素として、討伐に提督を派遣する際にルーレットで運勢を占うようになったのだがこれがまた面倒な仕様。
    • ルーレットの目は「超ラッキー」から「超アンラッキー」までの9段階に分かれているのだがこの目によって戦闘力そのものが大きく増減する。もちろん良い目を出せば戦闘力は増えるのだが、悪い目だと当然下がる。
    • 最大の問題は、一度出航した提督を途中で呼び戻す事が出来ないという点。つまり、ルーレットで「超アンラッキー」など出した日には、絶対に敗走する事が分かっているのにもかかわらず打つ手が全く無いという訳である。慣れれば一応目押しが出来るのだがそれも確実では無く、超ラッキーを狙ったらスベって超アンラッキー、と言う事も珍しくは無い。
    • うまく良い結果を引ければ格上の難敵を倒せるメリットもあるが、間違いなく勝てる筈の相手に敗走してしまう煩わしさの方がデメリットとして大きい。

評価点(II)

  • UIは向上
    • エピソードガイド、交易所等が追加された。
  • チュートリアルが丁寧になった。
    • やはりシステムのとっつきづらさが前作で指摘されたのか、今回は本編とは別に専用のチュートリアルモードが設けられている。
    • 大変丁寧にシステムを解説してくれる上、飽きてくる頃合いにちょっとしたミニゲームまで設ける親切っぷり。
      • しかもクリアすると本編開始時に初期資金のボーナスがつく。
  • その他、直感的に理解しにくかったり、面倒だった仕様がいくらか改められた。
    • 一例として、船舶の耐久度は前作では「画面左上の太陽が一回転する度に少しずつ回復する」仕様だったが、今作では「修理コマンドを選択し資金を消費して全回復する」ようになった。

総評(II)

総じて全体の印象に変化はなく、マイナーチェンジレベルの続編に留まっている。とはいえ、前作の面白さを損なわずうまくブラッシュアップできている。 前作よりも理解しやすいつくりに仕上がっているので、全くの初見プレイならばIよりこちらがオススメ。


続編

  • PS2で登場した続編『Neo ATLAS III』はロード時間の増加や世界観の減少から評判はあまり宜しくない。
  • 『Neo ATLAS』とともにゲームアーカイブスで配信されており、PS3やPSPで遊ぶ事ができる。
    • 提督が帰還すると長いロードがはさまれるバグのようなものがある。
  • 最新作『Neo ATLAS 1469』は2016年にPSVitaで発売。その後Windows版やSwitch版も発売された。

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最終更新:2020年11月24日 22:55

*1 「史実通りではないか」と言われれば、正しいと言わざるを得ないが……

*2 戦闘自体はどの提督でもできるのだが、「戦闘特化型」とでもいうべきある提督とそれ以外の差があまりに大きすぎてお話にならない。