機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオン独立戦争記

【きどうせんしがんだむ ぎれんのやぼう じおんどくりつせんそうき】

ジャンル 戦略シミュレーション

対応機種 プレイステーション2
発売元 バンダイ
開発元 ベック
発売日 2002年5月2日
攻略指令書:2003年2月20日
定価 7,140円
攻略指令書:3,990円
廉価版 GUNDAM THE BEST(攻略指令書とのセット)
2005年2月17日/3,990円
判定 なし
ポイント 大幅に変更された戦略パート
大幅に増加したマイナーパイロットとメカニック
まさかの戦略戦術大図鑑
貴様が総帥だ!」のキャッチコピーはその通り
ガンダムゲームリンク


概要

  • 良質なガンダムゲーとして名高い『ギレンの野望』シリーズ第3作。
    前作『ジオンの系譜』では第2部としてΖガンダム以降の話が展開されていたが、本作は一年戦争のみに題材を絞り、それを徹底的に掘り下げた構造になっている。従来のギレン以上に『戦略戦術大図鑑』『サンライズ公式百科事典』を始めとした資料集や原作に準拠している。加えて「貴様が総帥だ!」のキャッチコピー通り、総大将から部下まで自由に編成できる「オリジナル編」が登場した。
  • 2003年に発売された追加ディスク『機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオン独立戦争記 攻略指令書』には、これまでのギレンの野望シリーズに収録されたアニメーションムービーや、『ジオン独立戦争記』用のスペシャルデータ17種、追加シナリオ等が収録されている。

前作からの変更点

  • チュートリアルに当たる「序章」の追加。
    • この序章はブリティッシュ作戦やルウム戦役など、一年戦争最初の一週間に起きた「一週間戦争」を扱っており、その設定どおり核バズーカ装備ザクも多数配備されている*1
  • 貴様が総帥だ!」というキャッチコピーが指すように、本作ではゲームに登場する全てのキャラクターや自身の分身であるキャラクターを総大将にして人員もメカニックも好きなように編成できるという『オリジナル編』が導入されている。
    • ただし、編成などにはゲームをクリアする事によって増える「if-point」という要素が不可欠であり、最初から自由という訳ではない。
  • 前作までは1回クリアするか本拠地占領によるゲームオーバーにならないと出現しない難易度選択が初めからできるようになった。
  • 自軍の総大将がやられてもゲームオーバーにはならなくなった。
    • これにより、連邦軍ではレビル、ジオン軍ではギレンを躊躇なく前線へ出すことができるようになった。その高い指揮能力を活かして味方の能力値を上げられる他、様々なキャラクターとの会話も見れるので楽しい。
  • ゲーム内に使われているイベントムービーやオープニング、エンディングは全て新規に作られている。内容的には「系譜」と同じものであっても新規に作られているという気合の入り方。
  • 戦闘シーンはフルポリゴンによる3Dになった。また、夜間戦闘や天候の様子なども描かれている*2

シミュレーション周りの主な変更点

戦略パートの大幅な変更。

  • 部隊の軍団制
    • 12ある軍団に各キャラクターを軍団長にして、そのあとに部隊や人員などを編成するというもの。
    • キャラクターの階級が上がるにつれて編入できる部隊の上限が増える。最大は30部隊まで。
    • キャラクター無しでも部隊は編成できるがその場合、10部隊までしか編成できない。
  • コスト制の導入
    • 前作までに有った「資金」という概念を抽象化し、コマンドごとにコストを消費するという作りになった。
    • これによってコスト配分を開発に限界まで注ぐと、収入がそんなに多くない序盤であっても、ゲーム難度を極端に高くしていない限り、かなりの速度で新兵器が開発でき、通常なら日の目を見ないような機体でも、実用時可能な時期にゲームで活躍させることが出来る。
  • 新コマンド・政策の導入
    • 前作の外交の発展とも言えるコマンドであり、議会工作や世論操作など内政を行えるようになっている。
    • もちろん、前作に有った外交も残っている。ただし今作では政治団体や軍需産業などに3すくみの関係(1つを援助すると残り2つが下がる)が適用されている。また、敵軍需産業への外交は無くなっている。
  • 部下提案の追加。戦闘中や進軍中でない部下キャラクターが様々な提案をしてくるようになった。
    • 提案は、自機の改造や兵器生産といったもののほか、特定の敵兵器の奪取等多岐にわたる。
      • 部下提案は通常コマンドと同じ物であってもコストが-1されている。そのためうまく活用することで低コストで高い効果を上げられるほか、政策では「高コストだがマイナス効果が一切無い」ような提案もある。
      • 後述するが、提案を出してくるか、またどのような提案を出してくるかはキャラクターによってある程度決まっており、オリジナル編では戦略パートに強いキャラを組み込むのも重要になってくる。
      • また、提案はキャラクターの昇進にも関わってくるため、提案を多く採用した場合はそれだけ階級が上がるのが早くなる。
  • 前作では100ターン目で強制終了だったが、今作ではその制限が無くなった。
    • ただし議会で和平勢力が増えると勝手に和平工作を始めてしまい、早急に工作を行って和平工作を打ち切らないと休戦条約が締結されてゲーム終了になってしまう。そしてターン数がかさむほど議会工作が効かなくなり、どんなに頑張っても291ターンで休戦条約が調印されて終戦となる。
  • 前作ではマップが地域ごとにブロック化されており、マップ間移動となっていたが、本作では簡素化され重要拠点ごとのルート移動となった。
    • 1ルートに1部隊しか送れず、その部隊が目的地に着くまでそのルートで新たな部隊を移動させることは出来ない、そのため本作では物量作戦は取りづらくなっている。
    • ルート移動の速度つまり必要なターン数は、すべての機体に割り振られた「戦略移動」というランクによって決まり、その軍団内の最も低い機体に合わせた形になっている。これによって軍団がエリア移動をする際のターン数が決定される。
      • 足の遅い機体をそのまま移動させると非常に時間がかかるようになっており、艦船や輸送機の重要性がさらに向上している。
      • このシステムにより最短でもエリア移動に2ターンはかかる仕様になった。諜報で敵軍を調査すると、敵の軍団の移動を事前に察知できるので、自軍エリアに侵攻してくる敵への対処が容易になった。
    • 各エリアには駐留している軍団の戦力以外にも「防衛部隊」が存在しており、戦略フェイズで防衛力を強化することによって敵の侵攻を防ぎやすくなる。
      • なお、戦術フェイズにおいて戦闘に突入するとこの防衛部隊は敵の侵攻部隊と戦闘することになるが、防衛部隊の操作は不可能であるためCPUが各々の判断で勝手に戦闘を行うことになる。
      • プレイヤーの観点から見た場合、エリアを防衛することに側としては防衛部隊との戦闘で疲弊した敵部隊を撃破するという戦い方により少数の駐留部隊でもエリアを守れるというメリットが存在する一方で、エリア攻略する側となった場合、駐留する敵軍団+防衛部隊の戦力を双方撃破する必然性が生じ、作業ゲーとしての要素が増すことになる。
      • 次作の『アクシズの脅威』以降は後述の通り、システムがほぼ『ジオンの系譜』に準拠するものに回帰したため、この「防衛部隊」の概念は存在しなくなった。
  • 戦闘時に軍団ごとに委任(オート)できる様になった。
    • そのため「重要な主力部隊は手動、囮や拠点制圧程度の役割の軍団はオート」と言うような戦い方が出来るようになった。
  • 系譜までは格闘攻撃回数が残っている機体でも、1機撃墜したらそこで行動を終了していたが、今作では攻撃回数が残ってる限り、1機敵を激破してもまた次の敵を攻撃しに行くようになった。
    • これらの仕様のため、前作ではゲルググに比べて趣味の領域だったギャンシリーズの価値が大幅に上がった。
  • 索敵の仕様変更。前作では成功すると即敵機の正体が完全に判明したが、今作では「索敵成功が成功するとUNKNOWNから不確定名」にかわり、さらに「政略パートで調査が成功」することでようやく詳細が判明するようになった。詳細が判明するまでは命中補正にマイナスがかかる。
    • 不確定名は原作を反映し、例えばドム→「スカートツキ」、ゾック→「ミカケダオシ」、エルメス→「トンガリボウシ」など遊び心満ちた名称となっており、マニアの心をくすぐる物になっている。

機体・キャラクター関連の変更

  • 『MSV(モビルスーツバリエーション)』と『戦略戦術大図鑑』から大量のキャラクターや機体が追加された。
    • 『戦略戦術大図鑑』はギレンの野望を含めた多くのガンダムゲームにその設定が取られているほか『サンライズ公式百科事典』にも多数の記述が組みこまれている本であるが、今作のころには発刊から10年が経過しておりまた発行部数も少なかった(と思われ)、当時としても稀観本となっていた。そのため知る人ぞ知るエースパイロット達の登場は驚きを持って迎えられた。
      • これらによりシン・マツナガとジョニー・ライデンくらいだった非原作・非ゲームのキャラクターが非常に賑やかになり、知名度が上がったキャラクターも多くなっている*3。また何気にMS-Xからもデン・バザークが追加されている。
  • 原作登場キャラでありながら系譜まではオミットされていたキャラクターの追加。
    • マリガンやラバン・カークス等原作で登場しながらオミットされていたマイナーキャラもかなりの数が登場しており、上記のMSVや図鑑組の参戦も加わったことで、キャラ数が爆発的に増えている*4
      • もっとも、原作では1話程度しか登場しておらず台詞もほとんど無かったアントニオ・カラスやラコック、コリニーのようなマイナーなキャラクターが追加される一方で、原作では複数回登場し台詞もそれなりにあったステファン・ヘボンなどは省かれており、追加されるキャラクターの選定の基準に関しても疑問符が残るものになっている。
  • 一方、SS版で隠し機体として登場していたフルバーニアンやリゲルグ、系譜で登場したジム・カスタム等の一年戦争後に開発された機体は一切登場しない。一方で一年戦争中に開発された設定のヴァル・ヴァロや、ザクIIF2はちゃんと登場する。ΖΖに登場したドワッジもしっかり登場している*5
  • パイロットは一年戦争に従軍経験の無いコウとキース(他の0083登場人物は全員一年戦争に従軍)が半隠しキャラではあるが登場するほか、カミーユ、シロッコ、フォウ、ハマーンといったΖガンダムの登場人物がオリジナル編限定の隠しキャラとして登場する(ほかに隠しキャラとしてテム・レイが登場)。
    • 加えてブルーディスティニーとユウやレイヤーといった、アクションゲームから参戦していたキャラや機体についても参戦していない。ギレンの野望オリジナルのゼロ・ムラサメも今回はオミットされた。
    • いわば「原作と公式百科に存在しない機体、人物は登場させない」という方針*6。ただし小説版ガンダムから参戦していたクスコ・アルとシャア専用リックドムは引き続き参戦しているほか、ギレンオリジナル機体の赤いガンダム*7も引き続き参戦する。
      • 加えて、時期物だった『ガンダム・ザ・ライド』からジャックとアダム、フジ級*8が出演していたりするため、この方針も微妙に怪しいところとなっている。
    • 以上のほか、今作のオリジナル機体として高機動型ガンダム・高機動型ジオングが登場している。
  • キャラクターの新パラメータ『忠誠』・『策略』『内政』『外交』の追加。
    • 『忠誠』は文字通り、各キャラの総大将への忠誠度である。前作では第三勢力の登場はフラグで管理されていたが*9、今作ではこの値が低いとシナリオ終盤で反乱がおきる形になっている。
      • オリジナル編ではさらに重要で、低いと時期に構わず反乱を起こす可能性がある上、階級が低い人物は自軍から離反する可能性がある。政策などで積極的に意見を取り入れたり休暇を与えたりするなどで下げさせない事。
    • 『策略』は戦術パートでの策略ポイントにかかわり、これが高いと戦術パート開始時に多くのポイントを使うことができ、強力な策略や複数の策略を使用できる。
    • 『内政』『外交』はマスクパラメーターであり、ほかのパラメーターのようにランクによって上下しない。高いほど政策提案率が高くなる。
      • 特に『策略』の効果は非常に大きく、上記の軍団の仕様もあって前作まで有害キャラの代表格であったゴップやワイアットなどに活躍の場が与えられるなど、死にキャラは大きく減少している*10
  • 前作に比べてキャラの傾向もかなり細分化されている。
    • 委任時にとる戦術、部下提案の傾向、政策の傾向まで細かく決まっている。
      • たとえば政策傾向が穏健の場合「高コストだがローリスク(あるいはノーリスク)」の政策を提案し、強硬の場合は「低コストだがハイリスク」の政策を提案し、臨機の場合は両方を提案するという具合。
    • キャラの相性も細分化された。前作では「友好キャラか否か」という0か1かであったが、今作では0-7の多段階になっており、数値が高いほど相性が高い。
      • 前作では隣接したりスタックを組むと士気が上がるだけであったが、今作では軍団編入*11や初期忠誠値にも影響を与えるため重要度が増している。
      • 相性も含め、これら傾向の多くはマスクパラメーターであり、ゲーム内では確認できない。
    • ユニット適正も細分化され、前作ではキャラクターごとに乗れる・乗れないユニットが設定されていたが本作では全てのユニットに乗れる代わりにキャラごとに適性が設定された。
      • A、B、C、Dの四段階となっている。当然、適性が低いとそのキャラクターが上手く実力を発揮できない。
  • 前作から引き続きの登場キャラについてもパラメーターに調整が入っている。ワイアットにそれなりの魅力が割り振られたり等前作の死にキャラが全体的に底上げされているが、シャア*12やララァ*13といった主要キャラについても、大幅な調整が入っている。
    • 前作の系譜がキャラゲーとしての印象重視の調整であったのに比べ、本作では原作での活躍や公式百科事典での見解に準拠した形になっている。
  • ユニットの改良の追加、ステルス性・戦略移動の追加
    • 開発したユニットを生産する際に火力・物資・運動・装甲を強化する事が出来る。
      • ただし、火力を強化すると物資の消費が増えるなど一長一短になる側面もある。また、生産コストにも補正が入る。
    • パイロットが搭乗しているときに限り、部下提案で搭乗してるユニットを改造する事も出来る。
    • ステルス性は索敵されやすさに影響する。戦略移動は前述。
  • 機体周りは前作と大きな変更はないものの、武装変更(マシンガンとバズーカ等)が多数追加されている。このほか、ヘビーガンダムが従来の系譜のビームライフルに変わりフレームランチャーになっている等、より設定重視になっている。
    • また、前作では「射撃終了後に追加攻撃」という形だったサイコミュ兵器が、今作ではマップ兵器になっている。このためかなり使いにくくなった。
  • キャラクター同様、ユニットも原作や公式百科準拠に調整が行われている。たとえばド・ダイについて、今作では「MSを搭載できないGA型」が先に開発され次いで「MS搭載可能なYS型」が開発されるという細かい仕様を取っている(『戦略戦術大図鑑』『サンライズ公式百科事典』に準拠した形)。
  • オリジナルのギャンが多数追加された。
    • と、いうのもジオンでプレイしていた場合、ゲルググとギャンで次期量産機の座を争うことになる際、ギャンを選んでも同等のMSラインナップとなるように、ゲルググと同じ分のバリエーションが追加されたため。ある意味特別扱い。

シナリオ関連の変更点

  • シナリオチャートやイベント進行が、より原作や公式百科に近い形に変更されている。
    • 連邦編での地上進軍ルートは系譜では「(マドラスは自軍領)ペキン-ハワイ-キャリフォルニア・ニューヤーク-オデッサ-キリマンジャロ」であるが、今作では「マドラス・ハワイ-ペキン-ニューヤーク-オデッサ-キリマンジャロ-キャリフォルニア」という形になっている。
      • キャリフォルニアベースは設定ではジオン最後の地上拠点の一つとなっており、公式百科事典で採用された戦争の経過にほぼ準拠している。ジオン編も同様の変更が行われている。
    • イベントでの戦死者もより原作準拠になった。ソーラ・システムを放出した場合ビグザム出現でティアンムの戦死が確定したり、0080関連のイベントでは、最終局面まで進めた場合生き残る可能性があるのはバーニィだけである。
    • 連邦、ジオンでのifルートも変更、整理されている。
      • 具体的には「ドズルのサイド7調査の要請にNOを選ぶと本当にそのまま話が進み、シャアをサイド7に送らなくて済む」「忠誠度次第でエルランが裏切らない」「黒い三連星にドワッジを送ってWB隊を倒すことが出来る」「サイド6との裏取引でアレックスを入手できる*14」等。
    • 脅威以降、一年戦争のイベントが系譜がベースの物に戻ったため、殆どのイベントが本作独自の仕様である。

賛否両論点

  • 戦闘シーンが3Dモデル化された一方で目立つ棒立ちっぷり。
    • 戦闘シーンの3Dモデル自体は良好な出来。戦艦やMAは画面一杯に表示されるため、戦艦同士の撃ち合いや、ビグロ・ザクレロ・ヴァルヴァロが戦艦に格闘を仕掛けてヒットした時等は中々見ごたえがある。3Dだからか射撃時にはカメラアングルも常に動いている。MSも撃ち合い中に耐久が0になると爆発せずに煙を吹いて倒れる事がある、等演出自体は細かい。
      • ただし、結局はその場に立って撃ち合うだけであり、「戦闘シーンが3D化していても、やってる事は2D時代と同じであまり意味が無い」という意見も。加えて格闘攻撃については、スムーズに描写するためか格闘攻撃を回避した機体がわざわざ元の位置に戻るという謎の行動を取る。
      • なお、黒い三連星をスタックさせて例の台詞を言わせても、戦闘シーンでは通常の戦闘で行うなど、キャラクター独自の動きがある行動はしない。
    • 『アクシズの脅威』以降は戦闘シーンのグラフィックが3Dから再び2Dに戻ったため、作品としての評価はともかく戦闘シーンに関しては本作がシリーズ最高峰と評価するユーザーも居る。
    • 一方でモデル自体の出来がいいのが災いして棒立ちやぎこちない動きをかえって目立たせてしまっていることから、大きな問題点として否定的なユーザーも多い。
  • 「狭く深く」のマニア向け原作重視路線。
    • SS版から系譜は「広く浅く」世界観を広げて行く形であったが、今作は前述のとおり一年戦争オンリーに絞り、それを徹底的に掘り下げるという「狭く深く」ゲームを構築している。その掘り下げ方の多くがマニアからすれば「納得」いくものであり、原作愛溢れる作り込みは大したもの。
    • 機体についても、前述のヘビーガンダム・フレームランチャー装備のほか、フルアーマーガンダムの中身がちゃんと緑色*15だったり、隙の無い設定準拠となっている。
      • 今作の設定準拠は本当に徹底しているため、『アクシズの脅威』でこれらの作り込みが破棄されて系譜に戻ってしまった際には「手抜きだ」という声が上がることになった。
      • 一方で前述したド・ダイのように「ゲームとしてみれば全く不要の掘り下げ」もある*16。加えて、知名度もなじみも深いゲーム出典キャラやプロト・ゼロを切ってまでの『戦略戦術大図鑑』やMSVからの大量参入には戸惑いの声は多く、「オタクの自己満足」に陥っている感も否めない。
    • 発売時にはギレンの野望ファンの多くは一年戦争のみの「狭く深く」路線を受け入れられず、ガッカリする人は多かった。
      • 前述したとおりカミーユなどのキャラクターはあくまで隠し扱いのゲスト参戦であり、Ζの世界観を再現したものではなく、会話も一年戦争準拠になっている*17
    • MSの性能設定でも、これまでのギレンの野望に比べ全体的にかなり原作の設定に準拠されている。特に前作で量産機扱いであったゲルググJは本作では高性能機扱いとなっており、このゲームを境にゲーム作品での扱いが大きく変わった点は特筆すべきだ。
  • より細かくなったキャラクター要素。登場人物の増補やパラメーターの新設、相性の細分化は前述のとおりであるが、それらの調整もかなり丁寧に行われている。加えてオリジナル編に備えて相当量の会話が新規収録されている。
    • 会話については聞く条件が相当厳しい物もあり、特に08小隊のシローvsアイナはかなり複雑*18。このほか、オリジナル編でのみ聞ける呉越同舟的な会話(たとえばレビル+ギレン)や、同士討ち(ガトーvsデラーズ)も細かく設定されている。
      • これらはおおむね原作ファンにも受け入れられるものではあるものの、やりすぎ感が出ている物もちらほらある*19。加えて思想的に複雑なジャミトフについては二言目にはスペースノイドを連呼しており、地球至上主義者の色が濃くなってしまっている*20
    • 相性についても細かく設定されている。嫌われキャラや全員に割と好かれているキャラなど、単純にシステムが細かいだけではなく、それぞれのキャラが原作や設定に照らし合わせてちゃんと割り振られている。
      • 「連邦系ほぼ全員と相性が良いが、ハヤトからだけは嫌われているテム・レイ*21」「ヤザンとシロッコはちゃんと仲がいい」など、原作や設定にかなり精通した人物が振ったと思われる。
      • 一方で「ドズル・ザビやケリィ・レズナーと仲が良いテリー・サンダースJr」というネタじみたものもある。サンダースとケリィは共に玄田哲章氏が演じており、そして同氏は劇場版IIIでドズルを演じているのである。
  • 全般的なことではあるのだが、系譜から変わった点全てに対して賛否が分かれている。戦術パートよりも戦略パートの方に多く時間を割くようになるなど、戦略パートの大幅な変更により戸惑ったユーザーも多い。
    • 大幅な路線変更があったゲームでは大体見られる現象ではあるが、「変更後の方が絶対的によい」と言える物がほとんどない(優劣はつけられないが…)こともあって、今作では批判的な意見もかなり多かった。

問題点

  • 「序章編」でほとんどのコマンドが実行不可のため、チュートリアルとしての効果が薄い。自分の考えでコマンドを選択して結果を観察し、流れをつかむことができない構造になっている。
    • 前述のとおり一週間戦争を題材にしておりその再現としては大したものなのだが、やはりここでも「オタクの自己満足」に陥ってる感は強い。
  • 軍団制の導入により、CPUはまとまった戦力が揃わない限りプレイヤーの領土に侵攻してこなくなった。「ベリーハード」であっても、プレイヤーがちゃんと防衛ユニットを配備していれば、重要拠点に攻められる事はほとんど無い。戦略フェイズでじっくりと戦力や内政を整えてプレイが出来る。但しそれ以上の高難度となると敵の数が異常な速さで増えるため、ガンガン攻められる事に。
    • 前作でも「敵の配置が薄く広くなって数さえそろえておけば全然攻め込んでこない」という状況はあったものの、今作ではさらに悪化している。
    • デメリットとして、敵エリアに攻め込むときは「1つのルートに付き1軍団」しか送れないルールの為、敵の数が凄まじい勢いで増える高難度でプレイしていた場合、侵攻できるルートが少ないエリアを侵攻する際、先発隊の壊滅や大ダメージを想定した波状攻撃を強いられる展開が起きる事も。
  • 資金を各コマンドごとに予算として割り振り、繰越ができない仕様のため、資金に無駄が出やすい。
    • 兵器生産にもコストがかかるため1ターンで作れる量には制限があり、予算を貯めておいてまとめて作ることもできない。
    • そして予算割り振りにも政策コスト(当然資金である)を消費する。
    • もっとも、実際の政治でも同様の問題はついて回るため、これ自体がリアリティであるという見方もできる。兵器生産については部下提案で多くの量産機はコスト1に抑えられるため、そこまで気にはならない。ただし系譜に比べればある程度計画的な生産を求められる。
  • 尉官クラスですらない一兵卒が自軍の生産計画に平気で口出しをしてくる。当然、意見を無視すれば忠誠度が低下する。
    • 委任せず直接指示を出すと忠誠が下がるという、シミュレーションゲームとしてはかなりアレな仕様も気になるところ。
  • ユニットを改造しても結局新兵器の方が役に立つ事が多いため、焼け石に水。
    • とはいえ、量産しすぎると反対意見が出てくる。多少型落ちの機体でも改造すれば使えなくはない。
    • 続編『アクシズの脅威』からはユニットを別のユニットに改造(変換)するという方式に変更となった。
  • 前作で驚異的な強さを誇ったエルメスのビットなどがマップ兵器になり実質弱体化。
    • ビグザムに至っては全ての武器がマップ兵器となったため、余計に扱いづらくなった。
  • ユニットにバランスの変更によって最初にMSを所有しているジオンのアドバンテージがかなり薄くなってしまっている*22。ガンダムの運動性・耐久も過去作に比べて下がっているため、有能なパイロットを乗せても集中砲火であっさり落ちるゲームバランスになった。SS版、系譜版共に「一気に戦局を覆す秘蔵の兵器」のような能力だったため、この仕様変更にかなりのユーザーが驚愕した。
    • ただしSS版とは違い完全な生産制限*23があるわけではなく、ペナルティ覚悟でやろうと思えばいくらでも生産できる。むしろ系譜のように高めのコストと期間以外のペナルティが皆無でパイロットを載せておけば下手に量産機を大量配備するよりも圧倒的に高い戦果を出すほうがおかしいのである意味妥当な調整ではある*24
    • ただ、攻撃力まで下がっているわけではなく、格闘戦の仕様の変更により、優秀なパイロットを組み合わせると、1機で2・3体の敵を切り刻むため殲滅力は高く、存在意義はちゃんとある。格闘値の高いパイロットの乗ったガンダムやギャンの3機スタックによる格闘はもはやいじめに近い構図になり、敵が全滅するまでサーベルを振っている事もザラ。策略で敵の命中率を落とすと射撃戦闘での生存率が上がり、格闘戦に持ち込みやすくなる。
  • 最終開発ユニットである高機動型ガンダム・高機動型ジオングが宇宙戦用(専用)。
    • 敵軍本拠地が宇宙である場合、あまり問題にはならないが、地上の場合無用の長物と化す。
    • ちなみにジオン軍プレイの場合、敵軍(連邦軍)本拠地は南米・ジャブローである……
  • 最大の特徴である『オリジナル編』が結局どの編成でやっても、やる事自体は同じ。さらに明らかに調整不足といえるレベルでバランスが非常に悪い。
    • キャラごとに独自のエンディングが用意されているのでそれを見る価値はある。特に赤鼻は必見。
      • もっとも、1周にかかる時間を考えると、1分程度のエンディングのために何周もするのはキツい。
      • オリジナル編のシナリオ自体も一年戦争準拠なので、敵味方に出てくるキャラクター・兵器も当然一年戦争期ばかりとなる。既にジオン連邦編を一度クリアしている者にとってはやりこみ要素は薄い。
    • 敵もプレイヤーも技術力1から開始するフリーモードでは、本来作る必要が無いとされるような趣味ユニットを生産する余裕すら生まれる。イベントの縛りも無いため、主にジオンモードではその自由な開発街道を楽しめる。(但し何故かゲルググとギャンの選択は相変わらず)
  • IFレベルとIFポイントのシステムに大いに問題がある。
    • IFレベルは本編クリアとクリアした難易度、キャラとメカニックとムービー図鑑の登録数、そしてオリジナル編のクリアキャラ数で算出される。
    • 最大レベルは369なのだが、クリア難易度(最高難易度のINFINITYクリアで100)とクリアキャラ数(1キャラにつき1で最大144)の2項目で369のうち244とその大半を占める(ほかジオン編クリアと連邦編クリアでそれぞれ10、図鑑で105)。特に難易度はNORMALクリアでは たったの20 である。クリアキャラ数はオリジナル編を片っ端からクリアしていくしか無く、膨大な時間がかかる。
      • NORMALで本編を両方クリアした場合ではIFレベルは100程度となるため、その状態ではIFポイントは30000くらい。
    • 仮にIFポイント30000でどの程度の事が出来るかというと、本拠地でまず2000弱取られるため残り28000。しかしキャラクターは中堅パイロットでも1500前後、シャアクラスとなると 5000を超える 。しかもゲームシステムの都合上、高い階級の人物がいないと 10部隊の弱小軍団だらけになってしまう 。高い階級と高い能力をもつ人物は多くが3000P越えで、組みこむのはかなり厳しい。
      • スムーズなゲーム進行を考えると軍団長は最低5人以上必要で、30000P程度でまともな軍を組もうとすると 原作で嫌われた高官と数合わせの無能たち という組み合わせになってしまう。一応少数精鋭もできないことはないが、そうなるとゲーム進行に多大な支障が出る。大軍を率いることができ外交上手なのにポイントが低いゴップは オリジナル編の円滑な進行には半ば必須である *25
    • そのような状態でひたすらクリアし続けて最大レベルになったとして、そのIFポイントはというとたったの83800。夢のエースパイロット軍団どころか、 中堅パイロットとそれなりの指揮官が揃ったまともな軍団がやっと組める というレベル。
      • さすがに開発側もこのあたりはわかっていたらしく、「攻略指令書」では大幅にIFポイントを増やしたデータを作れるエディターが入っており、やっと 自由に 軍団が組めるようになった。
  • 余談ながら、価格の方も定価で7000円前後であり攻略指令書と合わせても決して安い買い物ではない。
    • 後に『GUNDAM THE BEST』シリーズで、攻略指令書とセットの廉価版が発売されている。

総評

一年戦争を「狭く深く」掘り下げた作品であるとされるが、IF部分はほぼオリジナル編に丸投げしていて手抜き感は否めない。単独のゲームとしてみた場合、変更されたシステムや改良点については決して悪いものではないが、ゲーム全体としてはバランスに欠けていて、とりあえずいろいろな新システムを取り入れてみただけではないか、という意見もある。前出のオリジナル編の手抜きさは擁護できない代物もあり、その擁護できない代物がこのゲームのウリとされたこともあって批判が続出する結果となった。
不完全な「狭く深く」路線は多くのユーザーには受け入れられず、従来のシステムになじんだユーザーの多くは戦略パートに不満を感じた。結果、次回作『アクシズの脅威』以降は前作『ジオンの系譜』とほぼ同様のシステムとなり、再び「広く浅く」路線に戻っている。
なお、『MSV』『戦略戦術大図鑑』からの出典が多く資料ソフトとしての価値はかなり高くなっている。加えて攻略指令書は『ギレンの野望』の資料ソフトとしても価値が高い。

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最終更新:2020年05月17日 03:19

*1 この機体は本編でも使用できるが、使えるようになるのはジオン編のルナツー攻略作戦で南極条約が破棄されてからで、かなり後半。

*2 『アクシズの脅威』ではシステムとして夜戦が採用されているが、今作ではアニメーション上の違いのみ。

*3 極めて細かいことではあるのだが、MSVと大図鑑はあくまで別系統のものであり、作られた時期も異なる(後発の大図鑑にも登場するMSVキャラは複数いるが)。前者の代表がマツナガやライデン、後者の代表がブレニフ・オグスである。

*4 その後『アクシズの脅威』でもマイナーキャラが残留したため、結果的にジオンのキャラ数が爆発的に増えてしまった。

*5 なお、系譜に登場していたRGM-79C ジム改は登場しない。これは0083当時の設定では「戦後開発の機体」という設定であり、今作が発売された当時もそうであったため。ジム改は『機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- 』(2006年)のア・バオア・クー戦で登場したため設定が変更されて一年戦争中の機体ということになった。

*6 厳密にいえばブルーディスティニーは公式百科に掲載されていたりするが…。

*7 系譜ではキャスバル専用ガンダムだったが、今作ではシャアが仮面を脱がない都合上、シャア専用ガンダムとして登場。

*8 ビンソン計画のサラミス後期型は、系譜では通常版と同じグラだったものが『ガンダム・ザ・ライド』のフジ級に差し替えられている。設定におけるビンソン計画のサラミス後期型は「上甲板の砲を取っ払ってそこにMSを係留できるようにしたもの」であり、フジ級のような本格的なMSデッキは持たない。そのためむしろ設定から離れてしまった。

*9 ただしフラグ管理されていたのはジオン編第1部の新生・正統両ジオンと、第2部のそれらに加えてネオジオンくらい。

*10 そして内政のなくなった次回作では彼らは再び死にキャラと化してしまうのであった・・・

*11 仲の悪い人物が軍団長の軍団に入れようとすると嫌がる他、逆に仲の良い人物の軍団から引き抜こうしても嫌がる。

*12 系譜では「射撃のアムロ、格闘のシャア」と対になるような能力だったが、今作では「戦闘面ではアムロに全敗(格闘と耐久はなんとか同等)だが政治面で圧勝」という具合

*13 系譜では射撃反応が最大19とシャアを完全に食ってしまうような能力だったが、今作ではどちらも最大13で格闘と耐久に至っては一ケタと、優秀ではあるものの突出しているほどではない。

*14 初代では諜報能力次第で成否が決まり、全員生存でアレックスも開発可能か全員死亡して連邦がアレックスの生産開始の二択だったが、今作では途中まで原作通りの展開で進みバーニィがアレックスに戦いを挑む直前にキリングを逮捕した場合にはバーニィが生還、さらにサイド6との友好度がかなり高い場合に限り連邦軍を取り押さえてアレックスを送ってくれる

*15 系譜では普通のガンダムが入っているだけだった。

*16 GA型もYS型も見た目、性能上の違いがほとんどなく、むしろ「合体できるド・ダイ」と「合体できないド・ダイ」が混在することで、煩雑さのみが増している。

*17 ただしさすがにカミーユたちのキャラはマイナス8歳ではなくΖガンダムに準拠している。

*18 シローでアイナに戦闘勝利(原作での宇宙空間戦)を起こしてフラグが経って初めて、シローvsアイナ戦闘前会話、シロー勝利会話、アイナ勝利会話、さらにはシローvsギニアス戦闘前会話が起きるという具合。

*19 ガイア+リド・ウォルフの、ガイアがウォルフを三連星にスカウトするものや、アムロ+カミーユ等

*20 Ζガンダム劇中においても彼自身がその手の差別発言をしたことは一度も無く、「スペースノイド弾圧は彼の政治的目標(地球経済を崩壊させて宇宙中心経済へ移行することによる地球環境改善)達成のための方便にすぎなかったのでは?」という見方さえある。もっとも、彼が凝り固まった地球至上主義者として描かれるのはこの作品に限ったことでもない。さらに言えばこのゲームが強く参考にしたとみられる『サンライズ公式百科事典』がジャミトフを単独で立項せずに「アースノイドによるエレズム(地球聖域思想)と、スペースノイドへの恐怖」を強く打ちだした記述をした上、ジャミトフの思想解説を中途半端な記述のみで済ませてしまったことが原因と言え、ゲーム製作側の責任というのは酷である。

*21 ハヤトはサイド7に軍事施設を建設する際に強制立ち退きを食らったという経緯から、軍関係者に反感を持っている。

*22 さすがに後年の新ギレンのように「通常兵器にザクがぼこぼこにされる」というようなことはないが…。

*23 今作では一部の強力なユニットを規定数以上生産しようとすると反対意見が続出し忠誠度が下降しやすくなるというペナルティがある。

*24 原作でも1機のモビルスーツの性能で戦況が変化するわけではないという事が言われている。

*25 ほとんどのキャラと相性が悪いため、敵軍の総大将にしても優秀という…。