ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ

【だんじょんず&どらごんず しゃどーおーばーみすたら】 

ジャンル ベルトアクション

対応機種 アーケード
販売・開発元 カプコン
稼動開始日 1996年
プレイ人数 1~4人
家庭用移植 【SS】ダンジョンズ&ドラゴンズ コレクション
1999年3月4日/5,800円(税抜)
【PS3】ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記
2013年8月22日/3,800円(税抜)
判定 スルメゲー
ポイント D&Dのゲーム化第2弾
複雑な操作系統に慣れられるかどうか


概要

TRPGの元祖である『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を題材としたベルトスクロールACTゲーム。前作『タワーオブドゥーム』に続く第二弾。
新キャラ追加、RPG要素の強化など進化した部分も多いが、同時に難易度の高さも頂点に達し、ハマる人と断固拒絶する人とに評価が真っ二つに割れた。


特徴・評価点

  • ゲーム中には様々なアイテムが登場する。入手以降恒常的にパワーアップする装備品や、魔法が込められた指輪、ハンマーや投げナイフといった消耗品まで種類は豊富。その使いこなしは攻略難易度に直結する。
  • 魔法は原作と同じ名前のものが多数登場。クレリックが使える僧侶魔法と、エルフ・マジックユーザーの使える攻撃魔法があり、どちらも強力な効果を発揮する。原作同様レベル制による回数制限はあるが、敵が落とす魔法のスクロールを拾ったり、特定のステージクリアに行われるレベルアップで使用回数を回復できる。
    • といってもバンバン使っていてはとてもじゃないがMPが足りないので、計画的に使用する必要がある。また、魔法の力が込められた指輪を使うことで、ファイターなど魔法が使えないキャラでも一部の魔法は使用できる。
  • 選択肢によるステージ分岐や、隠し通路発見によるルート分岐などRPGらしい展開が豊富。秘境の探索や地下洞窟、空に浮かぶ城などロケーションは多岐にわたり、各ステージは丁寧に作られている。
    • ルート分岐、キャラ選択があるため繰り返しのプレイに向いている。またやりこんだ人なら100円で1時間近くは遊べるため、懐にもやさしい。
  • 協力型マルチプレイを搭載しており、最大4人同時に遊べる。各キャラには明確な個性が備わっており、マルチプレイで真価を発揮する要素も多い。
    • 最たる例がアンデッドを一撃で倒せる聖剣「ホーリーアベンジャー」。この剣を入手するにはクレリックが必要なのだが、クレリック自身は剣を使えないため、マルチプレイ時専用の武器となっている*1

前作からの改良点、本作からの新要素

  • 新キャラ「シーフ」、「マジックユーザー」の追加。
    • 前作のファイター・クレリック・エルフ・ドワーフの4名に加え、本作ではシーフとマジックユーザーが登場。
    • シーフは体力が低い上に盾が装備できないが、バックステップに無敵付加、罠のかけられた宝箱を見破れる、施錠された宝箱を鍵無しで開ける、一部の罠が作動しない、敵一体につき一回限りだが体当たりを当てると敵がアイテムを落とす*2等のオンリーワン性能を有する。攻撃力も十分高い*3
    • マジックユーザーは物理戦闘面では全キャラ中最低の性能だが、強大な魔法の数々がその欠点をひっくり返す。また、バックステップに無敵がある、レバー入れ強攻撃の「毒針」はクリティカルした際に異常なダメージを叩き出す*4、と極僅かながらも肉弾戦闘でも光る面を持つ。
    • また、本作では外観のみ異なる「2Pキャラ」が登場。好みの方を選んでプレイしたり、マルチプレイでも前作と違い2人までは使用キャラがかぶっても遊べるようになった。
      • クレリックとマジックユーザーだと習得できる魔法が1Pキャラとは一部異なるため、戦略面でも影響がある。
  • 前作ではやや癖のある操作性であったが、本作では特殊技の入力が格ゲーチックに変更*5され、格段に入力しやすくなった。ボタン同時押しによるメガクラッシュなど、新たなアクションも追加されている。
  • アイテムの大幅な追加。
    • 特に武器と盾は複数追加され、「武器の持ち換え」という要素が生まれた。属性を帯びた魔法剣、呪われているが解呪できれば素晴らしい性能に生まれ変わる剣など多彩なバリエーションを誇る。攻略の多様性、RPGらしさの強化に一役買っているといえる。
  • その他、新規モンスターの追加、操作性変更、細かいバランス調整など変更点多数。
    • 中でも魔法の使用回数が大幅に上昇しているのは特筆すべき改良点。
      • 前作ではそれなりに高レベルのキャラだったにもかかわらず、魔法の使用回数がとても少な目に抑えられていたため、エルフやクレリックは中盤~終盤になるまで、魔法をおいそれと使うことはできなかった。
      • 今作ではエルフ、クレリック、マジックユーザーそれぞれにスタート開始直後からそれなりの魔法の種類と回数が与えられているため、「魔法使い」の戦略性・存在感が大幅に増している。

問題点

辛口な難易度調整

まず初心者がぶち当たる壁が「複雑な操作性」と「非常に強いボス」の2点。

  • キャラ性能自体はベルトスクロールACTゲームを見渡しても高性能に分類されるのだが、複雑な操作性への慣れ、多様なアイテムやプレイにおける基礎知識の習得など、ハードルの高さも最高級。マルチプレイ時も敵ルーチンの変更とアイテム量の制限であまり難易度が下がらない。
    • 使用するボタンは4つで、いわゆる普通のベルトアクションゲーの「攻撃、ジャンプボタン」に加え「アイテム使用」「アイテム選択(リングコマンド)」の2つが付け加えられている。しかし、ゲームに慣れていないプレイヤーはとっさにアイテムを使えず、宝の持ち腐れとなる事態が非常に多い。特に魔法を使えるエルフ、クレリック、マジックユーザーは、魔法の選択もアイテム使用と同様に行わなければならないため非常に操作が煩雑となる。
    • ただし、操作が煩雑なのは「ボタンが4つもあるから」ではなく、「多彩なアクションをたった4つのボタンに落とし込んでいる」からである。ボタン1つで済むはずの動作が他のアクションの暴発を招きやすく、これがアクションゲームでは必ずある「咄嗟の行動」を著しく阻害しているのである。
      • 例えばただAボタンを押すと言う行為だけでも「通常攻撃」「ふっとばし攻撃(長押し)*6」「物を拾う」「選択肢の決定」と4つものアクションが割り当てられている。
        「攻撃しようとして足元のアイテムを延々と拾い続け、敵の攻撃をもらう」というのは本作で最もありがちな事故である。*7
      • ほかにも「スライディングしようとしたらジャンプしてしまった」「アイテムを拾っていたら勝手に選択肢を選んでしまった」「アイテムサークルを開いていたのでジャンプが出来なかった」等々、このゲームはキャラクターのアクションのほぼ全てが何か別のアクションに化ける可能性があり、それらに細心の注意を払いながら操作しなくてはいけない。
  • 操作に慣れればザコ戦の難易度は低い(肉弾戦が極めて貧弱なマジックユーザーを除く)。前作と比べると雲泥の差。
    反面、ボスはかなり強めに調整されており、特に装備品やアイテムが揃っていない序盤のボスに苦戦を強いられる。
    • 象徴的なのがカプコン作品恒例となっている「2面ボス」*8に相当するボス敵。最初のボスであるゴブリン戦車を倒した後に次のステージを二つから選べるのだが、初期カーソルが合っている面のボスは本作屈指の強敵となっている。
      • 後半ボスも、気を抜けば一瞬でやられかねない強さではある。ところが後半戦では強力な装備品やアイテムも入手できるため、上手く使えばボスを一方的にハメたり瞬殺したりで序盤のボスより楽に倒せることが多い*9。難易度上昇曲線はいびつであると言わざるを得ない。
    • また本作のボス戦はソロプレイよりパーティプレイのほうがなぜか格段に難易度が高い。
      • 「挟み撃ちにしようとすると、背面に判定のある振り向きをする(つまり正面で戦っていたキャラが危険に晒される)ボス」「連続で攻撃を当てるとメガクラッシュばりの全方位無敵技を繰り出すボス」「多人数だと最初から発狂状態になるボス」「キャラを捕食し、助けようとした仲間の攻撃のダメージをそのキャラに与えるボス」「多人数だと2体同時に現れるボス」など、あからさまにパーティプレイに釘をさすような技を持つボスがてんこ盛り。
      • 「ソロでワンコインクリアが余裕なベテランが初心者と組むだけであっという間にゲームオーバー」「パーティプレイでも最適解がボスとの一対一*10」なんてのは本作ではよくある話。自ずとプレイ内容も上記のような「パターンではめる」と言う形になりがちである。
    • ここではマジックユーザーはザコ戦とは立場が逆転する。魔法をザコ戦で温存しておけば、アイテムとの併用で「ほぼ全てのボスをルーチンワークで倒せる」ほど。

パーティプレイのハードルの高さ

  • パーティプレイがとても楽しいゲームなのだが、これまたハードルが非常に高い。
    • 先述のボスが強いのも含め、操作の技量よりも「相互理解」と何より「ゲームの知識量」が試されるため、軽い気持ちで即席パーティーに乱入してクリアする、ということは余程このゲームをやりこんだ上級者クラスでないと難しい。
    • 前作からそうなのだが、宝箱の中身はどのキャラで開けたかによって変化する箇所がとても多い。自分を含め、周りが損をしないように効率を求めると「各キャラで開けた時の中身」を知っていないといけない。
      • このため折角シーフというキャラがいるのに、全ての宝箱を開けさせるわけにはいかない。
      • ドワーフも宝箱を「下から開ける」と空箱がその場に残り、改めて叩き斬ることでお金を入手できるのだが、これまた闇雲には開けられない。
    • ルート選択は基本的に多数決。数が同じ場合はコイントスで行先が決まる。しかし当然プレイヤーは人間同士、コミュニケーションが不十分だと揉め事の種にもなりかねない。そのあたりの「交渉の難しさ」も、パーティープレイの難易度を上昇させている。

バグ・不具合の多さ

  • このゲームは出荷時期によりいくつかのバージョン違いが存在するのだが、バージョンを問わずバグが多い。不利なバグも多いのだが、大半は事前に知っていればなんとか対策は可能となっている。
  • 中でも有名なのが初期版ROMの「ジャーレッドバグ」*11。特にこのバグはフリーズ誘発ないし基板損傷の恐れがあるため、ゲーセンで使用するのはマナー違反。使用禁止の張り紙をするゲーセンも多い。

1プレイにかかる時間が長い

  • 前述したとおり、このゲームは通しでクリアするなら1時間近くかかる。これを「1クレジットで長く遊べる」と取るか「1時間はさすがに長すぎる…」と取るかは人次第。
    • そのため上級者に居座られてしまうと「人気はあってもインカムはサッパリ」という事態が発生する*12。そのため店側では「他のゲームを入れていた方が売上は上がるけど、それなりに人気もあるし撤去したら不満が出るだろうなあ…」という板挟みに悩むことになった。

総評

カプコン製のベルトスクロールACTゲームの中でも、良くも悪くも最強クラスのガチガチのパターンゲーム。
序盤から全力で殺しに来るそのゲームバランスには疑問符がつくのもやむ無しだが、その一方でゲーム性や攻略法を理解したプレイヤーからは「(一連の作品群で)この作品だけは1コインクリアできた」、「色々プレイしたがこの作品が一番!」との声も聞かれ、またコストパフォーマンスに優れる(同時にオペレーター泣かせという問題もあるが)という点などから好意的な評価も数多い。リバイバル稼動が行われているゲームセンターが現在でもちらほら見られることがその証拠であろう。
また、原作を尊重しながらも上手くオリジナル要素を取り入れた点や、*13当時のアーケードシーンにおいて「協力型マルチプレイ」というスタイルを提示し、その後様々な形で多くのフォロアーを生んだ点においては十分に評価されるべきものである。


家庭用移植

いずれも、前作『タワーオブドゥーム』とのカップリング作として移植されている。

  • SS『ダンジョンズ&ドラゴンズ コレクション』
    • セガサターンの拡張4MRAMカートリッジ専用ソフト(『SOM』のみ)ではあるのだが、サターン移植のカプコンゲーとしては珍しく移植度の低い作品となってしまっている。
      • 最大同時プレイ人数が4人から2人に減った(ハードの性能上仕方ない面もあるが)。
      • 画面サイズ・レイアウトが違う。そのためAC版では回避できた罠や攻撃が一部避けられなくなっている。
      • あるボスの攻撃で、本来スクロールする画面がドワーフ、エルフ、シーフのみスクロールしない。このため普通に回避できた攻撃が、アイテム・魔法使用の無敵時間やメガクラッシュを使わないと回避困難になってしまっている。
      • 一部の魔法の効果が下方修正されている。
      • などなど…
    • 同時収録の前作『TOD』はさらに移植度が低く、劣化移植といっていい出来になってしまっているので、それに比べればまだマシではあるが。
  • PS3『ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記』
    • こちらの移植度は前作含めほぼ完璧。更にオンラインマルチプレイも可能となっている。
      • AC版には存在しなかった武器の追加や、ボス撃破後は呪いの剣を振ってもダメージを受けないなどの細かい違いはある。
    • ボタンが8ボタンになり、キーコンフィグも「スライディングや必殺技を1つのボタンに割り当て」たり「通常攻撃と拾うを別ボタンにする」など、細かい設定が可能。
      そのため、操作性が著しく上昇し、元々高性能なキャラクターを手足のように動かせる、非常に爽快感溢れるゲームとなった。
    • 海外では『Dungeons & Dragons:Chronicles of Mystara』のタイトルで、PS3の他、360・WiiU・Windows(Steam)版がDL販売されている。

余談

  • 原作『D&D』は2000年に大改編があった為、本作は現代のD&Dと違う部分もある。
    • 現代のD&Dは当時『アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ』と言う名で売られていたものの系列であり、本作の元である当時の無印D&Dは現代では『クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ』と呼ばれている。
  • IGS(台湾のゲーム会社)のベルトスクロールACTゲーム全般*14はもれなくこの作品に影響されたような作り。完成度の高さと異様なハードルの高さを維持し、毎度毎度客を豪快に選ぶ作品群でオペレーターもプレイヤーも困らせ続けている。

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最終更新:2021年07月02日 06:07

*1 だが、パーティにクレリックがいる場合、「ターニングアンデッド」という、画面内の全てのアンデッドを1撃で倒せる技が無制限に使えるのであまり役に立たない。

*2 通常のドロップアイテムとは別枠なので、これによって倒した敵から落ちるアイテムが減ることは無い。

*3 なお攻撃力がファイターに近いのは原作再現である。

*4 クリティカル時は敵の現体力の半分に当たるダメージが出る。その為無傷のボス相手にクリティカルすると凄まじいダメージになる。逆に言えば体力の少ない敵(体力の減ったボス含む)にクリティカルしてもあまり意味は無いが。なおクリティカルするかどうかは完全に「運」である。

*5 例えば前作の「ダッシュ必殺技」は「一度しゃがんで、立ち上がる瞬間にA」という入力だったのが、オーソドックスな波動拳コマンド(236+A)になった。

*6 長押しといっても、通常攻撃を普通に連打しているだけで頻繁に暴発するくらい判定が曖昧。それでいて、「敵を吹っ飛ばすのでコンボの邪魔」「威力が極端に低い」「隙が大きい」と殆ど罠アクションとなっている。

*7 これでも、お金や体力回復薬やスクロールはスライディングでまとめて回収できるようになった分、前作よりは改善されているのではあるが。

*8 本作では1面がボスなしのオープニングステージのため、実質的には3面

*9 特に、ボスをダウンさせた後超高ダメージの「大オイル」を連続で撒いて瞬殺する戦法が猛威を振るった。

*10 ただし他のキャラも「ザコを掃除してボスと戦っているキャラに邪魔が入らないようにする」「ボスがダウンしたらすぐに追い打ちに行けるようスタンバイしておく」「ボス担当がミスした時魔法を使ってフォローをする」など、高みの見物でいられる状況はほとんど存在しない。むしろこの役割分担こそがパーティープレイの醍醐味である。

*11 海外版ではドワーフとシーフで同様のバグが発生するが、ジャーレッドほどの驚異ではない

*12 4人同時プレイをするプレイヤーばかりなら問題なかっただろうが…当然非現実的な話である。と言うか大型筐体か「通常筐体2台を繋ぐ」でないと4人同時プレイ自体出来ないが。

*13 例えばボスの「ダークウォーリア」はカプコン独自のデザインなのだが、それを見たTSR社のスタッフが絶賛、一発OKが出たという。

*14 『三国戦紀』シリーズ、『オリエンタルレジェンド』など。