ドラゴンボール 大魔王復活

【どらごんぼーる だいまおうふっかつ】

ジャンル アドベンチャーRPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2MbitROMカートリッジ
発売元 バンダイ
開発元 トーセ (プログラム、サウンド)
D&D (デザイン等)
発売日 1988年8月12日
定価 5,800円
判定 なし
ポイント 初期DBゲーの方向性を定めた即死ADV
初手から詰みゲー
FCドラゴンボールゲーの根幹「カードバトル」開眼
ドラゴンボールゲームリンク


概要

  • 超有名人気漫画『ドラゴンボール』のゲーム化第2作目。アクションゲームだった前作『ドラゴンボール 神龍の謎』とは違い、コマンドを選択して探索を行うアドベンチャーパートと、手持ちのカードを使用して敵と戦い経験値を得るRPGパートで構成されている。
  • シナリオはピッコロ大魔王編をベースに本作独自のアレンジを加えた半オリジナル。復活したピッコロ大魔王の手先に修行仲間のクリリンを殺された悟空が、打倒大魔王を目的に旅に出るというストーリーである。

システム

  • プレイヤーは手札としてカードを5枚持っていて、全体マップにおける移動や敵との戦闘で使用する。
    • カードに記載されている情報は以下の3種類。
      • 星:見た目は劇中アイテムの「ドラゴンボール」を模したもので、1~7の数字を表わす。戦闘・マップ画面の両方で使用。
      • 漢字:「拳」「蹴」「必」など、技名が記されている。戦闘時に使用。
      • 漢数字:一~九の数字を表わす。戦闘時に使用。
    • 消費した分は5枚になるまで随時補充される。次に配られるカードの強さは完全ランダム。
  • 全体マップはすごろく状になっていて、手持ちのカードを消費して「星の数だけ」マス目を移動する。
    • 1回移動すると、カードめくりが始まる。ここでは伏せられたカードを選択し、そのカードに従って、雑魚敵と戦ったりアイテムを入手したりといったイベントが起こる。
    • 次の目的地に到着すると、出目の余りは切り捨てでADVパートに移行する。
  • ADVパートではコマンドを選択して情報を集め、フラグを立ててストーリーを進行させる。
    • その場所でのイベントをすべてこなすと次の目的地が提示され、特定の場所から全体マップへ移行できるようになる。コマンドの中には、選択すると即座にゲームオーバーになってしまうブービートラップが混じっているので注意。
    • 敵の重要拠点は3Dダンジョン風になっているなど、ADVパートでは場合によってマッピングやメモ推奨。特定の場所には敵も出る(戦闘システムは後述)ので、事前にある程度悟空のレベルを上げたり、体力回復アイテムを集めたりしておきたい。
      • 序盤で訪れるジングル村は、屋外を移動するたびに寒さで体力が減ってしまう厳しい仕様。ここでゲームオーバーになり、本作におけるマッピングの重要性を知る人も多い。
  • 敵との戦闘は、1対1で行うカードバトル。最初に使用するカードの枚数を1~5から指定(敵が枚数を指定してくる事もある)し、出す順番を決めたら、1枚ずつ開示し合う。
    • 星の数を比較して攻撃権を決定し、星の多い方がカード中央に記載された漢字に応じた技で相手を攻撃。これをいずれかのHPがなくなるまで繰り返す。
      • のちのゲームと違い、本作は星の数が影響するのは 攻撃権の判断のみ であり、攻撃力は悟空のレベルと技の基礎威力で固定となっている。この為LVが低いと敵を倒す術が乏しく 本編開始後にウクレレLV2になす術もなく殺される悟空 の姿を見るのは誰もが通った道だろう*1
    • カード下部の漢数字は防御力兼回避率。数字が高いほど被ダメージが小さい。
    • 「必」は必殺技の使用を意味し、伏せられたカードを選択して高威力の技を放つ。必殺技の種類は悟空のレベルに応じて増える。
    • 悟空側は少し優遇措置付き。
      • カードを開示する前に、Bボタンを押すことで道中で手に入れた「仲間カード」を使用して選択されたカードに表示された星と漢数字を増やす事ができる(中には増えないものもある)。前述したように星の数は攻撃力に影響しない為、「必」や「連」と言った大ダメージを狙えるカードに使うとここ一番の決め手となりうる。またダメージを抑えたい局面で漢数字を上乗せさせるのも有効。ただしこちらも効果が安定しないものも多く、(例を挙げるとヤジロベーなら「ひっさつのけん」→☆4~5と「くうふくでちょうしがでない」☆1など)お助けカードごとの特性を知っておかないといけない。
      • 悟空が出した星1は敵の星7に勝てる。
  • コンティニューはパスワード制。再開すると全体マップから始まり、手持ちのカードはランダムで配り直される。

評価点

  • 戦闘システム「カードバトル」は斬新で戦闘のテンポも良い。
    • カードを選んで出して、比較して、攻撃権を得たほうが攻撃、以下繰り返し。と、とてもルールが判りやすい。
    • 数比べの攻撃権だけでなく保険的な防御力の数字なども含めて、まだシンプルながらも斬新なシステムだった。
  • グラフィックは漫画風のコマ送りで描写され、スピード感を損なわずにDBのバトルシーンの臨場感を表現している。
    • 戦闘シーンの作画は原作に忠実で、再現度はなかなかのもの。この点はキャラゲーとしてポイントが高い。
    • 上記の攻撃補助となるお助けカードもテキストのみながら上記の通りそれぞれに原作再現要素が事細かに盛り込まれている。
  • メッセージウィンドウやカードの装飾などは細やかで、雰囲気が良い。
  • 原作では戦わなかった鶴仙人*2等も登場するのもポイント。
  • ザコとのバトルは節度が守られている。
    • 特に序盤はまれに出る緑のレベル2ウクレレがちょっと手強い程度で、それもすぐレベルが上がればさして手強くないし、その程度のレベルを上げるのにそこまで手間はいらない。
    • スゴロク状のシステムが功を奏し当時よくあった悪癖「ちょっとはみ出せば時期に見合わない敵が出てきてオーバーキルされる」も起こらない。
  • 基本的にはピッコロ大魔王編のストーリーだが、登場人物は豊富。
    • 実際これまでのオールキャストに近い。

問題点

  • 即死選択肢の中に、初見では気付けないようなものが多い。ADVパートでは、ゲームオーバーになるとパートの最初からやり直し。
    • 中には原作を知っていれば回避できる場合もあり、原作の小ネタを押さえていると言えない事もない?
    • ただ罠だと感づいても対処法が不明で、そのまま「さよならの果実」(食べるとゲームオーバー)を食ってしまった人は多いと思われる。
  • 小道具としてカードを用いてはいるが、戦略的な要素は特にない。
    • 「お互いのカードを伏せた状態で常に1枚ずつ使用、ツモは完全ランダム」というルールの戦闘は、通常のRPGと少し違う形態のようでいて、結局は悟空のレベルが勝敗を分けるごく普通のシステムである。弱カードの使い道も特に無く、とにかく出して運を天に任せるしかない。
    • ただしこれは単純に目の前の敵一体に対処する事だけを考えた場合の話で、カードは移動にも用いるため、星の数の大きなカードを使って一気に駆け抜けるか戦闘用に温存するかの判断が要求される。また、ADVパートでは連戦になることも珍しくなく、目の前の体力がそこそこ減っている敵にどのカードを使って対処するか、などは面白い選択になっている。次の戦闘を見越して強力なカードを温存するか、この戦闘でのリスクを回避するために強力なカードから使うか、といったようにカードバトルならではの勝率を高める手を考える余地はある。
      • もっとも、移動時はカードめくりで占いババが出てカード全交換が選ばれる場合も結構多く、温存はやりにくい。
  • まだ洗練されていないお助けカード(本作では仲間カード)。
    • 移動時にランダムで仲間になるのだが、8種類しか持てず、いっぱいだと次が手に入らない。
      • 同じ種類なら9枚まで持てるが、全部で22種類もあるためそんなに都合良く同じ仲間が来てはくれない。
      • 戦闘中にしか使う事ができず、効果も星の数にプラスされるものがほとんどで、足を引っ張ったり逃げ出してしまうキャラもいる。22種類もある必要性がない。
    • 使用時にはキャラのセリフが出るだけで、使うとどういう効果なのかの説明がなく、有効なカードを判別しづらい。
      • 同じ仲間でも違う効果が出ることもあるので尚更わかりにくい。
    • なぜか原作に登場しない「ハシモトめいじん*3」なるキャラが含まれている。悟空を助ける方法が「ウラワザ」なのだが別に裏技でもなんでもなく、他のキャラと同じ方法で仲間になる。
      • 原作キャラに混じって一人だけ浮いており雰囲気ぶち壊しである。通常時ランチさんやスノちゃんやオボッチャマンくんでは駄目だったのだろうか?
  • 体力の回復手段が不安定。
    • 全体マップでのカードイベント「神龍のカード」の効果の一つ(ごちそう(一定値回復)or仙豆(全回復))、「カリン様のカード」(確定で前述の仙豆)、戦闘勝利時に敵がたまに落とすごちそうor仙豆が基本的な手段。いずれも発生に運が絡むため、いつまで経っても体力が回復できないままゲームオーバーになる事態もありえる。
    • 次回作『悟空伝』のようにストックしておくことも出来ない。お助けカードとしての「カリン様のカード」(戦闘中に全回復)入手には非常に運が絡む。
    • この回復手段の少なさがADVパートでの死にやすさにも繋がっている*4
  • 画面レイアウトの関係で、ADVパートのグラフィックウィンドウが細長で小さい。
  • 原作とは大きく異なる展開。
    • ブルー将軍と戦った「海底の洞窟」や「ペンギン村」の再来訪、桃白白*5や兎人参化の再登場、ウーロンとプーアルが通っていた南部変身幼稚園などはファンサービスととるとしても、本作オリジナルダンジョンの「秘境コンペイ」の展開は初見だと面を食らう人も多いだろう。
    • 「秘境コンペイ」は前作『神龍の謎』のラストステージであるオリジナルの敵本拠地「コンペイ塔」のオマージュだろうか。単に名前が似てるだけかもしれないが。
  • 終盤のバトルは敵も悟空もかなり火力過多な傾向になり、「必殺技を先に直撃させたほうが勝ち」になりやすい。
    • 救済措置として、終盤ある場所である行動を取ると、隠し仲間カード「かわいいおんなのこ」が9枚手に入る。このカード、攻撃権を決定する星の数の上乗せこそ「1か3のどちらか」と小さいのだが、防御力を決定する漢数字がかならず「九」上乗せされるという特徴があり、これによって「カードの星が低いときにかわいいおんなのこを使って耐える」という戦法を使うことができる。
      • たとえ敵に必殺技カードを使われて負けても、悟空の体力が満タンならまず1~2撃は耐えることができるようになるため、最終決戦での運要素を大分減らせる。しかし、肝心なカードの入手方法はノーヒントなため、手に入れてその有用性に気づいた当時のプレイヤーはごく少数であったと思われる。

総評

初のDBゲーである前作は、大いに難のある出来だった。とはいえ、独特の迫力とスピード感を持つ原作のゲーム化が、当時の制限の多いゲーム開発において容易でなかったこともまた事実だろう。

本作ではアクションゲーム路線から一時離れ、マンガという演出技法の持つ特徴を活かす方向に転換したところ、「戦闘シーンの表現」はそこらのRPGより遥かに見栄えがするようになった。本作以降にも同系のシステムで続編が制作された事からも、路線変更には成功したと言える。

しかし、ADVシーンにおける悟空は原作の姿がウソのようにあっけなく死んでしまう*6。それは「苦境にあってなお決して折れなかった強さ」を魅力とする原作キャラの扱いとしてどうなのか。

いらんところが難しい当時のADVゲームの悪癖が発現していなければ、「ちょっと趣向の変わったまあまあ面白いキャラゲーRPG」にはなっただろう。とはいえ、恐らく今ほどのインパクトは出なかった。どちらがいいとは一概に言えないところである。


その後の展開

  • 1989年10月に『ドラゴンボール3 悟空伝』を発売。
    • お助カードの役回りが細かくなったりレベルアップ時のステータス配分制などを導入した発展形だがシステム面でいろいろ粗が多いものとなった。
    • ストーリー面では大人悟空が初登場している。

余談

  • パスワードで「ましあずさふん うねこせもんで ふきはにらさく ぜごそぐしびす」と入力すると仲間カードにピッコロ大魔王がある状態で再開される。
    • 効果はおかしな発明or大きな斧。使用時にブルマの台詞をしゃべる事から恐らくはバグであると思われる。
  • 原作者の鳥山氏も本作をクリアしており、原作に忠実な点やオリジナル要素を評価している。
    • 一方、やはり「すぐ死ぬので大変だった」とも語っている。
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最終更新:2024年04月19日 21:32

*1 LV1悟空では「連」「必」以外のカードではウクレレLV2の漢数字が「二」以上だと絶対にダメージを与えることができない

*2 ただしアニメオリジナルエピソードでは戦っている

*3 当時のバンダイの広報担当者であり、後のスクウェア・エニックス執行役員専務となる橋本真司氏。現在は定年退職済み。ファミコン名人ブームの折にテレビ番組にも度々出演しており子供たちの認知度も高かった。

*4 例えば、体力が少ない状態でジングル村(防寒具を手に入れるまでは寒さで移動毎に2ダメージ)で彷徨ってゲームオーバーや、ジングル村で体力が少なくなった所に次のイベントで洗脳されたハッチャンに話しかけて(4ダメージ)ゲームオーバーなど。

*5 ピッコロ大魔王に魂を売り魔族の戦士になったという設定。

*6 水門を破壊して溺死(むしろこれが一番悟空らしい選択肢なのに)、雪山を彷徨って凍死、洗脳された8号や鶴仙人に殴り殺される、槍が刺さるなど、「そんなんで死ぬなー!」と言いたくなるほどすぐに死ぬ要素が盛りだくさん。