ヴァルハラナイツ エルダールサーガ

【う゛ぁるはらないつ えるだーるさーが】

ジャンル アクション・ロールプレイング
対応機種 Wii
メディア 専用12cm光ディスク 1枚
発売元 マーベラスエンターテイメント
開発元 K2
発売日 2009年10月8日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1人(Wi-Fi通信時2人)
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 なし
ポイント 非常に真っ当でオーソドックスなRPG
オーソドックスすぎて超地味
ヴァルハラナイツシリーズ
1 / 2 / エルダールサーガ / 3 (GOLD)


概要

主にPSPで展開していた『ヴァルハラナイツ』シリーズ初の据え置き進出作。
特にナンバリングは打たれておらず、後に普通に『ヴァルハラナイツ3』が発売されたことからスピンオフに近い扱いだが、そもそもこのシリーズ自体共通の世界観のようなものがなく、正式にはスピンオフなのか本家なのか判断するのは難しい*1


物語

遠い昔

大規模な流星群が確認されたという
それは災厄の予兆だったのだろうか
滅びたと伝えられていた魔物達の突然の復活
地上は混乱に陥り 多くの命が犠牲となった
だが 地上で生きる者達は抵抗した
ヒューマン エルフ ドワーフ ホビットの
四種族は同盟を結成し 反攻に転じた
同盟軍は進撃を続け 魔物達を大陸の西端
エルダール地方に押し留めるに至った

(公式サイトより引用)

これだけでは理解できそうにないと思われるが、全二章構成で第一章はとあるヒューマン男の「星のかけら」という重要アイテムを巡る冒険譚、第二章は一章主人公の子供(種族と性別を選択できる)の物語になっている。


特徴・評価点

  • このシリーズ全体に言える特徴だが、アクションRPGを名乗っているものの、アクション要素はやや控えめ。どちらかと言えば「3D版『ウィザードリィ』」といった印象の作品である。
    • 各地に眠るダンジョンを探索し、少しずつアイテムを集めレベルを上げて…と基本的なシステムは非常にオーソドックスである。
      • オーソドックスなだけにわかりやすく、「自分の分身を強化して物語を進める」というRPGの根源的な面白さを比較的手軽に味わえる。
    • 旧作と異なり、敵との遭遇場所がそのまま戦場になるシームレス方式になっており、戦闘開始時に一切のウェイトが発生しなくなっている。周囲から敵が集まってくる状況も多く、窮地に陥りやすい一方で後述するように逃走がしやすいというメリットにもなっている。
    • 難易度はやや厳しめといった感じか。油断すると雑魚相手でも結構死ぬ。本作は状態異常がかなり凶悪で、特に毒でのHP減少ペースは数あるRPGのなかでも最強クラス。自然回復までの時間もかなり長く、対策アイテムを怠ると泣きたくなる。他の状態異常も一様に自然回復に時間がかかり、放置するとまともに戦えなくなること請け合いである。
      • 基本的に全力疾走すれば敵に追いつかれることはなく、逃走は容易。じっくり装備を吟味すれば十分戦えるのでそこまで極悪な難易度というわけでもない。後述するがバランスブレイカーもある。
  • マップの広さは広すぎず狭すぎず順当なところ。ダンジョンも投げ出したくなるほど広くはないが、探索心をくすぐる程度には狭さを感じない。
    • 各地の教会から有料で「ポータル」という移動手段も使えるため、移動周りのストレスはあまりない。
  • 転職システムとスキルシステム。ありきたりではあるが、自分オリジナルの主人公を作ることが可能になっている。
    • 選べる職業の種類はそこそこ多く、個性的。各職業レベルアップの度に得られるスキルポイントを割り振って様々なスキルを習得/成長させることが出来、これらのスキルを配置して戦うことになる。
      • スキルは常時効果を発揮するパッシブとMPを消費して発動するアクティブのそれぞれに枠が設けられている。どんな職業でもスキルの配置制限のようなものはないため、様々な組み合わせを考えることが出来る。
    • ステータスはレベルアップ時に得られるアビリティポイントを配分して成長させる。パラメーターが上がれば上がるほど、成長に必要なアビリティポイントは増えていく。このため一点集中型のキャラクターを作ると成長率が鈍くなる。
      • 各職業ごとにレベルは個別に管理されるがパラメーターは共有なので、出来るだけ多くの職を経験した方がパラメーター的には有利になる。
  • 装備品の種類が多く、デザインにも使い回しがないため飽きにくい。
    • 武器には一般的な剣や斧以外にもパイルバンカーやチェーンソーなど一風変わったものもある。
    • 武器はメインとサブの2種類装備でき、両手に一種類ずつ持つ二刀流や片手に武器、片手に盾、各種両手持ち武器まで種類は豊富。戦闘中でもメインとサブを任意で切り替えることで多彩な戦術が取れる。
      • ブーストゲージがフルになると必殺技が使える。威力が高く攻撃範囲も優秀。
      • 武器は使う度に耐久度が減少していく。ゼロになる前に鍛冶屋で修復するか、ソードオイルというアイテムを使う必要がある。

問題点

  • 地味。とにかく徹底してあらゆる要素が地味。「狙ってやったんじゃないか?」と思われるほど地味。
    • ストーリー、世界観は「星のかけらというスゴイ力を持ったアイテムが世界中に散らばったので、ドワーフ、エルフ、ホビット達の暮らす世界を巡る」というもの。王道と言えば王道だが、使い尽くされたような古臭い設定であることは否めない。
    • 技の演出は敵味方問わず非常に地味。通常攻撃が剣を振るだけなのはまだしも、必殺技も「力を溜めて回転斬り」程度。必殺の魔法も、魔法陣が出現したら敵にダメージエフェクトが出て終わりなど、この時代としては明らかにチャチな演出である。
      • 通常攻撃含めて各種モーションが異様にモッサリしているのも地味さに拍車をかける。一応SPDのパラメーターを上げれば改善されるらしいが、多少上げた程度では恩恵は感じられない。
      • ガードや回避は任意でできない。ガード、回避といったアクションは用意されておらず、敵モンスターの攻撃範囲が見た目以上に曖昧なこともあり、距離をとって大技回避などということも難しい。パラメーター次第でランダムに回避したり、(盾を持っていれば)自動ガードもランダムにできるため、盾が全くの無意味というわけではないが、アクションRPGのシステムとしては直撃しているのに「AVOID」と出てノーダメージなのはかなり違和感がある。
    • 今までのシリーズは複数人の仲間を連れて戦えたが、本作では据え置きにもかかわらずなんと最大2人パーティーと大幅に退化している。よほどの事情が無い限り、RPGで最大メンバー2人というのはかなり稀である。
      • Wi-Fi対応ではあるものの、やはり組めるパーティーは最大2人である。Wi-Fi専用クエストもいくつかあるが、経験値が入らないので使用用途は限られる。なお、Wi-Fiできる対象はフレンドコード登録者のみ。野良募集は不可能。
      • ゲームバランス的には2人パーティー前提の調整になっているので、特別難しいかと言えばそういうことはない。単純に戦闘が恐ろしく地味というだけで、バランス自体はこれはこれで取れている。
    • 豊富なキャラクターメイクを謳っているが、変更できる点は非常に少ない(それどころか違いが分からない)。髪型に至っては兜を装備すると強制的にその兜に設定された髪型になるのでほぼ意味が無い。
      • 「キャラクターメイク時に多彩な種族を選べる」というのが本シリーズの売りのはずだが、第一章ではシナリオの関係上男ヒューマンで固定されてしまっている。第二章では性別と種族が選択可能になるものの、過去シリーズでは各種族ごとに個性的な体型(ムキムキのドワーフ、チビのホビットなど)だったにもかかわらず、本作では「ハーフドワーフ」「ハーフホビット」という扱いのため、通常ヒューマンと見た目が全く同じでパラメーターに多少差が出るだけになっている。
    • BGMも耳に残らず、キャラクターのボイスもほとんど聞こえない。
      • 何より謎なのがオプションのサウンド関係。各種サウンドの音量を調整できるのだが、なぜかBGMと効果音のバランス調整しかできず、BGMを上げると効果音が下がり逆も同様。このためBGMを聞こうとすると効果音がろくに聞こえなくなる。
      • ゲーム進行を考えるなら、BGMを下げて効果音を上げるバランス一択。アイテムドロップ時の効果音でアイテムを見逃す可能性がグッと減るためである。
    • グラフィックは全体的に灰色がかっており、見ていてあまり印象に残るものではない。敵キャラから登場人物に至るまで全体的に非常に彩度が低くものすごく雰囲気が暗い。グラフィックレベル自体もPS1とPS2の中間程度で、あまり褒められた物ではない。
      • グラフィックの色彩については雰囲気作りの一環なので仕方がない一面はある。かなり退廃的な世界観なので、ある意味マッチはしている。
      • 手に入れた装備や出会った人物、倒したモンスターはギャラリーからモデリングを閲覧できるが質が微妙な上ズームもアクションもできないのでかなり微妙。ギャラリーという要素自体は評価できるが…。
  • バランス的に理不尽な点など。
    • 状態異常の強力さは自分が使っても言えるため、武器に一定時間状態異常属性を付与する各種小瓶がかなり凶悪。あろうことか大抵のボスにも通用する。ポイズンの小瓶(毒付与)が一本あればかなりの強敵でもあっさり倒せる。少々高いが普通に店売りしているため、雑魚戦でも躊躇無く使える。
      • ただし、相手を病気にする「インフェクトの小瓶」だけはモンスターを病気にしても効果が一切ないため、無意味な存在になっているが。
    • 武器の種類は多いものの、武器に様々な属性を付与できるクォーツというアイテムがかなり強く、クォーツをはめられるソケット(同じ武器でもランダムに追加されていることがある)が多い武器の方が基本性能が上の武器よりも使いやすいことが多い。各傭兵の初期武器はその武器ジャンルにおける最低ランクであるものの、ソケットが異様に多くここにクォーツを複数はめた上で鍛冶屋で強化すれば、十分終盤まで通用してしまう。
  • システムが不親切。
    • この時期のゲームにしては不親切なことに商店での装備品の性能比較と外見確認が出来ない。特に重量はその都度メニューから今のCPを確認して装備できる重量かどうか比較しないと、装備できないものに金を払いかねないので面倒。
    • 鍛冶屋で装備品を強化しようとすると、鉱石と現金が必要なのだが、一定確率で強化失敗して装備品が失われる。しかも強化すればするほど失敗確率は上がる模様。前述のクォーツを大量にはめた強力な武器を失ったりすると泣くに泣けない。
      • ただし、セーブ&ロードが有効なので回避は容易。ものすごく時間がかかるが…。強化時は強制セーブ&強化失敗しても失うのは鉱石と現金だけぐらいのシステムにしておいても良かったはずだが。
    • 最強装備を吟味しようと思うと、やはりギャンブルボックスというランダムにアイテムが出てくるアイテムを使ってのセーブ&ロードの繰り返しになってしまう。
      • こちらもギャンブルボックスは入手したときだけ有効で、ロードすると消失する…と言ったシステムにしておけば容易く回避できるのだが。
    • 腰装備には「スロット」というパラメーターがあり、このスロットには最大数まで消耗品をセットしてメニューを開かずショートカットして使用できるのだが、アイテム切り替えコマンドが妙に使いづらく、実質的にはよく使うアイテムを一種類セットして使える程度の機能にしかなっていない。
      • ボタンを押して一つずつスロットを切り替える方式なのだが、このときアイテムをセットしていないスロットも切り替えなければならないので、スロットの多い腰装備はむしろ切り替えに手間がかかるばかりでマイナス装備に近い。
  • ストーリーは説明不足。前述の通り基本的に超王道なので、語られていない部分は十分脳内補完できるが。
    • 第一章終盤で、4種族の女性からヒロインを選択するのだが、ホビットの女の子はどう見ても10歳以下のロリ(当然主人公の子供を産むことになる)*2。ドワーフの女の子は幼なじみの婚約者がいたのに主人公が後から来てかっさらう展開(一応この幼なじみも納得済みではあるが)。ヒューマンの女の子は普通に主人公の幼なじみだが、ゲーム的には彼女を選ぶと第二章で選べる種族が減るので、選ぶ意味はほぼない…など何かしら際どいポイントを抱えているヒロインばかりである。
      • そもそもキャラクターメイキング制の割には、プレイヤーが思ってもいないことを勝手にしゃべり出したり、主人公のキャラクター付けが曖昧である。
  • アプレイズの札というアイテムがほぼ無意味。
    • 「未鑑定のアイテムを鑑定できる」という効果なのだが、本作では装備の変更は街でしかできないため、ダンジョンで拾った装備をその場で鑑定して装備、などといった使い方は不可能。また店での鑑定は100%成功する上無料。よってわざわざこのアイテムを買う意味は皆無に近い。その割に消耗品として割と良くドロップされるため地味に鬱陶しい。
      • 前述のギャンブルボックスループをやるなら、あると多少楽になる(店まで行く手間を省いて性能確認ができるため)が、どう考えてもこれは本来の用途ではないだろう…。
  • 傭兵のAIがかなり間抜け。
    • 「体力が減ったから後退する」などという思考をせず、体力に関係なく猪突猛進で突っ込んでいくことが多い。一応指示は細かくセットできるため、状況に応じてこまめに指示を切り替えればそこそこ生き残れるが…。
    • プレイヤーとの間に段差を2つ以上挟むとまず付いてこれなくなる。基本的にプレイヤーに向かって直線最短距離で追尾してくるため、「2つの段差を方向を変えながら乗り越える」という行動はできない。
      • ちなみにこの「2つ以上の段差が連続する」ポイント、ゲーム通して少ないかと言えばむしろ頻出するため、傭兵の管理にはゲーム全編通して苦労することになる。
    • 「降りることはできるが上れない」という段差を敵を追いかけて降りてしまい、合流できなくなることも。
  • 追加ジョブが役立たず。
    • 本作初登場のジョブ、「吟遊詩人(バード)」は「音楽を奏でて味方を強化出来る」ジョブなのだが、なぜよりにもよって味方が一人しかいない本作に出したのかよく分からない存在である。しかも強化する効果は音楽演奏中しか発揮されず、演奏が中断されるとその場で効果は失われる。実質的に一人攻撃できなくなり一人強化されるだけなので差し引きで見ると…。
    • 「弓使い(アーチャー)」はジョブの性能以前に本作の弓の攻撃力が設定ミスかなにかかと思うぐらい絶望的に低いため*3、非常に使えない。
  • 取り返しの付かない要素が多い。
    • クエスト(サブイベント)は1回しか受注できず、キャンセルすると二度と受けられなくなる。1回しかできないのはまだシナリオ上理解できるが、キャンセルのデメリットが大きすぎる。
      • クエスト中は珍しいアイテムを落とす確率の高い「レアモンスター」というモンスターが登場することがあるのだが、当然クエストをクリアすると消失してしまう。そんなモンスターの存在は誰一人教えてくれないので、気づかないままだと大損する。
    • 上級ジョブを入手できるクエストも同様に一度しか受けられない。「クリアすれば上級ジョブ入手」系はキャンセルさえしなければよいのでまだマシだが、問題は「クエスト中に特定の場所を訪れることで入手する」形式の上級ジョブも存在すること。気づかないまま該当のクエストをクリアしてしまうと、これらのジョブに就く機会が永久に失われる。
      • 前述のレベルアップ仕様もあり、「就けるジョブが減る」は戦略性が減る以上にパラメーターを上げるチャンスまで失わせてしまうので、本作のシステムを考えると損失は非常に大きい。
  • パラメーターが謎の英語略字のオンパレードで、ゲーム中での説明もほとんどないため、理解に苦しむ。

総評

「アクションRPG」の「RPG」部分に限って言えば、比較的ストイック気味な難易度、豊富な探索・収集要素など地味ながら完成度は高めである。
しかし、「アクション」部分があまりにおざなりに過ぎる上それ以外の要素もあまりに地味すぎる。
当節の派手なゲーム群の中にあっては、あまりにもストイックな方向性に徹しすぎたのが問題だと言えるだろう。


余談

  • 謎のポータル料金。
    • 問題点とも評価点とも言えず、かといって特徴に載せるにはあまりに地味な点なのでここに記載。前述の通り移動手段であるポータルの使用にはお金がかかるのだが、なぜか主人公1人で利用するのに比べて、傭兵を雇って2人で利用すると料金が半額になる。
      • 1人でも2人でも同じ料金、もしくは2人なので割り増し料金なら納得できるが、人数が増えて料金が安くなるというのはかなり謎である…割り勘でもしているのだろうか?

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最終更新:2022年06月22日 16:00

*1 『3』はPSVでの発売なので携帯機が本家で据置機がスピンオフという単純なものかもしれないが。

*2 もっとも、こういう作品のホビット(及びドワーフ)はいわゆる「合法ロリ種族」(見た目が子供のまま成人する種族)として存在するようなものなので…。

*3 基本のダメージが少なすぎる上、溜めないと撃てないため手数も少ない。しかも一発ごとに矢を消耗するためコストパフォーマンスが異様に悪い。