メタルギアソリッドV ファントムペイン

【めたるぎあそりっどふぁいぶ ふぁんとむぺいん】

ジャンル タクティカル・エスピオナージ・オペレーション



対応機種 プレイステーション4
プレイステーション3
Xbox One
Xbox 360*1
Windows Vista/7/8*2
開発元 コナミデジタルエンタテインメント
小島プロダクション
発売元 コナミデジタルエンタテインメント
発売日 2015年9月2日
定価 通常版:8,400円(税別)
SPECIAL EDITION:9,980円(税別)
PREMIUM PACKAGE*3:29,800円
THE PHANTOM PAIN EDITION*4:49,980円
完全版 【PS4/One/Win*5】2016年11月10日/3,980円(税抜)
プレイ人数 1人
FOB:最大2人
MGO:最大16人(旧世代機は最大12人)
レーティング CERO:D(17才以上対象)
備考 海外版にも日本語インターフェイスが収録
判定 なし
ポイント 初代『MG』に繋がるシリーズ完結作のはずだった
オープンワールドのマップで自由潜入
グラフィックやゲームシステムの完成度は非常に高い
脱ムービーゲーなるも今度は描写不足
開発に纏わるゴタゴタとシナリオ未完成疑惑
メタルギアシリーズ



悪に堕ちる。復讐の為に。



概要

序章『メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ』(GZ)から1年を経て発売された、『MGSV』の本編。
ストーリーへの期待、前作より遥かに広大なオープンワールド、それに伴う自由潜入(プレイヤー自身が潜入方法を決める自由度)。
加えて『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』以来の『メタルギアオンライン(MGO)』同時収録など、様々な点からファンのみならず新規ユーザーからも期待が寄せられていた。
特に今作はシリーズの始祖である『メタルギア』へのミッシングリンクを埋める物語として注目されていたことも、期待を高める後押しとなった。

だが制作を担当していたコジマプロダクションが本作の発売前に突如解散するという事態が発生。
これに加え、今作と並行して製作されていた新作ホラーゲーム『SIlent Hills』の企画も頓挫。
コナミとコジマプロダクションの確執・軋轢に関する不穏な噂が飛び交い、それらによる不安を拭いきれないまま本作は発売を迎えることとなる。
そして販売本数は600万本と大きなものになり、国内外でも数々の賞を受賞した。
しかし、本作を取り巻く環境や唐突感のあるラストの展開などから、ファンの間では未完成疑惑が囁かれることに。


ストーリー

9年前、男は惨劇を生き延びた。
重傷を負い、左手を失い、仲間も、家も失った男の頭には、あの惨劇の生々しさを語る破片が突き刺さっている。
何事もなかったかのように穏やかに見える病院のベッドの上で、男は失った左手の幻肢痛(ファントムペイン)と、昏睡していた9年という時間に苦しんだ。

やがて男はさらなる悪夢に遭う。

惨劇から惨劇へ、それでも生き延びて銃を握る男の頭には、破片が"伸びている"。
それはまるで鬼の角のよう。復讐の念を帯びて、Vが目覚めた《V has come to》。


特徴(『GZ』からの変更及び追加点)

基本システムは前作を参照
マップ広大化

  • 前作『GZ』は「広大な拠点」という枠組みの中での潜入ミッションだったが、今作では一つの広大なマップの中にいくつもの拠点が点在している。
  • 主に舞台となるオープンワールドマップはアフガニスタンの果てしない荒野と、サバンナの広がるアフリカの大地(アンゴラ、ザイールの国境付近)の2つ。他のロケーションはキプロスの病院、マザーベースとなる。
  • 移動手段はプレイヤー次第。愛馬で駆けるも良し、敵の車輌を奪うのも良し、支援班に車を要請しても良し、自分の足で走っても良し。
  • 時間の流れが存在しているうえ、天候の変化もあるため、その都度潜入に影響が出る。
    • 夜になれば明かりを灯し、雨が降れば敵兵士が屋根のある場所へ移動するなど。
  • ミッション中は指定された範囲でしか行動できないが、ミッション外では自由に行動ができる。
    • ミッションの始め方は一部ミッションを除き「空中指令室(ヘリ内)から受注」または「ミッションの地域にいる状態で端末から受注した後に特定の位置に移動」することで開始できる。
      • また、サイドオプスはマップ探索中に発生地点へ移動する事で自動的に開始される。
  • 海外ドラマ仕立てなのか、ミッションでは毎回オープニングとエンディングに短いスタッフロールが挿入される。エンディングはスキップ可能。
    • スタッフロールには、その章を担当したゲーム製作スタッフだけではなく、登場するマザーベーススタッフや出現する敵対勢力・兵器などの「登場キャラクター」も含まれる。
  • また『GZ』のほか、後述のように前々作『メタルギアソリッド ピースウォーカー』のシステムも改良して使われている。
    • 「英雄度」と呼ばれるプレイヤーの英雄的名声を示す数値があり、行動によって上下する。高いほど、例えば「名声を慕って強力な部下が配下に加わってくる」と言った様々なメリットがある。

出撃準備

  • 『MGS:PW』同様、出撃前に持っていく装備を選ぶシステムが採用されている。
    • 装備セット(ロードアウト)は3つ作ることができ、例えば潜入用・戦闘用・FOB用など用途別に使い分けることができる。
  • 『GZ』から引き続き、プレイヤーが持ち込める武器数は3箇所に対応する3種の武器だけ。ほかにそれぞれ最大8種の投擲/設置武器と携行品を持てる。
    • 例えばアサルトライフル及びショットガンは腰に携帯するが、左右腰に2つ持てるわけではなく、どちらか一方だけ。ミッションに応じて取捨選択する必要がある。
  • また、潜入に協力してくれるバディ(相棒)も1つだけ同行させることができる。
    • バディは狙撃・偵察といった屋外対人で力を発揮するクワイエット、広い範囲の敵や兵器・生物を仮マーキングできる潜入特化のD-Dog、移動手段として優秀なD-Horse、高コストな代わりに目的に合わせた多彩なカスタマイズができるD-Walkerがいる。
  • 今作では出撃時などに装備を補給する際、それに応じてコストが必要になった。
    • このコストは主に「GMP」と呼ばれる資金で支払われるが、これは装備開発で使用するものと共通しており、コストが足りなければ出撃時に持っていくことはできない。当然ながら強力な装備ほどコストもそれなりに高いため、無駄に散策するわけには行かない。
      • またゲームが進むと開発できる装備には、開発だけでなく持っていく時にもGMP以外の資源を消費するものがある。例えば高グレード麻酔銃を使うには薬効植物、火炎瓶を使うには燃料資源が必要など。

カスタマイズ

  • 今作では『MGS4』同様装備のカスタマイズが可能(バディの装備も含む)。
    • 武器職人を確保すれば、開発してきた銃器のパーツを利用したカスタム銃を設計できるように。マガジンを大容量のものに変えたり、ロングバレル化して射程を伸ばすなどといった改造を行える。
    • ビジュアル面のカスタムは、武器のほかに車両やヘリコプターなども可能。

マザーベース管理

  • 『MGS:PW』同様、プレイヤー率いる部隊と拠点「マザーベース」の管理を行える。
  • 部隊は戦闘班、警備班、研究開発班、拠点開発班、支援班、諜報班、医療班と分かれており、それぞれ役割が異なる。
    • 戦闘班は傭兵として資金調達をする。スネークの代わりにプレイヤーキャラとして出撃することも可能。
    • 警備班はFOB(後述)の警備を行う。
    • 研究開発班は武器や装備を開発する班。1984年という時代相応のものから逸脱したものまで開発可能。
    • 拠点開発班は資源の採掘・加工、マザーベースの増築を行う。
    • 支援班はフルトン回収*6、作戦地域への物資補給や火力支援、現地語の通訳を行う。
    • 今作のスネークは頭に破片が突き刺さっているせいで言語障害を起こしており、現地作戦地域に対応する通訳スキルを持ったメンバーが必要である。
    • 諜報班は作戦地域における敵の位置や目的地、情報収集などを行う班。敵位置を特定してくれる心強いもので、レベルが高くなるほど精度と更新頻度が上がる。
    • 医療班は負傷及び心的外傷性ストレス障害を抱えてしまった隊員を看る班で、レベルが高いほど早く完治するようになる。また、負傷した兵士の回収成功率も上がる。
  • 隊員は『MGS:PW』同様フルトン回収と志願兵を募ることで増やしていく。
  • 隊員にはそれぞれ得意不得意の班が設定されており、EからS++までのランクで判別できる。
    • ただしオフラインプレイではS+以上の兵士は見つからず、オンラインプレイが必須となってくる。
  • その分野のランクが高い隊員を多く集めれば、より強力な班となる。

FOB(Forward Operating Base)

  • 非対称型のオンライン対戦要素。
  • プレイヤーはマザーベースの他に前線基地(FOB)を建設できる。このFOBを舞台に、他プレイヤーと兵士や資源を奪い合う。
    • 侵入者は甲板の最深部に辿りつくことで成功報酬を入手でき、さらに相手の隊員を何人か奪うことができる。
    • 防衛者は侵入者を排除するか、制限時間まで守り切ることが目標。
  • 防衛者は基本的には侵入されていることが発覚しない限り防衛出撃はできない。
    • 核兵器を所有していると、一定数値以下の英雄度のプレイヤーには侵入されず、高い英雄度を持つプレイヤーに侵入されても即時防衛出撃可能になる。
      • しかし、慣れたプレイヤーなら防衛者が来る前に核を奪うことも可能なため過信は出来ない。サーバー上の核を全廃棄することで見れるイベントの存在が明かされて以降、核の争奪戦はますます激化している。
  • 甲板に警備班の兵士が巡回している他、地雷や監視カメラなどといった警備装置も配備することができる。侵入側はそれらを掻い潜らなければならない。
    • 本編のアフガンやアフリカとは違う閉鎖空間を舞台にしているうえ、アラートになると相手プレイヤーが防衛に来る恐れがあるため、一度敵に見つかると本編以上に立て直しの利かない不利状況に陥る。より慎重に、より大胆に行動することが要求される。
    • 防御力の高いバトルドレスを着て特攻することもできるが、原則リトライは不可なので、むやみに突っ込むわけにも行かない。出来る限り未然に距離を詰める必要がある。
  • FOBの建設はストーリー上強制で班レベルを上げていくにも必要不可欠だが、自分から侵入しなければランクが上がらず、侵入されることもまずない。逆に、何度もFOBで戦ってランクが上がるほど他のプレイヤーから狙われやすくなる。
    • 課金要素である「損害補償」を使えば、FOBによる被害をなかったことにできる。
    • また、どうしてもFOBを建設したくない場合はオフラインにすることで回避できる*7
    • 高グレード装備や追加装備の一部はFOB使用を念頭に置いた性能であることも多く、またオンラインイベントとして他プレイヤーの関わらないイベントFOBも登場している。本作のエンドコンテンツの一つと言える。

メタルギアオンライン3

MGS4』に同時収録もされていた『メタルギアオンライン2(MGO2)』以来の続編。
進化したグラフィックに加え、新たなカスタマイズ要素およびシステムが備わっている。

クラス制

  • 前作と異なり、プレイヤーはそれぞれ固有の装備・スキルがある「偵察」「重装」「潜入」の3つのクラスから1つを選んでキャラクターを作成する。
    • 偵察クラスは遠距離からの狙撃や敵プレイヤーのマーキング能力に長けている。
    • 重装クラスは移動速度が遅い代わりに高火力の武器を装備でき、体力も多い。
    • 潜入クラスは体力が少ない代わりに移動速度が速く、ステルス迷彩やCQCを用いた奇襲に特化している。
  • キャラクターは後に追加が可能。試合開始前のブリーフィングにクラスを変更し、チームの構成の穴を埋めるようにする戦略も必要になってくる。

バディシステム

  • 本編とは異なるシステム。他プレイヤー一人と組むことで、常にバディの状態や位置を把握したり、ゲージを消費してリスポン位置をバディの現在位置にできる。
  • 一定の活躍をすれば戦闘中にバディのところへワープできる機能もあるため、離脱や奇襲、救援に駆けつけることが可能。

評価点

うまくマッチさせたオープンワールドシステム

  • オープンワールド系のゲームにある採集システムをマザーベース内の資源として利用するようにしたり、ダンボールを利用したファストトラベル等が可能。
    • 『メタルギア』の特色を残しながら、『GZ』以前の『MGS』シリーズにはなかったオープンワールドのシステムを上手く取り込んでゲーム性を高めることに成功している。
    • 『MPO』以降、エリア制が主流になってしまったことによる弊害で潜入できるエリアがミッション毎に制限されて潜入方法も選択肢が狭められがちであったが、MGSVはルートや攻略方法の幅広さといった面での高い自由度を提示することに成功したと言えよう。

ミッション

  • 救出ミッションや破壊ミッションなど、多種多様なメインミッションが用意されている。
  • 「自由潜入」と銘打たれ、「潜入ゲームから潜入シミュレーターへ」と標榜されていただけあり、本作のミッションクリア方法は非常に幅広い。
    • 「敵司令官を排除する」というミッションなら、敵に見つからない潜入を目指したり、重装備を用いて強行突破したり、遠距離から狙撃したり、ヘリで敵陣上空に強行突入するなど様々な方法がある。また、殺害以外にも無力化してフルトン回収でもクリア可能。
    • 「特定の捕虜を救出せよ」というミッションなら、それ以外の捕虜を救出するかどうかはプレイヤー次第。達成すれば評価ボーナスや新たな情報を入手する事もある。
  • 『GZ』同様、ノーキルノーアラートでなくともSランク評価は得られる。高評価を取得するうえでも様々な方法が存在するが、ややタイムボーナスに高得点の比重が寄っている傾向がある。
    • とにかくクリアしたい・Sランクを取りたいだけなら、手早くやればあっさり達成できることも多い。しかしその場合だと追加条件の「ミッションタスク」が埋まらず謎を残すような終わり方をするケースも多い。
    • 本編やミッション背景などを詳しく知りたい場合は対象の敵をできる限り生かしたまま回収するなど、じっくりと取り組む必要がある。
  • プレイヤーがどういった戦法をとるかについてはその時の装備、所持する携行品、バディの性能によって変わってくる。フィールド上でもコストを支払えば、指定場所に物資を投下して装備セットを変更できるなど、柔軟に対応できる。
  • 前述の通り強力な装備を使うにはそれ相応のコストが必要なため、無闇矢鱈によい装備を使えばいいというわけではない。
    • マザーベースからの火力支援やヘリからの援護射撃はかなり強力だが、これらを利用するとSランクは取れなくなる。
  • ミッション外でも敵施設(対空レーダー)の破壊、リソースの回収、人員の確保と、ミッションに備えてやれる事は沢山ある。戦術・戦略の立て方も幅広い。

より奥深く、シビアな潜入

  • 広大なマップで自由潜入だから難易度が低いと思いきや、敵兵の巡回や配置がいやらしかったりする。
    • 時間によって巡回するルートが変更する上、ツーマンセルを組んで行動していたりするため、頭を使う必要がある。 敵兵士の反応もこれまでのプレイ感覚の逆手を取るかのようで、1人だけ誘き寄せようとしたのに、わざわざ近くの同僚に声をかけて2人で確認しようとする、確認後、何らかの痕跡を見つけると、巡回ルートを外れて小走りにクリアリングを開始するなど。
    • 未然にリスクを潰していくような動きが重要で、過去作でスネークが自ら語っていたように、偵察も斥候も自分でこなす必要が自然と生まれる。
    • 舞台となるアフガンとアフリカはそれぞれ砂地の丘陵地帯、熱帯雨林のジャングルである為、砂嵐に乗じて敵を無力化する、激しいスコールのタイミングに合わせて気配を誤魔化しながら進むなど、細やかな工夫もできる(必要となる)為、歯ごたえ抜群。
  • また、本作では1つの地域の中に複数の敵の駐屯地や設備施設がある。派手に暴れると他の場所にも情報が伝搬し、隣の駐屯地から増援が来たり、潜入したい施設が一度ヘリで離脱するまで常時警戒状態になったりすることも。
    • 本作では『MGS:PW』同様、ストーリーの進行が長期にわたっているのだが、その過程で敵も学習するようになり、ヘッドショットばかり狙っていればヘルメット、催眠ガスばかり使っていればガスマスクを装備するなどの対応策をとってくる。
      • 逆に、こちらも作戦前に戦闘班を派遣してこれらの武装の供給を断つことで、ある程度だけ対策も取れる。

進化したシステム

  • 『MGS3』のキャプチャーシステムに似た要素として「薬効植物の採集」「野生動物の保護」が追加された。
    • 動物保護はNGOから依頼されたもので、動物を回収していくとGMPと英雄度を獲得できる。
      • 捕獲した動物はマザーベースの動物保護プラットフォームで自由に見物が可能。
    • 薬効植物は麻酔系武器・薬品系アイテムの開発・使用に必要。双眼鏡などで覗きながら無線を送れば、その薬効植物がどんなものかを教えてもらう事もできる。
  • マザーベースのシステムも強化。
    • メインの基地だけでも相当の人数を収容出来る上に、FOBによって更に拡張出来る為、無能兵士を逐次解雇するような展開には陥りにくくなった。
      • さらに今作は派遣ミッションによって兵士のランクが成長することがあるため、少し程度のランクならば補える。派遣ミッション自体も戦闘班以外のスタッフが必要なミッションも多いので、成長させる機会は意外と多い。
    • 志願、捕獲兵に関しても英雄度の上昇やシナリオ進行に伴って強力な兵士が出現しやすくなり、終盤のシナリオになればA~Sランクの兵士は比較的楽に入手できる。
    • また、今回はマザーベースを実際に歩いて回る事も可能になった。兵士に近づけば敬礼されたり、兵士同士の会話が聞こえてきたり、稽古と称してCQCを掛けてやると言った事も出来る。
      • 兵士の会話も多様。ストーリーの進行に合わせ、キャラへの関心や逆に陰口、他愛のない会話から思わず吹き出してしまいそうなバカ話まで。近づくと気づいて敬礼してしまうので、物陰に隠れながら盗み聞きするのも一興。
  • 『MGS3』にあった敵施設への破壊活動も再び出来るようになっている。
    • 対空レーダーを破壊すれば敵拠点近隣のランディングゾーンが使えるようになり、基地のアンテナと通信装置(こちらは常時修理される)を破壊すれば発見されても増援を呼ばれることが無くなり、配電盤や電柱を破壊すると近辺の照明や監視カメラが機能しなくなる等、潜入を有利に出来るようになっている。
      • 一部の設備(通信装置や移動式の電灯)を除いて、破壊された設備はマップを離れるまでメインミッションでもそのまま。これを利用し、あらかじめ潜入先付近の設備を破壊しておくことでミッションをある程度だけ進めやすくすることも出来る。
  • 『MGS:PW』で出来た事についても強化されている。
    • フルトン回収はアイテムにフルトンを選ばなければ使用できなかったが、今作ではボタン一つで手軽に行えるようになった。
      • また、今回は人間以外にも野生動物を、フルトンのレベルを上げれば銃座、コンテナ、車輌なども回収できるようになっている。
      • ただし、前作の様な状況や環境問わずの回収は基本的に不可能になっている。屋内で回収しても天井にぶつかるだけだし、悪天候の中で無理やり回収を図ると、回収そのものに失敗して捕虜や敵兵をロストする事もある。
    • 補給支援や援護も『MGS:PW』では専用の装備が必要だったが、今作では端末から座標を指定するだけで行える*8

シナリオのテーマ性

  • 今作のシナリオは「テーマ性」という意味では非常に響くものである。
    • 人種、言語、民族浄化など、現実の現在にも連綿と連なり続ける対立を、戦場とその真ん中に立つ傭兵いう視点から描く。
    • ムービーこそ少なくなったが、ブリーフィングのテープや特定のミッションで敵兵の話をつぶさに聞いていくと、報復の連鎖が巻き起こす惨状、それを利用する黒い影等、フィクションに留まらない陰鬱な実情が描かれている。
  • それはプレイヤー側の陣営でも同じであり、報復をしようとするキャラクターと、報復を捨てたキャラクターの描写が丁寧に描かれており、どちらがいいのかという部分で考えさせられる。
    • スネーク達の報復にしても、これまでどことなく漂わせていたヒロイックさなど皆無で陰湿かつ残酷に描写され、カタルシスよりも失った物やかつての生活はもう戻ってこない事を強く認識させ、虚しさを残すようになっている。
  • 偶然にも発売一か月後に現実にテロが発生し、いままで対立関係にあった国が「報復」という言葉で一つとなり、共同作戦を行う事態になった。
    • 敵キャラであるスカルフェイスが唱える「報復関係から生まれる平和」が、痛々しくも起こってしまっていることを肌で感じずにはいられなかっただろう。
  • 本作のテーマである「言語」は、ミッションでも度々敵兵士の会話として感じることができる。
    • 身を案じていても、相手は侮蔑を浴びせられたと思いすれ違いが生まれてしまう演出など、切ない。
  • 一方でシナリオは本作最大の突っ込み所を数多く孕んでもいる(後述)。

BGM

  • BGMは楽曲の質もさることながら、場合によってリアルタイムに変化するなど演出面で効果的に使われている。
    • 今作のボーカルテーマ曲『Sins of the Father』などは人気が高い。
  • 過去作品に引き続きウォークマンを装備しており、音声や楽曲が収録されたカセットテープを各所で入手すれば好きなときに聴くことができる。
    • またゲーム内当時である1980年代洋楽やシリーズ主要曲が数多く収録されており、これらも自在に流すことができる。
    • 戦場で入手できるカセットの中には動物の鳴き声や「敵を倒した」という声が収録された特殊なテープもある。これをNPCの近くで再生すると…。
    • Win版はカスタムサントラ機能も搭載している。

賛否両論点

『MGO2』→『MGO3』の移り変わり

  • コミュニケーションの幅が狭くなってしまったのは前述の通りだが、仕様変更に伴って良い方にも悪い方にも捉えることができる。
  • 今回の『MGO』は本編同様に体力ゲージが存在せず、自動回復制。
    • 姿を晒す危険性の増大と冗長気味になってしまう銃撃戦が少なくなり、リスポーンシステムの変更もあって展開の早いものになった。
  • 前作『MGO2』では被弾時に0.2~3秒程度の長い無敵時間が存在していたが、今作では撤廃された。
  • 今回は胴体に弾を数発当てるだけで素早く倒せるようになったため、ヘッドショットの重要性が下がった。その結果複数人が逆に不利になるという状況もなくなり、結果的に漁夫の利を獲得する色が強くなった。
    • これにより前作ほどヘッドショットを重視しなくてよくなったものの、従来のMGOファンからはあまり評判は良くない*9
      • ただ、アップデートによってヘッドショット時の威力増加、頭部以外のダメージ低下パッチが適用されたため当初よりヘッドショットを積極的に狙う旨味が増えたとは言える。
    • ただし敵を倒す難度が下がったことで姿を晒す危険性が増え、『メタルギア』らしくプレイに慎重さが必要になった面もある。
  • クラス制によりプレイヤーの行動が個性となることが難しくなった。
    • 体力は多いが足の遅い重装クラス…といった具合にそのクラスにおける最適な動き方が求められ、プレイスタイルの自由度が狭まった。
    • キャラクター自体に個性が備わったため、否が応でもその個性を演じなければならない。これは試合内容のバリエーションを豊かにしているとも言える。
    • ただ、初期はクラスごとのゲームバランスが酷いものだった。特に潜入クラスのステルス迷彩を用いた突撃戦法が非常に強力であり、「ステルスジュードーオンライン」などと揶揄されたほど。
    • 現在はアップデートにより多少はマシになったが、それでもバランスはお世辞にも良いとは言えず、半年経たずしてオンラインは過疎気味。
    • キャラメイク機能に関しても自由度が少ない。装身具はただでさえ種類が少ない上にクラスごとに分けられており、髪型は男女ともたったの3種類。
    • 服装の色変えなども一部課金が必要。そのため対戦では同じような外見のキャラクターと大量に出会うことになる。
      • ただし、顔に関してはかなり細かいところまで設定できる。
  • 他にも武器、マップ、ルール、ユニークキャラクターの数など改善の余地のある要素が多い。
    • バウンティハンターというルール(前作のチームデスマッチに相当)では敵を殺害したプレイヤーに「賞金首ポイント」が1つ増加される。これが6つ以上ある状態で敵を殺害すると強制的にマーキング(位置がバレる)されるという仕様になっており、議論の的になっていた時期があった。
      • この賞金首ポイントが溜まった状態で敵にフルトン回収されると、溜まったポイント分相手のチケット数が増えてしまう。つまり敵を殺せば殺すほど戦犯になる可能性が上がるという仕様だった。
      • さらにはこの一発逆転要素であるフルトンを簡単に出せる「フルトンパンチ」なるものが潜入クラス専用のアビリティとして用意されており、こちらも重装専用の催眠グレネードランチャーなどと合わせて過疎化を促す要因となった。
    • 本編で登場している「ウォーカーギア」も『MGO3』のマップ上に配置されているが、その強力さ故に賛否両論であった。一応アップデートにより多少は弱体化されている。
  • 前作『MGO2』のように継続的なアップデートがなされていく兆しがあったため、今作もいずれは快適になるだろうと期待するユーザーも多かった。
    • しかし現在はDLCを全て収録した完全版が発売され、『MGO』公式Twitterも数年以上新規ツイートなし。そのうえ新作である『メタルギア サヴァイヴ』も2018年に発売された為、今後新たな要素がこちらへ追加される可能性はほぼないと言っていい。
    • 主にヘッドショット周りなど、ユーザーと開発それぞれが想定していた『MGO』に対するゲームデザインに乖離があり、開発側が無理にユーザーの意見を取り入れたためにアップデートがされなくなった、と考えられなくもない。
      • グラウンド・ゼロズ』時点で従来のMGSにはなかったダッシュ操作があり、ダッシュしている敵に対してヘッドショットを狙うのは難しいために、今までの『MGO』とは違いヘッドショット重視のゲームにはしたくなかった意図が汲み取れる。
      • サービス開始当初は、気絶や催眠状態の味方を格闘(蹴り)で起こせていたが、アップデートで特定ボタンを入力することで専用モーションが発生し、起こせるようになった。1回の蹴りで即座に起こせるのが問題だったのに、本編になかったモーションを追加してまで起こす方法を変えたのには疑問が残る*10
    • 冒頭で「良い方にも悪い方にも捉えられる」と書いたが、サービス開始直後からの急速な過疎化を見るに「悪い方に捉えた」ユーザーの方が多かったのは紛れもない事実であろう。

問題点

シナリオ
今作最大の問題点にして、当初の高評価だらけの状態を瞬く間に変えてしまった原因。
これを切っ掛けにして「未完成疑惑」まで浮上した。
端的に言えば物語はいわゆる「打ち切りEND」と取れる構成になっている。

+ ストーリーのネタバレ注意
  • 今作はチュートリアルの序章を除けば2章構成だが、2章ではメインストーリーのボリュームが激減し、最後はかなり唐突に終わりを迎える。
    • 1章「報復」は新たなマザーベースの下で組織を立て直し、9年前に旧マザーベースを襲撃したスカルフェイスに報復を遂げるまでを描く*11
    • 2章「種」はスカルフェイス亡き後も暗躍を続けるサイファーを追ううちにマザーベースにある悲劇が起きる、というところで脈絡なく最終ミッションが登場しそのままエンディングとなる。
    • 直前の「悲劇」を描くミッションと最終ミッションにはストーリー上のつながりが全くなく、かなり困惑させられる。
      • さらに、2章は全19ミッションからなるが、うち12ミッションは1章ミッションの高難易度版、もしくはノーアラート強制。この水増しや唐突な最終ミッションなどを根拠に未完成の疑いを強めた。
      • また、2章は漠然とメインミッションを進めているだけではエンディングまで辿りつけず、たびたびメインミッションが追加されなくなる状態に陥り、物語の進行が止まる。
    • 2章の進行に高難易度版などの水増しミッションは必ずしもすべてクリアする必要はなく、黄色のサイドオプスとテープの聴取でフラグを立てていくつかミッションをこなすことで出現するという配慮を取っていたが、進行の条件が分かりづらくテンポが悪いとされた。
  • 今作は「悪に堕ちる」というキャッチが示すように、ビッグボスが如何にして決起に至るのか(どのように初代メタルギアに繋がるのか)が描かれることが示唆され、ユーザーの期待は高まっていた。
+ ネタバレ注意
  • だが本編中で悪堕ちを大きくフィーチャーするイベントは特にない。これのせいでますますキャッチコピー詐欺&未完成の疑いを強めている。本作はビッグボス本人の描写が全くと言っていいほど存在しない為、結局「アウターヘブン蜂起」に至るまでもうやむやに。
    • 主人公であるヴェノム・スネークについても「悪に堕ちているか?」と問われると微妙。殺伐として無愛想な雰囲気を持つスネークではあるものの、殺す必要のある子供を助けたりDDのスタッフに対する気遣いを考慮すると「根は優しい」と評するプレイヤーも少なくない。あまつさえ子犬を拾ったりとやってることはまともな人間である。
      • もっとも、当のビッグボスも『MG2』で戦災孤児達をザンジバーランドに住まわせていた為、ヴェノムもこうするのは必然的ともとれる。
      • 英雄度の下がった、人を殺し続け、核を幾つも所有する血塗れの鬼スネークが「悪に堕ちる」と言う事なのだろうか…
    • ただし、ストーリー上で分かりやすく非人道的な行いをするイベントがないというだけであり、悪に堕ちてはいる。それというのも今作のプレイヤーの軍隊は過去作のような「世界平和の為」などの大義名分付き依頼ではなく単純に各クライアントの軍事行動を支援する依頼を受けており、プレイヤーがノーキルを貫いた場合でも間接的に多数の人命を奪っている。要は金の為に見ず知らずの人間同士の殺し合いに肩入れしている*12ということであり、 XOFを討伐対象として出撃したミッション以外は道義的に真っ黒である。
  • ポスターなどには「メタルギア最大の謎に決着が付く」などという宣伝文句も書かれたが、決着以前に謎に触れられもしない。
    • むしろ本作と『GZ』で初出の謎が増えすぎて『PW』で広げた風呂敷を更に広げた挙句回収しきれていないように思える。
  • 実際に謎の提示と種明かしが行われるのは、本作のエンディングで初めて出てきたポッと出のものである。
    • そもそも『MGS4』の時点で過去作の謎の種明かしは殆ど行われていたので「最大の謎」など在って無い様なものだったのだが…。
      • 強いて言うならザ・ボスとの決着以降袂を分かったにもかかわらずなぜ『MG』でわざわざFOXHOUNDに戻り総司令官の任についたのか、という顛末が残っていた大きな謎といえなくもないが、結局今作がそれに踏み込んだものだったとはいえなかった。
      • 後は『MGS3』後に突如豹変したかのような描写が過去作でなされていたゼロ少佐や後々ビッグボスと対立するカズの事が謎なのだろうか。そちらもクリア後にやっと触れられるだけなので消化不良感が否めないが…
  • 物語の途中ヒューイの発案で、バトルギアなる新兵器が開発されるが…。
    • 完成しても話に絡まないどころか自分で使うこともできず派遣ミッションに出せるだけだった為、肩透かしを食らったプレイヤーが続出した。
      • Win版の解析によって搭乗可能な兵器として使える予定の可能性があったことが明らかになっている*13
      • 海外の攻略本のインタビューで小島はこれに関して「正直な所、計画では実際のフィールドで使用出来る筈だったが、テストセッション中に(バトルギアが)ゲームのバランスを乱すのに気付き消去した」と答えている。
      • このゲーム性での再調整に足る時間はなかったであろうことを推測するに、やむを得ない理由ではある。
  • 初期PVから登場し話題になった「燃える男」はサイドオプスでかなりあっさり退場する。
+ ネタバレ注意
  • これはヴェノムが影武者であることの伏線ではあるのだが、消化不良感がある。
  • また、正体は大方の予想通り『MGS3』のヴォルギン大佐だが、強引に出番を作った感が否めない。
  • とあるキャラクターが離脱して以降の経緯がゲーム中では明かされない。
    • これは初回限定版などに付属している特典映像に出てくる他、トレイラーでもそれらしき映像があった。要するに重要部分が本編から削られている。
    • 特典映像にはご丁寧に「完成度30%」とテロップが入れられていたり、本編では活かされなかったヴェノム・スネークの色覚障害の設定がこのミッション中の重要なシーンで使われていたりと、これまた未完成の疑いを強めることになった。
      • Win版の解析によってこのミッション発生のフラグらしきものが存在することが発覚したが、現時点ではこのフラグを立てることができるかどうかは判明していない。
  • 第三の子供はご都合主義の塊。本作における本筋以外の事象の多くは大袈裟に言うと「不思議な少年の超能力」で説明を丸投げしている節がある。
+ ネタバレ注意
  • 少年イーライ(後のリキッド・スネーク)がマザーベースに保護された子供たちに反乱を起こさせた。
    • ヒューイの行動もあってメタルギア・サヘラントロプスをイーライが奪取。第三の子供(後のサイコマンティス)の超能力によって稼働可能になったサヘラントロプスに乗り、マザーベースのヘリパイロットを人質として子供たちとともにどこかに去ってしまった。
    • これ以降、イーライ及び第三の子供が物語に絡んでくることはなく、エンドロールの手前で流れる年表で唐突にイーライが「蠅の王国」なるものを作り上げていたことが明かされる。
    • ただでさえ結構な中盤でイーライが登場し、そして色々な事件を巻き起こしていたにもかかわらず、なにも描かれないままフェードアウトである。
    • さらに、サヘラントロプスを動かすなどスカルフェイスの計画で重要な役割を果たしていた第三の子供がイーライと共にフェードアウトしていってしまうという、なんとも打ち切りのような描写にユーザーから不満が噴出した。
  • なお、存在が発覚した結末部分についても「作中で猛威を振るったスカルフェイスの切り札にイーライも寄生され死に瀕するも、サイコマンティスの超能力で治る」という強引さを感じる展開が存在する。
    • 後のリキッドを死なせるわけにはいかないのは当然ではあるが…。
  • 物語とは関係ないが、イーライは服の背面に「液体人間」とデカデカと筆書きされた不自然なデザインをされている。
    • 鋭いプレイヤーなら気づくし、そうでなくても前述したように「イーライ=リキッド」という確定情報はゲーム中に存在する。この過剰なアピールは本当に必要だったのだろうか。
    • シリーズおなじみの単なる小ネタなのかもしれないが、殊更にシリアスを押し出した本作では明らかに浮いている。オマケ要素ならまだしも。
  • ヴェノム・スネークと結末について
+ ネタバレ注意
  • 物語冒頭の病院からプレイヤーが操作するキャラクターは、実はビッグボス本人ではない
    • パスの体から麻酔無しで爆弾を摘出し、爆発からビッグボスを身を挺して守ったメディック(衛生兵)が今作の主人公。端的に言ってしまえば整形手術と暗示によって影武者に仕立て上げられた赤の他人である。
    • ラストは、洗面台の前でメディックがビッグボス本人からの「俺たちは2人でビッグボスだ」というメッセージが録音されたテープを聞いて自らの正体を思い出し、笑みを浮かべる。その後少し時間が経過し、銃声が鳴り響く中血塗れのヴェノムが再び現れ、鏡を叩き割るシーンで幕を閉じる。
    • 本物のビッグボスがどこで何をしていたかはわずかに描かれるのみである。声だけのカセットテープとイシュメールとして顔を隠しているシーンを除けば本物のビッグボス出演シーンは約1分ほどしかない。
  • どの時点でヴェノムが影武者であることが明かされ、本物のビッグボスの物語が始まるのかという部分が注目されていたが…実際には本作はヴェノムが影武者であったことが明かされた時点でストーリーが終わる。
    • 本作が章構成であったことから、2章ラストでヴェノムの正体が明かされた後、本物のビッグボスの物語を描く3章が始まると予想したプレイヤーが多かったが、実際にはストーリーは2章で終了。
    • 実際にも、PC版の解析により3章の開発痕跡が存在していたことが発覚しており、本来はここでビッグボスの物語を描く予定があったとも言われている。
  • ヴェノムが影武者であること自体は予想はされていたが、本作のシナリオは「最初から影武者であることを匂わせつつ、驚愕の事実であるかのようにその点を明確にし終了」でしかない。
    • その為、結果的に「影武者」や「入れ替わり」といった一連の演出やシナリオ構成そのものも疑問視されるようになってしまった。
  • 冒頭の病院でヴェノムは「敵の目を欺くために顔の整形手術を行う」事を告げられ実行されるが。
    • これはキャラエディットでもあり、演出を兼ねた上手い手法…の様でいて重大なミスがある。
    • ヴェノムと述べた通り、彼は影武者である。つまり整形の結果はビッグボスの顔、エディットしたのは元の顔となる。実は場面が自然に入れ替わっておりミスリードとなっている…という様な事もない。
    • 一方のイシュメールこと本物のビッグボスも、整形手術を受けたかのように顔面が包帯で覆われているが普通に素顔のままである。
    • 結果的に意味のない演出となってしまった。
      • 序章では「ビッグボスからメディックへの整形手術の直前で襲撃される」だったシーンが、『世界を売った男の真実』では「メディックからビッグボスへの整形手術の直後に襲撃される」というシーンに改変されている。序章の描写は自分をビッグボスだと思い込んでいるヴェノムの妄想で、そのシーンを客観的に描いたのが『世界を売った男の真実』という構造になっている。
        ……というのがあのシーンの一応の説明なのだが、『世界を売った男の真実』の全体を通した描写はヴェノムの妄想を完全に排除した客観的なものとは言いきれない部分があり、叙述トリックとして不完全である点は否めない。
  • 「この物語(サーガ)も伝説も俺達で創った」「ありがとう友よ」と言ったメッセージ内容、自分で決められるメディックの素顔と誕生日を考察するとメディック=プレイヤーという構図が明らかである。
    • 録音テープのメッセージは「これまで『MGS』シリーズをプレイしてこのシリーズを支えてきてくれたプレイヤーに対する、『スネークからの感謝の言葉』」である。
    • 本作は「これまでのシリーズを追体験していったプレイヤーの分身であるメディックが『ビッグボス』に相応しい人間へと成長する過程を描いた物語」であったと取れなくもないが…*14
    • 「『TPP』冒頭にキャラクタークリエイトを行うようにしてしまった為、必然的に『GZ』でわずかに確認できるメディックの顔とは異なったものになってしまう」「この手の手法は最初にやってこそ意味ができるのに実質途中からの挿入」といった事情により、プレイヤーとキャラクターの一体感を阻害しており、演出としては空振りしているとの意見もある。
  • また、これによって『MG』でラスボスとして立ちはだかったアウターヘブン統率者であるビッグボスはヴェノムであり、当時のFOXHOUND総司令官であった本物のビッグボスとは別人だったという後付け設定が加えられた。
    • だが、この点についても『MG2』や『MGS4』でのビッグボスの発言を考えると必要な設定なのか疑問が残る。
    • 『MG』は公式でパラレル扱いのため大まかな矛盾を目をつぶることはできるが、『MGS4』において「ソリッドはFOXHOUNDにいたころに総司令官であるビッグボスから直接訓練を受けてCQCを習得していた」と語られている。
    • その為、パラレルであることを考慮しても、五体満足のビッグボスと面識があったソリッドの前に角を生やし義手を付けたヴェノムがビッグボスを名乗り偽物として立ちふさがっていたことになる。ソリッドからすると不自然極まりない光景だったのではないだろうか?
      • 『MGS4』小説版では「元々CQCを会得していなかったが、オタコンのハッキングなどによりCQCの技術を手に入れた」とされているため、こちらの設定が部分的に採用されているのかもしれない。
    • 『MGS4』本編においても、ヴェノムの存在について一切言及されなかったのは、矛盾とはいえないまでもやや不自然。後付けだからと言ってしまえばお終いだが。
  • 一応フォローすると、後の『MGS4』におけるビッグボスの自責の念やメディックが後に初代『メタルギア』においてソリッド・スネークに殺されるビッグボスを演じる構造などは、
    『MGS3』でのザ・ボスとの関係性にも重ね合わせることも出来、その虚しさなどを感じる構造になっているとも言えなくはない。
    • つまりメディックがビッグボスを演じたことで、本物のビッグボスは『メタルギア2』におけるザンジバーランド形成に専念することができたという「忠」を尽くした構造にもなっている。
    • また、ヴェノム自身に魅力がないわけではなく、鬱憤のたまったスタッフ同士の私闘を自らの体を犠牲にしての仲裁、志半ばにして散っていった死者への弔い方法など元スタッフとしての視点でまた異なったカリスマ性がある。
    • 兵士としてのスペックについても「MSFの兵士の中でも最も優秀な男だった」とビッグボスが語る場面がカセットテープに録音された会話として登場している。
    • 『MGS4』にてソリッドがビッグママ(EVA)から愛国者達の成り立ちについて聞かされている時に、ビッグママは「ゼロが真実と虚構を織り交ぜながらビッグボスの物語をばら撒いた」と述べているので、この部分がヴェノムの存在に関して伏線を張っていたのではないか、という考察もある。
  • また、この最終ミッションはゲーム的にも問題がある。
    • 病院での顛末のネタばらしという構成上序章をほぼ丸ごともう一度やらされるのである。
    • 違うのは最初と最後*15、そしてミッションタスクだけで、ミッション自体は序章の病院脱出までと全く同じ*16。これには基本操作説明も含まれる。
    • 序章はいわゆるチュートリアルであり、導入部故に演出も長い為、そう何度もプレイしたくなるようなものではない。
      • せめてイシュメール側の視点にしてヴェノムを助ける展開をプレイできるようにした方がよかったとの声も。
+ 『PW』で新登場したキャラの扱い
  • アマンダはFSLNとしてニカラグアの革命を成し遂げており、祖国では英雄的扱いを受けている。
    • ただし、今作にて親族が全て死亡した事が確定したのである意味革命に対する「業」を背負って生きているとも言える。
  • セシールは『GZ』の核査察前にフランスに帰国、『TPP』では一切の絡みなしで平和に暮らしていると思われる。
    • チコよりも杜撰な扱いだが、彼女は元々あくまで一時的にマザーベースに保護されていただけのただの一般人なので当然の扱いではある。
  • チコはヘリの墜落で死亡済。死についてはスネークの「チコの死は何だったんだ」の一言で済まされる。
    • これはチコの死からは作中ですでに9年経過していることを考えると仕方ないのかもしれない。
      • ただし、テープにてカズが頻繁に少年兵の回収を依頼したり反乱の兆しを見せても強硬手段を取れない理由の一つとして、チコを死なせてしまった事がトラウマになっている事を思わせる内容があるので完全に無意味ではない。
      • 一方で『GZ』冒頭でスカルフェイスの口から出た、チコの「裏切り」は有耶無耶になる。
    • 何処からか流失したテキストファイルの中にはこの台詞の補完として「※チコは実際には生き残り、ザイールに行き着いているが、ミラー達からすると消息不明。この後、ザイールにチコを見つけたアマンダから、チコ抹殺の依頼が来ることになる。」と記されており、再登場する予定だった模様。
      • このザイールという国は『PW』のカセットテープでもチコが行きたがっていたコンゴの事である。
      • 後に発売された設定資料集でも「unused (未使用)」と記された上で大人になったチコの設定画が掲載されている。
      • また同じファイルの中にはチコ(ウォーカーギア)という謎の単語も出てきている。海外版の解析でもウォーカーギアへの呼びかけボイスをまとめたファイルの中に何故か「チコ!」という呼びかけが一緒に入っている事が判明しており、チコがウォーカーギアに乗る、もしくはチコがウォーカーギアと何らかの形で一体化する案などもあった事が予想される。
  • パスは『GZ』ラストで死亡したと思われていたが発売前トレーラーでまさかの生存が確認され話題になっていた…が実際にはやはり死んでおり、トレーラーやイベントに登場したパスはヴェノムの願望から見えた幻覚だった。
    • ヴェノム本人の深層心理が具現化したものらしく、彼女の言動こそが素のヴェノムに繋がっていると言える。ちなみにヴェノムの身体には人間の骨がいくつか刺さっており、これは恐らく目の前で爆発したパスのものと思われる。
    • 一連の場面はかなり切なく、イベント全クリアした後に手に入るテープの内容は本作屈指の涙腺崩壊もののテープと言われる。このテープを聴いてから『MGS:PW』の恋の抑止力を聞くと、色んな部分の歌詞への感慨が変わってくる。
  • ヒューイは『GZ』で勝手に核査察を受け入れたり、MB襲撃直前にストレンジラブがマザーベースを離脱していたり、怪しげな行動をとっていた*17が、結局ヒューイが『GZ』でマザーベースを崩壊させた戦犯である事がほぼ確実となっている*18
    • さらに、前述した2章後半での「悲劇」も彼が引き起こしたもの*19である。作中で悪役であるスカルフェイスにまで「腐った男」呼ばわりされるなど、かなりのクズキャラになってしまった。
    • 『MGS:PW』を含め『GZ』終了から『TPP』開始までの約10年間に、一体何が彼をこれほどまでの狂人に豹変させてしまったのかはイベント、テープを含め一切語られない。
    • 『MGS:PW』で「核を嫌悪する科学者」「自身の発明した兵器に責任を持つ男」「息子達(ソリッドとオタコン)さながらの軽妙な掛け合いを見せる」という彼に好感を抱いていたプレイヤーを幻滅させることとなってしまった*20
      • そもそもプレイヤー視点だとヒューイに関しては拷問や身勝手な発言をするだけのシーンしか見る事はできず、悪行そのものに関しては事後報告やテープでしか語られない事、追放後のカズのテープ内容*21を考慮すると、
        カズは最初からヒューイを許すつもりはなくスカルフェイスの情報と技術目的で救助し、たとえ悲劇が起こらずDDに協力する姿勢を見せても用済みになったら9年前の報復対象として殺すつもりだったと考察するプレイヤーもいる程である*22*23
      • ただしヒューイ側も問題行動は実際に多く、特にサヘラントロプスの隠し場所や声帯虫の正体を最初から知っていたにもかかわらず隠していた件は完全にアウトであり、これだけでも利敵行為と見なされても仕方がないという声もある*24。 元々彼がDDに再び接触してきた理由も、スカルフェイスの元での立場が危うくなってきたのでDDを通じて亡命したいというこれまた勝手なものである。
      • また一方で、『MGS2』の時点で息子であるオタコンの口から晩年のヒューイが息子に対して愛情を全くかけず最終的には娘を道連れに無理心中を図るようなろくでもない親に成り果てていた事が、既に設定として明言されていた為、PW以降のヒューイが人間として狂い堕ちるところまで堕ちるという展開そのものについては、規定路線として最初からそうなるであろうと予想していたファンも多かった。
    • そもそも『MGS:PW』の時点で、核や核武装やそれを可能にする兵器そのものに対し「抑止」という前提の上でなら肯定的であるなど、息子のオタコンとの思想の違いは明確に描かれていた。 またスネーク達に協力した動機も、オタコンのような「自分が作った兵器が悪用される事への責任感」よりも、どちらかと言えば「自分が作った兵器が自分の意に反した使われ方をする事への反発」が強く、自分が作った兵器自体への危機管理意識や認識もどこか甘いなど、当時からヒューイの人間性や科学者としてのあり方や考え方をオタコンと比較して疑問視するファンは少なからず存在した。
  • ストレンジラブは『GZ』ラストの年表でマザーベース崩壊後の生存が確認されていたが、『TPP』以前にヒューイによって(これもどこまで故意だったかは不明なものの)結果的に死亡していた事が今作終盤で明らかになる。これもいくらなんでもあっけなさすぎるという声も。
    • ただしママルポッドから発見されたストレンジラブの遺言のテープそのものはザ・ボスへの想いやオタコンへの母親としての想いや愛情を強く綴ったものであり、シリーズファンなら必聴である。 そしてこのテープのおかげで作中での存在感もちゃんとある。

演出

  • 『MGS4』までの反動なのか過去作と比べてカットシーンが極端に少なく、重要な事項もカセットテープという形で音声のみで語られることが多い。
    • ストレンジラブ博士の最期のシーンやゼロ少佐を描いた『MGS3』ファン感涙の人気シーン等のムービーにして欲しかったというテープも多い。
    • 以前まではゲーム進行に合わせて流れるようにシナリオが進行していくのもシリーズの特徴だったが、その演出とゲームデザインの噛み合わさった巧みな構成もなくなってしまった。
  • 意図を理解し難い演出。
    • 全体的に想像させることを目的としたような「無言」「間」「迂遠な表現」が多い。カットシーンの大幅減少といった変更との食い合わせの悪さも相まって、結局何だったのかがよくわからないという場面が散見される。
    • その最たるものが序章。「イシュメールと共に車で燃える男から逃げていたら背後で大爆発。天高く吹っ飛んだ消防車やら人間やらが降ってくる」「巨大な炎の鯨が現れヘリを飲み込んで撃墜」「燃える男が炎の天馬に乗って天を駆けて追ってくる」「馬で逃げていたら何故か都合よく目前で落雷が起こり地面が崩れ転落」というコメントに困る怒涛の展開になる。
      • これらの現象は一応ちゃんとした理由付けがされているが、それらがイベントとして説明される事は無く、背景を追おうとしなければ謎の演出で終わる。
      • 「スネークは頭に負った大怪我の後遺症のために存在しない物が見えることがある」というのがその理由。しかし、演出を過剰に盛る必要性はやはり薄いだろう。
  • 過去作に比べて残虐な描写が多め、また妙にホラー系の演出が目立つ。
    • 過去作でも流血や拷問といった描写などは普通にあったシリーズだが、今作の場合はストーリーの都合、また質感が向上したこともあり若干人を選ぶ方向性になってしまった。
      • 前作『GZ』でも所々にそのような描写が見られたが、この辺りは技術進歩の功罪でもある。
      • 海外版では規制が緩く、日本国内版以上に残虐描写が前面に出ている。

マップ移動が寂しく、回数が多い

  • オープンワールド化によって自由潜入が可能になった一方で、拠点から拠点までの道中が寂しすぎる。
    • 拠点以外のところは植物や動物がいるぐらいで、敵兵は巡回車両や捜索中の者以外ほぼいない。そのため拠点以外の場所は基本的に移動する以外にやることがない。
    • 細長いミッションエリア指定*25が行われているミッションが多く、それらのミッションでは進行ルートの選択肢が乏しい為オープンワールドを標榜する前の作品である『MGS4』などとやっている事があまり変わらない。
    • 元々ミッション数が膨大なこともあるが、ミッションの種類がある程度限られる上に移動するマップがわびしいため、一通りミッションが出そろった後の第二章から、所謂作業ゲー感がかなり強まるという指摘がある。
    • もっとも、敵兵が各地に配備されて密度が上がってしまうと、今度は難易度が上がってしまったり車や馬を使いにくくしてしまうので、一概に批判できるものでもないのだが。
    • ある意味、潜入場所での行動範囲が今作並みなら事足りたともいえる為、何でもかんでも「オープンワールド化」すればゲーム性があがって面白くなるわけではないという証明となってしまった。
  • 各拠点の配達施設で送り状を入手すれば移動時間の大幅なカット(いわゆる「ファストトラベル」システム)もできる*26
    • シリーズお馴染みの段ボール輸送であるが、大抵の配達施設は各拠点の内部にあったり、外部にあっても見張りの兵がすぐ近くにいることが多い。その為移動する労力、時間を省略しようと「ファストトラベル」すると「ファストトラベル」する為に「潜入」する(時間、労力をかける)必要があり、煩わしさを感じることも。
    • また、この送り状の配置も総じて気づきにくいか利用に手間がかかる場所にあり、プレイヤーによってはこのシステムに気づかない場合もある。
  • 高さ10センチくらいの小さな段差に引っ掛かり、進めず迂回する羽目になる事がたまにある。小岩の中にも、登れるものとそうでないものの見分けが付きにくい物があり小さなストレスの原因となりうる。
    • 段ボールや乗り物を使えば強行突破できる場合もあるが、根本的な解決になっていない。

オンライン開発

  • アップデートによってリアルタイム経過で開発が進む「オンライン開発」での高性能装備が追加されたのだが、開発にはかなり高い班レベルが必要。
    • 無料で建設できるFOB1だけではかなり厳しく、課金してFOB2,3を購入する必要がある。
  • 開発時間も長く、10日以上かかるものもある。短縮するためには課金が必要だが、装備の数も多いためかなりの額になる。
    • MBコインを使わせる、すなわち課金させるためのものだと受け止められても仕方がないほど。
    • ただしMBコインはデイリーログインボーナスでも少量ながら入手可能であるため、無課金でもFOB2以降は時間はかかるがこまめのログインで建設可能な額ではある。

進行不可能になるバグがある

  • 初期版では蝶のエンブレム(Front)を使用しているか、クワイエットとの親密度をエピソード29か42で最大にしてクリアすると発生。修正パッチは配信されているがオンライン環境がない場合は注意が必要。
  • また、Win版での症状として少年兵をトイレに隠すと消えてしまうバグもある。入れた判定はそのままだがトイレから出そうとしても操作不能になる。予防としては少年兵をトイレに隠さないこと。
  • このほかにも進行に必ずしも影響はしないが、一部の開発資料を手に入れてミッションクリアしても資料を入手していないことになっていて、元の場所に戻っても無くなっているなどのバグが存在した。修正パッチは配信済み。

時代錯誤なオンライン周り(『MGO3』)

  • 当初はオンライン対戦が可能になってかなりの時間が経っているのにもかかわらず、ホストのログアウトで次のホストへ引き継ぐ機能が備わっていなかった。
    • 現在は修正され、ホストは引き継がれる。この際途中抜けしたホスト以外のプレイヤーの戦跡、経験値が反映される。
  • テキストチャットが打てない。無線が少ないといったコミュニケーションまわりも前作から劣化している。アップデートで一部コミュニケーション機能が強化された。ただし新規追加無線についてはボイスはなし。

総評

大規模なオープンワールドとステルスゲームを組み合わせた今作は、リリース当初はその没入感や緊張感などゲーム部分を高く評価され、発売を待ち侘びたファンに称賛と共に迎え入れられていた。
だが、発売前に提示されたコンセプトとは異なる中途半端な物語によって「未完成」の烙印を押され、その評価は大きく変動してしまった。

「自由潜入」を主軸としたゲーム性そのものに関しては高く評価するプレイヤーも多い。
しかし、今までのシリーズにあった奥深い"物語"を求めるファンにとっては、シリーズ最終作として不満の残る出来になってしまった。
本作におけるどの部分を重要視するかによって、プレイヤーの評価は大きく変わっていくことだろう。

スカルフェイスの思惑、言葉を持たないクワイエット、復讐に燃えるカズ、そして…"ヴェノム"の名を冠し再び現れたスネーク。
ダークで、考えさせられるキャラクターたちの荒んだ思想と結末は、今作を様々な意味で象徴していると言っても過言ではないだろう。


余談

  • 『MGS:PW』のノベライズを手掛けた野島一人氏によるノベライズ版も角川文庫から発売されている。
    • ノベライズ版オリジナルキャラクターとしてレナード・ルインという隊員が登場しておりヴェノムやその周囲の関係性やダイヤモンドドッグズという組織そのものが一兵士の視点からも客観的に描かれている。
    • 一方で、本編では感情表現に乏しかったヴェノムやセリフがほとんど無いキャラだったクワイエットなどをはじめとした主要キャラ達の心理描写や顛末も丁寧に描かれておりファンからの評価は高い。
      • ただし『GZ』及び『蠅の王国』の内容は軽く触れられる程度。蠅の王国に関してはどこまでシナリオが完成していたのかも不明瞭なのでやむを得ないが。
  • 本作のストーリーはジョージ・オーウェル著の名作SF小説『1984年』から特に強い影響を受けており、本作の舞台も1984年である。
    • この影響が強く出ている(と言われている)のが2章および登場人物の1人であるヒューイに関連したストーリー。核心部分のネタバレとなるためここでは触れられないが非常に興味深い考察をしてる方もいるため、興味があったら探してみよう*27
  • またハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」からの影響・引用も見られる。ファンによる考察や矢野健二氏のインタビュー記事に詳しい。
    • 本作は当初、シリーズ名と発売・開発元を伏せ「Moby Dick Studios」名義で『The Phantom Pain』トレイラーを『METAL GEAR SOLID GROUND ZEROES』トレーラーの同年末に発表していた。
  • この他にも小説「蝿の王」「闇の奥」や、カセットテープにも収録されているデヴィット・ボウイの楽曲等、20世紀のファクターを多く反映させている。
  • 国内と比較するとあまりストーリーを重視しない傾向にある海外では本作の評価は非常に高い。メタスコアは93点であり、ユーザースコアの平均も10点中8.2である。
    • その割には海外でも物議を醸し、KONAMIの海外法人スタッフも「誤解しないでほしいが、蠅の王国はエンディングではない」*28等、よくわからない的外れな弁明を行い火に油を注いだ。
  • 本作のUI、実在俳優の起用、一部のストーリー展開といった要素は小島氏の独立後初の作品となる、2019年のコジマプロダクション作品『Death Stranding』でも見受けられる。
  • サブタイトルでもあり、テーマの1つでもある「ファントムペイン(幻肢痛)」が、本作、ひいてはシリーズ全体のストーリーが未完成のまま打ち切りに終わった事を揶揄する皮肉にもなった。
    • 本作の未完成については既にいくつか触れているが、「発売前後のメーカー側のゴタゴタ」「不自然なシナリオ(尻すぼみ、物語比重の偏った2章構成、唐突に迎えるラスト)」「製品に入っていない幻のエピソード」など疑惑の種に事欠かなかったため極めて濃厚とされた。
    • 監督は『MGS4』の時と同様に「ストーリーの完結」という意味で「最後のメタルギア」の宣言をしていたが、今回に関しては小島監督がコナミを退社(後に独立会社「コジマプロダクション」を設立)したことにより、広い意味合いにおいて確定的になっている。
    • 後に2018年2月21日に最新作、初のコナミ制作スピンオフ『メタルギア サヴァイヴ』が発売されたが、小島監督不在の開発体制、異世界*29設定、本作のモデル等データの使い回しが目立つなど、2016年08月18日に発表された時から非難の声が殺到、シリーズを取り巻く状況は絶望的な空気に満ちていた。
      • 2017年12月のシングルプレイ解説トレーラーによると、異世界設定は「『GZ』のサブミッションにある雷電登場ミッションなどのように "ありえたかもしれない もうひとつの擬史" を描いている」らしいが、『サヴァイブ』の様な明らかにミスマッチな設定を無理やりねじ込んだシナリオを同列に扱うべきか*30という点で、大きな疑問が残る。
      • なお『サヴァイブ』の発売以降は新作の音沙汰が全く無い状態が数年間続き、シリーズ終了の危機も囁かれていたが、2023年5月25日に『MGS3』のリメイク版『METAL GEAR SOLID Δ』を発表。現在はシリーズに復活の兆しが見えている。コナミは2020年に社長が交代しているので、その影響もあるのかもしれない*31
  • PS3/360版のオンラインサービスは2022年5月31日午後3時で終了した(参照)。
  • 2016年11月10日に『メタルギアソリッドV グランドゼロズ+ファントムペイン』が発売。『GZ』とのカップリングパック。
    • DLCも一纏めにされているが、『GZ』『TPP』それぞれのコンパニオンアプリには非対応。
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最終更新:2024年02月08日 00:15

*1 国内ではダウンロード販売のみ。

*2 DirectX11対応のグラフィックボードが必須。完全版である『GZ+TPP』も同様となっている。

*3 コナミスタイル限定、SPECIAL EDITION&バイオニックアーム

*4 SPECIAL EDITION&限定PS4

*5 One/Win(Steam)版はダウンロード専売。

*6 今作ではフルトン回収は支援班が行う為、支援班のレベルが低いと悪条件で回収が失敗しやすくなる。

*7 ただし、それまでオンライン接続で遊んでいた場合ミッション等で得たGMPの9割がオンライン側に分捕られるので注意。

*8 投擲武器のフレアグレネードは続投。こちらではiDROIDを開かずシームレスに支援要請が可能。

*9 『MGO1』『MGO2』『MPO』ではヘッドショットを素早く決めた方が勝つという側面が強かった。

*10 『MGO1』や『MPO』では蹴りで起こせ、『MGO2』ではその類似モーションで起こせた

*11 要するに大目標はこの時点で終わる。

*12 ストーリー上でも最序盤のミラー救出時の会話で少し触れられている。

*13 搭乗可能の音声のみで車両枠かバディ枠かは不明。

*14 実際、テープの中に「BIGBOSSの作戦記録を追体験させ、経験も、知識もBIGBOSSと共有する」という事が明言されている。

*15 描写が違っている部分もあるがほんの僅かであり、大半のプレイヤーにはムービーの焼き直しに映る。

*16 オセロットと馬に乗って逃げるパートだけがカットされる。

*17 あまりにも怪しいので逆に犯人ではないと考える人も一部いた。

*18 ただし、オセロット曰く「証拠は全て海に沈んだ」「あるのは事実だけ」とテープで語っているので確信犯だったとは断定できない。ネットではこれを元にヒューイ白説を考察する動きもあったが、いずれにせよ決定的な判断材料が足りない。どちらにせよ下記の妻のストレンジラブとの事については完全に黒だが。

*19 元凶はヒューイではあるが、(仲間とは認めないと断言して監視を付け、裏切りの証拠を回収させる等露骨に疑っていた筈の)彼の暴挙を見落としたり、(ヴェノムに無報告で)「悲劇」の初期対応を行って二次災害を引き起こす等カズの不手際も被害を拡散させてしまった原因なのだが。

*20 元々、オタコンの口から再婚後に娘と共に無理心中を図る等、ろくでもない人間であるという事は先に明言されていた。もっとも、彼を無理心中へと駆り立てた原因はオタコン自身にあるのだが…。

*21 行方を追跡して殺そうと言ったり、研究は引き継いだから奴がいなくても同じ等。

*22 ダイヤモンドドッグズという組織の立場を考えればあらゆる意味でヒューイが目障りなるのは当然だが。

*23 スカルフェイス抹殺後に証拠集めを開始したり、異変が起こる度にヒューイを真っ先に疑う等露骨な面も多い。ストレンジラブの音声を証拠として突き出すシーンも妙に作為的。

*24 実際にこのせいでDD側は作中でスカルフェイスに対して大きく後手に回ることになりDDのスタッフや兵士の間にも結果的に無駄な犠牲が増えてしまっている。

*25 指定エリアから出るとミッション失敗になる。

*26 シリーズお馴染みのダンボールに入って荷物と一緒に運ばれるという物。

*27 ただし、あくまでもオマージュの一つとして世界観に取り入れられているだけであり、ダイヤモンドドッグズという組織のあり方やヒューイがクロかシロかについて、必ずしも「1984年」の設定や描写がこうだからという風に当てはまるわけではない事は留意しておく必要がある。

*28 そもそも誰も蝿の王国をエンディングとは言っていない。何故自分からそのような事を発したのか。

*29 比喩ではなく、ゾンビめいたクリーチャーというシリーズにあるまじき存在が出没する世界に迷い込むという意味。

*30 『GZ』のミッションには帰還兵排除や諜報員奪還などのリアル系のミッションと、上記の雷電登場ミッションなどファンサービス系のミッションがあるが、『サヴァイブ』のそれはどちらにも当てはまらない。

*31 ただし、『サヴァイブ』同様に当時の監督であった小島秀夫氏とは一切関与していない事も告げている。