ヴァーミリオン

【う゛ぁーみりおん】

ジャンル アクションRPG
対応機種 メガドライブ
発売・開発元 セガ・エンタープライゼス
発売日 1989年12月16日
定価 8,500円
レーティング 【VC】CERO:A(全年齢対象)
配信 【Wii】バーチャルコンソール:2007年2月27日/600Wiiポイント(税5%込)
判定 バカゲー
ポイント 統一感の無い各パート
人間味溢れるNPC
腹上死する主人公
ばかもの!!そんなこに、そだてたおぼえはない!!

WARNING!!!!!!!

このゲームには性的な表現が含まれています。

たぶん。



ストーリー

「アーネスト国」のロルカ3世(力のセント・ヴァーミリオン)は、平和な「フョードル国」に進軍を開始した。
「フョードル国」のヴァーミリオン達は勇敢に戦ったが力及ばず、遂に城を囲まれてしまった。
「フョードル国」のリラダン5世(知識のセント・ヴァーミリオン)は覚悟を決め、シャトリアン(テンプル・ヴァーミリオン)にまだ幼い王子と、「知識の指輪」を託し城から落ちのびさせた。
城は炎に包まれ、崩れ落ちていった・・・
幼き王子を連れ 一人落ちのびたシャトリアンの瞳には、死んでいった戦友達と「リラダン5世」の顔が映っていた。
そして18年の月日が流れた・・・

概要

  • セガAM2研初のアクションRPG。
  • 辺境の村で育った主人公が、今際の際の養父から自分がフョードル王子である事を聞かされ、アーネスト国打倒の為に8つの指輪を求めて旅立つ。

視点・操作方法

5種類の視点でゲームは進行し、各視点ごとに操作方法も異なる。

  • 1.城、街、村などの建物内はオーソドックスな鳥瞰視点。
    • 買い物や情報収集は勿論の事、お笑いネタの宝庫でもある(後述)。
    • 移動速度が緩慢で、斜め移動もない。
  • 2.フィールドやダンジョン移動は擬似3Dによる主観視点。
    • 向きを変えると『シャイニング&ザ・ダクネス』のように回転アニメーションをする。
    • …が、地形がスペースハリアーなどに見られる木や柱などの単体障害物(地形記号)を繋ぎ合わせただけの雑な地形なので、それらが回転したところでありがたみは薄い。
    • しかしさすがは2研というべきか、この視点でのみ主人公は「颯爽と走る」事ができ、上記の地形記号も手伝ってまるでセガ体感ゲームをプレイしているかのような感覚に浸れる。
  • 3.各地で地図を入手後、3D画面の右端に簡易マップが表示される。トップビュー。
    • ただの補助マップと侮るなかれ、プレイヤーの殆どがこの簡易マップをメインとし、3D画面のほうを補助・オマケと捉えるようになる。
  • 4.通常戦闘は鳥瞰視点での1画面アクションゲーム。
    • 現在地によってフィールドの背景が変化し、雑魚1匹~最大8匹出現する。
    • 素手では戦う事ができず、武器を装備しないとボタンを押しても何も反応しない。
      • 下から上へと振り抜く奇抜な剣裁きで敵を攻撃する。後に魔法を入手してセットすればMP消費で使用することもできる。
      • 剣撃は複数回の攻撃判定を発生させ、判定時間も長い。一振りするだけで数匹同時ないし単体に連続Hitさせる事ができる。
    • 雑魚をすべて倒すか、左右の画面端にタッチする事で戦闘から脱出できる。
    • 雑魚が8匹出現すると必ず囲まれた形になるが、この視点でのみ主人公は「華麗に8方向移動をする」事ができ、攻撃を回避しつつ一太刀浴びせるといった立ち回りもできる。
  • 5.ボス戦はサイドビューによる迫力の1vs1アクション。
    • 一部のボスは複数の頭部(弱点部位)を持ち、雑魚敵をけしかける者もいる。
    • ボス戦でのみ主人公は頭から足先まで白銀のフルアーマーを纏い、騎士剣一本で戦う。
    • 前後移動かしゃがむ事で攻撃を回避し、攻撃はやっぱりアッパースイングの斬り上げのみ。この視点では魔法も使えなくなる。

評価点・おバカな点

  • ストーリーはシリアスな王道路線……と思わせて随所に小ネタが散りばめてある。
    • NPCの台詞が妙に人間臭く、街での情報収集が楽しい。以下、その一例。
      • 主人公が盗難の濡れ衣を着せられ、無実の証明の為に奔走している最中、無実か否かが市民達の賭けの対象にされている
      • 本筋には絡まないが、市民をG教という新興宗教に無理矢理改宗させて寄付金を巻き上げる、という悪事が行われている。Gって…*1
      • 守銭奴の王が治める国では兵士達が「こんな安月給でこき使われるのは嫌だ」「そろそろ転職しようかな」などとボヤく。
      • 特に老人のNPCは、婚活の為に主人公に自分の写真を渡す、「もう少し人生をエンジョイしたかった」と妙な横文字を使うなど、可笑しいものが多い。
      • 本作のセーブ担当は老いた神父のグラフィックで固定なのだが、男が全員連れ去られた村では「あたしゃ女だよ!」と言ってアーネスト軍を欺いた事になっている。それを信じるアーネスト軍って…。
      • 主人公が通常の方法では直せない毒に掛かるシーンがある。教会で治療を依頼しても治せないのだが、それが判ると神父は「もらったお布施(治療代)は返さんもんね!」と、態度を豹変させる。それでも聖職者か!
      • 町の入り口には「ここは○○の町だよ」と説明するNPCがいるのだが、モンスターに襲われて喋るのが辛いほどの重傷を負っても使命は忘れない*2。NPCの鑑だ…。
      • NPCの人間臭さは同製作チームの次回作『レンタヒーロー』にも受け継がれている。
    • 中世ファンタジーの舞台なのだが、時には明太子のおにぎり麦茶牛丼ゴルフエルメスの時計などと言う単語が飛び出したりする。この世界は一体…。
      • ある場所には、教会で祈りもせずにバレンタインクリスマスにうつつを抜かす若者が多い事を憂うNPCがいる。現実の話を中世ファンタジー世界で叫ばないで…。
    • ある街のレストランは主人がヤケを起こしてタダで食べ放題になっているのだが、その所為で狭い店内に20人以上のNPCが犇めいている。
      • そんな有様なのでその奥に行くのも一苦労なのだが、奥のNPCに話しかけると「こんな所まで来て、帰れなくなってもしらないぞ!」「よくこんな所まで話を聞きに来たわね?そういう根性のある人好きよ」と…。うるせえよ!
    • アーネスト軍のボスモンスターは人間に化けている事も多いのだが、女性に化けているモンスターは何故か揃いも揃って幼女になっている。それがドラゴンや巨大なデーモンになって襲いかかって来るのだから恐ろしい。
      • 終盤、主人公に毒を盛る女性(モンスター)がいるのだが、何故かダンジョン内で対峙した時は幼女化している。主観視点での女性用グラフィックがそれしか無いのかもしれないが、だとしても何故よりによって幼女なのだろうか…?ちなみに男性用グラフィックは複数存在する。
    • 寝ぼけている人間を起こすのに、わざわざ目覚まし時計を用意させられる。普通に起こせば良かろうに…。と言うか、上記の写真にしても目覚まし時計にしても、そう言うものがある世界なんですか?
    • 主人公も台詞が無い所謂ドラクエタイプながら、キーアイテムを使用するとユニークなコメントを残してくれる。実はなかなかの曲者だったりする。
      • 財宝を独り占めしたい衝動を必死で抑える、キノコを食べて「とってもデリシャス!」、偽のエロ本を掴まされてキレるなど、世界の命運を背負った勇者らしからぬぶっ飛んだ一面を見せてくれる。
      • その極め付けが下記の腹上死イベントである。
    • 商店や宿屋の壁にしばしば「BOYOYON」という謎の文字が書かれている。ボヨヨンって?
    • おバカな点でもないが、通貨の単位が「キム」だったり、他のRPGでは「酒場」に当たる施設が「レストラン」だったりと、設定面でもちょっとヘンと言うべきか、独特な所がある。
    • 宿屋の主人が何故か老人。
      • 今までのRPGでの宿屋の主人は若い男性や若い女性だったのに対して本作のみ老人が宿屋の主人を務めている。
  • BGMが秀逸。
    • テレビCMで放送されたタイトル画面のBGMに衝撃を受けた者もいるだろう。楽曲を手掛けたのはセガを代表するコンポーザーの1人である「Hiro師匠」こと川口博史氏と『ターボアウトラン』や『G-LOC』の楽曲に参加した高木保浩氏*3
    • 城下町の曲などは今も尚、人気が高い。屋内の曲も好評。
    • ザコ戦の曲も、割と早く決着がつくので普段はなかなかループまで聴く機会が無いが、ループ直前の旋律はとても格好良い。
      • 他にもダンジョンの曲など、じっくりサビまで聴くともっと良さが分かる曲も多数。
  • 心の声やプレイヤーをサポートするガイドの言葉遣いががさつ。
    • 他作だと「ですます」調だったり「~だ」調だったりと機械的に丁寧な言い回しをするが、本作ではそれらに加えて「…だよ!」「誰もいないよ。」などの馴れ馴れしい言葉がよく使われる。
      • ダンジョンではどのフロアにもマップが隠されているのだが、それを発見した時のメッセージが「なんか紙切れが入っている」「このへんのマップを手に入れた」。なんてフランクな…。
      • 中には乱暴な口調もあり、たとえば同じ武器を装備しようとすると「バカみたい」と罵られる。…ひどい。
  • ファンタシースターII』に続く「バックアップ自動修復機能」搭載ソフト第二弾である。
    • ここでもアナウンスメッセージがコミカルなものになっており、データ破損の際には「いちおう、しゅうふくしてみます。」などと言われる。
    • 修復成功の場合はファンファーレとともに「なんとかなりました。よかったですね!!」一方、失敗した場合は断末魔の悲鳴と専用の哀しいBGMとともに「やっぱり、だめでした。ごめんなさい!!」と、無駄にコミカルな返答が返って来る。
      おきのどくですが」に比べればまだ明るいが、逆に火に油を注いでいるのでは……。
      • そもそもMDはデータが破損する事自体滅多にないのだが……。

問題点

  • 城や街での移動速度が遅く、4方向にしか進めない。
    • プレイヤーの多くがここに不満を抱くと思われる。雑魚戦の8方向移動や3Dフィールドの移動速度をなぜここでも活かせないのか…。
  • メッセージ速度は戦闘中以外はいつでも変更可能なのだが、電源を切ると「ふつう」に戻ってしまう。
    • 「ふつう」でもかなり遅いので、常に「はやい」にしておきたい所だがこの仕様なので、プレイの度に設定し直さなければならず手間である。
  • 3Dフィールドがあまりにも雑で、地図入手後は画面右の簡略マップをメインに見て探索することになる。
    • 見易ければそれで良いという声もあるが、16ビットマシンでありながらFC以下のチープなマップをメインにフィールド散策する姿はあまりにも哀しい。
  • ラストダンジョンもラスボスもBGMがそれまで流れていたものと同じ。
    • この時期のRPGとしては珍しくないものの、普段からダンジョン曲は3曲、ボス曲も2曲用意されて使い分けられているので、欲を言えばラストも専用曲は欲しかった所。
    • 最後に訪れる敵国の首都は勇ましい専用曲が用意されている。これに加えてラストダンジョンやラスボスに専用曲があればクライマックスの雰囲気がもっと出たのだが*4
  • ダンジョンの種類が洞穴しか無く、変化に乏しい。
    • 城や遺跡などと言った他のタイプのダンジョンが無く、全て「○○の洞穴」で統一されている。ラスボスも皇帝でありながらわざわざ城を離れて洞穴の奥で主人公を待ち受ける始末。
      • ちなみにシステムが違うので一概に比べられないが、3年前に出た『ドラゴンクエスト』(初代)もダンジョンは地下へ降りていく形式のみだが、マップチップに汎用性の高いレンガの床と石材の壁を使用し「墓」「海底トンネル」「地下迷宮」などを出している。
    • ストーリーも基本的には、街で近くの洞穴の情報収集→洞穴を攻略→情報を集めて次の街へ、の繰り返しである。
      • 一応、各地では「住民が若さを吸い取られて全員老人になっている」「男が全員連れ去られて女だけの村になっている」などユニークな事件が起きており、シナリオ自体が単調という訳ではない。
      • しかし後半は一つの街のイベントで三つもダンジョンを攻略させられたりと、淡々としたゲーム進行も少なくない。また、仕方ない事だが、終盤になると雰囲気もシリアスになってくるので笑いという楽しみ所が減ってくる。
  • 宝箱の中身を取る手順が面倒。
    • 宝箱を発見し「あける」で中身を確認。しかしこれだけでは入手できず、更に「とる」で取り出さないと得られない。
    • 宝箱を発見していきなり「とる」を選んでも、箱ごと取れないと言って面倒な手順を強要してくる。
  • エンカウント率が異様に高い。
    • 村の外へ出ればエンカウント、横に振り向いただけでエンカウント、セガ体感ゲームのように風になりたい!…と踏み込んだ第一歩目でエンカウント。
  • エンディング直前にセーブ可能
    • ラスボス撃破後も町や村の教会でセーブもできてしまい、これを行うと後はエンディング見るだけの上、エンディング前に町や村の住人との会話しかできなくなる。
      • 当然戦闘も起きない。

伝説の腹上死イベント

+ 以下、18歳未満には刺激の強い表現があります
  • ドラクエシリーズ』の、オカマだったりオッサンだったりというじれったい「ぱふぱふ」に苦言を呈してか、本当に性交渉を持ちかける人妻を登場させている。
    • 承諾すると「あなたも、ものずきね!」と言うセリフと共に宿泊時の演出が入る。…が、HPが回復するどころか宿泊前から半減している。回復しないまま何度も繰り返すと、断末魔の悲鳴とともに死ぬ。
      • 通常、死ぬと所持金が半分になって復活するのだが、この場合はそれだけでは済まされず…。
      • ちなみに回復しながら繰り返すとやがて女の方が音を上げる。絶倫ぶりを見せつけてからストーリーを進めるのも一興か。
    • その村のイベントをクリアすると夫が帰って来るので、当然ながらもう性交渉はできない。
      • 夫は何かを感じ取ったらしく、主人公に「まさか、俺がいない間に俺のかかあに何かしたんじゃねえだろうなあ!」と凄んでくる。何て言うか、その、すみません…。
      • 対して妻の台詞は「ごめんなさい。この間言った事は忘れて」。夫の手前そう言うのは当然だろうが、プレイヤーはこんな強烈なイベントを忘れられはすまい…。
    • 情事はテキストのみで進行するのだが、思春期なプレイヤーには刺激が強く、度肝の他に…いや度肝をヌかれ、ゲーム内でも外でも「せいし」に関わるものだった。
    • 家庭用ソフトにおいて性描写を取り入れた作品は幾つもあれど、「腹上死するゲーム」と限定すればこのソフトが満場一致で選ばれるだろう。

総評

まるで開発チームが各パートごとに分かれてゲームを制作、仕上げ時に「いっせーの」で1つに合わせたかのような作品。
一見豪華にもとれるが、それはつまり各視点ごとに全く異なるプログラムを用意する必要があったという事でもある。
町中の主人公と雑魚戦の主人公のモデルが別に描き起こされていたり、ボス戦の主人公もまるで別人で「お前誰だよ」状態。
一つ一つはそれなりに面白いのに統一感がなく、人件費と容量を無駄に食った感が拭えない残念な内容となっている。
寧ろ、後々まで伝説として語り継がれる腹上死や、随所に仕込まれているバカゲー要素こそがこのゲームの真の見所であり、長所と言えるかもしれない。製作者の意図通りかはともかくとして…。

余談

  • 「腹上死」という前代未聞のイベントがあるにもかかわらず、問題なくWiiバーチャルコンソールでも(しかもCERO:Aで)配信され、伝説の腹上死ゲーは風化する事なく無事に新たな世代へと受け継がれていくのであった…。
    • しかし続くWii UバーチャルコンソールではMDソフトは対応せず、Wiiショッピングチャンネルの終了に伴い、本作も一旦伝説に戻る事になった。
    • ところが、2019年9月19日に発売が予定された「メガドライブミニ」のアジア版*5に本作が収録された。
      • 残念ながら日本版は未収録だが、このアジア版も「メガドライブミニW・アジアエディション」として日本でも数量限定で発売された。その際にはこんな記事まで組まれている。
    • そして2021年12月17日。Nintendo Switch Onlineの追加パック加入者限定ソフト『セガ メガドライブ for Nintendo Switch Online』に収録される形でまたしても腹上死ゲーが帰ってきた。しかも今度は携帯モードでいつでもどこでも腹上死が楽しめるようになってしまい、時代を越えて主人公は果てていくのであった。

CM

+ また一つ、テレビゲームの神話が生まれる…

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最終更新:2024年03月10日 16:45

*1 しかもその話をする市民が嘗て信仰していたのは”BIN教”。どんな宗教だよ!

*2 通常では「ここは「ユルジス」だよ。」だが、モンスター襲撃時に倒れている彼に話しかけると「くっ・・・こ、ここは「ユルジス」だ・・・」と…。何が彼をそこまで駆り立てるのか…。

*3 余談だが「Hiro師匠」の名は高木氏がセガに入社後、川口氏と同じ部署に配属され、彼に師事するようになったことから付いた呼び名であることがインタビュー等で語られている。

*4 ラスボスを倒して世界が平和になってもこの街の曲は変わらないのでちょっとシュール。

*5 台湾・香港・韓国向けに販売されるメガドライブミニ