幻想水滸伝III

【げんそうすいこでんすりー】

ジャンル RPG

対応機種 プレイステーション2
発売元 コナミ
開発元 コナミコンピュータエンタテインメント東京
発売日 2002年7月11日
定価 7,140円
レーティング CERO:全年齢対象(廉価版より)
廉価版 KONAMI the Best:2004年6月5日/2,940円
コナミ殿堂セレクション:2005年9月2日/1,890円
配信 ゲームアーカイブス:2015年4月15日/1,234円
判定 良作
幻想水滸伝シリーズ

概要

幻想水滸伝シリーズナンバリング作品の3作目。
シリーズ初のPS2作品で『2』から15年後の世界を描いている。
デフォルト名の無い無口主人公だった『1』『2』から、名前が固定されセリフも喋る複数主人公によるザッピングシステム*1に変更、スキルによるキャラメイクの導入など作品の印象を大きく変えた意欲作で、その新システム導入はシリーズファンの間でも賛否が分かれて論争が起こった。


ストーリー

ゼクセン連邦とグラスランドは、長らく、互いに憎み合い、争いを続けていた。
しかし、グラスランドのカラヤ・クランの族長子息ヒューゴはゼクセン連邦との休戦協定を結ぶためにゼクセン連邦に、また同じく、ゼクセン騎士団の団長クリス・ライトフェローもグラスランドと休戦協定を結ぶためにグラスランドに、それぞれ派遣されることとなったのだが……。

ちょうど同じ頃、かつてグラスランドとハルモニア神聖国との間に不可侵条約を結ぶことに成功させた“炎の運び手”が再びグラスランドで姿を現したという情報をもとに、ハルモニア神聖国から警備隊小隊のゲド隊一行がグラスランドに派遣される。
そこで彼らがみたものとは……。


特徴

  • トリニティサイトシステム
    • 複数の主人公の視点から物語を進めていくシステム。初期は3人の主人公の視点から、ある条件を満たすとその3人を含めた最大6人の主人公の視点から物語を進めていくことができる。
      • ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』のオムニバス方式に近いが、あちらと違う点は、それぞれの主人公たちがまったく同じ時系列、かつほぼ同じエリアで動いている点である。つまりストーリーを進めていく上で、それぞれの主人公たちが互いに対面することが時々ある(同じイベントを、主人公ごとに違う視点で見ることになる)。
    • どの主人公のストーリーから始めても良く、今プレイしている主人公のストーリーを中断して別の主人公のストーリーを始めることもできる…といった自由度の高さもこのシステムの特徴。
  • 戦闘システム
    • バディシステム
      • 戦闘中、前衛と後衛の一人ずつの二人一組のバディを作り、プレイヤーはバディごとにそれぞれ指示を与えることになる。戦闘に参加できるバディは最大で3組。つまり、戦闘に参加できる人数は最大で6人…と人数だけは『1』や『2』と変わらないが、以下の点で違いがある。
      • 一組のバディがあらかじめ狙える敵は一体。つまり、同じバディにいる二人があらかじめ別々の二体の敵を狙うことはできない。
      • 「防御」を選択した場合、そのバディ内の二人とも防御を行う。
      • アイテムを使用した場合、アイテムを使用した本人と、本人と同じバディの人物にしか効果は出ない(パーティー全体や敵に効果が及ぶものは例外)。回復アイテムなどは、バディ一組で効果を共有することもできる。
      • アイテムを使用したり紋章魔法を使ったりするのは、バディのうちの片方のみ。このとき、もう片方はランダムで敵に攻撃する。
      • 協力攻撃は、それを行う二人がバディを組まなければ行うことができない(3人以上で行う協力攻撃は例外。バディの片方が別のバディの人物と協力攻撃を行う場合、もう片方は防御することになる)。
      • 各キャラクターには「性格」があり、攻撃を優先したり(「バーサーカー」「攻撃的戦士」)、後衛を守ったり(「防御的戦士」「手裏剣使い」)するなど、バディ内でのキャラクターの行動はこの「性格」が影響する。「性格」同士には相性の良くないものもあり、たとえば前衛を「バーサーカー」、後衛を「魔法使い」にした場合、「バーサーカー」は、攻撃を最優先し「魔法使い」を守ってくれないため、下記の通り「魔法使い」が魔法を使おうとしても敵からの攻撃を受けて、詠唱を中断してしまう可能性が高くなる。
      • とある3組のコンビでバディを組むと、「ライドオン」という特殊な形態をとる。ともに協力攻撃を行うわけではないが、ステータスがアップする。ただし、「攻撃は同時に行う」「アイテムの効果、敵から受けるダメージは必ず共有」「片方がアイテムを使用したり、紋章魔法を使ったりするとき、もう片方は何も行動しない」「常に二人とも同じ立ち位置にいる」といった制限がある。
    • フリーポジショニングバトルシステム
      • 本作では移動速度と距離の概念が導入されたが、それはこのシステムのためでもある。敵味方ともに攻撃する際にターゲットのところに赴き、その場所にとどまったまま次ターンを迎える。飛び道具や弓矢を使用する者も射程に移動したり味方に攻撃が当たらない位置に移動したりし、その位置のまま次ターンを迎える。
      • つまり、敵味方ともに定位置にはとどまらず、2ターン目以降(厳密には一番初めに誰かが移動した時点)にはそれぞれがいろいろな位置にバラバラに散らばっている、ということである。これに伴い、戦闘において範囲性の魔法が重要な意味を持つようになる。下記にて詳述。
    • 紋章魔法に関して
      • 「詠唱」の概念があり、コマンドを入力し終えた時点から「詠唱」を始め、終わると魔法が発動する。詠唱者から、詠唱中であることを示すエフェクトが表示される。詠唱中に敵から攻撃されると、かなりの頻度で詠唱が中断され、魔法が発動しなくなる。
      • 範囲性の魔法があり、指定された範囲にいる者に効果が及ぶ仕組みになっている。つまり、攻撃魔法の場合は指定された範囲内にいれば、敵にも味方にもダメージが与えられる。ただし回復魔法は例外で、範囲内にいても敵に効果が及ぶことはない。
        余談だが、協力攻撃やアイテムにも、魔法ほど数は多くないにしても範囲性の効果を持つものがある。
    • 時間の概念の導入
      • 上述の移動速度、攻撃までの武器の振りの速さや魔法の詠唱時間の長さなど「キャラクターがその動作を行うまでにどれだけの時間がかかるか」という概念が導入された。1ターンに何度も行動できることもあれば、次のターンまで時間がかかってしまうこともある。
      • 画面には、キャラクターがその動作を行うまでにかかる時間を示した「行動力ゲージ」が表示される。これは「スキル」によって大きく変化する。下記にて詳述。
  • キャラクター育成システム
    • スキル
      • 様々な種類のスキルがあり、それぞれのスキルを装備しランクを上げることによって、それぞれのスキルの名称に呼応した能力が変化する。例えば「命中」を装備すればそのキャラクターの命中率が上がり、「回避」を装備すればそのキャラクターの回避率が上がる。
      • 「神行法」は移動速度に関わるスキルで、「スィング」は攻撃までの武器の振りの速さに関わるスキルであり、これらのスキルを装備すると、それぞれの動作を行うまでにかかる時間が短縮する。「スィング」のランクが高いと攻撃がすばやくなるので、1ターンに何度も攻撃できるようになる。また、魔法スキル(「火魔法」「水魔法」など)を装備すれば詠唱時間が短縮する。魔法スキルを装備しなかったり、装備してもランクが低かったりした場合、魔法の詠唱が1ターンで終わらないことがあり、その場合は次のターンでのコマンド入力で「詠唱継続」を選ばないと詠唱をやめてしまう。
      • ランクはEからSの8段階(B、B+、A、A+があるため)。ランクを上げるほど能力は大きくなる。
      • 戦闘でスキルポイントを貯めて指南所へ行き、スキルポイントを消費することによって各スキルのランクを上げる。また、指南所では後述の「汎用スキル」であれば新しいスキルを装備することもできる。新しいスキルを装備した場合もスキルポイントは消費される。
      • スキルには、誰でも指南所で装備できる「汎用スキル」と、指南所では装備不可能でありそれぞれのキャラクターが素質として持っている「固有スキル」がある。「固有スキル」はレベルを上げることによって自然と身に付くか、それぞれのキャラクターがあらかじめ持っているか、のどちらかである。戦闘系スキルであれば、後述のサポートスキルとは違い「固有スキル」でも指南所でランクを上げることができる。
      • 戦闘系スキルの他にサポートスキルがあるが、「固有スキル」である。ランクはあらかじめ固定されており、上げることはできない。
      • それぞれの種類のスキルによってキャラクターにとっての「素質」があり、そのキャラクターにとっての最高ランクや消費スキルポイントの量が違う。「素質」の違いによって指南者のセリフが変わる。
  • 集団戦闘
    • 従来の「戦争イベント」。
    • 戦闘員4名(うち1名がリーダー)とサポート1名の、最大5名の1部隊を編成し、複数の部隊同士が戦闘を行う。
    • ルートを伝ってエリア間を移動する「移動パート」と、敵の部隊と戦闘する「戦闘パート」の、二つのパートがある。「移動パート」では、部隊を移動させるほか、「防御」を行って、直後に行われる「戦闘パート」でのダメージを軽減させたり、スキルを使用したりすることができる。移動先のエリア上に敵部隊がいたり、敵部隊が味方部隊のいるエリアに侵攻したりした場合は、「戦闘パート」に突入する。「戦闘パート」では、部隊の戦闘員が通常戦闘と同じ形式で戦う。ただし、通常戦闘とは異なり、「攻撃」と「防御」、「撤退」の3択しか存在せず、「防御」と「撤退」を選択した場合、戦闘員全員がその通りの行動をとり、「攻撃」を選択した場合、戦闘員は完全にAIによる戦闘を行う。3ターンが経過するか、どちらかの部隊が「撤退」を選択またはそのリーダーが倒された場合、戦闘は終了する。敵味方ともリーダーが倒された場合、他の戦闘員のHPが残っていても、その部隊は消滅する。
      • 移動先のエリア上に複数の敵部隊がいた場合、敵がどの部隊で迎撃するかを選んでくる。逆に、複数の味方部隊のいるエリアに敵部隊が侵攻してきた場合、どの部隊で迎撃するかを選ばなければならない。
      • 敵部隊を取り囲むように部隊を配置すると、味方が援護してくれるようになる。援護された部隊は攻撃力が上昇する。
      • 「撤退」を選択した場合、攻撃側なら元いたエリアに戻り、防御側は味方のいるエリアに退却する。退却するエリアがない場合は、「撤退」を選ぶことはできない。
    • 集団戦闘用のスキルがあり、上述の通り移動パートで使用することによって効果を発動するものと、「移動パート」と「戦闘パート」、それぞれにおいて、そのスキルを持つ部隊のステータスを変化させる「自動スキル」がある。
  • サポートキャラクター
    • 戦闘パーティーメンバーのほかに、非戦闘員であるサポートキャラクターを一人連れていくことができる。彼らは、それぞれ1~3つのサポートスキルをあらかじめ持っており、陰ながら戦闘パーティーメンバーを支えてくれる。
    • 主なサポートスキルは、戦闘終了時に戦闘パーティーメンバーのHPを少量回復する「ヒーリング」、アイテムを捨てる代わりに売ることができる「下取り」、戦闘時に獲得できる金額をわずかに上げてくれる「お金発見」等。
    • 戦闘員のサポートスキル同様、彼らのサポートスキルの種類とランクはあらかじめ定められており、指南所で新たにスキルを装備したりランクを上げたりすることはできない。
  • その他
    • 本作では、『2』までのようなフィールド上でキャラクターを操作しながら町やダンジョンに行く形式ではなく、ワールドマップ上で行きたい町やダンジョンを選択する形式を採用している。
      • 但し、現在地と隣り合っている(道中に他の町やダンジョンがない)場所しか選択できない。たとえ隣り合っていても、出入り口がつながっていなければその場所を選択できない。
    • 『1』『2』のような「宝箱」が本作では存在せず(但し、下記の「ダンジョンボス」が落とす宝箱のみ例外)、代わりに「薬草ポイント」「生き倒れポイント」が存在する。「薬草ポイント」で薬草を摘めば「おくすり」「特効薬」「漢方薬」のいずれかが手に入る。「生き倒れポイント」では、生き倒れから遺品を頂戴することができる。
      • いずれも1回取ったら終わりではなく、取ってしばらく時間を置けばもう一度取ることができ、これを何度も繰り返すことができる。
      • 薬草は摘む前に成長の度合いがわかるようになっており、成長すればするほど効果の高いものが手に入る。あえて摘まずに成長を待つのも手だが、待っているうちに誰かに摘まれてしまうこともある。
    • ストーリーを進めていく上で必ず戦わなければならない「イベントボス」の他に、戦うことをユーザーにゆだねられた「エリアボス」「ダンジョンボス」が存在する。
      • 「エリアボス」はダンジョンの中でランダムエンカウントし、「ダンジョンボス」はシンボルエンカウント。「ダンジョンボス」は戦いの後、たくさんのレアアイテムや高級アイテムが入った宝箱を落としていく。この2種類のボスは、1回戦ってしばらく時間を置けば再び姿を現すため、何度でも再戦可能である。

評価点

  • トリニティサイトシステムが大いに活かされたストーリーは、完成度が高い。
    • 一人の主人公の身に突然降りかかる出来事が、別の主人公の視点によって前後の流れが補完されていくさまは、推理小説を読むようなわくわく感がある。
    • また主人公のうち、大地に根差して生活するヒューゴと都市の騎士団に所属するクリスは、立場や生活様式の違いから互いに偏見を持ち合った末に最悪の形で関わりを持つことになるが、彼らに対して周囲の大人たちの発言は説教くさくはあるものの、どこか現実世界ともつながるような強いメッセージ性が含まれており、感動するものがある。
  • 15年という時を経た故のキャラクターの変化や成長を見られる。
    • 『1』から『2』ほど直接的ではないものの、シリーズの特徴である「過去作と繋がった続編」の良さは今作でも健在。15年の歳月によって、『1』『2』の戦争の歴史的な扱いや時間の経過などを感じる事ができる。
    • 『2』では宿星ではない敵側のキャラとして登場したルシアが、今作では主人公の一人・ヒューゴの母として再登場するなど意外な形での過去作との接点が楽しめる*2
    • また『1』『2』の少年期を経て、ハンフリーから受け継いだ大剣を操る立派な青年となったフッチ、『1』『2』では志ばかりが先行する未熟さを見せていたが、今作では弟子を導く成熟した軍師となったアップル、『2』でのホウアンのお手伝い的なポジションから、世界を歩き医療後進国で活動する一人前の医師に成長したトウタなどの姿は、「親戚の子供の成長を見るよう」と過去作のプレイヤーを驚き喜ばせた。
    • 一方、今作で非常に重要な行動をとることになるある過去作キャラクターに関しては、否定的な意見も含んだ大きな話題となった。
  • 戦略性が高く奥深いながらも、複雑な操作を必要としない、キャラクターの個性が活かされた戦闘システム。
    • 従来までの武器レンジの概念こそ廃止されたが、距離の概念の導入により、各々の得物によって付けられた個性が従来よりも強くなっている。同じ弓矢でも射程が違ったり、同じ剣でもリーチが違ったりして、各々のキャラクターの移動距離や移動場所、移動速度にも関わってくる。こうしたことも考えて、前衛と後衛のどちらに配置するか、どの敵を狙わせるか…と、パーティー編成から多彩な戦術を練ることができる。
    • 「性格」による個性付けも強い。それに、ただキャラクターの個性が強くなっただけでなく、後衛だと攻撃しない「魔法使い」をどちらに配置するか(前衛に後衛を守る「性格」の者を配置して守ってもらうか、前衛に配置して物理攻撃でも活躍してもらうか)、HPが低いが移動距離も短い者は後衛に配置して後衛を守る「性格」の者に守ってもらうか…と、いろいろなバディの組み合わせを考えて、自分に合ったパーティーを編成ことができる。
    • このほかにも、協力攻撃が行えるようにバディを組むか、「性格」や移動距離を優先的に考えてバディを組むか…といろいろ考えることができる。
    • 範囲性の魔法等も、戦略の幅を広げるのに一役買っている。味方の巻き込みを減らすために味方をどういう位置に立たせるか、それとも、あえて無難に範囲性の魔法は使わずに範囲性でない攻撃手段(魔法も含めて)を使うか…と、いろいろ考えることができる。敵側も、範囲性の魔法等を使ってくるため、敵側の巻き込みを起こすように、自分たちの立ち位置を考える…ということも可能。
    • 早い話、プレイヤーの腕や考え方次第で、いろいろなプレイが楽しめる。戦闘やキャラクター育成の自由度は、シリーズ随一。
  • キャラクター間のバランスは良好。 
    • 育て方や扱い方次第では、頭ひとつ飛びぬけてしまうキャラクターも一部存在するが、大半のキャラクターはおおむねバランスが整っており、キャラクターの多さを考えれば、奇跡的といえる。
      • かといって似通った性能のキャラクターは少なく、きちんと素のステータス・それぞれのスキルの最高ランク・装備できるスキルの数などで、キャラクターの個性をしっかり創りだしている。
    • 極端に弱いキャラクターはいないとはいえ、凡庸な性能のキャラクターもいるが、そのようなキャラクターは某主人公編で重要な戦力になるなど、きちんと見せ場が与えられている。仲間になるタイミングさえも、バランス調整に利用しているとみえる。
    • ライドオン組も終盤では敵に4桁ダメージを与えるなどかなりの火力を誇るが、上述の通り、他のバディと比べて行動などに制限があり、絶対無敵というわけではない。
      • ただし、某ライドオン組はそれを抜きにしてもかなりの火力を誇っている。廉価版では調整がなされ、その火力はだいぶ弱まったが。
  • サポートキャラクターの導入により、事実上『1』『2』よりも一人多く連れて行けるようになった。
    • ただ単にパーティーメンバーが一人増えただけでなく、様々な場面に応じて使い分けることで、いろいろなキャラクターを使うことができる。たとえば、資金稼ぎをしたいときは「お金発見」を持つ者、買い物をするときは「値切り」を持つ者、本腰を入れてボスと戦うときは「紋章師」などのステータスアップするスキルを持つ者…といった具合に、いろいろなキャラクターを使い分けることで、より多くのキャラクターに活躍の場を与えることができる。この使い分け自体も楽しいが、何より108人という大所帯を持つ『水滸伝』冥利に尽きるだろう。
  • 108人という大所帯を活かしたゲームバランス。
    • サポートキャラクターのことも含めて、資金繰りなどでは裏方を頼らざるを得ない*3。これにより、ミニゲーム担当者や交易商、売上金の一部をくれるレストランの存在意義が従来よりも高くなった。もっとも、レストランに関しては、別の面で存在意義が低くなっているが……(問題点にて詳述)。
      • 興行収入の一部をくれる劇場も例外ではない。劇場とは本作で初めて導入された施設である。ここではいくつかの演劇のキャスティングに仲間である108星を当てはめて上演することができるのだが、配役の自由度が高くキャラによって演技の傾向、得手不得手などが個性豊かに表現されているため、いかにお馬鹿で滅茶苦茶な展開を作れるか没頭するプレイヤーが続出した。むろん、上手いキャスティングを行えば、それだけ興行収入は増える。興行収入を稼ぐために真面目に配役を考えるのも楽しいし、上述のようにお馬鹿な配役を考えてネタにしてもよい。後者でも、それなりに興行収入は稼げる。また過去作のセーブデータをコンバートしていると過去作を題材にした演目が追加されるなどのファンサービスもある。
    • この点でもやはり、『水滸伝』冥利に尽きる、といえるだろうか。
      • しかし、108人という数はあまりに多すぎたのか、かなり難易度が上がってしまい、批判もされている(下記にて詳述)。
  • 防具の種類がわかりやすい。
    • かぶとの「かぶと」、「ヘルム」、よろいの「ローブ」、「服」、「皮鎧」、「鎖鎧」、「甲冑」に、それぞれ「ボロボロの」、「古い」、「傷モノの」、「新品の」、「出来のいい」、「高級な」、「最高級の」、「特製の」といった接頭語がついており、一部の例外を除いては、それぞれ右から順に防御力が高くなる。
    • むろん、これ以外にも、特殊効果があったり防御力以外の値を上昇したりする防具が存在する。しかし、たいていの防具は、防御力だけは上述のベースとなる防具に準ずるなど、わかりやすくなっている。
    • 今作では、キャラクターによってはある防具を装備すると防御力以外の能力値が下がったりするなど、防具着用時のステータス変動が複雑なのだが、このように防具の種類がわかりやすいため、複雑なのが苦手なユーザーでも、比較的ではあるがやりやすくなっている。
  • やりこみ要素は充実している。
    • 主人公D/E/F編が、プレイしなくてもクリア可能な寄り道要素として搭載されている。
      • ただし、主人公E編は移動範囲は本拠地の中だけで、住人たちの他の主人公たちに対する態度とは違うそれをみられる程度。しかしD及びF編では、他の3人の主人公たちのストーリーと同様に、いろいろなダンジョンや町に行って敵を倒しながらストーリーを進めることができる。F編は下記の通り問題点もあるが、D編はストーリーも良く、ボス戦や集団戦闘も充実しており、他の3人のストーリーと比べても評価が高い。おそらく、本作で最大のやりこみ要素かもしれない。
    • そのほか、上述の「ダンジョンボス」もおり、何度もとれる「薬草ポイント」や「生き倒れポイント」とあいまって、不必要なダンジョン探索を楽しくしている。
    • 従来通り、複数のミニゲームもある。
    • しかし、あくまでも相対的にみてだが、『2』よりはやりこみ要素が減少しており、そのことは批判されている(問題点にて詳述)。
  • キャラクターデザインは、今でも高く評価されている。
    • 装飾品や小物など細部がきちんと描き込まれており、洗練されている。かといって、良い意味でも悪い意味でも派手すぎたり華やかだったりすることはなく、全体的に色合いが地味で、機能的な部分もあり、戦記物特有の泥臭さはきちんと残っている。
      • 特に警備隊小隊(ゲド隊とそのライバルのデューク隊も含めて)は、服装が機能的でありながらファッショナブルで、評価が高い。
  • ユーザーインターフェースは良好。
    • 本拠地にいれば、パーティーにいない仲間の装備替えや買い物などがまとめてできる。
    • 隊列の変更が、パーティー変更と同時にできる。
      • また、隊列変更時とパーティー変更時を含めて、ステータス画面で協力攻撃を確認できる(ただし、二人のみでの協力攻撃はその二人が同じバディにいるときのみ)。
  • ロードやキーレスポンスなどの処理速度が速い。特にロードは「Now Loading」の表示が出るか出ないかするうちに終わってしまうことが多い。
  • その他ビジュアル面
    • GONZO制作のOPは、アニメーションによるムービー・曲ともに素晴らしい。
      • ちなみに、OPの主題曲は姫神が担当している。
    • BGMも良曲ぞろい。いずれの曲も、各場面の雰囲気や背景・世界観をうまく表現している。
    • サウンドのクオリティが高い。
      • BGMはもちろんのこと、効果音も聞き心地が良い。
    • 背景やエフェクトのCGが美麗。
      • 草原や森林などの大自然も、都会の建物やアスファルトなども、美しく描かれている。
      • 下記のとおり、魔法のエフェクトはシリーズ最高峰と言っていいほど美麗。
      • 作中で一瞬しか出ないのが残念だが、本拠地の一部を映し出したムービーシーンがあり、日に照らされるそれは息をのむほどの美しさである。
    • 戦闘中の演出が凝っている。
      • カメラワークを駆使したり、協力攻撃や魔法の演出を派手にしたりするなどして、見ていて楽しい戦闘シーンに仕上げている。

賛否両論点

  • 『1』『2』から著しく複雑化した戦闘システム。
    • よくいえば単純明瞭でわかりやすい、悪くいえば平凡で突出した良さのないシステムを採用していた『1』『2』に比べて、上記のような複雑で理解するのに時間を要するシステムを採用していた本作は、シリーズファンでも賛否が分かれることになった。
    • しかしながらシステムそのものの完成度は高く、戦略を練る楽しさもあるので、この戦闘システム高く評価する声もある。もっとも複雑化したといっても飽くまで『1』『2』と比較した場合であり、最近のゲームに比べてそこまで複雑というわけでなく、むしろ理解してしまえばやりやすいものである。当時のゲームとしては、他作品と比較しても少々複雑だったかもしれないが…。
  • スキルシステムの導入によるキャラクターメイキングの複雑化。
    • 上述の複雑な戦闘にかなりの大きな影響を与えるため、きちんと考えて鍛えなければならず、こういったことが苦手なユーザーを困惑させた。
      • ただ、キャラクター間のバランスを保ちつつ、それぞれのキャラクターの個性を出すには、かなりいいシステムだといえる。
        それに、キャラクターメイキングの幅とそれに伴う戦略の幅が増えたことで、本作を楽しむユーザーも少なからずいた。
  • 防具装備時のステータス変動の複雑化。
    • 防具の防御力は固定だが、そのほかの能力値の変動は、防具一つ一つ、キャラクター一人一人によって違う。例えば、重い装備を非力なキャラクターに装備させると素早さや回避が下がるなど。単純に防御力の高いものを装備すればいいというわけではなくなった。
      • 逆に言えば、装備選択の幅の広がりという楽しさが増えたということでもある。それに、上述の通り、防具の名前で強さがわかりやすくなっているため、比較的ではあるが、こういうことを考えるのが苦手なユーザーにもわかりやすくなっている。
  • 「集団戦闘」に対して、「戦争っぽくない」「名もなき一兵卒の存在がないがしろにされている」などの批判の声がある。これはシステム上、108星、つまり上層部クラスの者たちが主流戦力になってしまうため。
    • しかし、通常戦闘の要素を取り込んだため、普段は使わないキャラクターの活躍を直で見ることができたり、より多くのキャラクターの強化が実を結んだりするため、システム面での評価は高い。従来までは(そして後続作品でも)、戦争イベントにおいて大半のキャラクターの貢献度が高くない上にわかりにくかったため、普段は使わないキャラクターが戦争に参加しても彼らの存在意義を実感しづらく、ステータスが反映されることもなかったため、普段は使わないキャラクターを強化する意味もあまりなかった。
      • それ以外でも、戦略面やバランス面などある程度練られており、従来のみならず後続作品と比べても、比較的きちんと作りこまれている。
      • まとめれば、「システム面ではかなりいいが、演出面では微妙」と言えるかもしれない。システム面をとるか演出面をとるかは、本作に限らず、製作スタッフにとっての悩みのタネと言える。
    • 一応敵軍は言わずもがな、自軍にも中盤あたりまでは名もなき一兵卒が集団戦闘に参加してくれることもある。但し、終盤になると自軍は完全に108星オンリーになるが。
  • 『1』『2』から、戦闘のテンポが悪化した。
    • 従来までは、敵味方ともに素早さの順でほぼ同時に行動していたが、本作ではキャラクターが一体ごとに行動するようになった。
      • フリーポジショニングバトルシステムの併害である。従来までと違い、個々のキャラクターの立ち位置がシステムの要となるため、キャラクターの素早さの順で、「どのキャラクターがどの位置にいるか」を、個々のキャラクターの行動終了ごとに定めておかなければならないからである。
      • もっとも、繰り返すが、このフリーポジショニングバトルシステムは戦略の幅を広げているため、決して批判一辺倒ではなく、高い評価も得ている。
      • それに、戦闘中はキャラクターも移動は素早く動いてくれる(大型のモンスターは別だが)。上述の通り、2ターン目以降は敵味方同士近接している場合が大半なため、移動はほぼなしで、2ターン目以降はむしろテンポが良い。バディシステムの恩恵により、コマンド入力も従来までの6人分から3組分に減ったため、そこに限っていえば『1』『2』よりも早くなった。確かに、全体的に見れば『1』『2』よりは悪化しているが、他作品と比べてそこまで悪いわけではない。戦闘以外の面でも、ロードなどの処理が速かったり、エンカウント率が低かったり、ダンジョン攻略が簡単だったりで(もっとも、後ろ二つは下記の通り別の問題を生んでいるが…)、ゲーム全体としてみればテンポ良く進められる。
    • 上述の通り、協力攻撃や魔法の演出やエフェクトは派手だが、逆にいえば、テンポの悪化にもつながっている。アイテムや魔法の使用時や協力攻撃を行う際のキャラクターのモーションも、大げさかつ冗長。
      • カット機能も実装されていない。それさえあれば、戦闘のテンポが悪化したという評価自体がかなり変わったと思われる(ちなみに、後続作品にもカット機能は付与されていない)。
  • トリニティサイトシステムにより同じイベントを見せられることに対する批判の声がある。2回目以降で見るイベントにはカット機能がほしかった、という声も。
    • それでもセリフは飛ばせるので、見たくなければボタンを連打すればよいだけのこと。カットするよりも時間と手間がかかるのは確かだが。
    • ストーリーの進め方次第では、忘れたころに同じイベントを見ることがあるので、「ああ、そういえば、こんなシーンあったっけ」と感慨に浸ることや、ストーリーの復習をすることもできる。
    • また、同じイベントでも主人公によって印象が変わることもある。そのあたりの演出面での作りこみは見事。
+ 以下はその一例。ネタばれ注意!
  • 序盤で、主人公Aと主人公Bが対面するシーンがある。主人公Aの視点でこのシーンを見た場合、尊大で差別的な態度をとる主人公Bの従者に対して腹が立つが、一方で主人公Bの視点でこのシーンを見た場合、自分の従者(上述の従者とは別人)に対して暴言を吐く主人公Aの友人に対して腹が立つ。それと、主人公Aの視点では見ることができないが、後に先ほどの主人公Bの従者は、主人公Bを守るためにあえて主人公Aらにきつい態度をとったということがわかる。
  • 主人公Dとその従者たちが一致団結するシーンがある。むろん、主人公Dの視点で見た場合かなり盛り上がるシーンなのだが、物陰で密かに傍観しているだけの主人公Cの視点で見た場合では、盛り上がることはない。実はこのシーンのとき、主人公Cの視点と主人公Dの視点とで流れる音楽も違う。
  • 難易度の上昇。『1』『2』と比較してもだが、当時としては同時期に発売された他作品と比較すれば、難易度は結構高い。
    • 物価がかなり高く、装備をそろえたり武器を強化したりするのに、かなりの時間と労力を要する。
      また、本作では、レベルよりもむしろスキルによる能力上昇に依存することが多いため、このことでも、多くの戦闘を必要とする。
      • 上述のエンカウント率の低さが、ここであだとなってしまっている。エンカウント率が低いため、ろくに装備やスキルを強化しないでボス戦にそのまま突入してタコ殴り、なんてことも。結局、金稼ぎやスキルポイント稼ぎのために敵と戦うので、エンカウント率の低さがここで裏目に出ることになる。
    • 中ボスも曲者が多く、前作のルカ・ブライト以上に苦戦する相手がたくさんいる(但し、パーティー編成の違い(3パーティーか1パーティーか)や、対戦後の一騎打ちの必要性の有無は除外して考えるものとする)。
    • このような厳しい難易度のため、途中で投げ出すユーザーも少なくなかった。
    • しかしながら、決してクリアできないような理不尽な難易度ではなく、地道にレベル上げやスキル・装備・武器の強化を行えば、クリアは十分に可能。むしろゲーム慣れしている人やヘビーなユーザーからはやり応えがあると好評。
  • 映像の3D化。
    • もはやドット絵を採用していたシリーズの宿命ともいえるが、『1』『2』のようなドット絵を好むシリーズファンからは、批判対象とされた。
      • しかし、後述するように人物はともかく背景の3DCGはクオリティが高く美麗。3D化によるシリーズの世界観の破綻はなく、きちんと背景やキャラクターデザインで従来通りに保たれている。
      • が、4や5のように「3D化で世界観の色彩が失われた」ということが問題視されているとかいないとか…。
  • その他の部分を『1』『2』と比較して…。
    • アジア風の街や建築・人物が著しく減少した。「『水滸伝』でありながらなんというざまだ」という批判の声もあった。
      • その一方で、本作を「シリーズで最も水滸伝らしい」とみなす意見もある。というのも『水滸伝』はもともと多くの英雄を主人公とした群雄劇であり、本作で採用されているトリニティサイトシステムは、『水滸伝』を表現するものとして一役かっているとみなすこともできる。そういった意味で、「天魁星」を中心とした『1』『2』よりも『水滸伝』らしいといえる。また、本作の「天魁星」に相当する人物が「弱すぎて頼りなくて、(『1』『2』と比較して)天魁星の器ではない」という意見もあるが、そもそも本家本元の天魁星が『1』『2』の様な「優れた戦士であり指導者」ではなく、本作の天魁星のような人物である。
  • 『1』『2』とのストーリーの方向性の違い。
    • 『1』『2』によくみられたいわゆる「感動シーン」がないという批判があるが、実際にはまったくないわけではない。
+ 例を挙げると……。ネタばれ注意!
  • 『2』の主人公の義姉、『1』の主人公の従者と友人よろしく、主人公Aの友人、主人公Bの父親が死亡する。しかも、敵に目の前で殺されたという点も、義姉及び従者と友人と同じ。
  • 「主人公らとその関係者との人間関係が希薄」「『1』『2』のような強い友情、身内同士の強い絆がない」などの批判も。しかしながら、キャラクター間の人間関係が希薄ということは簡単には肯定できず、むしろ…。
+ ネタばれ注意!
  • 主人公Aには、親友と呼べる人物や、深い愛情を注いでくれる母親が、
    主人公Bには、陰ながら見守ってくれたり時には支援もしてくれたりした父親や、スピリチュアルなところで昔からつながっていた少女が、
    主人公Cには、自分の正体を明かせる古い部下はじめ信頼しきっている部下たちや、昔ともに闘っていた仲間たち(一人は物語が始まるころにはすでに故人だが)が、
    主人公Dには、自分たちの命を賭けてまで守ってくれる従者たちがいる。
  • 問題は、これらのことがあまり強調されず、評価点に書いてあるような「それぞれの主人公の視点から次々と明らかになる真実」や「偏見や差別の醜さ」が強調されていることだろう。
  • 『1』『2』と強調する点が違うことから、賛否がわかれてしまったといえる。とはいえ、評価点にあるように、シナリオそのものは決して悪くはなく、むしろ上出来といえるのだが。
  • 『2』のとあるキャラクターの扱いも、意見が割れる原因になったといえるだろう。
+ ネタばれ注意!
  • そのキャラクターは本作では敵側になっており、事実上のラスボスでもある。シリーズに深くかかわるとある人物に近しい人物で、『1』『2』と強制的に仲間になるキャラクターとして登場し、活躍の機会も多かったため、彼に深い思い入れを持つ人やファンも少なくなく今尚シリーズ屈指の人気を誇る。
  • そのような人々からは、彼が哀れな最期を迎える本作のシナリオを作品単体の評価と言うよりも「過去作ファンとしての思い入れ」から批判されている。

問題点

  • 「性格」について
    • キャラクターの「性格」が、ステータス画面等で確認できず、個々のキャラクターの得物や雰囲気、特徴等でしか判断するしかない。
      「手裏剣使い」、「弓使い」、「魔法使い」は、得物などでわかるが、「バーサーカー」、「攻撃的戦士」、「防御的戦士」は、キャラクターの戦闘時の行動で判断するしかない。
      キャラクターの「性格」を推測する楽しみを残すためにあえて確認できないようにした可能性も考えられるが、キャラクターの雰囲気や特徴などで判断しようにも、美形の騎士が「バーサーカー」だったり、無骨な傭兵が「防御的戦士」だったり。いい意味でも悪い意味でも、プレイヤーの期待を裏切る設定がなされている。
      • もっとも、この場合、前者は熱血正義漢で、後者は冷静な判断力で部下を指揮したりする。要は、解釈の問題で、めちゃくちゃな設定が付けられているわけではない。
  • スキルに関して
    • スキルの「素質」の中で、消費スキルポイントが少なくSランクまで上がる「天才的」と消費スキルポイントは少ないがB+ランクまでしか上がらない「伸び悩み」、消費スキルポイントは多いがA+ランクまで上がる「大器晩成型」と消費スキルポイントも高くCランクまでしか上がらない「全然ダメ」で、指南者のセリフが同じ。スキルはB+ランクも上がれば十分なので、「天才的」と「伸び悩み」の区別がつかないのはさほど問題ではない。むしろ、同じB+ランクまで上がる「普通」よりも消費スキルポイントが少ないので、「伸び悩み」のスキルを鍛えるのは得。「天才的」でないことを知ったときのガッカリ感はあるが。問題は、「大器晩成型」と「全然ダメ」。
      • スキルは、A+ランクまで上げればかなりの効果があるものの、Cまで上げてもあまり意味はない。要するに、「全然ダメ」は指南者のセリフでは判断できない、いわゆる「地雷スキル」である、ということ。汎用スキルであればはずせるとはいえ、はずすのにもスキルポイントを使うし、それまで使ったスキルポイントも無駄になってしまう。
      • 一応、例えば魔法使いキャラの場合、武術スキルはほとんど「全然ダメ」だし、逆に学術スキルが「全然ダメ」ということはまずない(ので、「大器晩成型」を疑うことは不可能ではない)など、予測の余地はある。また、とあるキャラクターの固有スキルを、「全然ダメ」だと思ってしぶしぶ鍛えてみたら、A+ランクまで上がった、ということもなきにしもあらず。仲間の指南者も、目安箱で、誰のどのスキルを鍛えたらいいかを、教えてくれる(ごくごく一部のキャラクターのみだが)。このキャラクターのこのスキルは「大器晩成型」か「全然ダメ」か、と推測する楽しみもある。
      • しかし、一番の問題は、「天才的」と「伸び悩み」、「大器晩成型」と「全然ダメ」の、区別があることを、作中でも説明書でも、誰も教えてくれないことにある。一応、Sランクまで上がると思って鍛えたスキルがB+ランクまでしか上がらなかったり、上述のように、Cランクまでしか上がらないと思っていた固有スキルを鍛えていたらA+まで上がったりして、特殊な「素質」の存在を疑う余地は残されているが。
    • 「役職」というシステムがあり、キャラクターを何かの役職に就かせることで、そのキャラクターのあるスキルの上限ランクが上がる。
      しかし、このことを「役職」担当のキャラクターを含めて誰も教えてくれないので、役職によってキャラクターのセリフが変わることもあって、ただのお遊びシステムだと思い込んだユーザーが多かった。
  • ダンジョンの構造が、単純な上に短い。
    • ただし、たいていのダンジョンは、「ダンジョン」というよりはむしろ次の目的地に着くまでの「ルート」のような役割をしているので、それであえて単純な構造にしたことも考えられる。もしくは、容量削減か予算の関係か。
  • 上述の通り、背景やエフェクトのCGは美麗なのだが、人物の造型がいま一つ。体形はずんぐりむっくりで表情も硬い。公式画と顔が違う人物がごくわずかながらいる。モーションもイベント時と戦闘時と含めて、各キャラクターで被るのもある。
  • 操作性が悪め。
    • 特に、移動速度が遅い。クリスだけは騎士状態の時は馬があるが主人公全員馬があれば批判もなかっただろう。
      • その馬にしても、ダッシュ時に止まるといちいちいななくため、扱いづらい。
  • イベント発生のフラグがわかりにくいのがいくつかある。
    • いくつかの場合ヒントが示されず、モブキャラがヒントを教えてくれるということもない。
    • 一応『1』『2』同様、次にすべきことのヒントを教えてくれるキャラクターはいるが、200ポッチ支払わなければ教えてくれない。上述の通り、本作は金策にかなり苦労するので、200ポッチでもそこそこの痛手である。
    • もっとも、同じ役割を担うキャラクターが『1』では噂話大好きな主婦、『2』では知識豊富な御隠居だったのに対し、本作ではプロの占い師なので彼に金を支払うのは設定上道理ではある。100ポッチ支払えばレアアイテムの在りかを、50ポッチ支払えばプレイヤーの運勢を占ってくれるという、他の二人にはない利点もある。
  • 前作までにあった合体魔法が廃止された。バディシステムを活かす要素の一つになったと思うのだが……。
  • サポートキャラクターのバランスは良いとは言いづらい。
    • 低ランクのスキル一つしか所有していない者もいる一方で、高ランクのスキルを3つも持っている者もいる。
      本拠地での施設を担当するものとそうでない者とで差がつけられているかというと、それも微妙。本拠地での施設を担当しているのにサポートキャラクターとしても優秀な者もいる。
  • ストーリーに関して
    • 後半以降は、少し駆け足気味の展開。まあ、これはシリーズ恒例の要素だが……。
    • ほぼ一本道の展開。上述のようにそれぞれの主人公のストーリーを自由に進めることができるといった自由さはあるものの、個々の主人公のストーリーはほぼ一本道で進められる。
      • 一本道展開自体はシリーズ恒例の要素なのだが、本作の場合、上述のようなマップセレクト方式で、かつ、町やダンジョンは、ストーリー上次に行くことにならない限り、解放されない。それ故に、従来に比べて一本道感が増している。
    • 一部説明不足なところがあり、プレイヤーの想像で補わざるを得ないところがある。
      • 特に、ラスボスに関しては、本人の目的こそわかるものの、そこに行きつくまでの経緯や動機がきちんと描かれていないため、説得力に欠けるところがある。同じ(ような)境遇の人物に対して嫌味を言うため、そこから「何かはあったのだろう」と推測できなくはないが。
    • 108人の仲間をそろえたうえでクリアした場合にプレイできる「主人公F編」が、蛇足と不評。「プレイしないほうがいい」と勧める人も多数。
      • 飽くまでも本編とは関係のないおまけ要素なので詳細は省くが、本編でのあの衝撃シーンは実はある人物たちによる仕掛けが原因だったという設定からくる矛盾、ある人物たちの本編での態度とこの「主人公F編」でのそれの違いなど、違和感をおぼえるものが多い。
      • ゲーム的にも面白いとは言えず、ストーリーの問題で仕方ないとはいえ、強制的に特定の町やダンジョンに連れていかれて、そこでひたすらイベントを回収する、といったもの。
  • 『2』から導入された食糧アイテムの価値が暴落した。
    • 今までは食糧アイテム以外の回復アイテムは「おくすり」と「特効薬」の2種類しかなかったのだが、今作ではその「おくすり」と「特効薬」にAからDまでのランクが付き、食糧アイテムの以外の回復アイテムが8種類に増えた。一番効果が小さいDが従来までの効果である。つまり、Aになると回復量がかなり大きくなる。
      ちなみに、上述の薬草ポイントの「成長すればするほど、効果の高いものが手に入る」というのは、このランクのこと。
    • 食糧アイテムの絶対的な価値も落ちている。回復量も前作に比べて落ちているのに加え、一枠で持てる量も若干減っている。『2』での食糧アイテムは、一枠でたくさん所有できるうえに回復量も多いという、「おくすり」や「特効薬」をしのぐ価値があった。
    • そのうえ、本作では、食糧アイテムに新たに「品質」の概念が導入され、時間が経つにつれて効果が低くなるようになった。最高で120%の効果が得られるが、1時間足らずで100%の効果、3時間以上経つと80%の効果となり、どんどん下がって、しまいには40%という効果にまで暴落する。「おくすり」や「特効薬」には、この「品質」の概念はないため、いつまで持っていても効果の落ちない「おくすり」や「特効薬」を持っていたほうが、堅実かつ無難ということになってしまう。
    • おまけに、「おくすり」、「特効薬」は、上述の薬草ポイントと本拠地の施設である「畑」で、無料で手に入る。食糧アイテムを無料で手に入れる手段は、「コック」というスキルを持ったサポートキャラクターを連れて行くぐらい。逆にいえば、そうすることで、食糧アイテムの価値を上げることができるのだが、他にも有用なスキルを所有するサポートキャラクターはたくさんいるので、根本的な解決にはならない。
    • したがって、食糧アイテムを手に入れられる施設である「レストラン」は、ただ売上金をもらうためだけの施設へとなり果ててしまう可能性が高い。もっとも、金策に苦労する本作では、それだけでもかなり価値のある機能なのだが。
      • ただ、食糧アイテムには、バッドステータスを回復したり、グッドステータスになったりするものもあるので、食糧アイテムが完全に無価値になったわけではない。
  • 『2』に比べて、やりこみ要素が減少。
    • クライブイベント、料理対決イベント*4、ヒックス&テンガアールイベント*5、フッチ&ハンフリーイベント*6などのようなサブイベントがない。
    • ミニゲームの数もやや減少。それに伴って、コレクション要素も削除及び削減された。
      • とはいえ、あくまでも『2』と比べての話であり、上述の通り、単体で見れば十分なやりこみ要素が搭載されているのは確か。

総評

「大変革」と言っても差し支えないほどの新システムの導入やシナリオの方向性の転換など、シリーズファンからは何かと批判を受けやすい要素が多く、その上、当時としては複雑なシステムなどもあり、発売当初はなかなか高い評価を得られなかった作品。
しかし、優れたバランスや、複雑ながらも完成度の高いシステム、108人のメンバーを活かしきったゲームデザインなど、高く評価できるところも多かったため、新規ユーザーからは好評を博することが多く、シリーズファンの中にも本作の変化を積極的に受け入れた上で、シリーズの原点となる『1』、PSのRPG全体で見ても高い評価を得た『2』と遜色ない作品として本作を最も推す人も少なくない。
シリーズの中での立ち位置はひとまず置いておくとして、高い完成度を持つ優れた作品と言えるのではないだろうか。


余談

  • 前作『2』のセーブデータをコンバート*7できる機能が付いているが、初回版にはストーリーの分岐により、リドリーではなくボリスが仲間に入っているセーブデータだとコンバートできないバグがある。
    • この場合、素直にコンバートを諦めるか、リドリーが生存しているデータを用意するか、外伝経由でコンバートするかのいずれかの対処が必要。
    • コナミに問い合わせると修正版と交換してもらえるそうだが、現在もやっているかは不明。
    • なお、ゲームアーカイブス版ではコンバートは不可能。
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  • PS2
  • RPG
  • コナミ
  • 幻想水滸伝

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最終更新:2022年07月17日 14:57

*1 最終的に一人の視点に絞られる。また若干トリッキーな方法ではあるが前作同様に名前を好きに変更することも出来る

*2 ルシアは『2』制作時点では天威星として仲間になる予定だったが、後に『1』の天威星・ペシュメルガ続投が決まったことにより最後まで宿星入り出来なかったという裏話がある。本作で15年の時を経て天威星の仲間入りとなった

*3 無論、頼らなくても時間さえかければどうにかなるが。

*4 両者とも、『2』の項目を参照。

*5 各地でアイテムを集める。本編で行く必要のない村に行って、二人に会うことが条件。

*6 本編で行く必要のないダンジョン(ボス戦付き)のクリア必須。

*7 ラスボスを倒した後のセーブデータをあらかじめPS2用メモリーカードにコピーする必要がある。