2D格闘ツクール95

【つーでぃーかくとうつくーるきゅうじゅうご】

ジャンル 2D格闘ゲームコンストラクションソフト

対応機種 Windows 95
発売元 アスキー
エンターブレイン(廉価版)
開発元 OUTBACK
発売日 1998年1月
定価 10,290円(税込)
廉価版 VALUE!:2001年4月2日/3,800円
判定 なし
ポイント まるで簡単じゃないツクール
一からプログラミングするよりはマシ
煮え切らない仕様や不具合は多い
結局作り手次第
恐怖のメモリーエラー
ツクールシリーズリンク


概要

『ツクール95シリーズ』の1つ。要望の多かったジャンルの一つ。
『95シリーズ』としては大体中期頃に発売された作品で、その中では知名度は高い方である。
ちゃんとしたグラフィックさえ用意できれば、当時の市販並かやや下程度のゲームが作れるというレベルの完成度は持っており、これを使用した有名作品は多い。
コンテストパークでの普及率は高いとは言えなかったものの、同シリーズの中では比較的受賞作がちらほら見られた。

ただ、やはり格闘ゲームを作るということは当然、口で言うよりも難しいわけであり、このツール自体にも制作初心者を意識していない部分が目立つ。
そのため本作は購入したという声が聞かれる一方で、反面完成作は他のツクールと比べると比較的少数となっている。

対応機種はWin95のみだが、一応公式発表では98までは動作し、それ以降は不安定という評価になっている。 ちなみに、本作と次作の『2nd』を利用するツクラーは俗に「格ツクラー」と呼ばれている。

評価点

  • 作り手次第で本格的な内容がいくらでも作れる
    • グラフィック、SE、BGMなど、良質なものさえ揃えられれば、「本当にアマチュアか?」と首を傾げるほどの良作を作ることが可能なポテンシャルがある。
    • あくまで出来ることは2D格闘ゲームとして基本的なことしか出来ないのであるが、逆に言えば基本的なことは全て実現可能。
    • キャラクターの追加制限などは特にないので、自分の手に収まるレベルならいくらでも作ることは十分出来る。
  • 製作補助ツールとしての自由度の高さ
    • 一工夫すればツールの仕様以上の作品を作ることは不可能ではなく、知識さえあれば市販レベルの面白いゲームは製作出来る。
    • この点は後のRPGツクールシリーズにも言えることであり、本作はある意味それを先取りしていたと言えなくもない。

賛否両論点

  • 対戦中のズームイン・アウト機能がある
    • 要は、お互いが画面の外へ下がろうとするとそのステージの限界分程度まで画面が広がるという『龍虎の拳』に近いシステムを採用している。
    • お互い離れるとキャラが小さくって見づらいという欠点はあるが、お互いがある程度自由に動ける点は評価されている。
    • ただしこの仕様のおかげで優秀な飛び道具持ちを用意するとそのキャラがやたら強くなりがちで、吹き飛ばし属性の攻撃を加えるとさらに酷いことになる。
    • この機能は続編の『2nd』で廃止されたが、評価点もあることから惜しむ声もある。

問題点

  • 仕方ないとはいえ、敷居が高い
    • キャラ1体に必要な膨大な数のアニメパターンをキャラ数分だけ用意するのは並大抵なことではなく、ここで躓いてしまう人が大勢いた。
    • 加えてオリジナル要素を強くしたいなら、レイアウトも体力ゲージからカウントまでのグラフィックを用意する必要がある。
      • サンプルを流用すれば手間は省けるが、RPGツクールのようにパターンが多いわけではない。こんな所まで1から用意するとなれば凄まじい労力となる。
  • 使える素材が限られる
    • 基本は収録されているサンプルゲームから流用することが推奨されるが、流石に格闘ゲームではそこまで素材を多く出来ておらず、特にグラフィックに関しては流用が難しい。
  • ツクールでありながら内容が難解
    • 「プログラミングを必要としない」というのが本作の特徴であるが、本ツールは後の『RPGツクールXP』のスクリプトと同様取っ付きにくさが顕著。
      • 経験や知識があればすぐに理解出来ることは多く、順応は早いのだが、当然初心者からすれば難解であるためチンプンカンプンになってしまいがちで、挫折の原因となった。
    • そもそもプログラミングの出来る人向けではないため、この点は本末転倒であると言える。
    • 取り扱い説明書は30ページほどとこの手のツールの物にしては異様に薄く、重要な要素が説明しきれていない
      • 同時期のRPGツクール95では100ページを超える厚さと丁寧な解説があったため、わかりやすさは雲泥の差である。
      • 説明書やヘルプでは「技レベル*1」や「共通リアクション*2」等の仕様に対する説明が少なく、サンプルを読みほどくか、手探りで覚えるしかない。
    • リアクションなどに設定漏れがあった場合、何の前触れもなく試合が終了するといった仕様なのかバグなのかよくわからない症状が発生する為、初心者は戸惑いやすい。
  • 格ゲーとしてみた際のトリッキーな仕様
    • 本作のキャラは常に相手の方向を向く、という仕様になっている。
      • このため、突進技をからぶった場合、技を終えてから相手の方を向くのではなく技の途中であろうが即座に方向転換する為、一般的な格闘ゲームの感覚でプレイすると戸惑いを覚える事も。
  • アップデート後にも目立ったバグの多さ
    • 代表的なものとしてセーブ中に「メモリーエラー」と表示された挙句、キャラクターのグラフィックが砂嵐のように化けるという恐ろしいエラーがかなりの頻度で発生する。
      • 当然そのキャラのグラフィックは直らないのでセーブ時にはメモリーエラーが発生しないことを祈るしかない。
  • アップデートパッチ必須
    • 発売当初はストーリーモードが存在せず、暴れまくるCPUと対戦するだけという有様で、さらにはデーターが不安定でエラーが多発するというおおよそツールとして機能していない程の完成度だった。
      • アップデートパッチを適用する事で、エラーの軽減、ストーリーモードの実装、勝利デモシーンの追加、CPUアルゴリズムの詳細設定が可能となり、ようやく格闘ゲームとしての体裁が整うようになるため、アップデートは必須。
      • アップデートパッチを当てる事でようやく現在の評価に落ち着く形になる。
  • 仕様による難儀な要素が多い
    • ストーリーモードにおけるコンティニュー機能がない。
    • グラフィックを半透明に出来ない。
    • 1キャラに使用できるパレット数が16色と少ない。
    • 基本自由度が高いのに、何故か一部レイアウトが固定の部分がある。

総評

格闘ゲームを作ることは他のゲーム以上にとんでもない手間がかかるということをツクラーに教えてくれたツール。
意気揚々と購入したは良いが、いざフタを開けると何をして良いかまるでわからず、挫折してお金をドブに捨てたユーザーは多かったであろう。
その中におけるわずかながらの根気のあるプレイヤーがゲームを完成させ、評価されていったと言えよう。
『2nd』が出たことで本作の利用価値はかなり薄れたが、廉価版が当時発売されていたため、安さでこちらを選ぶプレイヤーもいた。
流石に現在は絶盤であることや続編の存在により、本作を利用したゲームが出ることはほぼない。


余談

有名な作品に、コンテストパークで入賞した「マジカルモンスターズシリーズ」や、キン肉マンを題材とした非公式格闘ゲーム「キン肉マン-マッスルファイト-」、レトロなネタが豊富な「ファミコン瀕死隊」などがある。

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最終更新:2022年12月10日 07:35

*1 技の優先度、キャンセル技等に影響

*2 投げ技などを受けている最中のキャラのグラフィックパターン