ランペルール

【らんぺるーる】

ジャンル SLG
対応機種 PC-8801mkIISR以降、PC-9800VM/UV以降、
FM TOWNS、X1、X68000、MSX2、
ファミリーコンピュータ
発売・開発元 光栄
発売日 1991年5月23日
定価 【PC88】13,420円
【X68】10,780円
【MSX/FC】12,980円
判定 良作
コーエー歴史SLG作品


概要

フランス皇帝(L'EMPEREUR)ナポレオンをテーマに扱った、日本製ではあまり見ないSLG。
外交重視な作りの独特なゲーム性で、AIがなかなか手ごわく歯ごたえがある。


特徴とシステム

  • プレイヤーはナポレオンとなってヨーロッパ制覇を目指す。
    • シナリオは4つ。年代別に、イタリア方面司令官時代、最高司令官時代、第一執政時代、帝政時代となっており、実行できるコマンドが後者になるほど増えていく。
      • 地位が低い状態からだと、クリア条件を達成していく事で、だんだんと出世していく。
      • さらに他に隠しシナリオが1つある。いわゆる100日天下を再現したもので、光栄(現:コーエーテクモゲームス)のゲームの中でも屈指の難易度を誇る*1
  • ヨーロッパには都市が配置され、それぞれが道でつながっている。これらの都市を攻略していく事で、ヨーロッパ全土を制覇する。
    • 制海権という概念があり、海域に面している都市の軍艦の保有数が最も多い国が握ることができる。
      • ロンドンなど、海を越えなければ行けない都市もある。この場合、制海権を握るか制海権を握っている国と同盟を結ばない限り進出が困難。逆に港に隣接している海が敵国に制海権を握られていると、常に攻められる危険が生じる。
  • コマンドは二系統。
    • 司令官コマンド。毎月一回だけ実行でき、ナポレオンが駐留する都市や軍に命令を出せる。内政や直接の軍事行動はこのコマンドで行う。
      • 司令官時代、最高司令官時代ではこのコマンドしかできない。このため、大砲の配備などは政府陳情する事になる。ただし陳情すれば、必ず応えてくれるとは限らない。外交権もプレイヤーにないため、勝手に講和を結ばれたという事態も起こる。司令官、最高司令官では、身勝手な政府に悩まされる事も。
      • ちなみに最高司令官以上になると都市間を自由に行き来出来るようになる。*2
      • 第一執政では司令官時代同様ナポレオンの駐留する都市だけでしか命令を出せないが、皇帝になると親族のいる都市にも命令できるようになる。
    • 政府コマンド。三か月に二回コマンドを実行できる。外交や軍事、人事などの命令を出せる。
      • 第一執政、皇帝で実行できるコマンド。ようやく国を思う通りに動かせるようになる。
  • 戦闘はタクティクススタイル。
    • 兵科は歩兵、騎兵、砲兵の三種類。
      • 歩兵は足が遅いが、河に架橋ができたり、橋を爆破できたりなど汎用性が高い。さらに補充がしやすいのも利点。
      • 騎兵は機動力が高く、突撃の攻撃力も高い。ただし、馬の購入が事前に必要など、補充がやりにくい。
      • 砲兵は唯一、長射程の攻撃ができる。揃えるのに手間がかかるが、その威力は絶大。装備として大砲が必要で、訓練度が低いと狙いを外す事も多い。さらに機動力は全兵科中最低で、大砲の向きを変えるのにすら1ターンを消費してしまう事と相まって他部隊との連携が必要。これらの事から扱いは難しいが、部隊の中でも特に存在感が大きい。
    • 本作では攻撃されると、混乱という状態になる事がある。行動ができなくなり、戦闘時の被害も大きくなる。この混乱を起こしやすいのが大砲で、このため砲兵の使い方が、勝利への鍵となる。
    • マップ画面を一見しただけでは分からないが、高低差の概念も存在する。基本的に、高い位置に属するHEXにいる側の方が有利で、攻撃力・防御力に修正がかかる。ある一定以上の高さだと、大砲の射程が延びるという、決して無視できない要素もある。
  • 人物の能力値はA(最高)~D(最低)であらわされる。
    • 政治家、軍人は命令を実行すると経験値を得る。やがて一定以上経験値を溜めると、能力が上がっていく。
    • ナポレオンの駐屯都市以外は基本的にコンピューターが運営するのだが、その間に任命された司令官の経験値も増えていく。凡人がいつのまにか優秀な人物になっているという事もある。
    • さらに、マスクデータとして特定の人物には「性格」がつけられており、それによって様々な補正が入る。同じAクラス同士の将軍が闘っても、性格補正のために優劣がはっきりと分かれることも。
  • このゲームの大きな特徴の一つとして外交が挙げられる。
    • フランスに好意的ではない国も多く、相手国との関係をどう円滑にするか、敵をどう絞るかが大きな攻略ポイントとなっている。
    • 本作は、一風変わった外交の流れとなっている。各国には反仏感情というパラメーターがあり、非戦争状態ではこの数値がだんだん悪化していき、ある程度悪化すると宣戦布告されてしまう。
    • 開戦後にフランスが勝利を重ねるとさらに悪化…ではなく改善していくのである。やがてある程度下がると、講和できるようになる。関係悪化 ⇒ 開戦 ⇒ 休戦 ⇒ 関係悪化…というのが、本作の外交の基本的な流れとなっている。他の戦略タイプのSLGでは一旦開戦してしまうと、同盟などの状態に持っていくのはなかなか難しいが、本作ではこの点も特徴的*3
    • 「なんでそんな面倒くさいことをしなきゃいけないんだ?」と思う好戦的な方も多いと思うが、ちゃんとそうしなければならない理由がある。基本的に戦争時になると味方人物の忠誠は下がっていってしまう。
    • グズグズと戦いを続けていると配下の離反が続出し、ボロボロになるのは必定。敵国から持ちかけられた講和条約を蹴ると、さらに忠誠が激減してしまう
      • 「いつまでも戦争をやっているのが幸せなわけではない」という、従来とは一線を画する思想がゲームの仕様に反映されており、これもまた本作独自の味である。
  • イベントも豊富。疫病、ストなどがある。
    • 特に本作では都市データに大きな偏りが設定されており、「その地方でしか起こらないイベント」がかなり多い。首尾よく敵地を占領した後の統治も、一筋縄ではいかないのだ。
      • この中で特にいやらしいのが、ロシアのコサックにスペインのゲリラ。供給率が高いにもかかわらず都市、軍ともども疲弊させられ、回復に手間がかかる。いずれも焦土戦術まで使ってくるため、新しい都市を手に入れてもほとんど何も手に入らないこともザラ。
      • 後の信長の野望シリーズの『一向一揆』に三國志シリーズや項劉記の『異民族』に通じる要素と言える。
    • ナポレオンのライバルとして有名な、イギリスのネルソン提督もちゃんと登場する。
      • 海戦時に彼が出てくると、イギリス海軍の艦船数が1.5倍として計算されるらしく、勝つのは困難。
      • ランダムで戦死することがある。戦死時のセリフも用意されている。

評価点

  • 外交を重視した作り。
    • 外交を駆使し、敵を絞り込む戦略性の面白さ。
  • 各地方の特色が見事に出ていること。
    • 先述の都市データやイベント面でももちろんだが、ちゃんとそれぞれの地方に違うBGMが用意されており、各地の雰囲気をよく醸し出しているのもポイントが高い。
  • 大砲を使った、独特の戦術。
    • 長射程の砲兵の位置取りや他の兵科との連携など、当時の光栄のゲームにはない戦術が楽しめる。
      • ただ、先述の通り標的から一つ外れる場合もあり、標的に隣接している味方が被弾するケースも。
  • 手ごわいAI
    • 同時期の光栄のSLGに比べると、かなり賢い。例えば『信長の野望 武将風雲録』では、戦力を全ての武将に分散させているが、本作ではそんな事はない。戦力は有能な将軍に集中配備されている。
    • CPU側の戦力回復力が早い。モタモタしているとあっという間に敵が大戦力になっていたりする。よく最後の敵となるロシアなどは、残存都市がわずかにもかかわらず、どこからかき集めたのかとんでもない戦力になっている事も。
    • CPUが攻撃側もしくは防衛側援軍だと、こちらの裏をかくように大砲の死角を突いて接近してくる。その為、こちらが単体だと密着されると放棄せざるを得ない状況に。よって、防衛側は分散させてでも二部隊以上用意する必要あり。
  • 縛りプレイもなかなか楽しい。
    • 基本的に難易度が高いゲームではあるが、慣れて来るとさらに厳しい条件でのプレイができる。第一執政にならず、権限の乏しい最高司令官のまま欧州制覇を目指す事も。
      • 最高司令官にも最高司令官なりの良さがあり、外交や他都市の管轄が自由に出来ないものの、外交が苦手なプレイヤーに打ってつけのプレイスタイルと言えよう。

問題点

  • ひと月一回のコマンド。
    • 都市への命令は一月一回だけ。しかも皇帝以外では、ナポレオンがいる都市だけ。このため人や軍、物資の展開がスムーズにいかない。さらに内政に手をかけている余裕もあまりない。
      • もっともこれがプレイヤー側のハンデとなって、CPUとうまくバランスが取れている面もある。
  • 騎兵が使いづらい。
    • 馬の購入の手間、訓練度の上がりづらさなど、戦力の補充に支障が多い。確かに攻撃力や機動力は高いが、どちらかというとマイナス面が強い。
    • 砲兵で攻撃して混乱させ、そこに騎兵の突撃をぶち込む戦術は非常に強力なのだが、状況を作り出すまでが意外と難しい。
    • 突撃はターン開始時に標的に隣接していないと発動出来ない事も使いづらさに拍車をかけている。
  • 海戦がない。
    • 正しくは自動戦闘で処理される。自国の艦艇数と敵国の艦艇数を参照して勝敗を判定している模様。
    • ナポレオン時代には、トラファルガー沖海戦など有名な海戦もあり、できればプレイヤーが操作できる方式で海戦要素もあった方がよかったかも知れない。
  • 制海権が無いにもかかわらず援軍が上陸してくる。
    • 制海権をこちらが掌握しているにもかかわらず、港湾のある都市に遠征した際、援軍が制海権を無視して上陸してくる。
  • プレイヤーがナポレオンだけ。
    • 従来のシステムを踏襲していながらマルチプレイが出来ないのは問題だが、何よりの問題はプレイヤーを選べないところと言っていいだろう。
      • ナポレオンのライバルとなって、彼を下して彼を超えた時代の寵児になる等が出来たらより良作になり得たかもしれない。
  • 忠誠の上がり具合が人物によってかなり差があり、下がりやすい政治家、軍人は、どうやっても忠誠値を高く維持できない。
    • このため、一部の人物は能力が高くても、かなり使いづらい。特に第一執政以降のナポレオンを支えたタレーラン、フーシェが使いにくい*4のは、悩ましいところ。
  • 参謀的存在がいない。
    • 『三國志』『信長の野望』シリーズの軍師をはじめとするプレイヤーに様々な助言をする者がおらず、初心者にはどう立ち回るべきかがわからない事も少なくない。
      • とはいえ、本作は前述の通り内政より軍備、何より外交重視のスタイルである事を理解すれば各コマンドの取捨選択は難しくない。
  • 政治家、軍人の数が少ない。
    • 合わせて255人しかいない。同時期の『三國志II』では350人、『信長の野望 武将風雲録』では700人と、これらと比べても少ない。
      • ほぼヨーロッパを制覇すると、人材不足に悩まされる事もある。
    • また人数が少ないため、シェイエス、ジュールダン、クレベールといった、いて当然と思われる政治家、軍人がいない。
    • 能力設定に首をかしげる人物もいる。またスーシェの名前がスシェトになっているなどの間違いも見られる。
  • 難易度設定がない。
    • 前述の通り巧みな立ち回りをするAIや、頻発する特定地域の抵抗イベント等結構難易度が高い挙句、難易度設定もない。
      • 従来の光栄SLGにおける『初級』にすると抵抗イベントの発生率を100%から供給率参照並びに被害を小さく緩和し、戦闘では自分に近い相手部隊を手当たり次第攻撃する等だと初心者でもプレイしやすくなるのでは。

総評

当時の光栄のSLGのみならず、戦乱の時代を題材にした和製SLG全体の中でも、かなりの異色作。ヨーロッパという舞台、外交を重視した作り、長射程の大砲を主体とした戦術などは、他に類を見ない。さらにバランスもよく難易度も高めと、プレイし甲斐もある。

一方、コマンド回数が少なく戦略偏重になりやすい。また人物の少なさと海戦の未実装並びに何よりプレイヤーがナポレオンだけでマルチプレイ不可なのも残念な所。
もっともこれらは改善の余地があり、もしシリーズとして成立すれば、さらなる良作となった可能性はある。

しかし、残念ながら本作はシリーズ化しなかった。世界的に有名なナポレオンとはいえ、三国志チンギス・ハンなどと比べれば日本史と縁遠い歴史背景や、『ベルサイユのばら』を代表とする近い時代の著名作品が、むしろナポレオンを敵側に位置付ける世界観をまとっていたのも原因だろうか。
或いは、同じフランスの英雄である「悲劇のヒロイン」ジャンヌ・ダルク程に惹き付けられる地盤作りに後れを取ったのも一因かもしれない。

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最終更新:2023年06月24日 01:51

*1 ただし、FC移植版ではカットされてしまっている。

*2 但し、最高司令官ではクリア条件を満たさずにパリに移動すると門前払いを受ける

*3 これは史実を倣っている面がある。当時、戦争で最後まで徹底交戦という事はあまりなく、ある程度優劣が明らかになると、賠償、捕虜交換後、講和という事はよくあった。

*4 ただ、両者は史実でもナポレオンとの仲は悪い。最終的には失脚の企みの中心人物となったほどだったので、シミュレーションとしては正しいのだが…。