Battlestations: Pacific
【ばとるすてーしょんず ぱしふぃっく】
ジャンル
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リアルタイムストラテジー+シューティング
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対応機種
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Windows XP/Vista Xbox360
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発売元
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スパイク
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開発元
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アイドス・ハンガリー
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発売日
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【Win】2009年5月14日 【360】2009年5月28日
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価格
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【360】7,140円(税5%込)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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なし
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ポイント
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RTS+STGというジャンルの融合 PC版はSteamで配信中
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概要
太平洋戦争をテーマに、複数ジャンルをまとめた事をウリにしたリアルストラテジーシューティングゲーム。
真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦に至るまでを描いた前作『Battlestations: Midway』の続編となり、アメリカ軍のみだったキャンペーン(ストーリー)モードに新たに日本軍が追加された。
プレイヤーは日本軍、あるいはアメリカ軍の艦隊を指揮し、マレー沖海戦、レイテ沖海戦といった太平洋戦争での主だった海戦(一部、上陸戦も含む)を戦いぬく。
また、本作は日本でもアメリカでもなくアイドス・ハンガリーが制作した物であり、日本版(Xbox360版)はスパイクがフルローカライズしたものとなる。
その為、極端にアメリカ寄りでも日本寄りでもなく比較的中立的な視線で描かれている。
特徴
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RTS+STGの融合
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プレイヤーは戦闘に参加するほぼ全ての兵器を好きなタイミングで操る事が出来る。(シナリオによっては制限がかかる事がある)
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戦艦に艦砲射撃、空母に艦載機の発進、特定地点への移動、艦隊のフォーメーションといった指示を出す事や艦船や戦闘機を実際に操縦することも出来る。空母から戦闘機を発進させ、即座に操作を切り替え、敵空母への爆撃を行う事も可能。
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また、潜水艦となり、残り酸素と敵駆逐艦の爆雷に気をつけつつ海中から強力な魚雷を打ち込んで戦艦を撃沈するといった事も可能。
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操作しない部分は出しておいた指示や独自の判断で動く為、戦艦の移動はオートにし、自分は艦砲射撃に徹する事も、艦載機を飛ばして索敵を行うのも自由。プレイヤーは戦場の状況をリアルタイムに判断し、的確な指示で自軍を勝利へと導いていく。
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作戦指示(RTS)と実際の操作(STG)によって異なるジャンルが非常に自然に融合された形といえる。
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史実とロマンが織りなすキャンペンモード
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アメリカ軍は第二次ソロモン海戦から、沖縄戦までを史実を元にしたシナリオ。日本軍は真珠湾からミッドウェイ海戦までは史実を元に、それ以降は仮想のシナリオが用意されている。
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もし、ミッドウェイ海戦で日本軍が勝っていたら?というIfが繰り広げられ、ハワイを陥落させて講和を結ぶというロマンに溢れたものとなっている。
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日本軍の仮想シナリオは完全な仮想ではなく、特殊潜航艇によるシドニー湾攻撃、潜水艦によるドイツ軍との技術交換といった、史実では失敗に終わった作戦を成功させるものである。
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史実のシナリオも空母ホーネットを足止め中に戦艦大和率いる艦隊が増援で現れ、大暴れをするといったちょっとしたIfが加えられている部分もある。
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シナリオは各陣営で14個ずつ用意され、前作の2倍以上になった。1シナリオ30~1時間ほどかかるのでそれなりのボリュームである。もちろん太平洋戦争の有名な戦闘は軒並み入っている。
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それぞれの陣営でBGM、ゲーム中で使われる言語(日本語は360版のみ)が異なるといった作りこみよう。
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最終シナリオは…
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アメリカ軍の最終シナリオは「沖縄戦」。シナリオ中に天一号作戦を完遂せんと沖縄本島に座礁すべく戦艦大和率いる日本艦隊が現れ、これを米国艦隊が全力で迎え撃つ。史実では実現しなかった「大和 対 米艦隊」が実現される。
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日本軍は「ハワイ侵攻」こちらも大和を率いて米戦艦アイオワを沈める事が作戦目標となっており、よく、議論に上がる「アイオワ 対 大和」の決着をつける事がクリアの条件になっている。
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いずれのシナリオも史実とは異なるものの非常に燃えるシチュエーションになっている。
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様々な兵器を操縦可能
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ざっくりとあげるだけでも艦船、戦闘機、潜水艦の3つの操作系統があり、更に細かく分類すると戦艦・空母・駆逐艦・潜水艦・戦闘機・爆撃機,果ては神風など、多くの実在の兵器を操ることが出来る。その数80種類以上。
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操作系統
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艦船:対空砲と艦砲の他、駆逐艦なら対潜水艦用の爆雷と攻撃手段が多い。艦船同士の対決では実際の丁字戦法と同じ様に相手を全ての砲台で狙えるようにポジショニングすると有利に戦える。
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戦闘機:敵艦や拠点への爆撃がメイン、当然ながら墜落すると損失なので高度には注意。慣れない内は地面が一番の強敵になる事も…。
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潜水艦:深度と酸素が存在する。耐久力が低く非常に倒されやすいが、魚雷の威力は非常に高く、使いこなせれば強固な戦艦にも有効打を与えられる。
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しかし、ソナーにひっかかって爆雷を受けたり、攻撃対象が近すぎて魚雷が船の下を通り抜けてしまったりと扱いは難しい。
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潜水中に酸素がなくなると強制的に海面に上がってしまうため、そのまま集中砲火で沈没する事もある。
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最大深度まで下がる事で水圧でダメージを受けつつも敵のソナーや爆雷から逃げる事も可能。
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ユニット間のバランス
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「戦艦」は耐久力および主砲の火力が非常に高いが、爆雷を持たないため、「潜水艦」に対しては無力であり、速力も低い。
「駆逐艦」はあらゆる攻撃手段を持ち、速力も早いが、耐久力が低い。
…などといった特色がハッキリしており、万能なユニットは存在しない。それぞれの長所と短所を生かした戦略が求められる。
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破損と修理
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艦船は攻撃を受けた箇所によって兵器損傷・機関損傷・浸水・火災が発生したりする事がある。
これらは修理しなければ速度が落ちたり、徐々に耐久度が減ったり、砲撃が出来なくなるといった様々なデメリットが発生する。
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逆に機関や弾薬庫と言った部位を意図的に狙う事で敵にこれらの損害を与える事も可能。
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やり込み要素
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戦場にはクリアに必要な「優先目標」の他、プレイ中に明らかになる「二次目標」と、開始前の大まかなヒントのみの「秘匿目標」が用意されている。達成する事でクリア時にもらえるメダルの色が変わり、次のシナリオで使える兵器がアップグレードされるといった特典を受けることが可能。
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それぞれ「味方に被害を出さない」「一定の時間までに目標を撃沈させる」「隠されている基地を全て破壊する」といったバリエーションに富んでいる。
評価点
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しっかりとした時代考証
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洋ゲーにありがちなトンデモ日本ではなく、しっかりとした考証がされており、キャンペーンシナリオがやけにマニアックだったり、戦艦大和は進水当時の副砲を備えていたり、戦闘機のコクピットの中まで細かく再現されていたりする。
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空母の木甲板の形や艦船の塗装の違いはあるものの、前作の考証にいささか問題があった部分は改善された。
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また、ユニット表記も日本語に対応した為、臨場感が損なわれることも無くなった。。
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艦船と航空機はギャラリーで解説とともに眺める事も可能。
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艦船の形だけではなく、特徴も再現されており、史実で対空能力に優れた「秋月級駆逐艦」は対空砲が最強クラスだったり、潜水空母の異名を持つ「伊四百型潜水艦」は搭載機「晴嵐」を飛ばす事が出来る。
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また、360版限定だが、日本軍では軍人の荒々しさを醸し出したしっかりとした日本語吹替がされており、臨場感も抜群。遊べば遊ぶほど本作が洋ゲーである事を忘れることうけあい。
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前作に比べてリアルになったグラフィック
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特に海の表現力が上がっており、現実さながらの非常にリアルな海面になっている。
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艦船の上には人が歩いていたり、魚雷で撃沈された艦船が真っ二つに割れる、沈んだ後に残骸が浮かび上がるといった表現が強化されており、前作に比べて表現力は大幅に上がった。
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戦闘機のドッグファイトや対空砲火をかいくぐる際のグラフィックは、さながら戦闘写真のような美しさである。
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ジャンルの融合の成功
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重ねて書く事になるが、RTS+STGの融合がしっくりとハマっており、戦闘に好きなように関与する事が出来る。戦闘機による操作も自由度は高いが、敵空母を攻撃する際も、制空権を支配した状態でなければ駆逐艦の対空砲火であっさりと落とされたりする。
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その為、しっかりと作戦を練る必要があり、護衛駆逐艦を魚雷で沈める、戦艦で追い払うなどをして敵空母を丸裸にした後、自ら急降下爆撃で敵艦隊を沈める爽快感は抜群である。本作からは体当たりで艦船にダメージを与えることが出来るので弾丸も使い果たして敵艦に自爆しに行く事も…。
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ステージのバリエーションが豊富
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ステージによっては艦隊同士の撃ち合いがメインになる物、戦闘機がメインの基地破壊、潜航艇によるスパイ・アクションさながらの潜入と、同じシステムを使いながらも全く毛色が異なる特色付けがされている。
問題点
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バグが多め
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クリア条件を達成してもステージが終わらなかったり、突然フリーズしたりする事が多々ある。
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特に特定のステージで条件を満たしてセーブをしてしまうとセーブデータが壊れるといった致命的なものまである。
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ミッション中断後の「中間ポイントから再開」時は決められたパラメーターで再開される為、厳密な中断機能は存在しない。
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例えば日本軍シナリオの「ハワイへの道」の最終チェックポイントの場合、それまでのプレイで被害をほとんど出さなかったとしても、チェックポイントから再開すると「特攻機」の残りわずかという状況で再開される。
ここで特攻に失敗すると操作できる機体がなくなり、ゲームオーバーになってしまう。
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チュートリアルが不十分でとっつきにくい
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ゲームの性質上、操作やルールはかなり複雑で覚えなければならないことは多いのだが、チュートリアルに該当するモードは自由に艦船・航空機の練習ができるトレーニングモードのみ。
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それも一つ一つの操作に関する詳細な説明はなく、半ば投げっぱなしな状態になる為、地図の拡大・攻撃マーカーの意味・フォーメーションの操作といった重要な操作を見落としがちになる。
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前作では詳細なチュートリアルがあったのに、不親切になった。
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シナリオプレイ中にチュートリアルが出てくる事もあるが、長文な上にゲームがリアルタイムで進行する都合上、読み飛ばしがちになる。
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兵装の挙動がリアルにこだわった結果、使いづらくなっている箇所がある
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艦砲や魚雷は使用可能な状態であり、発射口が敵に向いている必要がある。
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おおまかに駆逐艦は側面、潜水艦は正面に発射口がある。しかし具体的な位置は艦によってバラバラである為、どの武器がどこから発射されるかを完全に把握しなければ撃つ事すら出来ない。初めて潜水艦を操作した時は距離も十分なのに魚雷を撃てない…といった事態に戸惑うことになる。
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艦船が不足気味
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色々な艦船が再現されているが、戦艦で言えば日本軍の「扶桑級」の次が「大和級」になる為、数が少ないように思える(間の「伊勢級」「長門級」が登場しない)。
更に、アメリカ軍シナリオでは史実に則ってか、敵は「金剛級」か「大和級」しか登場しないので同じ敵と戦うシチュエーションが多い。
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本作のシステムなら航空戦艦の「伊勢級」は面白そうなので未登場なのが惜しまれる。伊勢級が目覚ましい活躍を見せた「エンガノ沖海戦」のシナリオもある事だし…。
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PC版ではMODにより、「伊勢級」や「長門級」が実装されている動画も存在する。
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チャレンジモードの削除
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前作では本編のシナリオでは描かれなかった戦いを単発シナリオのチャレンジモードで補完していたが、本作では無くなってしまった。その為Ifにならなかった日本軍の史実シナリオは存在しない。
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太平洋戦争最大の海戦となったレイテ沖海戦も、「シブヤン海海戦」と「エンガノ岬沖海戦」がアメリカ軍シナリオでしか再現されないため、「スリガオ海峡海戦」や「サマール沖海戦」の日本軍側視点といったシナリオを用意して欲しかった所。
賛否両論点
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特攻兵器の再現
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日本軍に実在した特攻兵器のほぼすべてが再現されており、アメリカ軍のキャンペーンモードでは「神風特別攻撃隊」を始めとして、特攻専用飛行機「桜花」や特攻ボート「震洋」といった特攻兵器を相手にする事になる。
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アメリカ軍の「レイテ島の神風」シナリオでは損害を受けずに全ての特攻隊を撃墜する事で実績がアンロックされるといった事も…。
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日本軍シナリオでも人間魚雷「回天」を搭載した潜水艦を操作し、回天を発射したり、神風を操作して敵艦に体当たりをして撃沈するミッションまで存在する。特攻兵器の威力は絶大だが、使うのも失敗してしまうのも複雑な心境である。
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リアル性かゲーム性か
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前作では現実に沿っていた仕様も、ゲーム性を重視して変更された箇所がある。
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前作では爆弾を落とした飛行機は基地や空母に帰還しなければ補充されなかったが、本作では時間経過で補充される。回天まで時間経過で補充されるのはいかがなものか…
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前作では損傷を受けた艦船は浸水区域の閉鎖が行われ(浸水した部分は回復しない)、一定の浸水を超えると一気に船が沈没する事もあったが、本作では耐久力が残っていれば沈まない。
攻撃を受けて艦橋や艦首を損失しても、修復すれば見た目はボロボロなのに耐久力100%という事も…。
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リアルにこだわっている部分も多い為、気になる所である。ゲームのテンポや難易度が改善されているのも事実なのだが。
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ストーリー
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前作では明確な主人公や登場人物が存在し、主人公を中心としたストーリーが用意されていたが、本作では明確な主人公や登場人物は存在せず、プレイヤーは通信を受けながら淡々と戦場を指揮するにとどまっている。
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味気ないとみる意見もあれば、変にストーリーが無い方が戦場らしい臨場感があるという意見もある。
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また、続編という立ち位置でありながら、前作の主人公がどうなったかは語られないので前作のプレイヤーは肩透かしを食らう事になる。
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一応、前作の主人公は日本軍の真珠湾ミッションに登場し、倒す事は出来る。
総評
リアルタイムストラテジー+シューティングという新たな形でおもだった太平洋戦争の戦闘の数々を見事に再現してみせた。
太平洋戦争はテーマ上、ゲームになりにくく、その中でも「日本軍の特攻兵器も含めて忠実に再現」となるとなれば国産ゲームではまず出来ない。そういった意味でも貴重な作品といえる。
背景を抜きにしても実在した戦艦や戦闘機を指揮し、実際に操縦して戦えるというのが本作最大の醍醐味で、太平洋戦争時のアメリカ海軍、日本海軍が好きな人にはおすすめ出来る作品である。
その後
残念ながら開発会社がEidosの意向で閉鎖されてしまった為、続編は望めない状態になっている。
市場に出回る数も限られているため、店舗で見かけることも少なく値段も高めである。
ただし、これはCS機版の話であり、PC版は現在Steamで配信中。DL販売に抵抗がなく、興味を持った人は一考の価値はあるだろう。
Steam版は英語だが有志による日本語化MODを導入すればCS版とほぼ同等の吹き替え及び字幕でプレイする事が出来る。
また、PC版限定ではあるが体験版のダウンロードが可能なサイトもいくつか残っているので、先にそちらで概要を掴んでみてからというのも一つの手である。
なんとリリースから12年が経った2021年に、海外の有志の手により容量
8GB
にもなる超大型MODが発表された。
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バニラの日本キャンペーンを丸ごと作り直すほかゲーム内のほぼすべてのユニットが刷新されており、米国本土への攻撃ミッションも追加されるなど続編と言っても差し支えのない完成度である。問題点でも述べられていた艦艇の少なさについても日本軍だけで52隻もの追加があり、概ね解消されている。
最終更新:2022年12月03日 00:47