高橋名人のBugってハニー
【たかはしめいじんのばぐってはにー】
概要
ゲーム『高橋名人の冒険島』を原作とするTVアニメ『Bugってハニー』のゲーム化作品。
ゲームを元としたアニメが更に出戻りのような形でゲーム化される初のケースとなった。
登場人物
-
ハニー・ビー
-
ハチの妖精の女の子。原作同様、空も飛べる。ハートの弾を投げて攻撃する。
-
監禁されている高橋原人を救うべく、ステージ1で活躍する。
-
高橋名人(高橋原人)
-
キュラ大王によって監禁されていたがハニーに救助され、ステージ2以降で活躍する。
-
『高橋名人の冒険島』のときとは違い、石斧が最初から使えるようになっている。パワーアップ版である炎は波状に飛ぶようになり、射程が伸びるなど強化されている。
-
アニメでは「高橋原人」だったが、ゲームでは原人と名人どちらの呼称も区別なく使われている。
ゲーム内容について
-
基本はシンプルな横スクロールアクションゲーム。
-
時間と共に減っていくバイタリティシステムは撤廃され、アクション面の難易度はマイルドになったのだが、今作ではボス部屋の前に巨大な扉が立ちはだかる。
-
この扉を開けるために必要な8つの文字(パスワード)を探していく(後述)。
-
タマゴを取得してブロック崩し
-
前作におけるタマゴは、中からアイテム等が出現するものだったが今作では大きく異なる。今作のアイテムは、ステージ中に設置されているキャンディーや灯篭を破壊することによって出現する。
-
まずは、特定の場所で何もない空中に攻撃を当てる事によってタマゴが出現し、これを取得するとブロック崩し面に切り替わる。
-
パドルを左右に動かしてボールを跳ね返し、ボールを画面最下部に落とさないように注意しながら、設置されているブロックを次々と破壊していくというもので、かなり出来が良い。
-
怪物ブロック、爆弾ブロックなどがユニーク。意匠をこらした面もある。
-
ボールの動きに応じて画面が上下に切り替わる「2画面構成」という斬新な部分もあり、上画面のパドルの真下にボールを当てると、しばらくの間ボールが赤くなり破壊力が増す。それでブロックを貫通させるのは爽快。
-
破壊したブロックから出現するアイテムも、パドルが長くなる「LARGE」、ボールを弾く「RIPPLE」、貫通力のある「BROKEN THUNDER」等があり、グラフィックも細かい個所まで良く描き込まれている。音楽や効果音も質が良い。
-
ブロック崩しの目的(パスワード取得)
-
一般的なブロック崩しでは、画面内を飛び回るボールをパドルで跳ね返しながら、そこに設置されているブロックを全て破壊すればクリアとなるのだが、本作ではそれに加えてパスワードを取得することが目的である。
-
破壊したブロックから出現するアルファベット(数字の場合もある)が、パスワードに該当する。中にはダミーワードが混ざっており、それに触れるとミスになり、ブロック崩し面における残機が全てなくなると、強制的にアクション面に戻され、同時に(アクション面における)残機が1人減る。ゆえにパスワードとボールの位置が離れて落下してきたり、ダミーワードとボールが近くで一緒に落下してきたりすると危険。
-
「上画面のブロック全壊」「パスワード取得」「ブロック全壊後に開通する画面最上部の出口から退場」という条件を全て満たす必要がある。そして、パスワードを全て集めると音楽が流れ、ステージ最奥部の扉に入れるようになる。
-
パスワードは、1つのアクションステージにつき合計8文字あり、1つのブロック崩し面で獲得できるパスワードは1箇所のみ。
問題点
-
ハニーを操作できる期間が短い
-
前述のとおり、ステージ1では高橋原人を救出するためにハニーを操作するのだが、ステージ2以降では一切彼女を操作することができない。
-
操作性は圧倒的にハニーの方が上であるため、ザコ敵の攻撃が激しくボスの居るステージ2以降で操作できないのは、ストレス要素となる。
-
パスワードのシステム
-
通常、ゲームにおける「パスワード」とは、ゲーム機の電源を切った後でも再プレイの際にそれを入力することにより、前回の状況から継続してプレイ出来るようにするためのものである。実際に、同社の『ボンバーマン』や『ロードランナー』でもそういった仕様になっていたが、本作では全く異なる意味で用いられており、多くのプレイヤー達を困惑させた。
-
しかも本作では、主にパスワードの取得が原因で必然的にプレイ時間が長期化してしまうにもかかわらず、セーブ機能も「ゲーム再開用のパスワード」も存在しない。
-
ゲームオーバー時に、あるコマンドを入力することでコンティニューが可能。そのステージの初めからゲーム再開となるが、それまでに取得したパスワードは失われず継続プレイ可能であるのが救いか。
-
ブロック崩し面の必要回数及び難易度に関して
-
当時は、小学生が本作のメインプレイヤー兼視聴者層だったこともあり、本作のブロック崩しが多数のプレイヤーを挫折させた要素である。
-
ブロック崩し自体の難易度はそこまで高くないのだが、このブロック崩しに「パスワード収集」というクリア必須要素が含まれており、この要素の性質が
小学生にとって
非常に難易度が高かったのである。
-
まず、パスワードはステージ毎に決まっており、各ブロック崩し面で出現するアルファベットを揃えて1つの英文または英単語を作るシステムになっている。前述のとおり、出現するアルファベットには、ダミーのアルファベットも存在し、それを取ってしまえばミスとなる。
-
しかも、パスワードは8文字固定である以外はノーヒントであり、正解/ダミーワードの判別は全くできないため、初めはミスを繰り返しながら覚えるしかない。さらに、正解ワードは各ブロック崩し面で固定されているため、正解ワードを知っていても面が違えばダミー扱いになってしまう。
-
最も厳しかったのは、パスワードが英単語(ローマ字)となっていたことである。当時、本作のメインプレイヤー層にはこれらの教養がない人が多数だったため、スペルが全くわからず、アルファベットの山に大きく苦戦させられるうちに心が折れて、攻略を諦めた人たちが続出してしまった。
-
しかしフタを開けてみれば、英語の内容自体は簡単かつ作品やメーカーに関連のある単語ばかりであるため、初級レベルでも上記教養があればプレイを繰り返していくうちにスペルが類推しやすい。したがって、難易度が非常に高く感じたのも「メインのプレイヤー層の多くが、アルファベットに慣れていない小学生だった」というのが実情に近いだろう。
-
ブロック崩し面を1つのステージにつき8回、つまり全4ステージで合計32回クリアしなくてはならないので非常に冗長。
-
とはいえ、例えばステージ2以降でパスワードを8つ全て取得し、ステージ最奥部の扉を開けることができさえすれば、たとえボス戦で敗れてゲームオーバーになってしまったとしても、前述のコンティニューコマンドを入力してゲーム再開すれば、パスワード取得実績は失われず残されたままなので、あとは(ステージ道中でザコ敵からの攻撃に注意しながら、ミスしないように進んでいかなければならない労苦はあるものの)そのままボス部屋に到達して再戦が可能ではある。そのため、ゲームオーバー後のペナルティはそこまで厳しくはない。
-
さらに嫌らしいことに、パスワードが取得出来ない「HELLステージ」と呼ばれるハズレ面につながるタマゴが存在する。
-
このHELLステージは破壊不能ブロックだけが所狭しと並べられ、おまけにボールの速度が異様に速いためミスしやすいが、上部の出口は最初から開いているため上手く行けば時間をあまり浪費せずに脱出できるのが救いか。
-
高橋名人の像
-
ステージ4に設置してあるが、この像に接触して攻撃ボタンをひたすら連射しないとタマゴが出現しない。
-
高橋名人の特技である「16連射」に擬えて16回連射すればいいのかと思いきや、実際にはそんな事はなく、像に密着してただひたすら何度も連射を行う必要がある上、連射のテンポを緩めたり止めたりすると、連射カウントが取り消され必ずタマゴが出現するとは限らない。そのため、無敵状態になるか、連射機能付きコントローラを使用してテンポ良く行う必要があり、難易度は非常に高い。
-
この付近では、ものみカラスが頻繁に飛んで来るのでやり辛い。
-
ラスボスを前にして、行き詰まったプレイヤーも多かった。
評価点
-
グラフィック、音楽、効果音は非常に良く、BGMには主題歌と同じ曲が使用されている。
-
キャラクターに原作の特徴を反映させた事や、タマゴをかっさらって行く敵を登場させるなど個性がある。
-
広告によると、原作アニメの雰囲気を出すためにスタッフ10人程でビデオを何回も観ながら作ったとのこと。
-
アクション部分の難易度はマイルドになり、ボスは程好く強化、巨大で迫力もある。
-
ブロック崩しも斬新なアイデアであり、作り込みは良い。
総評
グラフィックも音楽も演出も非常に良く、原作の音楽やキャラクターの特徴を上手く取り込んでおり良作になる可能性もあったのだが、ブロック崩しをゲーム進行の根幹に据えた事により、どういったゲームなのかをかえって見失い、大きく迷走してしまった。
シンプルかつオーソドックスなアクションゲームとして作られていれば大きく評価は違っていたであろう。それだけに惜しい作品となってしまった。
余談
-
あっさりしたエンディングの後には2周目が始まる。
-
敵の出現数が増え、ブロック崩し面のボールのスピードが少し速くなる等、難易度が上がっており、さらに全ステージ共に正解パスワードが変化している。
-
しかしながら、そこまでプレイする者などごく稀であるのは言うまでもない。
-
パッケージに描かれているワンナップ、ミドリ、ダルのほか、ピンクのブタや青い怪物は一切登場しない。
-
ピンクのブタの名は「ブタ王女」、青い怪物は「スターブレイン」。雑誌『コロコロコミック』87年4月号に載った記事では、当初はワンナップら3人がプレイヤーキャラとして活躍し、ドラゴン皇帝・スターブレイン・ブタ王女がステージ1~3のボスとして登場すると紹介されドット絵も完成していた。
-
ステージ構成もステージ1が「中華街(プレイヤー:ミドリ)」でステージ2が「お菓子の街(プレイヤー:ダル)」となっていた。
-
しかし実際のソフトでは、ステージ1にはボスがおらず、ドラゴン皇帝・キュラ大王・ダイキュラーがステージ2~4のボスとなっていた。
-
また当初の予定では最終面にならないと主役の高橋原人が登場しないことになっていた。このような高難度では肝心な高橋原人の活躍をろくすっぽ見られないままゲームオーバーを繰り返してばかりになったことだろう。
-
この事からかなりギリギリの段階でキャラの差し替えが行われた模様。
-
TVCMでは『高橋名人の冒険島2』と明言されていたが、後に全く違う内容の同名のソフト『高橋名人の冒険島II』が発売されることになる。
-
本作が作られる前にセガ販売/エレクトロニクスアプリケーション&エイコム開発の『ピタゴラスの謎』というアーケードゲームの移植が作られていた。
-
しかしそちらは発売中止になり、そのブロック崩し要素がこのゲームに流用されたと言われている。
-
早解きキャンペーンの実施。
-
本作の特徴であるパスワードをハガキに書いてハドソンへ送ることで先着者にプレゼントを発送、というキャンペーンを行っていた。
ちなみに景品は3面でスケルトン仕様のジョイカードMK-2、4面で次に発売する新作ソフト『ファザナドゥ』であった。
-
高橋名人曰く「アニメを作ったからゲームも作るという使命感に溢れたソフト」との事。
最終更新:2024年02月06日 10:40