新世紀エヴァンゲリオン

【しんせいきえゔぁんげりおん】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 セガサターン
DVDプレイヤーズゲーム
発売元 【SS】セガ・エンタープライゼス
【DVD-PG】キングレコード
発売日 【SS】1996年3月1日
【DVD-PG】2004年6月2日
定価 【SS】5,800円(税別)
【DVD-PG】5,040円
レーティング 【SS】セガ審査:全年齢推奨
判定 なし
ポイント 最初のエヴァゲー
TVアニメ版と並行して製作した故の設定齟齬
新世紀エヴァンゲリオンシリーズ


概要

90年代半ばにおいて一世を風靡したTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を題材にしたゲーム。その中でも本作は最初に発売された作品である。
ちなみに、TVアニメの放映中に発売された唯一のゲーム作品でもある。


特徴

  • アニメーションムービーの間にコマンドを入力するタイプのゲームであり、日常パート・戦闘パートのふたつから成り立っている。
  • 日常パートはムービーの間に挟まれる選択肢を選び、その選択によってストーリーが分岐するオーソドックスなADV形式。
  • 戦闘パートはスロット・ボタン入力・マップ移動の3つのパートを繰り返し、どちらかのライフが0になると終了*1となる。
    • ライフゲージはEVAや使徒の立ちグラフィックで表されている。
  • スロットは3つのリールをボタン押しで止め、味方パネルが2枚以上で攻撃ターン、敵パネルが2枚以上で防御ターンとなる。
    • パネルの下に書かれている数字の合計が基本の攻撃値になる。
  • ボタン入力は敵のムービーを見て、制限時間内に敵の状態によって適切なボタン入力を行うLDゲームのような内容になっている。
    • 攻撃ターンはL・Rボタンで距離の選択、十字ボタンで攻撃方法の選択を行った上でCボタンで決定する。成功すれば敵にダメージを与え、失敗すれば反撃を受けてこちらが逆にダメージを受ける。
      成功時のコマンド入力が早いほど敵に与えるダメージが大きくなる。また、Aボタンを押した場合は攻撃をせずにマップ移動に移行する。
    • 防御ターンはL・Rボタンで距離の選択、十字ボタンで敵の攻撃方向の選択*2、A・Bボタンで防御方法の選択を行った上でCボタンで決定する。成功すればダメージを減少させられるが、失敗すればダメージをそのまま受けることになる。
      成功時のコマンド入力が早いとダメージを無効化したり、無効化した上で攻撃ターンに移行することもできる。
  • マップ移動は3Dで表示された要塞都市を指定された移動距離の数だけすごろくのように移動する。
    • 止まった場所が水色のマスの場合はシンクロ率が上がったりライフが回復する。赤色のマスはその逆。
  • TV版第九話と第拾話の間(イスラフェル撃破後)という設定であり、ゲーム冒頭でシンジが使徒(山下いくとデザインによるオリジナルのもの)に記憶を奪われるところから物語が始まる。
    • その後の弐号機との模擬戦の結果と直後の選択肢次第で、おおまかに「戦闘編」「学校編」「放浪編」の3ルートに分かれる。
  • マルチエンディングであり、プレイヤーのあなたがエヴァンゲリオンの監督になるというのが宣伝文句の一つであった。
    • 初回起動時に監督名の入力が必要。エンディングにてその名前がクレジットされる。*3
    • エンディング後にはプレイムービーを保存することが可能。TVアニメのようにストーリーを通しで再生することができる。
      再生したムービーには分岐したシナリオに対応したタイトルやアイキャッチが挿入される。早送りやチャプタースキップも可能。
  • 1回のプレイ時間は約30分であり、ストーリーはアニメ感覚で進行。ゲーム内で使われているアニメは本編からの流用も多いが新規に描きおこされたものもあり、作画の質はそれなりに良い。
    • アニメーション画面はフルサイズではない。当時のゲームマシンでの処理能力を考えれば仕方のない部分ではある。
      • 綾波の正面アップ時、妙に面長に見える。他のシーンでは目立った違和感がないため、アスペクト比のせいなのか作画担当者のクセなのかは不明。
    • 選択肢や戦闘結果によっては30分もかからずに終了する。

評価点

  • アニメオリジナルのスタッフを起用
    • 本作のみに登場する使徒のデザインにエヴァンゲリオンのデザインに携わった山下いくと氏が参加している。*4
    • アニメーション制作会社も原作でガイナックスと名を連ねていたタツノコプロが担当している。
    • 脚本も原作中盤より参加した山口宏氏が担当している。後述の様に本作の参加が後の原作にも生かされているようである。
      • ただしアニメ版に参加した最初の話の脚本執筆作業中の参加だったため設定が把握できておらず、「こんな感じだろう」とつくった結果、下記のような衝撃の展開となった。
    • 勿論、声優はTVアニメ版と共通。
    • BGMもTVアニメ版と共通であり、おなじみの曲から、かなり意外な曲まで幅広い選曲がなされている。
  • 徹底したアニメーションによるゲーム進行
    • アドベンチャーゲームによくあるような画面中央に立ち絵、下にメッセージウインドウといった画面構成ではなく基本はアニメを視聴し、状況で選択肢が発生するというスタイル。『やるドラ』シリーズの先駆けともとれる。
      • 選択肢によってそれに沿ったアニメーションでストーリーが展開されていく。
    • 戦闘シーンもコマンドに合わせてアニメが用意されている。これは次回作ではポリゴン演出に変更されてしまった。
      • マップ画面は原作にあったワイヤーフレーム状のマップを利用しているのは原作の設定を上手く落とし込んでいる。
  • 「DECISIVE BATTLE」「ANGEL ATTACK」など原作の劇伴がしっかり使われている点。
    • CD音源ではなくサターン内蔵音源による演奏なので音質は原曲より劣るが雰囲気を壊すものではない。
  • 原作のOP・EDアニメが収録されている。前者はノンテロップ。

賛否両論点

  • このゲームはTVアニメ版と同時製作されていた。それ故に設定の齟齬も多く、特にファンから指摘されるのはキャラの呼称の問題である。
    • シンジがレイとアスカのことを「綾波さん」「アスカさん」と呼ぶのは、記憶を失っているからという理由があるが……。
    • レイがシンジ、アスカに対してそれぞれ「シンジ君」「アスカ」と呼ぶ*5
    • アスカもレイのことを「レイ」と呼ぶ。TV版では常に「優等生」「ファースト」と皮肉を込めたあだ名で呼んでいたため、違和感があるという意見もある。
      • とは言え、アスカはTVアニメ版でも初期の頃はレイのことを「レイ」と呼んでいたので初期イメージに準拠したとも言える。また、本作のアスカとレイはアニメ版と違って特に仲が悪い訳ではない。
  • 零号機の色がオレンジである*6。このゲームは第九話と第拾話の間という設定であるため、ブルーになっていなければおかしい*7
  • 「学校編」では、シンジが記憶喪失なのを良い事にアスカから嘘を吹き込まれてしまい、洞木ヒカリ(委員長)を自分の恋人だと思い込んでしまうという展開がある。
    • 選択肢次第ではヒカリの機嫌を取ろうとしたシンジが強引にキスする展開も*8*9
    • また、同じくトウジ達から嘘を吹き込まれてしまい、クラスメートの前で「シェー」(おそ松くんに出てくるイヤミのアレ)を披露するという展開もある。

問題点

  • 2周目以降のプロローグを除き、本編プレイ中は日常パートのムービーはスキップ不能。複数のルートで共通したシーンも多く、周回プレイを続けるうちに飽きてしまいやすい。
  • オートセーブのため、日常パートで選択肢を間違えてもやり直す事はできない。
  • 戦闘パートがとっつきにくく、慣れるまで時間がかかりやすい。
    • スロットはランダム性が強く、防御ターンが何度も選択されることがある。
    • ボタン入力の猶予はムービーが始まってから5秒程度しかなく、その間に敵の動きを見て適切なボタン入力をしなくてはならない。
      攻撃ターンで失敗すると確定で反撃を受け、防御ターンは入力する項目が攻撃ターンよりも多くより難しくなっている。
    • 上記の点から、ボタン入力の部分をオプションの戦闘訓練で何度も練習をしておかないと、非常に後味の悪い結末を何度も見る羽目になってしまう。
      • 一応、効果音によるコマンド正誤チェック法という裏技があり、これを利用することにより誰でも高速でコマンドを入力することが可能。
  • 弐号機との模擬戦でライフルを防御した時のアニメが使徒の光線を防いだ時の物が表示されるなど、戦闘アニメの一部で違和感のある部分が見られる。

総評

上述のような設定齟齬によりファンを困惑させた本作であるが、それらは『エヴァンゲリオン』というアニメの歴史がまだ浅く、キャライメージが固まっていなかった故なので、評価も人それぞれに分かれやすい点は考慮の余地がある。
実際、山口氏の述懐によると、発売当時のパソコン通信では「もちろん、悪く言っていたものもあったんですけど、おおむね好評」だったらしい。

「作劇上の理由で意図的に世界観を壊した」わけではなく、「発売時期が早すぎたせいで結果的に世界観が壊れた」という珍しい壊れ方をしているという意味では、「早すぎたエヴァゲー」という評が適切かもしれない。


移植・その後の展開

  • 1年後には続編の『新世紀エヴァンゲリオン 2nd Impression』が発売された。こちらはエヴァブーム真っ只中の発売という事もあって、しっかりとTVアニメ版に準拠した造りとなっている。おおむねの操作環境は本作をなぞっている。
    • 続編の発売に併せて本作も廉価版として発売された。その際に『1st Impression』がパッケージデザインとして表記され、ほぼ正式タイトルのような扱いとなった。続編の予習にもなる。
  • 2004年にDVD-PGに移植された。

余談

  • 分岐によっては、シンジが仲間達と「地球防衛バンド」を組むというシナリオに進むことがある。
    • 地球防衛バンドは続編の『2nd Impression』にも引き続き登場した。
    • 地球防衛バンドの持ち歌は、洞木ヒカリをボーカルとした「奇跡の戦士エヴァンゲリオン」という熱血調の曲。これは音声データがROM内に収録されており、説明書にも簡単な楽譜が載せられている。
  • オリジナル使徒は「奪ったシンジの記憶から、今までの使徒の能力やレイ・アスカの攻撃パターンを覚えた」という設定。ゲンドウの幻影を出すなどの精神攻撃も行う。
    • 使徒というより、(デザインなども含めて)いわゆるスーパーロボット物や特撮の怪獣という印象が強い。製作当時エヴァの資料が無かったため、製作スタッフには『トップをねらえ!』*10のイメージで作成したらしい。
    • エヴァも企画書の段階では王道のヒーローものであるかのように紹介されていたので、間違ってはいないのだが。
    • エヴァンゲリオンも、それに合わせてかスーパーロボットのような戦い方をする。
      • 新規に描きおこされた、「空手チョップをするエヴァ」や「光を身に纏い、渾身の力で突撃するエヴァ」はある意味必見である。
    • イベントで配布された本ソフトの宣伝用チラシは、往年の怪獣映画のパロディの様なデザインになっていたので、ある程度は狙って作られている模様。
    • 余談だが、アニメ版で山口氏の担当した脚本回で登場する使徒は精神攻撃を得意としているものが多かった。本作の経験がある意味生きているのかもしれない。
  • 用意されたオリジナル展開はやや無理があるものの、過去を乗り越えるシンジなど明るい展開もある。設定齟齬による怪我の功名かもしれない。
    • 折しも今作発売当時は本編も佳境に入り、最終回の後半まで鬱展開続き*11で、本作の明るい展開に救われたファンも多いようだ。
  • パッケージ絵の初号機をよく見ると口元の凹凸デザインがなだらかで下アゴが腫れあがったように大きく描かれてしまっており、ファンが見ると違和感を覚える。リリース前に作画チェックで誰も指摘しなかったのだろうか?
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最終更新:2023年10月17日 20:52

*1 戦闘によっては時間切れや一定のダメージを与えた時点で終了するものもある。

*2 DANGERの表示が点滅した方向に入力する。

*3 残念ながらOPはノンクレジットで流れる。TVのように監督名がデカデカとは表示されない。

*4 山下氏は原作での使徒のデザインには関わっていない模様。余談だが原作での使徒のデザイナーで著名な方はあさりよしとお氏である。

*5 本来、レイ→シンジの呼称は「碇君」で一貫している。また、レイはアスカを名前では呼ばない。

*6 アニメの制作中に並行して制作されたため、改修時に零号機が青色になるということをスタッフが知らなかったため。本作完成後に出来たオープニングを見て驚いたとか。

*7 そうでなくとも、オレンジ色の零号機には戦闘能力が無いため、このゲームのように実戦に参加しているのはおかしい。

*8 ヒカリはトウジに想いを寄せているため、当然ながらマジ切れされる

*9 アニメとゲームの制作時系列から考えてヒカリとトウジの関係は進展前であった可能性が高く、前述の補足にあるマジギレというより失礼すぎる行動への感情の現れだろう

*10 同じくGAINAXの作品で、庵野秀明監督の監督デビュー作でもある。

*11 発売前後に、ヒロインの1人が精神的に追い込まれてダウンしてしまったり、その翌週は別のヒロインが自爆して記憶が無くなるなどのヘビーな話が矢継ぎ早に続いた。奇しくもこれらは山口宏氏の脚本回であった。