FARCRY 3

【ふぁーくらい すりー】

ジャンル ファースト・パーソン・アドベンチャー




対応機種 プレイステーション3
Xbox 360
プレイステーション4
Xbox One
Windows XP~8
メディア 【PS3】BD-ROM
【360/Win】DVD-ROM
発売元 ユービーアイソフト
開発元 ユービーアイソフト モントリオール・スタジオ
発売日 2013年3月7日
2018年6月26日(クラシックエディション)
定価 【PS3/360】7,770円
配信 【Win*1*2】Amazon: 2013年4月03日/2,400円
クラシックエディション(シングルプレイ専用)
【PS4】4,298円
【One】2,592円
プレイ人数 1~2人(オンライン:2人~14人)
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 なし
ポイント 大ボリュームのオープンワールドFPS
自然美と人の悪、幻想が混在するサバイバル
FARCRYシリーズ



狂気に満ちた無慈悲な楽園



概要

『FARCRY』シリーズのナンバリング第3作。南国の島を舞台にしたオープンワールド制FPS。プレイヤーは主人公のジェイソンとなり、海賊・バースの軍団に立ち向かう。
FPSではあるが、ファースト・パーソン・アドベンチャーというジャンル名やキャッチコピー「FPSであることは手段でしかない」の通り、銃による撃ち合いだけが目的ではない。
広大な島を自由に冒険が出来るうえ、武器やアイテム、金銭の入手、スキル習得によるプレイヤーの個性付けも自由度が高い。サブクエストやミニゲームも数多く用意されている。


ストーリー

アメリカ人青年ジェイソン・ブロディは兄弟や仲間達と共に、インド洋と太平洋の境目にある南国にバカンスに訪れた。ある日スカイダイビングを楽しんでいた彼らは誤って、残忍な海賊のバース一味が暴力で支配する孤島「ルークアイランド」に着陸してしまう。
海賊に捕まってしまったジェイソンは、優秀な予備役軍人である兄グラントの先導で牢を抜け出すが、他の仲間との合流は叶わず、グラントも追ってきたバースの銃弾に倒れてしまう。悲痛な叫びを上げるジェイソンに、バースはなぶり殺すための僅かな猶予を与え、「逃げてみろ」と嘲笑する。ジェイソンは銃弾の飛び交う夜のジャングルを逃げ惑い、やがて突然途切れた道から谷川へ転落し、意識を失う。
目覚めたジェイソンは、見知らぬ男の介抱を受けていた。男は治療だけでなく、ジェイソンの左腕に古風な文様のタトゥーを施していた。デニスと名乗った男は、タトゥーは島に伝わる戦士の証であり、ジェイソンに力を授けるだろうと言う。バース一味と対立する部族ラクヤットの一員であるデニスは、ジェイソンの手助けをする替わりに、戦士として力を貸して欲しいと請うのだった。軍も警察も存在しない絶海の孤島で、海賊から仲間を救い出すには、デニスと部族の助けを借りるしかない。戦士の証を腕に、ジェイソンの戦いが始まった。
徐々に明かされていく孤島の真実。そして過酷な戦闘とサバイバルの先にジェイソンを待ち受けるものは…?


特徴

  • オープンワールド+フリーローミング制
    • 自然に溢れ、人の集落や遺跡が点在する巨大な島の中を隅々まで探索できる。マップはシームレス。
    • メインクエストを達成することによりストーリーが進み、徐々に遠方まで足を運ぶことになるが、初めから移動範囲に制限はない。
  • 様々な兵器と一本のナイフによる戦闘
    • 銃器や弓矢といったカスタマイズも可能な飛び道具をメインに、手榴弾や火炎瓶、地雷やC4爆弾といった戦略武器も駆使して行う。また、最初に習得するスキル「テイクダウン」とその派生スキルが戦闘のもう一方の主役であり、格闘戦も大きな価値を持っている。
      • テイクダウンは、近距離にいてこちらを発見していない敵をナイフで奇襲し、一撃で仕留める暗殺術。無音攻撃であり、目撃されなければ他の敵には気付かれない。派生スキルを取得することで、敵の頭上や足元から襲い掛かったり、連続で仕留めたり、2人同時に仕留めたりといったことも可能になる。
      • 敵である海賊兵士はこちらを発見すると包囲攻撃や増援要請を行うため、いかに物陰などへ誘い込みテイクダウンで仕留めるかが戦闘の醍醐味の一つになっている。また、テイクダウンとその派生スキルで敵を倒すと、獲得経験値に大きな倍率がかかる。
  • 成長システムあり
    • RPGのようにクエスト達成や敵の討伐で経験値が得られる。経験値を消費してスキルを習得し、主人公を強化することが出来る。スキルシステムにはツリー制を採用しており、ミッション進行によって高度なスキルが解放される。「通過儀礼」として特定の条件を達成することが解放条件になっているスキルもある。
      • スキルを習得していくと主人公の左腕の入れ墨が増えていく。最初は一部分だったものが最終的には前腕部に及ぶ。
    • 主人公の耐久力はライフ制。ライフは数ブロックに分かれており、これもスキル取得でブロックが増加する。回復手段には採取した薬草から作る回復薬(市販もあり)やスキル「ファストエイド」がある。また、1ブロック未満のダメージは時間経過でも回復する。
      • 体力面のパラメータはライフのみ。ダッシュや水中でのクロールといった高速移動が可能だが、それらの持続を制限するスタミナの設定はない。ただし潜水時間にはさすがに限界があり、息継ぎせずに潜り続けていると溺死する。
  • 狩りと採集、クラフト要素あり
    • バックパックやホルスター等のアイテム所持に関連する装備品は、狩りで得られる動物の皮から作製する。回復薬を始めとした様々なシリンジも、植物から採取するリーフを調合して作り出すことになる。
    • 登場する動物は多種多様だが、ブタやヤギ、シカといった基本的には無害な動物と、狂犬、ヒョウ、トラ、クマ等の攻撃的な動物に大別できる。アイテムを作るためには危険な猛獣の皮が必要になることも多く、良質な装備品を求めて、対人戦闘とはまた異なるスリリングな戦いを繰り広げることになる。
      • 本作における肉食動物は、おおむねどれも俊敏で攻撃力が高く、並の海賊などより遥かに大きな脅威。大型の肉食動物は特に危険で、スピードと体格に物を言わせて組み付いてくることがあり、振りほどきに失敗すると喰い殺される。トラに追われて飛び込んだ川でワニに喰われるといった悲喜劇も起こりうる。
    • 採取した動物の皮やリーフは、要らなければ売却することも可能。これら以外に、死体や宝箱から発見できる売却専用アイテムも数多くある。
  • 探索範囲を徐々に広げる「電波塔修復」と「拠点解放」
    • 電波塔は島のあちこちに点在する施設。海賊に破壊された塔頂上の電気機器を修復することで、周囲のマップに詳細が表示される、クエストやアイテムがアンロックされるなど、様々な恩恵がある。同社の『ASSASSIN'S CREED』のシンクロシステムに似ている。
      • 電波塔は足場が破損していたりすることが多く、頂上までの道のりはなかなか険しい。頂上からは大抵ジップラインで一気に下りられる。
    • 島の各地には海賊の武装拠点があり、それらを解放してラクヤットの民の手に返す事も大きな比重を占めている。解放すると報酬が獲得できるほか、ラクヤットの兵が駐留し、周囲から敵が消えて安全地帯となる。
      • 解放条件は拠点の敵兵の全滅。最初は難度が低いが、次第に敵配置に死角が少なくなり、スナイパーや重装兵、番犬が配備されるなどシビアになってゆく。警報装置がある拠点では、敵に発見されると増援を呼ばれてしまうが、警報装置の設置数も徐々に増える。
      • 敵に気付かれないまま全滅させれば多量の経験値ボーナス、増援を呼ばれずに全滅させれば少量の経験値ボーナスが入る。テイクダウンや消音武器を駆使して密かに葬ってゆく潜入戦が経験値の点で有利ではあるが、たまには重火器や爆発物で大戦争を仕掛けてみるのも面白い。
    • 修復した電波塔と解放した拠点は、ファストトラベル先(後者のみ)や死亡時のリスタート地点になるため、スムーズなゲーム進行にはある程度これらを消化しておく必要がある。なお、電波塔や拠点を一切無視しても、ゲーム進行自体は可能。
  • 移動をサポートする多様な乗り物
    • 乗用車、バギー、4輪バイク、ボート、ジェットスキー、パラグライダー等で、島の陸海空を駆け巡れる。
    • 乗り物に所有者の設定などはなく、敵地であろうと置いてあるものは自由に利用できる。島の随所に惜しげもなく置かれており、大破させても乗り捨てても費用などのペナルティは発生せず、ロードするごとに新車状態で初期位置に戻る。
      • 使い捨てろと言わんばかりの仕様だが、実際オフロードだらけ*3の島なのにオフロードに弱い車などは、しょっちゅう岩に乗り上げたり水没したりして乗り捨てることになる。
        しかし、未舗装ながらも道になっている部分を一定以下のスピードで普通に走っていれば、滅多に立ち往生はしない(要するに現実と同じである)。
      • 銃座付きの乗り物は敵味方はよく乗り回しているが、道端に置かれている事はほとんど無く、彼らから拝借しない限り滅多に使えない。
      • 海賊の車を奪って乗り回していてもラクヤットから誤射されるという事はなく、逆に敵の車で敵地に乗り込んでも何故か即座にバレてしまう。
    • 起伏や入り組んだ地形の多い島内の移動手段としては身一つが最も柔軟なのだが、乗り物にもスピードや移動時の安全性、敵を轢けるといったメリットがある。
      • また、乗車中は絶対に動物から攻撃されなくなるため、猛獣狩りに持って行くと安全性が高まる。運転手が剥き出しになっている4輪バイクだろうと攻撃されない。4輪バイク以外の自動車であれば、車の屋根の上に登るだけで猛獣に対する安置となる。
    • スカベンジャという車のダッシュボードには日本語の片仮名で「ファークライ」と書かれているものがある。
  • マルチプレイに対応
    • 最大14人までの対戦モードのほか、最大4人のCO-OPがある。CO-OPではシングルプレイの外伝ストーリーが楽しめる。海賊に奴隷として売却されるところを危うく逃れた4人の男女の復讐戦を描く。また本編と違って完全な一本道システム+ステージ制。
    • 対戦・CO-OP共通の武器やスキルはプレイヤーLVを上げることによってアンロック。周囲の仲間をサポートするマルチプレイ専用スキル「バトルクライ」などを習得する。
    • プレイヤーだけでなく武器自体にもLVが設定されている。それぞれの武器で敵を倒すと経験値が入り、使い込むことで各種カスタムパーツがアンロックされ、一定レベルごとにアワード(勲章)も得られる。
    • メインウェポンにはカラーリングと性能を変化させるModというパーツがあり、ステージ終了後の報酬で得た暗号アイテムを「解析」することによりランダムで入手。解析には実時間で30分から最高8時間かかることもあるが、プレイヤーのログイン状況には関係なく進むので、他のことをやっていても構わない。また、フレンドと協力することで解析時間を短縮するアイテムや解析で得たMODの受け渡しも可能。
    • 2022年9月1日にサーバーが閉鎖され、オンラインサービスは終了した。

評価点

  • グラフィック
    • 南国の島の自然と風景が、昼夜や天候の変化を含めて美しく色彩的に描かれる。青く澄んだ海、風にざわめく草地や自由に動き回る生き物達、草生した寺院遺跡や旧日本軍の戦跡。海中へダイビングすれば魚群が泳ぎまわっている。各地の洞窟や火山口跡を探検することも可能。
    • さらに車やモーターボート、ハンググライダーといった乗り物の豊富さが加わり、手軽にトロピカルバカンス気分が味わえる。視界のよいバギーやジェットスキー、島の大地を見渡せるハンググライダーでのトリップは、目的なく移動するだけでも楽しい。
    • 反面、暴力で支配された地域には血と埃の入り混じる荒廃した光景が広がり、神秘的な島の儀式の光景や、麻薬中毒者であるバースに関連するシーンなど、幻想と狂気が入り混じる描写も。イベントを終えた幕間にはルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の一節が挿入されて雰囲気を盛り上げる。
    • 戦闘描写も迫力がある。物陰、頭上、水中などあらゆる場所からのテイクダウンによる奇襲は見どころの一つ。炎の描写も優れており、火炎瓶などで着火した炎が、建物や草原に次々と延焼していく様は見もの。
  • NPCの挙動
    • 人間のNPCや野生動物にもそれぞれの生活、生態があり、プレイヤーが関与せずともパトロールや狩りなどを行ってゲームに動きを与える。NPCは獣を狩り、肉食獣は人間や草食獣を狩り、時にはラクヤット、海賊、獣が入り乱れた乱戦が繰り広げられることも。
    • ラクヤットや島民はしばしば道端で車を故障させて助けを求めていることがある。装備品「リペアツール」があれば手助けしてやることも可能で、報酬として金も得られる。
      • 車を修理して助けても、運転席に座った1人が連れを置いたまま発車してしまうなんて事も。
      • 基地やガソリンスタンドのそばで故障した場合でも、困り果てて誰かが通るのを待っている。
    • 野生動物には、クラフト素材を取れるもの以外にも、極楽鳥やウミガメなど様々なものがいる。時には彼らをじっくり眺めてみるのもいい。
      • 普通にプレイしていてはまず出会えないような希少な生物もおり、「川魚」「珊瑚礁の魚」「ウツボ」などを発見しハンドブックに記録できたプレイヤーはどれほどいるだろうか。
      • とある方法を利用すれば、通常は殺せない「クラゲ」すらハンドブックに記録できる。
  • 親切なシステム
    • ファストトラベル機能が用意されており、制圧した拠点や訪れたことのある町には瞬時に移動が可能。
      • 探索中ならいつでも利用可能*4で、行き先も島全体に細かく配置されている。
      • 移動時間が苦でなく南国の風景を楽しみたいプレイヤーならば、敢えて利用せずに車などでのんびり向かうことだってできる。
    • 乗り物もあちこちに配置されており、移動にストレスを感じることはほぼない。特に車は、島に自生しているのかというほど随所に置いてある。
    • ゲーム中に発見したものや出会ったNPCが記録される発見物リスト搭載。人物や武器はおろか、乗り物、動植物も網羅。しかも全てに皮肉の効いた解説やコメント付き。
    • 電波塔解放と地図購入で、マップにはあらゆるアイテムのありかが表示される。コレクションコンプを楽しめるプレイヤーには親切な設計。表示が煩わしければ消すこともできる。
    • スキルツリーは最終的に全種の習得が可能となっており、選び方を失敗してしまっても取り戻せる。
    • 地図上の宝箱や収集物を目的地にセットした場合、そこまでの距離だけでなく高低差なども考慮してガイドしてくれる。
  • 戦闘の自由度の高さ
    • 銃器は近距離用から遠距離用まで一通り揃い、スナイパーライフルでの狙撃戦もロケットランチャーでの制圧戦も可能。もちろん弓矢やナイフでの潜入戦もできる。
    • 警報装置が設置された拠点の制圧では、装置の無効化と敵の排除をどういった手順で行うかという詰め将棋的な楽しみもある。火をかけたり猛獣を誘い込んだりして混乱させ、強引に潜入するような戦術も取れる。
    • 敵の基地には野生動物が侵入する場合があり、肉食動物であれば敵兵を数人倒してくれる事も。
      • 運が良ければ、プレイヤーが物陰から傍観している間に猛獣が基地内の敵兵を全滅させてくれる事も。この場合でもプレイヤーが通報も発見もされずに基地攻略に成功した扱いになり、経験値をたんまり頂ける。
  • マルチプレイ
    • 対戦マップのエディットシステムも実装されており、アップロードされたオリジナルのマップは他のプレイヤー達と遊ぶこともできる。細かく作り込むことができ、他のプレイヤーから高評価を受けたマップは人気になったりする。
    • マルチプレイの対戦では、勝った側のトッププレイヤーが敵側に戦後処理を課する演出があるが、非常に多くの種類があり(心なごむ和解から、解放すると見せかけて後ろから射殺するという極悪なものも)、なおかつ任意で選ぶことができる。
    • CO-OPは別ゲームと言って良いほどのボリューム(全6章+DLC2章)を備える。また全ての章で、プレイヤー同士が武器や運転の腕を競うミニゲームを実装。難易度も4段階から選択可能で、初心者から上級者まで楽しめる。
    • 武器LV、アワード(特定の条件を満たすことで得られる勲章)、ウェポンMOD集めなど長く遊べる要素も満載でやりこみ派のプレイヤーには嬉しい。

賛否両論点

  • ストーリー・演出
    • 狂気の海賊バース(パッケージのモヒカン男)に捕らわれた仲間の救出と、彼との対決を主軸に据えたリアルなサスペンス路線ではあるが、主人公が本来知りようもない人物の存在を幻覚作用のある薬酒によって知るなど、魔術的な要素、幻想的な要素もある。開幕から戦士のタトゥーで超自然要素が提示されているとは言え、ストーリー展開としてはやや強引でご都合主義とも取れる点があるため、評価が分かれている。
    • 重要な出来事が幻覚にまぎれて進行するシーンも多いため、結局何が起きたのか分かりづらいという意見もある。また、悪党や腹に一物ある人間に弱みを握られて働かされるという展開が多い。
    • そもそも大筋自体「おバカな若者が事件に巻き込まれて復讐しに行く」でしかないので面白みは薄い。主人公を「おバカ」と評したが実際不可解な行動がちらほらある。宿敵(?)となるバースとのイベントも「何も考えずに突っ込んで返り討ちにあうもとりあえず生き残る」の繰り返しでもどかしさが半端ない。
    • 主人公ジェイソンは、享楽的で無力な都会の青年から、戦闘や破壊に酔いしれる獰猛な戦士へと急速に変貌してゆく。その展開の早さも評価が分かれている。
      • プロローグでは海賊相手とはいえ殺人を躊躇していたジェイソンが、プロローグ終了後には何の戸惑いもなく殺傷行為を取れるようになっているなど。
    • 「過酷な事件に巻き込まれた未熟な若者が、周囲に利用され戦いに手を汚す中で、戸惑いながらも急激に変化してゆく物語」と理解はできるが、魔術要素や主人公の直情的な行動がストーリーを浅く感じさせる嫌いはある。
    • CERO:Z(18歳以上のみ対象)なだけあって過激な暴力やグロ描写、麻薬関連のネタや下ネタは多い。ただし、通常の戦闘での身体欠損描写はなく、敵を車で轢こうが火だるまにしようがC4で吹っ飛ばそうが死体は無傷。動物の皮剥ぎを行っても同様。主人公の仲間にまでヤク中(のボンボン)がいるような作中の世界に抵抗を覚えるプレイヤーもいる一方、配慮されたゴア表現は物足りないというプレイヤーもいる。
    • 人物の容姿はリアル。新人女優という設定である主人公の恋人リザや、スラム街の娼婦といった綺麗どころが期待されるNPCも、あくまで現実的な容姿をしている。島の住民は東南アジア系であり、年齢構成もリアルで、小太りのおじさん・おばさんもワラワラ登場する。
      • 島の戦士の長であり神秘的な力を持つ女性シトラは、例外的に気合いの入ったセクシー&ワイルドな容姿になっており、海外版ではトップレスの彼女と性行為をする描写もある(日本語版では規制されている)。
      • モブキャラの顔パターンは非常に少なく、ラクヤットの兵士・島民・商店のおばちゃんなどはそれぞれほぼ同じ顔の人々しか居ない。
    • ボス戦は基本的にQTE。いささかストーリーや演出重視の感がする。
    • カットシーンも含めて常に一人称視点であり、段差を越えるなどの動作に合わせてかなり大きい画面揺れが起きる。臨場感はあるが3D酔いを誘うレベルでもある。車両の操縦も慣れるまではやや癖がある。

問題点

  • コンテンツ
    • 電波塔修復と拠点制圧がメインコンテンツとも言え、どこまで進めても変わり映えしないと言えばしない。
      島は広大なのだが、どこへ行ってもいかにも南国という風景が広がるだけでほとんど変化がない。飽きる人は本当にすぐに飽きる。
    • サイドミッションの数は多いが、バリエーションには乏しい。ユニークミッションはたいてい近距離の簡単なお使い。
      依頼されたアイテムを集め終わった時点でクリアになる(依頼人に報告する手順がない)などの、投げっぱなしのようなミッションも多い。
    • そのほか各地で共通のミッションとして、指定NPCのナイフキル、指定武器でのユニーク動物狩り、指定時間内での荷物運搬があるが、これらも基本的にやることは同じ。
    • クラフトの材料は野生動物の皮だけで、ゲーム序盤から行動範囲の制限が無いため、狩りがスムーズに済めば最上級品以外は序盤でも簡単に揃えられてしまう。
    • クラフトのUIもどの素材が合計いくつ必要か一目で確認できないなど不便。
    • 注射薬のシリンジはライフ回復とそれ以外(動植物の識別や移動速度アップなど様々)の所持枠が共有だが、所持枠数が少ないため回復以外のシリンジを入れる余裕があまりない。
      回復以外のシリンジは10種類以上と豊富だが、この仕様のせいで存在意義が薄くなってしまっている。
      • また、シリンジは捨てることができず、所持枠が回復系で一杯だと他のシリンジを作ることができない。わざとダメージを受けて回復シリンジを消費する手間がかかる。
    • バックパックは同じアイテムが1枠にまとめて表示されない。回復薬の材料用にグリーンリーフを多めに持ったとしても、バックパック内がグリーンリーフ・グリーンリーフ・グリーンリーフ...と1枚ずつ表示される。ソートは行えるが、かなり大雑把な並びにしかならないので整理も大変。
    • コレクションアイテムも膨大*5にあるが、報酬は経験値が入る以外には島の裏情報やショートストーリーが判明する程度。
      「レリック」には裏情報もショートストーリーも無いが、一定数集めるごとに強力なシリンジレシピと武器がアンロックされる。全120個のうち40個収集ですべてアンロックされるため、残り80個は収集家向けと言える*6
      「届かなかった手紙」は太平洋戦争中に島に駐留していた旧日本軍兵士のもの。海外製ゲームを翻訳しただけなので仕方がないのだが、戦時中の日本人の手紙なのに思い切り現代文で書かれている。
  • 戦闘・武器
    • 人間相手の場合、経験値や安全性を考えると、テイクダウン・弓矢・スナイパーライフルといった「気付かれずに一撃で仕留められる手段」が突出して有利。一対多が基本のゲームであるため仕方ない点ではあるのだが、SMGやアサルトライフルで撃ちまくり倒しまくる機会は、本編ではあまりない。
      • UBI製のゲームではオープンワールドに限らず隠密行動に重点が置かれた調整が本当に多いので、撃ちまくって倒しまくる爽快感を求めるのはお門違いという意見もある。
    • 敵兵は仲間の死体を発見すると警戒を始めてこちらの潜入行動がやりづらくなるが、死体を移動させて隠す手段が「テイクダウンで倒して派生スキルで運ぶ」しかない。上記のテイクダウン有利を後押ししている。
      • 重装兵や番犬は死体を動かせないため、これらがいる基地は潜入行動での解放は困難。特に番犬は対処法が少なく非常に厄介。重装兵を倒せるテイクダウンを取得できるのはかなり後なので、完全に見つからなければいいと割り切るなら全く警戒させずに倒すのは諦めて(必要に応じて他の敵を始末してから)爆発物や火炎瓶を使って倒すのも手ではある。
    • 敵兵のAIは鋭さと間抜けさが同居しており、不自然な挙動も多い。
      • 遠距離からの狙撃で倒しかつ死んだ瞬間を見られたり銃弾や矢が敵兵の近くをかすめたり銃弾が着弾するのを聞かれたりすると、残った敵兵はこちらを発見してもいないのにプレイヤーがいた地点へ正確に押し寄せてくる。ここまでは他のゲームでもままあることだが、本作の場合発砲直後にいた地点から離れてもなんとその地点ではなく退避先を調べに来る。狙撃に関しては死ぬ瞬間を見られないように視線に気を配り、貫通する弾にも気をつければ回避できる話ではあるが*7、そもそも1回狙撃したり弾をかすめたりしたりしただけで来た方向でなく正確にいた場所を探すのはさすがに不自然すぎるだろう。
      • 塀越しに仲間の死体を発見したり、背中に目があるような理不尽な鋭さを発揮する場面も少なくない。
      • 間抜けな点は笑えるほど間抜け。石を投げて注意を引くことができるが、初回は必ず「石の落ちた場所」を確認しに行くため、敵の正面の草むらから石を投げても、石の出所ではなく落ちた先を探しに行く。視認についても独特で、こちらが何らかの物陰で屈んでさえいれば、視覚上は丸見えの位置であろうとも気付かないことが多い。敵兵が音で広範囲に警戒させる手段に乏しいのは前作と大して変わらず、ダメージを受けて死ななかったときに出す叫び声ぐらいである。
    • ハンドガンの使い道がほぼ無い。ジップライン使用中に撃てる唯一の武器ではあるが、ジップライン使用中に撃てないと困るような場面は滅多に無く、立場をSMGやアサルトライフルに喰われている。値段の安さと見た目の格好良さくらいしか利点が無い。
  • 野生動物・島民
    • 野生動物の習性などの再現性は今一つ。
      • 肉食動物が草食動物や島民を追い回して襲ったりはするが、仕留めた獲物にありつかず興味を失って立ち去ってしまう。草食動物も、猛獣に追われている最中に悠長に立ち止まったりする。
      • 草食動物や一部の穏和な肉食動物は野生動物らしく臆病で近づくと逃げ出すが、狂犬やヒョウのような猛獣は不自然なまでに好戦的で、こちらを見つけ次第積極的に襲ってくる。獰猛であろうと全ての動物は少なからず臆病さを持っているはずなのだが。
      • さらに猛獣は好戦的なだけでなく知能的で、主人公が追われている最中に高台によじ登って避難すると一目散に坂や階段まで回り込んで上ってくる。
      • 肉食動物しか生息していない(餌となる他の動物がいない)離れ小島があったりする。
      • 他にも、岩に向かって走り続ける狂犬、他の動物より動きがカクつきやすいオオメジロザメなど。
    • 動物をじっと観察していると突然消える。遠ざかったら消えてしまうのは仕方ないにしても、比較的近くにいる動物まで不自然に消滅する。
      • 海中にいるオオメジロザメが特に顕著で、しばらく泳ぎ続けたら消滅する→付近にリスポーンしてまた泳ぎ始めるの繰り返しと、何とも味気ない。
        また、夜中に山や丘の上から海を見下ろすと、テクスチャの関係なのか海中を泳ぐオオメジロザメが不自然に浮き出て丸見えになる。
    • ラクヤット、海賊、島民の普段の行動が不可解。道で出会ったラクヤットや島民に付いて行ってみると同じ道を延々と回っているだけだったり、無意味に行き止まりまで行っては引き返すなど。
      • 動物と同じく、少し離れただけで消えてしまう。通りかかった車に気まぐれに付いていこうとしても、別の車に乗り込んで追いかけた頃にはもう消えていることも。
        島には普通に生活を営んでいる人々もいるというこの描写のお陰で、独りきりの探索でも心細さを感じないが、もう少しリアルに作られていれば尚良かっただろう。
    • 自動車も消滅が早く、レリックなどを集めている際、車で近付けるところまで近付く→降りて徒歩で進む→目当ての物を拾って戻ってきたら車が消えている、なんて事もザラ。
    • ラクヤットの兵士達は少しでも仲間へ攻撃した者を即座に敵と見なして執拗に攻め立てる性質があり、故意でないちょっとした誤射でも裏切り者呼ばわりされて攻撃されてしまう。
      • 特に悲惨なのが、猛獣に襲われたラクヤットを助けようとした時。ラクヤットに噛み付く猛獣を撃ったつもりの銃弾が1発でもラクヤットに当たろうものなら、周囲のラクヤット全員から自分が蜂の巣にされる。周囲のラクヤットは仲間の救助より裏切り者への攻撃を優先するため、襲われたラクヤットは猛獣に殺され、運が悪ければその猛獣までこちらに襲い掛かって来る。
      • 島民が車でうっかりラクヤットを轢き殺した場合にも、島民に対する追討が始まる。仲間を殺されたラクヤット達は、逃げもせず怯えて命乞いする非武装の島民を容赦なく撃ち殺す。
  • バランス
    • プレイヤー有利のバランスである弊害で、後半になると金や経験値、狩猟素材の大半が余る。金余りは特に顕著で、主な投資先である武器は種類ごとに性能の幅が少なく、進めていくと勝手に入手できたり無料で販売されたりもするので、アタッチメント以外にはあまり金を使う必要がない。
    • 使い勝手の悪い、または活躍の機会が少ない死にスキルがある。獲得金銭が増えるスキルは、おまけのようにツリーの奥にあったりする。このスキルに手が届く頃には金の使い道は無くなっている。
  • マルチプレイ
    • ホストが抜けると残りメンバーの1人に移行、CO-OPでは直近のチェックポイントからやり直し、1人になった時点で解散になる。ホスト以外はステージを選べず、CO-OPはクイックマッチのみ。またホストになるかどうかはロビーの状況で自動で決まってしまう。
    • トロフィー・実績にはCO-OP各ステージクリアが条件の物がある。上記の理由で任意のステージ選択が困難のため、コレクションには根気がいる。
    • 経験値獲得はステージクリア時に行われるので、逆に言えばいくらゲーム内で活躍しようがクリアしない限り入手不可。
    • 本編とは逆に、よほど他プレイヤーとの連携がとれる状況でないかぎり、隠密戦より乱射と突撃による無双ゲーになりがち。本編との差別化は図られていると言えるが。
  • その他
    • 地図を開こうとしても地図画面が出るまでが遅い。ゲームシステム上頻繁に地図を開く事になるため、地味に痛い。
      また、地図には等高線などが入っていないため高低差が分からず、少々読みにくい。
    • フリーズなどのバグが多い。リリース後に改善はされたが、まだストアでの売買時のフリーズ等が残っている。マルチプレイでも進行不能や無限ロード、復活不能の突然死、ホスト移行時にフリーズなどがよく見られる。
    • 島のあちこちでプレイできるミニゲーム「ポーカー」のゲームバランスが悪い。なかなか決着が付かない。単なる小遣い稼ぎのつもりなら別に決着が付かなくても良いのだが、決着を付けて勝つ必要のあるミッションが存在し、それをクリアするのは非常に困難となっている。

総評

美しいグラフィックで隅々まで造りこまれた広大な環境、そこを舞台にした膨大なボリューム、ストレスの少ない親切なゲームデザインは評価すべき点である。
だが、できることのバリエーションの少なさから飽きが早い、作業感が強いといった点はマイナス。
それに加えて、マルチプレイの不備やフリーズバグなどの粗も存在する。

それでも全体には丁寧に作られており、漫然と探索を楽しむオープンワールドゲームとしても高いクオリティを持っている。
現在は廉価版やWin版が安く手に入るので、興味があるならばプレイしてみてはいかがだろうか。


余談

  • 本作は『FARCRY』シリーズの転換点、かつ以降の作品の基礎と言える作品となった。2022年1月現在リリース済みの『4』『Primal』『5』『New Dawn』『6』はいずれもオープンワールド作品であり、「スキルによる成長システム」「拠点解放」「サイドミッション」といった要素が続投している。
    • 陽気で間抜けな傭兵ハーク、強引でシニカルなFBI特別捜査官ウィリスなど、続編に顔を出すキャラも本作が初出。ハークはスタッフに愛されているらしく、スターシステム的に役どころを変えつつ、『6』を除く上記の続編全てに(原始時代を舞台とする『Primal』にも)出演している。
    • また、本作以降、ユービーアイソフトはオープンワールドのゲームが売れると判断したのか、徐々に他作のシリーズもオープンワールドのゲームになっていった。
  • 回復のモーションは、「傷だらけの腕に包帯を巻く」「腕に刺さった弾丸をこじって取る」「骨折して変な方向になった親指や手首をひねって戻す」というものである。最初は痛々しく見えるが、FPSで腕しか表示されない故に仕方無いとはいえ、「腕ばかり怪我するし骨折しすぎ」とツッコまずにはいられないだろう。
  • 暴力が支配する犯罪島でありながら自然バンザイの猛獣天国、同時に自動車大国とも呼べる大盤振る舞いの環境設計も、ツッコミつつ愛しうるデザインではないだろうか。
  • ルークアイランドは太平洋戦争中に日本軍の支配下にあったという設定があり、兵器や軍事施設、手紙といった痕跡が島の各所に残されている。
    • その中の一つとして日本軍と協力し「エデンのかけら」を研究していたアブスターゴ社の実験施設が登場しており、本作に限り『ASSASSIN'S CREED』の世界とリンクしている。

その後の展開

  • 2013年5月1日に本作のスピンオフ『FARCRY 3: Blood Dragon』がPS3/360/Winで発売された。核戦争で荒廃した架空の2007年が舞台で、1980年代映画のレトロフューチャーを意識したパロディ要素が満載されているのが特徴。
    • 英語版ウィキペディアによれば、2013年4月1日のエイプリルフールに動画とウェブサイトが発表されたため、当初は多くの人にエイプリルフールのジョークだと思われていたとのこと。
    • かつては日本未発売であり、Steam等で配信されているWin版にも日本語は収録されていなかったが、後にPS4/Oneで発売されたリマスター版で日本語版も発売されている。それに伴ってか、Win版もアップデートによって日本語対応になった。
  • 2018年3月にPS4/One/Winで発売された『FARCRY 5』のシーズンパスには、特典として本作をPS4/One向けにリマスターした『クラシックエディション』の早期アクセス権が含まれている。
    • 後の同年6月26日にはスタンドアロン版が配信開始、7月5日にPS4のパッケージ版も発売された。
    • これに伴い、現在はSteam版も日本語に正式対応している*8。Win版でシーズンパスを購入した場合は本作のDELUXE Editionが特典として付いてくる*9
      • なお、この『クラシックエディション』はシングルキャンペーンのみで、CO-OP・マルチプレイは非収録となっている。
+ 『クラシックエディション』の比較動画
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最終更新:2024年03月21日 21:05

*1 いずれもDRMとしてUBISOFT Connect(要・同アカウント)を使用。

*2 Steam版、UBISOFT Connect版とも2018年より日本語対応。

*3 舗装された道路は無い。中には獣道に近い道や洗い越しも。

*4 洞窟の奥からでも海の底からでも猛獣の眼前からでも利用可能。

*5 「レリック」「メモリーカード」「届かなかった手紙」の3種で総数140個もある。

*6 一応、スキル習得と合わせてレリックを全て集めることでタトゥーを完成させることができる。

*7 大半の銃の弾は人や壁を貫通するのは前作同様である。

*8 当初『クラシックエディション』日本語版はAmazon.co.jp専売だった。

*9 内容は本編+DLC4種とアートブック、サントラが付属したもの。