デイトナUSA (SS)

【でいとなゆーえすえー】

ジャンル レースゲーム
対応機種 セガサターン
メディア CD-ROM 1枚
発売・開発元 セガ・エンタープライゼス
発売日 1995年4月1日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング セガ審査:全年齢推奨
周辺機器 レーシングコントローラー対応
判定 良作
ポイント 移植度が高く、やり応えのあるモードを搭載
デイトナUSAシリーズリンク


概要

迫力ある3Dグラフィックで人気を博したアーケードレースゲーム『デイトナUSA』の、初の家庭用移植版。
本作の基本的なルールはAC版の記事を参照されたい。
本作では大きく分けて「アーケードモード」と「サターンモード」、2つのモードがある。
前者はアーケードの設定を再現したモードで、残り時間の概念がある。
後者はいろいろな性能のホーネットで運転できるモードで、制限時間を気にせず遊ぶことができる。


評価点

  • 挙動・インターフェースなどの移植度は高い。
    • 後に発売された『サーキットエディション (SS)』『デイトナUSA 2001 (DC)』と比べると一番挙動の再現性が高く、雰囲気や車種・コース選択画面、演出等もAC版に忠実に再現されている。
    • クラッシュ後の車体の損傷、ピットクルー、逆走時のタイム加算などもばっちり再現されている。
  • レース中のゲームスピードに関してはAC版を軽く凌駕している。
    • AC版では60fpsと比較的滑らかな動きであったが、本作では後述の通り20fps以下とフレームレートが低いかわりにレース中のゲームスピードに限ってはAC版に若干勝っている。
  • 充実した追加要素。家庭移植版ならではのアイデンティティを実現している。
    • 周回数が「NORMAL」「GRANDPRIX(NORMALの2.5倍)」「ENDURANCE(NORMALの10倍)」の3種類から選べる。
      • 実はENDURANCEモードでの上位入賞が、後述の隠し要素開放の条件になっている。
  • 難易度が「COM車のレベル」「残り制限時間の長さ」でそれぞれ5段階用意されている。
    • アーケード版では簡単に1位になってしまうような腕前の人でも歯ごたえのある難易度で挑戦することができる。
    • ちなみに「COM車のレベル」とは、COM車の速さだけでなく「車の頑丈さ」にも関わっている。低難易度だとCOM車は簡単にクラッシュする一方、高難易度では戦車・装甲車並みの硬さを持ち、幅寄せしようとしてもビクともしない(あるいは貫通する)。逆にCOM車にドリフト中斜めまたは横から突っ込まれて自車が吹き飛ばされそのまま壁に激突しクラッシュ、という理不尽さも兼ね備えており一筋縄ではいかない。
    • さらに起動時のロゴ画面でコマンド( ↑,↑,↓,↓,←,→,←,→,A,B,C )を入力すると、最高難易度の「マニアックモード」が出現する。マニアックモードは隠し要素開放に一切関与しない、いわゆるオマケ要素に近い。
  • コースが左右反転した「ミラーモード」を遊ぶことができる。
    • コースの向きだけではなく、車に描かれている文字も反転。さらにゴールした直後に表示される「GOAL」というロゴまでもが反転している。
  • サターンモードでは、それぞれミッション・性能が違う10種類の車が用意されている。
    • 最初はAC版ホーネットを含めた4台だが、条件をクリアしていくことによって2台ずつ開放される。
    • グリップ力・加速力・最高速の他に、「壁に擦っても減速しない」「芝の上でも減速しない」などの特殊能力が存在する。
    • 初心者がプレイすると「何の違いがあるんだ?」という感想が沸いてくるかもしれないが、上達するにつれて各性能の違いを実感するようになり、自分好みの車が見つかるはず。
      + サターンモードで使用できる車一覧
      車種 ミッション グリップ力 加速力 最高速度 備考 開放条件
      赤/青 AT C B 315km/h AC版と同じ性能 最初から使用可能
      赤/黄 MT C B 325km/h
      AT A A 305km/h
      MT A A 315km/h
      AT D A 325km/h 芝の上でも減速しない 初級コース、難易度NORMAL以上で3位入賞
      ピンク MT D A 329km/h
      AT B B 315km/h 中級コース、難易度NORMAL以上で3位入賞
      オレンジ MT B B 325km/h 壁に擦っても減速しない
      水色 AT B C 325km/h 上級コース、難易度NORMAL以上で3位入賞
      黄色 MT B C 329km/h
  • さらに条件を開放していくと、馬でプレイできるようになる
    • ちなみに車種選択画面ではポリゴンが表示されない代わりに「DAYTONA UMA」という文字が表示される。
    • ホーネット(車)で走行中に鳴るエンジン音などはもちろん無く、ひたすら脚で駆ける音が鳴り響くというシュールな画が展開される。
    • また馬も例に漏れずクラッシュし直後に悲鳴のような鳴き声も出てくるが、また何事も無かったかのように再びコースを駆け抜ける。ドリフトも可能。 蹄でどうやってんだ、とこれまた非常にシュール。
    • ただしピットは利用できない(というか利用する意味が無い)ので、前述のピットショートカットも容易にできる。なおUMAとは「未確認生命体」なので、これは馬では無いかもしれない。いろんな意味で。
      + サターンモードで使用できる馬一覧
      馬種 ミッション グリップ力 加速力 最高速度 備考 開放条件
      UMA茶色 AT C A 305km/h 芝の上でも減速しない 全コース、難易度NORMAL以上で優勝
      UMA銀色 MT C A 315km/h
      UMA2茶色 AT D C 325km/h 芝の上でも減速しない、子連れ馬 UMAを使ってENDURANCEモードで優勝
      UMA2銀色 MT D C 329km/h
+ UMAプレイ動画。なかなかにシュール。


賛否両論点

  • BGMの音源がAC版から変更されている。
    • 曲目自体は変更されていないのだが、サウンドにはアレンジが施され、光吉氏のボーカルが録り直されている。
      • AC版のボーカルはサンプリング音声のパーツが継ぎはぎされているような印象を受ける一方、本作のそれはほぼ生歌に近いので光吉氏の歌唱力を充分に確かめることができる。

問題点

  • 20fps以下と、フレームレートが低く動きがカクカク。
    • 発売当時はアーケード基板と家庭用据置き機の間にまだ性能差があった故仕方がない面もあるが、AC版が60fpsであるため余計に落差を感じてしまう。セガサターンマガジンの開発者インタビューで「60fpsは無理なので30fpsに落とす」とは公言されていたが、蓋を開けてみたらまさかの20fps。
    • 先行で発売されていたPS版『リッジレーサー』が30fpsながらストレス無く動作していたことから、SSでも同レベルのパフォーマンスは出るだろうと期待していたSSユーザーを物の見事にガッカリさせ、PSとSSのポリゴン性能差をまざまざと知らしめられることとなった。ただ実際はポリゴン性能の他にも、アザーカーの台数やコースレイアウト(遠景のポリゴンの有無)や挙動計算のこだわり度など様々な要因が絡んではいる。
    • 同年に移植された『セガラリーチャンピオンシップ』は30fps。当時セガを支えた二大レースゲームであったためによく比較された。
    • また走行中車が上下に揺れる。AC版にもこの揺れはあり間違ってはいないのだが、これも余計にカクカクさを感じさせてしまう要因になっている。
    • 特に上級コースのスタート地点直後の高速コーナー周辺で異常にフレームレートが低下する。
  • AC版と比してポリゴン描画数が大幅に低下。
    • 最初に発表されたホーネットのみが登場するデモではポリゴン描画がかなり綺麗だったが、開発が進んでコースが出来上がっていくにつれて画質がどんどん低下。それでも画質を犠牲にした分、動作が軽快になることが期待されていたが……
    • 操作車のホーネットはグラフィックも粗い上、後方視点だとAC版よりも縦長で似ても似つかぬ姿になってしまっている。スリップ時の煙は塩にしか見えないと言われることも。
    • コースを含めた背景も描画されるのが遅く、進行先の比較的近い位置からボコボコと現れる。近づかないと次のコーナーが描画されきれず、コースを覚えていない状態ではプレイしづらい。
    • 背景のオブジェクトもかなりカットされている。上級コーススタートの海賊船の有無などは非常にわかりやすい。
    • 台数が多いのでやむを得ないが、アザーカーはもはやマッチ箱のレベルである。

上記の2点はレビューでもよく指摘されている点である。ハードの性能が限られていたとはいえ、もう少し何とかならなかったのだろうか。

  • 2人同時対戦が不可。
    • 後に発売された『サーキットエディション』では実装された。
  • 高難易度設定の初級コースで、正攻法では優勝が不可能
    • 初級コースはトップから約半周差つけられた状態でスタートするのだが、高難易度に設定するとどう頑張って走ってもトップの車とほぼ同タイムか遅いペースでしか走れず、一向に追いつくことができない。
    • 優勝するためには、AC版での記述にもあるようにピットショートカットの利用が必要。裏技を使用しないと勝てないとは…。
      • この状況は、よく考えれば本作を開発していた時点で開発側がピットショートカットの存在をすでに認識していたことを暗に示している、と解釈できなくもない。
      • 2011年、最高難易度のマニアックモードでピットショートカットを使いこなし見事1位でゴールした猛者が本スレに現れ、動画サイトに投稿されたこともあって本スレは活況を呈した。
    • 一方、中級や上級は頑張れば正攻法でも1位になることは可能である。
  • リプレイの視点に第三者視点(ライブカメラ視点)がない。
    • 本来AC版にリプレイ機能は存在しないため本作特有の問題というわけではないが、この時代はバーチャルリアリティ(死語)黎明期。第三者視点を取り入れていれば、間違いなく評価はさらに上がっていた。
    • リプレイ時は従来の4視点+トップビューが追加されるものの、MD版『バーチャレーシング』のリプレイに衝撃を受けたプレイヤーほど落胆の色を隠せないものとなった。
    • また、リプレイが再生できるのはタイムアタック時のみである。

総評

セガサターンというハードの性能限界があったとはいえ、AC版と比してのフレームレート・グラフィックの大幅な低下は、多少なりともファンをガッカリさせてしまったことと思われる。
しかしただの劣化AC版作品に留めず、「馬でレースができる」などAC版にはないオリジナリティが詰まっており、ミリオン作品がわずか1本と苦戦を強いられていたSS市場においてハーフミリオンを達成した。
また、アーケードですら3Dポリゴンゲームがまだ当たり前でなかった時代に「家庭用ゲームで3Dポリゴンレースが楽しめる」というだけでも、本作の存在は大きいものであっただろう。
現在、AC版と全く引けをとらない移植度を実現したPS3版及びXbox 360版がDL専用で販売されているので、初めて『デイトナUSA』を遊びたい方にはさすがにPS3版及びXbox 360版をお勧めするが、このSS版はそれらの版ともまた違った楽しさを味わえるはず。


余談

  • SS版の「馬でレースができる」という要素から影響を受けたのかは定かではないが、1995年にACでリリースされた『マンクスTT スーパーバイク』では隠しコマンド*1を入れるとプレイヤーが操作するバイクが羊になるという、通称「羊モード」が存在する*2
    • こちらは「画面上のプレイヤーだけが羊に跨っている状態」*3でプレイする形になるので見た目のシュールっぷりが更に増している。おまけにエンジン音は「羊が足で駆ける音っぽいもの」、敵車と接触した時の音は「ボヨヨン」というコミカルな音に変わり、スロットル操作やシフトチェンジをする度に羊の鳴き声が聞こえ、BGMに至っては専用曲(「メリーさんの羊」のテクノアレンジ)が流れるという代物。
    • ちなみにコースアウトで路肩に出ても減速しない点はSS版デイトナのUMA譲りだが、こっちはアザーバイクも羊なのに加え、マンクスTTのコースレイアウト上ショートカットができるレベルの幅の路肩もほぼないため、ほんとにおまけ要素であることは考慮しておく必要がある。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年08月13日 11:36

*1 トランスミッション選択画面でギアチェンジボタンを上、上、下、下の順に押し、次にバイク本体を左、右の順で倒し、右に倒した状態でブレーキON→アクセルONの順に入力。羊の鳴き声がしたら成功。

*2 1997年に出たSS版と、同年末に出た(SS版ベースの移植である)Windows版にも搭載されている

*3 他のバイクはライダーが跨っておらず羊のみ。