メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ

【めたるぎあそりっどふぁいぶ ぐらうんど ぜろず】

ジャンル タクティカル・エスピオナージ・オペレーション


対応機種 プレイステーション4
プレイステーション3
Xbox One
Xbox 360
Windows Vista/7/8*1
開発元 コナミデジタルエンタテインメント
小島プロダクション
発売元 コナミデジタルエンタテインメント
発売日 【PS4/PS3/360】2014年3月20日
【One】2014年9月4日
【Win】2014年12月18日
定価*2 パッケージ版
【PS4/PS3/360】2,839円
ダウンロード版
【PS4/PS3/Win】2,362円
【One/360】2,380円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:D(17才以上対象)
コンテンツアイコン 暴力、犯罪
備考 海外版にも日本語インターフェイスが収録
判定 良作
ポイント 様々な新機軸を盛り込んだシステム
本編の導入部的存在だが豊富なやりこみ性
陰惨なストーリーと高い難易度は人を選ぶ
メタルギアシリーズ



平和が終わる、Vが目覚める。



概要

『メタルギアソリッドシリーズ』の最新作『メタルギアソリッドV ファントムペイン(以下、TPP)』のプロローグを描いた先行タイトル*3
ビッグボスを主人公とした作品では『MGS3』以来久々の据え置き機向けタイトルとなる。
本来は『TPP』に含まれる一本の作品として発売される予定であったが、諸事情により分割される事となった。
かねてから開発が進められていた「Fox Engine」を使った初のゲームであり、かつシステムの大幅な変更と大量の新要素を一足先に体験してもらうべく発売された。
シリーズ初のオープンワールド化やスマートデバイスとの連動、Win版を正式に国内のSteamストア*4向けに販売するなど新たな試みが行われている。


ストーリー

ピースウォーカー事件」から一年後の1975年。スネークたち「国境なき軍隊」は抑止力として核を持つまでに至っていた。
あくまで最終手段として世界には公表していなかったが、その情報を掴まれていたのか、IAEAからの核査察の打診が来ていたのである。
当初は受け入れるつもりはなかったが、ヒューイの勝手な判断によって査察を受け入れざるを得なくなってしまう。

一方、事件の際に生死不明となっていたパスの生存が確認された。
単身パスを救出に行ったチコは捕まり、スネークたちに救援を求める通信が送られてきていた。

スネークは査察団との対応をカズヒラたちに任せ、自身はチコとパスの救出にキューバ南端の米軍キャンプへ向かう。
これが新たな悲劇の始まりになるとも知らずに…。


特徴

  • オープンワールド化
    • シリーズ初となるオープンワールド化が行われているが、その意味合いは一般的なオープンワールドと少々異なっている。
    • これまでのシリーズはストーリーに沿って潜入するルートがある程度決められていた。しかし今作では画面切り替えが一切存在しない比較的広大なシームレスステージが用意され、如何に目的地を見つけ出し、どのようなルートで潜入していくかがプレイヤーの自由となった。
    • ただし、本作においてはひとつの基地が舞台で、本編かつ次回作である『TPP』に比べて相当狭い*5フィールドとなっている。
      • また、『TPP』ではリアルタイムの天候や時間帯の変化により、敵のプレイヤー認識能力が変化するといった要素も盛り込まれた。本作『GZ』では天候・時間帯だけはミッションごとに固定されている。
    • セーブはチェックポイント通過時に自動で行われるのみで、任意セーブは出来ない。
      • チェックポイントは文字通りポイントでありストーリー進行とは連動していない。同じ場所を通過すれば何度でも上書き保存される。
  • アクションの変更
    • 大きく変更された点に「ダッシュ移動」と「ジャンプアクション」の追加が上げられる。
    • ダッシュは左スティック押し込みで使用出来、これまでよりアクティブな移動が可能となる。かなり見つかりやすくなってしまうが、攻略時間を短縮して高ランクを狙いやすくなる。
      • 通常状態より若干速度は落ちるものの、敵を担いでいる状態でも行える。敵を担ぐアクションもファイヤーマンズキャリーに変更。アクション中も片手武器を扱えるようになり、過去作よりも素早い運搬が可能となった。
    • ジャンプアクションは特定の場所でしか行えない状況アクションの一つだが、これまでは登れなかった高い段差を越えたり、建物から建物へ飛び移ることが可能になり、よりスピーディーで柔軟な潜入が可能になっている。
      • 敵の攻撃を避ける緊急回避アクションが変更。『MGS2』以降おなじみだったローリング(飛び込み前転)ではなくなったが、即座に匍匐状態になることも出来る。敵に体当りすることで地面に倒すことができるのは変わらない。
    • シリーズおなじみのCQCも拡張され、どの武器を持っていても使えるようになり、敵の武器を奪う・壁張り付き状態からのCQCといった事も可能になった。
      • 伏せ状態のホールドアップでそのまま尋問が行えるようになった他、近くにいる仲間を呼ばせることも可能。うまくやれば確認にやってきた敵をひとりずつ連鎖的に無力化することもできる。
    • シリーズ伝統だった画面表示(ライフゲージ・気力ゲージ・敵フェイズ表示)がほとんど撤廃された。明確なHUDは武器表示と、こちらに気づいた敵の気配を示すインジケーターのみ。
      • 『MGSV』でのライフはFPS・TPSなどでよく見られる時間経過による自動回復制を採用。ダメージを受けると画面がフィルム焼けの様になる。
      • ダッシュは無制限に行える。
      • 一定以上のダメージを受けると重傷となり、救急スプレーを使用して回復するまで様々なデメリットが起こる。
    • 『MGS3』からお馴染みのカムフラージュ率は表示こそされないものの、草むらに隠れたり敵を担いでいると見つかりにくいなどシステムとしては密かに存続している。
  • 無線システムの変更
    • 無線は通常画面でボタン一発で使用可能になった。状況や見ているものに応じて助言を受けることが出来る他、強制無線も画面切り替えを行わずに自動的に行われるようになった。このため、無線画面はなくなった。
  • 双眼鏡
    • 使用する機会が多い今作では装備品枠から外れ、ボタン1つでいつでも使用可能となった。
    • 指向性マイクを内蔵しており、物音や敵兵の会話も聞くことができる。会話は何気ない雑談からミッション攻略のヒントになるものまで様々。
    • 『PW』同様に敵兵のマーキングも行える。マーキングがミッション中永続になった他、マーク済み敵兵が壁越しでも確認可能になったことで、レーダーの撤廃を補う強力な要素へと強化された。
      • 今作ではカメラや車両、対空機関砲などにもマーキングが可能。これらの設置物は後述のiDROIDでも確認できる。
  • iDROID
    • MGSVでスネークが使用している携帯情報端末システム。
    • マップを表示してマーキングした敵やカメラを確認したり、回収用ヘリのランディングゾーンを指定する、入手したカセットテープを聴く事などが行える。
    • ただしこのiDROIDが絡む操作(マップメニュー・ミッションメニュー等)はリアルタイムであり、ポーズ画面ではない。安全な場所でないと迂闊には使えず、緊張感が増した。
      • ポーズメニューがなくなったわけではないので、そこはご安心を。
    • コンパニオンアプリをスマートフォンやタブレット端末へインストールする事で、それらから並行して操作することも可能になっている*6
    • システムボイスは『PW』のテーマ曲「Heavens Divide」および『TPP』のテーマ曲『Sins of The Father』のボーカルを務めたドナ・バークが担当している。
  • 乗り物の操縦
    • これまでも乗り物に乗って進むシーンのあるタイトルはあったが、今作では基地内に放置されている乗り物に乗り込んで自由に使用することが可能になった。
    • 以前のシリーズでもあったトラックの荷台に隠れて潜入するといった事も可能。
    • 乗り物には救出した捕虜を乗せることも可能で、素早く安全圏へ運ぶのにも役立つ。
  • リフレックスモード
    • スネークが敵に発見された際に発動する新要素。存在が知られていない状態で見つかると画面がスローモーションになる。
    • このスローモーションの間に敵を無力化できれば警戒態勢への移行を回避できる。
      モード中は武器を構えると自動的にその敵に向き直ることが出来る(ただし、細かな照準はプレイヤー側で行う必要がある。またスロー中でも対処に時間がかかればそのまま警戒態勢になってしまう)。
    • 後述のトライアルレコードやミッションスコアに関係することもあり、オプションからオフにしておく事も可能なので、従来の緊張感を損なわない配慮もある。
  • ミッション制の継続採用
    • 本作のメインストーリーは1ミッションだけという短編で初見でも最短1~2時間程度でクリアは可能だが、その後に『PW』と同様のサイドミッション「SIDE OPS」が複数用意されている。
    • 舞台は同じ基地内であるが、ミッションに応じて様々な目標が用意されている。
      • 「もし、パスが発見されずスネーク達が普通のミッションで同地域を潜入することになったら」と言うif路線でミッションが進む。
      • 本編よりも短いながらもプレイ方法によって隠された真実が明らかになっていく。その真実には前作で明かされたとある組織の関与が…
  • トライアルレコード
    • ミッションクリア後に記録されるプレイレコード。これまでのシリーズでも行われてきたミッション毎のランク評価においてはそのスコアポイントが明示されるようになり、さらにオンラインランキングで全世界のプレイヤーと競い合うことが可能になった。
    • またミッション中における特定の条件が自動的にシークレットレコードとして集計されている。
      単純なミッションクリア・今いる敵全員のマーキング・無力化や完全武器未使用クリアなどのやりこみタイムアタック、麻酔銃ヘッドショットの最長距離・敵兵を爆発でふっ飛ばした飛距離・車両の片輪走行距離と言ったネタプレイランキングなど、内容は様々。

評価点

  • より美麗になったグラフィック表現。
    • シリーズ最高峰のグラフィックを実現しており、各所からの評価も高い。
      • 上位機種であるPS4・XB1・PC版は勿論、下位機種であるPS3・360版も解像度*7とフレームレート*8以外は性能差の割にあまり見劣りしないレベルに仕上っている。
      • 本作ではミッションごとの天候・時間帯は固定であるが、それでも環境の変化による質感の違いなどもはっきり読み取れるようになっている。
      • 事あるごとに出てくるレンズフレアや被ダメージ時のフィルムが焼けたような演出など、映画好きの小島監督ならではのこだわりも見られる。
      • 舞台はキューバ南端の米軍キャンプ一つだが、マップの造りこみも凝っており多数のエリアがシームレスで繋がっている。
    • シリーズ初のフェイシャルキャプチャーを行っており、キャラクターの表情、口パクなどのリアリティも増している。
      • 口の動きは英語版に合わせられているため、洋画の日本語吹き替えのような雰囲気となっている。
    • Win版はシリーズ初の4K解像度に対応。より高精細な画面でプレイ出来る。セーブデータは別扱いとなるが、日本語・英語音声の切り替えにも対応。それでいて動作は比較的軽く、ハイエンドPC所持のプレイヤーからは好評を得ている。
    • これだけのグラフィックを実現しつつオープンワールド化しながら、ゲームパートはロードも処理落ちもほとんど存在しないため非常に快適。
  • より自由度の高まった潜入。
    • 特徴で述べた通り、今作ではストーリーに沿って指定されたルートというものを強制されない仕様になっているため、プレイヤーによって攻略ルートが大幅に変化する。
    • 一応ゲーム開始直後は収容所にいるチコの救出が目標となるが、パスの居場所を知っているなら先にパスから救出したり、ヘリに乗せるのも個別~同時にしたりポイントを変えるなど、攻略ルートはやり込む毎に豊富になっていく。
      • 敵兵やカメラ、乗り物の配置などを把握しきるほどやりこんだプレイヤーなら、本編はたったの10分程度でクリア出来てしまう。ただし、ミッションごとに幾つかのパターンが有り、それらはランダムで変化するため、そこまで行き着くのは容易ではないが。
    • SIDE OPSの内容も、捕虜の救出・ターゲットの排除・対空砲の破壊・機密情報の回収などバリエーションに富んでいる。一度クリアするとより難易度の上がったハードモードも解禁される。
      • 本編では基本的に雨の降る夜が舞台だが、SIDE OPSでは昼間・晴天の作戦も用意されており、そこでは敵兵の聴覚、視覚も強化されるためやや手強くなる。
      • SIDE OPSも自由度は高い。ターゲットを排除する「帰還兵排除」は目標の2人を暗殺しても良いが、気絶させた2人を乗り物に乗せて逃走してもOK。エンディングのセリフも変化する。
      • 捕虜救出ミッションも、ヘリに乗って正面から撃ちまくり強襲するというアサルトミッションの形を取っているが、非殺傷武器も持っているためノーキルクリア出来るようになっている。
    • スネークのアクションが豊富になったことに加え、Sランクの基準も少し緩くなっている。キルやリトライがあってもノーリフレックスや捕虜回収などのボーナスで相殺し達成を狙えるようになっているため、この自由度の高さに貢献している。
      • アクションの自由度の高さによってプレイしていくうちに上達しやすく、プレイ直後は苦労していた場面が経験を積んでいくうちに「自分の庭」の如く闊歩できるようになっていく快感が味わえるようになっている。
  • 歯応えのある難易度。
    • 旧来からのゲームとして本作を見た場合、画一的な攻略法が通用していた『PW』までより潜入難易度が大幅に上昇している。本作の難易度はNORMALとHARDのみであり、EASYやEXTREMEは存在しない
    • 本作の敵はNORMALでも比較的感覚が鋭い上、バディを組んでいるので順番とタイミングを考えて無力化しないとならない敵や、サーチライトで遠方からでも感知してくる敵もいる。
      他にも本作『TPP』ではミッション中に警備シフトが変わって敵兵が増員・配置が変動したり、逆に敵がエリア外に移動することなどが出てきており、アドリブ要素はかなり強まっている。攻略パターンの構築は相当厄介になるだろう。
    • 敵は持っている武器以外のアイテムを一切落とさなくなったので補給は乏しい。支援補給が行えず、フィールドも狭いGZでは尚更である。
      そしてシームレス化によりエリアを変えてアラートを解除したり、アイテムボックスを復活させることもできなくなったために、単純な力押しでの突破はより厳しい*9*10。『PW』や『TPP』と違いフルトンがないのも状況によってはつらい。
    • これまで頼りになった麻酔銃は射程が短くなっており、一定以上の距離があると狙った場所よりも僅かに下に着弾するため、ヘッドショットを狙う場合は主観視点での微調整が必須。
      頭以外に当てた場合は効果が出るまでの時間も長くなっているし、弾も決して多くはないので乱用は禁物。なお壁や床に当たると物音扱いのため、空弾倉代わりの陽動として使うプレイヤーも存在する。
    • 一方、マーキングの大幅強化やリフレックスモードによってフォローが容易になったことなどに加え、空弾倉*11にも密かに救済要素がある。自由度の高さを活かせるプレイヤーなら問題なくクリアできるだろう。
    • 無線などをリアルタイムにしたことで潜入の緊張感・リアリティも評価されている。会話スキップともおさらばである。
  • 「デジャヴミッション」と「ジャメヴミッション」
    • 特定条件を満たすとプレイ可能になる追加ミッション。「デジャヴミッション」は条件を満たして『MGS1』の名場面を再現していくモード。「ジャメヴミッション」は『MGR』の雷電を操作し、敵兵に隠れているスナッチャーを殲滅するモード。
    • 両方とも他のミッションとは目的も内容も大幅に異なり、シリーズファンを楽しませてくれる。
    • 当初は「デジャヴミッション」はPSハード限定、「ジャメヴミッション」はXboxハード限定だったが、後のアップデートで全ての機種で両方プレイ可能になった。
    • 「デジャヴミッション」はクリア後のMGS1クイズに全問正解すると、PS1時代のポリゴンのスネークやサイボーグ忍者が使用できる(スネークだけでなく敵兵の姿もゲノム兵に変わる)ようになるのも嬉しい点。PS2以降のタイトルはHDリメイクが出ているが、PS1のスネークたちがHD画質で見られる機会は貴重である*12。現在のグラフィックに比べると当然見劣りするが、それ故の味がある。
    • 雷電やサイボーグ忍者はニンジャランの特性によりダッシュ速度・ジャンプの飛距離が増しており、落下死しないうえに、ダッシュで体当りするだけで緊急回避と同様に敵兵を転倒させられるという特徴を持つ。
  • カセットテープによるストーリー補完。
    • 条件を満たすと入手出来るカセットテープ「チコの記録」を聞くと、本作の物語の背景がある程度分かるようになっている。
      • エンディングに関わる内容も記録されており、本編を一度クリアしてから集めることが推奨されている。
    • カセットテープは他にも『PW』で収録されたものがいくつか移植されている。
      『PW』のパス視点でのストーリーと彼女の心情を追う「パスの日記」、既発売のスネークとカズの出会いを描いたドラマCD『平和と和平のブルース』(日本版のみ収録)のドラマパートを丸ごとや本作戦のブリーフィングなども収録している。
      • このおかげで『PW』未プレイでも、ある程度物語の前史が分かるよう配慮されている。
  • 豊富なやりこみ要素。
    • 先行版の小規模ゲームでありながら複数のSIDE OPSと収集要素、ランキングシステムを備えているため、非常に飽きにくく長くプレイ出来る。
    • クリア報酬として、獲得したランクに応じて開始地点に武器が追加配置されるので、やりこめばやりこむ程攻略の自由度が高まるだろう。
      • 動画サイトではやりこみプレイヤーたちによる華麗な攻略動画が多数アップされており、プレイヤー間での競争も熱い。

賛否両論点

  • 主に本編のエピローグ部分において、一部非常に残酷かつグロテスクな表現が存在する。
    • 日本版ではある程度カメラ位置を変更するなどの修正が行われているが、苦手な人には非常にキツい。
      • 小島監督のヒデラジによると、このシーンの収録中に声優のマネージャーや事務所の方々がほとんど退出してしまったという。それほどインパクトの強かったシーンなのだ。
    • 小島監督曰く「どうしても必要だったから入れた」との事。こういった場面がカットされやすい事を危惧するプレイヤーからは若干修正しつつも入れたことは評価されている。
  • 非常に暗く欝要素を含んだストーリー。
    • 上記の表現と合わせて、今作のストーリーは非常に暗く陰惨。特に衝撃的なメインストーリーエンディングはプレイヤーを絶句させることだろう。
      • 一定条件を満たすことで獲得できる上記のカセットテープ(ドラマCD形式の音声資料)は、もしも映像があったら確実にコンシューマーゲームとして発表できない悲惨な内容が含まれている。「エンディングで絶望して、やりこんだ結果さらに追い討ちか」というプレイヤーの声も聞かれた。
    • ただし、本作は「プロローグ」である。これと『TPP』のあらすじを踏まえると無意味に凄惨な内容というわけではない。
      • そして『TPP』のストーリーはスネークが過去作通りの「悪として描かれているビッグボス」になった経緯と、「スネーク達の復讐」を描く物語との事であり、丁度初代作とPWまでの間を埋める時間軸でのスネークが描かれることになる。
      • 逆に本来の物語から序盤のみを抜き出したために、主人公たちの再起の手前にあたる救いのないパートのみが1本のタイトルとして発売され、悲惨な展開に終始してしまったとも言える。
      • 一方で『GZ』は『PW』の続編的な側面が強く、『PW』をプレイしていないとストーリーの状況把握やプレイヤーの感情移入が左右されやすい。
        『TPP』との分離はこの続き物の弊害に対する配慮なのだろう。カセットテープの収録内容からもそれが窺える。
  • 高い難易度とシステムの進化により難易度が上昇。これ自体は、よりリアルになった仕様はそういった要素を臨むコアユーザーには好評である。
    • しかし、その仕様を理解するチュートリアルなどの手引がTIPSや通信以外にほとんどない事と、上記の通り限定された条件下での潜入となるのでライトユーザーを含め手探りでの攻略が苦手なプレイヤーにはかなり厳しい。
      • これまでの『メタルギア』シリーズを常に最低難易度+EASY限定武器で遊んでいたり、攻略書片手にルートを覚えてクリアできた程度のレベルでは到底かなわない壁の高さである。
    • 概要のとおりオープンワールド/シームレスマップが採用され、スネークのアクションも多彩になった本作はプレイヤーの工夫次第で多彩な潜入ができるようになっている。しかし『GZ』の基地はエリアが限られており、狭い建物や見張り台の配置から敵兵の索敵・潜入の余地がそれなりに制限されている。
    • さらに今作ではダメージの回復が瞬時に行えない上に、ゲームオーバーになるとコンティニュー時に敵が全員復活する本編ではイベント毎に敵兵や兵器が追加され、配置も変化、更に一致時間後に警戒態勢になるといった追い打ちもある。
      • 上述するように「チュートリアルや画面内情報が無い」上に操作系が複雑で重複が多い事も相当大きく、「潜入のテクニックや細かい仕様の変化はリトライを繰り返して身につけろ」と言わんばかりの突き放しっぷりのせいで、プレイ直後はPV等で紹介されていた広大なフィールドを縦横無尽に駆け回り華麗な潜入を見せたスネークのような開放感よりも、何もかもが手探りの上に建物や配置物で入り組んで動きづらい基地内を慎重に進みつつ、大幅に強化された敵兵を一人ひとり切り崩しながら封じていく事を強いられる。
      • 暗い雰囲気も手伝って気の休まることがない状況下での閉塞感が漂っており、ライトユーザだと「クリアできないからクソゲー*13」「『TPP』もこんなに難しくて暗いゲームなの?」と上達する前に手放してしまい、却って『TPP』の購入意欲が減退してしまう可能性もある。
      • 逆説的に考えれば(今作と同じ状態の)『GZ』の部分も含めた状態の『TPP』だけを発売する路線にしていた場合、『GZ』でこれまでとは違いすぎる操作性の中で暗い雰囲気に不親切かつ高難易度のスニーキングを強いられて面食らった挙句に何度もゲームオーバーになって『GZ』がクリアできず、『TPP』本来の要素を楽しめないままクソゲー呼ばわりで速攻手放すユーザーが続出した可能性もある。
      • 『TPP』での潜入やストーリーに関する心構えや予習として『GZ』として分割販売し、ユーザーの意見を考慮して『TPP』に活かす選択をしたのは正解と見るユーザーもいる。実際『TPP』では敷居を下げるための要素や調整が追加されている。
  • ボリュームの少なさ
    • 元々が『MGS:TPP』本編のプロローグデモなので仕方ない部分ではあるが、やはり全体のボリュームは少なめ。
    • メインミッションはゆっくりプレイしても数時間で、SIDE OPS(4つ + 隠し2つ)もそれぞれ小一時間もあればクリアできてしまう。
      • しかし各ミッションや評価が独立しており、やり込み要素やスコアアタックなどもあるので繰り返しプレイしやすいという点では必ずしも悪い点ばかりではない。
      • またボリュームが見劣りするとは言ってもVR訓練や猿蛇合戦のようなミニゲームではなく、各話毎にきちんとしたシナリオが組まれたミッションの為に没入感は高い。
    • 『MGS:TPP』へのデータの引き継ぎ要素もあるので、SIDE OPS含めて隅々までクリアし、マップを堪能し、『MGSV』のクセを掴んでおくのが良いだろう。
  • 声優の変更
    • 海外版の話ではあるが、今作からビッグボスの声優が従来のデイヴィッド・ヘイター氏からキーファー・サザーランド氏に変更された。

問題点

  • 一部の操作性の悪さとゲーム内表示の削除
    • 特定の操作が他の操作とかぶっている場合が多く、暴発してしまう事がある。例えばホールドアップした敵兵と会話しようとして無線連絡する(どちらも同ボタン、かつ会話の範囲がやや狭い)、サーチライトを操作しようとして飛び降りる(こちらも同ボタン)等。
    • 豊富なアクションの代償として操作が非常に複雑になってしまったが、その割にトレーニングミッションなどのチュートリアルがほぼ存在しないのはやはり難点。
      • ほとんどはアクションアイコンが表示されるものの、サーチライトの消灯など、初めて使えるまで説明もアイコン表示もないアクションや一般アイテムの入手等これまでは不要だったが追加されたアクションもある。
      • 中にはホフク状態から身体を回転させて仰向けで銃を構えるといったアクションもあるが、これがまた複雑なやり方になっている。
    • 振り向きなどの動作に慣性がついているため、前作までと比べるとやや操作感が異なっている。
    • これまで表示されていたLIFEやカムフラ率などのゲーム内情報が撤廃されており、どの姿勢が身を隠すのに最適なのか現在のスネークのコンディションがどんな状態なのかも把握できない。
      • シリーズ毎にアクションのカムフラ率変動は微妙に違っている。その上ダッシュ等の新アクションが多く追加されており、服装の変更もできない(本作は昼間でも黒いスニーキングスーツ着用)ので、潜入や潜伏に適した姿勢や移動を自分の経験とカンだけで把握していく必要があるのは厳しい。"仕様"が現実的な点とはほとんど乖離していないという点は救い。
    • また近年のゲームソフトにありがちだが、紙の説明書は薄い見開きの1枚しか存在しない。それも最低限の操作説明しか書かれていないため、それ以外はいちいちゲーム機側で電子説明書を開いて確認することになる。
      • 生産コスト面での問題もあるとはいえ、操作が複雑化している割にフォローが少なく手間ばかりが増えてしまっている感がある。
  • 持ち運べる武器の制限
    • 武器は種類ごとに持ち運べる数が制限されている*14
      • 武器の取捨選択が必要になりリアリティが増したという意見がある一方、これまでのように豊富な武器を場面に合わせて使い分けるのが難しいという不便さを嫌うプレイヤーもいる。
      • 持てる弾薬も減っているのでこれまでのようなゴリ押しもほぼ効かなくなっている。
  • ゲーム中の無線や会話が被りやすい
    • ゲーム中、特定ポイントに到着した場合などに味方からの無線が入ったり、敵兵士の会話を盗聴したりできるのだが、これらのタイミングが被りがち。
      • 前者は行動次第で何とかなるが、後者は聞けるタイミングが限られているため、これらが被ってしまうとどちらかを聞き逃してしまうことになる。
    • 字幕表示や音量は基本的に無線通信が優先。字幕もどちらか一方しか表示されないのでますます貴重な敵情報を聞き漏らすことになる。
  • スペック間の差が目立ち始めた点
    • 問題点として挙げるにはいささか不十分かも知れないのだが、ムービー部分において上位機種と下位機種ではフレームレートの差が相当大きくなってしまっている。
    • 特に問題なのがオープニングムービーで、PS3/360では人によっては見るに耐え兼ねるレベルでフレーム落ちが発生する。体感でも僅か10fps未満までになっている可能性があり、3D酔いしやすい方は注意されたい。
      • 光源処理等で負荷が大きいものと思われる。これ以外のシーンでは大した問題にはならず、ゲーム本編は30fpsで余り処理落ちせず動作するので気にせずプレイできる。
    • PC版に関してはDX11対応グラボが必須、故に敷居は高め。対応さえしていればロークラスでも動かせることは動かせるのだが…*15

総評

シリーズ最新作のプロローグ、言ってしまえば有料体験版であるが、一本のゲームとしても非常によくまとまっている。
価格が安価なため本編はそれに見合った短い内容であるが、それを補うやりこみ要素の数々はゲームとしての面白さを存分に見せ付けてくれている。
難易度の高さ、複雑な操作やシステム・動きといった面で洋ゲーに近いシビアさが色濃いが、これまでのシリーズを大きく越えた「潜入」を体験するにはうってつけの内容である。
そしてこれまでの『メタルギア』シリーズではぼかされていた「暗さ、陰鬱さ」をさらなるリアリティとともにストレートに表現しており、「TPPはこれまでとは違う」とプレイヤーに認識させる緩衝材的役割もある。
本編には本作からの引継ぎ特典も用意されているので、ガッツリ遊んで本編に備えるといいだろう*16

しかし、その肝心の本編を迎える寸前に小島プロダクション自体に暗雲が垂れ込めることをこの時点で想像し得た者は少なかった…。

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最終更新:2024年04月02日 21:51

*1 DirectX11対応のグラフィックボードが必須。完全版である『GZ+TPP』も同様となっている。

*2 One/Win版はダウンロード販売のみ。完全版である『GZ+TPP』も同様となっている。

*3 『MGS2』でのタンカー編、『MGS3』でのバーチャスミッションに相当する。

*4 この作品以前にはKONAMIは日本のSteamストアには一切出品しておらず、この作品が最初となる。

*5 TPPの公式プレイ動画によると、本作の基地はTPPのマップの1/200との事。

*6 iDROIDコンパニオンはWin-Steam版は未対応。

*7 上位機種版でもXB1版は720pで描画されるが、内部グラフィックはPS4版と同等の美しさで描画される。『TPP』では900pに向上している。

*8 上位機種版が60fps。下位機種版が30fps。

*9 以前の作品では最高難易度であってもエリアチェンジすれば即回避フェイズに移行、進んだ先が敵のいないエリアだった場合は即解除。また、2マップ以上離れることでエリア内のアイテムボックスが全て復活するため、強引に突破することも不可能ではなかった。

*10 本作はマップ分け撤廃に加え、一度危険フェイズに入ると敵はなかなか警戒を緩めないようになっている。代わりに、本作は途中終了したプレイを再開すると弾薬がある程度まで回復する救済処置がある。

*11 MGSシリーズのほとんどで馴染み深い、投げた時の音で敵の注意を引ける投擲アイテム。壁叩きのできない『GZ』から無限に使えるように。さらにリフレックスモードで敵兵の顔面や監視カメラに投げつけると…。

*12 『MGS4』で『MGS1』スネークのフェイスカムが存在していたりはするが、これは頭部だけである。

*13 追加武器やSIDE OPSは本編クリア後でなければ解放されず、ゲームオーバーを繰り返す際の救済措置も弱いのでコツをつかめないと冗談抜きで何度も死ぬ。

*14 ハンドガンなどの小型武器、アサルトライフルなどの中型武器、スナイパーライフルやミサイルなど大型武器それぞれ1つずつ、投擲・設置武器は最大4種類まで。

*15 もっとも、この年の初期には高いコストパフォーマンスで評価を得たDX11対応のGTX750Ti搭載グラボが発売されており、年末ごろから乗り換えるユーザーも増えたので敷居は大分低かったと言える。

*16 引継ぎは本編プレイ後も行えるので本編を先にプレイした人でも問題なく遊べる。