※本記事ではアーケード版『妖怪道中記』と各種移植版について扱う。



妖怪道中記

【ようかいどうちゅうき】

ジャンル 横スクロールアクション
対応機種 アーケード
配信 Wii バーチャルコンソール
Switch/PS4 アーケードアーカイブス
使用基板 システムI
発売元 ナムコ
開発元 ナムコ
ナウプロダクション
稼動開始日 1987年2月
配信開始日 Wii 2009年4月28日
Switch/PS4 2022年4月28日
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 可愛らしい見た目と裏腹の鬼畜難易度
どうやっても出てくる永パ防止キャラ
不殺生無欲を強要されるエンディング条件
理不尽な点の多さ

概要(AC版)

イタズラの罰を受けて地獄の入り口に連れてこられた少年たろすけを操作し、閻魔さまの裁きを受けるべく地獄巡りを行うアクションゲーム。

道中の様々な行動によりエンディングが分岐するマルチエンディングの採用や、画面の半分を占めるメーター類や、地獄巡りという独特の設定がもたらす絵巻風の雰囲気、おどろおどろしいながらもナムコらしいポップさも兼ね備えたキャラクターデザイン、前年発表した『イシターの復活』と同様にスコア排除がなされているなど意欲的な試みが盛り込まれた。

しかし、それらの斬新な要素の一方で、過剰なまでの高難度による万人向けとは言い難いゲームバランスが良くも悪くも話題となった。


ストーリー

稀代のいたずら少年たろすけ。いつも村の人に悪さばかりでおまけにスケベ。
見かねた神様の手で寝ている間に地獄の入り口へと運ばれ、なんと生きながらにして地獄巡りをすることに。
「妖怪念力を授けてやろう。その力を持って蠢く妖怪たちを倒し、自ら運命を切り開いて見せよ!」
神様の言葉を胸に閻魔様の裁きを受けるべく、たろすけは裁きの谷へと歩き出す。

はたして、その運命やいかに?


システム

  • ライフ制で、敵・敵弾・地形罠の接触でライフが減り0になった時点でゲームオーバー。
    • 万屋のアイテム「おまんじゅう」や神の池で神子からもらえる「復活のハート」を所持していた場合、ライフ0と同時に自動的に回復してミスを回避する。
  • 8方向レバー+2ボタン(気合弾、ジャンプ)で操作する。
  • レバーを下方向に入れると、気合弾を強化する「タメ」ができる。充分に溜めると貫通性能がつき、威力もグンと高くなる。
    • ただし、溜めすぎるとたろすけが息切れして硬直してしまう。
      • 溜めている最中は動けないものの、溜めを維持したまま左右に動くことは可能(溜めた状態で左下、または右下を入力する)。
  • 全5ステージの道中を進んでゆく。基本的には左から右にスクロールして進んでいくが、右から左にスクロールする箇所もあり、縦に上り下りする場所もある。
  • 地獄の沙汰も銭しだいということで「お金」の概念が存在する。
    • 敵を倒すと落とす銭袋や配置されている千両箱からお金を入手でき、道中で開いている万屋で買い物をしてパワーアップできる。
      以下はそのアイテム群。()内は値段。
+ ‘’アイテム一覧
妖怪汁(5000)
地獄丼(8000)
それぞれ体力が4、6ポイント回復する。本作はステージをクリアしても体力が回復しないため
これらのアイテムが命綱となる。
道中まんじゅう(10000) 体力が0になった瞬間に自動消費され、8ポイント回復する。
二連射(10000) それぞれ、気合弾を連射できるようになる。四連射はあまりにも高いため、
1コインクリアを目指すなら事実上買えない。
三連射(30000)
四連射(50000)
カール類須(2000) たろすけのスピードとジャンプ距離がアップする。
かっぱの水カキ(5000) 水中での移動がスピードアップする。
天女のフン(10000) ナゾの薬。普段は買っても効果がない。
お助け猫トラジ(5000) たろすけについてきて、体当たりで攻撃を補助してくれる、いわゆるオプションキャラクター。
ただし脚が遅く、ある程度の距離を置いてしまうとついてきてくれなくなってしまう。
迷犬ゴンタ(8000)

ここに挙げたもの以外でも、旅の途中でアイテムを手に入れることがある。

  • 1面と2面のボス戦に限り、ご先祖様である「もんもたろー」を呼び出して戦うことになる。
    • もんもたろーは幽霊なので、この時に限りレバー上下で宙に浮き沈みができる。攻撃は連射が効き敵をホーミングする念仏弾に変化する。気合弾と違い、溜めて威力を増すことはできない。
    • もんもたろーがダメージを受けると通常通りライフが減少していき0になると同時に消滅、そのままたろすけが倒れてゲームオーバーとなる。
  • マルチエンディング制を導入しており、最終ステージのプレイ条件により、エンディングが分岐する。
    • ランク最下位から順に「地獄界」「餓鬼界」「畜生界」「人間界」、そして最上位の「天界」の5つ。

評価点

  • ナムコの最新基板「システムI」のお披露目として選ばれたタイトルだけあり、グラフィックは素晴らしい。1987年のゲームながら、決して今と比べても見劣りしない。
    • 主人公のたろすけは実に多彩な表情・アクションを見せる。中でもニヤニヤと笑うスケベ顔は大変印象深く、それでいて憎めない。
      • 敵にぶつかれば「いてっ!」、ご先祖様を祭壇で呼び出す時は「たすけて~!」と、当時のゲームとしてはボイスも豊富。
      • ちなみに彼のモデルは、当時ナムコに所属していた開発者の一人らしい。
    • 攻撃を援護してくれるオプションキャラは犬と猫。彼らもぬかりなく描き込まれている。
    • 恐ろしさ、グロさを兼ね備えながら、どこか愛嬌も見せる敵キャラ達。ドロドロとした内容を扱っておきながら、生理的嫌悪感をあまり感じさせないデザインセンスは見事。
    • アクションも非常に滑らかで、キャラの多さにもかかわらずヌルヌルイキイキと画面を動き回る。「動かすことが楽しい」と感じさせるだけのポテンシャルは充分に持っていた。
  • サウンドも良く、耳に残る曲が実に多い。
    • テクノポップなノリの良さながら、どこか和風を感じさせるSEの打ち方で、実に不思議な中毒性を備えた楽曲群となっている。特に1面道中から流れるメインテーマは、本作を代表する良曲である。
  • 道中のミニイベントも見事に世界観とマッチしている。ガマ親分とのインチキサイコロによるいかさま賭博、竜宮城イベントの後に託される玉手箱などなど。

問題点

評価点で上げたように良い点もあるのだが、それらの評価点を帳消しにしてしまうほどプレイヤーにとって理不尽な点が多い。 その結果、難易度が尋常でないほどまでに高まっていることが最大の問題点となっている。

  • 特に大きく問題視されたのが、永久パターン防止キャラである「地獄火」絡み。
    • 「地獄火」が出現し始める条件は「スタートから10分以上が経過したか否か」と、たったこれだけ。そして本作はどんなに急いでも10分以内には絶対にクリアできない*1。つまり、普通にプレイしているだけで出てきてしまうのである。
      しかも触れた瞬間、どれだけライフが残っていても一撃死*2それでいて時間経過でスピードが速くなり、更に数が増える。一応撃破はできるが地獄火自体の耐久力も高く、スピードアップされるとまず迎撃は不可能なのだからたまったものではない。
      • 唯一の弱点として、縦スクロールで画面外に追いやれば消すことはできる。しかし一時しのぎである上、縦スクロールできる箇所が思ったよりも少ないため、下手な場所で地獄火を出すと詰んでしまう。*3その上、撃破や縦スクロールで消してもすぐに再出現する。
      • この仕様のせいで、イベントの消化やアイテムをそろえるのに必須の「金稼ぎ」を満足に行えず、少しでもまとまった額の金を効率よく取るために多大な苦労を要求され、精神的に逼迫する。
  • 初見殺しのイベントが多い。
    • 例えば、2面の苦行の道のボスである「青鬼」。「持ち物全部を俺に渡せ!渡せば通してやるぞ!」と言ってくるのだが、渡しても通してくれず、結局は戦うことになる。倒せても、お金を含めた持ち物は全て没収されたまま返ってこない。
    • 3面の「幽界」では竜宮城に招待されることでクリアになるのだが、そのためにはいじめられているカメを助けてやらなければならない。
      助けるためには3万もの金を要求される。余程稼いでいなければまず払える金額ではない。
      首尾よく払って竜宮城へ行った後、お土産の玉手箱を渡されるのだが…これもとんだ罠。
      亀は三回「開けた方がいいですよ」と誘ってくるが、素直に開けた場合、運がよければ「金一万」が手に入る一方、 運が悪いとたろすけが老化してジジイになってしまう
      • ジジイになった場合、スピードが大幅に鈍化、気合弾による攻撃が一切不可能、時間経過で体力が徐々に減っていくという大ハンデを背負う。
        よろず屋で10000両する「天女のフン」を買えば元に戻ることは一応できるのだが、次のステージの開幕には抱き付いてこちらの所持金を奪ってくる「抱き付き鬼」が2匹配置されており、どうあがいても金を盗まれることは避けられない。
        よってここに来るまでに気合を入れて稼ぎまくっておかないと天女のフンはまず買えない。つまり、ゲームオーバー確定である
      • ちなみに、ジジイになる確率は何度目で「はい」を選んだかによって決まる。一度目は80%、二度目は50%、三度目は20%の確率でジジイ化する。
        なお、後のコンシューマー移植版とは違い、AC版では何度目で開けようと金一万しかもらえないのは変わらない。
  • 当初はバグ技を使わないと時間が足りず、1コインクリアが不可能とまで言われていた。
    • 「裁きの谷」ステージでは本来、三種の神器を集めて三途の番人である脱衣おばばに通してもらう場所があるのだが、それを無理矢理超えてしまうことができる。
      • おばばの身体はでかいのだが、画面全部を覆い尽くすほどではなく上のほうに当たり判定の隙間がある。ここを「顔首つき」という敵を利用し、空高く舞い上がることで通過してしまうことができる。
      • これは「おたやん渡り」*4と呼ばれた。
    • 後に「三種の神器」を集めてクリアすることのできるパターンが開発されるまでは、この定説は覆えされなかった。
      • 雑誌「ゲーメスト」のハイスコア申請で、「妖怪道中記1コインクリア」を申請した人が「おたやん渡り」を知らなかったことを理由に、嘘つきと見なされ申請を撤回させられたこともあったらしい。
  • 厳しい道中を経て最後に待ち受ける、あまりにも厳しいベストエンディングの条件
    • このゲームはマルチエンディングとなっており、最後の「輪廻界」にてたろすけがとった行いにより、内容が変化する。
      • 最上級のエンディングである「天界」は、一切の金を取らない&敵を一匹も殺さないようにしないと到達できない。ちなみに天界だけ、他のEDとは曲が違う。
      • この「輪廻界」、実にお金と敵の配置がいやらしくなっており、普通にジャンプしただけでは金に触れて取ってしまう局面が多い。取りたくなくても、ダメージを受けて後ずさった拍子にとってしまうなんてことも多々ある。
      • 腕利きのゲーマーの最終目標は「1コイン天界クリア」となるが、その道はあまりにも険しく、挫折してしまった人も多い。
  • たろすけは当たり判定が大きく、基本的にジャンプ力が低いため敵の体当たりを避けにくい。そのためダメージを貰うことが前提のゲームとなっている。
    • ただでさえ敵の出現数が多い上に出現パターンにある程度のランダム要素が加えられているため、安定パターンを練り上げるのが難しい。
      こうした点もあって、長年「理論値は2ダメ」と言われていたが、2016年に初のノーダメージ天界クリア動画が公開されている。アップロード主曰く「クリアまでに150回以上を要した」とコメントしている。

総評

独特なホラー世界を表現する美麗なグラフィックや個性的なキャラクター、そして音楽と、名作となりうるポテンシャルは十二分に備えていた。
しかし、アーケードゲームとして見ても理不尽に過ぎる数々の意地悪な仕様をちりばめた、まさに地獄の如き難易度の高さのせいで作品の魅力を半減させてしまった。
後にPCEやFCなど様々な機種に難易度を下げて移植されたが、AC版の時点でもっと気軽に楽しめる調整を行って欲しかった。
そう思わざるを得ない、とても惜しい作品であった。


配信

  • バーチャルコンソールアーケード版(現在はサービス終了に付きDL不可)
    • 2009年4月28日から配信。価格は823円(Wiiポイント)
    • 長らくコンシューマーにおける唯一のAC版の完全移植だった。
  • アーケードアーカイブス版
    • 2022年4月28日からNintendo Switch/プレイステーション4向けに配信。
    • AC版の完全移植。日本版NEWバージョンと海外版の『SHADOW LAND』を収録。
      • 2面で裸で水浴びをしている神子が水着を着用するようになっている等一部グラフィックに変更がある。
      • 今の時代に合わせ、こだわり設定で''「地獄火」の出現のON/OFF設定ができるようになった。これにより難易度が緩和され、じっくり探索しながらのゲーム進行が可能となった。
      • なお、オンラインランキングは原則「到達ラウンド数*5」で集計。
        「キャラバンモード」では一部アイテム所持の状態で「裁きの谷」から開始。到達ラウンド数/エンディングに加えてオールクリアできた場合はクリアタイムも記録される。*6

余談(AC版)

  • これだけ難しいゲームにもかかわらず、実はさらに難易度を上昇させたバージョンがロケテストされていたことがある
    • 興味を惹かれたマニアはいたらしいのだが、「あれを世に出してはいけない。みんな、プレイしちゃいけないよ」と身内に触れ回っていたという。そのためか、お蔵入りとなった。
      • 是非はあるものの、腕の立つマニアにそこまで言わせてしまったというところに、本作の罪な部分が垣間見える。
  • AC版のベストエンディングである天界エンドの内容についてだが、たろすけ本人は天界の泉で美人で裸の天女に囲まれて大喜びしているが、見方を変えれば成仏できたとはいえ、子供の内に無理やり人生を終わらせられてしまったとも言える。人間界EDで登場する両親と思しき残された人たちのことなどを考えると、「本当に良い終わり方なのだろうか?」と考えさせられる、毒を含んだ内容になっている。
    • AC版の人間界EDは葬式中に息を吹き返すという穏当なものだが、FC版では火葬開始直後に息を吹き返し焼却炉から飛び出してかろうじて助かるというちょっぴり過激なものになっている。PCE版の人間界エンドはAC版ともFC版とも異なり「ビル街の外で大量に増殖したチビたろすけにまとわりつかれて呆然と立ち尽くすたろすけ」という、バッドなのかグッドなのか、そもそもどういう意味合いなのかがいまいちよくわからない内容になっている。
    • その他のものは「釜茹でにされた挙句力尽きて釜の底に沈む(地獄界)」「餓鬼の群れと食料を奪い合うもつまはじきにされて泣く(餓鬼界)」「養豚場と思しき場所で豚にされる(畜生界)」など、地獄らしく悲惨極まりないものばかりである。
    • FC版のベストエンディングであるげえむ界エンドは、当時のナムコの名キャラクター達に迎えられ、たろすけがその仲間入りを果たすというもの。その中には、後に『NAMCOxCAPCOM』でコンビを組む事になる平景清の姿もある。
  • 本作の直接の続編は出ていないが、後に同じくアーケードで『プロ野球ワールドスタジアム』のキャラを本作のたろすけに変えたような野球ゲーム『球界道中記』がリリースされている。
    • NPBの実在12球団+αという構成が基本の野球ゲームとしては異例の36球団から選べるチームが特徴。
    • かつて放送されていたテレビ番組「プロ野球 珍プレー好プレー大賞」で使われていた耳に残る曲は『球界道中記』で使われたBGMである。
      • 作曲は本作と同じく川田宏行氏。作品自体はマイナーだが、氏にとってはこの『妖怪道中記』や『ワルキューレの伝説』と並ぶ代表作と言えるかもしれない。
  • たろすけは1987年末に発売された『プロ野球ファミリースタジアム'87年度版』以降シリーズの「ナムコスターズ」に名を連ねている。
    • 「にやむこ」とともに打力はチーム内で「ぱつく」に次ぐレベルのものを持っているが、元々ナムコスターズ自身、貧打著しいチームなので他球団からすれば下位打線級のものでしかなく*7、足は速くないので少々使い勝手は悪い。
    • プロ野球ファミリースタジアム'88年度版』以降は「ぱつく」に次ぐ打力はそのまま、足もそこそこ速くなったので使い勝手がグンと向上した。
  • 本作のテクノポップ調のBGMは、当時からミュージシャン・坂本龍一のテクノ曲からの影響を指摘されている。
    • 特にメインテーマの曲調や節回しは氏の代表曲「千のナイフ」の影響が大きいとされ、有名な日本のインストバンド「サケロック」が、本作のメインテーマと「千のナイフ」を組み合わせてアレンジした「千のナイフと妖怪道中記」を2008年度のアルバム「ホニャララ」に収録している。
  • 本作を題材にしたゲームブック*8と、コミカライズ版*9が出版された。


妖怪道中記(移植版)

【ようかいどうちゅうき】

ジャンル 横スクロールアクション
対応機種 PCエンジン
ファミリーコンピュータ
配信 Wii/WiiU バーチャルコンソール
発売元 ナムコ
開発元 ナムコ
ナウプロダクション
発売日 PCE 1988年2月5日
FC 1988年6月24日
配信開始日 Wii PCE 2007年2月20日
WiiU FC 2015年2月25日
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 【PCE】易化方向へバランス調整だが難易度はAC版も上回る
【FC】追加要素多々ながらAC版に最も近い移植

概要(移植)

ゲーム自体の人気ゆえに、PCエンジンとファミリーコンピュータに移植された。ダウンスペック機への移植ということで、両者とも多くの変更点が施されている。


変更点(移植)

PCエンジン版

  • エンディングの数と内容はAC版と同一だが、1枚絵は全て差し替えられておりキャプションが削除されている。また、竜宮城での乙姫様の舞がなぜかストリップ劇場を思わせるかのようなアダルトな演出に差し替えられており、BGMも演出に合わせたアレンジが施されている。
    • ちなみにこのBGMのアレンジは原曲の作曲者でもある、川田宏行氏自らが手掛けている。
  • タイトル画面でコマンドを入れるとインフォメーションボードというモードに移動し、そこで英数字記号で特定の文字列を入れるとそれに応じたメッセージが表示されるという裏技的要素がある。
    • メッセージの中にはリセットした後に特定のステージから始まるコンティニューの代わりのステージセレクトと言えるものや無敵*10なども用意されている。
  • よろずやで売られている「カール類須」は、1987年8月の陸上世界選手権100m走においてそれまで陸上界のスーパースターとして名高いカール・ルイス(アメリカ)を破ると同時にそれまでの世界記録を0.1秒も破る驚異の9秒83の世界新記録を立てて一躍「時の人」となったカナダのベン・ジョンソンにちなんで「べんじょんそん」に変更されている。
  • 妖火霊のグラフィックが地獄火と同じものに変更されていて、撃ってくる炎の数が増えているがそこまで強くなってはいない。

ファミコン版

  • グラフィックは当然劣るが、マップ構成自体はAC版に最も近い。
  • 独自要素として、たろすけの善の心を表す数値「パイアス」(pious。「敬虔」や「信心」といった意味)が導入されており、コンティニューや道中での数々の行いにより変動する。この値によりエンディング条件が変動するようになっている。
    • これに合わせ、すずめのお宿やよろずギャルなどファミコン版独自のキャラクターやイベントも多く追加されている*11
  • アーケード版には存在しなかった敵キャラが新規に追加されている。
  • 1枚絵が差し替えられている以外はエンディングの内容はAC版と同じだが、新たなベストエンドとして「げえむ界」が用意され、天界エンドは二番目となっている*12
  • AC版同様、永パ防止キャラの地獄火は登場するが、出現頻度はかなり抑えられており、長時間、一画面に留まっていない限りは滅多に出てこないようになっている。
  • たろすけのご先祖であるお助けキャラ「もんもたろー」の仕様変更
    • 特定ボス戦で強制的に操作が交代するようになっていたが、本作では任意交代となり、よろず屋で購入可能な消費アイテム『おふだ』で好きな場所で呼び出し一定時間操作できる。受けたダメージ等の仕様に関してはAC版と同等。

評価点(移植)

ファミコン版

  • 地獄火の出現頻度はAC版よりも苛烈でなくなったため、AC版よりも余裕のあるプレイイングが可能となり難易度が若干下がった。

PCエンジン版

  • 難易度の緩和。
    • ほとんどの面でマップが短縮され一本道に近くなった上に縦スクロールもほぼなくなる*13など、道に迷うことがほぼなくなっている。幽海はスタートからまっすぐ進むだけで鬼ヶ島に着く*14ようになっている&大鬼の所から下に降りればゴール付近に出てくるし、輪回界ですらミスって下に落ちなければ短い一本道でサクッとゴールできる。
    • 唯一裁きの谷だけはループがあり迷う可能性もあるが、ループしているマップは1つ1つが非常に狭く総当たりがしやすくなっている。
    • 敵の数と配置も変更され、戦いやすくなった。

問題点(移植)

PCエンジン版

  • コンティニュー制が存在しないため、ミスした場合はステージ1から問答無用でやり直しさせられるハメになる。また、敵の配置変更によって却って切り抜けるのが厳しくなった部分が多く、結果的にAC版よりも難しいと言われている。
    • 特にPCE版オリジナルの追加要素であるにょらい(自称)が極悪。くだらない質問攻めでたろすけを釘付けにしてしまい、いつまでたっても先に進めなくしてしまう。存在自体は2面ボスの青鬼に金2万を払うことで教えてもらえるものの、肝心の抜け方についてはノーヒントである。

ファミコン版

  • マップ構成はアーケード版に近く、家庭用独自の追加要素も独自の面白さとして機能してはいるが、変更点、追加要素の多さのため、純粋な移植とはいえなくなっている。

総評(移植版)

移植はそれぞれで一長一短であるものの、いずれにせよアーケード版の高難易度ぶりは据え置きであり、PCE版移植に至ってはアーケード版以上の難易度を誇る。

移植として見れば良移植と扱える部類であるため、是非とも高難易度を家庭用で堪能したい腕の立つプレイヤーは、是非ともその手応えを存分に感じていただきたいところ。

配信(移植版)

  • PCE版
    • 2007年2月20日から、Wiiのバーチャルコンソールで617円(Wiiポイント)で配信された(現在はサービス終了につきDL不可)。
  • ファミコン版
    • 2015年2月25日から、WiiUのバーチャルコンソールで514円で配信。
    • 2020年6月18日、Nintendo Switchのオムニバスソフト『ナムコットコレクション』のDLC第1弾ソフトの中の1本として配信。こちらの価格は300円(税抜)。パッケージ版は初期状態で収録済。

余談(移植版)

  • 上述のベン・ジョンソンは1988年9月に開催されたソウルオリンピックで上記世界記録を更に上回る9秒79を叩き出すも直後にドーピングが発覚して大バッシングを受け、それまでとは一転ヒールなスプリンターとなった。1989年には上記の9秒83を含め彼の出した9秒台の記録はすべてドーピングによるものと認めたため、それらの記録は取り消された*15
    • しかし、1999年に同じ9秒79をモーリス・グリーン(アメリカ)が正式に打ち立てるまでは長きにわたり「最速の男(ルール抜きになんでもアリなら)」というイメージは消えなかったこともあり*16、ゲームにせよ漫画やアニメにせよ、その後の作品でもスピードの象徴としてジョンソンのパロディが用いられた例は多い(もちろんドーピングのイメージでも使われた)。ある意味本作はそんなジョンソンパロディの元祖といえるだろう。ドーピング抜きに純粋な最速男イメージでのネタ起用は唯一と言ってもいい。
  • PCエンジン版では最後に如来のくだらない質問攻めがあるのは上記の通りだが、その質問の中で、いぬむごという謎の言葉が出てくる。
    • 「よのなかは、いぬむご だと思うか?」「肩こりには、いぬむご しかないと思うか?」など全く意味が分からず、検索しても全くヒットせず謎は深まるばかりである。
  • PCエンジン版のインフォメーションボードで入力できるパスワードのうち、3つが長らく未解明のままとなっていた。
    • しかし2022年、当時のプログラマーの協力を得て有志で解析プログラムを走らせ、残り3つのパスワードを解明することに成功する。

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最終更新:2024年02月22日 09:14

*1 パターン的には12~13分前後でクリアするのが理想と言われている。

*2 「復活のハート」やおまんじゅうを持っていればその分だけは凌げるが、ほんの気休めにしかならない。

*3 本作は基本横スクロールであり、縦スクロールできる場所は本当に少ない。横スクロールではどれだけ逃げても執拗に追ってくる。

*4 当時、ゲーメストの名物ライターである「おたやん」と顔首つきの顔が似ていたことからそう名づけられたらしい。

*5 オールクリアの場合は上位のエンディングほどランキングで上位となる。なお、「ハイスコアモード」では三種の神器の有無も記録される。

*6 集計上は到達エンディングが優先される。

*7 4番の「ぱつく」でさえギリギリ3割20本と中距離ヒッター程度の力しかない。

*8 『ビデオゲームアドベンチャーブック 妖怪道中記 たろすけの大冒険』木越郁子原案、とみさわ昭仁著。1989年7月20日発行。ヨルカ・ヘッドルーム出版事業部発行、電波新聞社発売

*9 とみさわ昭仁原作、細貝明男作画。1989年10月20日発行

*10 厳密に言うとダメージは受けるが体力が0になった瞬間フル回復して死ななくなると言った物。

*11 パイアスはコンティニューすると大きく減る。4面までは取り戻す手段もあるが最終面ではパイアスを増やす手段がないのでコンティニューするとそれだけでエンディングランクが落ちる。

*12 パイアスを所定量保った上で、コンティニュークリアで天界、ノーコンティニュークリアでげえむ界となる。このためFC版では一度死なないと天界エンドを見られない。

*13 代わりに画面の切り替えで対応している。

*14 行き止まりが鬼ヶ島になっている形。

*15 後に復帰が認められたもののバルセロナオリンピック(1992年7月)で再びドーピングを行ったため今度こそ永久追放は免れなかった。ただしジョンソンはロサンゼルスオリンピック(1984年6月)において10秒22で銅メダルを獲得しており、それはドーピングによるものではないため現在もメダリストとしては認定されている。

*16 ジョンソンの9秒79・9秒83の記録が取り消されてからは同大会で金メダルに繰り上がったカール・ルイスの記録9秒92が新しい世界記録に認定され、以後リロイ・バレル(アメリカ)とルイスが交互に新記録を奪い合い、グリーンの前のドノバン・ベイリー(カナダ)でさえ9秒84(1996年のアトランタオリンピック)とジョンソンの記録9秒79は元より9秒83にも及ばなかった。また、カール・ルイスはソウルオリンピック以前の全米陸上大会(1988年6月)で追い風5mの参考記録ながら9秒78を出しているが、これはあまり知られていない。